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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04R 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 取り消して特許、登録 H04R |
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管理番号 | 1306726 |
審判番号 | 不服2014-23754 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-11-21 |
確定日 | 2015-11-04 |
事件の表示 | 特願2011-502625「超音波トランスデューサ、その製造方法、および、それを用いた超音波探触子」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月10日国際公開、WO2010/100861、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年2月23日(優先権主張 平成21年3月5日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成25年9月27日付け拒絶理由通知に対して同年11月26日付けで手続補正がなされたが、平成26年8月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月21日付けで拒絶査定不服審判が請求されると共に手続補正がなされたものである。 第2 平成26年11月21日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年11月21日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 平成26年11月21日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲および明細書についてするもので、 本件補正前の特許請求の範囲が、 「【請求項1】 (a)基板と、 (b)前記基板上に形成された配線と、 (c)前記配線を覆うように形成された第1絶縁膜と、 (d)前記第1絶縁膜に形成した、前記配線に達する第1開口部に、導電膜を埋め込んで形成した第1の電気接続部と、 (e)前記第1絶縁膜上に形成した、前記第1の電気接続部に達する下部電極と、 (f)前記下部電極を覆うように形成された第2絶縁膜と、 (g)前記第2絶縁膜上に、上面から見て、前記下部電極と重なるように形成された空洞部と、 (h)前記空洞部を覆うように形成された第3絶縁膜と、 (i)前記第3絶縁膜上に、上面から見て、前記空洞部と重なるように形成された上部電極とを備えた超音波トランスデューサにおいて、 (j)前記第1の電気接続部が、上面から見て、前記空洞部と重ならない位置に配置されていることを特徴とする超音波トランスデューサ。 【請求項2】 (a)基板と、 (b)前記基板上に形成された配線と、 (c)前記配線を覆うように形成された第1絶縁膜と、 (d)前記第1絶縁膜に形成した、前記配線に達する複数の第1開口部に、導電膜を埋め込んで形成した複数の第1の電気接続部と、 (e)前記第1絶縁膜上に形成した、前記複数の第1の電気接続部に達する複数の下部電極と、 (f)前記複数の下部電極を覆うように形成された第2絶縁膜と、 (g)前記第2絶縁膜上に、上面から見て、前記複数の下部電極とそれぞれ重なるように形成された複数の空洞部と、 (h)前記複数の空洞部を覆うように形成された第3絶縁膜と、 (i)前記第3絶縁膜上に、上面から見て、前記複数の空洞部とそれぞれ重なるように形成された複数の上部電極とを備えた超音波トランスデューサにおいて、 (j)前記複数の第1の電気接続部が、上面から見て、前記複数の空洞部とそれぞれ重ならない位置に配置されていることを特徴とする超音波トランスデューサ。 【請求項3】 請求項1または請求項2記載の超音波トランスデューサにおいて、 前記基板が、半導体基板である超音波トランスデューサ。 【請求項4】 請求項1または請求項2記載の超音波トランスデューサにおいて、さらに、 (k)第2の電気接続部を備え、 (l)前記第1絶縁膜の第2の開口部を通して、前記第2の電気接続部の一端が前記上部電極と接続され、他端が前記基板上に形成された前記配線と接続されている超音波トランスデューサ。 【請求項5】 請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の超音波トランスデューサを用いた超音波探触子。 【請求項6】 (a)基板上に配線を形成する工程と、 (b)前記配線を覆う第1絶縁膜を形成する工程と、 (c)前記第1絶縁膜を平坦化する工程と、 (d)前記第1絶縁膜に前記配線に達する第1開口部を形成する工程と、 (e)前記第1開口部に導電膜を埋め込み、電気接続部を形成する工程と、 (f)前記第1絶縁膜上に前記電気接続部に達する下部電極を形成する工程と、 (g)前記下部電極を覆うように第2絶縁膜を形成する工程と、 (h)前記第1絶縁膜上に、上面から見て、前記下部電極と重なるように、かつ、前記電気接続部と重ならない位置に犠牲層を形成する工程と、 (i)前記犠牲層を覆うように第3絶縁膜を形成する工程と、 (j)前記第3絶縁膜上に、上面からみて、前記犠牲層と重なるように上部電極を形成する工程と、 (k)前記上部電極および前記第3絶縁膜を覆う第4絶縁膜を形成する工程と、 (l)前記第3絶縁膜および前記第4絶縁膜を貫通して前記犠牲層に達する第2開口部を形成する工程と、 (m)前記第2開口部を利用して前記犠牲層を除去することにより空洞部を形成する工程と、 (n)前記第2絶縁膜と前記犠牲層に達する開口部を覆うように第5絶縁膜を形成し、前記空洞部を封止する工程とを備える超音波トランスデューサの製造方法。 【請求項7】 請求項6記載の超音波トランスデューサの製造方法において、 前記第1開口部に導電膜を埋め込み、電気接続部を形成する工程と、前記電気接続部上に下部電極を形成する工程とを、一つの工程で行うことを特徴とする超音波トランスデューサの製造方法。 【請求項8】 請求項6または請求項7記載の超音波トランスデューサの製造方法において、 前記配線を形成する工程が、半導体基板上に前記配線を形成するものであることを特徴とする超音波トランスデューサの製造方法。」 であったところ、 本件補正の特許請求の範囲は、 「【請求項1】 (a)基板と、 (b)前記基板上に形成された複数の配線と、 (c)前記複数の配線を覆うように形成された第1絶縁膜と、 (d)前記第1絶縁膜に形成した、前記複数の配線の一つに達する第1開口部に、導電膜を埋め込んで形成した第1の電気接続部と、 (e)前記第1絶縁膜上に形成した、前記複数の配線の他の一つに達する第2開口部に、導電膜を埋め込んで形成した第2の電気接続部と、 (f)前記第1絶縁膜上に形成した、前記第1の電気接続部に達する下部電極と、 (g)前記下部電極を覆うように形成された第2絶縁膜と、 (h)前記第2絶縁膜上に、上面から見て、前記下部電極と重なるように形成された空洞部と、 (i)前記空洞部を覆うように形成された第3絶縁膜と、 (j)前記第3絶縁膜上に、上面から見て、前記空洞部と重なるように形成され、前記第2の電気接続部と電気的に接続された上部電極とを備えた超音波トランスデューサにおいて、 (k)前記第1の電気接続部および第2の電気接続部が、上面から見て、前記空洞部と重ならない位置に配置されていることを特徴とする超音波トランスデューサ。 【請求項2】 請求項1において、 前記第1絶縁膜は、前記第1の電気接続部および前記第2の電気接続部を覆うように形成され、前記下部電極は、前記第1絶縁膜と接することを特徴とする超音波トランスデューサ。 【請求項3】 (a)基板と、 (b)前記基板上に形成された配線と、 (c)前記配線を覆うように形成された第1絶縁膜と、 (d)前記第1絶縁膜に形成した、前記配線に達する複数の第1開口部に、導電膜を埋め込んで形成した複数の第1の電気接続部と、 (e)前記第1絶縁膜上に形成した、前記配線に達する複数の第2開口部に、導電膜を埋め込んで形成した複数の第2の電気接続部と、 (f)前記第1絶縁膜上に形成した、前記複数の第1の電気接続部に達する複数の下部電極と、 (g)前記複数の下部電極を覆うように形成された第2絶縁膜と、 (h)前記第2絶縁膜上に、上面から見て、前記複数の下部電極とそれぞれ重なるように形成された複数の空洞部と、 (i)前記複数の空洞部を覆うように形成された第3絶縁膜と、 (j)前記第3絶縁膜上に、上面から見て、前記複数の空洞部とそれぞれ重なるように形成され、前記第2の電気接続部と電気的に接続された複数の上部電極とを備えた超音波トランスデューサにおいて、 (k)前記複数の第1の電気接続部および第2の電気接続部が、上面から見て、前記複数の空洞部とそれぞれ重ならない位置に配置されていることを特徴とする超音波トランスデューサ。 【請求項4】 請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の超音波トランスデューサにおいて、 前記基板が、半導体基板である超音波トランスデューサ。 【請求項5】 請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の超音波トランスデューサにおいて、 さらに、 (l)第3の電気接続部を備え、 (m)前記第1絶縁膜の第2の開口部を通して、前記第3の電気接続部の一端が前記上部電極と接続され、前記第2の電気接続部を介して他端が前記基板上に形成された前記配線と接続されている超音波トランスデューサ。 【請求項6】 請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の超音波トランスデューサを用いた超音波探触子。 【請求項7】 (a)基板上に複数の配線を形成する工程と、 (b)前記複数の配線を覆う第1絶縁膜を形成する工程と、 (c)前記第1絶縁膜を平坦化する工程と、 (d)前記第1絶縁膜に前記複数の配線のそれぞれに達する第1開口部を形成する工程と、 (e)前記第1開口部に導電膜を埋め込み、第1の電気接続部を形成する工程と、 (f)前記第1絶縁膜上にそれぞれの前記第1の電気接続部に達する下部電極を形成する工程と、 (g)前記下部電極を覆うように第2絶縁膜を形成する工程と、 (h)前記第2絶縁膜上に、上面から見て、前記下部電極と重なるように、かつ、前記第1の電気接続部と重ならない位置に犠牲層を形成する工程と、 (i)前記犠牲層を覆うように第3絶縁膜を形成する工程と、 (j)前記第2絶縁膜および第3絶縁膜に前記第1の電気接続部に達する第2の開口部を形成する工程と、 (k)前記第3絶縁膜上に、上面からみて、前記犠牲層と重なるように上部電極を形成するとともに、前記上部電極を構成する導電膜を前記第2の開口部に埋め込んで前記第1の電気接続部と接続する第2の電気接続部を形成する工程と、 (l)前記上部電極および前記第3絶縁膜を覆う第4絶縁膜を形成する工程と、 (m)前記第3絶縁膜および前記第4絶縁膜を貫通して前記犠牲層に達する第3開口部を形成する工程と、 (n)前記第3開口部を利用して前記犠牲層を除去することにより空洞部を形成する工程と、 (o)前記第3開口部を覆うように前記第4絶縁膜上に第5絶縁膜を形成し、前記第3絶縁膜と前記犠牲層に達する位置まで前記第3開口部に前記第5絶縁膜を埋め込むことで前記空洞部を封止する工程とを備える超音波トランスデューサの製造方法。 【請求項8】 請求項7記載の超音波トランスデューサの製造方法において、 前記第1開口部に導電膜を埋め込み、第1の電気接続部を形成する工程と、前記第1の電気接続部上に下部電極を形成する工程とを、一つの工程で行うことを特徴とする超音波トランスデューサの製造方法。 【請求項9】 請求項7または請求項8記載の超音波トランスデューサの製造方法において、 前記配線を形成する工程が、半導体基板上に前記配線を形成するものであることを特徴とする超音波トランスデューサの製造方法。」 と補正された。 2.補正の適否 上記本件補正前の特許請求の範囲と本件補正の特許請求の範囲とを比較すると、以下の事がいえる。 (1)本件補正における請求項2は、補正前の特許請求の範囲に対応する請求項がなく、新たに追加された請求項である。 なお、審判請求書の第3頁7行目「請求項2は新たに請求項1の従属項として追加しています。」、同頁10?11行目「上記請求項2の追加に伴い、請求項番号を整序する補正を新請求項1-9としています。」からも、当該請求項2が新たに追加されたのは明らかである。 (2)本件補正における請求項5は、新たに「第3の電気接続部を備え」との発明特定事項を付加するものである。(本件補正前の特許請求の範囲には、「第1の電気接続部」及び「第2の電気接続部」しか記載されていなかったが、本件補正の特許請求の範囲には、「第1の電気接続部」、「第2の電気接続部」及び「第3の電気接続部」と電気接続部の構成が増えている。) 上記事項(1)は新たな請求項の追加であり、また、上記事項(2)は新たな構成事項の付加であるから、いずれも、特許法第17条の2第5項第1号ないし第4号に掲げる請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成26年11月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成25年11月26日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものである。 まず、請求項1に係る発明(上記「第2 1.」の本件補正前の請求項1を参照。以下「本願発明」という。)について検討する。 2.原査定の理由の概要 請求項1ないし8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・備考 CMUTにおいて、電気接続部が上面から見て、空洞部と重ならない位置に配置することは、周知技術であると認められる(例えば、引用文献2、3、特開2008-099036号公報)。 したがって、引用文献1に記載された発明の下部電極の電気接続部を、上面から見て空洞部と重ならない位置に配置するように半導体基板上に形成することに格別の困難性は認められない。 したがって、出願人の主張は採用することができず、補正後の請求項1-8に係る発明は、引用文献1-3に記載された発明、及び周知技術より当業者が容易に想到し得ることである。 また、補正後の請求項1-8に係る発明の効果は、引用文献1-3に記載された発明、及び周知技術の各効果の総和に比べ、格別のものとは認められない。 引用文献1:特開2006-211185号公報(以下、「引用例1」という。) 引用文献2:特開2007-097760号公報(以下、「引用例2」という。) 引用文献3:特開2007-229327号公報(以下、「引用例3」という。) 周知技術 :特開2008-099036号公報(以下、「引用例4」という。) 3.当審の判断 (1)引用例の記載事項 引用例1には、次の事項が図面とともに記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) ア.「【0003】 これまでは、圧電体の振動を利用した超音波トランスデューサが用いられてきたが、近年のMEMS技術の進歩により、振動部をシリコン基板上に作製した容量検出型超音波トランスデューサ(CMUT:Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer)が実用化を目指して盛んに開発されている。」 イ.「【0032】 図3(a)は図2のA-A断面を示しており、図3(b)は図2のB-B断面を示している。図3(a)および図3(b)に示すように、半導体基板に形成された配線層301は、層間絶縁膜303に形成されたビア302を介してCMUTの下部電極304(図2の下部電極201に対応)と上部電極307(図2の上部電極203に対応)へ電気接続している。下部電極304の上層には空洞部305(図2の空洞部202に対応)が形成されている。下部電極304の大きさは空洞部305の大きさよりも大きくなるようにしている。空洞部305を囲むように絶縁膜(メンブレン)308を形成し、絶縁膜308の上層に上部電極307が形成されている。上部電極307と配線層301はプラグ306を介して電気接続されている。上部電極307の上層には絶縁膜309と絶縁膜310が形成されている。また、絶縁膜308および絶縁膜309にはこれらの膜を貫通する孔311が形成されている。この孔311は、空洞部305を形成するために形成されたものであり、空洞部305の形成後、絶縁膜310によって埋め込まれている。 【0033】 本実施の形態1の特徴は、図2および図3(a)、(b)に示すように、下部電極304の大きさを空洞部305の大きさよりも大きくなるようにした点にある。このように構成することにより、下部電極304の段差の影響を受けずに空洞部305を形成することができる。つまり、下部電極304が空洞部305に比べて小さい場合、空洞部305には段差が生じる。すなわち、空洞部305を覆っている絶縁膜308に段差が生じて、空洞部305の内部に角部(突起)が形成される。このような角部には、応力ストレスがかかりやすいため、割れたり欠けたりしやすい。このため、絶縁膜308が破損し、CMUTの動作信頼性を低下させる原因となる。しかし、本実施の形態1では、下部電極304の大きさを空洞部305の大きさよりも大きくしているので、空洞部305に段差は生じない。したがって、絶縁膜308にも角部が生じない。すなわち、本実施の形態1では、絶縁膜308に角部が発生しないので、応力の局所集中を防止でき、応力を緩和することができる。このため、CMUTの動作信頼性を向上させることができる。」 ウ.「【0035】 まず、図4(a)、(b)に示すように、窒化チタン膜とアルミニウム合金膜と窒化チタン膜の積層して配線401を形成する。そして、この配線401上にプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により酸化シリコン膜(層間絶縁膜)402を約700nm堆積させる。その後、酸化シリコン膜402の上面をCMP法により平坦化を行う。次に、フォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術により、配線401と後述するCMUTとを電気的に接続するための孔403を開口する。その後、スパッタリング法により開口部403を埋め込むことができる膜厚のタングステン膜を堆積する。そして、酸化シリコン膜上に堆積した余分なタングステン膜をCMP法により除去する。なお、本実施の形態1では、CMP法を2回使用しているが、この段階では、酸化シリコン膜402の厚さの制御は通常のLSI製造技術に用いられている程度でよい。」 ・上記アによれば、引用例1に記載された発明は、容量検出型超音波トランスデューサに係わるものである。 ・上記イによれば、配線層301は、半導体基板に形成されている。また、図3(a)を参照すると、層間絶縁膜303は、配線層301を覆うように形成されているといえる。 ・上記イ及びウによれば、ビア302は、層間絶縁膜303の開口部にタングステン膜を埋め込んで形成されている。また、図3(a)を参照すると、下部電極304は、層間絶縁膜303上に形成され、ビア302に達しているといえる。 ・上記イによれば、空洞部305は、下部電極304の上層に形成されている。また、絶縁膜308は、空洞部305を囲むように形成されている。また、上部電極307は、絶縁膜308の上層に形成されている。 以上の点を踏まえて、上記記載事項アないしウ、及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「半導体基板と、 前記半導体基板上に形成された配線層301と、 前記配線層301を覆うように形成された層間絶縁膜303と、 前記層間絶縁膜303に形成された開口部にタングステン膜を埋め込んで形成されたビア302と、 前記層間絶縁膜303上に形成された、前記ビア302に達する下部電極304と、 前記下部電極304の上層に形成された空洞部305と、 前記空洞部305を囲むように形成された絶縁膜308と、 前記絶縁膜308の上層に形成された上部電極307とを備えた容量検出型超音波トランスデューサ。」 また、引用例2には、次の事項が図面とともに記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) エ.「【0046】 本発明にかかる静電容量型超音波振動子は、半導体基板上の静電容量型超音波振動子の近傍に、直流高電圧発生手段、さらには、半導体スイッチ、チャージアンプ等のデバイスを一体的に配置することにより、静電容量型超音波振動子装置の小型化を実現する。 ・・・(中略)・・・ 【0086】 図6において、昇圧回路領域は、シリコン基板71、表面酸化膜72、下部電極73,74、高誘電率誘電体75,76、上部電極77,78、CMOSインバータ回路部(CMOSFET+ダイオード)79、接地配線80、オーミックコンタクト用拡散領域81,88、MOSFETソース領域82、MOSFETドレイン領域83、MOSFETチャンネル領域84、MOSFETゲート配線85、ダイオードP拡散領域86、N拡散領域87、ダイオード領域89から構成される。この構成について詳述する。 【0087】 同図において、高誘電率誘電体又は強誘電体を用いた大容量薄膜コンデンサ75(図2のコンデンサC1に相当する),76(図2のコンデンサCoutに相当する)と、表面酸化膜72を形成したシリコン基板71、その上に形成した下部電極73,74及び上部電極77,78が形成されている。」 また、引用例3には、次の事項が図面とともに記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) オ.「【0040】 本発明にかかる実施形態について、以下に説明する。 <第1の実施形態> 図2は、本実施形態における静電容量型超音波振動子の断面図を示す。静電容量型超音波振動子11は、表面酸化したシリコン(Si)基板12、メンブレン支持部13、下部電極14、上部電極15、メンブレン16、キャビティ(空隙部)17、接地線配線18、信号線配線孔19、信号線基板貫通配線20、信号線電極パッド21、接地電極パッド22から構成されている。 ・・・(中略)・・・ 【0043】 メンブレン支持部13間における表面酸化したシリコン基板12の表面には下部電極14が配設されている。シリコン基板12には、信号線配線孔19が設けられ、その中に内壁面が絶縁処理された信号線基板貫通配線20が設けられている。信号線基板貫通配線20と下部電極14とは電気的に導通している。信号線基板貫通配線20の他端は、シリコン基板12の下面に設けられた信号線電極パッド21と導通している。これにより、信号線電極パッド21は、下部電極14についての半導体基板12の下面側の端子となる。」 また、引用例4には、次の事項が図面とともに記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) カ.「【0032】 本実施形態の振動子セル100は、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の技術範囲に属するものである。振動子セル100は、シリコン基板101上にマイクロマシニング技術により形成された静電容量型の超音波トランスデューサであり、c-MUT(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer)と称される。本実施形態では、振動子セル100は、半導体プロセスを用いて形成された平行平板電極により構成されるものであり、積層構造を有する。 ・・・(中略)・・・ 【0037】 シリコン基板101のセル形成面上、すなわち第1絶縁膜102上には、上方から見て略円形状に、導電層である下部電極110が形成されている。下部電極110は、Mo(モリブデン)をスパッタリングにより成膜しパターニングすることで形成される。下部電極110は、上方から見て隣接する4つの下部電極110同士が、略X字形状の下部電極配線111により電気的に接続されている。 ・・・(中略)・・・ 【0039】 上方から見て略X字形状の下部電極配線111の、配線の交差部には、シリコン基板101を貫通して形成されたウェハ貫通電極112が設けられている。ウェハ貫通電極112は、シリコン基板101とは電気的に絶縁されており、裏面絶縁膜109上に形成された信号電極パッド113に電気的に接続されている。 ・・・(中略)・・・ 【0041】 下部電極110上には、該下部電極110を被覆するように、電気絶縁性を有する第2絶縁膜103が形成されている。第2絶縁膜103は、本実施形態ではシリコン酸化膜であり、プラズマCVD法により成膜される。なお、第2絶縁膜103は、シリコン窒化膜、窒化ハフニウム(HfN)、ハフニウム酸窒化物(HfON)等であってもよい。」 (2)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「半導体基板」は、本願発明の「基板」に相当する。 b.引用発明の「配線層301」は、本願発明の「配線」に相当し、半導体基板上に形成されたものであるから、本願発明と引用発明とは、「前記基板上に形成された配線」で共通する。 c.引用発明の「層間絶縁膜303」は、本願発明の「第1絶縁膜」に相当し、配線層301を覆うように形成されたものであるから、本願発明と引用発明とは、「前記配線を覆うように形成された第1絶縁膜」で共通する。 d.引用発明の「開口部」、「タングステン膜」、「ビア302」は、本願発明の「第1開口部」、「導電膜」、「第1の電気接続部」にそれぞれ相当する。そして、引用発明の「ビア302」は、層間絶縁膜303に形成された開口部にタングステン膜を埋め込んで形成されたものであるから、本願発明と引用発明とは、「前記第1絶縁膜に形成した、前記配線に達する第1開口部に、導電膜を埋め込んで形成した第1の電気接続部」で共通する。 e.引用発明の「下部電極304」は、本願発明の「下部電極」に相当し、層間絶縁膜303上に形成されたビア302に達するものであるから、引用発明と本願発明とは、「前記第1絶縁膜上に形成した、前記第1の電気接続部に達する下部電極」で共通する。 f.引用発明には、本願発明の「下部電極を覆うように形成された第2絶縁膜」に相当する構成を備えていない。 g.引用発明の「空洞部305」は、本願発明の「空洞部」に相当し、下部電極304の上層に形成され、上面から見て下部電極304と重なるように形成されているから、引用発明と本願発明とは、「上面から見て、前記下部電極と重なるように形成された空洞部」で共通する。 h.引用発明の「絶縁膜308」は、本願発明の「第3絶縁膜」に相当し、空洞部305を囲むように形成されており、更に絶縁膜308が空洞部305を覆ように形成されているから、引用発明と本願発明とは、「前記空洞部を覆うように形成された第3絶縁膜」で共通する。 i.引用発明の「上部電極307」は、本願発明の「上部電極」に相当し、絶縁膜308の上層に形成されており、絶縁膜308上に上面から見て空洞部305と重なるように形成されているから、引用発明と本願発明とは、「前記第3絶縁膜上に、上面から見て、前記空洞部と重なるように形成された上部電極」で共通する。 j.引用発明の「容量検出型超音波トランスデューサ」は、本願発明の「超音波トランスデューサ」に相当する。但し、引用発明には、本願発明の「第1の接続部が、上面から見て、空洞部と重ならない位置に配置されている」構成がない。 そうすると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「基板と、 前記基板上に形成された配線と、 前記配線を覆うように形成された第1絶縁膜と、 前記第1絶縁膜に形成した、前記配線に達する第1開口部に、導電膜を埋め込んで形成した第1の電気接続部と、 前記第1絶縁膜上に形成した、前記第1の電気接続部に達する下部電極と、 上面から見て、前記下部電極と重なるように形成された空洞部と、 前記空洞部を覆うように形成された第3絶縁膜と、 前記第3絶縁膜上に、上面から見て、前記空洞部と重なるように形成された上部電極とを備えた超音波トランスデューサ。」 <相違点1> 本願発明は、「前記下部電極を覆うように形成された第2絶縁膜」を備えているのに対し、引用発明は、そのような絶縁膜を備えていない点。 <相違点2> 本願発明は、「前記第1の電気接続部が、上面から見て、前記空洞部と重ならない位置に配置されている」のに対し、引用発明は、ビア(本願発明の「第1の電気接続部」に相当。)が空洞部と重なっている点。 (3)判断 まず、上記相違点1について検討する。 静電容量型超音波トランスデューサにおいて、下部電極上に該下部電極を被覆するように絶縁膜を形成することは、例えば引用例4(上記カを参照。)に記載されているように周知の技術である。 そうすると、引用発明において、引用例4に記載された周知の技術事項を適用することにより相違点1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 次に、上記相違点2について検討する。 引用例1には、ビア302(本願発明の「第1の電気接続部」に相当。)が上面から見て空洞部305と重ならない位置に配置されていることについては記載されていないし、また、示唆する記載もない。 引用例2には、静電容量型超音波振動子装置の昇圧回路における大容量薄膜コンデンサに関する発明が記載されており、静電容量型超音波振動子における下部電極の電気接続についての記載はない。 引用例3(上記オを参照。)には、シリコン基板12に設けられた信号線配線孔19が上面から見て、キャビティ(空隙部)17と重ならない位置に配置された静電容量型超音波振動子が記載されている。 引用例4(上記カを参照。)には、隣接する4つの振動子セルの下部電極同士を接続する略X字形状の下部電極配線の交差部にシリコン基板を貫通して形成されたウェハ貫通電極を上面から見てキャビティ(空隙層)と重ならない位置に配置された超音波トランスデューサが記載されている。 ここで、本願発明は、「前記第1の電気接続部が、上面から見て、前記空洞部と重ならない位置に配置されている」との発明特定事項により、下部電極への電気接続部が、空洞部と上面から見て接続部が重ならない配置となるため、空洞部の変形や、空洞部を囲む絶縁膜厚さの不均一性を抑制し、さらには、メンブレンの表面形状の平坦性の劣化も抑制できる(本願明細書【0029】)という特段の効果を奏するものである。 しかしながら、引用例3、引用例4には、(第1開口部に導電膜を埋め込んで形成した)第1の電気接続部を上面から見て空洞部と重ならない位置に配置することによる具体的な作用効果は記載されておらず、引用例1も引用例3及び引用例4も本願発明の課題が認められないので組み合わせる動機付けを何ら見出すことはできない。 よって、相違点2は、引用例1ないし4から容易になし得た事項ではない。 したがって、本願発明は、原査定の拒絶理由を検討しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 そして、請求項2ないし5は、本願発明をさらに限定した発明であり、請求項6は実質的に請求項1とカテゴリが相違するものであり、請求項7,8は請求項6をさらに限定したものであるから、本願の請求項2ないし8に係る発明も、請求項1と同様に、引用例1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)むすび 以上のとおり、本願の請求項1ないし8に係る発明は、引用例1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2015-10-20 |
出願番号 | 特願2011-502625(P2011-502625) |
審決分類 |
P
1
8・
57-
WY
(H04R)
P 1 8・ 121- WY (H04R) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 渡邊 正宏 |
特許庁審判長 |
森川 幸俊 |
特許庁審判官 |
関谷 隆一 酒井 朋広 |
発明の名称 | 超音波トランスデューサ、その製造方法、および、それを用いた超音波探触子 |
代理人 | ポレール特許業務法人 |