• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21L
管理番号 1306848
審判番号 不服2014-7667  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-24 
確定日 2015-10-14 
事件の表示 特願2010-538464「溶接タイプのラウンド・チェーンおよびプロファイル・チェーンの製造方法、ラウンド・チェーンまたはプロファイル・チェーン用のチェーン・リンク、ならびに、同種のチェーン・リンクから作られるラウンド・チェーンまたはプロファイル・チェーン」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月 2日国際公開、WO2009/080289、平成23年 3月 3日国内公表、特表2011-506100〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は、2008年(平成20年)12月18日(パリ条約による優先権主張 2007年12月20日外国庁受理、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成23年11月18日に手続補正書が提出され、平成25年1月24日付けで拒絶理由が通知され、同年7月29日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月18日付けで拒絶査定がなされた。その後、平成26年4月24日付けで、本件拒絶査定不服審判が請求された。

2. 本願発明
本願特許請求の範囲の請求項1ないし16に係る発明は、平成25年7月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項8には、次のとおり記載されている。

「【請求項8】
向かい合った状態で離された面を備え、かつ摩擦溶接によって連結される2つのチェーン・リンク部品(5a、5b)を備えたラウンド・チェーンまたはプロファイル・チェーン(3)のチェーン・リンクであって、チェーン・リンク部品(5a、5b)がチェーン・リンク(1)の前記離された面内に存在する溶接面に沿って線形摩擦溶接(F)により互いに連結されることを特徴とするチェーン・リンク。」(以下、本願請求項8に係る発明を「本願発明」という。)」

3. 引用文献
原審の拒絶理由に引用され、本願優先日前に頒布された以下の刊行物には、次の発明及び事項が記載されている。なお、下線は理解の便のため当審で付した。
・特開昭57-52545号公報(以下、「刊行物1」という。)
・中村 孝(外3名)著、「溶接技術講座2 圧接とろう接」、日刊工業新聞社発行、昭和39年2月29日発行、318及び319ページ(以下、「刊行物2」という。)

(1) 刊行物1

ア. 刊行物1に記載された事項

(ア)
「2. 特許請求の範囲
(1)丸鋼の加熱工程と、加熱された丸鋼を曲げ加工によりU状に形成する曲げ工程と、U状に形成された一対のピース11を向い合せにして各端部を溶接する溶接工程とからなる鎖リンクの製造法」(1ページ左欄4ないし9行)

(イ)
「船舶の錨揚機や荷役機械等において使用されているチエーンのうち、鎖リンクがO状のリンク中間部をスタッドで連結して略θ状に構成されるものの従来の製造法は、・・・」(1ページ右欄2ないし5行)

(ウ)
「本発明はかゝる問題の解消を計ることを目的としてなされたもので、丸鋼を屈曲形成したU字状リンクを一対、互いに突き合せて同時に溶接することによりリンクの製造を行う鎖リンクの製造法を提供するものである。」(2ページ左上欄3ないし7行)

(エ)
「まず、従前の鎖リンクを形成する丸鋼の長さの半分の長さを有する丸鋼を電気抵抗加熱器で850?900℃に加熱したのち中間部で屈曲してU状のピース11を形成しておく(第2A図)。
つぎにこうした一対のU状ピース11を、一方は11a既製のリンク12に通して掛止させるとともに他方11bはその両端部を前記一方の各端部に突き合せた状態にし、スタッド13をその両端部が突き合せ部に一致した状態に位置させ(第2B図)、三者を電気抵抗溶接、好ましくは電子ビーム溶接により同時溶接して既製のリンク12に連結される鎖リンク14を形成する(第2C図)。」(2ページ左上欄11行ないし右上欄2行)

(オ)
「また本発明によれば、以上のようなプレスによる成形工程を不必要とすることができるばかりか従来二度に亘って行われていた溶接工程が一度ですみ、工程数の減少をもたらす顕著な利点を有している。
なお、上記実施例はθ状の鎖リンクの製造法に関するものであるが、O状の鎖リンクの場合も同様で、丸鋼の加熱工程並びに曲げ工程と一対のU状ピースをO状に突き合せて両者を溶着する溶接工程とから製造することができ、θ状鎖リンクの場合と同様の効果を挙げることができる。」(2ページ右上欄16行ないし左下欄6行)

(カ) 第2AないしC図


(キ)
上記摘記事項(オ)の、「一対のU状ピースをO状に突き合わせて両者を溶着する溶接工程」との記載において、「U状ピース」を「O状」に突き合せた際には、一方の「U状ピース」の相互に離れた両端面は、上記図示事項(カ)の第2A図に記載されたように、他方の「U状ピース」の端面と向かい合った状態となることは、明らかである。

イ. 刊行物1に記載された発明
上記摘記事項(ア)ないし(オ)、図示事項(カ)及び認定事項(キ)から刊行物1に記載された事項を技術常識を考慮しながら整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「向かい合った状態で離された面を備え、かつ溶接によって連結される2つのU状ピース11を備えた、チエーンの鎖リンクであってU状ピース11が鎖リンクの前記離された面内に存在する溶接面に沿って溶接により互いに連結される鎖リンク。」

(2) 刊行物2

ア. 刊行物2に記載された事項

(ア)
「図10・32は,摩擦溶接法のいろいろな基本形を示したものである.・・・
とにかく接触面を動かし摩擦しさえすればよいので,(d),(e)のような,上下に動かす方法や,捩り方向に振動させる方式なども考えられる.」(318ページ最終行ないし319ページ14行)

(イ) 図10・32


イ. 刊2事項
上記ア.の摘記事項(ア)及び図示事項(イ)から、技術常識を考慮しつつ整理すると、刊行物2には、以下の事項(以下、「刊2事項」という。)が記載されている。

「異なる部材の接触面を相対的に上下に動かすことで往復振動させて摩擦溶接する方法」

4. 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「U状ピース11」及び「鎖リンク」は、本願発明の「チェーン・リンク部品(5a、5b)」、「チェーン・リンク(1)」にそれぞれ相当する。
上記3.(1)ア.の摘記事項(オ)の「丸鋼の加熱工程並びに曲げ工程と一対のU状ピースをO状に突き合わせて両者を溶着する溶接工程とから製造することができ、」との記載から、引用発明の「U状ピース11」は「丸鋼」から製造されるものであり、「丸鋼」の断面形状が円形であることは技術常識であることをあわせると、引用発明の「チエーン」は断面形状が円形であると認められるから、本願発明の「ラウンド・チェーン」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明は以下の点で一致し、かつ相違する。

<一致点>
「向かい合った状態で離された面を備え、かつ溶接によって連結される2つのチェーン・リンク部品を備えたラウンド・チェーンのチェーン・リンクであって、チェーン・リンク部品がチェーン・リンクの前記離された面内に存在する溶接面に沿って溶接により互いに連結されるチェーン・リンク。」

<相違点>
溶接方法について、本願発明では「線形摩擦溶接」によるものであるのに対し、引用発明ではその点が、明らかではない点。

5. 相違点に対する判断
「線形摩擦溶接」についての、本願明細書の段落【0035】の「 図4および5では、本発明による2つのチェーン・リンク1が示されており、これらは、各々、摩擦溶接手法すなわち線形摩擦溶接により互いに連結され得るハーフ・リンクの形態の2つのチェーン・リンク部品5a、5bから作られ得る。この目的のため、2つの部品のうちの一方(例えば5a)がその位置から動かないように保持され、もう一方の部品5bが適当な方式で矢印Fの方向に振動させられる。」との記載から、相互に溶接したい面同士を特定の方向に相対的に振動させることにより溶接するものが本願発明の「線形摩擦溶接」に包含されることが理解できる。そうすると、刊2事項も接触面を相対的に上下方向に往復振動させる摩擦溶接であるから、刊2事項は「線形摩擦溶接」を行う方法であるといえる。
引用発明の溶接について、上記3.(1)ア.の摘記事項(エ)には、「三者を電気抵抗溶接、好ましくは電子ビーム溶接により同時溶接して既製のリンク12に連結される鎖リンク14を形成する。」との記載はあるものの、他に、「電気抵抗溶接」や「電子ビーム溶接」以外の溶接方法が適さない旨の記載や示唆は刊行物1には見当たらない。そうすると、上記「電気抵抗溶接」や「電子ビーム溶接」は、単なる例示にすぎず、突き合わされた面同士が溶接できるものであれば、引用発明の溶接方法として適用が可能であることが当業者であれば十分理解できる。
ここで、上記3.(1)ア.の摘記事項(オ)の「従来二度に亘っておこなわれていた溶接工程が一度ですみ、」との記載から、引用発明においては、溶接工程の数を減らすことへの動機が存在するといえる。一方、上記3.(1)ア.の摘記事項(オ)の「丸鋼の加熱工程並びに曲げ工程と一対のU状ピースをO状に突き合わせて両者を溶着する溶接工程とから製造することができ、」との記載から、「溶接工程」の開始直前において、引用発明の1つの「U状ピース」の二つの端面は、他の「U状ピース」の端面と面接触しており、その状態で刊2事項の「線形摩擦溶接」を行うならば、面接触している二つの端面それぞれで同時に溶接することができ、溶接工程が一度ですむことは明らかである。
そうすると、引用発明の「溶接方法」として線形摩擦溶接を採用することは、上記動機にしたがって、離れた二つの端面を同時に溶接できる方法である刊2事項の線形摩擦溶接を採用することで当業者が容易になし得た事項である。
また、本願発明により得られる作用・効果も、引用発明及び刊2事項から当業者が予測し得る範囲内のものであるに過ぎず、格別顕著なものとはいえない。

6. まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び刊2事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-14 
結審通知日 2015-05-19 
審決日 2015-06-02 
出願番号 特願2010-538464(P2010-538464)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 健一  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 三澤 哲也
久保 克彦
発明の名称 溶接タイプのラウンド・チェーンおよびプロファイル・チェーンの製造方法、ラウンド・チェーンまたはプロファイル・チェーン用のチェーン・リンク、ならびに、同種のチェーン・リンクから作られるラウンド・チェーンまたはプロファイル・チェーン  
代理人 本田 淳  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 博宣  
代理人 本田 淳  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ