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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1307203 |
審判番号 | 不服2014-26412 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-12-25 |
確定日 | 2015-10-29 |
事件の表示 | 特願2013- 55440「基板組立実装ラインの管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月11日出願公開、特開2013-138256〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成21年10月9日に出願した特願2009-235796号(以下、「原出願」という。)の一部を平成25年3月18日に新たな特許出願としたものであって、同年12月13日付けの拒絶理由通知に対して、平成26年2月24日に意見書が提出されたが、同年9月24日付け(発送日:同年9月26日)で拒絶査定がされ、これに対して、同年12月25日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。 第2 平成26年12月25日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年12月25日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正後の本願発明 平成26年12月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された 「【請求項1】 電子部品をその上に装着して基板を組み立てる基板組立実装ラインの管理方法において、 前記基板組立実装ラインを構成する指示手段を備えたどの作業装置からも他の作業装置に作業設備の段取り替えの指示ができるようにした ことを特徴とする基板組立実装ラインの管理方法。」を、 補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された 「【請求項1】 電子部品をその上に装着して基板を組み立てる基板組立実装ラインの管理方法において、 前記基板組立実装ラインを構成し、指示手段を備えたどの作業装置からも、前記指示手段により他の作業装置に作業設備の段取り替えの指示ができるようにし、指示をした作業装置自身の段取り替え処理をするようにした ことを特徴とする基板組立実装ラインの管理方法。」 と補正するものである。 なお、下線は補正箇所であり、請求人が付したとおりである。 本件補正は、発明を特定するために必要な事項である「作業装置」の作用につき「指示手段により」他の作業装置に作業設備の段取り替えの指示ができること及び「指示をした作業装置自身の段取り替え処理をする」ことを限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2 引用刊行物とその記載事項(下線は当審で付与したものである。) (1)原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願前に日本国内において頒布された特開2002-335099号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「電気回路板組立ライン,電気回路板製造方法および電気回路板組立ライン制御用プログラム」に関して、図面(特に、【図2】及び【図4】参照)とともに、次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、回路基板に電気部品(電子部品を含む)を装着することにより電気回路板を組み立てる電気回路板組立ラインおよびそれによる電気回路板製造方法ならびに電気回路板組立ライン制御用プログラムに関するものである。 【0002】 【従来の技術】回路基板に電気部品を装着することにより電気回路板を組み立てる作業に関連した電気回路板組立関連作業を行う電気回路板組立関連装置を複数台並べ、電気回路板組立ラインが構成されることが多い。この場合、各電気回路板組立関連装置には互いに独立した制御装置が設けられるのが普通であり、従来は、作業者によって各装置が別々に操作されていた。例えば、電気回路板組立ラインの起動時には、各装置の起動スイッチを作業者がそれぞれONにしていた。ラインの運転を停止する場合も同様であり、その他の操作も装置毎に別々に行う必要があって、作業者の作業能率が悪く、また、電気回路板組立ラインの管理が煩雑となることを避け得なかった。 【0003】 【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】本発明は、以上の事情を背景とし、電気回路板組立ラインにおける作業者の作業能率向上およびライン管理の容易化を課題としてなされたものであり・・・。」 (イ)「【0006】複数台の電気回路板組立関連装置を通信装置により接続し、かつ、複数台のうちの1台をマスタ装置、残りをスレーブ装置とし、マスタ装置の操作によりスレーブ装置を制御することができるようにすれば、作業者はいちいちスレーブ装置の位置まで移動する必要がなくなる。また、マスタ装置からスレーブ装置へ組み立てるべき電気回路板に関する情報を供給可能とすれば、複数の装置の各々にいちいち上記情報を入力する必要がなくなる。・・・ 【0007】・・・ (3)前記複数台の電気回路板組立関連装置の各々が、いずれもそれぞれ前記マスタ装置および前記スレーブ装置として作動する機能を有する(2)項に記載の電気回路板組立ライン。非常に自由度に富んだ電気回路板組立ラインが得られる。」 (ウ)「【0021】このように構成される電気部品装着機10が複数台、一方向(本実施形態の場合基板搬送方向であるX軸方向)に並んで設けられている。各電気部品装着機10の制御装置100はまた、PU112,ROM114,RAM116等とバス124によって接続された通信用インタフェース140を備え、通信装置144に接続されている。各電気部品装着機10は、制御装置100,操作装置130,作動装置136をそれぞれ独立して備えるものである。また、各電気部品装着機10は、それぞれ上記通信装置144を備え、それら通信装置144が互いにネットワーク150によって接続され、互いに情報のやりとりを行うことができる。本実施形態においては、複数台の電気部品装着機10のうちの1台がマスタ装置、残りがスレーブ装置として作動する。・・・ 【0022】上記電気部品装着機10の各々は、すべて互いに同じ機能を有するものであり、各々がすべてマスタ装置およびスレーブ装置として作動し得る機能を有する。」 (エ)「【0025】制御装置100のRAM116には、図4に示すように、ホストコンピュータ152からの情報を記憶する部分であるホスト情報メモリとして、電気回路板情報メモリ160・・・等が設けられている。電気回路板情報メモリ160は、製造すべきプリント回路板の種類に関する情報が記憶される部分である。・・・RAM116にはまた、・・・作業進行情報メモリ170,製品状態情報メモリ172および装置状況情報メモリ174等が設けられている。・・・上記作業進行情報メモリ170,製品状態情報メモリ172および装置状況情報メモリ174等には、マスタ装置自身の作業進行状態,製品状態,装置状況等も記憶され、その点では、マスタ装置は自身に管理されてスレーブ装置としても機能する。」 (オ)上記記載事項(ア)の「電気回路板組立ラインにおける・・・ライン管理の容易化」との記載、上記記載事項(イ)の「複数台の電気回路板組立関連装置を通信装置により接続し・・・マスタ装置の操作によりスレーブ装置を制御することができるようにすれば、作業者はいちいちスレーブ装置の位置まで移動する必要がなくなる。また、マスタ装置からスレーブ装置へ組み立てるべき電気回路板に関する情報を供給可能とすれば、複数の装置の各々にいちいち上記情報を入力する必要がなくなる」との記載及び上記記載事項(ウ)の「構成される電気部品装着機10が複数台、一方向(本実施形態の場合基板搬送方向であるX軸方向)に並んで設けられている」との記載から、電気部品をその上に装着して電気回路板を組み立てる電気回路板組立ラインの管理を容易にする方法が記載されていると理解できる。 (カ)上記記載事項(イ)の「マスタ装置の操作によりスレーブ装置を制御する・・・マスタ装置からスレーブ装置へ組み立てるべき電気回路板に関する情報を供給可能」との記載、同じく「複数台の電気回路板組立関連装置の各々が、いずれもそれぞれ前記マスタ装置および前記スレーブ装置として作動する機能を有する・・・非常に自由度に富んだ電気回路板組立ラインが得られる」との記載、上記記載事項(ウ)の「構成される電気部品装着機10が複数台、一方向(本実施形態の場合基板搬送方向であるX軸方向)に並んで設けられている」との記載、同じく「各電気部品装着機10は、それぞれ上記通信装置144を備え、それら通信装置144が互いにネットワーク150によって接続され、互いに情報のやりとりを行うことができる」との記載及び同じく「電気部品装着機10の各々は、すべて互いに同じ機能を有するものであり、各々がすべてマスタ装置およびスレーブ装置として作動し得る機能を有する」との記載から、電気回路板組立ラインが構成され、各電気部品装着機10は、それぞれPU112を備え、どの電気部品装着機10からも、PU112により他の電気部品装着機10に組み立てるべき電気回路板に関する情報を与えることが理解できる。 上記記載事項及び上記認定事項並びに【図2】及び【図4】を総合して、本願補正発明に則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「電気部品をその上に装着して電気回路板を組み立てる電気回路板組立ラインの管理を容易にする方法において、 電気回路板組立ラインが構成され、各電気部品装着機10は、それぞれPU112を備え、どの電気部品装着機10からも、PU112により他の電気部品装着機10に組み立てるべき電気回路板に関する情報を与えるようにした電気回路板組立ラインの管理を容易にする方法。」 (2)原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願前に日本国内において頒布された特開平5-177473号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「段取り替え方法及び部品実装装置」に関して、図1とともに、次の事項が記載されている。 「【0018】以上の構成において、電子部品実装ライン1における実装対象基板の品種を切換える際には、基板供給装置2から前の品種の最終基板を電子部品実装ライン1の最初の実装装置である印刷装置3に向けて搬送する時に、基板供給装置2に設けられた品種切換スイッチを入力する。すると、基板供給装置2の制御部11から段取り替え開始信号が出力され、送信部13から通信ケーブル14を通して印刷装置3の受信部12に向けて送信される。印刷装置3においては、受信部12で受信された段取り開始信号が制御部11に入力されると、制御部11は搬入された基板が前の品種の最終基板であると判断し、当該基板の印刷処理が終了してその基板を次工程の部品実装装置4に向けて送出するときに、送信部12から次工程の部品実装装置4の受信部13に向けて段取り替え開始信号を出力するとともに、印刷装置3を次の品種の基板に対応するように段取り替えを行う。」 上記記載事項及び図示内容を総合すれば、刊行物2には、電子部品実装ライン1において、基板供給装置2から実装装置である印刷装置3に送信される信号が次の品種の基板に対応する段取り替え開始信号であり、印刷装置3は次の品種の基板に対応するように段取り替えを行うこと(以下、「刊行物2の記載事項」という。)が記載されていると認められる。 3 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「電気部品をその上に装着して電気回路板を組み立てる電気回路板組立ラインの管理を容易にする方法」は、その機能、構造、性質からみて、本願補正発明の「電子部品をその上に装着して基板を組み立てる基板組立実装ラインの管理方法」に相当し、同様に、引用発明の「情報を与える」「PU112」、「電気部品装着機10」は、本願補正発明の「指示手段」、「作業装置」に、それぞれ相当する。 以上の点からみて、本願補正発明と引用発明とは、 [一致点] 「電子部品をその上に装着して基板を組み立てる基板組立実装ラインの管理方法において、 前記基板組立実装ラインを構成し、指示手段を備えたどの作業装置からも、指示手段により他の作業装置に指示ができるようにした 基板組立実装ラインの管理方法。」 である点で一致し、 次の点で相違する。 [相違点] 相違点1 「指示」の内容に関して、本願補正発明では、「作業設備の段取り替え」であるのに対して、引用発明では、「組み立てるべき電気回路板に関する情報」である点。 相違点2 「作業装置」の作用に関して、本願補正発明では、「指示をした作業装置自身の段取り替え処理をする」のに対して、引用発明では、不明である点。 4 判断 (1)相違点1について 引用発明の「組み立てるべき電気回路板に関する情報」に刊行物2の記載事項である「次の品種の基板に対応する段取り替え開始信号」が含まれるから、引用発明の「組み立てるべき電気回路板に関する情報」として刊行物2の記載事項の段取り替え開始信号を与えることは、当業者が容易に推考し得ることといえる。 よって、上記相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて容易になし得たことである。 (2)相違点2について 引用発明は、「マスタ装置は自身に管理されてスレーブ装置としても機能する」(上記記載事項(エ))ことにより「ライン管理」(上記記載事項(ア))を行うものであるから、マスタ装置は、他のスレーブ装置に電気回路板に関する情報を与えるのみならず、自身も組み立てるべき電気回路板に関する情報に基づくスレーブ装置と同一の処理をするものと解される。 そうすると、引用発明に刊行物2の記載事項を適用し、マスタ装置が他のスレーブ装置に次の品種の基板に対応する段取り替え開始信号を与えるのみならず、自身も次の品種の基板に対応する段取り替えを行うことは、当業者が容易に推考し得ることといえる。 よって、上記相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が引用発明及び刊行物2の記載事項に基づいて容易になし得たことである。 (3)作用効果について そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び刊行物2の記載事項から当業者が予測し得た程度のものにすぎない。 (4)まとめ したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5 むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、本願の出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のもの(以下、「本願発明」という。)である。 「【請求項1】 電子部品をその上に装着して基板を組み立てる基板組立実装ラインの管理方法において、 前記基板組立実装ラインを構成する指示手段を備えたどの作業装置からも他の作業装置に作業設備の段取り替えの指示ができるようにした ことを特徴とする基板組立実装ラインの管理方法。」 2 引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1及び2の記載事項並びに引用発明は、上記「第2」の「2」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、本願補正発明に係る「作業装置」の作用につき「指示手段により」他の作業装置に作業設備の段取り替えの指示ができること及び「指示をした作業装置自身の段取り替え処理をする」こととの発明特定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、上記「第2」の「3」及び「4」に記載したとおり、引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 まとめ したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-08-26 |
結審通知日 | 2015-08-27 |
審決日 | 2015-09-10 |
出願番号 | 特願2013-55440(P2013-55440) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中島 昭浩 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 小柳 健悟 |
発明の名称 | 基板組立実装ラインの管理方法 |
代理人 | 特許業務法人暁合同特許事務所 |