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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1307044 |
審判番号 | 不服2013-23046 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-11-25 |
確定日 | 2015-10-21 |
事件の表示 | 特願2011-509779「セキュリティが確保された生体認証モデルを用いるアイデンティティに基づく対称暗号システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月19日国際公開、WO2009/140654、平成23年 7月21日国内公表、特表2011-521567〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯の概要 (1)本件審判請求に係る出願(以下「本願」と記す)は 2008年5月15日付けのアメリカ合衆国での出願を基礎とするパリ条約に基づく優先権主張を伴い、 2009年5月15日付けで国際出願された出願であって、 平成22年11月15日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出され、 平成23年1月17日付けで特許法第184条の4第1項の規定による翻訳文が提出されるとともに、同日付けで審査請求がなされ、 平成24年12月5日付けで3か月の期間を指定した拒絶理由通知(平成24年12月11日発送)がなされ、 平成25年3月11日付け及び平成25年4月10日付けで、合計3か月の期間延長の請求があったものの、期間内に意見書や補正書の提出はなく、 平成25年6月20日付けで上申書が提出され、 平成25年7月18日付けで拒絶査定(平成25年7月23日謄本発送、送達)がなされたものである。 (2)本件審判請求は、 「原査定を取り消す。本願は特許をすべきものである、との審決を求める。」との請求の趣旨で、 平成25年11月25日付けで請求されたものであって、 同日付けで手続補正書が提出され、特許法第162条の規定による審査官による審査(前置審査)に付され、 平成26年2月5日付けで3か月の期間を指定した拒絶理由通知(平成26年2月12日発送)がなされたが、期間内に意見書や補正書の提出はなく、 平成26年6月26日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされたものである。 なお、平成26年2月5日に作成された応対記録には、 平成26年2月5日に、審査官から出願人代理人への電話によって、請求項11及び14に対する補正案の検討が依頼され、 同日に出願人代理人から審査官にファクシミリによって、補正案が送付され、 同日に審査官から出願人代理人への電話によって、提出された補正案により本願請求項11、14は拒絶理由を有しない旨の心証を得た旨の連絡があった旨記録されており、 また、平成26年5月13日に作成された応対記録には、 平成26年5月12日に出願人代理人から審査官への電話によって、通知中の拒絶理由に応答しない旨の連絡があり、審査官が期間経過後前置報告をする旨記録されている。 2.拒絶理由・補正の内容・請求人の主張等 (1)当初の特許請求の範囲 平成23年1月17日付けで提出された翻訳文における特許請求の範囲は、概略、次のとおりのものである。 「(・・・前略・・・) 【請求項11】 コンピュータプログラム製品であって、 計算装置のユーザと関連づけられた生体認証データサンプルを受信することをコンピュータに行わせるための第1の組の符号と、 前記生体認証データサンプルを複数の歪み生体認証データに歪めることを前記コンピュータに行わせるための第2の組の符号と、 前記複数の歪み生体認証データの各々をシンドロームベクトルとして格納することを前記コンピュータに行わせるための第3の組の符号と、 前記格納された歪み生体認証データのランダムサンプルを得ることを前記コンピュータに行わせるための第4の組の符号と、 前記装置と関連づけられた秘密鍵と前記歪み生体認証データの前記ランダムサンプルとの組み合わせを用いて暗号化鍵を生成することを前記コンピュータに行わせるための第5の組の符号と、 前記暗号化鍵を用いてデータ送信を暗号化することを前記コンピュータに行わせるための第6の組の符号と、を備えるコンピュータによって読み取り可能な媒体を備える、コンピュータプログラム製品。 (・・・中略・・・) 【請求項36】 コンピュータプログラム製品であって、 第1の装置から生体認証データ及び秘密鍵を受信することをコンピュータに行わせるための第1の組の符号と、 前記第1の装置との関連づけに基づいて前記生体認証データ及び秘密鍵を格納するための第2の組の符号と、 前記第1の装置から第1の暗号化されたデータ及び対応する第1のランダマイザを受信することを前記コンピュータに行わせるための第3の組の符号と、 前記第1の装置から受信された前記第1のランダマイザに基づいて前記第1の装置に対応する前記格納された生体認証データの第1のランダムサンプルを得ることを前記コンピュータに行わせるための第4の組の符号と、 前記第1の装置に対応する前記秘密鍵と前記生体認証データの前記第1のランダムサンプルとの組み合わせを用いて第1の暗号解読鍵を生成することを前記コンピュータに行わせるための第5の組の符号と、 前記暗号解読鍵を用いて前記第1の暗号化されたデータを暗号解読することを前記コンピュータに行わせるための第6の組の符号と、を備えるコンピュータによって読み取り可能な媒体、を備える、コンピュータプログラム製品。 (・・・後略・・・)」 (2)原審拒絶理由 上記平成24年12月5日付けの拒絶理由通知で通知された理由は概略以下のとおりである。 『この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (・・・中略・・・) (12)請求項11に係る発明において、発明特定事項の「コンピュータプログラム製品」という表現は、技術的範囲が明確ではない表現であることから、発明が明確ではない。 (・・・中略・・・) (28)請求項36に係る発明において、発明特定事項の「コンピュータプログラム製品」という表現は、技術的範囲が明確ではない表現であることから、発明が明確ではない。 (・・・後略・・・)』 (3)上申書 上記平成25年6月20日付けの上申書の内容は、概略、次のとおりのものである。 『【上申の内容】 本願は平成24年12月11日付けで拒絶理由通知書を受けとり、回答期限が平成25年3月11日のところ1か月ごとに3回の期間延長を請求し、最終回答期限が平成25年6月11日となっておりましたが、出願人からの指示が最終回答期限後の平成25年6月13日に受け取りました。そのため、期限内に回答できませんでしたが、出願人は本願を継続する意思を示しており、出願人の指示に従いまして補正書案及び意見書案を作成しました。出願人が本願を継続する意思を有していることをご考慮下さり、以下に示します補正書案及び意見書案をご参考の上、再度の補正の機会を与えて下さることを上申します。 [書類名] 意見書(案) (・・・中略・・・) (2)本願発明が特許されるべき理由 上記拒絶の理由に対しまして別紙手続補正書に示しますように特許請求の範囲を補正しました。 (・・・中略・・・) 項目(12)に対しましては、請求項11に記載された「コンピュータプログラム製品」を「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」と補正しました。 (・・・中略・・・) 項目(15)?(28)に対しましては、請求項22?46を削除しました。 上記の補正により不明確は解消されるものと思料致します。 (3)結び 上述しましたように手続補正書に示します本願発明は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているものと思料致しますので、本願を再度ご審査下さり特許査定賜りますようお願い致します。 [書類名] 手続補正書(案) (・・・中略・・・) [補正の内容] [書類名]特許請求の範囲 (・・・中略・・・) [請求項11] コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、 計算装置のユーザと関連づけられた生体認証データサンプルを受信することをコンピュータに行わせるための第1の組の符号と、 前記生体認証データサンプルを複数の歪み生体認証データに歪めることを前記コンピュータに行わせるための第2の組の符号と、 前記複数の歪み生体認証データを複数のシンドロームベクトルとして格納することを前記コンピュータに行わせるための第3の組の符号と、 格納された前記歪み生体認証データから選択されたシンドロームベクトルのランダムサンプルを得ることを前記コンピュータに行わせるための第4の組の符号と、 前記装置と関連づけられた秘密鍵と前記複数の歪み生体認証データに対応し、記憶された複数のシンドロームベクトルから選択された前記シンドロームベクトルの前記ランダムサンプルとの組み合わせを用いて暗号化鍵を生成することを前記コンピュータに行わせるための第5の組の符号と、 前記暗号化鍵を用いてデータ送信を暗号化することを前記コンピュータに行わせるための第6の組の符号と、を備えるコンピュータによって読み取り可能な媒体を備える、コンピュータプログラム製品。 (・・・後略・・・)』 (4)拒絶査定 上記拒絶査定の理由は、次のとおりのものである。 「この出願については、平成24年12月 5日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。」 (5)審判請求理由 上記審判請求書における請求の理由は、概略、次のとおりのものである 『【請求の理由】 1.手続きの経緯 (・・・中略・・・) 2.拒絶理由の要点 平成24年12月11日付け発送の拒絶理由通知におきまして、請求項1?14、22?34、36に係る発明が明確でないとして特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていないとして拒絶認定されました。 上記拒絶理由通知に対しましては出願人からの指示を最終回答期限後に受けたため期限内に回答できませんでした。 そのため、平成25年7月23日付け送達の拒絶査定の謄本におきまして、この出願については、平成24年12月5日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶すべきものであると認定されました。 3.本願発明が特許されるべき理由 本願出願人は、かかる拒絶査定に対して審判請求するとともに、査定理由を解消するための特許法第161条の2に規定する審査前置制度の適用を受けるため、本審判請求と同日付で手続補正書を提出しました。 3-1 本願発明が不明確でない説明 平成24年12月5日付け拒絶理由通知書においてご指摘を受けました不明確について以下にご説明いたします。 (・・・中略・・・) 項目(12)に対しましては、請求項11に記載された「コンピュータプログラム製品」を「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」と補正しました。 (・・・中略・・・) 項目(15)?(28)に対しましては、請求項22?46を削除しました。 上記の補正により不明確は解消されるものと思料致します (・・・後略・・・)』 (6)審判請求時補正 上記平成25年11月25日付けの手続補正書は、特許請求の範囲を以下のように補正するものである。 「(・・・前略・・・) 【請求項11】 コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、 計算装置のユーザと関連づけられた生体認証データサンプルを受信することをコンピュータに行わせるための第1の組の符号と、 前記生体認証データサンプルを複数の歪み生体認証データに歪めることを前記コンピュータに行わせるための第2の組の符号と、 前記複数の歪み生体認証データを複数のシンドロームベクトルとして格納することを前記コンピュータに行わせるための第3の組の符号と、 格納された前記歪み生体認証データから選択されたシンドロームベクトルのランダムサンプルを得ることを前記コンピュータに行わせるための第4の組の符号と、 前記装置と関連づけられた秘密鍵と前記複数の歪み生体認証データに対応し、記憶された複数のシンドロームベクトルから選択された前記シンドロームベクトルの前記ランダムサンプルとの組み合わせを用いて暗号化鍵を生成することを前記コンピュータに行わせるための第5の組の符号と、 前記暗号化鍵を用いてデータ送信を暗号化することを前記コンピュータに行わせるための第6の組の符号と、を備えるコンピュータによって読み取り可能な媒体を備える、コンピュータプログラム製品。 (・・・後略・・・)」 (7)補正案 平成26年2月5日に入力された応対記録に添付された補正案は特許請求の範囲を以下のようにに補正することを提案するものである。 「(・・・前略・・・) 【請求項11】 コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、 計算装置のユーザと関連づけられた生体認証データサンプルを受信することをコンピュータに行わせるための第1の組の符号と、 前記生体認証データサンプルを複数の歪み生体認証データに歪めることを前記コンピュータに行わせるための第2の組の符号と、 前記複数の歪み生体認証データを複数のシンドロームベクトルとして格納することを前記コンピュータに行わせるための第3の組の符号と、 格納された前記歪み生体認証データから選択されたシンドロームベクトルのランダムサンプルを得ることを前記コンピュータに行わせるための第4の組の符号と、 前記装置と関連づけられた秘密鍵と前記複数の歪み生体認証データに対応し、記憶された複数のシンドロームベクトルから選択された前記シンドロームベクトルの前記ランダムサンプルとの組み合わせを用いて暗号化鍵を生成することを前記コンピュータに行わせるための第5の組の符号と、 前記暗号化鍵を用いてデータ送信を暗号化することを前記コンピュータに行わせるための第6の組の符号と、を備えるコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体。 (・・・後略・・・)」 (8)前置拒絶理由 上記平成26年2月5日付けの拒絶理由通知で通知された理由(以下「前置拒絶理由」と記す。)の内容は、概略、以下のとおりのものである。 『この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)請求項11に係る発明における、発明特定事項「コンピュータによって読み取り可能な媒体を備える、」の「コンピュータによって読み取り可能な媒体」は、本願明細書の段落【0096】に「コンピュータによって読み取り可能な媒体は、コンピュータ記憶媒体と、1つの場所から他の場所へのコンピュータプログラムの転送を容易にするあらゆる媒体を含む通信媒体との両方を含む。」と記載されていることから、「コンピュータ記憶媒体」及び「通信媒体」の両者の概念を含むものとして定義されているものと認められる。 そうしてみると、請求項11に係る発明の発明特定事項「コンピュータ読み取り可能な媒体」は、「コンピュータ記憶媒体」及び「通信媒体」の両者の概念を含むものとして独自に定義されているため、請求項11に係る発明において、「コンピュータによって読み取り可能な媒体」を通常の意味で解釈すべきか、独自に定義された意味で解釈すべかが不明であり、発明が明確ではない。 (2)請求項11に係る発明の発明特定事項「コンピュータプログラム製品」という表現は、技術的範囲が明確ではない表現であることから、発明が明確ではない。 (3)請求項11に係る発明において、発明特定事項「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、・・・・<中略>・・・・を備えるコンピュータによって読み取り可能な媒体を備える、コンピュータプログラム製品。」という表現は、日本語として不自然、もしくは、請求項11に係る発明のカテゴリを不明瞭にしており、発明が明確ではない。 (・・・後略・・・)』 3.本願特許請求の範囲の記載 本願特許請求の範囲の記載は、上記平成25年11月25日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲に記載のとおりのものであるところ、その請求項11の記載は、2.(6)に【請求項11】として示したとおりのものである。 4.当審判断 (1)上記前置拒絶理由の記(1)で指摘された不備について 本願明細書の段落【0096】には次のとおりの記載がある。(下線は当審付与。) 「コンピュータによって読み取り可能な媒体は、コンピュータ記憶媒体と、1つの場所から他の場所へのコンピュータプログラムの転送を容易にするあらゆる媒体を含む通信媒体との両方を含む。記憶媒体は、コンピュータによってアクセス可能なあらゆる利用可能な媒体であってもよい。一例として、及び制限することなしに、このコンピュータによって読み取り可能な媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROM又はその他の光学ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置又はその他の磁気記憶装置、又は命令又はデータ構造の形態で希望されるプログラムコードを搬送又は格納するために用いることができ、コンピュータによってアクセスし得るその他の媒体を備えることができる。更に、いずれの接続もコンピュータによって読み取り可能な媒体であるとされてもよい。例えば、ソフトウェアが、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、より対線、デジタル加入者ライン(DSL)、又は無線技術、例えば、赤外線、無線、及びマイクロ波、を用いてウェブサイト、サーバ、又はその他の遠隔ソースから送信される場合は、該同軸ケーブル、光ファイバケーブル、より対線、DSL、又は無線技術、例えば赤外線、無線、及びマイクロ波、は、媒体の定義の中に含まれる。」 したがって、本願の請求項11記載の「コンピュータによって読み取り可能な媒体」は「記憶媒体」に限定されるものではなく、「通信媒体」をも含むものであることは明らかである。 そして、特定の処理をコンピュータに行わせるための符号がいずれかの時間に通信媒体のどこかに載って伝送されているとするだけでは、「物」としての通信媒体を技術的に特定したことにはならず、当該符号と通信媒体との間には技術的関連がない。 してみると、上記前置拒絶理由の記(1)の指摘のとおり、本願請求項11に係る発明は明確ではない。 (2)上記前置拒絶理由の記(2)で指摘された不備について 一般的に「プログラム製品」という用語は、 ア.「プログラム」自体 イ.「プログラムが記録された記録媒体」 ウ.「プログラムが読み込まれたコンピュータシステム」 のいずれを意味しているのかが明確ではなく、その範囲が明確でない用語である。 そして、本願の発明の詳細な説明を参酌するに、段落【0017】【0028】【0032】【0041】【0095】【0097】等には「コンピュータプログラム製品」との用語が用いられてはいるものの、発明の詳細な説明のどこにも「コンピュータプログラム製品」との用語を明確に定義する記載は見当たらない。 してみると、本願請求項11における「コンピュータプログラム製品」との用語の意味は、発明の詳細な説明を参酌しても、その意味の明確なものではない。 したがって、上記前置拒絶理由の記(2)の指摘のとおり、本願請求項11に係る発明は明確でない。 (3)上記前置拒絶理由の記(3)で指摘された不備について 請求項11の記載は、冒頭の「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって」との修飾節が「コンピュータによって読み取り可能な媒体」を修飾するのか、「コンピュータプログラム製品」を修飾するのかが明確でなく、また、「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」が「コンピュータによって読み取り可能な媒体」と記載すべきものの誤記であるとの解釈も、「コンピュータ読み取り可能な媒体」が「コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体」と記載すべきものの誤記であるとの解釈も可能であり、日本語として明確な解釈ができるものではない。 また、上記(2)で検討したとおり「コンピュータプログラム製品」との用語の意味は、上記(2)でも検討したとおり、「プログラム」なのか、「記録媒体」なのか、「システム」なのかが明確なものではなく、さらに、上記(1)で検討したとおり「コンピュータによって読み取り可能な媒体」が「通信媒体」等をも含むと解されることなどを勘案すれば、本願における「コンピュータプログラム製品」とは、コンピュータプログラムが記録された「記憶媒体」であるとも、「通信媒体」を備える「コンピュータシステム」とも解し得るものであるため、そのカテゴリーが明確なものではない。 したがって、本願請求項11における「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、・・・・を備えるコンピュータによって読み取り可能な媒体を備える、コンピュータプログラム製品。」という表現は、日本語として不自然なものであるとともに、請求項11に係る発明のカテゴリを不明瞭にするものである。 してみると、上記前置拒絶理由の記(3)の指摘のとおり、本願請求項11に係る発明は明確でない。 (4)小結 よって、本願請求項11に係る発明を明確ではないとした上記前置拒絶理由の記(1)(2)(3)の指摘は妥当なものであり、本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものである。 5.補正案等について なお、請求人は上記2.(7)のとおり、上記前置拒絶理由を解消し得る補正案を提示してはいるものの、上記1.、2.で示した経緯等から見て、更なる補正の機会を設けることに益はないと判断される。 6.むすび 上記のとおり、本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、原査定を取り消し、本願は特許をすべきものである、とすることはできない。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-05-21 |
結審通知日 | 2015-05-26 |
審決日 | 2015-06-08 |
出願番号 | 特願2011-509779(P2011-509779) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(H04L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石田 信行 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 山崎 達也 |
発明の名称 | セキュリティが確保された生体認証モデルを用いるアイデンティティに基づく対称暗号システム |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 佐藤 立志 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 砂川 克 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 野河 信久 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 井上 正 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 赤穂 隆雄 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |