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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1306356
審判番号 不服2014-11260  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-13 
確定日 2015-10-07 
事件の表示 特願2010-103861「タッチパネル入力補助装置及びタッチパネル入力補助装置を有する入力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月17日出願公開、特開2011-233004〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成22年4月28日の出願であって、平成25年10月8日付け拒絶理由通知がなされ、平成25年12月12日付けで手続補正がなされ、平成26年3月11日付けで拒絶査定がなされ、同年6月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年12月12日付け手続補正書の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。
「タッチパネルを有する入力装置本体に脱着可能なボタン式入力シートを複数具備し、
前記各ボタン式入力シートは、前記タッチパネルの感知領域に対応したボタンをそれぞれ有すると共に、
前記ボタン式入力シートは、前記タッチパネルを有する前記入力装置本体の一端部が嵌合する嵌合部を有することを特徴とするタッチパネル入力補助装置。」

3.引用発明
原審の拒絶の理由で引用された特開平11-110111号公報(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。

「【請求項1】
タッチパネルに表示や印字した仮想キーボードのキーあるいはボタンを押下して文字や記号などを入力あるいは選択入力するタッチパネル装置において、
上記各キーあるいはボタンのほぼ中央に、上に凸状あるいは下に凸状あるいは上と下の両者に凸状の突起をそれぞれ設けた柔軟な補助シートを上記タッチパネル上に備えたことを特徴とするタッチパネル補助装置。
・・・
(中略)
・・・
【請求項4】
上記補助シートの所定の部分に上記凸状の突起あるいは切欠きを設けて当該補助シートの種別を検出することを特徴とする請求項1ないし請求項3記載のいずれかのタッチパネル補助装置。
【請求項5】
上記補助シートをタッチパネル上に取り外し可能にしたことを特徴とする請求項1ないし請求項4記載のいずれかのタッチパネル補助装置。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タッチパネルに表示や印字した仮想キーボードのキーあるいはボタンを押下して文字や記号などを入力あるいは選択入力するタッチパネル補助装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、携帯情報機器では、本体の大きさが携帯に向くように小型化しているため、入力デバイスとして、
(1) 小型キーボードを使うもの
(2) タッチパネルから手書き文字認識で入力するもの
(3) 表示装置に仮想キーボードを表示し、指先、またはペン先によってタッチして入力するもの
がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記(1)の入力方式では、携帯するという制約から本体を大きくできないのでキーボードを付けた分だけ、画面が小さくなってしまい、描画などの操作の際に、操作性が損なわれるという問題がある。
【0004】上記(2)の入力方式では、文字認識の技術レベルや、操作性がキーボード入力には及ばず、入力し難いという問題がある。上記(3)の入力方式では、図6に示すように、指先で操作するとタッチする面積が大きくなるため、仮想キーボードを大きく表示しなくてはならず、表示のための領域が小さくなってしまう問題がある。また、ペンによる入力では仮想キーボードを小さくできるが、ペンで小さな領域をタッチするのは操作性の面で難があるという問題がある。
【0005】図6は、従来技術の説明図を示す。これは、指先でタッチパネルシートを押下すると、タッチパネルガラス基板と接触する変形範囲(面積)が図示のように大きくなり、図示しないが下方に表示する仮想キーボードのキーのサイズを当該変形範囲よりも大きくしないと隣接するキーを押下して誤入力となってしまうので、必然的に表示するキーのサイズが大きくなり、その結果、文字やイメージを表示する部分が少なくなっていた。
【0006】本発明は、これらの問題を解決するため、描画のときにより大きな画面を使えると共に文字入力のときに小型キーボードと同等の操作性で入力を実現するタッチパネル補助装置を実現することを目的としている。」

「【0013】
【発明の実施の形態】次に、図1から図5を用いて本発明の実施の形態および動作を順次詳細に説明する。
【0014】図1は、本発明の説明図を示す。図1において、突起1は、図中では図示外の下方向の液晶パネル上に表示あるいは印字した仮想キーボードのキーやボタンのほぼ中央に対応づけて設けた突起であって、柔軟な補助シート2の上あるいは下あるいは上と下の両者に設けたものであり、図では上に凸状の突起を設けたものである。この突起1は、指先5やペン先などで押下し易くすると共に押下したときにタッチパネルシート3上の押下する部分の変形範囲(面積)を小さくして確実に押下位置を検出するためのものである。タッチパネルシート3上の突起1で押下されてタッチパネルガラス基板4に接触した部分の位置(座標)を公知の技術により検出するようにしている。例えば抵抗膜型のタッチパネルではX方向の抵抗値およびY方向の抵抗値をもとにその押下位置を検出、また電圧検出型のタッチパネルではX方向およびY方向に走査してその接触した部分の電圧を検出して押下位置を検出、また容量検出型のタッチパネルの場合にはX方向およびY方向に走査して容量をもとに押下位置を検出、また電磁誘導型の場合にはX方向およびY方向に走査して電磁誘導による電圧をもとに押下位置を検出するようにしている。
【0015】補助シート2は、柔軟なシートであって、凸状の突起を保持するものである。この補助シート2は、透明な柔軟なシートとし、下方に置いた液晶パネル上に表示あるいは印刷した仮想キーボードのキーやボタンを観察できるようにしたりするようにしている。また、容量でタッチパネルの押下位置を検出する場合には、更に導電性とするようにしている。
・・・
(中略)
・・・
【0031】図4は、本発明を用いた携帯端末例(その2)を示す。図4の(a)は、文書入力している様子を示す。これは、携帯端末11上に画面12を設けて上段に表示部13および下段に仮想キーボード部14を設け、仮想キーボード部14に仮想キーボード15を表示しこの上に図示外の既述した補助シート2を置き、仮想キーボード15上の補助シート2の該当凸状の突起1を指先で押下して文書入力している。
【0032】図4の(b)は、補助シート2を取り外す様子を示す。これは、既述した図3の(b)に示すように、ソフトシート18(柔軟な補助シート2)を開状態にして更に取り外す途中の状態を示したものである。
・・・
(中略)
・・・
【0034】図5は、本発明のシート認識説明図を示す。これは、図3の(b)を用いて説明したソフトシート18(柔軟な補助シート2)を複数として任意のものを使用するときに自動的にその種別を認識可能にした例である。ここでは、図示のようにソフトシート18(柔軟な補助シート2)の右下の角に所定の切欠きを設け、これを携帯端末11の画面12上に載せることにより、この切欠きを自動的に検出、例えば画面からの光が切欠きによって反射されないことを光検出器で検出したり、機械的なピンで検出したりする。また、図示しないが、切欠きの替わりにソフトシート18(柔軟な補助シート2)の所定位置に凸状の突起1を設けてタッチパネルの所定位置に当初押下してこの押下位置をタッチパネルで検出し、ソフトシート18(柔軟な補助シート2)の種別を自動検出するようにする。
【0035】以上のように、ソフトシート18(柔軟な補助シート2)に切欠きや凸状の突起1を設けて自動的に種別を認識することにより、仮想キーボード15あるいはボタンを当該認識した種別のものを自動的に表示し、仮想キーボード15あるいはボタンの種別を自動的に切り替えることが可能となる。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、タッチパネルに表示や印字した仮想キーボードのキーあるいはボタンを押下して文字や記号を入力あるいは選択入力するタッチパネル装置において、各キーあるいはボタンのほぼ中央に、上に凸状あるいは下に凸状あるいは上と下の両者に凸状の突起1をそれぞれ設けた柔軟な補助シート2をタッチパネル上に置く構成を採用しているため、表示された仮想キーボード15のキーうちの該当するキーの上にある補助シート2の凸状の突起1を指先で押下すると、指先が凸状の突起1に接触して確実に突起1を押下したことを認識できると共に、突起1によって力が集中されかつ突起1によってタッチパネルを押下する位置が規定位置に制限され、確実にタッチパネル上のキーあるいはボタンのほぼ中央を押下しその座標を検出できる。これらにより、描画のときにより大きな画面を使えると共に文字入力のときに小型キーボードと同等の操作性で入力することが可能となった。」

ここで、上記記載を関連図面に照らせば、以下のことがいえる。
(1)段落【0031】、【0034】等の記載から明らかなように、図4、5に示される携帯端末11は、タッチパネルを有する携帯端末である。
(2)引用例の図4、5に示される「ソフトシート18(柔軟な補助シート2)」は、段落【0032】や段落【0035】の記載から明らかなように、携帯端末11に脱着可能とされたものであって、1台の携帯端末11に対して複数用意されることが想定されているものである。そして、その1台の携帯端末11に対して複数用意される「ソフトシート18(柔軟な補助シート2)」は、「一組のソフトシート18(柔軟な補助シート2)」といい得る。
(3)段落【0014】、【0015】等の記載から明らかなように、上記「ソフトシート18(柔軟な補助シート2)」は、タッチパネルの感知領域に対応した凸状の突起をそれぞれ有するものである。

したがって、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「タッチパネルを有する携帯端末11に脱着可能なソフトシート18(柔軟な補助シート2)を複数具備し、
前記ソフトシート18(柔軟な補助シート2)は、前記タッチパネルの感知領域に対応した凸状の突起をそれぞれ有する、
一組のソフトシート18(柔軟な補助シート2)。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(1)引用発明でいう「携帯端末11」は、本願発明でいう「入力装置本体」に相当する。
(2)引用発明でいう「凸状の突起」は、本願発明でいう「ボタン」に相当し、引用発明の「ソフトシート18(柔軟な補助シート2)」は、本願発明の「ボタン式入力シート」に相当する。
(3)引用発明でいう「一組のソフトシート18(柔軟な補助シート2)」は、本願発明でいう「タッチパネル入力補助装置」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明の間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「タッチパネルを有する入力装置本体に脱着可能なボタン式入力シートを複数具備し、
前記各ボタン式入力シートは、前記タッチパネルの感知領域に対応したボタンをそれぞれ有するタッチパネル入力補助装置。」である点。

(相違点)
本願発明の「ボタン式入力シート」は、「タッチパネルを有する入力装置本体の一端部が嵌合する嵌合部」を有するのに対し、引用発明の「ボタン式入力シート」(ソフトシート18(柔軟な補助シート2))は、該「タッチパネルを有する入力装置本体の一端部が嵌合する嵌合部」に相当するものを有するとは限らない(引用例には、「嵌合部」に相当するものについての記載がない。)点。

5.判断
(1)上記相違点について
引用例の【請求項5】、段落【0031】?【0036】、図4、5等の記載から明らかなように、引用発明の「ソフトシート18(柔軟な補助シート2)」は、それを使用する際には、その凸状の突起がタッチパネルの感知領域と対応するように、携帯端末11のタッチパネル上に何らかの手段により取り付けられるものであり、それを使用しない場合や、交換時には、取り外しが可能とされているものである。
一方、2つの部材を、相互に取り外し可能に取り付ける(脱着可能とする)ための技術として、いわゆる「嵌合」は、広範な分野においてごく普通に採用されている技術であり、引用発明における携帯端末11とソフトシート18の取り付けにおいても、該「嵌合」の技術が有用かつ採用可能であることは明らかである。
してみれば、引用発明における携帯端末11とソフトシート18の取り付けに上記「嵌合」の技術を採用することは当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用発明における携帯端末11とソフトシート18の取り付けに該「嵌合」の技術を採用する際、嵌合の具体的態様をどのようにするかは当業者が適宜決定すべきことであり、ソフトシート18の側に「携帯端末11の一端部が嵌合する嵌合部」といい得る部分を設けることは、当業者が適宜なし得たことである。
以上のことは、引用発明において、上記相違点にかかる本願発明の構成を採用することが当業者にとって容易であったことを意味している。

(2)本願発明の効果について
本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明から容易に想到し得た構成のものが奏するであろうと当業者が予測する範囲内のものであり、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るようなものではない。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-07 
結審通知日 2015-05-12 
審決日 2015-05-25 
出願番号 特願2010-103861(P2010-103861)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 剛史  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 小曳 満昭
白石 圭吾
発明の名称 タッチパネル入力補助装置及びタッチパネル入力補助装置を有する入力装置  
代理人 丸山 隆夫  

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