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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1307192 |
審判番号 | 不服2014-20183 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-10-06 |
確定日 | 2015-10-29 |
事件の表示 | 特願2010-139141「2次元図表の表示プログラムおよび2次元図表の表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月 5日出願公開、特開2012- 3579〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成22年6月18日の出願であって、平成25年11月20日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して平成26年1月22日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月30日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同年7月8日に請求人に送達された。 これに対して、同年10月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正書が提出されたものである。 そして、平成26年10月6日付けの手続補正は、適法な手続補正であると認められる。 よって、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年10月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「 【請求項1】 2次元図表を、コンピュータ・ディスプレイの画面上に表示された表示窓に表示する表示プログラムであって、 上記2次元図表は、予め、少なくとも縦見出し欄、横見出し欄、明細欄に区画形成されており、 上記2次元図表は、第1の商品属性に関する複数の属性項目を含む縦属性欄と、第2の商品属性に関する複数の属性項目を含む横属性欄と、縦属性欄および横属性欄の属性項目同士の組み合わせによって1つの桝目を特定して商品を選択できるようになっている桝目欄とを備えた、電子商取引で使用される2次元マトリクス状の商品桝目表により構成され、上記縦見出し欄が上記縦属性欄で構成され、上記横見出し欄が上記横属性欄で構成され、上記明細欄が上記桝目欄で構成されており、 上記表示窓内に表示される明細欄上でポインティングデバイスによるドラッグを検出するステップ、 上記明細欄を上記ドラッグ操作に合わせてスクロール表示させるステップ、 上記ドラッグ操作の始点から終点までの縦方向、横方向への移動量を算出するステップ、 上記縦見出し欄を上記算出した縦方向の移動量分、縦方向にスクロール表示させるとともに、上記横見出し欄を上記算出した横方向の移動量分、横方向にスクロール表示させるステップ、 よりなる一連のステップをドラッグが外されるまで繰り返し実行し、 これによって、上記明細欄のスクロール表示に合わせて、上記縦、横見出し欄を同期的にスクロールさせて表示することを特徴とする、2次元図表の表示プログラム。」 2.引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された「岸本 由巳,“ビギナーズ相談室 質問Q エクセル2003で大きな表の見出しをいつでも表示したままにできない?”,日経PCビギナーズ 2009 vol.6,日本,日経BP社,2009年6月13日,第14巻第12号,102頁」(以下、「引用例」という。)には、関連する図面とともに、以下の記載がある。 ア.「画面のサイズよりも表が大きいと、表の下や右の方を見るとき、見出しの行や列が画面から隠れてしまいます(図1)。こんなときは、見出しの行や列を常に表示させることのできる「ウィンドウ枠の固定」という機能を使いましょう。」(上段の「回答A」の欄) イ.「表が大きくなると見出しが隠れてしまう 図1 表の上の方では画面内に見出しの行が表示されているので見やすい(上図)。この表が大きくなって下や右にスクロールすると、上や左にあった見出しの行と列が隠れて見づらくなってしまう(下図)。」(図1の説明欄) ウ.「見出しの行と列が常に表示される 図3 表を下や右にスクロールしても、見出しの行や列は常に表示される。」(図3内及び図3の説明欄) そして、引用例の上記記載を、関連図面と技術常識に照らせば、以下のことがいえる。 (1)図1及び上記イ.、並びに図3及び上記ウ.には、2次元の表を、コンピュータの画面上に表示されたウィンドウ(図1上図、図1下図、及び図3における一番外側の四角の領域)に表示することが記載されている。また、その表示をアプリケーション・プログラムであるエクセル2003で行っていることは、引用例のタイトルから明らかである。 (2)図1及び図3には、そこに示される2次元の表のC列が縦見出し欄であり、日付である「18」、「19」、「20」、…が縦見出し欄の項目であること、1行目が横見出し欄であり、「午前中」、「午後」、「買い物リスト」、…が横見出し欄の項目であること、及び、それらの縦横の見出し欄の各項目に対応するデータの欄(「●晩ご飯の素材買いだし ●ギターレッスン」、「●犬の散歩」、「●田中先生講演会」、…などと記載されている欄)が設けられていること、が図示されている。 また、図2、3の記載から明らかなように、上記「縦見出し欄」、「横見出し欄」、「縦横の見出し欄の各項目に対応するデータの欄」は、スクロール前に予め区画形成されるものと認められる。 よって、引用例の2次元の表は、予め、「縦見出し欄」、「横見出し欄」、「縦横の見出し欄の各項目に対応するデータの欄」に区画形成されているといえる。 (3)図2、3及び上記ウ.には、縦横の見出し欄の各項目に対応するデータの欄のスクロールに合わせて、縦、横見出し欄をスクロールさせて表示することが記載されている。 以上を踏まえると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「2次元の表を、コンピュータの画面上に表示されたウィンドウに表示する表示プログラムであって、 上記2次元の表は、予め、縦見出し欄、横見出し欄、縦横の見出し欄の各項目に対応するデータの欄、に区画形成されており、 上記縦横の見出し欄の各項目に対応するデータの欄のスクロールに合わせて、縦見出し欄、横見出し欄をスクロールさせて表示する2次元の表の表示プログラム」 3.対比 本願発明と、引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 (1)引用発明の「2次元の表」、「コンピュータの画面」、「ウィンドウ」、「表示プログラム」は、 それぞれ本願発明の「2次元図表」、「コンピュータ・ディスプレイの画面」、「表示窓」、「表示プログラム」に相当する。 (2)引用発明の「縦見出し欄」、「横見出し欄」、「縦横の見出し欄の各項目に対応するデータの欄」は、 それぞれ本願発明の「縦見出し欄」、「横見出し欄」、「明細欄」に相当する。 (3)引用発明の「上記縦横の見出し欄の各項目に対応するデータの欄のスクロールに合わせて、縦見出し欄、横見出し欄をスクロールさせて表示する」ことは、 本願発明の「上記明細欄のスクロール表示に合わせて、上記縦、横見出し欄をスクロールさせて表示すること」に相当する。 よって、本願発明と引用発明の間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「2次元図表を、コンピュータ・ディスプレイの画面上に表示された表示窓に表示する表示プログラムであって、 上記2次元図表は、予め、少なくとも縦見出し欄、横見出し欄、明細欄に区画形成されており、 上記明細欄のスクロール表示に合わせて、上記縦、横見出し欄をスクロールさせて表示することを特徴とする、2次元図表の表示プログラム。」である点。 (相違点1) 本願発明の2次元図表は、第1の商品属性に関する複数の属性項目を含む縦属性欄と、第2の商品属性に関する複数の属性項目を含む横属性欄と、縦属性欄および横属性欄の属性項目同士の組み合わせによって1つの桝目を特定して商品を選択できるようになっている桝目欄とを備えた、電子商取引で使用される2次元マトリクス状の商品桝目表により構成され、縦見出し欄が上記縦属性欄で構成され、横見出し欄が上記横属性欄で構成され、明細欄が上記桝目欄で構成されているのに対し、 引用発明の2次元図表は、そのような構成を有していない点。 (相違点2) 本願発明は、「表示窓内に表示される明細欄上でポインティングデバイスによるドラッグを検出するステップ、 上記明細欄を上記ドラッグ操作に合わせてスクロール表示させるステップ、 上記ドラッグ操作の始点から終点までの縦方向、横方向への移動量を算出するステップ、 上記縦見出し欄を上記算出した縦方向の移動量分、縦方向にスクロール表示させるとともに、上記横見出し欄を上記算出した横方向の移動量分、横方向にスクロール表示させるステップ、 よりなる一連のステップ」を「ドラッグが外されるまで繰り返し実行し」、 これによって、「縦、横見出し欄を同期的に」スクロールさせているのに対し、 引用発明は、それに対応する構成を有していない点。 4.判断 (1)(相違点1)について 以下の事情を総合すると、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことというべきである。 ア.引用例の2次元の表は、汎用的な表計算アプリケーションにおける表であり、引用例の2次元の表に具体的にどのようなデータを格納して使用するかは、当業者が適宜決定し得る事項である。 イ.一方、2次元の表を、「第1の商品属性に関する複数の属性項目を含む縦属性欄と、第2の商品属性に関する複数の属性項目を含む横属性欄と、縦属性欄および横属性欄の属性項目同士の組み合わせによって1つの桝目を特定して商品を選択できるようになっている桝目欄とを備えた、電子商取引で使用される2次元マトリクス状の商品桝目表により構成」することは、周知の事項である。この点は、特開2002-150072号公報(要約、図2及び第2頁第2欄第1-9、16-21行目参照)、特開2007-115184号公報(要約、図5及び段落【0047】、【0050】-【0051】参照)、特開2002-338053号公報(図16及び段落【0115】参照)から明らかである。 ウ.そして引用発明において、この周知の事項に倣って、2次元の表を、第1の商品属性の属性項目を含む縦属性欄と、第2の商品属性の属性項目を含む横属性欄と、縦属性欄および横属性欄の属性項目同士の組み合わせによって1つの桝目を特定して商品を選択できるようになっている桝目欄とを備えた、電子商取引で使用される2次元マトリクス状の商品桝目表により構成することは、当業者であれば容易になし得る。 またそのように構成すると、引用発明の縦見出し欄に“第1の商品属性の属性項目を含む縦属性欄”が表示され、横見出し欄に“第2の商品属性の属性項目を含む横属性欄”が表示され、縦横の見出し欄の各項目に対応するデータの欄に“桝目欄”が表示される構成になることは明らかである。 エ.以上のことは、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成を採用することが、当業者にとって容易であったことを意味する。 (2)(相違点2)について 以下の事情を総合すると、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成を採用することも、当業者が容易に想到し得たことというべきである。 ア.引用例の図3及び上記2.ウ.によると、引用例は、2次元の表の縦横の見出し欄の各項目に対応するデータの欄を下や右にスクロールする際に、それに合わせて、縦見出し欄、横見出し欄をスクロールさせて表示するものである。 引用例には、具体的にどのようなユーザ操作で、縦横の見出し欄の各項目に対応するデータの欄をスクロールするかの記載は無いが、技術常識を参酌すると、スクロールバー、スクロールボタン(一般的に△▽などが表示されているボタン)、カーソルキーによるカーソル(選択セル)の移動など、種々のユーザ操作が考えられる。 イ.一方、「ウィンドウ内に表示されるスクロール対象上でポインティングデバイスによるドラッグを検出し、ドラッグ操作の始点から終点までの縦方向、横方向への移動量を算出し、スクロール対象をドラッグ操作に合わせてスクロール表示する」こと、つまり斜めのドラッグによるスクロールは、周知の技術である。この点は、原査定の拒絶の理由においても引用された特開2008-33695号公報(図14及び段落【0007】-【0008】参照)や、特開2001-290631号公報(図7-8及び段落【0040】-【0050】参照)、特開2007-4762号公報(図3及び第5頁第29-35行目参照)から明らかである。 ウ.そして引用発明においても、この周知の技術が有用であることは明らかであるから、この周知の技術に倣って、ユーザ操作として斜めのドラッグによるスクロールを採用し、スクロール対象である明細欄(縦横の見出し欄の各項目に対応するデータの欄)上のドラッグを検出し、ドラッグ操作の始点から終点までの縦方向、横方向への移動量を算出し、明細欄(縦横の見出し欄の各項目に対応するデータの欄)をドラッグ操作に合わせてスクロール表示するようにすることは、当業者であれば容易になし得る。 また、その際に、ポインティングデバイスのドラッグがウィンドウなどから外されるまで、ユーザ操作である斜めのドラッグによるスクロールが可能であるように制御することも通常に行われる制御であり、当業者であれば容易になし得る。 エ.上記ウ.のように引用発明において斜めのドラッグによるスクロールを採用する際、引用発明の「縦横の見出し欄の各項目に対応するデータの欄のスクロールに合わせて、縦見出し欄、横見出し欄をスクロールさせて表示する」という構成を放棄すべき理由は無く、その構成を維持することは当業者が容易に推考し得ることである。 そして、そのようにする場合には、縦見出し欄を算出した縦方向の移動量分、縦方向にスクロール表示させるとともに、横見出し欄を算出した横方向の移動量分、横方向にスクロール表示させることになり、それによって、縦見出し欄、横見出し欄を同期的にスクロールさせる構成となる。 オ.以上のことは、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成を採用することが、当業者にとって容易であったことを意味する。 (3)本願発明の効果について 本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明から当業者が容易に想到し得た構成のものが奏するであろうと当業者が予測し得る範囲を超えるものではなく、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-08-31 |
結審通知日 | 2015-09-01 |
審決日 | 2015-09-15 |
出願番号 | 特願2010-139141(P2010-139141) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松田 岳士 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
山田 正文 桜井 茂行 |
発明の名称 | 2次元図表の表示プログラムおよび2次元図表の表示装置 |
代理人 | 中井 宏行 |
代理人 | 沖本 周子 |
代理人 | 奥村 公敏 |