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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01B
審判 全部無効 2項進歩性  G01B
管理番号 1306691
審判番号 無効2012-800022  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-03-06 
確定日 2015-09-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4072282号発明「位置検出器及びその接触針」の特許無効審判事件について、平成25年5月27日付けでされた審決のうち、請求項2から4までのそれぞれに係る発明に関する部分に対し、知的財産高等裁判所において審決の取消しの決定(平成25年(行ケ)第10182号、平成25年9月27日決定)があったので、審決が取り消された部分の請求項に係る発明についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第4072282号の請求項1から3までのそれぞれに係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1.第1次審決までの経緯
特許第4072282号(以下、「本件特許」という。)の請求項1から4までのそれぞれに係る発明は、平成11年4月7日に特許出願され、平成20年1月25日にその特許権の設定の登録がされた。
請求人は、平成24年3月6日付けで特許無効審判(以下、「本件審判」という。)を請求した。本件審判の請求の趣旨は、「特許第4072282号の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項4に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」というものである。
その後、請求人及び被請求人は、それぞれ以下に掲げる書類を提出した。

被請求人 平成24年5月31日付け答弁書
請求人 平成24年8月24日付け口頭審理陳述要領書
被請求人 同日付け口頭審理陳述要領書

当審は、平成24年9月7日に第1回口頭審理を行い、同年同月18日付けで、本件特許の請求項1から4までのそれぞれに係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする旨の審決(以下、「第1次審決」という。)をした。

2.第1次審決後、第2次審決までの経緯
被請求人は、平成24年10月24日に第1次審決に対する訴え(平成24年(行ケ)第10367号)を提起した後、同年12月3日付けで訂正審判(訂正2012-390152)を請求した。知的財産高等裁判所は、特許法(平成23年法律第63号による改正前の特許法をいう。以下同じ。)第181条第2項の規定により、同年同月25日付けで審決の取消しの決定をし、この決定は確定した。
当審は、特許法第134条の3第2項の規定により、被請求人に対し、願書に添付した明細書又は図面の訂正を請求するための期間を指定したが、被請求人は、訂正の請求をしなかった。そこで、同条第5項の規定により、上記期間の末日である平成25年2月1日に、上記訂正審判の請求書に添付された訂正した明細書(以下、「第1訂正明細書」という。)を同条第3項の規定により援用した同法第134条の2第1項の訂正(以下、「第1次訂正」という。)の請求がされたものとみなす。また、同法第134条の3第4項の規定により、上記訂正審判の請求は、取り下げられたものとみなす。
その後、請求人及び被請求人は、それぞれ以下に掲げる書類を提出した。

請求人 平成25年3月12日付け弁駁書
請求人 平成25年5月8日付け口頭審理陳述要領書
被請求人 同日付け口頭審理陳述要領書

当審は、平成25年5月17日に第2回口頭審理を行い、同年同月27日付けで、訂正を認める、本件特許の請求項1から3までのそれぞれに係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする旨の審決(以下、「第2次審決」という。)をした。
第2次審決のうち、第1次訂正前の請求項1(本件特許の特許権の設定の登録がされた時点における請求項1)を削除する訂正を認めた部分は、第2次審決の謄本の送達により確定した。

3.第2次審決後の経緯
被請求人は、平成25年6月29日に第2次審決に対する訴え(平成25年(行ケ)第10182号)を提起した後、同年8月20日付けで訂正審判(訂正2013-390117)を請求した。知的財産高等裁判所は、特許法第181条第2項の規定により、同年9月27日付けで審決の取消しの決定をし、この決定は確定した。
当審は、特許法第134条の3第2項の規定により、被請求人に対し、願書に添付した明細書又は図面の訂正を請求するための期間を指定したが、被請求人は、訂正の請求をしなかった。そこで、同条第5項の規定により、上記期間の末日である平成25年10月21日に、上記訂正審判の請求書に添付された訂正した明細書(以下、「第2訂正明細書」という。)を同条第3項の規定により援用した同法第134条の2第1項の訂正(以下、「第2次訂正」という。)の請求がされたものとみなす。そして、同法第134条の3第4項の規定により、上記訂正審判の請求は、取り下げられたものとみなす。また、同法第134条の2第4項の規定により、第1次訂正の請求は、取り下げられたものとみなす。ただし、このことは、第2次審決のうち、第1次訂正前の請求項1(本件特許の特許権の設定の登録がされた時点における請求項1)を削除する訂正を認めた部分が確定したことを左右するものではない。
その後、請求人及び被請求人は、それぞれ以下に掲げる書類を提出した。

被請求人 平成25年11月28日付け手続補正書
(第2訂正明細書の補正)
被請求人 同日付け意見書
請求人 平成25年12月5日付け弁駁書
請求人 平成25年12月11日付け上申書
被請求人 平成26年1月17日付け訂正請求書
被請求人 同日付け答弁書

上記のとおり、平成26年1月17日付け訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求がされたので、特許法第134条の2第4項の規定により、第2次訂正の請求は、取り下げられたものとみなす。
以下では、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」といい、本件訂正請求書に添付された訂正した明細書を「本件訂正明細書」という。
さらに、請求人及び被請求人は、それぞれ以下に掲げる書類を提出した。

請求人 平成26年3月17日付け弁駁書
被請求人 平成26年5月9日付け回答書
被請求人 平成26年6月11日付け回答書
請求人 平成26年6月12日付け回答書
請求人 平成26年8月7日付け口頭審理陳述要領書
被請求人 平成26年8月8日付け口頭審理陳述要領書

当審は、平成26年8月22日に第3回口頭審理を行った。
なお、本件特許については、その特許権侵害差止等請求事件(大阪地方裁判所 平成23年(ワ)第6980号)の控訴事件が、平成24年(ネ)第10091号として知的財産高等裁判所に係属している。

第2 当事者が提出した証拠方法等
1.請求人
請求人は、以下に掲げる甲第1号証から甲第30号証までを証拠方法として提出した。ただし、甲第8号証として提出されたものは、「実開昭59-87605号公報」の写しではなく、「実願昭57-184572号(実開昭59-87605号)のマイクロフィルム」の写しである。

甲第1号証:特開昭63-2650号公報
甲第2号証:特公昭45-13212号公報
甲第3号証:特開平9-329406号公報
甲第4号証:金属便覧 改訂5版 平成2年3月31日発行
甲第5号証:米国特許第5,517,124
甲第6号証:特開昭60-185314号公報
甲第7号証:JIS使い方シリーズ 新版 非鉄金属材料選択のポイン
ト (財)日本規格協会 1992年11月5日発行
甲第8号証:実開昭59-87605号公報
甲第9号証:大昭和精機(株)のZero-Sensorカタログ 1982年
甲第10号証:大昭和精機(株)のLC TOUCH SENSORカタログ
1985年
甲第11号証:大昭和精機(株)のLC TOUCH SENSORカタログ
1993年
甲第12号証:特公平7-117363号公報
甲第13号証:特開昭60-91201号公報
甲第14号証:イゲタロイニュースNo.319,1988年1月,
住友電工
甲第15号証:イゲタロイ技術論文・住友電工
昭和62年及び1989年
甲第16号証:富士ダイス(株)カタログ「超硬合金・フジロイ」
1997年7月
甲第17号証:富士ダイス(株)カタログ「超硬合金・フジロイ」
1999年9月
甲第18号証:特開平9-7520号公報
甲第19号証:実験結果報告書「スタイラスボール着磁テストの件」
甲第20号証:JIS H 3270(1992年)
甲第21号証:ホームページ出力物
http://www.ns-sc.co.jp/product/performance/magnetism/
甲第22号証:金属便覧 改訂5版 平成2年3月31日発行(甲第4
号証刊行物)の引用文献リスト
甲第23号証:鋼鉄、中国金属学会、1980年3月、第15巻、第2
期、第26ページ
甲第24号証:特開昭53-60807号公報
甲第25号証:特開平7-331376号公報
甲第26号証:特開昭64-8245号公報
甲第27号証:特開平10-110233号公報
甲第28号証:特開平10-147091号公報
甲第29号証:特開昭48-86010号公報
甲第30号証:特開平3-197627号公報

また、請求人は、参考資料1から4まで、並びに参考文献1から21まで及び30から41までを提出した。

2.被請求人
被請求人は、以下に掲げる乙第1号証から乙第8号証までを証拠方法として提出するとともに、被請求人会社代表者であり、本件特許に係る発明をした者でもある福久宣夫(以下、「発明者」という。)の平成26年6月9日付け陳述書(以下、単に「陳述書」という。)を提出した。

乙第1号証:被請求人(日新産業株式会社)の商品カタログ
乙第2号証:米国特許第5,517,124号の和文抄録
乙第3号証:石川県工業試験場が分析した成績書
(スタイラスST6×29NMは被請求人が販売している
スタイラスの品名)
乙第4号証:石川県工業試験場が分析した成績書
(BIG ST28-4Pは請求人が販売しているスタイ
ラスの品名)
乙第5号証:日新産業株式会社代表福久がマーキュリーサプライシステ
ムス株式会社に連絡した非磁性超硬ボールの製造指示書
乙第6号証:スタイラスST6×29NMの納入ロットNO68811
を示した容器のラベル
乙第7号証:日鉄住金テクノロジー株式会社直江津試験分析センターの
透磁率測定報告書
乙第8号証:日鉄住金テクノロジー株式会社直江津試験分析センターの
成分分析報告書

また、被請求人は、参考資料1を提出した。

第3 本件訂正の適否について
1.本件特許の願書に添付した明細書及び図面
第2次審決のうち、第1次訂正前の請求項1(本件特許の特許権の設定の登録がされた時点における請求項1)を削除する訂正を認めた部分は、確定している(上記「第1」2.)。したがって、本件訂正の請求の時点における本件特許の願書に添付した明細書及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)は、特許権の設定の登録がされた時点における本件特許の願書に添付した明細書及び図面から請求項1を削除したものである。すなわち、本件特許明細書等の特許請求の範囲には、特許権の設定の登録がされた時点における請求項2から4までが記載されている。具体的には以下のとおりである。なお、便宜上、第1次訂正で削除された請求項1も記載する。

「【請求項1】(第1次訂正で削除された。)
電気的に絶縁された状態で所定の安定位置を保持する微小移動可能な接触体(5)と、当該接触体に接続された接触検出回路(3、4)とを備え、当該接触検出回路で接触体(5)と被加工物又は工具ないし工具取付軸との接触を電気的に検出する位置検出器において、接触体(5)の接触部がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で形成されていることを特徴とする、位置検出器。
【請求項2】
接触体(5)が接触部である先端の球体(16)と当該球体を本体から離れた位置に保持する細長い柄杆(17)とを含む接触針であり、前記柄杆が非磁性材で製作され、前記球体がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で製作されていることを特徴とする、請求項1記載の位置検出器。
【請求項3】
細長い柄杆(17)とその一端に固定された球体(16)とを備え、前記球体がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で製作され、前記柄杆がベリリューム銅を時効硬化処理した非磁性材で製作されている、位置検出器の接触針。
【請求項4】
タングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で製作された球体(16)であって、その周面に柄杆(17)の先端に螺合する雄ネジ(18)が接合されている、位置検出器の接触針の接触部材。」

2.本件訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2を請求項1とし、以下のように訂正する。

(訂正前)
「【請求項2】
接触体(5)が接触部である先端の球体(16)と当該球体を本体から離れた位置に保持する細長い柄杆(17)とを含む接触針であり、前記柄杆が非磁性材で製作され、前記球体がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で製作されていることを特徴とする、請求項1記載の位置検出器。」

(訂正後)
「【請求項1】
電気的に絶縁された状態で所定の安定位置を保持する微小移動可能な接触体(5)と、
当該接触体に接続された接触検出回路(3、4)とを備え、
当該接触検出回路で接触体(5)と被加工物との接触を電気的に検出する位置検出器において、
接触体(5)が接触部である先端の球体(16)と当該球体を本体から離れた位置に保持する細長い柄杆(17)とを含む接触針であり、前記柄杆が非磁性材で製作され、
前記球体がタングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材であることを特徴とする、位置検出器。」

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を請求項2とし、以下のように訂正する。

(訂正前)
「【請求項3】
細長い柄杆(17)とその一端に固定された球体(16)とを備え、前記球体がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で製作され、前記柄杆がベリリューム銅を時効硬化処理した非磁性材で製作されている、位置検出器の接触針。」

(訂正後)
「【請求項2】
細長い柄杆(17)とその一端に固定された球体(16)とを備え、
前記球体がタングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材で製作され、前記柄杆がベリリューム銅を時効硬化処理した非磁性材で製作されている、位置検出器の接触針。」

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を請求項3とし、以下のように訂正する。

(訂正前)
「【請求項4】
タングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で製作された球体(16)であって、その周面に柄杆(17)の先端に螺合する雄ネジ(18)が接合されている、位置検出器の接触針の接触部材。」

(訂正後)
「【請求項3】
タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材で製作された球体(16)であって、その周面に柄杆(17)の先端に螺合する雄ネジ(18)が接合されている、位置検出器の接触針の接触部材。」

(4)訂正事項4
発明の詳細な説明の段落0009を以下のように訂正する。

(訂正前)
「【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明に係る位置検出器は、その接触体5の接触部がタングステンカーバイトに結合材としてニッケル約6?16%を混入した非磁性材で形成されていることを特徴とする。上記接触体5は、電気的に絶縁された状態で移動可能かつ所定の安定位置に付勢して装着されている。接触体5は接触検出回路3、4に接続されており、接触体5が工作機械の工具15ないし工具取付軸12及び被加工物13を介して電気的に導通されたときに接触検出回路3、4が開閉されて、被加工物と工具ないし工具取付軸との相対位置が検出される。」

(訂正後)
「【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明に係る位置検出器は、接触体(5)が接触部である先端の球体(16)と当該球体を本体から離れた位置に保持する細長い柄杆(17)とを含む接触針であり、前記柄杆が非磁性材で製作され、前記球体がタングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材であることを特徴とする。上記接触体5は、電気的に絶縁された状態で移動可能かつ所定の安定位置に付勢して装着されている。接触体5は接触検出回路3、4に接続されており、接触体5が工作機械の被加工物13を介して電気的に導通されたときに接触検出回路3、4が開閉されて、被加工物との相対位置が検出される。」

(5)訂正事項5
発明の詳細な説明の段落0010を以下のように訂正する。

(訂正前)
「【0010】
請求項2の発明に係る位置検出器は、接触体5が接触部である先端の球体16と当該球体を本体から離れた位置に保持する細長い柄杆17とを含む接触針であり、柄杆17が非磁性材で製作され、球体16がタングステンカーバイトに結合材としてニッケルを混入した非磁性材で製作されていることを特徴とする。」

(訂正後)
「【0010】
本発明に係る位置検出器は、接触体(5)が接触部である先端の球体(16)と当該球体を本体から離れた位置に保持する細長い柄杆(17)とを含む接触針であり、前記柄杆が非磁性材で製作され、前記球体がタングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材であることを特徴とする。」

(6)訂正事項6
発明の詳細な説明の段落0012を以下のように訂正する。

(訂正前)
「【0012】
この出願の発明に係る位置検出器の接触針は、タングステンカーバイトに結合材としてニッケルを混入して焼結してなる非磁性材で製作された先端の球体16と、ベリリューム銅を時効硬化処理した非磁性材で製作された細長い柄杆17とを備えている。球体16は、真円に成形したものにオーステナイト系ステンレス鋼の雄ネジ18を溶接や接着により接合し、柄杆17の先端に設けたネジ孔に螺合して固定する構造とすれば、交換可能であり、個別に供給できる。」

(訂正後)
「【0012】
この出願の発明に係る位置検出器の接触針は、タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材で製作された球体16と、ベリリューム銅を時効硬化処理した非磁性材で製作された細長い柄杆17とを備えている。球体16は、真円に成形したものにオーステナイト系ステンレス鋼の雄ネジ18を溶接や接着により接合し、柄杆17の先端に設けたネジ孔に螺合して固定する構造とすれば、交換可能であり、個別に供給できる。」

(7)訂正事項7
発明の詳細な説明の段落0018を以下のように訂正する。

(訂正前)
「【0018】
図3及び図4は本発明の第2実施例を示したものである。この実施例の接触体は、オーステナイト系ステンレス鋼を下面中心に摺動軸を備えた円盤状に加工し、工具との接触部となる円盤上面にタングステンカーバイトに結合材としてニッケルを混入してなる非磁性材を焼結してその表面を研磨することにより製作されている。」

(訂正後)
「【0018】
図3及び図4は本発明の参考例を示したものである。この参考例の接触体は、オーステナイト系ステンレス鋼を下面中心に摺動軸を備えた円盤状に加工し、工具との接触部となる円盤上面にタングステンカーバイトに結合材としてニッケルを混入してなる非磁性材を焼結してその表面を研磨することにより製作されている。」

(8)訂正事項8
図面の簡単な説明を以下のように訂正する。

(訂正前)
「【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の接触針の斜視図
【図2】第1実施例の位置検出器及びその測定方法を示す側面図
【図3】第2実施例の接触体の斜視図
【図4】第2実施例の位置検出器及びその測定方法を示す側面図」

(訂正後)
「【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の接触針の斜視図
【図2】第1実施例の位置検出器及びその測定方法を示す側面図
【図3】参考例の接触体の斜視図
【図4】参考例の位置検出器及びその測定方法を示す側面図」

3.本件訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1について
ア.訂正事項1のうち、「請求項2」を「請求項1」とし、「電気的に絶縁された状態で所定の安定位置を保持する微小移動可能な接触体(5)と、当該接触体に接続された接触検出回路(3、4)とを備え、当該接触検出回路で接触体(5)と被加工物との接触を電気的に検出する位置検出器において、」を追加し、「請求項1記載の」を削除する訂正は、第1次訂正による請求項1の削除に伴い、訂正前の請求項2を独立形式に変更して訂正後の請求項1にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、「又は工具ないし工具取付軸」という選択肢を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、この訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

イ.訂正事項1のうち、「前記球体がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で製作されている」を「前記球体がタングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材である」とする訂正は、「非磁性材」の原材料である「タングステンカーバイト」の形態を「微粉末」に限定し、「結合材」である「ニッケル」の割合を「4?16%」に限定し、さらに、「非磁性材」の製法を、単に「ニッケルを結合材として混入」するものから、「ニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨する」ものに限定する訂正である。したがって、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、この訂正は、本件特許明細書等の段落0011に「上記球体16は、タングステンカーバイトの微粉末に4?16%、最適には6%前後のニッケルを混入して高温で焼結し、溶融状態のものを成形したあと転動させながら研磨することにより得られる。」という記載があり、段落0015に「球体16は、タングステンカーバイトの微粉末に6%のニッケルを加えて高温下でニッケルを溶融してタングステンカーバイトと混合し、型内で球形に焼結したものの周面を研磨して真円とし、その周面の1ヶ所にSUS304の雄ネジ18を電気抵抗溶接して製作されている。」という記載があることに基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

ウ.以上のとおりであるから、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。そして、この訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

(2)訂正事項2及び3について
ア.訂正事項2のうち、「請求項3」を「請求項2」とする訂正、及び訂正事項3のうち、「請求項4」を「請求項3」とする訂正は、第1次訂正による請求項1の削除に伴い、訂正前の請求項3及び4を訂正後の請求項2及び3にする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

イ.訂正事項2及び3のうち、「タングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材」を「タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材」とする訂正については、上記(1)イ.で述べたとおりである。すなわち、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

ウ.以上のとおりであるから、訂正事項2及び3は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。そして、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

(3)訂正事項4から8まで
訂正事項4から8までは、発明の詳細な説明及び図面の簡単な説明の記載を、訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させる訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

(4)本件訂正の適否についての当審の判断のまとめ
以上に検討したとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。また、同条第5項において読み替えて準用する同法第126条第3項から第5項までの規定に適合する。
よって、本件訂正を認める。

第4 本件特許に係る発明
上記「第3」で述べたとおり、本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1から3までのそれぞれに係る発明は、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1から3までのそれぞれに記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
電気的に絶縁された状態で所定の安定位置を保持する微小移動可能な接触体(5)と、
当該接触体に接続された接触検出回路(3、4)とを備え、
当該接触検出回路で接触体(5)と被加工物との接触を電気的に検出する位置検出器において、
接触体(5)が接触部である先端の球体(16)と当該球体を本体から離れた位置に保持する細長い柄杆(17)とを含む接触針であり、前記柄杆が非磁性材で製作され、
前記球体がタングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材であることを特徴とする、位置検出器。
【請求項2】
細長い柄杆(17)とその一端に固定された球体(16)とを備え、
前記球体がタングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材で製作され、前記柄杆がベリリューム銅を時効硬化処理した非磁性材で製作されている、位置検出器の接触針。
【請求項3】
タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材で製作された球体(16)であって、その周面に柄杆(17)の先端に螺合する雄ネジ(18)が接合されている、位置検出器の接触針の接触部材。」

なお、以下では、本件特許の請求項1から3までのそれぞれに係る発明を、対応する請求項の番号を用いて「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」及び「本件訂正発明3」という。また、本件訂正発明1から3までをまとめて「本件訂正発明」という。

第5 請求人の主張
1.無効理由1(特許法第36条第4項違反)について
本件訂正明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。したがって、本件特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当する。
本件訂正明細書の特許請求の範囲の記載によれば、本件訂正発明の「非磁性材」は、「タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加えた混合物を、他の成分を添加することなく、球形の型に入れて液相焼結する」という製造方法(以下、「本件製造方法」という。)によって製造されたものであると理解せざるを得ない。そうすると、混合物を型に入れた後は、外界との間で成分の加除が不可能であるから、本件製造方法では、焼結中に脱炭素処理を行うことができない。
被請求人は、本件製造方法により含有炭素量を6.17%に保ったまま非磁性の超硬合金を製造することができると主張するが、本件訂正明細書に6.17%という数値の記載はないし、含有炭素量が6.17%の合金が非磁性になることが客観的に理解できる実験結果も示されていない。
そして、含有炭素量については、例えば甲第2号証刊行物に、焼結工程に際して脱炭素処理を行うか、タングステンカーバイドとして、WCだけでなくW_(2)Cを用いるか、WCとともにタングステンを用いるかして、含有炭素量を約6.00%以下に下げる必要があることが記載されているから、含有炭素量を6.17%に保ったまま、しかも微量元素の添加を排除しながら、非磁性の超硬合金を製造できるという被請求人の主張は、技術常識からして根本的な疑義がある。
すなわち、鉄族金属として強磁性体である結合材のニッケルを非磁性化するためには、当該ニッケル内に固溶し、その格子定数を変化させ、常温において非磁性材にする物質として、(WCから炭素との結合を解かれて生じた)タングステン又は微量元素が必要不可欠であるという技術常識からすると、焼結中の脱炭素処理も行わず、微量元素も添加しない本件製造法では、ニッケルの格子定数を変化させる成分がなく、非磁性化することはあり得ない。
本件製造方法によって本件訂正発明の「非磁性材」を製造することは、当業者が実施可能な技術内容ではない。

2.無効理由2(特許法第29条第2項違反)について
本件訂正発明は、いずれも、その特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、本件訂正発明についての特許は、いずれも、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。

(1)本件訂正発明1
本件訂正発明1は、甲第1号証及び甲第2号証の各刊行物に記載された発明と周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件製造方法によって得られた物質が「非磁性材」なのであれば、当該物質は、甲第2号証刊行物に記載された超硬合金と同じ物質と考えられる。すなわち、仮に、本件製造方法によって本件訂正発明の「非磁性材」である超硬合金が得られるとすれば、本件訂正明細書には当業者が実施できる方法論は記載されていないものの、結局は何らかの方法により含有炭素量を減らしていると理解せざるを得ない。その場合、含有炭素量も甲第2号証刊行物に記載された超硬合金と同じになる。
タングステンカーバイトの微粉末に結合材として加えるニッケルの成分比(4?16%)については、例えば甲第2号証及び甲第23号証の各刊行物に記載があるとおり、単なる周知の成分比を適用するものでしかない。
型内で結合材を溶融及び球形に焼結して超硬を得る製法については、例えば甲第24号証刊行物に記載があるとおり、単なる周知の製法を適用するものでしかない。
転動させながら研磨する製法については、まず、甲第1号証刊行物に高精度の球状に形成した「検出子49」が開示されていることが、真球度の高い球体を採用すべき示唆となる。また、甲第12号証及び甲第13号証の各刊行物には、内部接点方式であるとはいえ、位置検出器の接触・非接触検知機構に、タングステンカーバイトにニッケルを結合材として加えた高精度の超硬球体を用いる例が示されているところ、例えば甲第29号証刊行物には、当時の技術水準として、市販のボールベアリングという高精度の球体にWC-Ni系超硬合金を用いることが示されている。そして、甲第28号証刊行物には、両面ホーニング盤やバレル研磨により超硬ボールと同様の硬質球体を仕上げ研磨する技術が記載されており、素材である球体の表面を研磨剤に当接させて研磨を行うという製法が当然の技術的事項である以上、真球度の高い球体を得るために転動による研磨方法を採用することは、単なる周知の製法を適用するものでしかない。
その余の構成については、既に本件審判請求事件において判断されてきたとおりである。

(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2は、甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証及び甲第7号証の各刊行物に記載された発明と周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件訂正発明3
本件訂正発明3は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第8号証の各刊行物に記載された発明と周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 被請求人の反論
1.無効理由1(特許法第36条第4項違反)について
本件訂正明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。したがって、本件特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第123条第1項第4号に該当しない。

(1)「非磁性材」である「球体」を製造できること
本件訂正発明の「非磁性材」である「球体」は、乙第5号証製造指示書に記載された製造方法によって製造したものである。
乙第5号証製造指示書には、「タングステンカーバイトの粉末94%とニッケルの粉末6%とを混合し、金型に入れて1430℃で2時間保持して焼結し、次に急冷し、得られた合金が非磁性であることが確認されると、研磨する」という製造方法が記載されている。
なお、乙第5号証製造指示書には、冷却前の温度条件を変えて非磁性を確認する旨の指示があるが、これは、あくまでも確認のための指示であって、重要な意味合いはない。乙第5号証製造指示書に記載された5通りの温度条件全てで非磁性化する。歩留まりや作業性から、経済温度の選択は、作業者の判断である。
乙第5号証製造指示書に記載された製造方法によって、物性に影響を与えるような量の第3成分を添加することなく、また、脱炭素処理等の特別な処理をすることなく、「非磁性材」である「球体」を製造できることは、本件訂正発明の実施品である「スタイラスST6×29NMの球体」(乙第6号証ラベル)の分析結果によって示されている。
すなわち、本件訂正発明の実施品である「スタイラスST6×29NMの球体」は、透磁率の測定結果(乙第7号証透磁率測定報告書)に示されるように、非磁性である。また、成分分析の結果(乙第8号証成分分析報告書)に示されるように、約6.1%のニッケルを含有し、残りがタングステンカーバイトである。さらに、含有炭素量の分析結果(乙第3号証成績書)に示されるように、タングステンカーバイト中の炭素量が約6.16%であるから、その製造に際し、特殊な脱炭素処理は行っていない。

(2)「非磁性材」である「球体」の製造方法が訂正明細書に記載されていること
本件訂正明細書の段落0015には、「球体16は、タングステンカーバイトの微粉末に6%のニッケルを加えて高温下でニッケルを溶融してタングステンカーバイトと混合し、型内で球形に焼結したものの周面を研磨して真円とし、」と記載されている。
このようなプロセスと乙第5号証製造指示書とを比較すると、同製造指示書は焼結後にはair cooling(エアークーリング)することが記載されているが、本件訂正明細書にはそのような具体的文言がないことが相違するのみである。
しかし、高温に加熱し、液相焼結した後に炉外環境に置けば急冷することは当業者にとって自明である。特に、高温に溶融したニッケルは、非磁性の状態であり、そのような組織のまま、炉外に出すと、急冷することは当業者にとって自明といえる。
本件訂正明細書には焼結後に研磨することが記載されている点でも研磨する工程までに急冷されていることは明らかである。
すなわち、本件訂正明細書の記載と乙第5号証製造指示書とは実質的に一致している。このことから、乙第5号証製造指示書に記載の製造方法は、本件訂正明細書に実質的に記載されている。
換言すると、具体的な急冷条件の記載がなくても焼結後に炉外環境に取り出せば急冷することは当業者にとって自明のことであり、改めて本件訂正明細書中に明記する必要がなかったといえる。

2.無効理由2(特許法第29条第2項違反)について
本件訂正発明は、いずれも、その特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、本件訂正発明についての特許は、いずれも、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第123条第1項第2号に該当しない。

(1)本件訂正発明の「非磁性材」である「球体」
本件訂正発明の「非磁性材」である「球体」は、「タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材」である。すなわち、本件訂正発明の「非磁性材」である「球体」は、タングステンカーバイトとニッケルとの混合により球体に液相焼結したものであるから、物性に影響を与えるような量の第3成分の添加は含まれない。また、型内で球形に液相焼結したものであるから、脱炭素処理等の特別な処理をしたものではない。

(2)甲第2号証刊行物に記載された超硬合金
これに対し、甲第2号証刊行物に記載された超硬合金は、以下に述べるとおり、タングステンカーバイトにニッケルを加えただけのものではない。
タングステンカーバイト中にW_(2)Cが含まれた粉末を用いる態様は、「W_(2)C」なる第3成分が実質的に添加されたものであるから、本件訂正発明の「非磁性材」とは原料及び組成が相違する。
焼結を脱炭雰囲気中で行い、合金中の炭素含量を低下させた態様は、特別な脱炭処理により、合金中の炭素量を低下させたものであるから、脱炭処理をしていない本件訂正発明の「非磁性材」とは原料及び組成が相違する。
甲第2号証刊行物に記載された唯一の実施態様は、WC粉末とNiのほかに第3成分として4%のW粉末を加えて焼結したものであるから、本件訂正発明の「非磁性材」とは原料及び組成が相違する。

第7 無効理由1(特許法第36条第4項違反)についての当審の判断
1.乙第5号証製造指示書に記載された事項
被請求人は、本件訂正発明の「非磁性材」である「球体」は、乙第5号証製造指示書に記載された製造方法によって製造したものであると主張する。
そこで、まず、「非磁性材」である「球体」の製造方法が乙第5号証製造指示書に記載されているか否か、記載されているとすれば、それは具体的にどのようなものであるかについて検討する。
乙第5号証製造指示書は、その本文に「非磁性超硬ボールの新しい製造手順書を下記に認めます。」という記載があるから、非磁性超硬ボールの製造方法を説明する意図で作成されたことが分かる。したがって、乙第5号証製造指示書の本文の下に記載された複数の枠及びそれらを結ぶ矢印は、非磁性超硬ボールの製造方法を構成する一連の手順を表す流れ図であると認められる。
そのような観点でみると、乙第5号証製造指示書に記載された事項について、以下のことがいえる。

(1)「Tungsten Carbit powder 94%」(タングステンカーバイトの粉末94%)、「Nickel powder 6%」(ニッケルの粉末6%)、「mixing」(混合)、「Sintered in mold」(金型内で焼結)及び「hold at 1430℃ (2606F)×2h」(1430℃に2h保持)は、「タングステンカーバイトの粉末94%とニッケルの粉末6%とを混合し、金型内で1430℃に2時間保持して焼結する」という手順を表していると解される。

(2)「(1) Furnace temperature control」(焼結炉の温度制御)の右下から延びる「several pcs」(いくつか)が付された矢印をたどると、
「Quenched from 1430℃ (2606F)」(1430℃から焼き入れ)を経て
「non magnet」(非磁性)に至り、矢印はそこで「NO」と「OK (END)」とに分岐している。
ここで、「OK (END)」が付された矢印をたどると、「(2) grinding &
polising」(研磨)、「measurement and inspection」(測定と検査)を経て「OK」が付された矢印をたどり、「Acceptable product」(受け入れ可能な製品)に至る。一方、「NO」が付された矢印をたどると、「go to (1)」に至るが、これは、再び「(1) Furnace temperature control」(焼結炉の温度制御)に戻ることを意味すると解される。
また、右下に見える「Quenched = Air cooling」は、「焼き入れ」が「空冷」で行われることを示すと解される。
そうすると、これらの記載は、全体として、「焼結炉の温度を制御し、焼結物のいくつかを1430℃から空冷で焼き入れして、非磁性であれば研磨し、測定と検査に合格すれば受け入れ可能な製品とする一方、非磁性でなければ、再び焼結炉の温度を制御する」という焼結後の手順を表していると解される。

(3)「(1) Furnace temperature control」(焼結炉の温度制御)の左及び左下から延びる他の矢印をたどると、「several pcs」(いくつか)及び「Quenched from 1300℃ (2370F)」(1300℃から冷却)など、温度は異なるものの、右下から延びる矢印をたどったときと同様の記載に至り、そこから「OK」が付された矢印をたどると、「go to (2) & (3)」に至り、「NO」が付された矢印をたどると、「go to (1)」に至る。
そうすると、「(1) Furnace temperature control」(焼結炉の温度制御)の左及び左下から延びる矢印は、上記(2)でみた手順において、温度だけを変えたものを表していると解される。

(4)「non magnet」(非磁性)からは、「(3) All Balls to cool under the same condition」(全てのボールを同じ条件下で冷却)に至る矢印も延びている。
一方、「Quenched from 1300℃ (2370F)」(1300℃から焼き入れ)、「Quenched from 1200℃ (2192F)」(1200℃から焼き入れ)又は
「Quenched from 1100℃ (2012F)」(1100℃から焼き入れ)からも、「OK」が付された矢印をたどると、「go to (2) & (3)」に至る。
そうすると、「(3) All Balls to cool under the same condition」(全てのボールを同じ条件下で冷却)は、焼結物のいくつかをある温度から空冷で焼き入れしたものが非磁性であれば、全てのボール(焼結物)をその条件で冷却する手順であると解される。

(5)「Quenched from 1000℃ (1832F)」(1000℃から焼き入れ)から「NO」の矢印をたどった場合だけは、温度が異なる同様の記載ではなく、「END」に至る。
また、「Ends when non magnet has been completed」(非磁性が完成したときは終了)とされている。

(6)以上のことから、乙第5号証製造指示書には、非磁性超硬ボールの製造方法として次のようなものが記載されていると、一応は認めることができる。

「タングステンカーバイトの粉末94%とニッケルの粉末6%とを混合し、
金型内で1430℃に2時間保持して焼結し、
焼結炉の温度を制御し、焼結物のいくつかを1430℃から空冷で焼き入れして、非磁性であれば、全ての焼結物を同じ条件で冷却し、焼結物を研磨し、測定と検査に合格すれば受け入れ可能な製品とし、
非磁性でなければ、再び焼結炉の温度を制御し、焼結物のいくつかを1300℃から空冷で焼き入れして、同じことを繰り返し、
以下、温度を1200℃、1100℃、1000℃に変更して同じことを繰り返し、
1000℃から空冷で焼き入れしても非磁性でなかったときは、終了する。」

以下、乙第5号証製造指示書に記載された上記の製造方法を、「乙第5方法」という。

2.乙第5方法によって「非磁性材」である「球体」を製造可能か
次に、乙第5方法によって「非磁性材」である「球体」を製造することができるか否かについて検討すると、以下のとおりである。

(1)上記1.でみたように、乙第5号証製造指示書には乙第5方法が記載されていると、一応は認めることができる。しかし、乙第5方法を実行した結果については、何も記載されていない。
したがって、乙第5号証製造指示書自体は、乙第5方法によって「非磁性材」である「球体」を製造できることを示すものではない。

(2)被請求人は、乙第5方法によって、物性に影響を与えるような量の第3成分を添加することなく、また、脱炭素処理等の特別な処理をすることなく、「非磁性材」である「球体」を製造できることは、本件訂正発明の実施品である「スタイラスST6×29NMの球体」(乙第6号証ラベル)の透磁率の測定結果(乙第7号証透磁率測定報告書)、成分分析の結果(乙第8号証成分分析報告書)及び含有炭素量の分析結果(乙第3号証成績書)によって示されていると主張する。
しかし、被請求人の主張は、以下に述べるとおり、採用することができない。
乙第5号証製造指示書の宛先欄には、「マーキュリーサプライシステムス(株)」という記載があり、その本文には、「非磁性超硬ボールの新しい製造手順書を下記に認めます。ITI社にお送り下さい。」という記載がある。そして、発明者も、「乙第5号証の製造指示書を平成3年4月22日にマーキュリーサプライシステムス株式会社あてにファックスで送信しました。」、「ITI社に出した当時のファックスが出てきました。」と述べている(陳述書、第1ページ)。そうすると、乙第5号証製造指示書は、非磁性超硬ボールの製造手順を、マーキュリーサプライシステムス株式会社を介してITI社に伝えるためのものであると認められるから、製造された非磁性超硬ボールも、ITI社から(直接又はマーキュリーサプライシステムス株式会社を介して)納品されるはずである。
ところが、被請求人が透磁率の測定、成分分析及び含有炭素量の分析を行った「スタイラスST6×29NMの球体」は、乙第6号証ラベルから読み取れるとおり、PRECISION BALL & GAUGE社製である。被請求人は、乙第5号証製造指示書と同様の内容で製造指示し、同社が製造したものをTTS社経由で入手したと主張するが(平成26年6月11日付け回答書、第2ページ)、同社に対し、乙第5方法による製造を指示したことを裏付ける証拠はない。また、同社とマーキュリーサプライシステムス株式会社及びITI社との関係も不明であるから、被請求人がマーキュリーサプライシステムス株式会社に送付した乙第5号証製造指示書が、同社にとってどのような意味を有するのかも不明である。
そうすると、被請求人が本件訂正発明の実施品であるとする「スタイラスST6×29NMの球体」は、そもそも、乙第5方法によって製造されたものかどうかさえ判然としない。したがって、その透磁率の測定結果、成分分析の結果及び含有炭素量の分析結果から、乙第5方法によって「非磁性材」である「球体」を製造できることが示されているということはできない。

(3)被請求人の主張によれば、発明者は、温度1000℃前後からの急冷によって焼結物が非磁性になることを把握していた(平成26年6月11日付け回答書、第2ページ)。そして、発明者は、「ニッケルは約1000℃の高温域で、オーステナイト状態になり非磁性を表す、この状態で常温に戻せば常温で非磁性となる」と主張する(陳述書、第2ページ)。
乙第5方法は、焼結物を空冷で焼き入れする手順を含んでおり、「焼き入れ」とは、例えば「岩波理化学辞典 第4版」(1987年)に「鋼をオーステナイト領域にまで加熱後、適当な冷却剤中で急冷し、マルテンサイト組織として硬化させる熱処理をいう。…(略)…金属材料の高温相を低温に保持したり、過飽和固溶体を得るために高温から急冷する熱処理を焼入れとよぶこともある…(略)…」とあるように、高温の金属を急冷する熱処理を意味することもあるから、乙第5方法が、発明者の上記主張に基づくものであるということはできる。
しかし、発明者の上記主張が正しいこと、すなわち、約1000℃の高温域で非磁性になったニッケルを急冷して常温に戻せば、常温で非磁性のニッケルになるという現象が現実のものであることを示す証拠はない。

(4)被請求人は、「仮にこの製造指示書に基づいて製造されたものが非磁性でなければ、被請求人に非磁性材からなる超硬合金球が送られてこなかったはずであり、現に被請求人が目的とする製品を受け取っていることからも乙第5号証製造指示書は、非磁性の超硬合金が実際に製造できることを証明していると言えます。」と主張する(口頭審理陳述要領書、第7ページ)。
しかし、被請求人の主張は、以下に述べるとおり、採用することができない。
乙第5号証製造指示書の日付欄には、「22.4.91’」という記載があり、これは、「1991年(平成3年)4月22日」の意味であると認められる。そして、被請求人は、発明者が同日付けでマーキュリーサプライシステムス株式会社あてに乙第5号証製造指示書をFAXしたと述べている(平成26年5月9日付け回答書)。発明者も、同じ趣旨のことを述べるが、その一方で、非磁性超硬合金ができはじめたのは、それから5年近くが経過した平成8年に入ってからであり、しかも、その間に「Niのブレンド量や方法を変える等して様々な方法で、試作品の試作を依頼しました。」と述べている(陳述書、第2ページ)。
このことは、非磁性超硬合金を製造するためには、乙第5号証製造指示書を受け取ってから5年近くの間、試行錯誤を重ねる必要があったこと、換言すれば、乙第5方法を単に実行するだけでは非磁性超硬合金を製造することができなかったことをうかがわせるものである。
したがって、被請求人が非磁性材からなる超硬合金球を現に受け取ったことが、乙第5方法によって「非磁性材」である「球体」を製造することができることを証明しているということはできない。

(5)以上に検討したとおりであるから、乙第5方法によって「非磁性材」である「球体」を製造することができると認めることはできない。

3.乙第5方法は本件訂正明細書に記載されているか
上記2.でみたように、乙第5方法によって「非磁性材」である「球体」を製造することができると認めることはできないが、さらに、乙第5方法が本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されているか否かについても検討すると、以下のとおりである。

(1)乙第5方法は、約1000℃の高温域で非磁性になったニッケルを急冷して常温に戻せば、常温で非磁性のニッケルになるという現象を前提とするものである(上記2.(3))。被請求人も、本件訂正発明の「非磁性材」を製造するためには、1000℃以上の非磁性のニッケルを急冷する必要があることを認めている(第3回口頭審理調書、被請求人2)。
したがって、乙第5方法が本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されているというためには、少なくとも、1000℃以上のニッケルを急冷することが、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されていなければならない。

(2)そこで、本件訂正明細書の発明の詳細な説明を参照すると、本件訂正発明の「非磁性材」の「球体」の製造方法については、以下の記載がある。

「【0009】
【課題を解決するための手段】
…(略)…前記球体がタングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材であることを特徴とする。…(略)…
【0010】
…(略)…前記球体がタングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材であることを特徴とする。
【0011】
上記球体16は、タングステンカーバイトの微粉末に4?16%、最適には6%前後のニッケルを混入して高温で焼結し、溶融状態のものを成形したあと転動させながら研磨することにより得られる。…(略)…
【0012】
…(略)…タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材で製作された球体16…(略)…」

「【0015】
【発明の実施の形態】
…(略)…球体16は、タングステンカーバイトの微粉末に6%のニッケルを加えて高温下でニッケルを溶融してタングステンカーバイトと混合し、型内で球形に焼結したものの周面を研磨して真円とし、…(略)…」

以上の記載から、タングステンカーバイトの微粉末にニッケルを結合材として加えた混合物を球形の型に入れて液相焼結をすることを読み取ることができる。したがって、混合物がニッケルの融点付近の温度になるまで加熱されることは明らかである。ニッケルの融点は、「岩波理化学辞典 第4版」(1987年)によれば1450℃であるから、ニッケルの温度を1000℃以上にすることは記載されているといえる。
しかし、1000℃以上のニッケルを急冷することは、上記の記載のいずれからも読み取ることができない。

(3)この点について、被請求人は、「高温に加熱し、液相焼結した後に炉外環境に置けば急冷することは当業者にとって自明です。特に、高温に溶融したニッケルは、非磁性の状態であり、そのような組織のまま、炉外に出すと、急冷する事は当業者にとって自明と言えます。訂正明細書には焼結後に研磨することが記載されている点でも研磨する工程までに急冷されていることは明らかです。」と主張する(口頭審理陳述要領書、第7ページ)。
研磨する工程までに急冷されているのであれば、急冷は、研磨する前に行われることになるが、その一方で、被請求人は、「焼結物を炉から出してすぐ転動させながら研磨することで、急冷を実現した。」(第3回口頭審理調書、被請求人3)と述べて、研磨することによって(すなわち、研磨と同時に)急冷するかのような主張もしている。そのため、急冷について、どのような事項が本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されていると被請求人が主張しているのか判然としない。
しかし、いずれにせよ、ニッケルが高温に溶融したままの状態で焼結物を炉外に出したり、焼結物を炉から出してすぐ転動させながら研磨したりすることは、本件訂正明細書に記載も示唆もされていないし、そのようなことが当業者にとって自明であると認めることもできない。
被請求人の主張は、採用することができない。

(4)以上に検討したとおりであるから、乙第5方法が本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されていると認めることはできない。

4.本件訂正発明の「非磁性材」である「球体」は、乙第5方法で製造されたものか
本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1から3までのいずれにも、「球体」が「タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材」である旨の記載がある。
この記載は、「非磁性材」である「球体」の製造方法を特定するものである。ここで、「その後に転動させながら研磨する」は、得られた「球体」の形状を整えるための処理であるから、物性に影響を与えるものでないことが明らかである。そして、この記載から、「非磁性材」自体は、「タングステンカーバイトの微粉末」と「ニッケル」との「混合物」を原料とするものであり、不純物を別にすれば、「非磁性材」の物性に影響を与えるような量の他の成分は添加されないと認められる。また、「型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し」は、上記の「混合物」を球形の型に入れて液相焼結することを意味すると認められる。
そうすると、本件訂正発明の「非磁性材」自体は、「タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加えた混合物を、他の成分を添加することなく、球形の型に入れて液相焼結する」という製造方法(本件製造方法)によって製造されたものである。
本件製造方法は、焼結物を急冷する工程を含まないから、乙第5方法とは異なる方法である。
したがって、本件訂正発明の「非磁性材」である「球体」は、乙第5方法で製造されたものではない。

5.無効理由1についての判断のまとめ
乙第5号証製造指示書には、非磁性超硬ボールの製造方法として乙第5方法が記載されていると、一応は認めることができる。しかし、乙第5方法によって「非磁性材」である「球体」を製造することができると認めることはできないし、乙第5方法が本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されていると認めることもできない。
また、本件訂正発明の「非磁性材」である「球体」は、乙第5方法とは異なる本件製造方法によって製造されるものである。したがって、仮に、乙第5方法によって「非磁性材」である「球体」が製造可能であり、しかも、乙第5方法が本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されているとしても、本件訂正発明の「非磁性材」である「球体」の製造方法が本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されていることにはならない。
そうすると、当業者が、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、本件訂正発明の「非磁性材」である「球体」を製造することができると認めることはできず、したがって、本件訂正発明の実施をすることができると認めることもできない。
すなわち、本件訂正明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができない。

第8 無効理由2(特許法第29条第2項違反)についての当審の判断
上記「第7」で述べたとおり、本件訂正明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができない。したがって、無効理由2について検討するまでもなく、本件特許は無効とすべきものであるが、念のため無効理由2についても以下に検討する。

1.刊行物に記載された事項
甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証、甲第7号証及び甲第8号証の各刊行物は、いずれも、本件訂正発明の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である。

(1)甲第1号証刊行物
ア.甲第1号証刊行物の記載
甲第1号証刊行物には、以下の記載がある。

(ア)第1ページ右下欄第5行から第9行まで
「[発明の技術分野]
本発明は、例えば研削盤、フライス盤、マシニングセンタ等のごとき工作機械に係り、さらに詳細には、ワークピースの寸法を測定する測定装置を備えてなる工作機械に関する。」

(イ)第1ページ右下欄第10行から第2ページ左上欄第9行まで
「[発明の技術的背景及びその問題点]
例えば研削盤のごとき工作機械においてワークピースの加工を行なうとき、工具である砥石車が摩耗したり、機械本体が熱変位を生じたりするために、ワークピースを最初から一気に仕上り寸法に加工することは困難である。そこで、従来は、ワークピースを仕上り寸法近くまで加工した後に、工作機械からワークピースを一旦取り外し、定盤上にワークピースを配設して精密測定を行ない、その後、再びワークピースを工作機械にセットし、測定結果に基いて仕上り寸法に再加工しているのが一般的である。
ところで、研削盤等の工作機械によってワークピースの精密加工を行なう場合、数ミクロン単位の寸法に仕上げ加工を行なうものである。したがって、工作機械に対するワークピースの再セット時には、粉塵等の付着を防止したり、また再現性に注意しなければならず、作業能率向上に問題があると共に再セット時に数ミクロンの誤差を生じやすい等の問題があった。」

(ウ)第2ページ左上欄第10行から第15行まで
「[発明の目的]
本発明は上記のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、工作機械におけるテーブル上にワークピースを装着した状態のままワークピースの仕上り寸法を測定可能な新規な加工機械を提供することである。」

(エ)第2ページ右上欄第8行から第20行まで
「[発明の実施例]
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明するに、以下の説明においては工作機械の1例として、研削盤に実施した場合について例示する…(略)…。
第1図、第2図を参照するに、工作機械の1例として例示した研削盤1は、箱状に形成されたベース3上にサドル5を前後方向に移動自在に備えてなり、このサドル5上には、ワークピースWを載置するワークテーブル7が左右方向へ往復動自在に支承されている。」

(オ)第2ページ右下欄第11行から第14行まで
「上記構成において、マグネットチャック等によりワークテーブル7上にワークピースWをセットした後に、加工ヘッド13に備えられたモータ25によって砥石車11を回転駆動する。」

(カ)第3ページ左上欄第3行から第9行まで
「ワークピースWの加工寸法を測定するために、前記ベース3とサドル5との間には第1の測定装置27が配置してある。この第1の測定装置27は、例えば直線マグネスケールやリニアインダクトシンなどのごときリニアスケールよりなるものであって、ベース3に対するサドル5の前後方向への移動寸法を測定するためのものである。」

(キ)第3ページ左上欄第13行から右上欄第3行まで
「また、前記加工ヘッド13には、ワークピースWの上下方向の寸法を検出する第2の測定装置29が装着してある。この第2の測定装置29は、例えば作動トランスや前述のリニアスケールのごとき適宜の検出器33よりなるものであって、ブラケット31を介して加工ヘッド13に垂直に支承されている。
より詳細には、上記検出器33には上下動自在なスピンドル35が内装されており、このスピンドル35の上下動位置を検出するよう構成されている。」

(ク)第3ページ右上欄第7行から左下欄第19行まで
「また、上記スピンドル35の下部には、ワークピースWを検出するワーク検出装置41が装着してある。より詳細には、スピンドル35の下部には、下部を開口した適宜円筒形状の検出子ハウジング43が取付けてあり、この検出子ハウジング43内には、リング状の支持ベース45が内装されている。上記支持ベース45は、検出子ハウジング43に下部側から螺入した適宜管状のキャップ部材47によって検出子ハウジング43内に固定されている。
上記支持ベース45には、ワークピースWの検出を行なうために、下端部に検出子49を備えたスタイラス51が揺動自在に支承されている。より詳細には、検出子49およびスタイラス51は、通電性が良好で非磁性の部材よりなるものであって、検出子49は、ワークピースWに接触自在なものであり、本実施例においては高精度の球状に形成してある。上記スタイラス51の上部は支持ベース45を貫通しており、このスタイラス51の上端部に設けたフランジ部53と支持ベース45との間には、圧縮スプリングのごとき弾機55が弾装してある。また、上記支持ベース45の下部側において、スタイラス51には適宜形状の支点部材57が螺着等により適宜に取付けてある。この支点部材57の上面の複数箇所には、半柱状あるいは半球状の接触部59が形成してあり、各接触部59は、前記支持ベース45の下面に形成された適数のV溝61に係合してある。
上記スタイラス51は、支点部材57における各接触部59が支持ベース45のV溝61に係合した状態にあるときには垂直状態に保持されており、水平方向の外力が作動したときには、適宜の接触部を支点として適宜に揺動し得るものである。」

(ケ)第3ページ左下欄第20行から右下欄第6行まで
「なお、上記構成のごときワーク検出装置41は、前記検出子49がワークピースWに接触したときに、ワークピースWと検出子49との間に微弱電流が通電することによって、ワークピースWを検出するものである。換言すれば、ワークピースWと検出子49との間には、接触時に通電するように電圧が印加してあるものである。」

(コ)第4ページ左上欄第7行から第20行まで
「上述のごとく検出子49をワークピースWの上面に接触せしめると、ワークピースWと検出子49との間が通電される。したがって、この通電時の信号により、検出器33の検出値をカウンター65に読み込み、ワークピースWの上面位置を表示する。
次に、ワークピースWの上面から検出子49を離反した後に、ワークピースWの溝が検出子49の下方に位置するようにサドル5、ワークテーブル7を再度位置決めする。その後、検出子49をワークピースWの溝の底面に接触せしめ、接触したときにおける検出器33の検出値と、上面の検出値との差によって溝の深さを測定することができる。」

イ.甲第1号証刊行物に記載された発明(甲第1発明)
上記ア.(ア)から(コ)までの記載と第1図から第3図までに示された事項とを総合すると、甲第1号証刊行物には、以下の発明(以下、「甲第1発明」という。)が記載されている。

「支点部材57における各接触部59が支持ベース45のV溝61に係合した状態にあるときは、垂直状態に保持されており、水平方向の外力が作動したときは、適宜の接触部を支点として適宜に揺動し得る、下端部に球状の検出子49を備えたスタイラス51を備え、
ワークピースWと前記検出子49との間には、接触時に通電するように電圧が印加してあり、
前記ワークピースWの上面と前記検出子49とが接触して通電したときの信号により、検出器33の検出値をカウンター65に読み込み、前記ワークピースWの上面位置を表示する
ワークピース寸法測定装置において、
前記スタイラス51及び前記検出子49が、通電性が良好で非磁性の部材からなる
ワークピース寸法測定装置。」

(2)甲第2号証刊行物
ア.甲第2号証刊行物の記載
甲第2号証刊行物には、以下の記載がある。

(ア)第1欄第16行から第32行まで
「本発明は、非磁性の超硬合金に関するものである。
超硬合金は現在、硬く又強靱な材料として種々な用途に使われ、一般にはWCを主成分とし、これをCoで焼結結合したものが広く用いられている。そしてWCの結合材には他にNi,Fe等の鉄族金属があり、これらによつてCoを用いたときとほぼ同等の性質を与える。
これらはいずれも、強磁性体であるので超硬合金もまた強磁性体となるものである。
しかし、例えば磁性物質の磁性を超高圧中で測定しようとする超高圧容器の如く用途によつては非強磁性の超硬合金が要求される場合もある。
本発明者等は上記の要求を充すものをめざして超硬合金結合相に関する詳細な研究の結果、鉄族金族(当審注:「金属」の誤り。)の一つであるNiを用いて非磁性の超硬合金を提供せんとするものである。」

(イ)第1欄第33行から第2欄第13行まで
「WC-Ni合金において合金含有炭素量がWC-Ni固溶体における臨界量(第1図に示す如く、WC-10%Ni組成ではこの値は6.06%である)より低くなると結合金属相のNi中にWが固溶し、Niの格子定数は変化する。
ここで、合金含有炭素量の臨界量とは、WC-Ni合金において遊離炭素相を現出する臨界炭素含有量をWCに換算した値を云う。
第1図はWC-10%Ni合金におけるWC換算の合金含有炭素量(%)を横軸に、結合相の格子定数(Å)を縦軸にとり、夫々の点をプロットしたものである。
…(略)…
従つて、含有炭素量が低くなるとWC-Ni合金は炭化物相がWC、結合金属相がNi-W合金となつて、Ni-W合金のキュリー温度が低下し、常温において非磁性となるであろうことが推定される。」

(ウ)第2欄第14行から第22行まで
「本発明は上記の考えに基いて、WC-10%Ni合金を試料として種々の含有炭素量のWC-Ni合金を試作し、その磁性を測定した。
第2図は、WC換算の合金含有炭素量%(横軸)と磁気飽和(ガウス)(縦軸)との関係を示したものである。
即ち、この図から明らかな様に炭素量約5.95%以下(結合相中のW量約17%以上)では全く磁性を示さないものである。」

(エ)第2欄第23行から第24行まで
「次に、これらの各含有炭素%(横軸)における試料の抗折刀(当審注:「抗折力」の誤り。)(kg/mm^(2))を第3図縦軸に示す。」

(オ)第2欄第25行から第30行まで
「なお、合金の含有炭素量を小ならしめる手段としては使用するWC粉末として炭素含有量が、普通の場合の6.22%に対して約6.00%以下と不足のもの(WC中に少量のW_(2)Cを含む)を用いるか、又は焼結を脱炭雰囲気中で行わせ合金中の炭素含量を低下せしめるものである。」

(カ)第2欄第31行から第3欄第6行まで
「この図からも明らかな如く、余りに炭素含有量が低くなるとW_(x)Co_(y)C_(z)(当審注:「W_(x)Ni_(y)C_(z)」の誤り。)なる脆いθ相化合物の占める割合が高くなる為に却て強度は著しく低下するので炭素含有量には当然下限が存在する。
従つて合金炭素量の範囲を選定すれば、WC及びNiから強靱にして非強磁性の合金を得ることができるものである。
なお、WC-Ni合金においてNi含量が約1%以下では焼結性が著しく悪く高密度の焼結体が得られない。又、30%以上では硬度が高速度鋼のそれと殆んど差がなくなり、超硬合金としての意味を失つてしまう。
従つて、本発明においてはNi含量は1%?30%とするものである。」

(キ)第3欄第15行から第4欄第6行まで
「次に本発明の実施の態様を説明する。
粒度2μのWC粉末(全炭素量6.15%)90%と粒度1μのNi粉末10%の混合物にこの混合物量に対して4%のW粉末(粒度1μ)を加え、ボールミルによつて混合した。得られる混合粉末を常法に従いプレス後1400℃、10^(-3)mmHgの真空度で真空焼結した。得られた合金中のWCに換算した炭素量は5.86%でこの合金は磁性を示さなかった。硬度はHv=1000、抗折刀(当審注:「抗折力」の誤り。)は120kg/mm^(2)であつた。」

(ク)第4欄第7行から第11行まで
「特許請求の範囲
1 WCをNiを結合剤として焼結した超硬合金において、合金中の炭素含有量を遊離炭素を現出する臨界炭素量よりも小ならしめ、常温にて非強磁性とした非強磁性にして強靱なる超硬合金。」

イ.甲第2号証刊行物に記載された超硬合金(甲第2超硬合金)
甲第2号証刊行物には、主成分であるWCを結合材である鉄族金属(Fe、Co、Ni)で焼結結合すると、従来は強磁性を示す超硬合金が得られたのに対し、鉄族金属の一つであるNiを用いて常温で非磁性の超硬合金を新たに実現したことが記載されている(上記ア.(ア)及び(ク))。
非磁性化の仕組みについては、WC-Ni合金の含有炭素量が少なくなると、結合金属相のNi中にWが固溶する結果、WC-Ni合金の炭化物相及び結合金属相がそれぞれWC及びNi-W合金となるため、Ni-W合金のキュリー温度が低下し、常温で非磁性になると説明されている(上記ア.(イ))。そして、実際に、WC-10%Ni合金の場合、含有炭素量が約5.95%以下(結合金属相中のW量約17%以上)では、全く磁性を示さない超硬合金が得られたことが記載されている(上記ア.(ウ)、(エ)及び(カ))。
具体的には、実施の態様として記載されているとおり、WC粉末(粒度2μ、全炭素量6.15%)90%とNi粉末(粒度1μ)10%との混合物に、この混合物に対して4%のW粉末(粒度1μ)を加えて混合した後、真空焼結することにより、磁性を示さない合金(含有炭素量はWC換算で5.86%)が得られる(上記ア.(キ))。
ここで、炭化物相及び結合金属相がそれぞれWC及びNi-W合金となるというWC-Ni合金の非磁性化の仕組み(上記ア.(イ))を踏まえると、実施の態様におけるW粉末の添加は、WCとして炭化物相に含まれるW以外に、Ni-W合金として結合金属相に含まれるWを確保するため、換言すれば、WC-Ni合金の含有炭素量を少なくするためであると認められる。
また、WC-Ni合金の含有炭素量を少なくする方法として、少量のW_(2)Cを含むため含有炭素量が普通(6.22%)より少ない約6.00%のWC粉末を用いる方法や、焼結を脱炭雰囲気中で行う方法があることも記載されている(上記ア.(オ))。前者において、WC粉末が用いられることは明らかである。後者においても、焼結を脱炭雰囲気中で行うこと以外は他の方法と同様と解されるから、WC粉末が用いられると認められる。
そうすると、甲第2号証刊行物には、WC粉末にNiを結合材として混合して焼結した超硬合金であって、合金の含有炭素量を少なくすることにより常温で非磁性とした超硬合金が記載されている。そして、合金の含有炭素量を少なくする方法として、WC粉末にW粉末を添加する方法、少量のW_(2)Cを含むため含有炭素量が普通より少ないWC粉末を用いる方法、及び焼結を脱炭雰囲気中で行う方法が記載されている。これら3つの方法は、互いに別の方法として記載されているから、合金の含有炭素量を少なくする方法として、焼結を脱炭雰囲気中で行う方法を採用する場合には、W粉末は添加しないし、WC粉末も含有炭素量が普通のものを用いると認められる。
以上のことを踏まえて、上記ア.(ア)から(ク)までの記載と第1図から第3図までに示された事項とを総合すると、甲第2号証刊行物には、以下の超硬合金(以下、「甲第2超硬合金」という。)が記載されている。

「WC粉末にNiを結合材として混合して焼結した超硬合金であって、WC粉末にW粉末を添加するか、WC粉末として、少量のW_(2)Cを含むため含有炭素量が普通より少ないものを用いるか、脱炭雰囲気中で焼結するかして、合金の含有炭素量を少なくした、常温で非磁性の超硬合金。」

(3)甲第5号証刊行物
甲第5号証刊行物には、以下の記載がある。なお、原文の引用の後に、当審で作成した日本語訳を記載する。

ア.第1欄第22行から第53行まで
「2. Summary of the Prior Art
Two and three dimensional co-ordinate measuring machines which
comprise a head supported for two or three-dimensional motion
relative to a workpiece are known in the art. The movable head
supports a stylus probe which is generally in the form of a straight
rod with a small contact ball at the tip disposed away from the
head. The machine includes a plurality of drive means for moving
the head with the probe in two or three co-ordinate axes, and a
monitoring means for instantly monitoring and recording the position
of the probe with reference to the co-ordinate axes. A means is also
provided for generating a signal when the probe comes into contact
with the workpiece. When the probe is deflected, the driving motion
of the probe is stopped and its position is recorded.
The co-ordinate measurements of a workpiece mounted to the co-
ordinate measuring machine are determined by moving the head in one
or more directions and reading the co-ordinate position of the probe
relative to a given datum when the probe contacts the workpiece.
State of the art co-ordinate measuring machines are capable of
monitoring and recording probe positions to an accuracy of 0.1 mm.
Because the co-ordinate measuring machines of the prior art rely
on physical contact to measure the co-ordinate positions of the
workpiece surfaces, the operating sequence tends to be rather
prolonged and time consuming. In addition, it is generally known
that contact probes can be expensive to manufacture and are subject
to wear and damage due to physical contact. Even a small amount of
wear can introduce significant errors to the machine's accuracy
capabilities.」
「2.先行技術の概要
ワークピースに対する二及び三次元移動のために支持されたヘッドを含む二及び三次元座標測定装置が従来知られている。移動可能なヘッドは、スタイラスプローブを支持し、それは、通常、ヘッドと反対側の端部に小さい接触球を備えた真っ直ぐな棒の形状をしている。測定装置は、プローブを備えたヘッドを二又は三次元座標軸に沿って移動させるための複数の駆動手段、及びその座標軸に関するプローブの位置を即座に監視し記録するための監視手段を含む。プローブがワークピースと接触したときに信号を発するための手段も備わっている。プローブが湾曲すると、プローブの駆動手段が停止され、その位置が記録される。
座標測定装置に据え付けられたワークピースの座標測定値は、ヘッドを一つ以上の方向に移動させ、プローブがワークピースと接触したときに、所与の基準に対するプローブの座標位置を読み取ることによって決定される。従来の座標測定装置は、0.1mmの精度でプローブの位置を監視し記録することができる。
従来の座標測定装置は、物理的接触に頼ってワークピース表面の座標位置を測定するので、動作の進行がどちらかと言えば長くかつ時間浪費的になりがちである。さらに、接触プローブは、製造に費用がかかる可能性があり、物理的接触のせいで摩耗したり損傷したりしやすいことが一般に知られている。わずかな量の摩耗でさえ、装置の精度性能に重大な誤差をもたらす可能性がある。」

イ.第4欄第64行から第5欄第7行まで
「SUMMARY OF THE INVENTION
The present invention provides a new and improved stylus probe
having both contact and capacitance measuring capability with a high
degree of sensitivity, resolution and adaptability. This new probe
has the ability to deflect elastically without any permanent or
plastic deformation or bending which could adversely affect the
probe's mounted position or knock it out of adjustment. When in use
as a contact or trigger probe, this design protects the probe and
workpiece from inadvertent damage.」
「発明の概要
この発明は、接触測定及び容量測定の両方が、高感度、高精度及び高い融通性で可能な、新規で改善されたスタイラスプローブを提供する。この新規なプローブは、プローブの据え付け位置に不都合な影響を及ぼしたりその調整を狂わせたりし得るであろういかなる永久変形、塑性変形又は折損もなしで、弾性的に湾曲することが可能である。接触又はトリガープローブとして使用するときは、この設計がプローブ及びワークピースの意図しない破壊を防ぐ。」

ウ.第5欄第49行から第6欄第8行まで
「DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
FIGS. 1 and 4 illustrate a basic embodiment of the stylus probe
useful for general purpose applications, and particularly for
workpiece measurements in two co-ordinate planes. The probe shown in
FIGS. 1 and 4 comprises an elongated stylus tube (12) with a
connecting-end, a tip-end and a spherical metallic capacitor sensor
(10) at the tip-end. The stylus tube (12) is made of a rigid
conductive metal such as stainless steel, having a high degree of
bending flexibility. The capacitor sensor (10) is also made of a
conductive metal having a highly conductive, non-corrosive, surface
plating, such as gold. The sensor (10) is bonded in a spaced
relationship to the tip-end of the stylus tube (12) by a non-
conductive bonding material (14), such as an epoxy resin, so that
the sensor (10) is electrically insulated from the stylus tube (12).
A rigid conductive lead wire (16) is secured to the sensor (10),
and extends from the sensor (10) through the axial center of the
stylus tube (12) to the connecting-end of the tube. An insulating
material (18), such as rubber or a rubber like polymer, is uniformly
dispersed around the conductive wire (16) to electrically insulate
and space the conductive wire (16) uniformly from the conductive
cylindrical interior surfaces of the stylus tube (12). In addition,
this insulative material also provides a dampening effect on probe
vibrations.」
「発明の詳細な説明
図1及び4は、一般的な目的のための応用、特に2つの座標平面内でのワークピース測定に有用なスタイラスプローブの基本的な実施例を示す。図1及び4に示されるプローブは、接続端、先端及びそこに位置する球状金属容量センサ(10)を備えた細長いスタイラス管(12)を含む。スタイラス管(12)は、ステンレス鋼のような堅い導電性金属で作られ、高度の曲げ弾性を備えている。容量センサ(10)も、導電性金属で作られ、金のような、高度に導電性で非腐食性の表面メッキを備えている。センサ(10)は、エポキシ樹脂のような非導電性の接着材料によって、スタイラス管(12)の先端から離して接着されて、スタイラス管(12)から電気的に絶縁されている。堅い導電性リード線(16)は、センサ(10)に取り付けられ、センサ(10)からスタイラス管(12)の軸中心を通って管の接続端まで延びている。ゴム又はゴム状ポリマーのような絶縁材料(18)は、導電線(16)の周囲に一様にまき散らされ、導電線(16)をスタイラス管(12)の導電性の円筒状内表面から一様に電気的に絶縁しかつ離隔している。さらに、この絶縁性材料は、プローブ振動に減衰効果ももたらす。」

エ.第6欄第43行から第67行まで
「The sensor (10) is made of either a conductive or semi-conductive,
non-magnetic material, such as copper, aluminum, alloys thereof, or
austenitic stainless steel. Semi-conductive materials such as
carbide, silicon or the like, may also be used. While not essential,
it has been found to be highly preferred that the surface of the
sensor (10) be plated with a non-corrosive, highly conductive metal
such as gold. This will serve to protect the sensor surface from
atmospheric and human handling corrosion and will optimize the
conductivity and sensitivity of the sensor in its role of measuring
capacitance. A good conductive interface between the gold plating
and the conductive base metal is essential. Contact probes should
have tips which are hard and wear resistant, made from materials
such as stainless steel and the like.
The stylus tube (12) is tubular in form, non-magnetic and
conductive. The tubular material should have a high degree of
elastic-bending flexibility without being stiff but with a yield
strength high enough to permit such flexure without any plastic
deformation or fracture. Commercially available austenitic stainless
steels, titanium, titanium alloys or berillium-copper alloys in
small tubing sizes are satisfactory for this purpose. Austenitic
stainless steels or titanium are preferred in order to impart
atmospheric and handling corrosion resistance of the stylus tube
(12).」
「センサ(10)は、銅、アルミニウム、それらの合金又はオーステナイト系ステンレス鋼のような、導電性又は半導電性の非磁性材料で作られる。炭化物、ケイ素又はその同類のような半導電性材料も使われてもよい。不可欠ではないが、センサ(10)の表面が金のような非腐食性で高度に導電性の金属でメッキされると大変好ましいことが分かった。これは、検出器表面を雰囲気又は人の操作による腐食から守る役目をし、検出器の導電性及び感度を、検出器が容量測定で役割を果たすのに最適なものにする。金メッキと導電性の母金属との接触面で良好な導電性があることが不可欠である。接触プローブは、ステンレス鋼又はその同類のような材料で作られた硬くて耐摩耗性のある先端部を有するべきである。
スタイラス管(12)は、管状の形状で、非磁性かつ導電性である。管状材料は、硬化することなく、塑性変形も破壊もなしに曲がりを許容するような十分高い降伏強度を伴う、高度の曲げ弾性を備えているべきである。小さい管寸法の商業的に入手可能なオーステナイト系ステンレス鋼、チタン、チタン合金又はベリリウム銅合金がこの目的に適している。雰囲気又は操作による腐食に対するスタイラス管(12)の耐性を与えるために、オーステナイト系ステンレス鋼又はチタンが好ましい。」

オ.第9欄第64行から第10欄第20行まで
「In view of the above description, it should be readily apparent
that this invention provides a very useful capacitance probe for
measuring various workpiece parameters with a significant degree of
sensitivity, resolution, conformity and resistance to damage. In
addition, the exceptional resiliency of the tubular stylus stem
disclosed herein will also provide a unique and improved contact or
trigger probe having an improved degree of conformity and resistance
to damage in contrast to the contact probes of the prior art. Such
an inventive contact probe could be fabricated substantially in
accordance with the structure as described above, except that there
would be no need to be concerned with the electrical and
capacitance characteristics of the structure. Therefore, any such
inventive contact probe does not have to be concerned with the
electrical conductivity of the tube or detector. The detector does
not need to be electrically insulated from the stylus tube and there
is not a need for a lead wire to be passed through the tubular
stylus stem. Efforts taken to impart corrosion resistance, however,
would be beneficial as would be the use of non-magnetic materials if
magnetic workpieces are to be measured. However, the insulative
material would still fill the tube hollow even in the absence of the
conductive wire because of the materials dampening effect on
vibrations of the probe when inadvertently flexed.」
「上記の説明を考慮すれば、この発明が、ワークピースの種々のパラメータを高水準の感度、精度、適合性及び破損耐性で測定するための非常に有用な容量プローブを提供することは直ちに明らかであろう。さらに、ここに開示された管状スタイラス軸のひときわ優れた弾性は、従来の接触プローブとは対照的に、改善された適合性及び破損耐性を有する、類例のない改良された接触又はトリガープローブも提供することになる。そのような創意に富む接触プローブは、上述の構造と実質的に同じように製造され得るが、ただ、その構造の電気的及び容量的特徴を気にする必要はないであろう。したがって、そのような創意に富む接触プローブは、どのようなものであれ、管又は検出器の電気伝導度を気にしなくてもよい。検出器がスタイラス管から電気的に絶縁される必要はないし、リード線が管状スタイラス軸の中を通る必要はない。しかしながら、耐食性を与えるための努力は、磁性を有するワークピースが測定される場合の非磁性材料の使用と同じく、有益であろう。とは言うものの、絶縁材料は、プローブが不都合に曲がったときの振動を減衰させる効果があるので、導電線がなくても依然として管の内部を充填するだろう。」

(4)甲第7号証刊行物
甲第7号証刊行物には、銅及び銅合金の展伸材である伸銅品の規格として「JIS H3270 ベリリウム銅,りん青銅及び洋白の棒及び線」があること(第113ページ)、及び伸銅品は導電性が高い、磁性がない、耐食性が優秀などの特性を有すること(第114及び120ページ)が記載されている。また、第127ページには、ベリリウム銅の一種であるCu-2%Be-0.3%Co合金の引張強さが、316℃、4時間の時効処理で約1370N/mm^(2)になることが記載されている。

(5)甲第8号証刊行物
ア.甲第8号証刊行物の記載
甲第8号証には、以下の記載がある。

(ア)明細書第2ページ第3行から第12行まで
「本考案は、接触式プローブ、特に被測定物との接触を電気的に検出する接触式プローブの改良に関する。
被測定物の形状、大きさの3次元的測定、あるいは、長さの測定をする場合、接触式プローブが多く使用される。この接触式プローブは、先端に設けられた接触子が被測定物に接触したときに、両者間の電気的導通を検出信号として取り出し、その被測定物の位置検出または寸法測定などを電気的に行うためのものである。」

(イ)明細書第4ページ第3行から第15行まで
「第1図は本考案の一実施例を示す断面図で、第2図は第1図のA-A断面図である。第1図において、図示されない測定機等の移動台に着脱可能に装着されるシャンク1には、絶縁板2を介してプローブ本体3が小ねじ4および5により固設されている。このプローブ本体3の中央部は、第2図の如く正三角形の空室に形成され、その底面3aの中央部には開孔6が設けられている。
この開孔6を貫通する接触子7は、先端にねじ8によって固定された鋼球9を有し、接触子7の他端には、プローブ本体3の三角形の空室内に設けられた接触子支持部材としての三角板10が螺設されている。」

(ウ)第1図
第1図には、鋼球9に設けられたねじ8が雄ねじであり、そのねじ8が接触子7の先端にねじ込まれている様子が示されている。

イ.甲第8号証刊行物に記載された技術事項
上記ア.(ア)から(ウ)までの記載を総合すると、甲第8号証刊行物には、以下の技術事項が記載されている。

「被測定物との接触を電気的に検出する接触プローブの接触子7の先端に、鋼球9に設けられた雄ねじ8をねじ込むことによって、前記鋼球9を前記接触子7の先端に固定する。」

2.本件訂正発明1について
(1)本件訂正発明と甲第1発明との対比
本件訂正発明1と甲第1発明とを対比すると、以下のとおりである。

ア.甲第1発明の「下端部に球状の検出子49を備えたスタイラス51」及び「ワークピースW」は、それぞれ、本件訂正発明1の「接触体」及び「被加工物」に相当する。

イ.甲第1発明の「球状の検出子49」及び「スタイラス51」は、それぞれ、本件訂正発明1の「接触部である先端の球体」及び「当該球体を本体から離れた位置に保持する細長い柄杆」に対応する。したがって、甲第1発明の「下端部に球状の検出子49を備えたスタイラス51」は、全体として、本件訂正発明1の「接触体が接触部である先端の球体と当該球体を本体から離れた位置に保持する細長い柄杆とを含む接触針であり」に相当する。

ウ.甲第1発明の「支点部材57における各接触部59が支持ベース45のV溝61に係合した状態にあるときは、垂直状態に保持されており、水平方向の外力が作動したときは、適宜の接触部を支点として適宜に揺動し得る」は、水平方向の外力が作動しない限り垂直状態で安定していることを意味しているから、本件訂正発明1の「所定の安定位置を保持する微小移動可能な」に相当する。
甲第1発明の「ワークピースWと前記検出子49との間には、接触時に通電するように電圧が印加してあり」は、「ワークピースW」と「検出子49」とが接触しなければ通電しないことを意味するから、「検出子49」は、それが下端部に設けられた「スタイラス51」とともに、電気的に絶縁された状態にあると認められる。
したがって、甲第1発明の「支点部材57における各接触部59が支持ベース45のV溝61に係合した状態にあるときは、垂直状態に保持されており、水平方向の外力が作動したときは、適宜の接触部を支点として適宜に揺動し得る、下端部に球状の検出子49を備えたスタイラス51」は、「ワークピースWと前記検出子49との間には、接触時に通電するように電圧が印加してあり」を考慮すると、本件訂正発明1の「電気的に絶縁された状態で所定の安定位置を保持する微小移動可能な接触体」に相当する。

エ.甲第1発明の「ワークピースWと前記検出子49との間には、接触時に通電するように電圧が印加してあり、前記ワークピースWの上面と前記検出子49とが接触して通電したときの信号により、検出器33の検出値をカウンター65に読み込み」は、「ワークピースW」と「検出子49」との接触を電気的に検出することを意味しており、そのための回路が「検出子49」及び「スタイラス51」に接続されていることは明らかであるから、本件訂正発明1の「当該接触体に接続された接触検出回路とを備え」に相当し、また、「当該接触検出回路で接触体と被加工物との接触を電気的に検出する」に相当する。

オ.甲第1発明の「ワークピース寸法測定装置」は、「前記ワークピースWの上面位置を表示する」ことによってワークピースの寸法を測定しているから、本件訂正発明1の「位置検出器」に相当する。

カ.甲第1発明の「非磁性の部材」は、本件訂正発明1の「非磁性材」に相当し、甲第1発明の「前記スタイラス51」「が、通電性が良好で非磁性の部材からなる」は、本件訂正発明1の「前記柄杆が非磁性材で製作され」に相当する。

キ.甲第1発明の「前記検出子49が、通電性が良好で非磁性の部材からなる」と、本件訂正発明1の「前記球体がタングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材である」とは、「球体が非磁性材である」点で共通する。

ク.以上のことをまとめると、本件訂正発明1と甲第1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「電気的に絶縁された状態で所定の安定位置を保持する微小移動可能な接触体と、当該接触体に接続された接触検出回路とを備え、当該接触検出回路で接触体と被加工物との接触を電気的に検出する位置検出器において、接触体が接触部である先端の球体と当該球体を本体から離れた位置に保持する細長い柄杆とを含む接触針であり、前記柄杆が非磁性材で製作され、前記球体が非磁性材である位置検出器。」

(相違点1)
本件訂正発明1では、「球体」の「非磁性材」は、「タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材」であるのに対し、甲第1発明では、「球状の検出子49」(本件訂正発明1の「球体」に相当する。)の「非磁性の部材」(本件訂正発明1の「非磁性材」に相当する。)は、「通電性が良好」とされているだけで、材質が特定されていない点。

(2)相違点1についての判断
本件訂正発明1の「球体」の「非磁性材」は、「タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材」であるから、「タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加えた混合物を、他の成分を添加することなく、球形の型に入れて液相焼結する」という製造方法(本件製造方法)によって製造されたものであると認められる。したがって、物性に影響を与える量の第3成分は添加されていないし、また、混合物を型に入れた後は、外界との間で成分の加除が不可能であるから、焼結中の脱炭素処理も行われていない。
一方、甲第2超硬合金は、「WC粉末にNiを結合材として混合して焼結した超硬合金であって、」「常温で非磁性の超硬合金」であるから、「タングステンカーバイトの微粉末に」「ニッケルを結合材として加え、」「ニッケルを溶融及び当該混合物を」「焼結」したものである点で、本件訂正発明1の「球体」の「非磁性材」と共通する。
しかし、甲第2超硬合金は、非磁性化のために「合金の含有炭素量を少なく」することが必要不可欠であり、具体的には、「WC粉末にW粉末を添加する」、「WC粉末として、少量のW_(2)Cを含むため含有炭素量が普通より少ないものを用いる」及び「脱炭雰囲気中で焼結する」のいずれかの方法で「合金の含有炭素量を少なく」しなければならない。
そのうち、「WC粉末にW粉末を添加する」ことは、物性に影響を与える量の第3成分を添加することに該当することが明らかである。また、「少量のW_(2)Cを含むため含有炭素量が普通より少ないものを用いる」ことも、非磁性化に必要な「少量のW_(2)C」をあらかじめ「WC粉末」に加えておくことを意味するから、物性に影響を与える量の第3成分を添加することに該当する。さらに、「脱炭雰囲気中で焼結する」ことは、焼結中に脱炭素処理を行うことに該当する。
したがって、甲第2超硬合金は、本件訂正発明1の「球体」の「非磁性材」、すなわち、「タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材」に該当しない。
そうすると、甲第1発明の「球状の検出子49」の「非磁性の部材」として甲第2超硬合金を採用することが、たとえ当業者にとって容易に思い付くことであったとしても、甲第1発明の「球状の検出子49」の「非磁性の部材」として甲第2超硬合金を採用したものは、本件訂正発明1の相違点1に係る構成を備えるとはいえない。

(3)請求人の主張について
請求人は、本件製造方法によって本件訂正発明1の「非磁性材」である超硬合金が得られるとすれば、結局は何らかの方法により含有炭素量を減らしていると理解せざるを得ないと主張する。
しかし、本件訂正発明1の「非磁性材」は、本件製造方法によって製造されたものである以上、含有炭素量を減らしていると認めることはできない。
また、請求人は、タングステンカーバイトの微粉末に結合材として加えるニッケルの成分比(4?16%)については、単なる周知の成分比の適用であり、型内で結合材を溶融及び球形に焼結して超硬を得る製法及び転動させながら研磨する製法については、いずれも単なる周知の製法の適用にすぎないと主張する。
しかし、これらのことは、甲第2超硬合金が本件訂正発明1の「球体」の「非磁性材」に該当しないという認定を左右するものではない。

(4)本件訂正発明1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲第1号証及び甲第2号証の各刊行物に記載された発明と周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると認めることはできない。

3.本件訂正発明2について
(1)対比
甲第1発明の「スタイラス51」、「球状の検出子49」、「ワークピース寸法測定装置」及び「下端部に球状の検出子49を備えたスタイラス51」は、それぞれ、本件訂正発明2の「細長い柄杆」、「球体」、「位置検出器」及び「細長い柄杆とその一端に固定された球体とを備え」る「接触針」に相当する。
甲第1発明の「非磁性の部材」は、本件訂正発明2の「非磁性材」に相当し、甲第1発明の「前記検出子49が、通電性が良好で非磁性の部材からなる」と、本件訂正発明2の「前記球体がタングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材で製作され」とは、「前記球体が非磁性材で製作され」る点で共通する。
甲第1発明の「前記スタイラス51」「が、通電性が良好で非磁性の部材からなる」と、本件訂正発明2の「前記柄杆がベリリューム銅を時効硬化処理した非磁性材で製作されている」とは、「前記柄杆が非磁性材で製作されている」点で共通する。
したがって、本件訂正発明2と甲第1発明の「下端部に球状の検出子49を備えたスタイラス51」との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「細長い柄杆とその一端に固定された球体とを備え、前記球体が非磁性材で製作され、前記柄杆が非磁性材で製作されている、位置検出器の接触針。」

(相違点2)
本件訂正発明2では、「球体」の製作に用いる「非磁性材」は、「タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材」であるのに対し、甲第1発明の「下端部に球状の検出子49を備えたスタイラス51」(本件訂正発明2の「接触針」に相当する。)では、「球状の検出子49」(本件訂正発明2の「球体」に相当する。)の「非磁性の部材」(本件訂正発明2の「非磁性材」に相当する。)は、「通電性が良好」とされているだけで、材質が特定されていない点。

(相違点3)
本件訂正発明2では、「柄杆」の製作に用いる「非磁性材」は、「ベリリューム銅を時効硬化処理した非磁性材」であるのに対し、甲第1発明の「下端部に球状の検出子49を備えたスタイラス51」では、「スタイラス51」(本件訂正発明2の「柄杆」に相当する。)の「非磁性の部材」は、「通電性が良好」とされているだけで、材質が特定されていない点。

(2)相違点2及び3についての判断
ア.相違点2について
相違点2は、相違点1と同一である。したがって、相違点1について上記2.(2)で述べたことがそのまま当てはまる。すなわち、甲第1発明の「下端部に球状の検出子49を備えたスタイラス51」において、「球状の検出子49」の「非磁性の部材」として甲第2超硬合金を採用したものは、本件訂正発明2の相違点2に係る構成を備えるとはいえない。

イ.相違点3について
甲第5号証刊行物には、三次元座標測定装置に用いる接触スタイラスプローブ(上記1.(3)ア.及びイ.)について、その非磁性かつ導電性のスタイラス管の材料を、高度の曲げ弾性を備えた金属、具体的にはオーステナイト系ステンレス鋼、チタン、チタン合金又はベリリウム銅合金とするという技術事項が記載されている(上記1.(3)エ.)。
また、本件特許の出願日より6年以上前(1992年(平成4年)11月1日)に発行された一般的な技術文献である甲第7号証刊行物に記載があることから判断して、ベリリウム銅合金を時効処理して強度を増すことは、本件訂正発明2の特許出願前に、当業者に周知の事項であると認められる。
そして、甲第1発明の「下端部に球状の検出子49を備えたスタイラス51」と、甲第5号証刊行物に記載された「接触スタイラスプローブ」とは、対象物との接触の電気的検出に用いられる点で共通しているから、「スタイラス51」の材料をベリリウム銅合金とすることは、甲第5号証刊行物に記載された技術事項に基づき、当業者が容易に思い付くことである。その際、ベリリウム銅合金を時効硬化処理することは、当業者が必要に応じて適宜行い得る設計事項にすぎない。

(3)本件訂正発明2についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明2は、甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証及び甲第7号証の各刊行物に記載された発明と周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると認めることはできない。

4.本件訂正発明3について
(1)対比
甲第1発明の「球状の検出子49」、「ワークピース寸法測定装置」及び「下端部に球状の検出子49を備えたスタイラス51」は、それぞれ、本件訂正発明3の「球体」、「位置検出器」及び「接触針」に相当する。また、甲第1発明の「球状の検出子49」は、本件訂正発明3の「接触部材」にも相当する。
甲第1発明の「非磁性の部材」は、本件訂正発明3の「非磁性材」に相当し、甲第1発明の「前記検出子49が、通電性が良好で非磁性の部材からなる」と、本件訂正発明3の「タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材で製作された球体」とは、「非磁性材で製作された球体」である点で共通する。
甲第1発明の「下端部に球状の検出子49を備えたスタイラス51」と、本件訂正発明3の「球体であって、その周面に柄杆の先端に螺合する雄ネジが接合されている」とは、「球体であって、柄杆の先端に設けられる」点で共通する。
したがって、本件訂正発明3と甲第1発明の「球状の検出子49」との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「非磁性材で製作された球体であって、柄杆の先端に設けられる、位置検出器の接触針の接触部材。」

(相違点4)
本件訂正発明3では、「球体」の製作に用いる「非磁性材」は、「タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材」であるのに対し、甲第1発明の「球状の検出子49」(本件訂正発明3の「球体」に相当する。)では、その「非磁性の部材」(本件訂正発明3の「非磁性材」に相当する。)は、「通電性が良好」とされているだけで、材質が特定されていない点。

(相違点5)
本件訂正発明3では、球体を柄杆の先端に設けるために、球体の「周面に柄杆の先端に螺合する雄ネジが接合されている」のに対し、甲第1発明の「球状の検出子49」は、どのようにして「スタイラス51」(本件訂正発明3の「柄杆」に相当する。)の下端部に設けるかが明らかでない点。

(2)相違点4及び5についての判断
ア.相違点4について
相違点4は、相違点1と同一である。したがって、相違点1について上記2.(2)で述べたことがそのまま当てはまる。すなわち、甲第1発明の「球状の検出子49」の「非磁性の部材」として甲第2超硬合金を採用したものは、本件訂正発明3の相違点4に係る構成を備えるとはいえない。

イ.相違点5について
甲第1発明の「球状の検出子49」と、甲第8号証刊行物に記載された「鋼球9」とは、柄杆(甲第1発明の「スタイラス51」、甲第8号証刊行物記載の「接触子7」)の先端に設けられる球状部材である点で共通し、先端に球状部材を設けた柄杆が、対象物(甲第1発明の「ワークピースW」、甲第8号証刊行物記載の「被測定物」)との接触の電気的検出に用いられる点でも共通している。
したがって、甲第1発明の「球状の検出子49」を「スタイラス51」の下端部に固定するために、「球状の検出子49」に雄ねじを設け、その雄ねじを「スタイラス51」にねじ込むことは、甲第8号証刊行物に記載された「被測定物との接触を電気的に検出する接触プローブの接触子7の先端に、鋼球9に設けられた雄ねじ8をねじ込むことによって、前記鋼球9を前記接触子7の先端に固定する」という技術事項(上記1.(5)イ.)に基づいて、当業者が容易に思い付くことである。その結果、甲第1発明の「球状の検出子49」の周面に、「スタイラス51」(本件訂正発明3の「柄杆」に相当する。)の先端に螺合する雄ねじが接合されることは、明らかである。

(3)本件訂正発明3についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明3は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第8号証の各刊行物に記載された発明と周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。

第9 むすび
以上に検討したとおり、本件訂正明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。したがって、本件特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
位置検出器及びその接触針
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に絶縁された状態で所定の安定位置を保持する微小移動可能な接触体(5)と、
当該接触体に接続された接触検出回路(3、4)とを備え、
当該接触検出回路で接触体(5)と被加工物との接触を電気的に検出する位置検出器において、
接触体(5)が接触部である先端の球体(16)と当該球体を本体から離れた位置に保持する細長い柄杆(17)とを含む接触針であり、前記柄杆が非磁性材で製作され、
前記球体がタングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材であることを特徴とする、位置検出器。
【請求項2】
細長い柄杆(17)とその一端に固定された球体(16)とを備え、
前記球体がタングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材で製作され、前記柄杆がベリリューム銅を時効硬化処理した非磁性材で製作されている、位置検出器の接触針。
【請求項3】
タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材で製作された球体(16)であって、その周面に柄杆(17)の先端に螺合する雄ネジ(18)が接合されている、位置検出器の接触針の接触部材。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、接触により工作機械の工具ないし工具取付軸と被加工物との相対位置を検出する位置検出器及びその接触針に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
工作機械に取付けられた被加工物の位置を接触により検出する位置検出器は、移動可能かつ所定の安定位置に付勢して保持された接触体を備えており、本体が工作機械の工具ホルダに装着されるものと、本体が磁石等により被加工物に装着されるものとがある。
【0003】
前者の例は図2に示されており、本体1に収納されたプラスチックケース2に電池3が収納され、LED4のアノードが電池3の陽極に、カソードが本体1に接続されており、接触針5は、その円板状の基部6を絶縁体7を介して電気的に絶縁した状態でバネ8により支持杆9に押接して、本体1に装着されている。支持杆9は本体1に螺合されており、これを螺進退させることにより接触針5の位置を微調整する。接触針の基部6は電池3の陰極にリード線11で接続されている。このように構成された位置検出器は、本体1を工作機械の工具ホルダ12に装着して接触針5を被加工物13に接触させると、工作機械を通る電気回路が閉成されてLED4が点灯し、被加工物13の位置が検出される。
【0004】
後者の例は、図4に示されており、本体1の上部に電気的に絶縁された状態で下方に移動自在かつ上方にバネ8で付勢されて突出する接触板5が設けられており、この接触板5の上端は本体1の底面14と平行な平面とされ、この接触板5と本体1とはLED4と電池3とを直列接続した導線11で接続されている。このように構成された位置検出器は、その本体1を被加工物13に取付けたあと、工具15を移動させて接触板5に当接させると、工作機械を通る電気回路が閉成されてLED4が点灯し、被加工物の位置が検出される。
【0005】
以上のように、この種の位置検出器の接触体は、電気導体であること、安価であること、必要な硬さと耐摩耗性を備えていること等が要求されるので、焼き入れ性が良好で焼き入れ焼きもどしにより優れた機械的性質を発揮するベアリング鋼が多く用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記のような位置検出器で被加工物の位置を検出する場合、回路が開閉されて接触体が通電状態と非通電状態とを繰り返すことになり、接触体が次第に磁気を帯びてくる。このため切削加工等で生じた切粉が接触体に付着し、位置検出時に接触体と被加工物や工具との間に介在して測定誤差を生ずる。また接触体が細長い接触針であるときは、接触針を被加工物の側方から接近させたとき磁力で接触針が引かれて僅かに傾き、これによる誤差を生ずる。
【0007】
接触体をオーステナイト系ステンレス鋼やジュラルミンなどの非磁性金属材で製造してやれば、上記問題を解決できるが、非磁性金属材は硬度が低く、被加工物や工具との繰り返し当接離隔により摩耗や変形による測定誤差を生じる。
【0008】
本発明は、耐久性があり測定誤差を生じない非磁性の接触体を得ることにより、正確な位置検出を可能にすることを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明に係る位置検出器は、接触体(5)が接触部である先端の球体(16)と当該球体を本体から離れた位置に保持する細長い柄杆(17)とを含む接触針であり、前記柄杆が非磁性材で製作され、前記球体がタングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材であることを特徴とする。上記接触体5は、電気的に絶縁された状態で移動可能かつ所定の安定位置に付勢して装着されている。接触体5は接触検出回路3、4に接続されており、接触体5が工作機械の被加工物13を介して電気的に導通されたときに接触検出回路3、4が開閉されて、被加工物との相対位置が検出される。
【0010】
本発明に係る位置検出器は、接触体(5)が接触部である先端の球体(16)と当該球体を本体から離れた位置に保持する細長い柄杆(17)とを含む接触針であり、前記柄杆が非磁性材で製作され、前記球体がタングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材であることを特徴とする。
【0011】
上記球体16は、タングステンカーバイトの微粉末に4?16%、最適には6%前後のニッケルを混入して高温で焼結し、溶融状態のものを成形したあと転動させながら研磨することにより得られる。柄杆を製作する非磁性材としてはオーステナイト系ステンレス鋼、ジュラルミン、ベリリューム銅などを例示することができる。ベリリューム銅を時効硬化処理した材料は、機械的強度が高く変形しにくい。
【0012】
この出願の発明に係る位置検出器の接触針は、タングステンカーバイトの微粉末に4?16%のニッケルを結合材として加え、型内でニッケルを溶融及び当該混合物を球形に焼結し、その後に転動させながら研磨することで得られた非磁性材で製作された球体16と、ベリリューム銅を時効硬化処理した非磁性材で製作された細長い柄杆17とを備えている。球体16は、真円に成形したものにオーステナイト系ステンレス鋼の雄ネジ18を溶接や接着により接合し、柄杆17の先端に設けたネジ孔に螺合して固定する構造とすれば、交換可能であり、個別に供給できる。
【0013】
【作用】
接触体5を非磁性材で形成することにより、接触検出回路の開閉動作によって接触体が磁化するのを防止できる。そして接触体の接触部をタングステンカーバイト粉末に結合材としてニッケルを混入して焼結してなる非磁性材を用いることにより、接触部に高い硬度を付与することができ、接触部の摩耗や変形による位置検出精度の低下を防止できる。
【0014】
上記作用は、接触体が細長い柄杆を備えた接触針であるときに、磁力による柄杆の傾きが防止されるので、特に有効に発揮される。接触針の細長い柄杆は、外力による屈曲変形を受けやすいが、この柄杆の材料としてベリリューム銅を時効硬化処理した硬い材料を用いることにより、柄杆の屈曲変形による測定精度の低下も防止できる。また接触部を球体とすることにより、総ての方向からの正確な位置検出が可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1及び図2は本発明の第1実施例を示した図である。図2に示す位置検出器の全体構造については前述した。図1に示す接触針5は球体16と柄杆17とで形成されている。柄杆17は、ベリリューム銅を所定寸法に切削加工したあと約350度の温度で時効硬化処理をして製作されている。球体16は、タングステンカーバイトの微粉末に6%のニッケルを加えて高温下でニッケルを溶融してタングステンカーバイトと混合し、型内で球形に焼結したものの周面を研磨して真円とし、その周面の1ヶ所にSUS304の雄ネジ18を電気抵抗溶接して製作されている。
【0016】
SUS304は、基本的には非磁性であるが、加工中に磁化するので、機械加工後固溶化熱処理して非磁性に戻している。このようにして非磁性にしたSUS304などで柄杆17全体を製作することもできる。雄ネジ18は、スポット溶接などの電気抵抗溶接の他、エポキシ系等の接着剤で柄杆17に接着することもできる。接着する際は、球体の周面に放電加工で孔を設けて雄ネジをこの孔に嵌合した状態で接着するので好ましい。球体16は、雄ネジ18を柄杆17の先端に設けた軸方向の雌ネジ孔に螺合することにより、柄杆17の先端に固定される。
【0017】
柄杆17の基端は径大となっており、基端に設けた軸方向のネジ杆を絶縁体を介して本体に遊動かつ中立位置に付勢して設けられた円板の中心孔に螺合して、接触針5を本体1に電気的に絶縁された状態で装着する。
【0018】
図3及び図4は本発明の参考例を示したものである。この参考例の接触体は、オーステナイト系ステンレス鋼を下面中心に摺動軸を備えた円盤状に加工し、工具との接触部となる円盤上面にタングステンカーバイトに結合材としてニッケルを混入してなる非磁性材を焼結してその表面を研磨することにより製作されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の接触針の斜視図
【図2】第1実施例の位置検出器及びその測定方法を示す側面図
【図3】参考例の接触体の斜視図
【図4】参考例の位置検出器及びその測定方法を示す側面図
【符号の説明】
1 本体
3 電池
4 LED
5 接触体
12 工具取付軸
13 被加工物
15 工具
16 球体
17 柄杆
18 雄ネジ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2014-09-05 
出願番号 特願平11-100559
審決分類 P 1 113・ 536- ZA (G01B)
P 1 113・ 121- ZA (G01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 櫻井 仁  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 中塚 直樹
新川 圭二
登録日 2008-01-25 
登録番号 特許第4072282号(P4072282)
発明の名称 位置検出器及びその接触針  
代理人 大谷 嘉一  
代理人 山▲崎▼ 徹也  
代理人 西 孝雄  
代理人 西 孝雄  
代理人 北村 修一郎  
代理人 小池 眞一  
代理人 大谷 嘉一  

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