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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L |
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管理番号 | 1307233 |
審判番号 | 不服2014-25583 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-12-15 |
確定日 | 2015-10-26 |
事件の表示 | 特願2012-132472「オペレーティング・システムのアプリケーション・プログラム・インターフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月25日出願公開、特開2012-208508〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯・先行技術等 1.手続の経緯の概要 (1)関連出願の経緯 1998年3月23日(以下「優先日」と記す。)のアメリカ合衆国での出願を基礎とするパリ条約に基づく優先権主張を伴って、 1999年3月22日に我が国を指定国とした国際出願がなされ、 平成12年9月25日付けで、当該国際出願に対応する特許法第184条の5第1項の規定による書面及び、特許法第184条の4第1項の規定による、国際出願日における明細書、請求の範囲、図面の翻訳文が提出され、 特願2000-538298号とされた。 平成21年2月17日付けで当該特願2000-538298号を原出願とする特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(以下「分割出願」と記す。)として、特願2009-034311号が出願された。 (2)原審の経緯 本件審判請求に係る出願(以下、「本願」と記す。)は、 その願書に上記特願2009-034311号を原出願とする分割出願である旨の表示がなされて、 平成24年6月12日付けで出願されたものであって、 同日付けで審査請求がなされ、 平成25年7月22日付けで拒絶理由通知(平成25年7月25日発送)がなされ、 平成25年10月16日付けで意見書が提出されるとともに、 同日付けで手続補正書が提出され、 平成26年2月20日付けで最後の拒絶理由通知(平成26年2月24日発送)がなされ、 平成26年5月16日付けで意見書が提出され、 平成26年8月7日付けで拒絶査定(平成26年8月13日謄本発送、送達)がなされたものである。 (3)当審での経緯 本件審判請求は 「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める」との趣旨で、 平成26年12月15日付けで請求され、 平成27年1月30日付けで最後の拒絶理由通知(平成27年2月2日発送)(以下「当審拒絶理由通知」と記す。)がなされ、 平成27年4月30日付けで意見書が提出されるとともに、 同日付けで手続補正書が提出されたものである。 2.拒絶理由・補正の内容・請求人の主張 (1)平成25年10月16日付け手続補正 上記平成25年10月16日付けの手続補正書は特許請求の範囲を以下のとおりに補正するものである。 「 【請求項1】 少なくとも一つの音声コマンド・メニューを管理するアプリケーションと関連して、コンピュータ上の実行のために、コンピュータ読み取り可能媒体において具現化される一組のアプリケーション・プログラム・インターフェースであって: 1からnまで順番に番号を振られたコマンドを含む少なくとも一つの音声コマンド・メニューにコマンドを追加する機能であって、追加されたコマンドにn+1から順に番号を振る機能と、; 指定されたコマンドを前記少なくとも一つの音声コマンド・メニューから除去する機能であって、除去すべき最初のコマンドの番号と除去すべきコマンド数に基づいて除去を行う機能と; 前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニュを停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューの再起動まで前記音声コマンド・メニューを再コンパイルさせない機能と;を具備する ことを特徴とするアプリケーション・プログラム・インターフェース。 【請求項2】 請求項1に記載のアプリケーション・プログラム・インターフェースであって、 可能化パラメータをアプリケーションから受け取る機能であって、前記可能化パラメータは、前記可能化パラメータが第1の値を有する時に、音声認識コンポーネントが、音声認識を可能にし、及び前記可能化パラメータが第2の値を有する時に、音声認識を不能にするようにさせるよう動作する、機能と; 前記アプリケーションに第2のパラメータを戻す機能であって、前記第2のパラメータは、前記第2のパラメータが前記第1の値を有する時に音声認識が可能にされ、及び前記第2のパラメータが前記第2の値を有する時に音声認識が不能にされることを示すように動作する、機能と;を更に具備する、 ことを特徴とするアプリケーション・プログラム・インターフェース。 【請求項3】 請求項1又は2に記載のアプリケーション・プログラム・インターフェースであって、 アプリケーション名及び状態名を具備するメニュー識別子構造、言語識別子構造、及びモード・フラグをアプリケーションから受け取り、音声認識システムが、前記メニュー識別子構造によって識別される音声コマンド・メニューを生成するようにさせる機能と; 前記メニュー識別子構造をアプリケーションから受け取り、及び前記音声認識システムが、前記メニュー識別子構造によって識別される前記音声コマンド・メニューを削除するようにさせる機能と;を更に具備する、 ことを特徴とするアプリケーション・プログラム・インターフェース。」 (2)当審拒絶理由 上記当審拒絶理由通知によって通知した理由(以下「当審拒絶理由」と記す。)の内容は概略以下のとおりである。 『1.平成25年10月16日付けでした手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、下記の点で本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」と記す。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 記 本件補正は、特許請求の範囲を 「【請求項1】 少なくとも一つの音声コマンド・メニューを管理するアプリケーションと関連して、コンピュータ上の実行のために、コンピュータ読み取り可能媒体において具現化される一組のアプリケーション・プログラム・インターフェースであって: 1からnまで順番に番号を振られたコマンドを含む少なくとも一つの音声コマンド・メニューにコマンドを追加する機能であって、追加されたコマンドにn+1から順に番号を振る機能と、; 指定されたコマンドを前記少なくとも一つの音声コマンド・メニューから除去する機能であって、除去すべき最初のコマンドの番号と除去すべきコマンド数に基づいて除去を行う機能と; 前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニュを停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューの再起動まで前記音声コマンド・メニューを再コンパイルさせない機能と;を具備する ことを特徴とするアプリケーション・プログラム・インターフェース。 【請求項2】 請求項1に記載のアプリケーション・プログラム・インターフェースであって、 可能化パラメータをアプリケーションから受け取る機能であって、前記可能化パラメータは、前記可能化パラメータが第1の値を有する時に、音声認識コンポーネントが、音声認識を可能にし、及び前記可能化パラメータが第2の値を有する時に、音声認識を不能にするようにさせるよう動作する、機能と; 前記アプリケーションに第2のパラメータを戻す機能であって、前記第2のパラメータは、前記第2のパラメータが前記第1の値を有する時に音声認識が可能にされ、及び前記第2のパラメータが前記第2の値を有する時に音声認識が不能にされることを示すように動作する、機能と;を更に具備する、 ことを特徴とするアプリケーション・プログラム・インターフェース。 【請求項3】 請求項1又は2に記載のアプリケーション・プログラム・インターフェースであって、 アプリケーション名及び状態名を具備するメニュー識別子構造、言語識別子構造、及びモード・フラグをアプリケーションから受け取り、音声認識システムが、前記メニュー識別子構造によって識別される音声コマンド・メニューを生成するようにさせる機能と; 前記メニュー識別子構造をアプリケーションから受け取り、及び前記音声認識システムが、前記メニュー識別子構造によって識別される前記音声コマンド・メニューを削除するようにさせる機能と;を更に具備する、 ことを特徴とするアプリケーション・プログラム・インターフェース。」 と補正するものである。 しかしながら、該補正後の請求項1に記載される「コンピュータ読み取り可能媒体において具現化される一組のアプリケーション・プログラム・インターフェース」が「前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニュを停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューの再起動まで前記音声コマンド・メニューを再コンパイルさせない機能」「を具備する」旨の技術的事項は、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載から自明なものでもない。 なお、当初明細書の段落【0089】の【表148】に 「註 最善の結果のために、Addを呼び出す前に前記音声メニュを停止させるべきである。そうでなければ、Addが戻る前に前記メニュは停止され、再コンパイルされ、及び再起動されなければならない。Addが呼び出される時に、すでに前記メニュが停止されている場合、前記メニュは前記アプリケーションがそれを再度起動させるまで再コンパイルされない。」と、 同段落の【表155】に 「註 良い結果を得るために、Removeを呼び出す前に、前記音声メニュを停止させるべきである。あるいは、Removeが戻る前に、前記メニュは、停止され、再コンパイルされ、及び再起動されなければならない。Removeが呼び出される時に前記メニュがすでに停止している場合、前記メニュは、前記アプリケーションがそれを再度起動させるまで、再コンパイルされない。」 と記載されているが、これはアプリケーション・プログラム・インターフェース(以下「API」と記す。)を利用する際の注意を開示するものであり、APIが具備する機能を説明するものでないことは明らかであるから、この記載から上記技術的事項を導き出し得るものではない。 したがって、当業者の技術常識を加味しても当初明細書等の記載から、上記技術的事項を導き出すことはできない。 よって、本件補正は当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな事項を導入するものである。 2.この出願は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)本願の発明の詳細な説明の段落【0089】の【表145】?【表157】にIVCmdMenuの各メソッドの説明がなされているが、いずれも各メソッドの単なる機能とアプリケーション側からの呼出しの仕方の説明に終始しており、APIが呼び出された際にOSがコンピュータに如何なるフローで如何なる情報を如何に処理させるのかを具体的に開示する記載が見当たらない。換言すれば、本願の発明の詳細な説明は希望的事項の説明に終始しており具体的な発明の構成についての開示が無い。 このため、本願請求項1?3に係る発明の実施に際しては、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤等を要するものである。 したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願請求項1?3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。(特許法第36条第6項第4号第1号(実施可能要件)違反) (2)本願請求項1に「1からnまで順番に番号を振られたコマンドを含む少なくとも一つの音声コマンド・メニューにコマンドを追加する機能であって、追加されたコマンドにn+1から順に番号を振る機能と」「指定されたコマンドを前記少なくとも一つの音声コマンド・メニューから除去する機能であって、除去すべき最初のコマンドの番号と除去すべきコマンド数に基づいて除去を行う機能」「を具備する」旨の発明特定事項があるが、該機能をAPIに具備せしめることの技術上の意義(これによって如何なる課題が解決され、如何なる作用効果が奏されるのか等)の説明が皆無でありその技術上の意義を理解することが不可能である。 したがって、この出願の発明の詳細な説明は、本願請求項1?3に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものである。(特許法第36条第4項第1号(委任省令要件)違反) (3)本願請求項1に「前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニュを停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューの再起動まで前記音声コマンド・メニューを再コンパイルさせない機能」「を具備する」旨の発明特定事項があるが、これは発明の詳細な説明に記載されていない。(上記理由1.参照。) したがって、本願の請求項1?3に係る発明は、本願の発明の詳細な説明に記載したものでない。 また、このため、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願請求項1?3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないものであるとともに、本願請求項1?3に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものである。(特許法第36条第4項第1号(委任省令要件)違反) なお、上記発明特定事項は、段落【0089】の【表148】の「註 最善の結果のために、Addを呼び出す前に前記音声メニュを停止させるべきである。そうでなければ、Addが戻る前に前記メニュは停止され、再コンパイルされ、及び再起動されなければならない。Addが呼び出される時に、すでに前記メニュが停止されている場合、前記メニュは前記アプリケーションがそれを再度起動させるまで再コンパイルされない。」との記載、及び、同段落の【表155】の「註 良い結果を得るために、Removeを呼び出す前に、前記音声メニュを停止させるべきである。あるいは、Removeが戻る前に、前記メニュは、停止され、再コンパイルされ、及び再起動されなければならない。Removeが呼び出される時に前記メニュがすでに停止している場合、前記メニュは、前記アプリケーションがそれを再度起動させるまで、再コンパイルされない。」との注意書きを表現しようと意図したものと斟酌することもできるが、特許請求の範囲の上記発明特定事項は当該注意書きと相違し、該意図を正確に表現するものにはなっていない。 したがって、この点からも本願請求項1?3に係る発明は明確でない(特許法第36条第6項第2号違反)と言える。 (なお、当該注意書きから具体的な構成を特定し得るものではないので、仮に特許請求の範囲の記載が当該注意書き通りの事項を正確に表現する記載に改められたとしても、本願請求項1?3に係る発明が明確となるものではない。(特許法第36条第6項第2号違反) また、本願の発明の詳細な説明の記載は、「音声コマンド・メニュー」が「起動」された際にAddやRemove等のメソッドの呼び出しによって編集されたメニューが、如何なるフローで如何に処理され「音声コマンド・メニュー」を実現しているのか、「コンパイル」とは如何なるフローで如何なる情報を如何に処理すればよいのかが皆目不明なものであるから、本願の発明の詳細な説明の記載は、当該注意書きが意味する構成を、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載しているものではない。 さらに、当該注意書きにおける「最善の結果」「良い結果」とは何を意味するのか(如何なる状態を意味するのか? 如何なる不適切な現象が生じないことを意味するのか? 等)が皆目不明であり、また本願の発明の詳細な説明の他の箇所にも、当該注意書きの技術上の意義(これによって如何なる課題が解決され、如何なる作用効果が奏されるのか等)を説明する記載が見当たらず(なお、【表156】に「活動状態のメニュ上でSetを呼び出すと、大変遅くなり得る。」とあるが、そのメカニズムの説明は無く、AddやRemoveを呼び出した際にも大変遅くなると解することはできない。)、しかも、上述のとおりAddやRemove等のメソッドの呼び出しによって編集されたメニューが、如何なるフローで如何に処理され「音声コマンド・メニュー」を実現しているのか、「コンパイル」とは如何なるフローで如何なる情報を如何に処理すればよいのかが皆目不明であるため、該技術上の意義を明細書に開示される実施形態の構成から推定することも不可能である。 したがって、仮に特許請求の範囲の記載が当該注意書き通りの事項を正確に表現する記載に改められたとしても、本願の発明の詳細な説明の記載が、当業者が本願請求項1?3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないもの(特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)違反)であるとともに、本願請求項1?3に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないもの(特許法第36条第4項第1号(委任省令要件)違反)であることに変わりはない。)」 (4)本願発明における「コンピュータ上の実行のために、コンピュータ読み取り可能媒体において具現化される一組のアプリケーション・プログラム・インターフェース」(以下「API」と記す。)の意味・カテゴリー(APIの「機能」を意味するのか? APIの「仕様」を意味するのか? APIを提供する「物」を意味するのか? APIを提供する「方法」を意味するのか? APIを実現する「プログラム」を意味するのか?(なお、本願の出願日が本願の原出願(特願2009-034311号)の原出願(特願2000-538298号)の国際出願日(1999年3月22日)に遡及する場合には、「プログラム」は必ずしも物の発明とは解されないものとなる。))が明確でない。 したがって、本願請求項1?3に係る発明は明確でない(特許法第36条第6項第2号違反)。 (5)本願請求項1に「音声コマンド・メニュー」とあるが、特許請求の範囲の記載からはその意味が明確でない(本願請求項1の記載によれば、「音声コマンド・メニュー」は「管理」の対象となり、コマンドが「追加」や「除去」される対象でもあり、「停止」や「再起動」がなされるものでもあることから、機能なのか? 情報の内容なのか? 機能を実現するプログラムなのか?を特定できない。)。 また、これが如何なる作用をなす「メニュー」を意味するのか(音声を認識して認識された内容に対応した処理を行うものなのか? 音声でメニュー項目を提示し、ユーザが数字等で選択入力し、選択入力された数字等に対応した処理を行うものなのか?)が特許請求の範囲の記載からは不明である。 したがって、本願請求項1?3に係る発明は明確でない(特許法第36条第6項第2号違反)。 (6)本願請求項1に記載の「コンパイル」との用語の意味(音声認識用の文法や辞書等のコンパイルのことなのか? 音声メニューで利用されるメニュー項目のコンパイル(編集・編纂)のことなのか? 音声メニューの機能を実行するプログラムのコンパイル(高級言語から機械語への変換)のことなのか? 音声メニューで選択された処理を実行するプログラムのコンパイルのことなのか?)が特許請求の範囲の記載からは不明である。 また、発明の詳細な説明にもこの点を明確に説明する記載がなく、上記(3)でも述べたとおり、当該「コンパイル」を如何なるフローで如何なる情報を如何に処理すればよいのかの開示も見当たらないため、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、その意味を推測することすらできない。 したがって、本願請求項1?3に係る発明は明確でない(特許法第36条第6項第2号違反)。 (7)本願請求項2に記載の「可能化パラメータをアプリケーションから受け取る機能であって、前記可能化パラメータは、前記可能化パラメータが第1の値を有する時に、音声認識コンポーネントが、音声認識を可能にし、及び前記可能化パラメータが第2の値を有する時に、音声認識を不能にするようにさせるよう動作する、機能」及び「前記アプリケーションに第2のパラメータを戻す機能であって、前記第2のパラメータは、前記第2のパラメータが前記第1の値を有する時に音声認識が可能にされ、及び前記第2のパラメータが前記第2の値を有する時に音声認識が不能にされることを示すように動作する、機能」と、本願請求項1記載の事項との関連(本願請求項1の「音声コマンド・メニュー」の「起動」や「停止」と如何なる関係にあるのか?無関係のものと解してよいのか?)が不明である。また、このため、本願請求項2に記載の事項の技術的意味(本願請求項に係る発明において果たす働きや役割)が明確でない。 したがって、本願請求項2?3に係る発明は明確でない(特許法第36条第6項第2号違反)。 (8)本願請求項2に記載の事項が如何なる技術上の意義を有するのか(これによって如何なる課題が解決され、如何なる作用効果が奏されるのか等)を説明する記載が本願の発明の詳細な説明に見当たらない。このため、本願の発明の詳細な説明の記載は本願請求項2?3に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものである。(特許法第36条第4項第1号(委任省令要件)違反) (9)本願請求項3に「メニュー識別子構造」、「言語識別子構造」とあるが、その意味(「構造」とは、「構造」を記述した情報を意味するのか? 「構造体」の意味なのか? 「メニュー識別子」とはメニューに関する何を識別する如何なる形式のデータなのか? 「言語識別子」とは言語に関する何を識別する如何なる形式のデータなのか?)が明確でない。 したがって、本願請求項3に係る発明は明確でない(特許法第36条第6項第2号違反)。 (10)本願請求項3に記載の事項が如何なる技術上の意義を有するのか(これによって如何なる課題が解決され、如何なる作用効果が奏されるのか等)を説明する記載が本願の発明の詳細な説明に見当たらない。このため、本願の発明の詳細な説明の記載は本願請求項3に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものである。(特許法第36条第4項第1号(委任省令要件)違反) (11)特許請求の範囲において「音声コマンド・メニュー」及び「音声コマンド・メニュ」とあり、用語が統一されていない。 したがって、本願請求項1?3に係る発明は明確でない(特許法第36条第6項第2号違反)。 3.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請 求 項 1?3 ・引用文献等 1?8 ・備 考 [請求項1について] 本願請求項1に係る発明と引用文献1記載のものとを比較すると、前者は 相違点1:「アプリケーション・プログラム・インターフェース」である点、 相違点2:コマンドに「1からnまで順番に」及び「n+1から順に」「番号」が振られる点、 相違点3:「前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニュを停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューの再起動まで前記音声コマンド・メニューを再コンパイルさせない機能」を具備する点 で、引用文献1記載のものと相違し、その余の点では両者は格別相違しない。 しかしながら、 (相違点1について)プラットフォームやOSに音声認識機能を備えることは、本願出願時には既に周知慣用のものであったのである(必要があれば、引用文献2(特に「音声認識エンジン」に関する記載。)、引用文献3(特に「ウインドウズCE2.0」に音声認識機能が搭載されている旨の記載。)等を参照されたし。)から、引用文献1記載の如き音声処理をAPIとすることは、当業者であれば普通に着想し得たものに他ならない。 (相違点2について)また、メニュー項目に番号を振ることも適宜に採用されている周知慣用の構成であり(必要があれば、引用文献2(特に図3.)、引用文献4(特に「項目番号」を付す点。)等を参照されたし。)、また、複数のデータを開始位置と個数を指定することで行うことも周知慣用技術である(必要があれば引用文献5(特に第4頁右上欄第7行-第18行)、引用文献6(特に段落【0029】及び【図6】(b))等を参照されたし。)から、上記相違点2に係る構成も当業者であれば適宜に採用し得たものであり、これによって何ら格別な作用効果が奏されるものでもない。 (相違点3について)そして、本願請求項1における「コンパイル」は上記理由2.(6)のとおり意味が明確なものではないものの、これは追加や削除されたデータを何らかの形で利用する処理の一つであると推測されるところ、データの編集や生成とそのデータの利用は、別々に行うのが普通である(必要があれば、引用文献7(特に「通常利用モード」と「学習モード」がある点。)、引用文献8(特に音声機能の選択等の後にコンパイルする点。)等を参照されたし。また、引用文献1においても、音声コマンドを処理する過程と音声コマンド辞書を編集する過程は全く別のフロー(【図2】と【図3】)となっている。)から、上記相違点3は当業者が通常採用する事項にすぎないものと解することができる。 したがって、本願請求項1に係る発明は引用文献1?8記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものである。 [請求項2について]上記理由2.(7)(8)で述べたように、本願請求項2において限定される事項の技術的意味・技術上の意義は明確なものではないものの、本願請求項2において限定される事項は、上記相違点3に係る事項の採用に伴って必要となる「停止」や「起動」等を行うために必然的に採用される機能を記載したものに過ぎないと解することができるものである。 [請求項3について]上記理由2.(9)(10)で述べたように、本願請求項3において限定される事項の技術的意味・技術上の意義は明確なものではないものの、本願請求項3において限定される事項は、周知慣用であるところの引数を構造体とするインタフェースを限定したに過ぎないものと解することができるものである。 <出願日の遡及・優先権主張について> 本願については、原出願(特願2009-034311号)の出願当初の特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内でないものを含むので、出願日の遡及を認めることはできない。(上記1.で新規事項である旨を指摘した技術的事項は、本願の原出願の出願当初の特許請求の範囲、明細書又は図面にも記載されていない。) また、このため、パリ条約に基づく優先権の主張を認めることもできない。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開平7-219587号公報 2.近藤玲史,「パソコン向け音声認識合成プラットフォームの構築とアプリケーションの試作」,情報処理学会 第53回(平成8年後期)全国大会講演論文集(2) 平成8年9月4日?6日」,日本,社団法人情報処理学会,平成8年9月6日,p.2-363?2-364 3.中川雅博編,「月刊コンピュータ・ダイジェスト」,第24巻,第3号,日本,株式会社ティ・エー・シー企画,平成10年3月10日,P.15 4.特開平8-221262号公報 5.特開昭61-231665号公報 6.特開平5-266128号公報 7.特開平9- 44182号公報 8.特開平6-161704号公報』 (3)平成27年4月30日付け手続補正 上記平成27年4月30日付けの手続補正書は特許請求の範囲を以下のとおりに補正しようとするものである。 「 【請求項1】 少なくとも一つの音声コマンド・メニューを管理するアプリケーション・プログラムを実行させるためのアプリケーション・プログラム・インターフェースであって: 1からnまで順番に番号を振られたコマンドを含む少なくとも一つの音声コマンド・メニューにコマンドを追加する機能であって、追加されたコマンドにn+1から順に番号を振る機能と、; 指定されたコマンドを前記少なくとも一つの音声コマンド・メニューから除去する機能であって、除去すべき最初のコマンドの番号と除去すべきコマンド数に基づいて除去を行う機能と; 前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去を停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去の再起動まで前記音声コマンド・メニューを再編成させない機能と;を具備する ことを特徴とするアプリケーション・プログラム・インターフェース。 【請求項2】 請求項1に記載のアプリケーション・プログラム・インターフェースであって、 アプリケーション名及び状態名を具備するメニュー識別子、言語識別子、及びモード・フラグをアプリケーション・プログラムから受け取り、音声認識システムが、前記メニュー識別子によって識別される音声コマンド・メニューを生成するようにさせる機能と; 前記メニュー識別子をアプリケーションから受け取り、及び前記音声認識システムが、前記メニュー識別子によって識別される前記音声コマンド・メニューを削除するようにさせる機能と;を更に具備する、 ことを特徴とするアプリケーション・プログラム・インターフェース。」 (4)意見書 上記平成27年4月30日付けの意見書における意見の内容は概略以下のとおりのものである。 『【意見の内容】 1.平成27年1月30日付け(発送日2月2日)拒絶理由通知(最後)において、以下の理由1?3を指摘された。 理由1:平成25年10月16日付け手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 理由2:本願は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。 理由3:本願の請求項1?3に係る発明は、特許法第29条第2項に該当する。 そして、理由3において引用された刊行物(引用文献1?8)は、以下のとおりのものである。 ・・・中略・・・ 2.そこで、本出願人は、特許請求の範囲の記載を補正する手続補正書を作成し、本意見書とともに提出した。本出願人は、この手続補正により上記拒絶理由は全て解消されているものと思料する。 3.補正の内容、根拠、補正の目的の適合性 本補正は、理由2の指摘に鑑みて請求項1及び3の記載内容を明確化するとともに補正前の請求項2を削除し、請求項の番号を繰り上げて補正後の請求項1、2としたものであり、(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてした)明りょうでない記載の釈明、請求項の削除を目的とするものであって、補正内容からも明らかなように当初明細書等の記載の範囲内でなされたものである。 補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。特許請求の範囲に記載された発明を総称して「本願発明」ということもある)を、構成要件に分説すると以下のとおりである(A,B等の符号は分説の便宜上付したもの、下線は補正個所を示すために付したものである)。 (本願発明1) A.少なくとも一つの音声コマンド・メニューを管理するアプリケーション・プログラムを実行させるためのアプリケーション・プログラム・インターフェースであって: B.1からnまで順番に番号を振られたコマンドを含む少なくとも一つの音声コマンド・メニューにコマンドを追加する機能であって、追加されたコマンドにn+1から順に番号を振る機能と、; C.指定されたコマンドを前記少なくとも一つの音声コマンド・メニューから除去する機能であって、除去すべき最初のコマンドの番号と除去すべきコマンド数に基づいて除去を行う機能と; D.前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去を停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去の再起動まで前記音声コマンド・メニューを再編成させない機能と; E.を具備することを特徴とするアプリケーション・プログラム・インターフェース。 4.理由1(補正における新規事項導入)について 4-1.理由1の概要 審判官殿は、概略、以下のような指摘をされている。 ・・・中略・・・ 4-2.理由1への対応 審判官殿は、当初明細書の段落〔0089〕の〔表148〕及び〔表155〕の記載は、APIを利用する際の注意を開示するものであり、APIが具備する機能を説明するものでない点を根拠として、平成25年10月16日付け手続補正は、当初明細書の記載の範囲内でなされたものではない旨指摘されている。 しかしながら、上記審判官殿のご指摘は以下の理由により妥当でないものと思量する。 即ち、上記記載は、「Add」や「Remove」の呼び出す際の、APIが満たすべき動作条件を規定するものであり、当該APIは、このような動作条件に従って動作するのであるから、この動作条件はAPIが具備する機能を規定しているものである。 したがって、上記記載が「APIを利用する際の注意を開示」するとのご指摘は、上記の記載内容を正解しないものであって妥当なものではない。 なお、請求項1に係る記載は、本意見書と同時になされた補正により補正されており(「本願発明1」参照)、当初明細書の記載の範囲内のものとなっている。 以上のとおりであるから、理由1は解消されているものと思料する。 5.理由2(実施可能要件違反、サポート要件違反、明確性要件違反)について 審判官殿は、概略以下のような指摘をされている。 ・・・中略・・・ 5-2.理由2への対応 上記ご指摘を頂いた各項目について以下検討する。 (ア)(1)のご指摘について 段落〔0089〕の〔表145〕?〔表157〕に記載された事項は、基本的に、ソースファイルの形で表現されたオブジェクト指向プログラム(Java)をベースとするものである。そして、このようなオブジェクト指向プログラムは、ソースレベルで理解が可能なものであって、OSがコンピュータに如何なるフローで如何なる情報を如何に処理させるのかを具体的に開示しなければその動作が理解できないというものではない。 したがって、「本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願請求項1?3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない」との審判官殿ご指摘は妥当なものではない。 (イ)(2)のご指摘について 明細書には、審判官殿のご指摘のように、技術的意義の明示がなされてはいないが、それは、技術的意義が当業者にとって構成から明らかであるからであり、技術的意義に関する明示を欠くことを以って実施可能要件違反を指摘することは妥当ではない。 (ウ)(3)及び(6)のご指摘について 前記「4-2.」において指摘したように、請求項1に係る記載は、本意見書と同時になされた補正により補正されており(「本願発明1」参照)、本願発明1は、当初明細書の記載の範囲内のものである。また、上記(ア)においても指摘したように、本願は実施可能要件違反に該当するものでもない。 段落〔0089〕の〔表148〕の「最善の結果」、〔表155〕の「良い結果」との記載に関しては、これらの表現が「望ましい形態としては」を意味することは文脈からみても明らかであり、特段意味が不明ということはない。 また、〔表156〕の「活動状態のメニュ上でSetを呼び出すと、大変遅くなり得る。」に関しても、Setを呼び出すとそれに付随した動作が必要となりそのための期間を要することを指摘するものであって、同様に、特段意味が不明ということはない。 なお、「コンパイル」に関しては、多義的とのご指摘も踏まえ、「編成」と修正した。 これにより、不明な点は解消されているものと思量する。 (エ)(4)のご指摘について 前記「4-2.」において指摘したように、請求項1に係る記載は、本意見書と同時になされた補正により補正されており(「本願発明1」参照)、これにより、「API」が特定の機能を有するシステムであることが明確化されたものと思量する。 (オ)(5)のご指摘について 前記「4-2.」において指摘したように、請求項1に係る記載は、本意見書と同時になされた補正により補正されており(「本願発明1」参照)、これにより、「音声コマンド・メニュー」の意味するところも明確になっているものと思量する。 (カ)(7)及び(8)のご指摘について 補正により、請求項2は削除された。これにより、上記(7)及び(8)のご指摘は解消されているものと思量する。 (キ)(9)のご指摘について 補正により、「構造」との記載を削除した。これにより、「構造」に係る不明点は解消されているものと思量する。 また、「識別子」とは、ある項目を一意に識別するために項目に付された符号を意味しており、「メニュー識別子」、「言語識別子」ともにその意味するところは明確であると思量する。 (ク)(10)のご指摘について 明細書には、審判官殿のご指摘のように、技術的意義の明示がなされていないが、それは、技術的意義が当業者にとって構成から明らかであるからであり、技術的意義に関する明示を欠くことを以って実施可能要件違反を指摘することは妥当ではない。 (ケ)(11)のご指摘について ご指摘を踏まえ、「音声コマンド・メニュー」に統一した。 6.理由3(進歩性欠如)について 6-1.理由2の概要 審判官殿は、補正前の請求項1に係る発明につき、引用文献1?8を引用し、概略以下のような指摘をされている。 ・・・中略・・・ 6-2.本願発明の特徴 本願発明1は、少なくとも、構成要件A?Dに特徴を有するものである。 6-3.各引用文献に記載された事項 引用文献1には、図3に、音声コマンド辞書105を編集する時の処理の過程を表したフローチャートが示されており、段落〔0029〕、〔0030〕には以下のような記載がある。 ・・・中略・・・ 6-4.本願発明1と引用文献1に記載された発明との対比・判断 引用文献1には、上記本願発明1の特徴は記載も示唆もされていない。 即ち、引用文献1には、音声コマンド辞書への単語の追加や、音声コマンド辞書からの単語の削除に係る記載はあるものの、引用文献1記載の「音声コマンド辞書」、「単語」が本願発明1の「音声コマンドメニュー」、「コマンド」に対応するものと認めることができないばかりでなく、引用文献1には、本願発明1の構成要件A?Dに相当する構成は一切開示されていない点で両者は相違するものである。 そして、上記相違点は、以下詳述するように、引用文献2?8に基づき容易想到なものではない。 以下、主として、審判官殿が指摘されている相違点の判断について検討し、それらの判断が妥当なものではないことを説明する。 なお、審判官殿は、両者の相違点として相違点1?3を認定しているが、この相違点の認定と後続する相違点の判断とは必ずしも対応していない点に留意されたい。 ・(相違点1について)における審判官殿の判断について プラットフォームやOSに音声認識機能を備えることが周知であるとしても、引用文献1には、特定の構成を具備する専用の音声処理装置が記載されており、このような専用の音声処理装置にあってはそれ自体で特有の機能体系を具備しているのであるから、このような専用の音声処理装置に審判官殿が指摘されるような周知技術を適用する動機付けはそもそも存在しない。したがって、審判官殿のご指摘は妥当なものではない。 ・(相違点2について)における審判官殿の判断について メニューに番号を振ることや番号と削除個数を指定して削除を行うこと自体は周知であるとしても、引用文献1の音声処理装置は単語の登録や削除のためにそれ自体で特有の機能を具備しているのであるから、引用文献1の音声処理装置にこのような周知技術を適用する動機付けはそもそも存在しない。したがって、審判官殿のご指摘は妥当なものではない。 ・(相違点3について)における審判官殿の判断について 引用文献7や引用文献8には、本願発明1の構成要件D(『前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去を停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去の再起動まで前記音声コマンド・メニューを再編成させない機能』)に相応する構成は一切記載も示唆もされていない。したがって、審判官殿のご指摘は妥当なものではない。 以上のとおり、引用文献1には、本願発明1の上記特徴が記載されておらず、また、上記特徴は引用文献2?8に基づいて容易に想到し得たものではないから、本願発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?8に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものではなく、特許法第29条第2項に該当しないものである。 6-5.補正後の請求項2に係る発明について 補正後の請求項2に係る発明は、請求項1を引用するものであり、本願発明1の構成要件をすべて含み、更に他の構成要件を付加したものに相当するものであるから、本願発明1が、上記のとおり特許法第29条第2項に該当しないものである以上、補正後の請求項2に係る発明も、特許法第29条第2項に該当しないものである。 7.その他 審判官殿は、出願日の遡及及び優先権主張に関し、概略以下のような指摘をされている。 ・・・中略・・・ しかしながら、本願明細書は、原出願の明細書と同内容のものであり、前記「4-2.」において指摘したように、補正後の特許請求の範囲の記載は、本願明細書の記載により裏付けられているのであるから、原出願の当初明細書に記載された事項の範囲内にあることは明らかである。 したがって、審判官殿の上記ご指摘は妥当なものではない。』 3.先行技術 (1)引用文献記載事項 本願の出願前である上記優先日よりも前に頒布され、上記当審拒絶理由通知において引用された、下記引用文献には、それぞれ、下記引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。) <引用文献1> 特開平7-219587号公報(平成7年8月18日出願公開) <引用文献記載事項1-1> 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 音声を入力する入力手段と、 前記入力された音声を認識する認識手段と、 単語の代替語を単語グループとして記憶する辞書と、 前記認識結果に基づいて前記辞書から単語グループを検索する検索手段と、 前記検索された単語グループの単語を表示する表示手段と、 前記表示された単語から所望の単語を選択する選択手段とを有することを特徴とする音声処理装置。 【請求項2】 前記辞書に記憶する単語グループを編集する編集手段を有することを特徴とする請求項1に記載の音声処理装置。 【請求項3】 前語編集手段は、前記選択手段の選択に応じて編集を行うことを特徴とする請求項2に記載の音声処置装置。 【請求項4】 前記編集は、追加或は削除を含むことを特徴とする請求項2に記載の音声処理装置。」 <引用文献記載事項1-2> 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、音声によりコマンドを入力して計算機を操作する装置及び方法に関するものである。」 <引用文献記載事項1-3> 「【0018】図1は、本発明の一実施例に係る装置の構成を示すブロック図である。 【0019】101は、ユーザから発声される音声を取り込むマイクロホンなどの音声入力装置である。106は、音声入力装置101から得られた音声を認識して、ユーザが話した単語を認識して単語に対応するコマンドを所望のアプリケーションに送る音声コマンド部である。音声コマンド部106は、音声認識部110、音声コマンド検索部111、音声コマンド表示部112、コマンド選択部113、コマンド送信部114からなる。110は、音声入力部101から得られた音声を認識する音声認識部である。111は、音声認識部110から得られた単語から、音声コマンド辞書105を検索してコマンドを検索する音声コマンド検索部である。112は、音声コマンド検索部111から得られた1つの入力部に対する複数候補の音声コマンドを一覧表示する音声コマンド表示部である。113は、音声コマンド表示部112で表示したコマンド候補を、入力装置102から入力されるユーザの指示を得て、音声コマンドを選択するコマンド選択部である。114は、コマンド選択部113から得られたコマンドを、アプリケーション103に送信するコマンド送信部である。103は、音声コマンド部106から送信されるコマンドに従った処理を行うアプリケーションである。105は、音声コマンド部106、音声コマンド辞書編集部107、単語グループ編集部108、音声コマンド辞書表示部109から参照、編集を受ける音声コマンド辞書であり、単語、読み、コマンド、単語グループを対応付けて記憶している。102は、ユーザの指示を入力する入力装置で、キーボード、マウスからなる。107は入力装置102から入力されるユーザの指示をもとに音声コマンド辞書を編集する音声コマンド辞書編集部である。108は、音声コマンド辞書の各単語に付随する単語グループを編集する単語グループ編集部である。109は、入力装置102から入力される表示の指示及び音声コマンド辞書編集部107の編集処理の指示に応じて、音声コマンド辞書105の内容を表示する音声コマンド辞書表示部である。104は、音声コマンド表示部112、音声コマンド辞書表示部109によって音声コマンドの辞書内容あるいは、検索された音声コマンドを表示する表示装置である。」 <引用文献記載事項1-4> 「【0021】図2は、図1のように構成された音声コマンド装置が、ユーザからの音声コマンドを処理する過程を表したフローチャートである。まず、音声受け取り処理ステップS1で音声入力装置101から入力されるユーザからの音声を受け取り、音声認識処理ステップS2に渡す。音声認識処理ステップS2は、ステップS1から得た音声を音声認識部110において音声認識を行い単語を認識した結果を音声コマンド検索処理ステップS3に渡す。音声コマンド検索処理ステップS3は、音声検索部111においてステップS2から渡された単語を、音声コマンド辞書105の単語部分を検索して、ステップS4へ進む。ステップS4は、ステップS3で検索した結果、単語が音声コマンド辞書105に存在した場合にはステップS6へ進み、存在しなかったら認識失敗表示処理ステップS5へ進む。認識失敗表示処理ステップS5は、認識した単語が音声コマンド辞書105にないことを告げるメッセージを表示したり、音声で出力するなどしてユーザに示し、ステップS1に戻る。 【0022】ステップS6は、ステップS4から、音声コマンド辞書105からS3で検索された単語の情報を受け取り、その単語に単語グループが存在するかどうかを判断する。単語グループに単語が登録されている場合には、音声コマンド表示処理ステップS7へ進み、単語グループがない場合には、ステップS9へ進む。 【0023】ステップS9は、単語グループがないときであるので、音声認識した単語を選択して、それに対応するコマンドをコマンド送信処理S12へ送る。 【0024】音声コマンド表示処理S7は、単語グループが存在するときであるので、音声認識した単語と、単語グループに登録された単語の情報をステップS8に送る。判定処理ステップS8では、コマンド選択モードであるか否かを判定して、モードがONでない場合には、ステップS9へ進む。モードがONである場合には、音声認識した単語と、単語グループに登録された単語の一覧を表示装置104に表示する。その後、制御をコマンド選択処理ステップS10へ移す。コマンド選択処理ステップS10は、表示装置104に表示された単語の候補の一覧の中の一つを、入力装置102からのユーザの指示によって選択する。そして、選択結果をステップS11に送る。判断部S11では、S10で選択された単語に対応するコマンドがあるか否かを判断して、ある場合にはコマンド送信処理S12へコマンドを送り、ない場合にはユーザがその音声コマンドを実行したくないものとして判断して、ステップS1へ戻る。 【0025】コマンド送信処理ステップS12は、ステップS11あるいはステップS9から受け取ったコマンドをアプリケーション103へ送信する。これにより音声コマンドが一つ実行される。その後、終了判断ステップS13により、終了か否かを判定し、終了でないならステップS1に戻り、終了なら処理を終了させる。」 <引用文献記載事項1-5> 「【0029】図3は、音声コマンド辞書105を編集する時の処理の過程を表したフローチャートである。まず、入力装置102から音声コマンド辞書105の編集を開始することをユーザから受け取ると、音声コマンド辞書読み取り処理S14が、対象となる音声コマンド辞書105をオープンする。そしてオープンした内容を音声コマンド辞書表示部109に送り、表示装置104に表示する。そののちユーザからの操作命令を待つ状態になり、入力装置102から入力される操作指示を判定する辞書編集操作判定処理ステップS15へ進む。辞書編集操作判定処理ステップS15では、辞書編集の操作の種類を判定して、「単語追加」ならステップS16、「単語削除」ならステップS18、「単語グループ再配置」ならステップS20、「辞書保存」ならステップS22。「辞書削除」ならステップS24へ制御を渡す。「単語追加」の操作の場合は、判定処理ステップS16で判定され、単語追加処理ステップS17へ進む。単語追加処理ステップS17は、追加すべく入力装置102から入力される単語と読みとコマンドをユーザから受け取り、音声コマンド辞書へ追加して、単語グループ再配置処理ステップS21へ進む。「単語削除」の操作の場合は、判定処理ステップS18で判定され、単語削除処理ステップS19へ進む。単語削除処理ステップS19は、音声コマンド辞書105の単語グループから指定された単語を削除して、単語グループ再配置処理ステップS21へ進む。「単語グループ再配置」の操作の場合は、判定処理ステップS20で判定され、ステップS21へ進む。「辞書保存」の操作の場合は、判定処理ステップS22で判定され、辞書保存処理ステップS23へ進む。「辞書削除」の操作の場合は、判定処理ステップS24で判定され、辞書削除処理ステップS25へ進む。判定処理ステップS26は、終了か否かを判定し、終了なら処理を終了させ、そうでない場合にはステップS15へもどる。」 <引用文献記載事項1-6> 「 【図2】 」 <引用文献記載事項1-7> 「 【図3】 」 <引用文献2> 近藤玲史,「パソコン向け音声認識合成プラットフォームの構築とアプリケーションの試作」,情報処理学会 第53回(平成8年後期)全国大会講演論文集(2) 平成8年9月4日?6日」,日本,社団法人情報処理学会,平成8年9月6日,p.2-363?2-364 <引用文献記載事項2-1> 「2. 音声認識合成プラットフォームとエンジン 2.1 プラットフォーム 音声認識合成の機能を提供するプラットフォームを用いることで、アプリケーションに同機能を付加することが容易に可能となる。このプラットフォームとして、音声認識・合成エンジンおよびAPIを提供する(図1)。 本プラットフォームにおけるAPIは、OSの定義する標準的な呼び出し方法に従っており、プログラミング上の特別な習熟の負担が少ない。」(2-363頁左欄第14行?右欄第1行) <引用文献記載事項2-2> 「 」(2-363頁左欄) <引用文献記載事項2-3> 「2.2 音声認識合成エンジン 本エンジンの基本仕様を表1に示す。 音声合成エンジンは、発声速度に依存しない韻律的特徴を用いることで自然なイントネーションやリズムを実現している。また、音声生成においては、波形編集方式を用いて少ない演算量で高い明瞭性を得ている[1]。 音声認識エンジンは、独自の半音節モデルを用いた混合ガウス分布HMMにより、不特定話者の連続単語認識が可能となっている。また話者適応を行い、高い認識率を得ている[2]。 さらに、本エンジンでは以下のような機能を強化している。 ・OSの標準的な呼び出し手段に従ったAPI ・マルチタスク・マルチスレッド対応 本エンジンは、複数のアプリケーションから同時にロードされてマルチタスクで動作することができる。例えば、あるアプリケーションがパソコンに繋いだスピーカとマイクロフォンを使って音声対話を行っているのと同時に、システムのエージェントが電話回線に応答メッセージを送出するなどの使い方が可能である。 また、例えばあるアプリケーションにおいて、通常は男声の音声合成音を出力していて女声のヘルプメッセージが任意の時点に割り込む場合、従来のエンジンではヘルプの割り込み開始時点での話者情報を保存し、話者を変更してヘルプを女声で発声し、その後また話者を元に戻さねばならず、繁雑であった(図2)。本エンジンにおいては、アプリケーションの初期化時に男声および女声の音声合成エンジンのインスタンスを、男声オブジェクト・女声オブジェクトとして生成する。その後、男声で発声したい場面では男声オブジェクトに、女声で発声したい場面では女声オブジェクトにテキストを送ることで、直前の発声に影響されずに指定した声質(話者、ピッチなど)で発声を行うことができる。」(2-363頁右欄第2行?2-364頁左欄第14行) <引用文献記載事項2-4> 「 」(2-364頁右欄) <引用文献3> 中川雅博編,「月刊コンピュータ・ダイジェスト」,第24巻,第3号,日本,株式会社ティ・エー・シー企画,平成10年3月10日,P.15 <引用文献記載事項3-1> 「【シリコンバレー8日=町田敏生】米マイクロソフトは自動車向け車載用コンピューター市場に参入する。今春出荷予定の携帯端末用OS(基本ソフト)の最新版「ウィンドウズCE2.0」を車載用にも適用、クラリオンなど日米のメーカーにライセンス供給を始める。また従来版に音声認識や手書き入力の機能を追加し、小型携帯端末OSとしても供給する。新OSでウィンドウズOSの領域を一段と広げる。」 <引用文献4> 特開平8-221262号公報(平成8年8月30日出願公開) <引用文献記載事項4-1> 「【0031】一方、プログラム項目のアイテム・ステートメントは、項目番号「NN」と、プログラム項目を示す項目識別子「P」と、メニュー表示名「JJJJJJJJ」と、プログラムパス「XXX…XXX」とから構成されている。 【0032】前記メニュープログラム22の名称表示手段31は、前記CPU1の制御により、前記定義ファイル23の該当するヘッダー・ステートメント( 電源起動時にはグループ識別子「0000」のヘッダー・ステートメントに設定されている )の最終項目番号までのアイテム・ステートメントのメニュー表示名を、表示器12の画面の上から下へ項目番号順に表示する。」 <引用文献5> 特開昭61-231665号公報(昭和61年10月15日出願公開) <引用文献記載事項5-1> 「削除は、氏名の登録時に自動的に付された番号と削除個数を指定することにより、1次、2次情報の対応する部分を削除する。訂正を行うときには、変更する文字列をJISコードで入力し、システムに具備されている文字パターンメモリにより文字フォント・パターン(例えば24×24ドツト)を検索して圧縮画像データに追加した後、2次構造情報及び1次構造情報を変更する。挿入についても同様にして可能である。登録時に自動的に付された氏名番号は、削除・挿入にともない順序性を保つよう自動的に調整される。」(第4頁右上欄第8行-第18行) <引用文献6> 特開平5-266128号公報(平成5年10月15日出願公開) <引用文献記載事項6-1> 「【0029】次に設計者が、入力端子入力表421の行番号No.2から三行分(行番号No.2乃至No.4)に入力されている各入力端子名称INPINおよび指定範囲RANGEを削除する場合に、設計者はカーソルを削除対象先頭行=行番号No.2上に移動させた上で(図6(b) ステップS31)、削除符号「D」と削除行数「n」=(3)とを入力した後、改行キー「RT」を操作すると(図6(b) ステップS32)、処理装置2は削除部34を実行することにより、削除符号「D」および行数「n」により指定された行番号No.2乃至No.4に入力されている各入力端子名称INPINおよび指定範囲RANGEを一斉に削除した後(図6(b) ステップS33)、空白行となった行番号No.2乃至No.4を埋める為に、行番号No.5に入力済の各入力端子名称INPINおよび指定範囲RANGEを、行番号No.2に移動させる。」 <引用文献7> 特開平9- 44182号公報(平成9年2月14日出願公開) <引用文献記載事項7-1> 「【0086】本システムには、通常の利用状態である“通常利用モード”と、模範音声を提示する動作状態である“模範提示モード”、辞書学習等に使用する“学習モード”とがあり、利用者はいずれかを選択することができる。何も選択しない時は通常の利用状態である“通常利用モード”で運用され、ディスプレイDISPは図4の(a)の如き画面を表示して画面からの入力操作と、音声入力操作が可能であり、音声入力操作に対しては、その音声入力に対する認識結果を出力するという機能になる。“通常利用モード”では模範音声の提示はできない。 【0087】“模範提示モード”は模範音声を音声で提示するモードである。利用者が“模範提示モード”を選択したときは図5に示す制御手段CNTはディスプレイDISPの表示画面を図4の(b)および(c)の如き状態にして、操作可能なボタンの色などを変更するといった制御をすることで、利用者にどのボタンが音声操作可能であるか、などを知らせるようにすると共に、そのボタンをポインティングすると、そのボタンに定義してある内容対応の音声入力コマンドを、模範音声で提示するように、模範音声記録部5から該当のものを抽出して模範音声提示部6に与え、模範音声として提示する。これにより何をして良いのかわからない利用者に対して、模範音声を知らせることができるようになる。 【0088】すなわち、本装置は、図5に示すように、音声入力可能な操作入力対応の内容を示す模範音声の情報を記録保持する模範音声記録部5と、指定された操作入力対応の模範音声を、この模範音声記録部5の保持する模範音声情報に基づいて出力する模範音声提示部6と、制御手段CNTと、ポインティングデバイスPDと、インタフェースIFと、ディスプレイDISPとがある。 【0089】そして、ポインティングデバイスPDでディスプレイDISP上の音声入力可能な対象オブジェクトをポインティングすることにより、制御手段CNTはこれを認識して模範音声記録部5から該当の模範音声の情報を読出し、模範音声提示部6に与える。 【0090】模範音声記録部5には、音声入力可能な操作入力対応の内容を示す模範音声の情報を記録保持させてあり、制御手段CNTを介して上述のような読出し制御をすることにより、模範音声出力手段である模範音声提示部6は利用者の指定する操作入力対応の内容を示す模範音声を、この模範音声記録部5の模範音声の情報に基づいて、音声として出力することができる。 【0091】従って、音声認識装置で利用可能な模範音声を何時でも聞くことができるので、操作したい内容対応の音声としてどのような音声を発生すれば良いのか分からない時や、音声入力しても旨く目的通りの認識がされずに、操作が立ち往生してしまった場合などに、模範音声を提示させることで、正しい発生の音声を知ることができ、利用者の入力操作の大幅な改善が図れるようになる。なお、模範音声のみの提示の他に、「?をさせるには、…と発声してください。」(但し、…は“模範音声”の提示を示す)といったように、操作案内とその操作のための音声コマンドの模範音声を案内提示する方法も考えられる。 【0092】ところで、模範音声記録部5に対する模範音声の収集記録保持は、認識辞書の学習処理において、模範音声選択処理部7により選択されたものについて行なうようにしている。 【0093】この認識辞書の学習処理等を行なう場面では、以下の手順Cに沿った処理が実施される。 <手順C> [ステップc1]: 利用者あるいは本音声認識装置によって指定された、ある語彙等の分類情報Aについての、利用者から少なくとも1回以上の発声が本音声認識装置に入力され、各々記録される(この入力音声を学習発声と呼ぶこととする)。 【0094】[ステップc2]: 各学習発声の入力音声信号は、入力処理部1を経て入力音声情報として分析処理部2へと送られ、分析処理が実施され、特徴量情報(音響的特徴の情報)が出力される。 【0095】[ステップc3]: 各学習発声の特徴量情報について、認識処理部4において、辞書情報記録部3の分類情報Aに対応するエントリとの認識照合処理が実施され、各学習発声について辞書の持つ音響的特徴のモデル情報との類似度が算出される。 【0096】[ステップc4]: 各学習発声のうち最も高い類似度を持つものの発声データと、分類情報Aの組を模範音声として模範音声記録部5に記録する。すなわち、本システムには制御手段CNTと、ポインティングデバイスPDと、インタフェースIFと、ディスプレイDISPとがあり、ポインティングデバイスPDで、あるいはタッチパネルでディスプレイDISP上の学習モードのボタンを示すオブジェクトをポインティングすることにより、制御手段CNTはこれを認識して“学習モード”となる。 【0097】“学習モード”は音声入力可能な操作入力に対応する音声の入力を、複数回ずつ行ない、その入力音声それぞれについて、分析処理部2での解析結果に基づき、音響的特徴のモデルを得て、これを語彙対応に辞書登録することができるというモードである。但し、音響的特徴のモデル情報が既にある辞書においては、その修正のために、発声を行なう場合があるが(認識辞書の適応処理)、その場合には実用上、複数回発声するのが普通ではあるが、一回だけ発声させるといったこともある。 【0098】模範音声記録部5には、複数回繰り返して入力される音声入力可能な操作入力対応の音声を、それぞれについて分析処理部2で解析して、その解析結果に基づき、得た特徴量情報等による音響モデルを記録保持させる。そして、模範音声記録部5に対するこのような辞書学習時、模範音声選択処理部7は、複数回入力させてそれぞれ解析させた操作入力対応の入力音声のうち、前記辞書情報記憶部3に保持させる音響的特徴のモデル情報との類似度の高いものを選択して前記模範音声記録部5に記録させるように動作する。 【0099】なお、学習操作が認識辞書の適応処理であった場合には実用上、複数回発声するのが普通ではあるが、一回だけ発声させるといったこともある。その場合は、その発声の音響的特徴が適応処理で得られた音響的特徴のモデル情報との比較により類似度が高い場合に模範音声記録部5に更新記録する。複数回の発声の場合は音響的特徴のモデル情報との類似度が高いものを選択する。 【0100】このようにして“学習モード”では音声入力可能な操作入力対応の内容を示す模範音声の情報を、学習時に得られた一つの操作入力毎に複数ある当該操作入力対応音声の各解析結果(特徴量情報)のうち、辞書に登録する特徴量情報と類似度の高いものを選択して、これを当該操作入力対応の模範音声として前記模範音声記録部5に記録記録保持させることができるようになり、模範音声を何時でも音声で提示できるようになる。」 <引用文献8> 特開平6-161704号公報(平成6年6月10日出願公開) <引用文献記載事項8-1> 「【請求項5】プルダウン・メニュー,スイッチ,ボタン,ダイアログボックス,エントリボックス等のグラフィックス・インタフェース(GUI)を用い、音声メニューとして、音声合成機能、音声認識機能、及び音声対話機能のうち少なくとも複数の音声機能を表示し、その音声機能の複数の操作内容を文字および図形にて視覚的に表示する文字図形画像表示手段と、 該文字図形画像表示手段の画面を複数の部分領域(ウィンドウ)に分割し、ウィンドウを独立して動作させるマルチウィンドウ表示処理手段と、 前記文字図形画像表示手段のウインドウ中に表示されたメニューの中から必要な音声機能を選択指示し、表示された複数の操作内容から必要な操作を選択指示するための画像位置入力手段と、 選択指示された音声機能及び操作に応じて、パラメータ値を設定し、その結果をコンパイルして音声処理を行うアプリケーション・プログラムを作成する情報処理手段と、 を備えたことを特徴とする音声インタフェース・ビルダ・システム。」 <引用文献記載事項8-2> 「【0060】 【作用】本発明の音声インタフェース・ビルダ・システムでは、ユーザがアプリケーションを開発しながら、必要に応じてそのアプリケーションシステムの任意の部分に音声を用いたインタフェース機能を簡単な編集操作で付与することが出来るようになる。すなわち、マウスなどのポインティングツールを用いて、メニューに示されている様々な音声インタフェース機能の中から任意の機能を選択しアプリケーションシステムの任意の部分に結び付けたり、パラメータ値を設定し、その結果をコンパイルすることにより、容易に音声インタフェース機能を付与することができる。」 <引用文献記載事項8-3> 「【0159】 【発明の効果】本発明の音声インタフェース・ビルダー・システムでは、ユーザがアプリケーションを開発しながら、必要に応じてそのアプリケーションシステムの任意の部分に音声を用いたインタフェース機能を簡単な編集操作で付与することが出来るようになった。すなわち、マウスなどのポインティングツールを用いて、メニューに示されている様々な音声インタフェース機能の中から任意の機能を選択しアプリケーションシステムの任意の部分に結び付けたり、パラメータ値を設定し、その結果をコンパイルすることにより、容易に音声インタフェース機能を付与することができた。 【0160】これにより、音声注釈や効果音の付与機能のみならず、音声認識や音声合成、音声対話機能を持つ音声インタフェースをユーザが自由に設計し、ダイナミックに処理を行う処理手順そのものとしてのアプリケーションの中に、その処理手順の一部として音声インタフェース機能を上に実現できる手段を提供することができた。」 (2)引用発明の認定 ア.引用文献1は上記引用文献記載事項1-2のとおり「音声によりコマンドを入力して計算機を操作する装置」に関する発明を説明するものであるところ、該「装置」の1つとして上記引用文献記載事項1-1の【請求項4】記載の「音声処理装置」が示されている。 したがって、引用文献1には 「音声によりコマンドを入力して計算機を操作する装置であって、 音声を入力する入力手段と、 前記入力された音声を認識する認識手段と、 単語の代替語を単語グループとして記憶する辞書と、 前記認識結果に基づいて前記辞書から単語グループを検索する検索手段と、 前記検索された単語グループの単語を表示する表示手段と、 前記表示された単語から所望の単語を選択する選択手段と、 前記辞書に記憶する単語グループを編集する編集手段と」 を有し、 「前記編集は、追加或は削除を含むもの」である 「音声処理装置」 が記載されていると言える。 イ.上記引用文献記載事項1-4等から、該「音声処理装置」が、 「前記認識手段によって認識された単語または前記選択手段によって選択された単語に対応するコマンドをアプリケーションに送るコマンド送信処理手段」 を有することを読み取ることができる。 ウ.上記引用文献記載事項1-5等から、 「前記編集手段の処理の過程は、前記入力手段から前記辞書の編集を開始することをユーザから受け取ったのちユーザからの操作命令を待つ状態になり、前記入力手段から入力される操作指示を判定して、単語追加なら追加すべく前記入力手段から入力される単語と読みとコマンドをユーザから受け取り、音声コマンド辞書へ追加し、単語削除なら前記辞書の単語グループから指定された単語を削除し、かつ、終了か否かを判定し、終了なら処理を終了させるものである」 と言える。 エ.よって、引用文献1には、下記引用発明が記載されていると認められる。 <引用発明> 「音声によりコマンドを入力して計算機を操作する装置であって、 音声を入力する入力手段と、 前記入力された音声を認識する認識手段と、 単語の代替語を単語グループとして記憶する辞書と、 前記認識結果に基づいて前記辞書から単語グループを検索する検索手段と、 前記検索された単語グループの単語を表示する表示手段と、 前記表示された単語から所望の単語を選択する選択手段と、 前記辞書に記憶する単語グループを編集する編集手段と、 前記認識手段によって認識された単語または前記選択手段によって選択された単語に対応するコマンドをアプリケーションに送るコマンド送信処理手段とを有し、 前記編集は、追加或は削除を含むものであり、 前記編集手段の処理の過程は、前記入力手段から前記辞書の編集を開始することをユーザから受け取ったのちユーザからの操作命令を待つ状態になり、前記入力手段から入力される操作指示を判定して、単語追加なら追加すべく前記入力手段から入力される単語と読みとコマンドをユーザから受け取り、音声コマンド辞書へ追加し、単語削除なら前記辞書の単語グループから指定された単語を削除し、かつ、終了か否かを判定し、終了なら処理を終了させるものである 音声処理装置。」 第2.平成27年4月30日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年4月30日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 平成27年4月30日付けの手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、特許請求の範囲について、上記第1.2.(1)に示した特許請求の範囲から、上記第1.2.(3)に示した特許請求の範囲に補正しようとするものである。 2.新規事項追加禁止要件 (1)本件補正は、本件補正前の請求項1の「前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニュを停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューの再起動まで前記音声コマンド・メニューを再コンパイルさせない機能と;を具備する」との記載を「前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去を停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去の再起動まで前記音声コマンド・メニューを再編成させない機能と;を具備する」との記載に補正するものであるところ、これは当該「停止」や「再起動」の対象を「音声コマンド・メニュー」から「音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去」に変更するものである。 しかしながら、当該「停止」や「再起動」の対象が「音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去」である旨の技術的事項は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」と記す。)には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもない。 なお、請求人は平成27年4月30日付けの意見書(以下、単に「意見書」と記す。)の【意見の内容】「3.補正の内容、根拠、補正の目的の適合性」において「補正内容からも明らかなように当初明細書等の記載の範囲内でなされたものである。」と説明しているが、上記技術的事項が当初明細書等の何処の記載から導き出し得るのか等の具体的な説明はなされていない。 また、当初明細書等の段落【0089】の【表148】における「註 最善の結果のために、Addを呼び出す前に前記音声メニュを停止させるべきである。そうでなければ、Addが戻る前に前記メニュは停止され、再コンパイルされ、及び再起動されなければならない。Addが呼び出される時に、すでに前記メニュが停止されている場合、前記メニュは前記アプリケーションがそれを再度起動させるまで再コンパイルされない。」との記載、同段落【表155】中の「註 良い結果を得るために、Removeを呼び出す前に、前記音声メニュを停止させるべきである。あるいは、Removeが戻る前に、前記メニュは、停止され、再コンパイルされ、及び再起動されなければならない。Removeが呼び出される時に前記メニュがすでに停止している場合、前記メニュは、前記アプリケーションがそれを再起動させるまで、再コンパイルされない。」との記載が見いだされるものの、ここでの「音声メニュ」が「音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去」である旨の記載も示唆も、当初明細書等に見いだすことができない。 したがって、上記「停止」や「再起動」の対象が「音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去」である旨の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。 (2)本件補正後の請求項1における 「前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去を停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去の再起動まで前記音声コマンド・メニューを再編成させない機能と;を具備する ことを特徴とするアプリケーション・プログラム・インターフェース。」との記載は、当該「停止させ」「再編成させない機能」を「アプリケーション・プログラム・インターフェース」が「具備する」旨の技術的事項をも明示するものであるところ、当該技術的事項も当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもない。 なお、当審拒絶理由通知の理由1(以下、単に「当審拒絶理由1」と記す。理由2、3についても同様。)でも同様の指摘がなされているところ、これに対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「4-2.理由1への対応」のとおりの主張がなされている。 しかしながら、当初明細書等には、「註」が「動作条件を規定するもの」である旨の記載は無く、また、これを示唆する記載を当初明細書等に見いだすこともできない。そして、当初明細書の段落【0089】の【表148】【表155】の「註」における「最善の結果のために」「良い結果を得るために」との記載から見て、ここで規定される手順は必ず満たされる「動作条件」ではなく、単に「最善の結果」や「良い結果」を得るための手順に過ぎないものであって、得られる結果が「最善の結果」や「良い結果」でなくともよいのであれば必ずしも満たされる必要のないものと解するのが妥当であるから、当該「註」が「動作条件を規定するもの」であると解することはできない。 さらに、仮に当該「註」が「動作条件を規定するもの」であると仮定しても、アプリケーション・プログラム・インターフェースの機能の呼び出しは「アプリケーション・プログラム」からなされるのであるから、当該「動作条件」は「アプリケーション・プログラム」に課せられる条件であると解するのが妥当であって、当該「註」を「APIが具備する機能を規定しているもの」と解することは到底できない。 したがって、当該主張は当を得ない主張であって、到底認め得るものではない。 以上のとおり、上記の「停止させ」「再編成させない機能」を「アプリケーション・プログラム・インターフェース」が「具備する」旨の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても、導き出し得るものではない。 (3)よって、本件補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてするものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。 3.独立特許要件 上記2.のとおり、本件補正は当初明細書等の記載の範囲内においてするものではないが、ここで本件補正の目的が、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられる事項を目的とするものであると仮定し、本件補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 なお、後記第3.5.のとおり、本願については出願日の遡及を認めることはできないので、本願の出願日は現実の出願日である平成24年6月12日である。 3-1.特許法第36条(明細書等の記載要件)について (1)本願の発明の詳細な説明の段落【0089】の【表145】?【表157】にIVCmdMenuの各メソッドの説明がなされているが、いずれも各メソッドの単なる機能とアプリケーション側からの呼出しの仕方の説明に終始しており、アプリケーション・プログラム・インターフェースが呼び出された際にOSがコンピュータに如何なるフローで如何なる情報を如何に処理させるのかを具体的に開示する記載が見当たらない。換言すれば、本願の発明の詳細な説明は希望的事項の説明に終始しており具体的な発明の構成についての開示が無いものである。 このため、本件補正後の請求項1、2に係る発明の実施に際しては、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤等を要するものである。 したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件補正後の請求項1、2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 なお、この不備は当審拒絶理由2の(1)において指摘したものと同様のものであり、これに対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(ア)(1)のご指摘について」のとおりの主張がなされている。 しかしながら、本願の発明の詳細な説明には、本件補正後の請求項1におけるアプリケーション・プログラム・インターフェースの実現手段がソースファイルの形で表現されたオブジェクト指向プログラム(Java)をベースとするものである旨の記載も無く、また仮にこれがオブジェクト指向プログラムによって実現されると仮定しても当該オブジェクト指向プログラムについては流れ図等の概要のレベルで開示する記載すら無いのであるから、これを「ソースレベルで理解が可能なもの」であると認めることは到底できない。 さらに、特許法第36条第4項第1号における「その実施をすることができる」とは、請求項に記載の発明が物の発明である場合には、その物を作ることができ、かつ、その物を使用することができることを意味するのであり、単に「動作が理解」できることで充足される要件ではない。 してみると、当該主張は当を得ない主張であって到底認め得るものではない。 (2)本件補正後の請求項1に「1からnまで順番に番号を振られたコマンドを含む少なくとも一つの音声コマンド・メニューにコマンドを追加する機能であって、追加されたコマンドにn+1から順に番号を振る機能と」「指定されたコマンドを前記少なくとも一つの音声コマンド・メニューから除去する機能であって、除去すべき最初のコマンドの番号と除去すべきコマンド数に基づいて除去を行う機能」「を具備する」旨の発明を特定するための事項(以下、「発明特定事項」と記す。)があるが、該機能をアプリケーション・プログラム・インターフェースに具備せしめることの技術上の意義(これによって如何なる課題が解決され、如何なる作用効果が奏されるのか等)の説明が皆無でありその技術上の意義を理解することが不可能である。 したがって、この出願の発明の詳細な説明は、本件補正後の請求項1、2に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものである。 なお、この不備は当審拒絶理由2の(2)において指摘したものと同様のものであり、これに対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(イ)(2)のご指摘について」のとおりの主張がなされている。しかしながら、本件補正後の請求項1の記載からはこれが「音声コマンド・メニューにコマンドを追加する機能」や「指定されたコマンドを前記少なくとも一つの音声コマンド・メニューから除去する機能」を備えるためのものであることは把握し得ても、「コマンド」を「1からnまで順番に番号を振られた」ものとすることや「追加されたコマンドにn+1から順に番号を振る」こと、「除去すべき最初のコマンドの番号と除去すべきコマンド数に基づいて除去を行う」といった発明特定事項が如何なる課題を解決するために、あるいは、如何なる作用効果を奏するために採用されたのかまでは、当該機能の記載のみから把握し得るものではない。そして、本願明細書において発明の課題として開示されるものは当該発明特定事項とは無関係の課題であって、これを参酌しても当該発明特定事項の技術上の意義を把握しうるものではない。したがって、当該主張も当を得ない主張であって到底認め得るものではない。 (3) ア.本件補正後の請求項1に「前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去を停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去の再起動まで前記音声コマンド・メニューを再編成させない機能」「を具備する」旨の発明特定事項があるが、これは、上記2.で論じたように当初明細書等に記載されていない事項であるから、本件補正後の明細書にも記載されているものではない。 したがって、本件補正後の請求項1、2に係る発明は、本願の発明の詳細な説明に記載したものでない。 また、このため、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本件補正後の請求項1、2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないものであるとともに、本件補正後の請求項1、2に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものである。 なお、この不備は当審拒絶理由2の(3)において指摘したものと同様のものであり、これに対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(ウ)(3)及び(6)のご指摘について」において「前記「4-2.」において指摘したように、請求項1に係る記載は、本意見書と同時になされた補正により補正されており(「本願発明1」参照)、本願発明1は、当初明細書の記載の範囲内のものである。また、上記(ア)においても指摘したように、本願は実施可能要件違反に該当するものでもない。」と主張されている。しかしながら、当該発明特定事項が当初明細書等の記載の範囲内のものでないことは上記2.で論じたとおりであるから、本件の補正後の明細書の発明の詳細な説明に記載されているものでもない。そして、このことから、本件の補正後の明細書の発明の詳細な説明には本件補正後の請求項1、2に係る発明の説明が記載されていないとも言えるのであるから、本件補正後の明細書の記載が実施可能要件も委任省令要件も満たしていないことは明らかである。 イ.また、上記発明特定事項は、段落【0089】の【表148】の「註」の「最善の結果のために、Addを呼び出す前に前記音声メニュを停止させるべきである。そうでなければ、Addが戻る前に前記メニュは停止され、再コンパイルされ、及び再起動されなければならない。Addが呼び出される時に、すでに前記メニュが停止されている場合、前記メニュは前記アプリケーションがそれを再度起動させるまで再コンパイルされない。」との記載、及び、同段落の【表155】の「註 良い結果を得るために、Removeを呼び出す前に、前記音声メニュを停止させるべきである。あるいは、Removeが戻る前に、前記メニュは、停止され、再コンパイルされ、及び再起動されなければならない。Removeが呼び出される時に前記メニュがすでに停止している場合、前記メニュは、前記アプリケーションがそれを再起動させるまで、再コンパイルされない。」との注意書きを表現しようと意図したものと斟酌することもできるが、本件補正後の特許請求の範囲の上記発明特定事項は当該注意書きと相違し、該意図を正確に表現するものにはなっていない。 したがって、この点からも本件補正後の請求項1、2に係る発明は明確でないと言える。 なお、この不備も当審拒絶理由2の(3)において指摘したものと同様のものであるところ、これに対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(ウ)(3)及び(6)のご指摘について」において「段落〔0089〕の〔表148〕の「最善の結果」、〔表155〕の「良い結果」との記載に関しては、これらの表現が「望ましい形態としては」を意味することは文脈からみても明らかであり、特段意味が不明ということはない。」「また、〔表156〕の「活動状態のメニュ上でSetを呼び出すと、大変遅くなり得る。」に関しても、Setを呼び出すとそれに付随した動作が必要となりそのための期間を要することを指摘するものであって、同様に、特段意味が不明ということはない。」と主張されている。しかしながら、本件補正後の請求項1には「最善の結果」「良い結果」「望ましい形態としては」との記載に対応する事項が限定されているわけでもなく、また、「Set」に関する限定がなされているわけでもないので、この主張も当を得ない主張であって、上記「本件補正後の特許請求の範囲の上記発明特定事項は当該注意書きと相違し、該意図を正確に表現するものにはなっていない」との判断が覆るものではない。 なお、段落【0089】の【表148】および【表155】の記載は、その「最善の結果」「良い結果」との記載の前後の文章を詳細に検討しても、その文脈からこれらが「望ましい形態としては」を意味すると解し得る記載ではなく、また、【表156】の「活動状態のメニュ上でSetを呼び出すと、大変遅くなり得る。」も、その記載を詳細に検討しても、「Setを呼び出すとそれに付随した動作が必要となりそのための期間を要することを指摘するもの」と解し得る記載でもないので、仮に本件補正後の請求項1に係る発明が「最善の結果」「良い結果」「望ましい形態」「Set」等に関連する限定がなされたものと解釈すべきものであると仮定しても、本件補正後の請求項1、2に係る発明が明確であると認め得るものではない。 ウ.上記発明特定事項における「追加する機能及び除去する機能を呼び出す」ことと、「音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去の再起動」との関係(同じことを意味するのか? 異なることを意味するのか?)が不明である。 したがって、この点からも本件補正後の請求項1、2に係る発明は明確でないと言える。 エ.上記発明特定事項における「音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去を停止」することの意味(実行中の音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加をする処理及び除去をする処理を停止すると言う意味なのか? 音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加をする機能及び除去をする機能を使えなくすると言う意味なのか? 音声コマンド・メニューを管理するアプリケーション・プログラムを停止すると言う意味なのか?)が明確でない。 したがって、この点からも本件補正後の請求項1、2に係る発明は明確でないと言える。 オ.上記発明特定事項における「前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去の再起動」することの意味(中断中の音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加をする処理及び除去をする処理を再開すると言う意味なのか? 使えなくなっていた音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加をする機能及び除去をする機能を使えるようにすると言う意味なのか? 停止していた音声コマンド・メニューを管理するアプリケーション・プログラムを再度実行すると言う意味なのか?)が明確でない。 したがって、この点からも本件補正後の請求項1、2に係る発明は明確でないと言える。 カ.上記発明特定事項は単に音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加をする機能及び除去をする機能を使えなくすると音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去をすることができなくなり、音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加をする機能及び除去をする機能を使えるようにすると音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去をすることができる旨を記載しているに過ぎないものとも解し得るところ、このような事項が如何なる技術上の意義を有するのかが、本件補正後の発明の詳細な説明には記載されていない。 したがって、この点からも本件補正後の発明の詳細な説明は本件補正後の請求項1、2に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものである。 (4)本件補正後の請求項1、2に係る発明における「少なくとも一つの音声コマンド・メニューを管理するアプリケーション・プログラムを実行させるためのアプリケーション・プログラム・インターフェース」の意味・カテゴリー(アプリケーション・プログラム・インターフェースの「機能」を意味するのか? アプリケーション・プログラム・インターフェースの「仕様」を意味するのか? アプリケーション・プログラム・インターフェースを提供する「物」を意味するのか? アプリケーション・プログラム・インターフェースを提供する「方法」を意味するのか? アプリケーション・プログラム・インターフェースを実現する「プログラム」を意味するのか?)が明確でない。 したがって、本件補正後の請求項1、2に係る発明は明確でない。 なお、この不備は当審拒絶理由2の(4)において指摘したものと同様のものであり、これに対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(エ)(4)のご指摘について」のとおりの主張がなされている。しかしながら、本件補正後の特許請求の範囲には「アプリケーション・プログラム・インターフェース」が特定の機能を有する「システム」であることを明確に示す記載は見当たらず、また、発明の詳細な説明にも「アプリケーション・プログラム・インターフェース」が「システム」である旨を定義する記載は見当たらない。 (5)本件補正後の請求項1に「音声コマンド・メニュー」とあるが、これが如何なる作用をなす「メニュー」を意味するのか(音声を認識して認識された内容に対応した処理を行うものなのか? 音声でメニュー項目を提示し、ユーザが数字等で選択入力し、選択入力された数字等に対応した処理を行うものなのか?)が特許請求の範囲の記載からは不明である。 したがって、本件補正後の請求項1、2に係る発明は明確でない。 なお、この不備は当審拒絶理由2の(5)において指摘したものと同様のものであり、これに対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(オ)(5)のご指摘について」のとおりの主張がなされている。しかしながら、本件補正後の請求項1においても、当該「音声コマンド・メニュー」が音声を認識して認識された内容に対応した処理を行うものなのか、音声でメニュー項目を提示し、ユーザが数字等で選択入力し、選択入力された数字等に対応した処理を行うものなのかは定かではない。 (6)本件補正後の請求項2に「メニュー識別子」、「言語識別子」とあるが、その意味(「メニュー識別子」とはメニューに関する何を識別する如何なる形式のデータなのか? 「言語識別子」とは言語に関する何を識別する如何なる形式のデータなのか?)が明確でない。 したがって、本件補正後の請求項2に係る発明は明確でない。 なお、この不備は当審拒絶理由2の(9)において指摘したものと同様のものであり、これに対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(キ)(9)のご指摘について」のとおりの主張がなされている。しかしながら、本件補正後の請求項2においても、「メニュー識別子」とはメニューに関する何を識別する如何なる形式のデータなのか、「言語識別子」とは言語に関する何を識別する如何なる形式のデータなのかは不明のままである。 (7)本件補正後の請求項2に記載の事項が如何なる技術上の意義を有するのか(これによって如何なる課題が解決され、如何なる作用効果が奏されるのか等)を説明する記載が本願の発明の詳細な説明に見当たらない。このため、本願の発明の詳細な説明の記載は本願請求項2に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものである。 なお、この不備は当審拒絶理由2の(10)において指摘したものと同様のものであり、これに対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(ク)(10)のご指摘について」のとおりの主張がなされている。しかしながら、本件補正後の請求項2の「アプリケーション名及び状態名を具備するメニュー識別子、言語識別子、及びモード・フラグをアプリケーション・プログラムから受け取り、音声認識システムが、前記メニュー識別子によって識別される音声コマンド・メニューを生成するようにさせる機能と;」「前記メニュー識別子をアプリケーションから受け取り、及び前記音声認識システムが、前記メニュー識別子によって識別される前記音声コマンド・メニューを削除するようにさせる機能と;を更に具備する」といった発明特定事項が如何なる課題を解決するために、あるいは、如何なる作用効果を奏するために採用されたのかまでは、当該機能の記載のみから把握し得るものではない。そして、本願明細書において発明の課題として開示されるものは当該発明特定事項とは無関係の課題であって、これを参酌しても当該発明特定事項の技術上の意義を把握しうるものではない。 また、当審拒絶理由2の(10)は特許法第36条第4項第1号違反のうちの実施可能要件違反を指摘したものではなく、委任省令要件違反を指摘したものである。 したがって、当該主張も当を得ない主張であって到底認め得るものではない。 (8)以上のとおり、本件補正後の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていないので、本件補正後の請求項1、2に係る発明は独立して特許を受けることができない。 3-2.進歩性(特許法第29条第2項)について 3-2-1.本件補正発明・引用文献記載事項・引用発明 本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」と記す。」)は、上記第1.2.(3)において【請求項1】として記載した事項により特定されるものである。 そして、本願の出願前である上記優先日よりも前に頒布され、上記当審拒絶理由通知において引用された、上記引用文献には、それぞれ、上記引用文献記載事項が記載されており、上記引用文献1には上記引用発明が記載されている。 3-2-2.対比 以下、本件補正発明と引用発明とを比較する。 (1) ア.引用発明は「単語に対応するコマンドをアプリケーションに送る」ものなのであるから、引用発明における「単語」も「音声コマンド」と言えるものであり、引用発明における「編集」は「少なくとも一つの音声コマンド・メニューを管理する」ことにほかならない。 イ.上記3-1.(4)で論じたように本件補正発明における「アプリケーション・プログラム・インターフェース」の意味・カテゴリーは明確なものではないものの、「アプリケーションとのインターフェース」をする何らかの「手段」であると解することができる。 一方、引用発明は「音声によりコマンドを入力して計算機を操作する装置であって」「前記認識手段によって認識された単語または前記選択手段によって選択された単語に対応するコマンドをアプリケーションに送るコマンド送信処理手段とを有し」ている「音声処理装置」なのであるから、「アプリケーションとのインターフェース手段」とも言えるものである。 してみると、引用発明も本件補正発明も、 「アプリケーションとのインターフェース手段」 と言えるものである。 ウ.したがって、引用発明と本件補正発明とは 「少なくとも一つの音声コマンド・メニューを管理するためのアプリケーションとのインターフェース手段」 である点で共通すると言える。 (2)引用発明における「編集」は「追加」を含み、これは本件補正発明における「追加する機能」に対応付けられるものであるところ、前者は「追加すべく前記入力手段から入力される単語と読みとコマンドをユーザから受け取り、音声コマンド辞書へ追加」するものであるから、「少なくとも一つの音声コマンド・メニューにコマンドを追加する機能」と言える。 したがって、引用発明と本件補正発明とは 「少なくとも一つの音声コマンド・メニューにコマンドを追加する機能」 を具備するものである点で共通する。 (3)引用発明における「編集」は「削除」も含み、これは本件補正発明における「除去する機能」に対応付けられるものであるところ、前者は「前記辞書の単語グループから指定された単語を削除」するものであるから、「指定されたコマンドを前記少なくとも一つの音声コマンド・メニューから除去する機能」と言える。 したがって、引用発明と本件補正発明とは 「指定されたコマンドを前記少なくとも一つの音声コマンド・メニューから除去する機能」 を具備するものである点で共通する。 (4)なお、上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「6-4.本願発明1と引用文献1に記載された発明との対比・判断」においては『即ち、引用文献1には、音声コマンド辞書への単語の追加や、音声コマンド辞書からの単語の削除に係る記載はあるものの、引用文献1記載の「音声コマンド辞書」、「単語」が本願発明1の「音声コマンドメニュー」、「コマンド」に対応するものと認めることができないばかりでなく、引用文献1には、本願発明1の構成要件A?Dに相当する構成は一切開示されていない点で両者は相違するものである。』と主張がなされているが、上記(1)?(3)で対比したとおりであるから、この主張を認めることはできない。 (5)よって、本件補正発明は、下記の本件補正発明と引用発明との一致点で引用発明と一致し、下記の本件補正発明における引用発明との相違点で引用発明と相違する。 <本件補正発明と引用発明との一致点> 「少なくとも一つの音声コマンド・メニューを管理するためのアプリケーションとのインターフェース手段であって: 少なくとも一つの音声コマンド・メニューにコマンドを追加する機能と、; 指定されたコマンドを前記少なくとも一つの音声コマンド・メニューから除去する機能と; を具備する インターフェース手段。」 <本件補正発明における引用発明との相違点1> 本件補正発明は、「アプリケーション・プログラム・インターフェース」であり、これは少なくとも一つの音声コマンド・メニューを管理する「アプリケーション・プログラムを実行させるための」ものである。 (これに対して、引用文献1には、「編集手段」が「アプリケーション・プログラム・インターフェース」や「アプリケーション・プログラム」によって実装される旨の記載はない。) <本件補正発明における引用発明との相違点2> 本件補正発明は、コマンドが「1からnまで順番に番号を振られたコマンドを含む」ものであり、追加する機能は「追加されたコマンドにn+1から順に番号を振る」ものであり、除去する機能は「除去すべき最初のコマンドの番号と除去すべきコマンド数に基づいて除去を行う」ものである。 (これに対して、引用文献1には、「単語」に「番号」が付される旨の記載や「単語削除」時の「単語」の「指定」を「番号」を用いて行う旨の記載は無い。) <本件補正発明における引用発明との相違点3> 本件補正発明は、「前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去を停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去の再起動まで前記音声コマンド・メニューを再編成させない機能」を具備する。 (これに対して、引用文献1には、かかる機能についての明示はない。) 3-2-3.判断 以下、上記相違点について検討する。 (1)本件補正発明と引用発明との相違点1について プラットフォームやOSに音声認識機能を備えることは、本願出願時には既に周知慣用のものであり(必要があれば、引用文献記載事項2-1?2-3、3-1等を参照。)、かかるプラットフォームやOSはその機能をアプリケーション・プログラムに提供するためのインターフェース手段を有するのが普通である(必要があれば、引用文献記載事項2-2等を参照。)から、音声によりコマンドを入力して計算機を操作する装置であって、コマンドをアプリケーションに送るものである引用発明においても、その各手段が行う処理機能を、このようなプラットフォームやOSに備えられたアプリケーション・プログラムとのインターフェース手段として提供することは、当業者であれば普通に着想し得たものに他ならない。 そして、その際上記「編集手段」が行う処理機能についてもアプリケーション・プログラムとのインターフェース手段として構成することも当業者が普通に採用する事項に過ぎず、その場合には該「編集手段」と「ユーザ」との間の「操作命令」の送受等を行う手段を「アプリケーション・プログラム」として実装することも適宜になし得ることである。 してみると、引用発明を「アプリケーション・プログラム・インターフェース」とし、これを少なくとも一つの音声コマンド・メニューを管理する「アプリケーション・プログラムを実行させる」ためのものとすること、すなわち上記本件補正発明における引用発明との相違点1にかかる構成を備えたものとすることは、当業者であれば普通に着想し得たものに他ならず、これによって奏される作用効果も当業者であれば当然に予測し得る程度のものにすぎない。 なお、請求人は上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「6-4.本願発明1と引用文献1に記載された発明との対比・判断」「・(相違点1について)における審判官殿の判断について」のとおり主張している。 しかしながら、引用発明は「音声によりコマンドを入力して計算機を操作する装置であって」「前記認識手段によって認識された単語または前記選択手段によって選択された単語に対応するコマンドをアプリケーションに送る」ものなのであるから、引用文献1に接した当業者であれば、引用文献2、3等に記載のプラットフォームやOS等の基本ソフトに関する周知技術の適用は当然の如く想起するものであり、引用文献1には引用文献2、3等に記載の周知技術を適用する動機付けとなる記載が明示されていると言える。したがって、当該主張を認めることは到底できない。 (2)本件補正発明と引用発明との相違点2について メニュー項目に番号を振ることも適宜に採用されている周知慣用の構成であり(必要があれば、引用文献記載事項2-4、4-1等を参照。)、さらに、項目を追加した場合に追加前の項目数よりも多い番号を振ることも当然に採用される事項である。 また、複数のデータを開始位置と個数を指定することで行うことも適宜に採用されている周知慣用技術である(必要があれば引用文献記載事項5-1、6-1等を参照。)。 したがって、上記本件補正発明における引用発明との相違点2に係る構成は当業者であれば適宜に採用し得たものである。 そして、上記3-1.(2)で述べたように、本願の発明の詳細な説明はもとより、意見書においてもその技術上の意義については何らの説明もないため、当該構成の採用によって何ら格別な作用効果が奏されるものでもないと判断される。 なお、請求人は上記相違点2に関連して、上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「6-4.本願発明1と引用文献1に記載された発明との対比・判断」「・(相違点2について)における審判官殿の判断について」のとおり主張している。 しかしながら、引用発明は音声コマンドの編集に関する発明なのであるから、引用文献1に接した当業者であれば、引用文献2、4?6等に記載のメニューやデータの編集に関する周知技術の適用は当然の如く想起するものであり、引用文献1には引用文献2、4?6等に記載の周知技術を適用する動機付けとなる記載があると言えるので、当該主張を認めることは到底できない。 なお、上記3-1.(2)で述べたように、本願の発明の詳細な説明はもとより、意見書においてもその技術上の意義については何らの説明もないため、当該構成の採用が解決しようとする課題の存在すら認めることはできず、上記相違点2に係る構成は単に適宜に採用した構成にとどまるものと判断できるので、仮に引用文献1に動機付けに関する記載が存在しないとしても、上記相違点2についての判断を覆し得るものではない。 (3)本件補正発明と引用発明との相違点3について 本件補正発明における「前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去を停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去の再起動まで前記音声コマンド・メニューを再編成させない機能」との記載は、上記3-1.(3)イ.?オ.でも述べたように、その意味するところは明確なものではないものの、上記3-1.(3)カ.で論じたように単に「音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加をする機能及び除去をする機能を使えなくすると音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去をすることができなくなり、音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加をする機能及び除去をする機能を使えるようにすると音声コマンド・メニューに対するコマンドの追加及び除去をすることができる」旨を記載しているに過ぎないものとも解し得るものである。 そして、引用発明においては「前記編集手段の処理の過程は、前記入力手段から前記辞書の編集を開始することをユーザから受け取ったのちユーザからの操作命令を待つ状態になり、前記入力手段から入力される操作指示を判定して、単語追加なら追加すべく前記入力手段から入力される単語と読みとコマンドをユーザから受け取り、音声コマンド辞書へ追加し、単語削除なら前記辞書の単語グループから指定された単語を削除し、かつ、終了か否かを判定し、終了なら処理を終了させるもの」であり、編集を開始することをユーザから受け取ると編集が可能になり、編集を終了させればその後は編集が不可能になるものであることは明らかであるから、引用発明も上記本件補正発明と引用発明との相違点3にかかる要件を備えているものと解することができる。 したがって、上記本件補正発明と引用発明との相違点3は実質的には相違点ではないと解することができるものである。 なお、請求人は上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「6-4.本願発明1と引用文献1に記載された発明との対比・判断」「・(相違点3について)における審判官殿の判断について」のとおり主張している。 しかしながら、上記のとおり上記本件補正発明と引用発明との相違点3は実質的には相違点ではないと解することができるものであるから、この主張も認めることはできない。 (4)以上のとおり、本件補正発明の構成は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであり、この構成を採用することに何ら格別な困難性があるとも認められない。 そして、当該相違点にかかる構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであり、しかも、これらの相違点を総合的に勘案しても何ら格別な相乗効果が奏されるものでもない。 よって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3-2-4.進歩性についてのむすび 以上のとおり、本件補正発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3-3.独立特許要件のむすび 上記3-1.のとおり、本件補正後の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていないので、本件補正後の請求項1、2に係る発明は独立して特許を受けることができない。 上記3-2.のとおり、本件補正発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 よって、本件補正の目的が、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられる事項を目的とするものであると仮定しても、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。 4.補正却下の決定のむすび 上記2.のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 また、上記3.のとおり、本件補正の目的が、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられる事項を目的とするものであると仮定しても本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.当審拒絶理由について 1.手続きの経緯 本願の手続きの経緯は上記第1.1.記載のとおりのものであり、さらに、平成27年4月30日付けの手続補正は上記第2.のとおり却下された。 したがって、本願の特許請求の範囲は、上記第1.2.(1)に記載した、平成25年10月16日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載のとおりのものである。 2.特許法第17条の2第3項(新規事項)について 1.平成25年10月16日付けでした手続補正(以下、これを「本件補正」と記す。)後の請求項1に記載される「コンピュータ読み取り可能媒体において具現化される一組のアプリケーション・プログラム・インターフェース」が「前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニュを停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューの再起動まで前記音声コマンド・メニューを再コンパイルさせない機能と」「を具備する」旨の技術的事項は、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載から自明なものでもない。 なお、当初明細書の段落【0089】の【表148】に 「註・・・中略・・・最善の結果のために、Addを呼び出す前に前記音声メニュを停止させるべきである。そうでなければ、Addが戻る前に前記メニュは停止され、再コンパイルされ、及び再起動されなければならない。Addが呼び出される時に、すでに前記メニュが停止されている場合、前記メニュは前記アプリケーションがそれを再度起動させるまで再コンパイルされない。」と、 同段落の【表155】に 「註 良い結果を得るために、Removeを呼び出す前に、前記音声メニュを停止させるべきである。あるいは、Removeが戻る前に、前記メニュは、停止され、再コンパイルされ、及び再起動されなければならない。Removeが呼び出される時に前記メニュがすでに停止している場合、前記メニュは、前記アプリケーションがそれを再起動させるまで、再コンパイルされない。」 と記載されているが、これはアプリケーション・プログラム・インターフェースを利用する際の注意を開示するものであり、アプリケーション・プログラム・インターフェースが具備する機能を説明するものでないことは明らかであるから、この記載から上記技術的事項を導き出し得るものではない。 したがって、当業者の技術常識を加味しても当初明細書等の記載から、上記技術的事項を導き出すことはできず、本件補正は当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな事項を導入するものである。 なお、この点に対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「4-2.理由1への対応」のとおりの主張がなされている。しかしながら、上記第2.2.(2)で論じたとおり、当該主張は当を得ない主張であって、到底認め得るものではない。 よって、平成25年10月16日付けでした手続補正は本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 3.特許法第36条(明細書等の記載要件)について (1)当審拒絶理由2の(1)において指摘したとおり、本願の発明の詳細な説明の段落【0089】の【表145】?【表157】にIVCmdMenuの各メソッドの説明がなされているが、いずれも各メソッドの単なる機能とアプリケーション側からの呼出しの仕方の説明に終始しており、アプリケーション・プログラム・インターフェースが呼び出された際にOSがコンピュータに如何なるフローで如何なる情報を如何に処理させるのかを具体的に開示する記載が見当たらない。換言すれば、本願の発明の詳細な説明は希望的事項の説明に終始しており具体的な発明の構成についての開示が無い。 このため、本願請求項1?3に係る発明の実施に際しては、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤等を要するものである。 したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願請求項1?3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 なお、この点に対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(ア)(1)のご指摘について」のとおりの主張がなされている。しかしながら、上記第2.3-1.(1)で論じたとおり、当該主張は当を得ない主張であって到底認め得るものではない。 (2)当審拒絶理由2の(2)において指摘したとおり、本願請求項1に「1からnまで順番に番号を振られたコマンドを含む少なくとも一つの音声コマンド・メニューにコマンドを追加する機能であって、追加されたコマンドにn+1から順に番号を振る機能と」「指定されたコマンドを前記少なくとも一つの音声コマンド・メニューから除去する機能であって、除去すべき最初のコマンドの番号と除去すべきコマンド数に基づいて除去を行う機能」「を具備する」旨の発明特定事項があるが、該機能をアプリケーション・プログラム・インターフェースに具備せしめることの技術上の意義(これによって如何なる課題が解決され、如何なる作用効果が奏されるのか等)の説明が皆無でありその技術上の意義を理解することが不可能である。 したがって、この出願の発明の詳細な説明は、本願請求項1?3に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものである。 なお、この点に対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(イ)(2)のご指摘について」のとおりの主張がなされている。しかしながら、上記第2.3-1.(2)で論じたとおり当該主張は当を得ない主張であって到底認め得るものではない。 (3) ア.当審拒絶理由2の(3)において指摘したとおり、本願請求項1に「前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニュを停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューの再起動まで前記音声コマンド・メニューを再コンパイルさせない機能」「を具備する」旨の発明特定事項があるが、これは上記2.で論じたように当初明細書等に記載されていない事項であるから、本願の明細書にも記載されているものではない。 したがって、本願の請求項1?3に係る発明は、本願の発明の詳細な説明に記載したものでない。 また、このため、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願請求項1?3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないものであるとともに、本願請求項1?3に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものである。 なお、この点に対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(ウ)(3)及び(6)のご指摘について」において『前記「4-2.」において指摘したように、請求項1に係る記載は、本意見書と同時になされた補正により補正されており(「本願発明1」参照)、本願発明1は、当初明細書の記載の範囲内のものである。また、上記(ア)においても指摘したように、本願は実施可能要件違反に該当するものでもない。』との主張がなされている。しかしながら、上記第2.のとおり平成27年4月30日付けの手続補正は却下されており、しかも当該発明特定事項が当初明細書等の記載の範囲内のものでないことは上記2.で論じたとおりであるから、本願の発明の詳細な説明に記載されているものでもない。そして、このことから、本願の発明の詳細な説明には本願請求項1?3に係る発明の説明がないとも言えるのであるから、本願の明細書の記載が実施可能要件も委任省令要件も満たしていないことは明らかである。 イ.また、当審拒絶理由2の(3)においてさらに指摘したとおり、上記発明特定事項は、段落【0089】の【表148】の「註・・・中略・・・最善の結果のために、Addを呼び出す前に前記音声メニュを停止させるべきである。そうでなければ、Addが戻る前に前記メニュは停止され、再コンパイルされ、及び再起動されなければならない。Addが呼び出される時に、すでに前記メニュが停止されている場合、前記メニュは前記アプリケーションがそれを再度起動させるまで再コンパイルされない。」との記載、及び、同段落の【表155】の「註 良い結果を得るために、Removeを呼び出す前に、前記音声メニュを停止させるべきである。あるいは、Removeが戻る前に、前記メニュは、停止され、再コンパイルされ、及び再起動されなければならない。Removeが呼び出される時に前記メニュがすでに停止している場合、前記メニュは、前記アプリケーションがそれを再起動させるまで、再コンパイルされない。」との注意書きを表現しようと意図したものと斟酌することもできるが、特許請求の範囲の上記発明特定事項は当該注意書きと相違し、該意図を正確に表現するものにはなっていない。 したがって、この点からも本願請求項1?3に係る発明は明確でないと言える。 なお、この点に対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(ウ)(3)及び(6)のご指摘について」において「段落〔0089〕の〔表148〕の「最善の結果」、〔表155〕の「良い結果」との記載に関しては、これらの表現が「望ましい形態としては」を意味することは文脈からみても明らかであり、特段意味が不明ということはない。」「また、〔表156〕の「活動状態のメニュ上でSetを呼び出すと、大変遅くなり得る。」に関しても、Setを呼び出すとそれに付随した動作が必要となりそのための期間を要することを指摘するものであって、同様に、特段意味が不明ということはない。」と主張されている。しかしながら、上記第2.3-1.(3)イ.での所論と同様に、この主張も当を得ない主張であって、上記「特許請求の範囲の上記発明特定事項は当該注意書きと相違し、該意図を正確に表現するものにはなっていない」との判断が覆るものではない。 (4)当審拒絶理由2の(4)において指摘したとおり、本願発明における「コンピュータ上の実行のために、コンピュータ読み取り可能媒体において具現化される一組のアプリケーション・プログラム・インターフェース」の意味・カテゴリー(アプリケーション・プログラム・インターフェースの「機能」を意味するのか? アプリケーション・プログラム・インターフェースの「仕様」を意味するのか? アプリケーション・プログラム・インターフェースを提供する「物」を意味するのか? アプリケーション・プログラム・インターフェースを提供する「方法」を意味するのか? アプリケーション・プログラム・インターフェースを実現する「プログラム」を意味するのか?)が明確でない。 したがって、本願請求項1?3に係る発明は明確でない。 なお、この点に対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(エ)(4)のご指摘について」のとおりの主張がなされている。しかしながら、上記第2.のとおり平成27年4月30日付けの手続補正は却下されたのであるから、この主張を認めることはできない。 (5)当審拒絶理由2の(5)において指摘したとおり、本願請求項1に「音声コマンド・メニュー」とあるが、特許請求の範囲の記載からはその意味が明確でない(本願請求項1の記載によれば、「音声コマンド・メニュー」は「管理」の対象となり、コマンドが「追加」や「除去」される対象でもあり、「停止」や「再起動」がなされるものでもあることから、機能なのか? 情報の内容なのか? 機能を実現するプログラムなのか?を特定できない。)。 また、これが如何なる作用をなす「メニュー」を意味するのか(音声を認識して認識された内容に対応した処理を行うものなのか? 音声でメニュー項目を提示し、ユーザが数字等で選択入力し、選択入力された数字等に対応した処理を行うものなのか?)が特許請求の範囲の記載からは不明である。 したがって、本願請求項1?3に係る発明は明確でない。 なお、この点に対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(オ)(5)のご指摘について」のとおりの主張がなされている。しかしながら、上記第2.のとおり平成27年4月30日付けの手続補正は却下されたのであるから、この主張を認めることはできない。 (6)当審拒絶理由2の(6)において指摘したとおり、本願請求項1に記載の「コンパイル」との用語の意味(音声認識用の文法や辞書等のコンパイルのことなのか? 音声メニューで利用されるメニュー項目のコンパイル(編集・編纂)のことなのか? 音声メニューの機能を実行するプログラムのコンパイル(高級言語から機械語への変換)のことなのか? 音声メニューで選択された処理を実行するプログラムのコンパイルのことなのか?)が特許請求の範囲の記載からは不明である。 また、発明の詳細な説明にもこの点を明確に説明する記載がなく、上記(3)でも述べたとおり、当該「コンパイル」を如何なるフローで如何なる情報を如何に処理すればよいのかの開示も見当たらないため、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、その意味を推測することすらできない。 したがって、本願請求項1?3に係る発明は明確でない。 なお、この点に対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(ウ)(3)及び(6)のご指摘について」において『なお、「コンパイル」に関しては、多義的とのご指摘も踏まえ、「編成」と修正した。」「これにより、不明な点は解消されているものと思量する。』との主張がなされている。しかしながら、上記第2.のとおり平成27年4月30日付けの手続補正は却下されたのであるから、この主張を認めることはできない。 (7)当審拒絶理由2の(7)において指摘したとおり、本願請求項2に記載の「可能化パラメータをアプリケーションから受け取る機能であって、前記可能化パラメータは、前記可能化パラメータが第1の値を有する時に、音声認識コンポーネントが、音声認識を可能にし、及び前記可能化パラメータが第2の値を有する時に、音声認識を不能にするようにさせるよう動作する、機能」及び「前記アプリケーションに第2のパラメータを戻す機能であって、前記第2のパラメータは、前記第2のパラメータが前記第1の値を有する時に音声認識が可能にされ、及び前記第2のパラメータが前記第2の値を有する時に音声認識が不能にされることを示すように動作する、機能」と、本願請求項1記載の事項との関連(本願請求項1の「音声コマンド・メニュー」の「起動」や「停止」と如何なる関係にあるのか?無関係のものと解してよいのか?)が不明である。また、このため、本願請求項2に記載の事項の技術的意味(本願請求項に係る発明において果たす働きや役割)が明確でない。 したがって、本願請求項2?3に係る発明は明確でない。 また当審拒絶理由2の(8)において指摘したとおり、本願請求項2に記載の事項が如何なる技術上の意義を有するのか(これによって如何なる課題が解決され、如何なる作用効果が奏されるのか等)を説明する記載が本願の発明の詳細な説明に見当たらない。このため、本願の発明の詳細な説明の記載は本願請求項2?3に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものである。 なお、これらの点に対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(カ)(7)及び(8)のご指摘について」のとおりの主張がなされている。しかしながら、上記第2.のとおり平成27年4月30日付けの手続補正は却下されたのであるから、この主張を認めることはできない。 (8)当審拒絶理由2の(9)において指摘したとおり、本願請求項3に「メニュー識別子構造」、「言語識別子構造」とあるが、その意味(「構造」とは、「構造」を記述した情報を意味するのか? 「構造体」の意味なのか? 「メニュー識別子」とはメニューに関する何を識別する如何なる形式のデータなのか? 「言語識別子」とは言語に関する何を識別する如何なる形式のデータなのか?)が明確でない。 したがって、本願請求項3に係る発明は明確でない。 なお、この点に対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(キ)(9)のご指摘について」のとおりの主張がなされている。しかしながら、上記第2.のとおり平成27年4月30日付けの手続補正は却下され、しかも、上記第2.3-1.(6)でも論じたとおり「メニュー識別子」「言語識別子」との用語の意味は明確でないのであるから、この主張を認めることはできない。 (9)当審拒絶理由2の(10)において指摘したとおり、本願請求項3に記載の事項が如何なる技術上の意義を有するのか(これによって如何なる課題が解決され、如何なる作用効果が奏されるのか等)を説明する記載が本願の発明の詳細な説明に見当たらない。このため、本願の発明の詳細な説明の記載は本願請求項3に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものである。 なお、この点に対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(ク)(10)のご指摘について」のとおりの主張がなされている。しかしながら、上記第2.3-1.(7)で論じたとおり当該主張は当を得ない主張であって到底認め得るものではない。 (10)当審拒絶理由2の(11)において指摘したとおり、特許請求の範囲において「音声コマンド・メニュー」及び「音声コマンド・メニュ」とあり、用語が統一されていない。 したがって、本願請求項1?3に係る発明は明確でない。 なお、この点に対しては上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「5-2.理由2への対応」「(ケ)(11)のご指摘について」のとおりの主張がなされている。しかしながら、上記第2.のとおり平成27年4月30日付けの手続補正は却下されたのであるから、この主張を認めることはできない。 (11)以上のとおり、この出願は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていないとした当審拒絶理由2は妥当なものであって、意見書を検討してもこれを覆すに足る根拠は見いだせない。 4.特許法第29条第2項(進歩性)について 4-1.本願発明の認定・引用文献の記載内容・引用発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第1.2.(1)において【請求項1】として記載した事項により特定されるものである。 そして、本願の出願前である上記優先日よりも前に頒布され、上記当審拒絶理由通知において引用された、上記引用文献には、それぞれ、上記引用文献記載事項が記載されており、上記引用文献1には上記引用発明が記載されている。 4-2.対比 以下、本願発明と引用発明とを比較する。 (1) ア.上記第2.3-2-2.(1)ア.で論じたように、引用発明における「単語」も「音声コマンド」と言えるものであり、引用発明における「編集」は「少なくとも一つの音声コマンド・メニューを管理する」ことにほかならない。そして、これは引用発明の用途とも解し得るものであるから、引用発明は「少なくとも一つの音声コマンド・メニューを管理するアプリケーションと関連」しているものであることは明らかである。 イ.引用発明は「音声によりコマンドを入力して計算機を操作する装置」であるから、「コンピュータ上の実行のために、具現化される」ものと言える。 ウ.上記第2.3-2-2.(1)イ.での所論と同様に、引用発明も本願発明も、 「アプリケーションとのインターフェース手段」 と言えるものである。 エ.したがって、引用発明と本願発明とは 「少なくとも一つの音声コマンド・メニューを管理するアプリケーションと関連して、コンピュータ上の実行のために、具現化されるアプリケーションとのインターフェース手段」 である点で共通すると言える。 (2)上記第2.(2)(3)での所論と同様に、引用発明と本願発明とは 「少なくとも一つの音声コマンド・メニューにコマンドを追加する機能」と、 「指定されたコマンドを前記少なくとも一つの音声コマンド・メニューから除去する機能」と を具備するものである点で共通する。 (3)よって、本願発明は、下記一致点で引用発明と一致し、下記相違点で引用発明と相違する。 <一致点> 「少なくとも一つの音声コマンド・メニューを管理するアプリケーションと関連して、コンピュータ上の実行のために、具現化されるアプリケーションとのインターフェース手段であって: 少なくとも一つの音声コマンド・メニューにコマンドを追加する機能と、; 指定されたコマンドを前記少なくとも一つの音声コマンド・メニューから除去する機能と; を具備する インターフェース手段。」 <相違点1> 本願発明は、「一組のアプリケーション・プログラム・インターフェース」であり、これは「コンピュータ読み取り可能媒体において」具現化されるものである。 (これに対して、引用文献1には、「アプリケーション・プログラム・インターフェース」との記載やこれを「コンピュータ読み取り可能媒体において」具現化する旨の記載はない。) <相違点2> 本願発明は、少なくとも一つの音声コマンド・メニューが「1からnまで順番に番号を振られたコマンドを含む」ものであり、追加する機能は「追加されたコマンドにn+1から順に番号を振る」ものであり、除去する機能は「除去すべき最初のコマンドの番号と除去すべきコマンド数に基づいて除去を行う」ものである。 (これに対して、引用文献1には、「単語」に「番号」が付される旨の記載や「単語削除」時の「単語」の「指定」を「番号」を用いて行う旨の記載は無い。) <相違点3> 本願発明は、「前記追加する機能及び除去する機能を呼び出す前に前記音声コマンド・メニュを停止させ、それにより前記音声コマンド・メニューの再起動まで前記音声コマンド・メニューを再コンパイルさせない機能」を具備する。 (これに対して、引用文献1には、かかる機能についての明示はない。) 4-3.判断 (1)相違点1について プラットフォームやOSに音声認識機能を備えることは、本願出願時には既に周知慣用のものであり(必要があれば、引用文献記載事項2-1?2-3、3-1等を参照。)、かかるプラットフォームやOSはその機能をアプリケーション・プログラムに提供するためのインターフェース手段を有するのが普通である(必要があれば、引用文献記載事項2-2等を参照。)から、音声によりコマンドを入力して計算機を操作する装置であって、コマンドをアプリケーションに送るものである引用発明においても、その各手段が行う処理機能をこのようなプラットフォームやOSに備えられた、アプリケーション・プログラムとのインターフェース手段として提供することは、当業者であれば普通に着想し得たものに他ならない。 また、機能実現手段を媒体上のソフトウェアとして実装することは当業者の常套手段に過ぎないものであり、アプリケーション・プログラムとのインターフェース手段を「コンピュータ読み取り可能媒体において」具現化することは当業者が通常採用する事項にすぎない。 してみると、引用発明を、「一組のアプリケーション・プログラム・インターフェース」とし、これを「コンピュータ読み取り可能媒体において」具現化すること、すなわち上記相違点1にかかる構成を備えたものとすることは、当業者であれば普通に着想し得たものに他ならない。 なお、請求人は上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「6-4.本願発明1と引用文献1に記載された発明との対比・判断」「・(相違点1について)における審判官殿の判断について」のとおり主張しているが、上記第2.3-2-3.(1)で論じたとおり、引用文献1には引用文献2、3等に記載の周知技術を適用する動機付けとなる記載が明示されていると言えるので、当該主張を認めることは到底できない。 (2)相違点2について メニュー項目に番号を振ることも適宜に採用されている周知慣用の構成であり(必要があれば、引用文献記載事項2-4、4-1等を参照。)、さらに、項目を追加した場合に追加前の項目数よりも多い番号を振ることも当然に採用される事項である。 また、複数のデータを開始位置と個数を指定することで行うことも適宜に採用されている周知慣用技術である(必要があれば引用文献記載事項5-1、6-1等を参照。)。 したがって、上記相違点2に係る構成も当業者であれば適宜に採用し得たものである。 そして、上記3-1.(2)で述べたように、本願の発明の詳細な説明はもとより、意見書においてもその技術上の意義については何らの説明もないため、当該構成の採用によって何ら格別な作用効果が奏されるものでもないと判断される。 なお、請求人は上記相違点2に関連して、上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「6-4.本願発明1と引用文献1に記載された発明との対比・判断」「・(相違点2について)における審判官殿の判断について」のとおり主張しているが、上記第2.3-2-3.相違点2で論じたとおり、引用文献1には引用文献2、4?6等に記載の周知技術を適用する動機付けとなる記載があると言えるので、当該主張を認めることは到底できない。 また、上記本願発明における除去する機能が「除去すべき最初のコマンドの番号と除去すべきコマンド数に基づいて除去を行う」旨の相違点は、当審拒絶理由通知の備考においては明確に認定されておらず、請求人は上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「6-4.本願発明1と引用文献1に記載された発明との対比・判断」において「なお、審判官殿は、両者の相違点として相違点1?3を認定しているが、この相違点の認定と後続する相違点の判断とは必ずしも対応していない点に留意されたい。」と、当審拒絶理由通知の備考における相違点の認定の瑕疵を指摘する。 しかしながら、当審拒絶理由通知においては、上記引用文献1を主たる引用文献として、本願発明がこれに記載された発明から容易に発明し得るものであることについては明記されており、また、当審拒絶理由2.の「(相違点2について)」には「また、複数のデータを開始位置と個数を指定することで行うことも周知慣用技術である(必要があれば引用文献5(特に第4頁右上欄第7行-第18行)、引用文献6(特に段落【0029】及び【図6】(b))等を参照されたし。)から、上記相違点2に係る構成も当業者であれば適宜に採用し得たものであり、これによって何ら格別な作用効果が奏されるものでもない。」とあり、上記除去する機能についての相違点に関する判断が示されている。 したがって、当審拒絶理由通知の備考における相違点の認定の瑕疵をもって、上記対比・判断が違法なものとはいえない。 (3)相違点3について 本願発明における「コンパイル」は上記3.(6)のとおり意味が明確なものではないものの、これは追加や削除されたデータを何らかの形で利用する処理の一つであると推測されるところ、データの編集や生成とそのデータの利用は、別々に行うのが普通である(必要があれば、引用文献記載事項7-1、8-1?8-3等を参照。また、引用文献1においても、音声コマンドを処理する過程と音声コマンド辞書を編集する過程は全く別のフロー(引用文献記載事項1-6、1-7等を参照。)となっている。)から、上記相違点3は当業者が通常採用する事項にすぎないものと解することができるものである。 なお、請求人は上記第1.(4)に示した意見書の【意見の内容】「6-4.本願発明1と引用文献1に記載された発明との対比・判断」「・(相違点3について)における審判官殿の判断について」のとおり主張しているが、当該主張は上記平成27年4月30日付けの手続補正を前提とした主張であるところ、上記第2.のとおり当該手続補正は却下されたのであるから、この主張を認めることはできない。 (4)以上のとおり、上記各相違点にかかる構成は引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであり、これらの構成を採用することに何ら格別な困難性があるとも認められない。 そして、当該相違点にかかる構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであり、しかも、これらの相違点を総合的に勘案しても何ら格別な相乗効果が奏されるものでもない。 よって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4-4.進歩性についてのむすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 5.出願日の遡及・優先権主張について 上記2.で検討した技術的事項は、本願の原出願である特願2009-034311号の出願当初の特許請求の範囲、明細書又は図面にも記載されていないので、本願については、出願日の遡及を認めることはできない。 また、このため、上記パリ条約に基づく優先権主張を認めることもできない なお、当審拒絶理由通知において引用された上記引用文献は全て上記優先日前に頒布された刊行物であり、仮に出願日が遡及し上記パリ条約に基づく優先権主張が認められると仮定しても、これによって本審決の結論を覆し得るものではない。 6.むすび 上記第3.2.のとおり、平成25年10月16日付けの手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、本願は特許を受けることができない。 上記第3.3.のとおり、本願は、明細書及び特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていないものである。 上記第3.4.のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 なお、仮に平成27年4月30日付けの手続補正が却下されなかったとしても、当該手続補正後の請求項1、2に係る発明は、上記第2.3.で論じたとおりのものであるから、同請求項1、2に係る発明は当審拒絶理由2、3によって特許を受けることができないものであり、本審決の結論が覆るものではない。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-06-04 |
結審通知日 | 2015-06-05 |
審決日 | 2015-06-16 |
出願番号 | 特願2012-132472(P2012-132472) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(G10L)
P 1 8・ 561- WZ (G10L) P 1 8・ 121- WZ (G10L) P 1 8・ 55- WZ (G10L) P 1 8・ 537- WZ (G10L) P 1 8・ 575- WZ (G10L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 漆原 孝治 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
田中 秀人 山崎 達也 |
発明の名称 | オペレーティング・システムのアプリケーション・プログラム・インターフェース |
代理人 | 松尾 淳一 |
代理人 | 大牧 綾子 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 中西 基晴 |
代理人 | 竹内 茂雄 |
代理人 | 中村 彰吾 |
代理人 | 鳥居 健一 |
代理人 | 山本 修 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 大房 直樹 |
代理人 | 上田 忠 |
代理人 | 末松 亮太 |