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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60K
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 B60K
管理番号 1307113
審判番号 不服2015-4580  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-09 
確定日 2015-11-17 
事件の表示 特願2010-238829「ハイブリッド車両の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月17日出願公開、特開2012- 91584、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成22年10月25日の出願であって、平成26年5月9日付けで拒絶理由が通知され、平成26年7月10日に意見書が提出されるとともに明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成26年12月3日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成27年3月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成27年7月21日に上申書が提出されたものである。

第2 本件補正の内容
1.補正の内容
平成27年3月9日付けで提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年7月10日付けで提出された手続補正書により補正された)下記(1)に示す請求項1ないし5を下記(2)に示す請求項1ないし5と補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし5

「【請求項1】
エンジン又はモータジェネレータの駆動力によって走行し、前記モータジェネレータを発電機として動作させてバッテリに蓄電可能なハイブリッド車両において、前記エンジン及び前記モータジェネレータの動作を制御する制御装置であって、
前記ハイブリッド車両は、前記エンジンと前記モータジェネレータとの間に備えられて前記エンジンの駆動力を断続可能な第1のクラッチと、前記第1のクラッチに備えられて前記第1のクラッチの伝達トルクを減衰可能なダンパ機構と、を備え、
前記エンジンの目標駆動トルクが所定駆動トルクよりも小さい、又は、前記モータジェネレータの発電トルクが所定発電トルクよりも小さい場合に、前記モータジェネレータの発電量を増加させて、前記モータジェネレータの発電トルクが前記イニシャルトルクを上回るように制御する発電量増加手段を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記発電量増加手段は、前記モータジェネレータの発電量の下限値を設定して、前記モータジェネレータの発電量を増加させることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記発電量増加手段は、前記バッテリのSOCが略満充電状態であるか、又は、前記バッテリの充電が禁止される状態では、前記モータジェネレータの発電量の増加を禁止することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記ハイブリッド車両は、前記エンジン及び前記モータジェネレータと駆動輪との間に第2のクラッチが備えられ、
前記発電量増加手段は、前記第2のクラッチのトルク容量を制御しながら走行するWSC走行状態のときに、前記モータジェネレータの発電量を増加させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記発電量増加手段は、アクセル開度が、予め定めた目標駆動トルク判定開度よりも小さい場合に、前記モータジェネレータの発電量を増加させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の制御装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし5

「【請求項1】
エンジン又はモータジェネレータの駆動力によって走行し、前記モータジェネレータを発電機として動作させてバッテリに蓄電可能なハイブリッド車両において、前記エンジン及び前記モータジェネレータの動作を制御する制御装置であって、
前記ハイブリッド車両は、前記エンジンと前記モータジェネレータとの間に備えられて前記エンジンの駆動力を断続可能な第1のクラッチと、前記第1のクラッチに備えられて前記第1のクラッチの伝達トルクを減衰可能なダンパ機構と、を備え、
前記第1のクラッチを締結し、前記エンジンを駆動して前記モータジェネレータを発電させ、かつ車両が走行している場合であって、前記モータジェネレータの発電トルクが前記ダンパ機構のイニシャルトルクよりも小さい場合に、前記モータジェネレータの発電量を増加させて、前記モータジェネレータの発電トルクが前記ダンパ機構の前記イニシャルトルクを上回るように制御する発電量増加手段を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記発電量増加手段は、前記モータジェネレータの発電量の下限値を設定して、前記モータジェネレータの発電量を増加させることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記発電量増加手段は、前記バッテリのSOCが略満充電状態であるか、又は、前記バッテリの充電が禁止される状態では、前記モータジェネレータの発電量の増加を禁止することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記ハイブリッド車両は、前記エンジン及び前記モータジェネレータと駆動輪との間に第2のクラッチが備えられ、
前記発電量増加手段は、前記第2のクラッチのトルク容量を制御しながら走行するWSC走行状態のときに、前記モータジェネレータの発電量を増加させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記発電量増加手段は、アクセル開度が、予め定めた目標駆動トルク判定開度よりも小さい場合に、前記モータジェネレータの発電量を増加させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の制御装置。」
(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

3.本件補正の目的

本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における「前記エンジンの目標駆動トルクが所定駆動トルクよりも小さい、又は、前記モータジェネレータの発電トルクが所定発電トルクよりも小さい場合に、」との記載を「前記モータジェネレータの発電トルクが前記ダンパ機構のイニシャルトルクよりも小さい場合に、」として、「前記エンジンの目標駆動トルクが所定駆動トルクよりも小さい、又は、」という択一的記載の要素を削除するとともに、「所定発電トルク」を「ダンパ機構のイニシャルトルク」に限定したものであり、さらに、「前記エンジンを駆動して前記モータジェネレータを発電させ、かつ車両が走行している場合であって、」という発明特定事項を直列的に付加するものであるから、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「発電量増加手段」が「前記モータジェネレータの発電量を増加させて、前記モータジェネレータの発電トルクが前記ダンパ機構の前記イニシャルトルクを上回るように制御」を行う条件について限定するものといえる。
したがって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。

4.本件補正の適否

そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)刊行物

ア 刊行物1の記載事項

本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-202693号公報(以下「刊行物1」には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0009】
モータ/ジェネレータ7は、車両の走行状況に応じて、モータとして作用したり、ジェネレータとして作用する。」(段落【0009】)

(イ)「【0010】
モータ/ジェネレータ7およびエンジン3の間、より詳しくは、軸6およびエンジンクランクシャフト3aの間に、エンジン側摩擦要素としてのエンジンクラッチ8を介装している。エンジンクラッチ8は、エンジン3およびモータ/ジェネレータ7間の結合および切り離しを行う。」(段落【0010】)

(ウ)「【0013】
このハイブリッド車両では、エンジン3のみが走行駆動源となる走行モード、エンジン3およびモータ/ジェネレータ7が走行駆動源となるハイブリッド走行モード、および、モータ/ジェネレータ7のみが走行駆動源となる電気走行モードのうちのいずれかの走行モードにて走行する。」(段落【0013】)

(エ)「【0019】
図4は、エンジン3からモータ/ジェネレータ7を経て自動変速機4に至るまでのトルクフローとともに、回転ダンパーを設ける位置を示す図である。図4において、太い実線は、トルクフローを示している。図4に示すように、第1の実施の形態におけるハイブリッド車両の制振装置では、トルクフローの経路上におけるモータ/ジェネレータ7の前後の位置に、回転ダンパー41、42をそれぞれ1つずつ設ける。すなわち、エンジン3およびモータ/ジェネレータ7の間に回転ダンパー(前ダンパー)41を設けるとともに、モータ/ジェネレータ7および自動変速機4の間に回転ダンパー(後ダンパー)42を設ける。」(段落【0019】)

(オ)「【0020】
前ダンパーである回転ダンパー41には、エンジン3のトルクしか加わらないが、後ダンパーである回転ダンパー42には、エンジン3およびモータ/ジェネレータ7のトルクが加わる。従って、回転ダンパー42の剛性(回転ダンパー42に用いられるスプリングの剛性)は、回転ダンパー41の剛性(回転ダンパー41に用いられるスプリングの剛性)よりも大きい。」(段落【0020】)

(カ)「【0025】
なお、モータ/ジェネレータ7の前に配置される回転ダンパー41は、エンジン回転数の低回転領域におけるトルク変動レベルを低下させる役割を有し、モータ/ジェネレータ7の後ろに配置される回転ダンパー42は、モータ/ジェネレータ7が主のイナーシャとなっている振動系の固有振動周波数を大幅に高くする役割を有する。」(段落【0025】)

イ 上記ア及び図面の記載から分かること

(ア)上記ア(ウ)の記載によれば、エンジン3のみ、エンジン3及びモータ/ジェネレータ7並びにモータ/ジェネレータ7のみを走行駆動源とする各走行モードがあることから「エンジン3又はモータ/ジェネレータ7の少なくとも一方を走行駆動源とする、ハイブリッド車両において、前記エンジン3及び前記モータ/ジェネレータ7の動作を制御する制御装置」が設けられていることが分かる。

(イ)上記ア(ア)の記載によれば、モータ/ジェネレータ7はジェネレータとして作用することから、「モータ/ジェネレータ7をジェネレータとして作用させる」ことが分かる。

(ウ)上記ア(イ)及び図1の記載によれば、エンジン3及びモータ/ジェネレータ7の間にエンジンクラッチ8を介装し、エンジン4及びモータ/ジェネレータ7間の結合及び切り離しを行うことから、「エンジン3とモータ/ジェネレータ7との間に介装されて、前記エンジン3の駆動力の結合及び切り離しが可能なエンジンクラッチ8」が設けられていることが分かる。

(エ)上記ア(エ)及び(カ)並びに図4の記載によれば、エンジン3及びモータ/ジェネレータ7の間に回転ダンパー41を設けること及び回転ダンパー41はトルク変動レベルを低下させる役割を有していることから、「エンジン3及びモータ/ジェネレータ7の間に設けられて、トルク変動レベルを低下させる回転ダンパー41」が設けられていることが分かる。

(オ)上記ア(ア)ないし(ウ)並びに図1及び図4の記載によれば、モータ/ジェネレータ7はジェネレータとして作用すること、モータ/ジェネレータ7及びエンジン3の間はエンジンクラッチ8で結合されること及びエンジン3のみが走行駆動源となる走行モードを備えていることから、「エンジンクラッチ8を結合し、エンジン3を駆動してモータ/ジェネレータ7をジェネレータとして作用させる」ことが分かる。

ウ 刊行物1に記載された発明

したがって、上記ア及びイを総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。

<刊行物1に記載された発明>

「エンジン3又はモータ/ジェネレータ7の少なくとも一方を走行駆動源とする、モータ/ジェネレータ7をジェネレータとして作用させるハイブリッド車両において、前記エンジン3及び前記モータ/ジェネレータ7の動作を制御する制御装置であって、
前記ハイブリッド車両は、前記エンジン3とモータ/ジェネレータ7との間に介装されて、前記エンジン3の駆動力の結合及び切り離しが可能なエンジンクラッチ8と、
前記エンジン3及び前記モータ/ジェネレータ7の間に設けられて、トルク変動レベルを低下させる回転ダンパー41と、を備え、
前記エンジンクラッチ8を結合し、前記エンジン3を駆動して前記モータ/ジェネレータ7をジェネレータとして作用させることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。」

エ 刊行物2の記載事項

本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-159404号公報(以下「刊行物2」には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0007】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたもので、停車時においてエンジンを始動または停止させた場合においても効果的に振動を低減することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。」(段落【0007】)

(イ)「【0014】
また、電動機にトルクを加えることで、減速装置に含まれているギアはエンジンの回転時に変形する方向に押し付けられ、がたやバックラッシュの影響が除去される。さらに、減速装置に含まれるチェーンベルトは、一方向にテンションが作用することでたるみが無くなり、これによりヒステリシスの影響が除去される。本発明では、これらの非線型要因の影響を除去するため、この非線型要因に起因して発生していた停車時のエンジン始動(またはエンジン停止)時の車両振動をも低減することができる。」(段落【0014】)

(ウ)「【0030】
付加トルクの値τaは、図4に示すように、エンジン始動時または停止時にモータに加えるトルク(駆動トルクと付加トルクとの合算値)の範囲が、減速機等のギヤ系のがた等の非線形領域に入らないような大きさの値であって、エンジンマウントのたわみ、駆動軸のねじれ、サスペンションのたわみを生じさせ、それを維持できる大きさを設定する。一般的には、ブレーキペダル及びアクセルペダルを解放した状態で加えられる車両を駆動するトルク、すなわちクリープ現象によって加えられるトルクよりも小さな値となる。」(段落【0030】)

(2)対比・判断

本件補正発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1に記載された発明における「エンジン3」、「モータ/ジェネレータ7」、「走行駆動源とする」、「ジェネレータ」、「作用させ」、「間に介装されて」、「結合及び切り離しが可能な」、「エンジンクラッチ8」、「トルク変動レベルを低下させる」、「回転ダンパー41」、「結合し」及び「ジェネレータとして作用させ」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、それぞれ、本件補正発明における「エンジン」、「モータジェネレータ」、「駆動力によって走行し」、「発電機」、「動作させて」、「間に備えられて」、「断続可能な」、「第1のクラッチ」、「伝達トルクを減衰可能な」、「ダンパ機構」、「締結し」及び「発電させ」に相当する。

したがって、本件補正発明と刊行物1に記載された発明は、
「エンジン又はモータジェネレータの駆動力によって走行し、前記モータジェネレータを発電機として動作させるハイブリッド車両において、前記エンジン及び前記モータジェネレータの動作を制御する制御装置であって、
前記ハイブリッド車両は、前記エンジンと前記モータジェネレータとの間に備えられて前記エンジンの駆動力を断続可能な第1のクラッチと、前記第1のクラッチの伝達トルクを減衰可能なダンパ機構と、を備え、
前記第1のクラッチを締結し、前記エンジンを駆動して前記モータジェネレータを発電させることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
「モータジェネレータを発電機として動作させる」のに関し、本件補正発明においては、「バッテリに蓄電可能」であるのに対し、刊行物1に記載された発明においては、蓄電可能なバッテリを備えているのかが不明である点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
「ダンパ機構」に関し、本件補正発明においては、「ダンパ機構」は「前記第1のクラッチに備えられて」いるのに対し、刊行物1に記載された発明においては、回転ダンパー41がエンジンクラッチ8に備えられているのかが不明である点(以下、「相違点2」という。)。

<相違点3>
「前記第1のクラッチを締結し、前記エンジンを駆動して前記モータジェネレータを発電させる」に関し、本件補正発明においては、「前記第1のクラッチを締結し、前記エンジンを駆動して前記モータジェネレータを発電させ、かつ車両が走行している場合であって、前記モータジェネレータの発電トルクが前記ダンパ機構のイニシャルトルクよりも小さい場合に、前記モータジェネレータの発電量を増加させて、前記モータジェネレータの発電トルクが前記ダンパ機構の前記イニシャルトルクを上回るように制御する発電量増加手段を備える」のに対し、刊行物1に記載された発明においては、そのような発電量増加手段を有するかが不明である点(以下、「相違点1」という。)。

以下、上記の相違点について検討する。

<相違点1について>
ハイブリッド車両において、モータジェネレータが発電した電力を蓄電可能なバッテリを備えるという技術は、例示するまでもなく本件出願前周知の技術(以下、「周知技術1」という。)である。
そうすると、刊行物1におけるハイブリッド車両において、周知技術1を単に付加し、相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば、容易に想到できたことである。

<相違点2について>
ハイブリッド車両において、クラッチがダンパ機構を備えるという技術は本件出願前周知の技術(例えば、特開2010-053730号公報[特に、【0022】及び【0023】等参照。以下、「周知技術2」という。)である。
そうすると、刊行物1におけるハイブリッド車両のエンジンクラッチ8及び回転ダンパー41において、周知技術2を適用し、相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば、容易に想到できたことである。

<相違点3について>

刊行物2には上記(1)エ(ア)ないし(ウ)及び図4の記載から、「停車時に減速機等のギヤ系のがた等の非線形領域に入らないような大きさのトルクをモータにより与えることにより、がたやバックラッシュの影響が除去されるハイブリッド車両。」(以下、「刊行物2に記載された発明」という。)が記載されている。
しかしながら、刊行物1に記載された発明における「回転ダンパー41」には、非線形領域に入らないような大きさのトルクが与えられている場合にがたやバックラッシュの影響があるという課題が存在するかは不明であり、刊行物2に記載された発明と課題において共通するとまではいえない。
また、刊行物1に記載された発明においては、(1)ア(オ)に記載されているように「回転ダンパー41」にトルクを加える機構はエンジン3である一方、刊行物2に記載された発明におけるモータによりトルクが与えられる対象は減速機等であり、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とでは、トルクが加えられる対象が異なることから、その作用及び機能も異なるものである。
このように、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明においては、課題、作用及び機能で共通するとまではいえず、他に刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とを積極的に組み合わせる動機付けがあるとも認められない。
そうすると、刊行物1におけるハイブリッド車両のエンジンクラッチ8を結合し、エンジン3を駆動してモータ/ジェネレータ7をジェネレータとして作用させる場合に、刊行物2に記載された発明を適用する理由はないため、相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項である「前記第1のクラッチを締結し、前記エンジンを駆動して前記モータジェネレータを発電させ、かつ車両が走行している場合であって、前記モータジェネレータの発電トルクが前記ダンパ機構のイニシャルトルクよりも小さい場合に、前記モータジェネレータの発電量を増加させて、前記モータジェネレータの発電トルクが前記ダンパ機構の前記イニシャルトルクを上回るように制御する発電量増加手段を備えること」とすることは、当業者であっても、容易に想到できたこととはいえない。

仮に、刊行物1に記載された発明のような回転ダンパー41を有するハイブリッド車両において、「ダンパーに加わるトルクがダンパーのイニシャルトルクよりも小さい場合にがた等が発生する」という課題が本願出願前周知の課題(以下、「周知課題」という。)であると仮定する。
そして、刊行物1に記載された発明において周知課題を解決するために、刊行物1に記載された発明の回転ダンパー41において、回転ダンパー41に加わるトルクがイニシャルトルクよりも小さい場合に、刊行物2に記載された発明における非線形領域に入らないような大きさのトルクを与える構成を適用し、回転ダンパー41に加わるトルクが回転ダンパー41のイニシャルトルクよりも小さい場合に、イニシャルトルクに入らないような大きさのトルクをエンジン3により加える構成とすることは当業者が容易に行い得るものであるが、相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項には到達しない。
すなわち、刊行物1に記載された発明においては、(1)ア(オ)に記載されているように回転ダンパー41にトルクを加える機構はエンジン3であり、モータ/ジェネレータ7の発電によって発生する発電トルクが回転ダンパー41に加わるものではない。
つまり、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された発明を適用した場合、エンジン3のトルクを回転ダンパー41のイニシャルトルクを上回るトルクに設定することまでは当業者であれば容易に想到し得るものといえるが、相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項である「モータ/ジェネレータ7の発電量を回転ダンパー41のイニシャルトルクを上回る発電トルクが発生する発電量に設定すること」は当業者であっても容易に想到し得るとまではいえない。
また、他にモータ/ジェネレータ7の発電量を回転ダンパー41のイニシャルトルクを上回る発電トルクが発生する発電量に設定する根拠も認められない。

したがって、本件補正発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された発明、周知技術1及び2並びに周知課題に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとまではいえない。
よって、本件補正発明の補正事項は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
加えて、本件補正発明の補正事項に、特許法第17条の2第3項ないし第5項に違反するところはない。

本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

5.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし5に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
審決日 2015-10-30 
出願番号 特願2010-238829(P2010-238829)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60K)
P 1 8・ 575- WY (B60K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 将一山村 和人本庄 亮太郎  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 松下 聡
梶本 直樹
発明の名称 ハイブリッド車両の制御装置  
代理人 飯田 雅昭  
代理人 後藤 政喜  
代理人 村瀬 謙治  

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