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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01M
管理番号 1307186
審判番号 不服2014-18129  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-10 
確定日 2015-10-29 
事件の表示 特願2009-199087「ナトリウムイオン電池」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月10日出願公開、特開2011- 49126〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年 8月28日の出願であって、平成25年 7月25日付けの拒絶理由通知に対して、同年 9月30日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成26年 6月 2日付けで拒絶査定がなされ、この査定を不服として同年 9月10日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての手続補正書が提出されたものである。その後、同年10月24日に上申書が提出され、同年11月21日付けで特許法第164条第3項に定める報告がなされ、平成27年 2月 3日と同年 3月 5日に上申書が提出され、当審において同年 3月16日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対して、同年 5月18日に意見書とともに特許請求の範囲についての手続補正書が提出された。


第2 本願の特許請求の範囲に記載された発明
本願の特許請求の範囲に記載された発明は、平成27年 5月18日に提出された手続補正書によって補正された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極とが、有機溶媒にナトリウム塩が溶解している電解液に接触するナトリウムイオン電池であって、
前記負極活物質は酸化還元電位が0.9V(vs Na/Na+)であるLi_(4)Ti_(5)O_(12)を含む、ことを特徴とするナトリウムイオン電池。」


第3 当審拒絶理由
当審は、平成27年 3月16日付けで拒絶理由を通知したが、その理由は要するに以下のとおりである。(なお、「・・・」は記載の省略を表す。)
「 理由
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

ア. 発明の詳細な説明によれば、本願発明は、充電時における電位がナトリウムの析出する電位よりも高く、充電時にナトリウム金属の析出のおそれの少ないナトリウムイオン電池を提供することを解決すべき課題としている(【0002】?【0009】)。

イ. そして、上記ア.に示した課題は、発明の詳細な説明によれば、ニトリル化合物が添加された電位窓の広いナトリウムイオン電池用の電解液を用いれば、酸化還元電位がカーボン系の負極活物質より高い、Li_(4)Ti_(5)O_(12)を負極活物質として確実に動作させることができることを見出し、完成するに至った、本願発明によって解決できるとされ、前記電解液は、その有機溶媒が、鎖式飽和炭化水素化合物の両末端にニトリル基が結合した鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物、鎖式エーテル化合物の末端の少なくとも一つにニトリル基が結合した鎖式エーテルジニトリル化合物及びシアノ酢酸エステルのうち少なくとも一つのニトリル化合物と、環状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル及び鎖状炭酸エステルのうち少なくとも一つとを含む有機溶媒であって、前記有機溶媒の全体に占める前記ニトリル化合物の配合割合が1?90容量%である電解液(以下、「所定の電解液」という。)であると説明されている(【0010】、【0020】?【0037】、【0056】)

ウ. また、発明の詳細な説明には、上記ア.に示した課題は、実施例のナトリウムイオン電池によって解決できることが記載されている(【0042】?【0049】)ところ、そのナトリウムイオン電池においても、電解液は所定の電解液である。

エ. ・・・

オ. しかしながら、請求項1では、ナトリウムイオン電池について、上記イ.?ウ.で示した、電解液が所定の電解液であることが特定されておらず、・・・ 請求項1のナトリウムイオン電池に係る発明は、電解液が所定の電解液以外の、例えば、本願における比較例1とされている電解液の場合・・・ まで包含しているといえる。

カ. そうすると、請求項1の発明特定事項のみで上記ア.に示した課題を解決できるとまではいえない。

キ. ・・・

ク. したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。」


第4 当審の判断
上記第3に示した拒絶理由の通知に対して請求人から平成27年 5月18日に提出された意見書及び手続補正書を勘案しても、当審は、上記第3に示した当審拒絶理由が依然として解消されていない、と判断する。

以下、その判断理由につき詳述する。
1. 判断手法
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に係る規定(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから(知財高裁特別部判決平成17年(行ケ)第10042号参照)、以下、当該観点に立って検討する。


2. 発明の詳細な説明の記載及び図面の記載
平成25年 9月30日に提出された手続補正書によって補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の発明の詳細な説明及びそこで引用される図面には、以下の記載がある(なお、「…」は記載の省略を表す。)。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウムイオン電池用の負極活物質及びそれを用いたナトリウムイオン電池に関する。」

(2)「【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、ラップトップのパソコンや携帯電話などポータブルの電子機器に多く使われており、さらには次世代の電気自動車やハイブリッド車用の二次電池としての実用化が進められている。
【0003】
しかしながらリチウムは高価であり、しかも資源が南米に極端に偏在しており、原料の安定供給に対する不安もある。このため、資源量が豊富で価格の安いナトリウム塩をリチウム塩の代わりに使用したナトリウムイオン電池が、リチウムイオン電池の代替品として提案されている。
【0004】
ナトリウムイオン電池に使用する正極活物質としては、リチウムイオン電池に用いられる正極活物質をそのまま利用できるものも多い。…
【0005】
ところが、リチウムイオン電池に用いられる負極活物質については、ほとんど報告例がなく、カーボン系の負極活物質において充放電の動作が確認されている程度である。例えば、レゾルシノールを原料とし、これを炭化したカーボン材料がリチウムイオン電池用の負極活物質として知られている(非特許文献1及び非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-12491号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Electrochemical and Solid-state Letters, 8(4) A222- A225(2005)
【非特許文献2】Electrochimica Acta 47 (2002) 3303-3307 」

(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来のカーボン系の負極活物質では、充電時においてナトリウムが負極活物質であるカーボンにインターカレーションする電位が、Na金属の析出する電位である0.3V(vs Li/Li+)に近く、過電圧を考慮した場合、充電時にナトリウム金属が負極活物質上で析出するおそれがあった。ナトリウムは極めて反応性の高い金属であり、万が一ナトリウムの析出した負極活物質が大気中に触れた場合には、大気中の水分や水と触れて、激しい発熱が生じるという危険性がある。このため、ナトリウムイオン電池の実用化が遅れていた。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、充電時における電位がナトリウムの析出する電位よりも高く、充電時にナトリウム金属の析出のおそれの少ないナトリウムイオン電池用の負極活物質及びナトリウムイオン電池を提供することを解決すべき課題としている。」

(4)「【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来の課題を解決するため、リチウムイオン電池の電極活物質として知られているLi_(4)Ti_(5)O_(12)をナトリウムイオン電池の電極活物質に適用できないか検討した。Li_(4)Ti_(5)O_(12)はナトリウムのインターカレーション-デインターカレーションが可能であり、その酸化還元電位もカーボン系の負極活物質より高いため安全性が高いとして注目されている。しかし、ナトリウムイオンのイオン半径がリチウムイオンのイオン半径よりもかなり大きいため、ナトリウムイオンのLi_(4)Ti_(5)O_(12)へのインターカレーションは困難であり、ナトリウムイオン電池の負極活物質としてLi_(4)Ti_(5)O_(12)の適用は考えられておらず、動作の確認がなされたことも無かった。本発明者らは、既に、ニトリル化合物が添加された電位窓の広いナトリウムイオン電池用の電解液の出願を行なっているが(特願2008-322913)、この電解液を用いればLi_(4)Ti_(5)O_(12)を負極活物質として確実に動作させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のナトリウムイオン電池用電極活物質は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極とが、有機溶媒にナトリウム塩が溶解している電解液に接触するナトリウムイオン電池に用いる電極活物質であって、Li_(4)Ti_(5)O_(12)からなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のナトリウムイオン電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極とが、有機溶媒にナトリウム塩が溶解している電解液に接触するナトリウムイオン電池であって、前記正極活物質又は前記負極活物質はLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなることを特徴とする。
【0013】
本発明のナトリウムイオン電池は、電解液の有機溶媒に、鎖式飽和炭化水素化合物の両末端にニトリル基が結合した鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物、鎖式エーテル化合物の末端の少なくとも一つにニトリル基が結合した鎖式エーテルジニトリル化合物及びシアノ酢酸エステルのうち少なくとも一つのニトリル化合物と、環状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル及び鎖状炭酸エステルのうち少なくとも一つとが含まれていることが好ましい。
【0014】
本発明のナトリウムイオン電池では、好ましくは、電解液の有機溶媒として鎖式飽和炭化水素化合物の両末端にニトリル基が結合した鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物、鎖式エーテル化合物の末端の少なくとも一つにニトリル基が結合した鎖式エーテルニトリル化合物及びシアノ酢酸エステルのうち少なくとも一つのニトリル化合物を含む。これらのニトリル化合物は、電位窓を広げる役割を果たしている。そして、さらに有機溶媒として環状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル及び鎖状炭酸エステルのうち少なくとも一つとが含まれていることが好ましい。これらのエステルは、粘度の高いニトリル化合物の粘度を下げ、比伝導度を大きくする役割を果たす。
【0015】
したがって、本発明のナトリウムイオン電池によれば、電解液が高い電位においても分解し難く、充放電が高い正電位の領域にまで及ぶ物質を正極活物質として利用することができる。
【0016】
本発明のナトリウムイオン電池の電解液が、電位窓のそれほど広くない環状炭酸エステルや、環状カルボン酸エステルや、鎖状炭酸エステルを含んでいるにもかかわらず、広い電位窓を有する理由については、必ずしも明確ではないが、次のように考えられる。すなわち、鎖状炭酸エステルは粘度を下げるため、比伝導度を大きくする役割を果たすと推測される。また、環状炭酸エステルや環状カルボン酸エステルは、従来から知られているとおり、カーボン負極上にSEIといわれる保護皮膜を形成することで、耐還元性を向上させつつ、ナトリウムイオンを通過させることができる特性を付与することができる。そのため、負側および正側の電位窓拡大に効果を発揮することが可能となると推定される。
【0017】
環状炭酸エステルとしては、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートを用いることができる。また、環状カルボン酸エステルとしてはγ-ブチロラクトンを用いることができる。さらに鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネートやジエチルカーボネートを用いることができる。
【0018】
また、ナトリウム塩としては、NaClO_(4)、NaPF_(6)、NaBF_(4)、NaCF_(3)SO_(3)、NaN(CF_(3)SO_(2))_(2)、NaN(FSO_(2))_(2)、NaN(C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)、NaC(CF_(3)SO_(2))_(3)を用いることができる。これらのナトリウム塩は、単独で用いてもよく、2以上の種類を混合して用いてもよい。特に好ましいのはNaPF_(6)である。」

(5)「【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは、前述したように、特に正電位側に広い電位窓を有するナトリウムイオン電池用電解液を開発し、その特許出願を行なっている(特願2008-322913)。そして、その電解液を用いれば、充電のための電位が5.1V(対Li/Li+)を超える領域に存在するような高電位酸化還元正極活物質を正極活物質として利用することを既に確認している。このような高電位酸化還元正極活物質としては、NaMPO_(4)やNaMPO_(4)F(M=Ni,Co,Mn)が考えられ、これらの正極活物質と、本発明のナトリウムイオン電池用電極活物質と、特願2008-322913に記載のナトリウムイオン電池用電解液とを組み合わせることにより、エネルギー密度が高く、容量の大きなナトリウムイオン電池とすることができる。
【0021】
特願2008-322913では、ナトリウムイオン電池用電解液を具体化した試験例1?8及び比較例1について、次のように記載している。
【0022】
試験例1?5は、有機溶媒として鎖式飽和炭化水素化合物の両末端をニトリル基で置換した鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物を含む試験例である。また、試験例6は、有機溶媒として鎖式エーテル化合物の両末端をニトリル基で置換した鎖式エーテルジニトリル化合物を含む試験例である。さらに、試験例7、8は有機溶媒としてシアノ酢酸エステルを含む試験例である。各試験例及び比較例の電解液の組成を表1に示す
【0023】
【表1】


【0024】
(試験例1)
試験例1では、有機溶媒としてスクシノニトリルと、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを容量比で50:25:25の割合で混合した溶媒を用い、これにナトリウム塩として六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF_(6))を0.5mol/Lとなるように溶解させてナトリウムイオン電池用電解液とした。
【0025】
(試験例2)
試験例2では、有機溶媒としてグルタロニトリルと、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを容量比で50:25:25の割合で混合した溶媒を用いた。その他は試験例1と同様であり、説明を省略する。
【0026】
(試験例3)
試験例3では、有機溶媒としてアジポニトリルと、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを容量比で50:25:25の割合で混合した溶媒を用いた。その他は試験例1と同様であり、説明を省略する。
【0027】
(試験例4)
試験例4では、有機溶媒としてセバコニトリルと、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを容量比で50:25:25の割合で混合した溶媒を用いた。その他は試験例1と同様であり、説明を省略する。
【0028】
(試験例5)
試験例5では、有機溶媒としてドデカンジニトリルと、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを容量比で50:25:25の割合で混合した溶媒を用いた。その他は試験例1と同様であり、説明を省略する。
【0029】
(試験例6)
試験例6では、有機溶媒としてオキシプロピオニトリルと、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを容量比で50:25:25の割合で混合した溶媒を用いた。その他は試験例1と同様であり、説明を省略する。
【0030】
(試験例7)
試験例7では、有機溶媒としてシアノ酢酸メチルと、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを容量比で50:25:25の割合で混合した溶媒を用いた。その他は試験例1と同様であり、説明を省略する。
【0031】
(試験例8)
試験例8では、有機溶媒としてシアノ酢酸ブチルと、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを容量比で50:25:25の割合で混合した溶媒を用いた。その他は試験例1と同様であり、説明を省略する。
【0032】
(比較例1)
比較例1では、有機溶媒としてエチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを容量比で50:50の割合で混合した溶媒を用いた。また、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF_(6))の濃度を1.0mol/Lとした。その他は試験例1と同様であり、説明を省略する。
【0033】
-評価-
(電位-電流曲線の測定)
以上のようにして調製した試験例1?8及び比較例1のナトリウムイオン電池用電解液について、電位-電流曲線を測定した。測定にはポテンシオガルバノスタットを用い、作用極にはグラッシーカーボンを用い、対極には白金網を用いた。また、参照電極は金属リチウムを用いた。電位の掃引速度は5mV/秒の速度で電位の掃引を行い、電位-電流曲線を測定した。結果を図1?図3に示す。
【0034】
図1に示すように、有機溶媒がエチレンジカーボネートとジメチルカーボネートとからなり、ニトリル化合物を含まない比較例1では5.8Vで50μA/cm^(2)となり、それより高電圧では大きく立ち上がっているのに対し、各種の鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物を用いた試験例1?5では、さらに高い電位に至らないと50μA/cm^(2)を超えない(50μA/cm^(2)における電流値は試験例1で6.5V、試験例2で7.0V、試験例3で7.5V、試験例4で7.2V、試験例5で7.2V)ことが分かった。
【0035】
また、図2に示すように、有機溶媒が鎖式エーテル化合物の両末端をニトリル基で置換した鎖式エーテルジニトリル化合物を含み、さらにエチレンジカーボネートとジメチルカーボネートとを含む試験例6の電解液では、電流が50μA/cm^(2)となる電圧は6.8Vとなり、やはり高い電圧まで電解液は安定であることが分かった。
【0036】
また、図3に示すように、有機溶媒がシアノ酢酸エステルを含み、さらにエチレンジカーボネートとジメチルカーボネートとを含む試験例7及び8の電解液では、有機溶媒がエチレンジカーボネートとジメチルカーボネートとからなる比較例1と比較して、電圧6.2V以上における電流値が小さく、高電圧における電解液の耐分解性に優れていることが分かった。
【0037】
以上の結果から、試験例1?8の電解液を用いれば、充電のための電圧が6Vを超えた領域に存在するような高電位酸化還元正極活物質をナトリウムイオン電池の正極活物質として利用できることとなり、電池の電圧及びエネルギー密度が高く、容量の大きなナトリウムイオン電池とすることができる。

【実施例】
【0042】
ニトリル化合物を含有する上述の電解液を用いれば、Li_(4)Ti_(5)O_(12)を電極活物質として動作させることができる。以下、具体化した実施例について詳細に述べる。
チタン酸リチウムLi_(4)Ti_(5)O_(12)は、石原産業製のXA-106を使用した。特性を表3に示す。
【0043】
【表3】


【0044】
<電極材ペレットの製造>
上記Li_(4)Ti_(5)O_(12)の粉末と、アセチレンブラックと、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを80:25:5の割合(重量比)で秤取り、乳鉢で混合した後、ホットプレス法によって円盤状の電極材ペレットを成形した。
【0045】
-評 価-
(CV測定)
上記のようにして作製した実施例の負極について、以下の条件によりサイクリックボルタンメトリーの測定を行った。
電解液はエチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):セバコニトリル=25::25:50の混合有機溶媒にNaPF_(6)を0.5mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いた。この電解液に、上記のようにして製造した円盤状の電極材ペレットを浸漬し、対極及び参照極としてNa金属を浸漬した。電位の掃引速度は5mV/秒とし、ナトリウム参照電極に対して0.4?2.0V(リチウム参照電極換算で0.7?2.3V)の範囲で電位掃引を行った。
【0046】
その結果、図4に示すように、ナトリウム参照電極に対して0.4?2.0Vの間で明確な酸化/還元電流が流れ、円盤状の電極材ペレットに含まれるLi_(4)Ti_(5)O_(12)は、電極活物質として充放電が可能であることが分かった。また、その酸化還元電位は、ナトリウム参照電極に対して0.9V(対リチウム参照電極で1.2V)付近に現れており、この電位はLi_(4)Ti_(5)O_(12)のリチウムイオンが脱離する電位(対リチウム参照電極で1.55V)よりも低いことから、ナトリウムイオン電池の電極活物質として充分動作可能であることが分かった。また、この電位はナトリウム金属の析出する電位である0.3V(対リチウム参照電極)よりも高いため、このLi_(4)Ti_(5)O_(12)を負極活物質として用いた場合、充電反応時にナトリウムの析出を防ぐことができ、安全性に優れたナトリウムイオン電池を構成することができる。
【0047】
<ナトリウムイオン電池の実施例>
前述のようにして作製した円盤状の電極材ペレット及びこれと同じ形状に金属ナトリウム板を打ち抜いたナトリウムペレットを用意し、電池容器としてステンレス製コインセル(SUS316L製 2032型)を用いてコイン型電池を作製した。すなわち、図5に示すように、SUS316Lからなる有底円筒状の電極缶11と、SUS316Lからなる有底円筒状で扁平状の電極キャップ12とを用意した。
【0048】
ついで、図6に示すように、電極缶11内に、SUS316Lからなるスペーサ13、ナトリウムペレット14及びセパレータ15を充填する。一方、電極キャップ12内に、SUS316Lからなる波座金16、SUS316Lからなるスペーサ17及び電極材ペレット18を充填する。そして、電極缶11内にニトリル化合物含有電解液を入れた後、絶縁ガスケット19を介して電極キャップ12を載置してかしめて密封してナトリウムイオン電池とする。ここで、ニトリル化合物含有電解液は下記の組成の電解液とした。
エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:セバコニトリル=25:25:50の混合溶媒にNaPF_(6)を0.5mol/Lとなるように溶解した溶液である。
【0049】
-評 価-
(充放電特性測定)
以上のように構成されたナトリウムイオン電池について、定電流における充放電特性を測定した。放電速度は0.05Cとし、放電電気量と負極電位との関係を求めた。その結果、図7に示すように、充放電が充分可能であることが分かった。
【0050】
実施例のナトリウムイオン電池は、正極活物質をLi_(4)Ti_(5)O_(12)とし、負極活物質をナトリウム金属としているが、ナトリウム金属の替わりに5V(vs リチウム参照電極)程度で動作する正極(例えば4.8VのNaCoPO_(4)等)を用いれば、Li_(4)Ti_(5)O_(12)は負極活物質として働き、その起電力も大きくなる(例えばNaCoPO_(4)の場合には4.8-1.2=3.6V)。…
【0051】
<ナトリウムイオン電池>
この発明はナトリウムイオン電池に適用される。
ここに、ナトリウムイオン電池は電解液、正極、負極、セパレータ及びケースを備えてなる。
【0052】
(電解液)
電解液はNa塩(電解質)と有機溶媒とを含んでいる。
Na塩には、従来からNaイオン電池用のNa塩として知られているものを用いることができる。例えば、例えば、NaClO_(4)、NaPF_(6)、NaBF_(4)、NaCF_(3)SO_(3)、NaN(CF_(3)SO_(2))_(2)、NaN(FSO_(2))_(2)、NaN(C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)、NaC(CF_(3)SO_(2))_(3)等が挙げられる。溶媒及び溶質の混合比は特に限定されず、目的に応じて適宜設定される。
また、各種添加剤(例えば、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチレンサルファイト)を0.1-3%程度入れることも好ましい。これにより、負極側で耐食性皮膜がで形成され、耐食性が向上する。
【0053】
有機溶媒もNaイオン電池に用いられる一般的なものを採用できる。かかる有機溶媒とし環状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル及び鎖状炭酸エステルの中から選ばれる1種、又は2種以上が好ましい。更に好ましくは、環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとを併用する。具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを併用することが特に好ましい。両者の配合割合は特に限定されない。環状カルボン酸エステルとしはγ-ブチロラクトンやプロピレンカーボネートを用いることができる。
鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネートのほかに、ジエチルカーボネートやエチルメチルカーボネートを使用することができる。
更にはニトリル化合物を有機溶媒として用いることができる。ここで、ニトリル化合物としては、鎖式飽和炭化水素化合物の両末端にニトリル基が結合した鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物、鎖式エーテル化合物の末端の少なくとも一つにニトリル基が結合した鎖式エーテルニトリル化合物及びシアノ酢酸エステルのうち少なくとも一つのニトリル化合物を挙げることができる。
【0054】
鎖式飽和炭化水素化合物の両末端にニトリル基が結合した鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物としては、例えば、スクシノニトリルNC(CH_(2))_(2)CN、グルタロニトリルNC(CH_(2))_(3)CN、アジポニトリルNC(CH_(2))_(4)CN、セバコニトリルNC(CH_(2))_(8)CN、ドデカンジニトリルNC(CH_(2))_(10)CNなどのような直鎖状のジニトリル化合物の他、2-メチルグルタロニトリルNCCH(CH_(3))CH_(2)CH_(2)CN等のように分枝を有していても良い。これらの鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物は、炭素数は特に限定されないが、7?20であることが好ましい。更に好ましくは10?12である。
【0055】
鎖式エーテル化合物の末端の少なくとも一つにニトリル基が結合した鎖式エーテルニトリル化合物としては、オキシジプロピオニトリルNCCH_(2)CH_(2)-O-CH_(2)CH_(2)CNや、3-メトキシプロピオニトリルCH_(3)-O-CH_(2)CH_(2)CN等が挙げられる。これらの鎖式エーテルニトリル化合物は、炭素数は特に限定されないが、20以下であることが好ましい。
シアノ酢酸エステルとしてはシアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、シアノ酢酸プロピル、シアノ酢酸ブチル等が挙げられる。これらのシアノ酢酸エステルは、炭素数は特に限定されないが、20以下であることが好ましい。
【0056】
これらニトリル化合物は電解液において電位窓を特に正方向に広げる作用を奏する。
電位窓を広げる作用の観点からジニトリル化合物が好ましい。中でも、セバコニトリルの採用が更に好ましい。
ただし、ニトリル化合物は粘度が高いので、上述の鎖状炭酸エステル、環状炭酸エステル及び/又は環状カルボン酸エステルと併用することが好ましい。更に好ましくはニトリル化合物と鎖状炭酸エステル及び環状炭酸エステルとを併用する。鎖状炭酸エステルとしてはジメチルカーボネートを採用することができ、環状炭酸エステルとしてはエチレンカーボネートを採用することができる。
この場合、有機溶媒全体に占めるニトリル化合物の配合割合は1?90容量%とすることが好ましい。更に好ましくは15?70容量%であり、更に更に好ましくは、30?50容量%である。
【0057】
Na塩の濃度は0.01mol/L以上であって、飽和状態よりも低い濃度とする。Na塩の濃度が0.01mol/L未満であると、Naイオンによるイオン伝導が小さくなり、電解液の電気抵抗が高くなるので好ましくない。他方、飽和状態を超えると、温度等の環境変化によって溶解しているNa塩が析出するので好ましくない。
【0058】
(正極)
正極は正極活物質と集電体とを備える。
正極活物質とは「二次電池の正極として充放電によって可逆的に酸化-還元を繰り返すことのできる物質」をいう。また、ナトリウムイオン電池の正極活物質としては、ナトリウムイオンを可逆的にインターカレート-デインターカレートできる物質であることが要求される。
このような正極活物質としては、特開2009-129741号公報に記載されているNaFeO_(2)、NaNiO_(2)、NaCoO_(2)、NaMnO_(2)、NaFe_(1-x)M^(1)_(x)O_(2)、NaNi_(1-x)M^(1)_(x)O_(2)、NaCo_(1-x)M^(1)_(x)O_(2)、NaMn_(1-x)M^(1)_(x)O_(2)(ただし、M^(1)は3価金属からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、0≦x<0.5である。)で示される化合物等が挙げられる。これらのなかでも、主に鉄とナトリウムとを含有する複合酸化物であって、六方晶の結晶構造からなる複合酸化物を正極活物質として用いることにより、高い放電電圧を得ることができ、エネルギー密度の高い二次電池を得ることができる。

【0062】
(負極)
負極は負極活物質と集電体とを備える。
負極活物質とは「二次電池の負極として充放電によってナトリウムイオンが出入りするとともに可逆的に酸化-還元を繰り返すことのできる物質」であり、本発明においてはLi_(4)Ti_(5)O_(12)を用いる。」

(6)「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】





3. 特許請求の範囲に記載された発明と発明の詳細な説明に記載された発明との対応関係の検討
上記1.に示した判断手法に従い、上記第2に示した特許請求の範囲の記載と上記2.に示した発明の詳細な説明の記載とを対比して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断することとなるから、まず、発明の詳細な説明に記載された発明について、その発明が解決すべき課題(以下、「本発明の課題」という。)を確認し、次に、発明の詳細な説明の記載に基づき出願時の技術常識に照らして当業者が本発明の課題を解決できると認識できる発明の範囲(以下、「本発明の課題を解決できると認識できる発明の範囲」という。)を整理した後、最終的に、特許請求の範囲に記載された発明との対応関係の検討を行うこととする。

(1) 本発明の課題
ア. 上記2.(2)に示したように、発明の詳細な説明には、【背景技術】について、「ナトリウムイオン電池が、リチウムイオン電池の代替品として提案されている。
ナトリウムイオン電池に使用する正極活物質としては、リチウムイオン電池に用いられる正極活物質をそのまま利用できるものも多い。…
ところが、リチウムイオン電池(当審注:「リチウムイオン電池」は、文脈からして、「ナトリウムイオン電池」の誤記であると認める。)に用いられる負極活物質については、ほとんど報告例がなく、カーボン系の負極活物質において充放電の動作が確認されている程度である。」(【0003】?【0005】)との記載がある。

イ. 上記2.(3)に示したように、発明の詳細な説明には、【発明が解決しようとする課題】について、「しかし、上記従来のカーボン系の負極活物質では、充電時においてナトリウムが負極活物質であるカーボンにインターカレーションする電位が、Na金属の析出する電位である0.3V(vs Li/Li^(+))に近く、過電圧を考慮した場合、充電時にナトリウム金属が負極活物質上で析出するおそれがあった。ナトリウムは極めて反応性の高い金属であり、万が一ナトリウムの析出した負極活物質が大気中に触れた場合には、大気中の水分や水と触れて、激しい発熱が生じるという危険性がある。このため、ナトリウムイオン電池の実用化が遅れていた。」(【0008】)との従来技術の問題点についての記載があり、「本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、充電時における電位がナトリウムの析出する電位よりも高く、充電時にナトリウム金属の析出のおそれの少ないナトリウムイオン電池用の負極活物質及びナトリウムイオン電池を提供することを解決すべき課題としている。」(【0009】)との記載がある。

ウ. 上記ア.?イ.によれば、リチウムイオン電池の代替品として、ナトリウムイオン電池が提案されており、前記のナトリウムイオン電池に使用する正極活物質としてはリチウムイオン電池に用いられる正極活物質をそのまま利用できるものも多いが、前記のナトリウムイオン電池に使用する負極活物質についての報告例はほとんどなく、カーボン系の負極活物質において充放電の動作が確認されている程度であるが、そのカーボン系の負極活物質では、充電時においてナトリウムがインターカレーションする電位がNa金属の析出する電位に近く、充電時にナトリウム金属が負極活物質上で析出するおそれがあるという問題があるため、ナトリウムイオン電池の実用化が遅れているところ、本発明は、充電時における電位がナトリウムの析出する電位よりも高く、充電時にナトリウム金属の析出のおそれの少ないナトリウムイオン電池用の負極活物質及びナトリウムイオン電池を提供することを、発明が解決すべき課題としているとの記載があると認められる。

エ. そうすると、発明の詳細な説明によれば、本発明の課題は、充放電の動作が確認されているカーボン系の負極活物質では、充電時にナトリウム金属が負極活物質上で析出するおそれがあるという問題を背景とする、充電時における電位がナトリウムの析出する電位よりも高く、充電時にナトリウム金属の析出のおそれの少ないナトリウムイオン電池用の負極活物質及びナトリウムイオン電池を提供することであるといえる。


(2) 本発明の課題を解決できると認識できる発明の範囲
ア. 上記2.(4)に示したように、発明の詳細な説明には、【課題を解決するための手段】について、「本発明のナトリウムイオン電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極とが、有機溶媒にナトリウム塩が溶解している電解液に接触するナトリウムイオン電池であって、前記正極活物質又は前記負極活物質はLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなることを特徴とする。」(【0012】)との記載がある。

イ. しかしながら、上記ア.に示した【課題を解決するための手段】では、本発明の課題を解決し得ないことは、本願出願時の技術常識に照らし、明らかである。その理由は、以下の(ア)?(カ)のとおりである。
すなわち、
(ア) 上記ア.に示した【課題を解決するための手段】は、ナトリウムイオン電池における正極活物質がLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなる場合と、ナトリウムイオン電池における負極活物質がLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなる場合とに分けることができる。
(イ) まず、上記(ア)に示したうちの、ナトリウムイオン電池における正極活物質がLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなる場合につき検討するに、そのナトリウムイオン電池においては、負極活物質として、充電時の電位がLi_(4)Ti_(5)O_(12)よりも低い活物質を用いる必要があることから、本願出願時の技術常識に照らし、ナトリウムイオン電池用の負極活物質として知られる活物質のうちの、カーボン系の負極活物質またはナトリウム金属でなる負極活物質を備えることとなる。
(ウ) しかし、カーボン系の負極活物質を備えると、上記(1)イ.に示した従来技術の問題点が解消されないままになるため、上記(1)エ.に示した本発明の課題は解決し得ない。また、ナトリウム金属でなる負極活物質を備えると、必然的に、充電時にナトリウム金属の析出をともなうことになるため、上記(1)エ.に示した本発明の課題は解決しない。
(エ) 次に、上記(ア)に示したうちの、ナトリウムイオン電池における負極活物質がLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなる場合につき検討するに、上記(1)ア.に示した【背景技術】についての記載から、ナトリウムイオン電池については、正極活物質と同様、負極活物質に関しても、リチウムイオン電池に用いられる負極活物質をそのまま利用しようと試みられたが、カーボン系の負極活物質において充放電の動作が確認されていた程度であり、それ以外の負極活物質についての充放電の動作は確認されていなかったことが本願出願時の技術常識として把握される。また、Li_(4)Ti_(5)O_(12)からなる負極活物質も、カーボン系の負極活物質と同様、本願出願時にはリチウムイオン電池に用いられる負極活物質として周知の負極活物質であった(特開2004-158348号公報の【0018】?【0019】、特開2003-68304号公報の【0018】?【0019】、特開2003-229126号公報の【0013】?【0014】、特開2008-204810号公報の【0040】等参照。)ことからして、Li_(4)Ti_(5)O_(12)からなる負極活物質を用いたナトリウムイオン電池は、充放電の動作が確認できていないナトリウムイオン電池に属していたことも、上記(1)ア.に示した【背景技術】についての記載から、本願出願時の技術常識として把握される。
(オ) そうすると、ナトリウムイオン電池における負極活物質がLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなる場合、そのナトリウムイオン電池は充放電の動作が確認できていないものに属していたことが本願出願時の技術常識といえるため、充放電の動作を可能とする特定事項を備えていなければ、本発明の課題を解決し得ないことは明らかである。
(カ) 上記(ア)?(オ)での検討をまとめると、上記ア.に示した【課題を解決するための手段】のうち、ナトリウムイオン電池における正極活物質がLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなる場合には、本願発明の課題を解決し得ないといえるし、また、ナトリウムイオン電池における負極活物質がLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなる場合には、充放電の動作を可能とする特定事項を備えていなければ、本願発明の課題を解決し得ないといえる。

ウ. そこで、ナトリウムイオン電池における負極活物質がLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなる場合に、本願発明の課題を解決するために必要不可欠な、充放電の動作を可能とする特定事項について、発明の詳細な説明にどのような記載があるかにつき、以下に検討する。

エ. 上記2.(4)に示した発明の詳細な説明には、【課題を解決するための手段】について、「本発明者らは、上記従来の課題を解決するため、リチウムイオン電池の電極活物質として知られているLi_(4)Ti_(5)O_(12)をナトリウムイオン電池の電極活物質に適用できないか検討した。Li_(4)Ti_(5)O_(12)はナトリウムのインターカレーション-デインターカレーションが可能であり、その酸化還元電位もカーボン系の負極活物質より高いため安全性が高いとして注目されている。しかし、ナトリウムイオンのイオン半径がリチウムイオンのイオン半径よりもかなり大きいため、ナトリウムイオンのLi_(4)Ti_(5)O_(12)へのインターカレーションは困難であり、ナトリウムイオン電池の負極活物質としてLi_(4)Ti_(5)O_(12)の適用は考えられておらず、動作の確認がなされたことも無かった。本発明者らは、既に、ニトリル化合物が添加された電位窓の広いナトリウムイオン電池用の電解液の出願を行なっているが(特願2008-322913)、この電解液を用いればLi_(4)Ti_(5)O_(12)を負極活物質として確実に動作させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。」(【0010】)との記載がある。

オ. 上記エ.に示した記載のうち、「Li_(4)Ti_(5)O_(12)はナトリウムのインターカレーション-デインターカレーションが可能であり、その酸化還元電位もカーボン系の負極活物質より高いため安全性が高いとして注目されている。しかし、ナトリウムイオンのイオン半径がリチウムイオンのイオン半径よりもかなり大きいため、ナトリウムイオンのLi_(4)Ti_(5)O_(12)へのインターカレーションは困難であり、…動作の確認がなされたことも無かった。」との記載は、上記イ.(エ)?(オ)に示した、ナトリウムイオン電池における負極活物質がLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなる場合、そのナトリウムイオン電池は充放電の動作が確認できていないものに属していたことが本願出願時の技術常識といえるとの指摘と整合するところ、上記エ.に示した記載には、「ニトリル化合物が添加された電位窓の広いナトリウムイオン電池用の電解液を用いればLi_(4)Ti_(5)O_(12)を負極活物質として確実に動作させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。」との本願発明の完成に繋がった知見が記載されている。

カ. そして、「ニトリル化合物が添加された電位窓の広いナトリウムイオン電池用の電解液」についての具体的な説明は、上記2.(5)に示した発明の詳細な説明の、【発明を実施するための形態】のうちの【0020】?【0037】にあり、試験例1?8の電解液が例示されている。そして、試験例1?8の電解液は、有機溶媒が、鎖式飽和炭化水素化合物の両末端にニトリル基が結合した鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物、鎖式エーテル化合物の両末端にニトリル基が結合した鎖式エーテルジニトリル化合物及びシアノ酢酸エステルのうち少なくとも一つのニトリル化合物を有機溶媒全体に占める容量比で50の割合で含み、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを、それぞれ、有機溶媒全体に占める容量比で25ずつの割合で含む有機溶媒であり、その有機溶媒にNaPF_(6)を0.5mol/Lとなるように溶解させた、ナトリウムイオン電池用の電解液であり、それらの電解液は、【図1】?【図3】の記載からすると、前記のニトリル化合物を含まない比較例1のナトリウムイオン電池用電解液に比べて高い電圧まで電解液が安定であって、充電のための電圧が6V(vsLi/Li^(+))を越えても安定な、電位窓の広い電解液であるとされている。

キ. 上記カ.に示した電解液について、上記2.(5)に示した発明の詳細な説明の、【発明を実施するための形態】のうちの【実施例】には、「ニトリル化合物を含有する上述の電解液を用いれば、Li_(4)Ti_(5)O_(12)を電極活物質として動作させることができる。以下、具体化した実施例について詳細に述べる。…」(【0042】)との記載があり、試験例4の電解液を用い、この電解液にLi_(4)Ti_(5)O_(12)を活物質とする電極を浸漬してサイクリックボルタンメトリーの測定をすると、図4に示されるような、明確な酸化/還元電流が流れ、その酸化還元電位はナトリウム参照電極に対して0.9V(1.2V vsLi/Li^(+))付近に現れており、この電位はLi_(4)Ti_(5)O_(12)のリチウムイオンが脱離する電位である1.5V(vsLi/Li^(+))よりも低いことから、ナトリウムイオン電池の電極活物質として充分動作可能であり、また、この電位はナトリウム金属の析出する電位である0.3V(vsLi/Li^(+))よりも高いため、このLi_(4)Ti_(5)O_(12)を負極活物質として用いた場合、充電反応時にナトリウムの析出を防ぐことができることが分かったということが記載されている(【0042】?【0046】)。また、図5に示すような、SUS316Lからなる電極缶11とSUS316Lからなる電極キャップ12とを用意し、試験例4の電解液とLi_(4)Ti_(5)O_(12)を活物質とする電極と金属ナトリウム電極とを用いて、図6に示すような、コイン型電池を作製して、充放電特性を測定したところ、図7に示すように充放電可能であることが分かったということが記載され(【0047】?【0049】)、前記のコイン型電池は、Li_(4)Ti_(5)O_(12)を正極活物質とし、金属ナトリウムを負極活物質とする電池であるが、金属ナトリウムの替わりにナトリウムイオン電池用の正極活物質を用いれば、Li_(4)Ti_(5)O_(12)は負極活物質として働くということが記載されている(【0050】)。

ク. また、上記2.(5)に示した発明の詳細な説明の、【発明を実施するための形態】のうちの、【0020】?【0037】によれば、ニトリル化合物が添加されないナトリウムイオン電池用の電解液として、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを、それぞれ、有機溶媒全体に占める容量比で50ずつの割合で混合した有機溶媒であり、その有機溶媒にNaPF_(6)を1.0mol/Lとなるように溶解させた、ナトリウムイオン電池用の電解液が、比較例1の電解液であることが把握される。

ケ. そして、上記2.(5)に示した発明の詳細な説明の、【発明を実施するための形態】のうちの【実施例】の、「ニトリル化合物を含有する上述の電解液を用いれば、Li_(4)Ti_(5)O_(12)を電極活物質として動作させることができる。…」(【0042】)との記載から、上記ク.に示した比較例1の電解液は、ニトリル化合物が添加されないナトリウムイオン電池用の電解液であることから、この比較例1の電解液を用いたのでは、Li_(4)Ti_(5)O_(12)を電極活物質として動作させることができなかったということが示唆される。

コ. ここで、上記2.(4)に示した発明の詳細な説明には、上記オ.?キ.で検討した電解液を含む、本願発明のナトリウムイオン電池の電解液に関し、「本発明のナトリウムイオン電池では、好ましくは、電解液の有機溶媒として鎖式飽和炭化水素化合物の両末端にニトリル基が結合した鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物、鎖式エーテル化合物の末端の少なくとも一つにニトリル基が結合した鎖式エーテルニトリル化合物及びシアノ酢酸エステルのうち少なくとも一つのニトリル化合物を含む。これらのニトリル化合物は、電位窓を広げる役割を果たしている。…電位窓のそれほど広くない環状炭酸エステルや、環状カルボン酸エステルや、鎖状炭酸エステルを含んでいるにもかかわらず、広い電位窓を有する理由については、必ずしも明確ではないが、次のように考えられる。すなわち、鎖状炭酸エステルは粘度を下げるため、比伝導度を大きくする役割を果たすと推測される。また、環状炭酸エステルや環状カルボン酸エステルは、従来から知られているとおり、カーボン負極上にSEIといわれる保護皮膜を形成することで、耐還元性を向上させつつ、ナトリウムイオンを通過させることができる特性を付与することができる。そのため、負側および正側の電位窓拡大に効果を発揮することが可能となると推定される。」(【0014】?【0016】)と、広い電位窓を有する理由についての説明が記載されている。

サ. 上記コ.に示した記載により、「ニトリル化合物が添加された電位窓の広いナトリウムイオン電池用の電解液」についての作用が十分に説明されているか検討するに、例えば、上記2.(5)に示した発明の詳細な説明の【0034】には、「図1に示すように、有機溶媒がエチレンジカーボネート(当審注:「エチレンジカーボネート」は、文脈からして、「エチレンカーボネート」の誤記であると認める。)とジメチルカーボネートとからなり、ニトリル化合物を含まない比較例1では5.8Vで50μA/cm^(2)となり、それより高電圧では大きく立ち上がっているのに対し、各種の鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物を用いた試験例1?5では、さらに高い電位に至らないと50μA/cm^(2)を超えない(50μA/cm^(2)における電流値は試験例1で6.5V、試験例2で7.0V、試験例3で7.5V、試験例4で7.2V、試験例5で7.2V)」ということが記載されているところ、電位窓のそれほど広くないジメチルカーボネート(鎖状炭酸エステル)やエチレンカーボネート(環状炭酸エステル)は、ニトリル化合物を含まない、比較例1の電解液においても、ニトリル化合物を含む試験例1?5の電解液においてと同様に作用し得る、すなわち、粘度を下げたり、負極上に保護被膜を形成するように作用し得ると考えられるから、試験例1?5の電解液が、電位窓のそれほど広くないジメチルカーボネート(鎖状炭酸エステル)やエチレンカーボネート(環状炭酸エステル)を含んでいるにもかかわらず、6Vを越えても安定していることが、上記コ.に示した記載のみで十分に説明できているとはいえない。しかしながら、上記コ.に示した記載から、比較例1の電解液にニトリル化合物を添加して、試験例1?8の電解液にすると、そのニトリル化合物が、電解液の電位窓を広げるように、優先的に作用するということが示唆されるといえる。

シ. 上記ウ.?サ.での検討を踏まえると、上記2.(5)に示した発明の詳細な説明の【0020】?【0037】に、試験例1?8の電解液として記載される、ニトリル化合物が添加された電位窓の広いナトリウムイオン電池用の電解液を用いれば、Li_(4)Ti_(5)O_(12)を負極活物質として備えたナトリウムイオン電池を充放電動作させることができるが、比較例1の電解液として記載される、ニトリル化合物が添加されないナトリウムイオン電池用の電解液を用いたのでは、Li_(4)Ti_(5)O_(12)を負極活物質として備えたナトリウムイオン電池を充放電動作させることができないといえる。

ス. そうすると、上記2.(5)に示した発明の詳細な説明のうちの、「
【0052】
(電解液)
電解液はNa塩(電解質)と有機溶媒とを含んでいる。
Na塩には、従来からNaイオン電池用のNa塩として知られているものを用いることができる。例えば、例えば、NaClO_(4)、NaPF_(6)、NaBF_(4)、NaCF_(3)SO_(3)、NaN(CF_(3)SO_(2))_(2)、NaN(FSO_(2))_(2)、NaN(C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)、NaC(CF_(3)SO_(2))_(3)等が挙げられる。溶媒及び溶質の混合比は特に限定されず、目的に応じて適宜設定される。
また、各種添加剤(例えば、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチレンサルファイト)を0.1-3%程度入れることも好ましい。これにより、負極側で耐食性皮膜がで形成され、耐食性が向上する。
【0053】
有機溶媒もNaイオン電池に用いられる一般的なものを採用できる。かかる有機溶媒とし環状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル及び鎖状炭酸エステルの中から選ばれる1種、又は2種以上が好ましい。更に好ましくは、環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとを併用する。具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを併用することが特に好ましい。両者の配合割合は特に限定されない。環状カルボン酸エステルとしはγ-ブチロラクトンやプロピレンカーボネートを用いることができる。
鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネートのほかに、ジエチルカーボネートやエチルメチルカーボネートを使用することができる。」との記載は、
ニトリル化合物が添加されないナトリウムイオン電池用の電解液である、比較例1の電解液を用いる場合を特に好ましいとするかのような記載になっているが、上記シ.に示したとおり、その特に好ましいとする場合であっても、Li_(4)Ti_(5)O_(12)を負極活物質として備えたナトリウムイオン電池を充放電動作させることができないことからして、前記した【0052】?【0053】の記載は、「ニトリル化合物が添加された電位窓の広いナトリウムイオン電池用の電解液を用いる」ことを前提とした記載であることは明らかである。

セ. また、上記ウ.?シ.での検討を踏まえると、上記ス.に示した【0052】?【0053】の記載を含む、【0052】?【0056】の記載は、負極活物質がLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなる、ナトリウムイオン電池における、電解液についての一般的な説明がなされているといえ、それらの記載から、「ニトリル化合物が添加された電位窓の広いナトリウムイオン電池用の電解液」は、好ましくは、「有機溶媒にナトリウム塩が溶解している電解液であって、その有機溶媒は、鎖式飽和炭化水素化合物の両末端にニトリル基が結合した鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物、鎖式エーテル化合物の末端の少なくとも一つにニトリル基が結合した鎖式エーテルニトリル化合物及びシアノ酢酸エステルのうち少なくとも一つのニトリル化合物と、環状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル及び鎖状炭酸エステルのうち少なくとも一つとを含む有機溶媒であって、前記有機溶媒の全体に占める前記ニトリル化合物の配合割合が1?90容量%である電解液」(以下、「特定の電解液」という。)であるということが把握される。

ソ. 上記ア.?セ.によれば、上記ア.に示した「正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極とが、有機溶媒にナトリウム塩が溶解している電解液に接触するナトリウムイオン電池であって、前記正極活物質又は前記負極活物質はLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなる」ナトリウムイオン電池において、前記負極活物質はLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなり、前記電解液がニトリル化合物が添加された電位窓の広いナトリウムイオン電池用の電解液である場合に限り、充放電の動作が可能となり、本発明の課題が解決できるところ、その電解液は好ましくは特定の電解液であるということが把握される。

タ. よって、発明の詳細な説明の記載に基づき出願時の技術常識に照らして当業者が本発明の課題を解決できると認識できる発明の範囲は、「正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極とが、有機溶媒にナトリウム塩が溶解している電解液に接触するナトリウムイオン電池であって、前記負極活物質はLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなり、前記電解液がニトリル化合物が添加された電位窓の広いナトリウムイオン電池用の電解液である」ものである。


(3) 特許請求の範囲に記載された発明との対応関係の検討
ア. そこで、上記第2に示した特許請求の範囲に記載された発明と、発明の詳細な説明の記載に基づき出願時の技術常識に照らして当業者が本発明の課題を解決できると認識できる発明の範囲との対応関係を検討する。

イ. 上記第2に示した特許請求の範囲に記載された発明を再掲すると、次のとおりものである。
「【請求項1】
正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極とが、有機溶媒にナトリウム塩が溶解している電解液に接触するナトリウムイオン電池であって、
前記負極活物質は酸化還元電位が0.9V(vs Na/Na+)であるLi_(4)Ti_(5)O_(12)を含む、ことを特徴とするナトリウムイオン電池。」

ウ. ここで、上記イ.に示した特許請求の範囲に記載された発明における、「酸化還元電位が0.9V(vs Na/Na+)であるLi_(4)Ti_(5)O_(12)」との特定事項は、上記2.(5)に示した発明の詳細な説明の【0044】?【0046】の記載によれば、Li_(4)Ti_(5)O_(12)に酸化還元電位が0.9V(vs Na/Na+)以外の場合があるわけではないから、特定事項としては、「Li_(4)Ti_(5)O_(12)」と同じといえるため、上記イ.に示した特許請求の範囲に記載された発明は、上記(2)ア.に示したもののうち、ナトリウムイオン電池における負極活物質がLi_(4)Ti_(5)O_(12)である場合と同様のものであって、上記(2)イ.(エ)?(オ)で検討したとおり、充放電の動作を可能とする特定事項を備えていなければ、本発明の課題を解決し得ないものといえる。

エ. そして、上記(2)ウ.?タ.によれば、充放電の動作を可能とする特定事項は、ニトリル化合物が添加された電位窓の広い電解液を備えていることである。しかしながら、上記イ.に示した特許請求の範囲に記載された発明は、ニトリル化合物が添加された電位窓の広い電解液を備えるものに限られるものではない。

オ. そうすると、特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明の記載に基づき出願時の技術常識に照らして当業者が本発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものとはいえない。

カ. したがって、特許請求の範囲に記載された発明は、本願の発明の詳細な説明に記載された発明ではない。

(4)まとめ

以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。


第5 むすび

以上のとおりであるから、上記第3に示した当審拒絶理由は依然として解消されておらず、本願は拒絶されるべきものである。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-27 
結審通知日 2015-09-01 
審決日 2015-09-17 
出願番号 特願2009-199087(P2009-199087)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川村 裕二  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 松嶋 秀忠
小川 進
発明の名称 ナトリウムイオン電池  
代理人 小西 富雅  

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