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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T |
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管理番号 | 1307225 |
審判番号 | 不服2014-12560 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-07-01 |
確定日 | 2015-10-26 |
事件の表示 | 特願2010- 89029「生成装置、生成方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月 4日出願公開、特開2011-221718〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成22年4月7日の出願であって、平成25年12月24日に拒絶理由通知がなされ、これに対して平成26年2月24日付けで手続補正がなされたが、同年3月28日に拒絶査定がなされ、これに対して同年7月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し同年9月26日に前置審査における拒絶理由通知がなされたが、応答がなかったものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年7月1日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の平成26年2月24日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「【請求項1】 CG(Computer Graphics)画像を生成するために必要なCG仮想空間を作成する際に用いられるCG記述データを保持するCG記述データ記憶手段と、 前記CG記述データに基づいて、前記CG仮想空間上に配置される複数の要素をそれぞれ表す複数の要素記述子の一つに対応する要素の値であるパラメータを、ユーザの調整操作により調整される調整対象パラメータとして指定する指定情報について1つ以上を読み書き可能に保持する指定情報保持手段と、 前記ユーザの調整操作に対応して、前記調整対象パラメータを調整する調整手段と、 前記調整対象パラメータが調整された前記CG記述データに基づいて、前記CG画像を生成する画像生成手段と を備え、 前記調整手段は、前記ユーザの調整操作に従って増減する変位量を受けとる構造を有し、 前記画像生成手段は、前記調整手段が変位量を受けることによって、前記調整手段の変位量に応じて増減する値と前記調整対象パラメータの値との関係が所定の関数に従うように前記調整対象パラメータを調整し、前記CG記述データに基づいて前記CG画像を生成して更新する 生成装置。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、平成26年7月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「【請求項1】 CG(Computer Graphics)画像を生成するために必要なCG仮想空間を作成する際に用いられるCG記述データを保持するCG記述データ記憶手段と、 前記CG記述データに基づいて、前記CG仮想空間上に配置される複数の要素をそれぞれ表す複数の要素記述子をツリー状の階層構造として表示させる表示制御手段と、 前記複数の要素記述子の一つに対応する要素の値であるパラメータを、ユーザの調整操作により調整される調整対象パラメータとして指定する指定情報について1つ以上を読み書き可能に保持する指定情報保持手段と、 前記ユーザの調整操作に対応して、前記調整対象パラメータを調整する調整手段と、 前記調整対象パラメータが調整された前記CG記述データに基づいて、前記CG画像を生成する画像生成手段と を備え、 前記調整手段は、前記ユーザの調整操作に従って増減する変位量を受けとる構造を有し、 前記画像生成手段は、前記調整手段が変位量を受けることによって、前記調整手段の変位量に応じて増減する値と前記調整対象パラメータの値との関係が所定の関数に従うように前記調整対象パラメータを調整し、前記CG記述データに基づいて前記CG画像を生成して更新する 生成装置。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。(下線は、補正箇所である。) 2.新規事項の有無、補正の目的要件について 本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、本願発明に記載された「指定情報保持手段」の「複数の要素記述子」に関し、「表示制御手段」により「ツリー状の階層構造として表示」されるものであることを限定して、特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第17条の2第5項2号(補正の目的)の規定に適合している。 3.独立特許要件について 本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 (1)補正後の発明 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。 なお、「補正後の発明」に対し、下記のとおり(A)ないし(H)の記号を当審において説明のために付与した。以下、構成要件A、構成要件Bなどと称することにする。 (A)CG(Computer Graphics)画像を生成するために必要なCG仮想空間を作成する際に用いられるCG記述データを保持するCG記述データ記憶手段と、 (B)前記CG記述データに基づいて、前記CG仮想空間上に配置される複数の要素をそれぞれ表す複数の要素記述子をツリー状の階層構造として表示させる表示制御手段と、 (C)前記複数の要素記述子の一つに対応する要素の値であるパラメータを、ユーザの調整操作により調整される調整対象パラメータとして指定する指定情報について1つ以上を読み書き可能に保持する指定情報保持手段と、 (D)前記ユーザの調整操作に対応して、前記調整対象パラメータを調整する調整手段と、 (E)前記調整対象パラメータが調整された前記CG記述データに基づいて、前記CG画像を生成する画像生成手段と を備え、 (F)前記調整手段は、前記ユーザの調整操作に従って増減する変位量を受けとる構造を有し、 (G)前記画像生成手段は、前記調整手段が変位量を受けることによって、前記調整手段の変位量に応じて増減する値と前記調整対象パラメータの値との関係が所定の関数に従うように前記調整対象パラメータを調整し、前記CG記述データに基づいて前記CG画像を生成して更新する (H)生成装置。 (2)引用例の記載事項 原審の拒絶理由に引用された、特表2008-541286号公報(以下、「引用例」という。)には「3次元形状に関係づけられたパラメトリックモデルを生成する方法および装置」として図面とともに以下の事項が記載されている。 ア.「【技術分野】 【0001】 本発明は、1つの部品または部品グループの3次元形状に関係づけられたパラメトリックモデルの生成に関する。 【0002】 本発明は、立体のモデル化(計算機援用設計、CAD)、工作機械のためのディジタルコマンドプログラム(計算機援用生産、CAM)、計算機援用エンジニアリングプログラム、データ管理ソフトウエアに応用される。」 イ.「【0006】 図1を参照すると、フランスの企業であるダッソーシステム社が開発してIBMが販売しているCatiaと呼ばれるCADソフトウエアの作業環境が図示されている。コンピュータのスクリーンに表示される作業環境は、主として、仕様ツリー2とグラフィック領域4を備えている。この作業環境は、メニューバー6と、標準ツールバー8と、対話領域10と、アクティブワークショップに依存するコンテキストツールバー12を含む作業領域と、見る方向を決めることのできるコンパス14と、アクティブワークショップのアイコン16と、専用またはアプリケーション用ツールバー18とによって完成する。 【0007】 仕様ツリー2は、作成中のモデル(ここでは飛行機)を構造化したグラフィック表示である。図1の例では、製品1と名づけたアクティブ要素に関して作業をしていることがわかる。この製品は5つの主要部を含んでおり、それぞれ、“環境”20A、“胴体1”20B、“翼”20C、“対称翼”20D、“尾部”20Eとなっている。また、1つの主要部は、アプリケーション40とコマンドパラメータ30で構成されている。 【0008】 部品の定義が進むにつれ、モデルのツリーに新しいアイテムが増えていく。 【0009】 要素の選択は、グラフィック領域4または仕様ツリー2の中で自由に行なうことができる。仕様ツリーにより、指定したオブジェクトのコンテキストメニューをアクティブにすることができる。 【0010】 仕様ツリー2の各要素には、仕様ツリー中に示される機能を定義することによって1つまたは複数の固体の形状に影響を与えることのできるコマンドパラメータ30および関係式(図示せず)を含めることができる。 【0011】 したがってこのようなCADソフトウエアを利用すると、ディジタル模型を利用できるようになると同時に、製品と、その製品に関するいくつかのプロセスを組み合わせて定義することができる。 【0012】 最も多いのは、3次元形状モデルの定義が複数の作業グループの目的となっている場合である。その複数の作業グループは、一般に異なる場所で組織され、国の枠を超えていることが最も多い。そのためパラメータ情報を簡単に交換できる必要性が大いにある。 【0013】 実際には、パラメータ化は、ソフトウエアツール、特に“Catia”に元々ある機能によって直接実現できる。あるモデルのパラメータの値を変更するのにアプリケーションを再度コンパイルする必要はない。パラメータを変更するには、ソフトウエアの標準機能を用いるとよい。しかしソフトウエアツールは、モデルを、構築履歴と関係する構造的組織として、または従属ツリーの形態で表示する。 【0014】 ところでこのような表示は、パラメトリックモデルの設計に関する専門的問題に対する機能的アプローチからは比較的離れている。 【0015】 したがって、ソフトウエアの専門家ではないユーザが、得たい結果しか知らずにパラメータを容易に見つけることは比較的困難である。 【0016】 本発明は、まさにこの問題に1つの解決法をもたらす。」 ウ.「【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0017】 そこで本発明は、専門家ではないユーザに、部品の設計に関する専門的問題に近い機能的アプローチで構造化されたパラメータのエディタを提供することによって、ソースコードを変更する必要なしにパラメータを変更するための簡略化されたインターフェイスが得られるようにすることを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0018】 本発明は、1つの部品または部品グループの3次元形状に関係づけられたパラメトリックモデルを生成し、このモデルを、コンピュータのスクリーンに、少なくとも1つのコマンドパラメータによって定義される少なくとも1つの要素を含む仕様ツリーの形態で、グラフィック表示する装置に関する。 【0019】 本発明の一般的定義によると、この生成装置は、仕様ツリーをグラフィックユーザインターフェイスに変換することができるコンバータを備えている。このインターフェイスにおいて、その仕様ツリーの少なくとも1つのアクティブ要素は、そのアクティブ要素の少なくとも1つのコマンドパラメータに関係づけられた少なくとも1つのフィールドを含むダイアログボックスに関係づけられている。このコマンドパラメータの調節値は、ユーザによってパラメータエディタを使って変更可能であり、そのコマンドパラメータの調節値を変更するごとに、その調節値がダイアログボックスの対応するフィールドに表示されるとともに、仕様ツリー中の対応するアクティブ要素のコマンドパラメータの調節値が自動的に変化する。 【0020】 したがってユーザは、本発明によるダイアログボックスのおかげで、CADソフトウエアの専門家でなくともアクティブ要素のパラメータ化可能なフィールドの値を容易かつ直接的に変更することができる。さらに、ダイアログボックスを通じたパラメータの変更に対応して、仕様ツリーの中が変更される。その結果、専門家ではないユーザにとって、CADソフトウエアの仕様ツリーのアクティブ要素のコマンドパラメータに対するアクセスと変更が非常に容易になる。さらに、本発明のおかげで、パラメータアーキテクチャを変更するのにソースコードを変更する必要がなくなる。 【0021】 一実施形態によると、グラフィックインターフェイスは、対応するアクティブ要素の形状を含むグラフィックウインドウをさらに備えていて、パラメータの調節結果が、そのグラフィックウインドウに表示される。 【0022】 このように、専門家でないユーザが興味深いと考えるコマンドパラメータは、一般にCADソフトウエアの専門家によって定義されるが、これらのコマンドパラメータは、本発明によるグラフィックインターフェイスおよび/またはダイアログボックス上で直接見て変更することができる。」 エ.「【0044】 中央処理ユニット102は、本発明によるプログラムのソフトウエアコードの命令またはその一部の実行を指示し管理する。命令は、ハードディスク103または読み出し専用メモリ101に記憶されているか、または、上記の他の記憶要素に記憶されている。電圧を印加すると、不揮発性メモリ(例えばハードディスク103、ROM101)に記憶されているプログラムは、ランダムアクセスメモリRAM105に移される。このRAM105には、本発明によるプログラムの実行コードとともに、本発明の実施に必要なパラメータの変数を記憶させるためのレジスタも含まれる。」 オ.「【0047】 図3を参照すると、図1の航空機のディジタル3次元模型の作業環境が示してある。ここには仕様ツリー2と航空機のグラフィック表示4が再現されている。 【0048】 仕様ツリー2のアクティブ要素の1つ(ここでは“胴体1”要素20B)を選択し、ツールバー18にある“パラメータエディタ”ボタンまたはアイコン18Aをアクティブにすると、第2のグラフィックインターフェイス50が、マイクロコンピュータのスクリーン上に、第1のグラフィックインターフェイス4に重なって現われる。 【0049】 このグラフィックインターフェイス50は、コマンドのパラメータに関連する少なくとも1つのパート54と、対応する要素の形状に関連する必要に応じて存在するパート52とを有するダイアログボックスである。グラフィックインターフェイス50は、モデルの各要素20B“胴体1”のためのタブ60を備えている。タブ60は60A?60Fに分かれており、それぞれ、“全体図”、“主要部”、“横断面”、“客室”、“円筒部”、“尾部”という要素になっている。 【0050】 パート54には、コマンドパラメータのうちで、選択したタブ(ここでは“横断面”に対応するタブ60C)に関係するパラメータ70のリストが表示されている。 【0051】 パラメータ70は、個別に70A?70Kとなっている。それぞれのパラメータ70にフィールド80が付随している。フィールドの値は、ユーザが、数値変更手段(例えば増減ボタン82Aやスライドボタン82Hなど)を利用して変更することができる。各パラメータは、同様に、選択ボタン84も備えている。 【0052】 アイコン18Aは、本発明によるダイアログボックス50を表示するコマンドを開始することのできる省略記号である。このコマンドによって、部品の構築履歴や仕様ツリーに直接依存することなく、構造化され、機能化された状態でモデルを表わすパラメータエディタが生成される。パラメータエディタは、モデルのパラメータ70のうちの少なくともいくつかを編集するための個々のフィールド80を表示する。フィールド80は、モデルのパラメータに直接関係している。 【0053】 グラフィックインターフェイス50は、承認“OK”ボタン90A、適用ボタン90B、およびキャンセルボタン90Cという3つのボタンによって終了する。 【0054】 図4を参照すると、ユーザは、ダイアログボックス50の中のパート54において、処理したいパラメータ、および/または変更したいパラメータ、および/またはダイアログボックス50のパート52に表示したいパラメータを選択する。ここでは、ユーザは、胴体の横断面の高さに対応するパラメータ70Aを選択している。このパラメータ70Aに関係するフィールド80Aに記載されている元の値は、ここでは3000mmである。ユーザは、形状のうちでパラメータ70Aの影響を受ける部分をダイアログボックスのパート52に表示させる。 【0055】 図5を参照すると、ユーザは、パラメータ70Aの調節値を図4に示した値から変更することを望んでいる。ユーザは、ここでは例えば増減ボタン82Aを用いて、胴体の横断面に関するパラメータ70Aの高さの値を変更する(新しい値=2000mm)。パラメータの値を変化した結果が、ほぼリアルタイムに(1?2秒で)グラフィックウインドウ52に表示される。 【0056】 承認ボタン90(OK)を選択すると、パラメータの新しい値が製品の要素グループの中に自動的に組み込まれる。 【0057】 図6を参照する。図5を参照して説明したようにダイアログボックス50を用いてパラメータ70Aの値を変化させると、自動的に応答して、図1を参照して説明した作業環境2および4に関して、仕様ツリー2の中が対応して変更されるとともに、グラフィックインターフェイス4に表示される形状(ここでは胴体の横断面における縮小)が対応して変更される。」 カ.「【0058】 実際には、仕様ツリー2をグラフィックユーザインターフェイス50、52、54に変換するのはコンバータである。このインターフェイスでは、少なくとも1つのアクティブ要素(ここでは図2?図6を参照して説明した仕様ツリー2のアクティブ要素20B)に、そのアクティブ要素の少なくとも1つのコマンドパラメータ70Aに関係づけられた少なくとも1つのフィールド80Aを含むダイアログボックスが関係づけられている。実際には、本発明によるコンバータによって、構造化されたパラメータのエディタが生成される。このエディタにはフィールドが表示され、専門家ではないユーザが、部品の設計に関する専門的な問題に対する機能的アプローチに近い方法でこのフィールドをパラメータ化することができる。 【0059】 コマンドパラメータ70Aの調節値は、CADソフトウエアの専門家ではないユーザが、本発明によるパラメータエディタを開始するアイコン18Aを選択することによって変更することができる。実際には、パラメータエディタは、CADソフトウエアの中で利用できるパラメータ編集に関する元からある機能に基づいている。 【0060】 本発明によれば、パラメータエディタは、これらの元からある機能を利用してダイアログボックス50の中でモデルのパラメータを組織化し、構造化する。 【0061】 コマンドパラメータの調節値を変更するたびに、その値が対応するフィールド80に表示され、仕様ツリー2において対応するアクティブ要素のコマンドパラメータの調節値が自動的に変化する。したがってユーザは、ダイアログボックスを通じてパラメータの値を容易かつ直接的に変更することができる。 【0062】 グラフィックウインドウ52には対応するアクティブ要素20Bの形状が含まれており、パラメータの調節値は、そのグラフィックウインドウ52に表示される。そのため、専門家ではないユーザは、パラメータの値を変更した結果を見て確認することができる。 【0063】 実際には、コンバータは、選択した編集規則と変換規則に従って、ダイアログボックスの中の各アクティブ要素を変換する。 【0064】 例えば、仕様ツリー2の各要素20A、20B、20C、20D、20Eは、末端ノードと非末端ノードによって形成されるグループに属する。それぞれの末端ノードには、グラフィックユーザウインドウタイプの表示52とパラメータエディタ18Aが関係づけられている。それぞれの非末端ノードには、パラメータエディタ18Aと複数のタブ60が関係づけられており、それぞれのタブ60にサブノード62が関係づけられている。 【0065】 実際には、パラメータエディタはさらにスクリプトエディタであり、例えばスクリプト言語はXMLタイプのマークアップ言語である。」 (3)引用発明 上記ア.?カ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して引用例の記載事項を検討する。 (3-1)引用例には、上記ア.に記載されるように、1つの部品または部品グループの3次元形状に関係づけられたパラメトリックモデルの生成に関する技術に関して記載があり、当該技術はCADに応用されると記載されている。 したがって、引用例は、パラメトリックモデルを生成する『CAD』に関して記載されている。 (3-2)上記エ.には、パラメトリックモデルの生成に必要なパラメータがレジスタに記憶されていることが記載されている。 したがって、引用例には、『パラメトリックモデルを生成するために必要なパラメータを記憶させるためのレジスタ』を有することが記載されている (3-3)上記イ.及びウ.の段落【0018】並びに図1に記載のように、パラメトリックモデルは、グラフィック表示されており、そして、パラメトリックモデル(飛行機)とパラメトリックモデルの各要素(胴体1や翼等)は仕様ツリーにより表示(図1の左上)されている。仕様ツリーには、各要素の名称(「胴体1」、「翼」等)が表示されている。なお、CADにより表示するにあたり、表示するための手段があることは自明のことである。 したがって、引用例には、『グラフィック表示される複数の要素をそれぞれ表す要素の名称を仕様ツリーを用いて表示する手段』が記載されている。 (3-4)上記オ.及び図3、図4に記載のように、要素(例えば胴体1)のパラメータ70A?70K(横断面に関するパラメータ)がダイアログボックスに表示され、ユーザの操作により当該パラメータが変更できるようにされている。ここで、要素は上記(3-3)で検討したとおり仕様ツリーの「要素の名称」に対応している。 ここで、上記ウ.の段落【0019】ないし【0020】及びカ.に記載されるとおり、要素のパラメータは、コンバータによりパラメータエディタが生成され、ダイアログボックスを通じて変更可能となっている。なお、パラメータエディタがXMLタイプのマークアップ言語によるスクリプトエディタであることも記載されている。 したがって、引用例には、『要素の名称の1つに対応する要素のパラメータを、ユーザの操作によって増減される変更対象のパラメータとするパラメータエディタを生成する手段』が記載されている (3-5)上記オ.の段落【0050】ないし【0055】に記載のように、要素のそれぞれのパラメータ70はユーザが数値変更手段(例えば増減ボタン82Aやスライドボタン82H)を利用して変更できると記載され、また、変更する値を「調整値」(段落【0055】)と称している。 したがって、引用例には、『ユーザの操作により、変更対象のパラメータの調整値を変更する数値変更手段』を有することが記載されている。 (3-6)上記ウ.の段落【0021】及びオ.の段落【0055】ないし【0057】に記載のように、数値変更手段によりパラメータが変更されると、パラメータの値を変化した結果に基づいた図6のような変更後のパラメトリックモデルが表示されると記載されている。 したがって、引用例では、『変更対象のパラメータが変更された結果に基づいて、変更後のパラメトリックモデルの画像を表示する手段』が記載されている。 (3-7)したがって、上記(3-1)ないし(3-6)から、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているといえる。 なお、引用発明に対し、下記のとおり(a)ないし(f)の記号を当審において説明のために付与した。以下、構成要件a、構成要件bなどと称することにする。 (引用発明) 「(a)パラメトリックモデルを生成するために必要なパラメータを記憶させるためのレジスタと、 (b)グラフィック表示される複数の要素をそれぞれ表す要素の名称をツリー仕様を用いて表示する手段と、 (c)複数の要素の名称の1つに対応する要素のパラメータを、ユーザの操作によって増減される変更対象のパラメータとするパラメータエディタを生成する手段と、 (d)ユーザの操作により、変更対象のパラメータの調整値を変更する数値変更手段と、 (e)変更対象のパラメータが変更された結果に基づいて、変更後のパラメトリックモデルの画像を表示する手段を備えた、 (f)CAD。」 (4)対比 (4-1)補正後の発明の構成要件Aと引用発明の構成要件aの対比 引用発明の「パラメトリックモデル」は、CADというコンピュータが有する表示装置に表示される画像であり、明らかに補正後の発明の「CG(Computer Graphics)画像」に相当している。そして、引用発明の「パラメトリックモデル」は、補正後の発明と同様に「CG仮想空間」において表示されるものであるといえる。また、引用発明の「表示するために必要なパラメータ」は、CG仮想空間にCG(Computer Graphics)画像としてのパラメトリックモデルを生成させて表示するためのデータであり、補正後の発明の「CG記述データ」に相当する。また、引用発明の「レジスタ」は、記憶手段である。 したがって、引用発明の構成要件a「パラメトリックモデルを生成するために必要なパラメータを記憶させるためのレジスタ」は、補正後の発明の構成要件A「CG(Computer Graphics)画像を生成するために必要なCG仮想空間を作成する際に用いられるCG記述データを保持するCG記述データ記憶手段」に相当する。 (4-2)補正後の発明の構成要件Bと引用発明の構成要件bの対比 引用発明の「グラフィック表示される複数の要素」に関し、要素をCG仮想空間に表示することは、要素をCG仮想空間上に配置することにあたるから、引用発明の「グラフィック表示される複数の要素」は、補正後の発明の「CG仮想空間上に配置される複数の要素」に相当する。 また、引用発明の「要素の名称」が補正後の発明の「要素記述子」に相当することは明らかであり、また,引用発明の「ツリー仕様」は、引用例の図1の左上に示されるように、要素の名称がツリー状に階層構造で表示される仕様であるから、補正後の発明の「ツリー状の階層構造」に相当する。また、引用発明の「表示する手段」については、表示することは表示を制御することを伴うから補正後の発明の「表示制御手段」に相当する。 ここで、引用発明の「グラフィック表示される複数の要素」が「パラメトリックモデルを生成するために必要なパラメータ」により定義されていることは明らかであるから複数の要素は、補正後の発明の「CG記述データ」に相当する「パラメトリックモデルを生成するために必要なパラメータ」に基づいて表示されているということができる。 したがって、引用発明の構成要件b「グラフィック表示される複数の要素をそれぞれ表す要素の名称をツリー仕様を用いて表示する手段」は、補正後の発明の構成要件B「前記CG記述データに基づいて、前記CG仮想空間上に配置される複数の要素をそれぞれ表す複数の要素記述子をツリー状の階層構造として表示させる表示制御手段」に相当する。 (4-3)補正後の発明の構成要件Cと引用発明の構成要件cの対比 引用発明の「要素のパラメータ」が、そのパラメータにより要素の値を定めることとなるのは明らかであるから、引用発明の「複数の要素の名称の1つに対応する要素のパラメータ」は、補正後の発明の「前記複数の要素記述子の一つに対応する要素の値であるパラメータ」に相当する。 また、引用発明の「パラメータを、ユーザの操作によって増減される変更対象のパラメータとするパラメータエディタ」に関し、「ユーザの操作」が補正後の発明の「ユーザの調整操作」に相当することは明らかであり、「増減」することは「調整」することと同義であり、「変更対象のパラメータ」が補正後の発明の「調整対象パラメータ」に相当することも明らかである。そして、引用発明の「パラメータエディタ」は、補正後の発明の「指定情報」に相当している。 したがって、引用発明の構成要件cと補正後の発明の構成要件Cは、「前記複数の要素記述子の一つに対応する要素の値であるパラメータを、ユーザの調整操作により調整される調整対象パラメータとして指定する指定情報を有すること」について共通する。しかしながら、生成される「指定情報」に関し、補正後の発明では「1つ以上を読み書き可能に保持する指定情報保持手段」にて保持しているのに対し、引用発明では、保持するのか否かについて不明である点で相違している。 (4-4)補正後の発明の構成要件D、Fと引用発明の構成要件dの対比 引用発明の構成要件dの「ユーザの操作により、変更対象のパラメータの調整値を変更する数値変更手段」に関し、「ユーザの操作」が補正後の発明の「ユーザの調整操作」に相当することは明らかであり、「変更対象のパラメータ」が補正後の発明の「調整対象パラメータ」に相当することも明らかであり、「変更」は「調整」は同義である。そして、引用発明の「数値変更手段」は補正後の発明の「調整手段」に相当する。 以上のことから、引用発明の構成要件d「ユーザの操作により、変更対象のパラメータの調整値を変更する数値変更手段と、」は、補正後の発明の構成要件D「前記ユーザの調整操作に対応して、前記調整対象パラメータを調整する調整手段と、」に相当する。 しかしながら、補正後の発明では、「調整手段」に関し、構成要件Dの他に、構成要件Fにおいて「前記調整手段は、前記ユーザの調整操作に従って増減する変位量を受けとる構造を有」するとしているが、引用発明では、そのような構成を有していない。 したがって、引用発明の構成要件dと補正後の発明の構成要件D、Fとは、「前記ユーザの調整操作に対応して、前記調整対象パラメータを調整する調整手段」を有している点で共通するものの、「調整手段」に関し、補正後の発明では、「前記ユーザの調整操作に従って増減する変位量を受けとる構造を有」しているのに対し、引用発明では、そのような構造について明記がない点で相違する。 (4-5)補正後の発明の構成要件E、Gと引用発明の構成要件eの対比 引用発明の構成要件eの「変更対象のパラメータが変更された結果に基づいて、変更後のパラメトリックモデルの画像を表示する手段」に関し、「変更対象のパラメータ」が補正後の発明の「調整対象パラメータ」に相当することは明らかであり、「パラメトリックモデルの画像」は補正後の発明の「CG画像」に相当することも明らかである。ここで、引用発明のパラメトリックモデルは、変更されていないパラメータと変更後のパラメータとに基づき画像が表示されるが、これらのパラメトリックモデルを構成する全パラメータである「パラメトリックモデルを生成するために必要なパラメータ」は補正後の発明の「CG記述データ」に相当する。そして、引用発明の「画像を表示する手段」は、画像を表示することは画像を生成することと同義であるから補正後の発明の「画像生成手段」に相当する。 以上のことから、引用発明の構成要件dの「変更対象のパラメータが変更された結果に基づいて、変更後のパラメトリックモデルの画像を表示する手段」は、補正後の発明の構成要件Eの「前記調整対象パラメータが調整された前記CG記述データに基づいて、前記CG画像を生成する画像生成手段」に相当する。 しかしながら、補正後の発明では、「画像生成手段」に関し、構成要件Eの他に、構成要件Gにおいて「前記画像生成手段は、前記調整手段が変位量を受けることによって、前記調整手段の変位量に応じて増減する値と前記調整対象パラメータの値との関係が所定の関数に従うように前記調整対象パラメータを調整し、前記CG記述データに基づいて前記CG画像を生成して更新する」としているが、引用発明では、そのような構成を有していない。 したがって、引用発明の構成要件eと補正後の発明の構成要件E、Gとは、「前記調整対象パラメータが調整された前記CG記述データに基づいて、前記CG画像を生成する画像生成手段」を有している点で共通するものの、「画像生成手段」に関し、補正後の発明では「前記調整手段が変位量を受けることによって、前記調整手段の変位量に応じて増減する値と前記調整対象パラメータの値との関係が所定の関数に従うように前記調整対象パラメータを調整し、前記CG記述データに基づいて前記CG画像を生成して更新」する構成を有しているのに対し、引用発明では、そのような構成について明記がない点で相違する。 (4-6)補正後の発明の構成要件Hと引用発明の構成要件fの対比 引用発明の「CAD」はパラメトリックモデルを生成する装置であるから、補正後の発明の「生成装置」に相当する。 したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「CG(Computer Graphics)画像を生成するために必要なCG仮想空間を作成する際に用いられるCG記述データを保持するCG記述データ記憶手段と、 前記CG記述データに基づいて、前記CG仮想空間上に配置される複数の要素をそれぞれ表す複数の要素記述子をツリー状の階層構造として表示させる表示制御手段と、 前記複数の要素記述子の一つに対応する要素の値であるパラメータを、ユーザの調整操作により調整される調整対象パラメータとして指定する指定情報を有し、 前記ユーザの調整操作に対応して、前記調整対象パラメータを調整する調整手段と、 前記調整対象パラメータが調整された前記CG記述データに基づいて、前記CG画像を生成する画像生成手段と を備えた生成装置。」 (相違点1) 「指定情報」に関し、補正後の発明では「1つ以上を読み書き可能に保持する指定情報保持手段」にて保持しているのに対し、引用発明では、保持するのか否かについて不明である点。 (相違点2)「調整手段」に関し、補正後の発明では、「前記ユーザの調整操作に従って増減する変位量を受けとる構造を有」しているのに対し、引用発明では、そのような構造について明記がない点。 (相違点3)「画像生成手段」に関し、補正後の発明では「前記調整手段が変位量を受けることによって、前記調整手段の変位量に応じて増減する値と前記調整対象パラメータの値との関係が所定の関数に従うように前記調整対象パラメータを調整し、前記CG記述データに基づいて前記CG画像を生成して更新」する構成を有しているのに対し、引用発明では、そのような構成について明記がない点。 (5)判断 まず、上記(相違点1)について検討する。 引用発明では、補正後の発明の「指定情報」に相当する「パラメータエディタ」を生成する構成を有しているが、生成されたパラメータエディタを保存するか否かについては特定されていない。 しかしながら、生成されたパラメータエディタに基づきダイアログボックスが表示され、ユーザの操作によりパラメータが変更できるようにされていると引用例に記載(段落【0019】、【0020】等)されていることから、当業者であれば、生成されたパラメータエディタをCADというコンピュータにおける何らかの手段により記憶してユーザの操作に臨むようにすること、すなわち、生成された「指定情報」に相当する「パラメータエディタ」を記憶する指定情報保持手段を設けて、記憶されたパラメータエディタに基づきパラメータを変更することを容易に為し得るものである。 このように、相違点1は格別なものでない。 ついで、上記(相違点2)、(相違点3)について検討する。 引用発明では、補正後の発明の「調整手段」に相当する「数値変更手段」に関し、補正後の発明のように「前記ユーザの調整操作に従って増減する変位量を受けとる構造」を有するか特定されておらず、また、補正後の発明の「画像生成手段」に相当する「画像を表示する手段」に関し、補正後の発明のように「前記調整手段が変位量を受けることによって、前記調整手段の変位量に応じて増減する値と前記調整対象パラメータの値との関係が所定の関数に従うように前記調整対象パラメータを調整し、前記CG記述データに基づいて前記CG画像を生成して更新」する構成を有するか明らかではない。 引用発明の「数値変更手段」の具体例としては、例えば引用例の段落【0051】や図3に「スライドボタン」が挙げられている。この具体例によれば、スライドボタンの操作により変更対象のパラメータの調整値が変更されることになるが、スライドボタンによりどのようにパラメータの調整値が変更されるのか引用例には明記がない。しかしながら、画面に表示されたスライドボタンによるコンピュータへの入力手法は常套手段にすぎず、ユーザの操作によるスライドボタンの画面上の位置の変化がコンピュータの入力値として反映されることは周知である。 したがって、当業者であれば、画面上の数値変更手段(スライドボタン)に対するユーザの調整操作により「増減する変位量」を発生させ、CADというコンピュータ上に「変位を受け取る構造」を構成し、受け取った変位に従ってパラメータの調整値を変更するように為すことを容易に為し得るものである。 そのように為せば、引用発明においても「前記ユーザの調整操作に従って増減する変位量を受けとる構造」を有することになる。(相違点2) また、その際、画面上の数値変更手段(スライドボタン)に対するユーザの調整操作により「増減する変位量」とパラメータの調整値の関係を所定の関数、例えば線形一次関数、に従うようにすることは当業者が適宜行い得る設計的事項にすぎない。ここで、引用発明では変更されていないパラメータと変更後のパラメータとに基づきパラメトリックモデルが表示されることになるが、これは変更前のパラメトリックモデルに対して「更新」された画像となる。 以上のように為せば、引用発明においても「前記調整手段が変位量を受けることによって、前記調整手段の変位量に応じて増減する値と前記調整対象パラメータの値との関係が所定の関数に従うように前記調整対象パラメータを調整し、前記CG記述データに基づいて前記CG画像を生成して更新」することになる。(相違点3) また、補正後の発明に関する作用・効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。 以上のとおりであるから、補正後の発明は引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明 引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の「(3)引用発明」の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は補正後の発明から、本件補正に係る構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、補正後の発明から本件補正に係る限定を省いた本願発明も、同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-08-26 |
結審通知日 | 2015-08-27 |
審決日 | 2015-09-09 |
出願番号 | 特願2010-89029(P2010-89029) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06T)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 真木 健彦 |
特許庁審判長 |
渡邊 聡 |
特許庁審判官 |
藤井 浩 小池 正彦 |
発明の名称 | 生成装置、生成方法、及びプログラム |
代理人 | 西川 孝 |
代理人 | 稲本 義雄 |