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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1307202 |
審判番号 | 不服2014-25169 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-12-08 |
確定日 | 2015-10-29 |
事件の表示 | 特願2013-500905「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月30日国際公開、WO2012/114761〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成24年2月23日(優先権主張平成23年2月23日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成26年2月20日付けで拒絶理由が通知され、同26年9月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 タッチパネルと、 該タッチパネルを振動させる振動部と、 該タッチパネルが配置される開口部を有する上部筐体と を備えた電子機器であって、 上記タッチパネルと上記上部筐体とに跨って、該タッチパネルと該上部筐体との間隙を塞ぐ外気遮断用の可撓性フィルムを貼着すると共に、 上記タッチパネルの底面外縁の全周にわたり連続または断続して、該底面外縁とその下方に位置する支持部材との間に弾性部材を配置した ことを特徴とする電子機器。」 3.引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された特開2007-27923号公報(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、パネル型スピーカー用エキサイタもしくはパネル型レシーバ用エキサイタの取付構造、特に携帯電話のような小型携帯機器における防水取付構造に関する。 【背景技術】 【0002】 近来携帯電話のような小型携帯機器においては、液晶装置のような表示装置の保護用に設けられた透明なパネルをスピーカーもしくはレシーバーの振動板であるパネルとして用いるパネル型スピーカーもしくはパネル型レシーバが多く用いられてきている。このようなパネル型スピーカーもしくはパネル型レシーバを用いた機器に関しては衝撃対策に焦点が当てられていた。衝撃によるエキサイター(アクチュエーターと同意)の破壊を避けるため、圧電振動板の両板面に衝撃吸収材を配設するというような提案が成されている(例えば特許文献1参照)。 【0003】 しかしパネル型スピーカーもしくはパネル型レシーバを用いた機器においては、このような衝撃問題の他に、エキサイターの取付構造によっては音圧の大きさと防水性の両特性を満足することが困難であるという問題があった。 この問題を図5,6を用いて説明する。 図5はパネル型スピーカーもしくはパネル型レシーバを用いた携帯電話の図で、図5(a)はパネル型スピーカーもしくはパネル型レシーバを用いた携帯電話30の平面図で、筐体18の表面にパネル型スピーカーもしくはパネル型レシーバの振動板を兼ねるパネル20が設けられている。該パネル20は例えばアクリル材のような透明な材料から成り、パネル後部に設けられた液晶表示装置32を透視出来るようになっており、エキサイター22は液晶表示装置32と同様にパネル後部の液晶表示装置32上方に取り付けられてい る。 【0004】 図5(b)は図5(a)のA-A’断面図で、パネル20は支持部材であるサスペンション36で筐体18に支持され、液晶表示装置32はウレタンフォーム等のガスケット34でパネル20に支持されている。さらにパネル20にはエキサイター22が取付けられてパネル20を振動させ音を発生させている。 問題となるのはサスペンション36である。この問題を図5(b)のB部拡大図の従来例である図6を用いて説明する。 なお以下の図において、同様の部材には同様の番号を付している。 【0005】 図6においてサスペンション36は連続発泡体26と該連続発泡体26を挟んでいるPET等の基材24とアクリル系等の粘着材12,16とから成っている。 サスペンション36を独立発泡体やシリコンゴムのような比較的硬い材料で構成すると、パネル20が筐体18に剛支持されてしまい、パネル20の振動を阻害して音圧が下がってしまう。すなわち腕時計の防水構造で用いられているような、ゴムのリングをサスペンションに用いて防水構造を実現しようとすると、音圧が下がってしまってスピーカー機能が損なわれてしまう。そこでサスペンション36をパネル20の振動を阻害しない連続発泡体のような柔らかい材料にすることが望ましい。 ところが連続発泡体は一連の気泡が連なった構造となっているため、気泡を通じて水分が進入してしまい、防水性を持ち合わせた構造となっていない。そのため図6に線28で示した水分は、筐体18とパネル20の隙間から連続発泡体26を通過して筐体内部に入り込んでしまう。 サスペンション36側面を通して進入した水分は内部液晶画面やパネルに水滴や曇りを引き起こす原因となり、またエキサイター等の他の電子部品に悪影響を及ぼす可能性がある。 このように従来のパネル型スピーカー用エキサイタ及びパネル型レシーバ用エキサイタの取付構造では音圧を大きくしようとすると機器の防水性が保てないという問題があった。 ・・・ (中略) ・・・ 【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 本発明のパネル型スピーカー用エキサイタ及びパネル型レシーバ用エキサイタの取付構造は、スピーカーもしくはレシーバの振動板であるパネルが弾性を有するサスペンションを介して筐体に支持されており、機器の筐体もしくはサブフレームと前記パネルとの隙間を防水性フィルム等の薄膜を用いて封止して前記機器の内部を防水領域とし、前記サスペンション及び前記エキサイタを該防水領域に収納した。また前記防水性フィルム等の薄膜上に、該フィルムを保護する筐体もしくは前記パネルを設けた。さらに、該保護する筐体を前記機器の筐体とは別に設けられたサブフレームとした。さらにまた、前記サスペンションの弾性材料を挟む基材である締結部材を前記防水性フィルム等の薄膜と兼用した。 【実施例1】 【0015】 図1は本発明によるパネル型スピーカー用エキサイタ及びパネル型レシーバ用エキサイタの取付構造の第1の実施例の部分断面図であり、 図1は図6と同様、図5に示したパネル型スピーカーもしくはパネル型レシーバを用いた携帯電話のB部の拡大図である。 図1において、パネル20は、連続発泡体26と該連続発泡体26を挟んでいるPET等の基材24とアクリル系等の粘着材16とから成っているサスペンション36によって筐体18に支持されている。ここでPET等の基材24が締結部材である。パネル20にはエキサイター22が貼り付けられてパネル20を振動させ音を発生させている。さらに、機器の筐体18とパネル20との隙間は、両面に粘着材12,15が設けられた防水性フィルム等の薄膜14によって封止されている。この防水性フィルム等の薄膜14はパネル20の4辺すべてを覆うように設けられている。 また防水性フィルム等の薄膜14上には該フィルムを保護するため、パネル20が張りだして防水性フィルム等の薄膜14上(図1の左方)を覆っており、該防水性フィルム等の薄膜14の機械的損傷を防いでいる。 【0016】 このように本発明の取付構造においては機器の筐体18とパネル20との隙間が防水性フィルム等の薄膜14によって封止されて機器の筐体18内部は防水領域となっており、サスペンション及びエキサイタ22を該防水領域に収納されている。そのため図1に線28で示した水分は、機器の筐体18とパネル20の隙間から進入しようとするが防水性フィルム等の薄膜14で阻まれて筐体18の内部に進入することはなく、防水構造が実現 出来ている。 一方パネル20は従来と同様に連続発泡体26を弾性材料として用いているためスピーカー及びレシーバとしての音圧が小さくなることはない。 なお、エキサイタを使用した携帯用のパネル型スピーカでは、電気的な処理を行うことにより同一構造でパネル型レシーバにも適応できることは周知であり、本明細書で説明するエキサイタはパネル型スピーカにもパネル型レシーバにも適応できるものであることを前提としている。 また、このように構成すると防水性フィルム等の薄膜14が外部に対して露出する可能性があるが、パネル20をサスペンションの位置よりも張りださせることで防水性フィルム等の薄膜14上を覆って機械的損傷から保護している。 なお、防水性フィルム等の薄膜14は防水性を有していれば良く、PI,PET,PC等の一般的な材料に限定されるものではない。 【実施例2】 【0017】 図2は本発明によるパネル型スピーカー用エキサイタ及びパネル型レシーバ用エキサイタの取付構造の第2の実施例の部分断面図であり、図2は図6と同様、図5に示したパネル型スピーカーもしくはパネル型レシーバを用いた携帯電話のB部の拡大図である。 図2が図1と異なるのは、防水性フィルム等の薄膜14の機械的な保護が機器の筐体18がパネル20と重なる方向へ張りだすことで成されている点と、パネル20がサスペンション36によってサブフレーム40に支持されている点である。 ここで、一般に機器の筐体は複数の筐体部品によって構成されており、本発明で「サブフレーム」と呼ぶ部品は「機器の筐体」とは別個に製造されるが、この「サブフレーム」も「筐体」と表現しても問題はない。本明細書においては筐体製造の際の型抜きや組み込み性の問題から「サブフレーム」と「筐体」とを異なる表現を用いて表している。 図2の第2の実施例においては、サブフレーム40にパネル20を支持したため機器の筐体18の型抜きが容易となり、また機器の組み込み性が良いという効果がある。」 そして、引用例の上記記載を引用例の関連図面と技術常識に照らせば、次のことがいえる。 (1)段落【0017】等の記載によれば、図2に示される携帯電話は、パネル20を有している。 (2)段落【0015】、図2等の記載によれば、上記(1)でいう「携帯電話」は、パネル20を振動させるエキサイター22も有している。 (3)段落【0017】、図2等の記載からみて、筐体18はサブフレーム(筐体)40に対して上部の筐体18ともいえ、上部の筐体18は、パネル20が配置される開口部を有しているといえる。 したがって、上記「携帯電話」は、パネル20が配置される開口部を有する上部の筐体18も有している。 (4)段落【0015】、【0017】、図2の記載から明らかなように、上記「携帯電話」は、パネル20と上部の筐体18とに跨がって、該パネル20と該上部の筐体18との隙間を封止する防水性フィルム等の薄膜14を粘着するものである。 (5)段落【0003】?【0005】、【0017】、図5(a)(b)等の記載から明らかなように、上記「携帯電話」は、パネル20の底面外縁の全周にわたり連続して、底面外縁とその下方に位置するサブフレーム40との間にサスペンション36を配置したものである。 以上を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「 パネル20と、 該パネル20を振動させるエキサイター22と、 該パネル20が配置される開口部を有する上部の筐体18と、 を備えた携帯電話であって、 上記パネル20と上記上部の筐体18とに跨がって、該パネル20と該上部の筐体18との隙間を封止する防水性フィルム等の薄膜14を粘着すると共に、 上記パネル20の底面外縁の全周にわたり連続して、底面外縁とその下方に位置するサブフレーム40との間にサスペンション36を配置した携帯電話。」 4.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 (1)引用発明の「パネル20」と本願発明の「タッチパネル」とは「パネル」である点で共通する。 (2)引用発明の「エキサイター22」は、本願発明の「振動部」に相当する。 (3)引用発明の「上部の筐体18」は、本願発明の「上部筐体」に相当する。 (4)引用発明の「携帯電話」は、本願発明の「電子機器」に相当する。 (5)引用発明の「隙間を封止」は、本願発明の「間隙を塞ぐ」に相当する。 (6)以下の事情を総合すると、引用発明の「防水性フィルム等の薄膜14」は、本願発明の「外気遮断用の可撓性フィルム」に相当する。 ア.本願明細書の段落【0034】の記載によれば、本願発明でいう「外気遮断」は、防水および防塵のことである。 イ.一方、引用発明は「防水性フィルム等の薄膜14」を有するが、防水性フィルムであれば防塵性フィルムでもあることが普通である。 ウ.出願人は平成26年4月28日付けの意見書で、引用発明は防水性フィルム等の薄膜であるものの可撓性のフィルムではない旨を述べているが、引用発明の「防水性フィルム等の薄膜14」が可撓性を有しないとすると、弾性を有する「サスペンション36」の働きを阻害することになるから、該「防水性フィルム等の薄膜14」は可撓性を有するとみるのが妥当である。 エ.以上によれば、引用発明の「防水性フィルム等の薄膜14」は、本願発明の「外気遮断用の可撓性フィルム」に相当する。 (7)引用発明の「粘着」は、本願発明の「貼着」に相当する。 (8)引用発明の「サブフレーム40」は、本願発明の「支持部材」に相当する。 (9)引用発明の「サスペンション36」は、本願発明の「弾性部材」に相当する。 以上によれば、本願発明と引用発明の間には次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「 パネルと、 該パネルを振動させる振動部と、 該パネルが配置される開口部を有する上部筐体と を備えた電子機器であって、 上記パネルと上記上部筐体とに跨って、該タッチパネルと該上部筐体との間隙を塞ぐ外気遮断用の可撓性フィルムを貼着すると共に、 上記パネルの底面外縁の全周にわたり連続して、該底面外縁とその下方に位置する支持部材との間に弾性部材を配置した電子機器。」 である点。 (相違点) 本願発明の「パネル」は「タッチパネル」とされるのに対し、引用発明の「パネル(パネル20)」は「タッチパネル」とはされていない点。 5.判断 (1)上記(相違点)について 以下の事情を総合すると、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。 ア.引用発明の「携帯電話」は「パネル20」を振動させることで音を発生させるものである。 イ.一方、特開2003-102094号公報の【従来の技術】等にも示されているように、電子機器においてタッチパネルを振動させることで音を発生させることは周知技術であり、引用発明における「パネル20」を「タッチパネル」とすることができない理由はない。 ウ.審判請求人は、タッチパネルを採用することが容易である旨の拒絶査定の指摘に対して、何ら反論をしていない。 エ.以上のことは、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成を採用すること、すなわち、引用発明の「パネル(パネル20)」を「タッチパネル」とすることが当業者に容易であったことを意味している。 (2)本願発明の効果について 本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明から容易に想到し得た構成のものが奏するであろうと当業者が予測する範囲内のものであり、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るようなものではない。 (3)まとめ したがって、本願発明は、引用発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-08-25 |
結審通知日 | 2015-09-01 |
審決日 | 2015-09-15 |
出願番号 | 特願2013-500905(P2013-500905) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 匡 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
白石 圭吾 山田 正文 |
発明の名称 | 電子機器 |
代理人 | 杉村 憲司 |