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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01T
管理番号 1306860
審判番号 不服2013-13808  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-18 
確定日 2015-10-16 
事件の表示 特願2010-547294「X線検出器における直接検出現象の抑制」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月 3日国際公開、WO2009/107045、平成23年 4月28日国内公表、特表2011-513702〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件出願は、2009年2月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年2月25日、欧州)を国際出願日とする出願であって、平成25年3月15日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、同年7月18日に請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に手続補正がなされ、その後、当審における平成26年8月29日付けの拒絶理由通知に対して、平成27年3月2日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年3月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
ピクセル配置のアレイであって、各々のピクセル配置が、入射放射線を放射線収集装置出力信号に変換するための少なくとも1つの放射線収集装置を有するアレイ、
複数の放射線収集装置の前記放射線収集装置出力信号から導き出される信号をそれぞれの出力素子に供給するための回路、
を有するX線検出装置であり、
前記回路は、
各々のピクセル配置が、フォトダイオード又は電荷収集電極である1つの放射線収集装置を有し、
スイッチング配置が、1つの読出しラインへの複数のピクセル配置の接続を生じさせるようにそれぞれ動作可能な選択ラインと、検出器ピクセルのアレイの隣り合う読出しラインを接続するように動作可能なスイッチと、を有し、
各々のピクセル配置が、前記放射線収集装置の出力信号を受信するゲートと、選択ラインが活性化されると読出しラインに接続されるソースとを備えたトランジスタを含み、
接続された隣り合う読出しラインが、前記スイッチによって少なくとも1つの出力素子に接続され、選択ラインが活性化されることにより、隣り合う読出しラインからの少なくとも2つの放射線収集装置の収集装置信号から導き出される信号が前記出力素子に供給され、
選択ラインが活性化され、隣り合う読出しラインのペアが、それらの間の前記スイッチによって接続され、ペアの少なくとも2つの放射線収集装置の収集装置信号から導き出される信号が1つの出力素子に供給される場合に、前記ペアの一方におけるピクセルに寄生直接検出現象が生じると、前記寄生直接検出現象が生じたピクセルの前記放射線収集装置が放電して、当該放射線収集装置に接続されたトランジスタのゲート電位が低下し、それにより寄生直接検出現象が生じたピクセルのトランジスタからの出力信号は、ペアの他方におけるピクセルのトランジスタよりも前記出力素子への寄与が小さくなる、X線検出装置。」

3 引用刊行物
これに対して、当審における平成26年8月29日付けの拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された「特開2001-189891号公報」(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。ただし、下線は当審で付した。
a 発明の詳細な説明の記載
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ローとコラムに配置され、放射の入力量に従って電荷を発生し、関連するセンサ要素のスイッチはアドレス線を介して活性化され且つ、増幅器及び伝達手段により更に処理されために、それぞれの活性化されたセンサ要素の電荷は読出し線を介して排出される、光検知又はX線検知センサ要素のマトリクスを有するセンサのセンサ要素を読み出す方法に関する。本発明は、対応するセンサと、X線画像を形成するために、物体に照射するためのX線ビームを放出するX線源と、前記X線画像から電気的画像信号を発生するための検出器を有するX線試験装置にも関する。」
「【0012】提案された方法は、画像内で、ビニングブロックのサイズの変更が可能である。個々のセンサ要素が低い信号対ノイズ比の領域内では、ノイズはビニングにより(2x2,3x3又は、非対称の)大きな領域に亘って減少され、これにより信号対ノイズ比を高める。それにより起こる低空間解像度は許容できる。個々のセンサ要素が、既に高い信号対ノイズ比の領域内では、小領域(2x2)にわたるビニング又は、ビニング無し(1x1)が選択され、これにより高空間解像度を維持できる。
【0013】全体的に、望ましくないノイズを、増幅器の前で読み出される電荷にビニングすることにより最小化できる。さらに、本方法の更なる展開に従って、露光中にビニングパターンの元々プログラムされた読出しルーチン内に入れることができなければならない。
【0014】そのような可変のプログラム可能なビニングパターンは、スイッチ要素の第1のユニットは活性化手段と電気的センサスイッチの間に配置され、スイッチ要素の第2のユニットは電気的センサスイッチと増幅器の間に配置されることを特徴とするセンサの手段により達成される。更に、スイッチング動作により、任意の数のスイッチ要素又は読出し線を、毎回、少なくとも1つの隣接する線に接続するために、スイッチ要素のスイッチング動作を制御するためのシステムが設けられる。全体的に、制御システムは、どのスイッチ要素がスイッチ動作を行うかを決定し、そして、これゆえ、どの対応するセンサローとセンサコラムが、隣接するロー又はコラムと或は、通例の方法のロー又はコラム内で厳密に、共に読み出されるかを決定する。」
「【0020】
【発明の実施の形態】図1は、センサ要素のスイッチを活性化する2つのシフトレジスタを伴うX線センサマトリクス1の回路図を示す。図2は、センサ要素の活性化された電気的スイッチを読み出すための2つのシフトレジスタを伴うX線センサマトリクスの回路図を示す。
【0021】図1は、ローとコラムに配置されたセンサマトリクス1の一部を示す。この種のマトリクスは、例えば、2000x2000個のセンサ要素を有し、図1と図2には例によりそのうちの幾つかを示す。以下の説明の理解を容易にするために、図1のセンサ要素は所定の連続する番号のロー即ち、S1,1、S1,2等に関連する。第1のインデックスはローを示し、第2のインデックスはコラムを示す。
【0022】各画素に対して、フォトセンサ2、キャパシタンス及び、スイッチ3を含むX線検知センサが設けられている。適する半導体が使用される場合には、フォトセンサはそれ自体がX線を検知できる。しかし、光検知フォトダイオードも関連し、更なるシンチレータによってX線を光に変換する。フォトセンサは図1と図2においてフォトダイオード2により表される。電気的スイッチ3はTFT(薄膜トランジスタ)により構成されることが好ましい。シンチレータを伴うフォトセンサは、入射するX線をキャパシタンスにより収集可能な電荷に変換する。キャパシタンスは、フォトダイオードの積分部分であるか又は、別の構成要素として構成されうる。所定の時間期間が経過後、キャパシタンスに蓄積された電荷は、放射強度の測定値である。この電荷を、各センサ要素に対して、電気的スイッチを介して読み出すことができる。このために、アドレス線4から8が、センサマトリクスの各ローに設けられる。関連するローの電気的スイッチ3は、これらのアドレス線を介して活性化される。
【0023】図1に部分的に示されているマトリクスの各コラムに対して、それぞれの読出し線9,10,11が設けられ、読出し線に続く回路は、図2に明らかにされている。図2の参照番号9から13により示される読出し線は、出力信号をマルチプレクサ19へ伝える、それぞれの増幅器14から18に接続される。マルチプレクサ19は、電子的画像信号をモニタ又は、画像プロセッサへ送る。
【0024】全体の検出器に亘って同一のビニングパターンが排他的に選択される従来のセンサマトリクスに対して、本発明に従ったセンサマトリクスは、先行する又は後続する回路と共に、局部的に選択できる又は、プログラム可能なビニングパターン即ち、一定でないビニングパターンに従って読み出すことを可能とする。
【0025】このために、図1の実施例では、センサマトリクス1は、2つのシフトレジスタ20,21が先行する。シフトレジスタ20は活性化手段とも呼ばれ、複数の連続して接続されたメモリ又は、シフトレジスタ要素22から26よりなリ、その数はセンサマトリクスのローの数に対応する。回路は、シフトパルス(この場合データクロックDCにより示される)によりすべてのメモリはその情報(データ入力に対するDI)をそれぞれの隣接メモリへシフトする様に構成される。シフトレジスタにはスイッチ要素27から30が続く。本実施例では、アドレス線5から8はそのようなスイッチ要素を含む。しかし、アドレス線4は前の線を有しないので、スイッチ要素は不要である。
【0026】アドレス線はセンサ要素の対応するローに直接接続されるか、又は、個々のアドレス線スイッチ要素により割り込まれ、関連する前のアドレス線への接続が確立される。少なくとも2つの隣接するローのセンサ要素を、1つの入力する信号により活性化できる。本実施例では、第5線(8)は第4アドレス線(7)に接続され、第4線(7)は第3アドレス線(6)に接続され、第3線(6)は第2アドレス線(5)に接続され、第2線(5)は第1アドレス線(4)に接続される。この結果第1のアドレス線(4)の情報は、ロー1から5のセンサ要素を活性化する。
【0027】任意の数の関連するローを、スイッチ要素のスイッチング処理の任意の制御により活性化できる。スイッチ要素27から30は、更なるシフトレジスタ21により制御可能である。関連するアドレス線に亘ってスイッチングするための制御命令の形式の情報(制御入力CI)は、シフト周波数(制御クロックCC)の間隔で出力される。
【0028】増幅器50から54は、レジスタとセンサマトリクスの間のアドレス線に挿入される。代わりに、レベル変換器も使用できる。そのような変換器は、純粋にディジタル制御信号の小出力電圧(例えば、シフトレジスタについては5V)を、通常は20から25V必要なTFTを制御するのに要する値へ上げる。
【0029】アドレス線内のスイッチ要素27から30又は活性化推移値要素は、TFTである。反対の制御を伴う2重構造を使用して、これらのトランジスタはそれぞれのスイッチを実行する。この場合、活性化線の(アナログ)電圧は、増幅器又は、レベル変換器の後ろでスイッチされうる。図1に示す実施例では、増幅器50から54はスイッチ要素27から30に続く。代わりに、出力ディジタル信号が増幅器又はレベル変換器により必要な振幅に上げられる2入力ディジタルマルチプレクサを使用できる。
【0030】例え電荷は変更無しにセンサ要素から転送されるので、ば、TFT又は、(MOS)FETのような、純粋なアナログスイッチのみ、読出し線のスイッチ要素31から34として適する。
【0031】(図2の)読出し線に対するスイッチ要素のスイッチング動作の制御は、図1を参照して説明したのと同じである。図2は、再びセンサマトリクス1を部分的に示し、3つのローと5つのコラムの場合である。既知の方法に従って、各コラムのセンサ要素の電荷は、それぞれの増幅器この場合は14から18に接続された、読出し線9から13により、読み出される。個々の増幅器の出力は、マルチプレクサ19内で結合され、出力信号として出力される。本発明に従ったによる更なる展開により、スイッチ要素31から34が設けられる。第2の且つ後続のコラムは関連する読出し線に挿入されるスイッチ要素を含む。スイッチ要素は、関連する読出し線を、直接的に関連する増幅器又は、それぞれの隣接する読出し線のいずれかへ接続する。本実施例では、スイッチング動作により、第2の読出し線(10)を第1の読出し線(9)に接続でき、第3の読出し線(11)を第2の読出し線(10)に接続できる。収集された電荷の総量は、第1の読出し線(9)にいよってのみ、増幅器へ与えられる。
【0032】個々のスイッチ要素31から34は、シフトレジスタ35により制御できる。制御自体は、アドレス線の説明した制御に類似している。
【0033】図3は、本発明に従ったX線センサを含む検出器42が設けられた医療用X線検査装置41を示す。X線検査装置41は、患者のためのテーブル43を有する。X線源は、テーブルの下に取り付けられる。X線検出器42は放射源44との関係を調整するために取りつけられる。X線画像を形成するために、患者はX線ビームによる照射を受ける。X線画像は、患者によるX線吸収の局部的な差により、検出器により形成される。X線センサは、画像を、X線画像を表示するためにモニタ45に与えられる電気信号に変換する。患者の負担を軽減するために、低放射線量を使用したにも関わらず、本発明に従ったセンサは、X線画像に関する適切な電荷強度の読出しが可能となる。読出しは、プログラム可能なサイズのローとコラムのブロックで起こる。
【0034】
【発明の効果】本発明により、低入力X線量にも関わらず、適切な量の電荷を得ることができ、かつこれゆえに、画像を形成するための適切な電気的信号が得られる方法及びセンサを提供することできる。」
b 図面の記載
「【図1】


「【図2】



c 上記a及びbの記載事項の考察
上記bの記載事項の【図1】及び【図2】からすると、引用例には、各画素の電気スイッチ3は、アドレス線4?8に接続されたゲートと、読み出し線9?13に接続されたソース/ドレインとを備えることが記載されている。
また、引用例には、「任意の数の関連するローを、スイッチ要素のスイッチング処理の任意の制御により活性化できる。スイッチ要素27から30は、更なるシフトレジスタ21により制御可能である。関連するアドレス線に亘ってスイッチングするための制御命令の形式の情報(制御入力CI)は、シフト周波数(制御クロックCC)の間隔で出力される」(【0027】)と記載され、「個々のスイッチ要素31から34は、シフトレジスタ35により制御できる。制御自体は、アドレス線の説明した制御に類似している」(【0032】)と記載されており、これらの記載及び技術常識を鑑みると、引用例の図2に記載された、シフトレジスタ要素36?40を接続しさらにスイッチ要素31?34への分岐(図2では、点線)を有するラインは、スイッチ要素31?34を制御するものであると認められる。

d 引用発明
上記a及びbの記載事項並びに上記cの考察によると、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「個々のセンサ要素が低い信号対ノイズ比の領域内では、望ましくないノイズはビニングにより(2x2,3x3又は、非対称の)大きな領域に亘って減少され、これにより信号対ノイズ比を高め、個々のセンサ要素が、既に高い信号対ノイズ比の領域内では、小領域(2x2)にわたるビニング又は、ビニング無し(1x1)が選択され、これにより高空間解像度を維持できる、ローとコラムに配置されたセンサマトリックス1を有する医療用X線検査装置41であって、
各画素に対して、フォトセンサ2,キャパシタンス及び電気スイッチ3を含むX線検知センサが設けられ、
フォトセンサはフォトダイオード2であり、
フォトダイオード2の放射強度の測定値を電気スイッチ3を介して読み出すために、アドレス線4?8がセンサマトリクス1の各ローに設けられ、センサマトリクス1の各コラムに読み出し線9?13に設けられ、読出し線9?13が増幅器14?18に接続され、増幅器14?18は出力信号をマルチプレクサ19へ伝え、
各画素の電気スイッチ3は、アドレス線4?8に接続されたゲートと、読み出し線9?13に接続されたソース/ドレインとを備え、
シフトレジスタ要素36?40を接続しさらにスイッチ要素31?34への分岐を有するラインは、スイッチ要素31?34を制御するものであり、
スイッチ要素31?34のスイッチング動作により、第2の読出し線10を第1の読出し線9に接続でき、第3の読出し線11を第2の読出し線10に接続でき、収集された電荷の総量は、第1の読出し線9によってのみ、増幅器14へ与えられる医療用X線検査装置41。」

4 対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「画素」、「フォトセンサ2」は、本願発明の「ピクセル配置」、「放射線収集装置」に相当する。
そうすると、引用発明の「ローとコラムに配置されたセンサマトリックス1を有」し、「各画素に対して、フォトダイオードであるフォトセンサ2,キャパシタンス及び電気スイッチ3を含むX線検知センサが設けられ」た構成は、本願発明の「ピクセル配置のアレイであって、各々のピクセル配置が、入射放射線を放射線収集装置出力信号に変換するための少なくとも1つの放射線収集装置を有するアレイ」「を有する」構成に相当する。

(2)引用発明の「増幅器14?18」は、本願発明の「出力素子」に相当する。
そうすると、引用発明は、「フォトダイオード2の放射強度の測定値を電気スイッチ3を介して読み出すために、アドレス線4?8がセンサマトリクス1の各ローに設けられ、センサマトリクス1の各コラムに読み出し線9?13に設けられ、読出し線9?13が増幅器14?18に接続され、増幅器14?18は出力信号をマルチプレクサ19へ伝え、各画素の電気スイッチ3は、アドレス線4?8に接続されたゲートと、読み出し線9?13に接続されたソース/ドレインとを備え」たものであるから、本願発明の「複数の放射線収集装置の前記放射線収集装置出力信号から導き出される信号をそれぞれの出力素子に供給するための回路」「を有する」構成に相当する構成を有するものである。

(3)引用発明の「フォトダイオード2」は、本願発明の「フォトダイオード又は電荷収集電極」に相当する。
また、引用発明は、「各画素に対して、フォトセンサ2」「が設けられ」たものである。
そうすると、引用発明の「フォトセンサはフォトダイオード2であ」る構成は、本願発明の「回路は、各々のピクセル配置が、フォトダイオード又は電荷収集電極である1つの放射線収集装置を有」する構成に相当する。

(4)引用発明の「シフトレジスタ要素36?40を接続しさらにスイッチ要素31?34への分岐を有するライン」、「スイッチ要素31?34」、「読出し線9?13」は、本願発明の「選択ライン」、「スイッチ」、「読み出しライン」に相当する。
そうすると、引用発明の「シフトレジスタ要素36?40を接続しさらにスイッチ要素31?34への分岐を有するラインは、スイッチ要素31?34を制御するものであり、スイッチ要素31?34のスイッチング動作により、第2の読出し線10を第1の読出し線9に接続でき、第3の読出し線11を第2の読出し線10に接続でき、収集された電荷の総量は、第1の読出し線9によってのみ、増幅器14へ与えられる」構成は、本願発明の「回路は、」「スイッチング配置が、1つの読出しラインへの複数のピクセル配置の接続を生じさせるようにそれぞれ動作可能な選択ラインと、検出器ピクセルのアレイの隣り合う読出しラインを接続するように動作可能なスイッチ」「を有し、」「接続された隣り合う読出しラインが、前記スイッチによって少なくとも1つの出力素子に接続され、選択ラインが活性化されることにより、隣り合う読出しラインからの少なくとも2つの放射線収集装置の収集装置信号から導き出される信号が前記出力素子に供給され」る構成に相当する。

(5)引用発明の「電気スイッチ3」は、本願発明の「トランジスタ」に相当する。
そうすると、引用発明の「各画素の電気スイッチ3は、アドレス線4?8に接続されたゲートと、読み出し線9?13に接続されたソース/ドレインとを備え」た構成と、本願発明の「各々のピクセル配置が、前記放射線収集装置の出力信号を受信するゲートと、選択ラインが活性化されると読出しラインに接続されるソースとを備えたトランジスタを含」む構成とは、「各々のピクセル配置が、前記放射線収集装置の出力信号を受信し、選択ラインが活性化されると読出しラインに接続されるトランジスタを含」む構成で共通する。

(6)引用発明の「医療用X線検査装置41」は、本願発明の「X線検出装置」に相当する。

上記(1)ないし(6)から、本願発明と引用発明は、
「ピクセル配置のアレイであって、各々のピクセル配置が、入射放射線を放射線収集装置出力信号に変換するための少なくとも1つの放射線収集装置を有するアレイ、
複数の放射線収集装置の前記放射線収集装置出力信号から導き出される信号をそれぞれの出力素子に供給するための回路、
を有するX線検出装置であり、
前記回路は、
各々のピクセル配置が、フォトダイオード又は電荷収集電極である1つの放射線収集装置を有し、
スイッチング配置が、1つの読出しラインへの複数のピクセル配置の接続を生じさせるようにそれぞれ動作可能な選択ラインと、検出器ピクセルのアレイの隣り合う読出しラインを接続するように動作可能なスイッチと、を有し、
各々のピクセル配置が、前記放射線収集装置の出力信号を受信し、選択ラインが活性化されると読出しラインに接続されるトランジスタを含み、
接続された隣り合う読出しラインが、前記スイッチによって少なくとも1つの出力素子に接続され、選択ラインが活性化されることにより、隣り合う読出しラインからの少なくとも2つの放射線収集装置の収集装置信号から導き出される信号が前記出力素子に供給される、X線検出装置。」
で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願発明は、「各々のピクセル配置が、前記放射線収集装置の出力信号を受信するゲートと、選択ラインが活性化されると読出しラインに接続されるソースとを備えたトランジスタを含み、」「選択ラインが活性化され、隣り合う読出しラインのペアが、それらの間の前記スイッチによって接続され、ペアの少なくとも2つの放射線収集装置の収集装置信号から導き出される信号が1つの出力素子に供給される場合に、前記ペアの一方におけるピクセルに寄生直接検出現象が生じると、前記寄生直接検出現象が生じたピクセルの前記放射線収集装置が放電して、当該放射線収集装置に接続されたトランジスタのゲート電位が低下し、それにより寄生直接検出現象が生じたピクセルのトランジスタからの出力信号は、ペアの他方におけるピクセルのトランジスタよりも前記出力素子への寄与が小さくなる」のに対し、引用発明は、「各画素の電気スイッチ3は、アドレス線4?8に接続されたゲートと、読み出し線9?13に接続されたソース/ドレインとを備え、」「個々のセンサ要素が低い信号対ノイズ比の領域内では、望ましくないノイズはビニングにより(2x2,3x3又は、非対称の)大きな領域に亘って減少され、これにより信号対ノイズ比を高め、個々のセンサ要素が、既に高い信号対ノイズ比の領域内では、小領域(2x2)にわたるビニング又は、ビニング無し(1x1)が選択され、これにより高空間解像度を維持できる」ものである点。

5 当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
各ピクセル配置に放射線収集装置を有するX線検出装置において、リセットされると電源電圧が供給され、放射線収集装置の出力信号を受信するゲートと、選択ラインが活性化されると読出しラインに接続されるソースとを備え、放射線収集装置の出力信号が出力されると電源電圧からゲート電圧が低下して、ソースから出力される出力電圧が低下するトランジスタを設けることは、周知技術(国際公開第2008/012723号明細書の第15頁第17行?第16頁第3行、FIG.4(source follower 313が当該トランジスタに相当。)、特開平11-307756号公報の【0014】?【0015】、図1(読取用電界効果トランジスタ22が当該トランジスタに相当。)、特開2003-282849号公報の【0058】?【0064】、図9?10(ソースフォロアTr703が当該トランジスタに相当。)参照。)である。
そして、各ピクセル配置に放射線収集装置を有するX線検出装置において、引用発明のような、アドレス線に接続されたゲートと、読み出し線に接続されたソース/ドレインとを備えた電気スイッチも、周知のものであるから、引用発明の「各画素の電気スイッチ3」に代えて、上記周知技術のトランジスタを採用することにより、引用発明の「各画素」に、リセットされると電源電圧が供給され、放射線収集装置の出力信号を受信するゲートと、選択ラインが活性化されると読出しラインに接続されるソースとを備え、放射線収集装置の出力信号が出力されると電源電圧からゲート電圧が低下して、ソースから出力される出力電圧が低下するトランジスタを設け、「選択ラインが活性化され、隣り合う読出しラインのペアが、それらの間の前記スイッチによって接続され、ペアの少なくとも2つの放射線収集装置の収集装置信号から導き出される信号が1つの出力素子に供給される場合に、前記ペアの一方におけるピクセルに寄生直接検出現象が生じると、前記寄生直接検出現象が生じたピクセルの前記放射線収集装置が放電して、当該放射線収集装置に接続されたトランジスタのゲート電位が低下し、それにより寄生直接検出現象が生じたピクセルのトランジスタからの出力信号は、ペアの他方におけるピクセルのトランジスタよりも前記出力素子への寄与が小さくなる」ようにして、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を構成することは、当業者が容易になし得たことである。
上記相違点については以上のとおりであり、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-22 
結審通知日 2015-05-26 
審決日 2015-06-08 
出願番号 特願2010-547294(P2010-547294)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 亮  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 土屋 知久
伊藤 昌哉
発明の名称 X線検出器における直接検出現象の抑制  
代理人 津軽 進  

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