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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1307218
審判番号 不服2014-5920  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-02 
確定日 2015-10-27 
事件の表示 特願2008-551190「プラスチック平板ディスプレイ及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月26日国際公開、WO2007/083938、平成21年 6月25日国内公表、特表2009-524102〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2007年1月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年1月20日、大韓民国)を国際出願日とする出願であって、平成24年5月9日付けで手続補正がなされ、同年7月31日付けで拒絶の理由(最後)が通知され、平成25年1月29日付けで意見書が提出されたが、同年11月28日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、平成26年4月2日に請求された拒絶査定不服審判である。

2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年5月9日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
プラスチック平板ディスプレイにおいて、
上部電極が形成された上側透明基板と、
前記上側透明基板に対向するように配置され、下部電極が形成された一体型下側FPCB基板と、
前記上側透明基板と前記一体型下側FPCB基板との間で、負電荷及び正電荷に帯電されているカプセル化された粒子と、
を含み、
前記一体型下側FPCB基板により外部の電気信号が前記下部電極に伝達され、
前記プラスチック平板ディスプレイは、前記上部電極と前記下部電極とにより形成された電界によって駆動されることを特徴とする、電子インクディスプレイ用のプラスチック平板ディスプレイ。」

3 引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成17年1月20日に頒布された特開2005-17567号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)
a 発明の詳細な説明の記載
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置と液晶表示装置の製造方法およびエレクトロルミネッセンス表示装置とエレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法に関し、詳しくは可撓性を有する基板で作られた液晶表示装置と液晶表示装置の製造方法および可撓性を有する基板で作られたエレクトロルミネッセンス表示装置とエレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法に関する。」
「【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の液晶表示装置に係る一実施の形態を図1によって説明する。図1は、(1)に概略構成断面図を示し、(2)に概略構成斜視図を示す。
【0019】
図1に示すように、液晶表示装置10は、画素電極(例えば透明電極)、アクティブ素子、配線、配向膜などの必要な薄膜層12(第1薄膜層12a、第2薄膜層12b)が形成された1対の基板11(第1基板11a、第2基板11b)の薄膜層12側を対向させて、かつ基板11の間隔を保持するスペーサー13を介して、シール剤14により張り合わされたものであり、液晶の封入により基板11間に液晶層15が形成されていて、液晶の注入口(図示せず)をモールド樹脂(図示せず)で封止したものである。上記基板11(例えば第1基板11a)は、可撓性を有する例えばプラスチック基板からなり、その一側端面にはコネクタ接続部16が延長形成されている。このコネクタ接続部16は、上記基板11を組み込む機器のコネクタに直接接続するものである。したがって、例えば、上記コネクタ接続部16の端部には上記基板11を組み込む機器のコネクタの電極に対応して接続可能な電極(図示せず)が配置されている。
【0020】
また、上記液晶表示装置10は、例えば図2の平面レイアウト図に示すようなレイアウト配置を取ることができる。図2に示すように、上記第1基板11aには、液晶により表示される表示部21と、液晶を駆動する駆動回路部22とが形成されている。この駆動回路部22は、図示したように、コネクタ接続部16内にも形成されていてもよい。そしてコネクタ接続部16の端部には、この液晶表示装置10を組み込む機器に接続される複数の電極端子(図示せず)が形成されている。この例では、第1基板11a(アクティブ基板)に可撓性を有する基板を用いたが、上記第2基板11b(対向基板)に可撓性を有する基板を用いてもよく、この場合には、対向基板側に上記コネクタ接続部が形成されることになる。もしくは、第1基板11a、第2基板11bの両方を、可撓性を有する基板で形成してもよい。
【0021】
上記液晶表示装置10では、薄膜層12が形成された第1基板11a、第2基板11bのうち少なくとも一方の基板(上記実施の形態では第1基板11a)が可撓性を有するものからなり、可撓性を有する基板11aには、可撓性を有する基板11aを組み込む機器のコネクタ(図示せず)に直接接続するコネクタ接続部16が延長形成されていることから、液晶パネル(表示部21およびその周囲の駆動回路部)とフレキシブルケーブル(コネクタ接続部16)が一体化した液晶表示装置10になっている。したがって、従来技術のように異方性導電フィルムを介してフレキシブルケーブルを接続する必要が無くなる。このため、異方性導電フィルムによる接着工程がなくなるので、液晶層を駆動するTFT、画素電極等が形成された薄膜層12が破壊されることがなくなり、信頼性の向上が図れる。また異方性導電フィルムやフレキシブルケーブルを用いる必要がないので異方性導電フィルムによるフレキシブルケーブルの接着工程がなくなり、製造工程の削減、コストの低減が成される。
【0022】
次に、本発明の液晶表示装置に係る製造工程の一例を、図3?図8によって説明する。ここでは、一例として、透過型のTFT液晶パネルの製造工程を以下に説明する。
【0023】
図3に示すように、まず、第1基板101上に、後に行うガラスエッチングの保護層としてフッ化水素およびフッ化水素酸に耐性を有する耐HF層102を形成する。なお、本明細書では、上記「HF」とはフッ化水素もしくはフッ化水素酸を表すものとする。上記第1基板101には、例えば厚さ0.4?1.1mm程度、例えば0.7nm厚のガラス基板を用いる。このガラス基板のかわりに石英基板を用いてもよい。上記耐HF層102は、例えばモリブデン(Mo)膜を500nmの厚さに成膜して形成する。さらに絶縁層103を形成する。この絶縁層103は、例えば酸化珪素(SiO_(2))膜を500nmの厚さに成膜して形成する。上記モリブデン膜は、例えばスパッタリング法にて形成することができ、上記酸化珪素膜は例えばプラズマCVD法により形成することができる。
【0024】
その後は、一般的な低温ポリシリコン技術、例えば「2003 FPDテクノロジー大全」(電子ジャーナル2003年3月25日発行、p.166-183およびp.198-201)、「’99最新液晶プロセス技術」(プレスジャーナル1998年発行、p.53-59)、「フラットパネル・ディスプレイ1999」(日経BP社、1998年発行、p.132-139)等に記載されているような低温ポリシリコンボトムゲート型薄膜トランジスタ(以下薄膜トランジスタをTFTと記す)プロセスでTFTを含む薄膜層を形成した。薄膜層の形成方法の一例を以下に説明する。
【0025】
まず、第1基板101上に耐HF層102を介して形成された絶縁層103上にゲート電極104を形成するための導電膜を形成した。この導電膜には例えば厚さが100nmのモリブデン(Mo)膜を用いた。モリブデン膜の形成方法としては例えばスパッタリング法を用いた。そして上記導電膜を加工してゲート電極104を形成した。このゲート電極104は、一般的なフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によりパターニングして形成した。次いで、ゲート電極104上を被覆するようにゲート絶縁膜105を形成した。ゲート絶縁膜105は、例えばプラズマCVD法によって、酸化珪素(SiO_(2) )層、または酸化珪素(SiO_(2) )層と窒化珪素(SiN_(x) )層との積層体で形成した。さらに連続的に非晶質シリコン層(厚さ30nm?100nm)を形成した。この非晶質シリコン層に波長308nmのXeClエキシマレーザパルスを照射し熔融再結晶化し結晶シリコン層(ポリシリコン層)を作製した。このポリシリコン層を用いて、チャネル形成領域となるポリシリコン層106を形成し、その両側にn^(-) 型ドープ領域からなるポリシリコン層107、n^(+) 型ドープ領域からなるポリシリコン層108を形成した。このように、アクティブ領域は高いオン電流と低いオフ電流を両立するためのLDD(Lightly Doped Drain)構造とした。またポリシリコン層106上にはn^(-)型のリンイオン打込み時にチャネルを保護するためのストッパー層109を形成した。このストッパー層109は、例えば酸化珪素(SiO_(2) )層で形成した。
【0026】
さらに、プラズマCVD法によって、酸化珪素(SiO_(2) )層、または酸化珪素(SiO_(2) )層と窒化珪素(SiN_(x) )層との積層体からなるパッシベーション膜110を形成した。このパッシベーション膜110上に、各ポリシリコン層208に接続するソース電極111およびドレイン電極112を形成した。各ソース電極111およびドレイン電極112は例えばアルミニウムで形成した。
【0027】
その後、カラーフィルター113を形成した。カラーフィルター113は、カラーレジストを全面に塗布した後、リソグラフィー技術でパターニングを行って形成した。カラーフィルター113には、ソース電極111と後に形成する液晶駆動用電極が接続されるようにコンタクトホール113Cを形成した。このカラーフィルターの形成工程を3回行って、RGBの3色(赤、緑、青)を形成した。次に、平坦化を行うために保護膜114を形成した。保護膜114は例えばポリメチルメタクリル酸樹脂系の樹脂により形成した。また保護膜114には、ソース電極111と液晶駆動用電極とが接続されるようにコンタクトホール114Cを形成した。その後、ソース電極111に接続する画素電極115を形成した。この画素電極115は、例えば、透明電極で形成される。透明電極としては、例えばインジウムスズオキサイド(ITO)により形成され、その形成方法としてはスパッタリング法が用いられる。
【0028】
次に、上記画素電極115上に柱状スペーサ116を形成した。この柱状スペーサ116は、例えばスピンコートにより全面にアクリル系の樹脂を形成(例えば塗布法による)した後、リソグラフィー技術により柱状に加工した。
【0029】
柱状スペーサ116を周辺回路部に形成する場合には、ゲート電極(ゲート配線も含む)104、ソース電極211に接続される配線(図示せず)やドレイン電極112に接続される配線(図示せず)、トランジスタの活性層(ポリシリコン層106?108)をなるべく避けて、柱状スペーサ116を形成することが望ましい。また、今回はひとつの柱状スペーサ116の大きさは高さ3.5μm、縦横10μmとした。
【0030】
この段階では、図4に示すように、1枚の基板401上に、複数のパネル411が縦横に配置された状態となっている。一枚のパネル411は、前記図2に示すような構成となっている。したがって、図示されたパネル411は、表示部21と駆動回路部22の一部とが形成された基板11とこの基板11に延長形成されたコネクタ接続部16(図示の凸部分)とからなる。また、一例として、液晶を駆動させる駆動回路部22は、例えば表示部21の周りとコネクタ接続部16につながる部分に形成している。
【0031】
通常は、コネクタ部分は、配線しか形成できないが、本発明では凸形状に形成されたコネクタ接続部16にも回路を形成できるため、パネルの小型化が達成できる。また、フレキシブルケーブル接続用のパッドも必要がないため、パネルを小型化できる。
【0032】
以上の工程により、第1基板101上に透過型のアクティブマトリックス基板が作製できた。また、今回は、ボトムゲート型ポリシリコンTFTを作製したが、トップゲート型ポリシリコンTFTやアモルファスTFTでも同じように実施できる。
【0033】
次に、第1基板101上の薄膜層121をプラスチック基板上に移載する工程を説明する。
【0034】
図5(1)に示すように、第1基板101上に耐HF層102、絶縁層103、薄膜層121を形成したものをホットプレート122で80℃?140℃に加熱しながら、第1接着剤123を厚さ1mm程度に塗布し、第2基板124を上に載せ、加圧しながら、室温まで冷却した。第2基板124には、例えば厚さ1mmのモリブデン基板を用いた。または、第2基板124にガラス基板を用いてもよい。または、第2基板124上に第1接着剤123を塗布して、その上に耐HF層102から薄膜層116が形成された第1基板101の薄膜層116側を載せてもよい。上記第1接着剤123には、例えばホットメルト接着剤を用いた。
【0035】
次に、図5(2)に示すように、第2基板124を貼り付けた第1基板101をフッ化水素酸(HF)125に浸漬して、第1基板101のエッチングを行った。このエッチングは、耐HF層102であるモリブデン層がフッ化水素酸125にエッチングされないため、このエッチングは耐HF層102で自動的に停止する。ここで用いたフッ化水素酸125は、一例として、重量濃度が50%のもので、このエッチング時間は3.5時間とした。フッ化水素酸125の濃度とエッチング時間は、第1基板101のガラスを完全にエッチングすることができるならば、変更しても問題はない。
【0036】
上記フッ化水素酸125によるエッチングの結果、図6(3)に示すように、第1基板101〔前記図5(2)参照〕が完全にエッチングされ、耐HF層102が露出される。
【0037】
次に、混酸〔例えば、リン酸(H_(3) PO_(4) )72wt%と硝酸(HNO_(3) )3wt%と酢酸(CH_(3) COOH)10wt%〕により、耐HF層102〔前記図6(3)参照〕であるモリブデン層(厚さ:500nm)をエッチングした。これは、透過型の液晶パネルを作製するために、不透明なモリブデン層があると問題となるためである。上記混酸で500nmの厚さのモリブデン層をエッチングするのに必要な時間は約1分である。このエッチングの結果、図6(4)に示すように、この混酸は第1絶縁層103である酸化珪素をエッチングしないため、第1絶縁層103で自動的にエッチングが停止する。
【0038】
次に、図6(5)に示すように、上記エッチング後に、薄膜層121の裏面側、すなわち絶縁膜103表面に、第2接着層126を形成した。この第2接着層126は、例えば回転塗布技術により例えば紫外線硬化接着剤を塗布して形成した。
【0039】
次に、図6(6)に示すように、第2接着層126に第3基板127を貼り付けた。この第3基板127にはプラスチック基板を用いた。この第3基板127が前記図1によって説明したコネクタ説明部が延長形成された第1基板11aに相当する。上記プラスチック基板には、例えば厚さが0.2mmのポリカーボネートフィルムを用い、紫外線を照射して、紫外線硬化接着剤からなる第2接着層126を硬化させた。ここではプラスチック基板にポリカーボネートを用いたが、ポリカーボネートに限らず、他のプラスチックを用いてもよい。例えば、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート等の他の光学用フィルムを用いることができる。また、ここでは、絶縁層103側に第2接着層126を塗布形成したが、第3基板127に第2接着層126を塗布形成して貼り合わせてよい。
【0040】
次に、図6(7)に示すように、上記基板をアルコール(図示せず)中に浸漬し、ホットメルト接着剤からなる第1接着層123〔前記図5(1)参照〕を溶かして第2基板124〔前記図5(1)参照〕を外し、第3基板127上に第2接着層126、絶縁膜103を介して薄膜層121が載ったアクティブ基板(基板11a)を得た。
【0041】
今回、プラスチック基板には、ポリカーボネートを用いたが、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート等の他の光学用フィルムでもよい。
【0042】
次に、上記アクティブ基板(基板11a)と、プラスチック基板に透明電極膜を全面に成膜した対向基板〔前記図1の基板11b参照〕とに配向膜(ポリイミド)を塗布し、ラビング処理を行って、配向処理を行った。
【0043】
次に、図7に示すように、1枚の基板402上に、複数のパネル412(前記図1によって説明した対向基板となる基板11b)が縦横に配置された状態となっている。対向基板となるパネル412において、重ね合わせた際にパッド部に相当する部分422を除去した。この除去加工は、例えば炭酸ガスレーザ加工装置を用いることができる。ここでは、前記図1に示したように、アクティブ基板となる基板11aと対向基板となる基板11bとを重ね合わせた後に、基板11bだけ切断することが難しいため、基板11aと基板11bとを重ね合わせる前に上記除去加工を行った。また、今回はレーザ加工を用いたがトムソン刃等他の手段を用いた切断加工を行ってもよい。
【0044】
次に、図8に示すように、アクティブ基板となる基板11aのシール部にシール剤14を塗布し、基板11aと対向基板となる基板11bとを両者を張り合わせた。そして張り合わせた後、加圧しながら紫外線を照射してシール剤14を硬化させた。このときの加圧力は例えば1kg/cm^(2)とした。このとき、基板11aにはスペーサ13(例えば柱状スペーサ116)が形成されているので、基板11aと基板11bとの間隔は、表示部21において一定間隔に保持される。次に、レーザ加工により張り合わせた基板11aと基板11bとをパネルの大きさに切断した。次いで、パネルの液晶注入口から液晶を注入して基板11aと基板11bとの間に液晶層15を形成した後、その注入口をモールド樹脂(図示せず)で覆い、モールド樹脂を硬化させて、パネル内に液晶層15を封止し、液晶表示装置10を作製した。
【0045】
以上により、液晶パネルとフレキシブルケーブルとなるコネクタ接続部16とが一体化した液晶表示装置10が完成した。
【0046】
上記液晶表示装置10の製造方法では、画素電極が形成された基板11aおよび対向基板となる基板11bのうち少なくとも一方、上記例では基板11aに可撓性を有するプラスチック基板が用い、この可撓性を有する基板に、可撓性を有する基板を組み込む機器のコネクタに直接接続するコネクタ接続部16を延長形成することから、従来技術のように異方性導電フィルムを介してフレキシブルケーブルを接続する必要が無くなる。このため、異方性導電フィルムを用いた接着工程による薄膜層12(121)の破壊が回避されることになり、信頼性の向上が図れるとともに、製造工程の削減、コストの低減が成される。」

b 図面の記載
「【図1】


c 引用例記載の発明
上記a及びbの記載事項によると、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「可撓性を有するプラスチック基板からなり、TFT及び画素電極が形成されたアクティブ基板11aと、プラスチック基板に透明電極膜を全面に成膜した対向基板11bとを重ね合わせ、アクティブ基板11aと対向基板11bとの間に液晶層15を形成した液晶表示装置10であって、
アクティブ基板11aには、アクティブ基板11aを組み込む機器のコネクタに直接接続するコネクタ接続部16が延長形成されていることから、液晶パネルとフレキシブルケーブルが一体化した、
液晶表示装置10。」

4 対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「透明電極膜」及び「画素電極」は、本願発明の「上部電極」及び「下部電極」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「対向基板11b」は、「プラスチック基板に透明電極膜を全面に成膜した」ものであり、技術常識に照らして、透明であることは明らかであるから、本願発明の「上側透明基板」に相当する。
さらに、引用発明の「アクティブ基板11a」は、「可撓性を有するプラスチック基板からなり、」「アクティブ基板11aを組み込む機器のコネクタに直接接続するコネクタ接続部16が延長形成されていることから、液晶パネルとフレキシブルケーブルが一体化した」ものであるから、本願発明の「一体型下側FPCB基板」に相当する。
そうすると、引用発明の「可撓性を有するプラスチック基板からなり、TFT及び画素電極が形成されたアクティブ基板11aと、プラスチック基板に透明電極膜を全面に成膜した対向基板11bとを重ね合わせ」、「アクティブ基板11aには、アクティブ基板11aを組み込む機器のコネクタに直接接続するコネクタ接続部16が延長形成されていることから、液晶パネルとフレキシブルケーブルが一体化した」構成は、本願発明の「上部電極が形成された上側透明基板と、前記上側透明基板に対向するように配置され、下部電極が形成された一体型下側FPCB基板と、」「を含」む構成に相当する。
(2)引用発明の「液晶層15」と本願発明の「負電荷及び正電荷に帯電されているカプセル化された粒子」とは、「表示要素」である構成で共通する。
そうすると、引用発明の「アクティブ基板11aと対向基板11bとの間に液晶層15を形成した」構成と、本願発明の「上側透明基板と前記一体型下側FPCB基板との間で、負電荷及び正電荷に帯電されているカプセル化された粒子」「を含」む構成とは、「上側透明基板と前記一体型下側FPCB基板との間で、表示要素を含む」構成で共通する。
(3)引用発明は、「TFT及び画素電極が形成された」「アクティブ基板11aには、アクティブ基板11aを組み込む機器のコネクタに直接接続するコネクタ接続部16が延長形成されている」構成を有するから、技術常識に照らして、本願発明の「一体型下側FPCB基板により外部の電気信号が前記下部電極に伝達され」る構成に相当する構成を有するものである。
(4)引用発明は、「TFT及び画素電極が形成されたアクティブ基板11aと、プラスチック基板に透明電極膜を全面に成膜した対向基板11bとを重ね合わせ、アクティブ基板11aと対向基板11bとの間に液晶層15を形成した液晶表示装置10」であるから、技術常識に照らして、本願発明の「上部電極と前記下部電極とにより形成された電界によって駆動される」構成に相当する構成を有するものである。
(5)引用発明の「液晶表示装置10」は、「可撓性を有するプラスチック基板からな」る「アクティブ基板11aと、プラスチック基板」の「対向基板11bとを重ね合わせ」たものであるから、本願発明の「ディスプレイ用のプラスチック平板ディスプレイ」に相当する。

上記(1)及び(5)から、本願発明と引用発明は、
「プラスチック平板ディスプレイにおいて、
上部電極が形成された上側透明基板と、
前記上側透明基板に対向するように配置され、下部電極が形成された一体型下側FPCB基板と、
前記上側透明基板と前記一体型下側FPCB基板との間で、表示要素と、
を含み、
前記一体型下側FPCB基板により外部の電気信号が前記下部電極に伝達され、
前記プラスチック平板ディスプレイは、前記上部電極と前記下部電極とにより形成された電界によって駆動されることを特徴とする、ディスプレイ用のプラスチック平板ディスプレイ。」
で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願発明は、表示要素が「負電荷及び正電荷に帯電されているカプセル化された粒子」であって、ディスプレイが「電子インクディスプレイ」であるのに対し、引用発明は、表示要素が「液晶層15」であって、ディスプレイが「液晶表示装置」である点。

5 当審の判断
以下、上記の相違点について検討する。
電界によって駆動されるディスプレイにおいて、上部電極が形成された上側基板と、上側基板に対向するように配置され、下部電極が形成された下側基板と、上側基板と下側基板との間で、表示要素として負電荷及び正電荷に帯電されているカプセル化された粒子とを含む電子インクディスプレイは周知のものである。
そして、引用発明のような液晶層を有する液晶表示装置も周知のものであって、電子インクディスプレイも液晶表示装置も、上部電極と下部電極との間の表示要素に電界をかけることによって駆動する表示装置である点で共通するものである。
そうすると、引用発明において、液晶層15に換えて、負電荷及び正電荷に帯電されているカプセル化された粒子を設けて、電子インクディスプレイとすることは、単なる周知技術の置換であって、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。
よって、本願発明の上記相違点に係る発明特定事項を構成することは、当業者が容易になし得たことである。

上記相違点については以上のとおりであり、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知の事項から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-01 
結審通知日 2015-06-02 
審決日 2015-06-17 
出願番号 特願2008-551190(P2008-551190)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井海田 隆田井 伸幸  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 神 悦彦
土屋 知久
発明の名称 プラスチック平板ディスプレイ及びその製造方法  
代理人 江森 健二  

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