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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G07D
管理番号 1306895
審判番号 不服2014-17232  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-29 
確定日 2015-10-15 
事件の表示 特願2013-228026号「媒体搬送装置及び媒体取引装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月27日出願公開、特開2014- 56596号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年9月21日に出願された特願2011-206113号の一部を特許法第44条第1項の規定により平成25年11月1日に新たな特許出願としたものであって、平成26年2月25日付けで拒絶の理由が通知され、平成26年4月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年6月2日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年8月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がなされたものである。


第2 平成26年8月29日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年8月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「媒体に当接し回転して当該媒体を面方向に移動させる搬送ローラと、
上記搬送ローラの回転軸と平行に軸方向に延設され、当該軸方向に沿って複数独立して設けられ、上記媒体の面に離接する軸可動方向に移動する軸と、
上記軸の外周面を囲うように上記媒体を挟んで上記搬送ローラに対向して上記軸毎に独立して設けられ、上記媒体に当接し上記搬送ローラの回転に応じて回転する軸受と、
上記軸が上記軸受と共に回転することを抑制する軸回転抑止部と、
一の摺動面と当該一の摺動面に対向する他の摺動面とに囲まれた軸摺動部と、
上記軸受毎に独立して設けられ、上記軸受に対し上記媒体が搬送される搬送方向に沿って離隔した位置に固定され、上記軸における上記軸受の上記軸方向の外側の両側を上記搬送ローラに向かって付勢する付勢部と
を有する媒体搬送装置。」(下線部は補正箇所。)
と補正された。

2.補正の目的及び新規事項の追加の有無
本件補正は、平成26年4月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「付勢部」について、「上記軸受に対し上記媒体が搬送される搬送方向に沿って離隔した位置に固定され、」との限定をさらに加えるものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用文献の記載事項
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、特開平2-117537号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア 「この発明は、磁気カードや乗車券等のカード類をベルト又はローラにて搬送する際、ベルト等に押付けるためのピンチローラの機構に関するものである。」(第1頁右下欄第1-4行)

イ 「以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて具体的に説明する。
第1図及び第2図において、(11)は上方に開口した断面コ字状をしたケースであり、該ケース(11)には第1ピンチローラ(12)及び第2ピンチローラ(13)をそれぞれ支持するため切欠かれた凹溝(14,14)が左右一対に2組形成されている。この各凹溝(14,14)の下方位置にあるケース(11)の底板に切欠き(15,15)が形成され、前記各ピンチローラ(12,13)の一部がこの切欠き(15,15)より露出し、搬送ベルト(16)の上面と接触するようになっている。ここにおいて、この実施例では、搬送手段としてベルトを使用した例を示しているが、この発明はベルトに限定されることはなく搬送用のローラを使用するようにしてもよい。」(第2頁右上欄第18行-左下欄第13行)

ウ 「前記各ピンチローラ(12,13)は、第3図に示されるようにローラ軸(17)と、該ローラ軸(17)に対して自由に回転するローラ本体(18)とから構成されており、該ローラ本体(18)は、ゴム材からなるローラ部(19)と、鍔を有する筒状のプラスチック材からなる軸支持体(20)とからなり、ローラ部(19)と軸支持体(20)とは回転不能に固定的に取付けられている。そして前記ローラ軸(17)を軸支持体(20)に回転可能に嵌めることによって、ローラ軸(17)に対してローラ本体(18)が回転可能になっている。すなわち、この図面に示す実施例においては、ローラ軸(17)の両端側に平坦面(21,21)を縦方向に形成し、このローラ軸(17)を前記ケース(11)の凹溝(14,14)に嵌めることによって、ローラ軸(17)を回転不能に取付ける代わりにローラ本体(18)が回転するようになっている。この平坦面(21,21)を設けた理由は、平坦面を設けずに丸棒状としローラ軸(17)とローラ本体(18)を一体にしてローラ軸(17)が回転することによってピンチローラ(12,13)を回転するようにすればローラ軸の回転が凹溝(14,14)との接触で摩耗し、ピンチローラ(12,13)を一定期間の使用により取替える必要があり不経済であるためである。」(第2頁左下欄第14行-右下欄第17行)

エ 「このローラ軸(17)を前記ケース(11)の凹溝(14,14)に嵌入することによって各ピンチローラ(12,13)はケース(11)にワンタッチで装着されケース(11)に対してピンチローラ(12,13)は凹溝(14,14)に沿って上下方向にのみ動くようになっている。特にローラ軸(17)に平坦面(21,21)を設けることによって、ローラ軸(17)は平坦面により回転が規制されローラ軸(17)の回転による摩耗はなくなり、上下方向にのみ動くので特に好ましいのである。」(第3頁左上欄第4-13行)

オ 「(22)はU字状に形成されたワイヤばねであって、第5図に示されるように第1折曲部(23)と第2折曲部(24)とを有している。第1折曲部(23)は前記第1ピンチローラ(12)のローラ軸(17)の上面に位置し、第2折曲部(24)は第2ピンチローラ(13)のローラ軸(17)の上面に位置するようになっている。」(第3頁左上欄第14-20行)

カ 「このフック(25,25)にワイヤばね(22)を引掛けることにより両折曲部(23,24)には下方に付勢する押圧力が働き、該押圧力により両ピンチローラ(12,13)は下方に付勢され、常に一定の平均的な押圧力で搬送ベルト(16)に密着し、カード類(K)を一定の姿勢で搬送する。」(第3頁左下欄第2-7行)

キ 第1図から、「カード類(K)に当接し搬送方向への移動を行うことでカード類(K)を搬送する搬送ベルト(16)」という構成が看取できる。

ク 第1図から、「カード類(K)」を挟んで「搬送ベルト(16)」に対向して「第1ピンチローラ(12)」が設けられているという構成が看取できる。

ケ 第3図から、「第1ピンチローラ(12)」には、「ローラ本体(18)」が「ローラ軸(17)」の外周面を囲うように「ローラ軸(17)」に設けられているという構成が看取できる。

コ 第1、2及び4図から、「フック(25,25)」が「第1ピンチローラ(12)」に対し「カード類(K)」が搬送される搬送方向に沿って離隔した位置にあるという構成が看取できる。

サ 第1及び2図から、「ローラ軸(16)」(注:「ローラ軸(17)」の誤りと認める。)における「第1ピンチローラ(12)」の軸方向の外側の両側を、「ワイヤばね(22)」により「搬送ベルト(16)」に向かって付勢するという構成が看取できる。また、第5図から、「ワイヤばね(22)」が2つの「第1折曲部(23)」を有する構成が看取できる。

また、上記アの「この発明は、磁気カードや乗車券等のカード類をベルト又はローラにて搬送する際、ベルト等に押付けるためのピンチローラの機構に関するものである。」という記載から、当該ピンチローラの機構を組み込んだ磁気カード又は乗車券等のカード類を扱う「媒体搬送装置」が記載されているといえる。

上記ウの「ローラ軸(17)に対してローラ本体(18)が回転可能になっている。」という記載から、「ローラ本体(18)」の回転軸方向と「ローラ軸(17)」の軸方向とは一致し、「ローラ本体(18)」の回転軸方向に「ローラ軸(17)」が延設されているものであるといえる。

上記ウの「前記各ピンチローラ(12,13)は、第3図に示されるようにローラ軸(17)と、該ローラ軸(17)に対して自由に回転するローラ本体(18)とから構成され」るという記載に加え、上記カの「該押圧力により両ピンチローラ(12,13)は下方に付勢され、常に一定の平均的な押圧力で搬送ベルト(16)に密着し、カード類(K)を一定の姿勢で搬送する。」という記載から、「搬送ベルト(16)」による駆動力は、直接又は「カード類(K)」を介して「ローラ軸(17)」に対して回転可能な「ローラ本体(18)」へ伝達され、「ローラ本体(18)」を回転させることが自明である。
したがって、「搬送ベルト(16)」が搬送方向に移動すると当該移動に応じて「ローラ本体(18)」も回転するものであるといえる。

上記サの図示内容から、「ローラ軸(17)」における「第1ピンチローラ(12)」の軸方向の外側の両側を、2つの「第1折曲部(23)」により搬送ベルト(16)に向かって付勢するものであるといえる。
そして、上記ケの図示内容から、「ローラ軸(17)」における「第1ピンチローラ(12)」の軸方向の外側と「ローラ軸(17)」における「ローラ本体(18)」の軸方向の外側とは同じ場所をさすため、「ローラ軸(17)」における「ローラ本体(18)」の軸方向の外側の両側についても、2つの「第1折曲部(23)」により搬送ベルト(16)に向かって付勢されるものであるといえる。

してみると、上記記載事項及び図示内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「カード類(K)に当接し搬送方向への移動を行うことでカード類(K)を搬送する搬送ベルト(16)と、
ローラ本体(18)の回転軸方向に延設され、凹溝(14,14)に沿う上下方向にのみ動くローラ軸(17)と、
ローラ軸(17)の外周面を囲うようにカード類(K)を挟んで搬送ベルト(16)に対向してローラ軸(17)に回転可能に設けられ、カード類(K)に当接し搬送ベルト(16)の搬送方向への移動に応じて回転するローラ本体(18)と、
ローラ軸(17)を回転不能に取付ける代わりにローラ本体(18)が回転するようにする平坦面(21,21)及び凹溝(14,14)と、
ローラ軸(17)を嵌入することでローラ軸(17)を上下方向にのみ動くようにする凹溝(14,14)と、
ローラ本体(18)に対しカード類(K)が搬送される搬送方向に沿って離隔した位置にあるフック(25,25)に引掛けられ、ローラ軸(17)におけるローラ本体(18)の軸方向の外側の両側を、2つの第1折曲部(23)により搬送ベルト(16)に向かって付勢するワイヤばね(22)と
を有する媒体搬送装置。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明における「カード類(K)」、「ローラ軸(17)」、「ローラ本体(18)」は、それぞれ、本願補正発明の「媒体」、「軸」、「軸受」に相当する。

本願補正発明の「搬送用ローラ」と引用発明の「搬送ベルト(16)」は、どちらも「媒体」を搬送するための駆動機構であるから、「駆動機構」であり、本願補正発明の「搬送用ローラ」の「回転」と引用発明の「搬送ベルト(16)」の「搬送方向への移動」は、「駆動機構」の「駆動」であるという限りで一致する。

引用発明における「カード類(K)」が搬送される際の移動方向は、本願補正発明と同様に「カード類(K)」の面方向であるから、引用発明の「カード類(K)を搬送する」は、本願補正発明における「当該媒体を面方向に移動させる」に相当する。

引用発明における「ローラ本体(18)」と本願補正発明における「軸受」の回転軸方向は搬送方向に対して同じ軸方向であるから、引用発明の「ローラ本体(18)の回転軸方向」は、本願補正発明の「軸」の「軸方向」に相当する。

引用発明における「凹溝(14,14)に沿う上下方向」は、本願補正発明と同様に「カード類(K)」の面に対して離接する方向であるから、引用発明の「凹溝(14,14)に沿う上下方向にのみ動く」は、本願補正発明における「上記媒体の面に離接する軸可動方向に移動する」に相当する。

引用発明では、「平坦面(21,21)」を設けた「ローラ軸(17)」を「凹溝(14,14)」に嵌めることにより、「ローラ本体(18)」が回転する際に「ローラ軸(17)」も一緒に回転してしまうことを防止するから、引用発明の「ローラ軸(17)を回転不能に取付ける代わりにローラ本体(18)が回転するようにする平坦面(21,21)及び凹溝(14,14)」は、本願補正発明における「上記軸が上記軸受と共に回転することを抑制する軸回転抑止部」に相当する。

引用発明では、「ローラ軸(17)」の平坦面(21,21)と「凹溝(14,14)」の対向する面とが摺動しながら「ローラ軸(17)」が上下方向に移動すると認められ、引用発明の「ローラ軸(17)を嵌入することでローラ軸(17)を上下方向にのみ動くようにする凹溝(14,14)」は、本願補正発明における「一の摺動面と当該一の摺動面に対向する他の摺動面とに囲まれた軸摺動部」に相当する。

本願補正発明の「付勢部」と引用発明の「ワイヤばね(22)」は、どちらも「上記軸における上記軸受の上記軸方向の外側の両側」を「駆動機構」に向かって付勢するものであり、引用発明における「ワイヤばね(22)」の支点は、「ローラ本体(18)に対しカード類(K)が搬送される搬送方向に沿って離隔した位置にあるフック(25,25)」であると認める。
したがって、本願補正発明の「付勢部」と引用発明の「ワイヤばね(22)」は、「軸受」を「駆動機構」に向かって付勢するための支点が「上記軸受に対し上記媒体が搬送される搬送方向に沿って離隔した位置」に設けられた「付勢部」という限りで一致する。

そうすると、両者は、
「媒体に当接し駆動して当該媒体を面方向に移動させる駆動機構と、
軸方向に延設され、上記媒体の面に離接する軸可動方向に移動する軸と、
上記軸の外周面を囲うように上記媒体を挟んで駆動機構に対向して上記軸に設けられ、上記媒体に当接し上記駆動機構の駆動に応じて軸に対して回転する軸受と、
上記軸が上記軸受と共に回転することを抑制する軸回転抑止部と、
一の摺動面と当該一の摺動面に対向する他の摺動面とに囲まれた軸摺動部と、
上記軸受に対し上記媒体が搬送される搬送方向に沿って離隔した位置に支点が設けられ、上記軸における上記軸受の上記軸方向の外側の両側を上記駆動機構に向かって付勢する付勢部と
を有する媒体搬送装置。」である点で一致しており、次の点で相違する。

(相違点1)
駆動機構において、本願補正発明は、搬送ローラであり、搬送ローラの回転軸が軸の軸方向に対して平行であるのに対し、引用発明は、搬送ベルト(16)である点。

(相違点2)
付勢部の支点において、本願補正発明は、付勢部が固定されているのに対し、引用発明は、フック(25,25)に引掛けられている点。

(相違点3)
軸、軸受及び付勢部について、本願補正発明は、軸が軸方向に延設され、当該軸方向に沿って複数独立して設けられ、軸受が軸毎に独立して設けられると共に付勢部が軸受毎に独立して設けられているのに対し、引用発明は、軸が軸方向に延設されるものの、軸方向に沿って複数独立して設けられておらず、また、軸受が軸毎に独立して設けられておらず、付勢部が軸受毎に独立して設けられていない点。

3-3.相違点の判断
相違点1について検討する。
引用文献1には、3-1(1)イの「ここにおいて、この実施例では、搬送手段としてベルトを使用した例を示しているが、この発明はベルトに限定されることはなく搬送用のローラを使用するようにしてもよい。」という記載から、搬送ベルト(16)に代えて搬送ローラを使用する点が示唆されており、また、媒体搬送装置において、搬送ローラを軸受に対し回転軸方向が平行となるように対向して配置し、搬送ローラの回転により媒体を搬送させることは、特開平10-194513号公報(【0019】並びに図3及び図4参照。)、実願昭53-166230号(実開昭55-82238号)のマイクロフィルム(第7頁第14-20行並びに第1図及び第2図。)等にも記載されているように周知の技術手段である。
してみると、引用文献1に接した当業者が、引用発明の搬送ベルト(16)に代えて上記周知の技術手段である搬送ローラを適用し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、容易に想到し得る程度のことにすぎない。

次に、相違点2について検討する。
媒体搬送装置において、軸受に対し媒体が搬送される搬送方向に沿って離隔した位置に付勢部の支点を固定することは、例えば、特開2002-220133号公報(図1及び図2の押圧アーム7、固定ネジ8参照。)、実願昭53-166230号(実開昭55-82238号)のマイクロフィルム(図6の指示部材51、取付部52参照。)等にも記載されているように周知の技術手段にすぎず、引用文献1に接した当業者が、引用発明のフック(25,25)に引掛ける構成に代えて付勢部を固定させるように構成して、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、容易に想到し得る程度のことにすぎない。

次に、相違点3について検討する。
媒体搬送装置において、搬送ローラの回転軸と平行に軸方向に延設され軸方向に沿って複数独立して軸を設ける点、軸毎に軸受を独立して設ける点及び軸受毎に付勢部を独立して設ける点は、拒絶査定の理由でも述べたとおり、特開平10-194513号公報(【0003】及び図8(b)参照。)、実願昭63-34205号(実開平1-137937号)のマイクロフィルム(第10頁第10-16行及び第2図参照。)に記載されているように周知の技術手段にすぎず、引用文献1に接した当業者が、引用発明の軸、軸受及び付勢部を軸方向に沿って複数独立して設ける程度のことは、容易に想到し得る程度のことにすぎない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第4 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項1(平成26年4月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1)に記載された、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

「媒体に当接し回転して当該媒体を面方向に移動させる搬送ローラと、
上記搬送ローラの回転軸と平行に軸方向に延設され、当該軸方向に沿って複数独立して設けられ、上記媒体の面に離接する軸可動方向に移動する軸と、
上記軸の外周面を囲うように上記媒体を挟んで上記搬送ローラに対向して上記軸毎に独立して設けられ、上記媒体に当接し上記搬送ローラの回転に応じて回転する軸受と、
上記軸が上記軸受と共に回転することを抑制する軸回転抑止部と、
一の摺動面と当該一の摺動面に対向する他の摺動面とに囲まれた軸摺動部と、
上記軸受毎に独立して設けられ、上記軸における上記軸受の上記軸方向の外側の両側を上記搬送ローラに向かって付勢する付勢部と
を有する媒体搬送装置。」


第5 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、第3 3-1に記載したとおりである。


第6 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、「上記軸受に対し上記媒体が搬送される搬送方向に沿って離隔した位置に固定され、」とする限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項をさらに限定したものに相当する本願補正発明が、第3 3-3に記載したとおり、引用発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

そして、本願発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2?11に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-11 
結審通知日 2015-08-18 
審決日 2015-09-01 
出願番号 特願2013-228026(P2013-228026)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G07D)
P 1 8・ 121- Z (G07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高島 壮基  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 熊倉 強
小宮 寛之
発明の名称 媒体搬送装置及び媒体取引装置  
代理人 田辺 恵基  

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