• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1307243
審判番号 不服2013-18907  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-30 
確定日 2015-10-28 
事件の表示 特願2009-547786「インタラクティブ患者フォーラム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月 7日国際公開、WO2008/093270、平成22年 5月27日国内公表、特表2010-518476〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年1月25日を国際出願日(優先権主張日:2007年2月2日、米国)とする出願であって、平成24年5月28日付けで拒絶理由通知がなされ、平成24年12月5日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされたが、平成25年5月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成25年9月30日付けで拒絶査定不服審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ、平成25年12月3日付けの前置報告を引用した審尋に対して平成26年5月2日に回答がなされ、当審において平成26年11月12日付けで拒絶理由通知がなされ、平成27年2月17日付けで意見書の提出がなされたものである。

2.平成26年11月12日付の拒絶理由通知の概要
当審において通知した拒絶理由通知の概要は以下のとおりである。
『A.(省略)
B.この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請 求 項 1-7
・引用文献
1.特開2004-248145号公報
2.特開2005-141706号公報
3.特開2003-242252号公報
4.特開平11-41578号公報
5.特開2007-19671号公報
6.(省略)
7.(省略)
8.(省略)

<<請求項1について>>
・・・(途中省略)・・・
ここで,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」)と,引用文献1に記載された発明(以下「引用発明」)とを対比する。引用発明の「傍聴端末局」は,カメラによる撮像をせず,ビデオチャットを視聴することは可能であって,テキストによる送信は可能であることから,本願発明の「条件(ii)」のオーディオビデオインターフェイスと引用発明の「傍聴端末局」とは同じ機能を有するものである。また,本願発明の「条件(i)」と引用発明の「参加端末局」の機能も同一である。したがって,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
・・・(途中省略)・・・
したがって,本願発明は引用発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易になし得たものであるから,特許法第29条第2項に基づいて,特許を受けることができない。
・・・(以下、省略)・・・』

3.本願発明について
平成25年9月30 日付けの手続補正書による特許請求の範囲の請求項1(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
対象者の住居に配置されたオーディオ/ビデオインタフェースであって、各オーディオ/ビデオインタフェースが、テレビ、ビデオ記録レンズを備えたカメラ及びマイクロフォンを有する、前記オーディオ/ビデオインタフェースと、
各住居に配置され、該住居のオーディオ/ビデオインタフェースに動作接続されるプロセッサを有する分散医療サーバと、
を有する医療通信システムであって、
前記分散医療サーバは、ネットワークを介しビデオ会議処理を実行するためのソフトウェアによりプログラムされ、
選択されたビデオ会議への参加に関して前記オーディオ/ビデオインタフェースを介し対象者から同意又は拒絶を受け付け、
条件(i)前記対象者からの同意を受け付けると、前記対象者の住居に配置された前記オーディオ/ビデオインタフェースのテレビを用いて前記ビデオ会議を視聴可能にし、前記対象者の住居に配置された前記オーディオ/ビデオインタフェースのカメラを用いて記録することにより前記ビデオ会議に参加可能にする、前記選択されたビデオ会議との参加接続を前記対象者に提供し、
条件(ii)前記選択されたビデオ会議への接続に関する前記対象者からの拒絶を受け付けると、前記対象者の住居に配置された前記オーディオ/ビデオインタフェースのテレビを用いて前記ビデオ会議を視聴可能にし、前記対象者の住居に配置された前記オーディオ/ビデオインタフェースのカメラを用いて記録されず、声の識別の可能性を低下させるためフィルタリングされる音声入力又はテキスト入力を前記不参加の対象者が提供することが可能とされる前記選択されたビデオ会議との視聴接続を前記対象者に提供する、
ことを含む医療通信システム。」

4.当審の判断
(1)引用例
(1-1)当審の拒絶の理由に引用された、特開2004-248145号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付加したものである。)

(a)「【0021】
【発明の実施の形態】
<基本構成>
図1はこの発明の一の実施の形態に係る多地点通信システムを示す基本構成図である。図1の如く、本システムは、複数の仮想チャットルーム2(2A?2D)を実現する基地局1と、当該基地局1とインターネットなどのネットワーク3(3A?3D)を介して接続され、ステージ4(4A,4B)を構成し双方向通信により映像および音声を送受信して情報交換を行う参加端末局5(5A?5F)と、オーディエンス6(6A,6B)を構成し片方向通信によりステージ4で行われる映像および音声を受信する傍聴端末局7(7A?7F)と、から構成される。
【0022】
なお、ここで、仮想チャットルーム2とは、テレビ会議を行うための基地局用のソフトウェアプログラムを、基地局1上で実行することにより実現される仮想空間である。また、各端末局5,7も、同じく自局上でテレビ会議を行うための端末局用のソフトウェアプログラムを実行することで、ネットワーク3を介して基地局1上の仮想チャットルーム2にアクセスし、会議室で会議が行われるように、テレビ会議によるコミュニケーションを実現することができる。
【0023】
また、図1では、便宜上、ネットワーク3を各ステージ4およびオーディエンス6毎に示しているが、これらは同じ回線を利用していても構わない。さらに、複数存在する仮想チャットルーム2との関係と、会議への参加態様からステージ4とオーディエンス6、参加端末局5と傍聴端末局7を、それぞれ区別して示しているが、これらは、基地局1とネットワーク3を介して接続された、同様の端末局であり、実際には各端末局上で動作するソフトウェアプログラムと、その設定によって区別される。そのため、ある仮想チャットルーム2における参加端末局5が別のチャットルーム2における傍聴端末局7である場合や、後述するように、同じ仮想チャットルーム2において、参加端末局5と傍聴端末局7とが入れ替わる場合もある。」

(b)「【0029】
端末局5,7は、図3の如く、コンピュータ装置を基本として、これに接続されたカメラ20、マイクロフォン21およびスピーカー22などの映像および音声の入出力装置から構成される。そして、後述する各機能は、コンピュータ装置上で動作するソフトウェアプログラムによって実現される。」
【0030】
参加端末局5および傍聴端末局7で動作するソフトウェアプログラムは同一のものであり、所定の設定を施すことによって、1台のコンピュータ装置が、参加端末局5および傍聴端末局7のいずれとしても動作することができる。具体的には、双方向通信を行う参加端末局5であるか、片方向通信によるデータ受信を主とする傍聴端末局7であるかは、発言権を有するか否かを元に設定されたソフトウェアプログラムの動作により変更されている。
【0031】
傍聴端末局7として機能する場合には、まず、受信処理部23が、基地局1からネットワーク3を介して、各種データを受信する。そして、受信した映像および音声データは、画像伸張処理部25および音声伸張処理部24により伸張され、映像はコンピュータ装置の備える表示装置上に表示したユーザーインターフェース26内に表示され、それと同時に映像に対応する音声がスピーカー22から出力される。また、後述するユーザーインターフェース26の変更を伴う制御データおよびウェブデータ、広告配信機能に係る広告データなどは、各処理部25?28によって処理され、ユーザーインターフェース26の変更や、広告表示などが実行される。さらに、傍聴端末局7は、基地局1およびネットワーク3を介して、他の端末局5,7に対して映像および音声を送信することはできないが、文字を主体とする小容量のデータを送信することは可能である。端末局7の表示装置上に表示されたユーザーインターフェース26において、簡単なテキストを入力したり、アイコンやボタンを操作することで入力された信号は、データ処理部29で処理され、送信処理部35から、ネットワーク3を介して基地局1へ送信される。
【0032】
参加端末局5として機能する場合には、上述した傍聴端末局7の有する機能に加えて、映像および音声の送信に係る機能を有する。カメラ20およびマイクロフォン21から入力された映像および音声は、そのまま利用する場合だけでなく、後述するプライバシー保護機能によるプライバシー保護を実現するために、変換処理が行われる場合もある。具体的には、画像合成処理部30および音声変調処理部31により、カメラ20およびマイクロフォン21から入力される映像および音声に対して、参加端末局5の利用者を特定できないような画像変換、音声変調などの変換が施される。このとき、アバター生成に係る画像データを蓄積したアバターデータベース32が、合成画像を生成するために利用される。また、これらの変換処理を施さない場合には、カメラ20およびマイクロフォン21から入力される映像および音声が、変換処理を受けず、そのままの状態で出力されるように、画像合成処理部30および音声変調処理部31の動作に係る設定を変更すればよい。そして、画像合成処理部30および音声変調処理部31から出力された映像データおよびデータは、画像圧縮処理部33および音声圧縮処理部34により圧縮処理が施され、送信処理部35から、ネットワーク3を介して基地局1に送信される。
【0033】
なお、各端末局5,7は、コンピュータ装置を基本構成とする態様に限らず、ネットワーク3を利用した通信を行うことができれば、STB(Set Top Box)を利用したテレビ装置や、PDA、携帯電話、ゲーム機、カーナビゲーションシステムなどの端末を利用する態様であっても構わない。」

以上、(a)及び(b)の記載によれば、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。
「複数の仮想チャットルーム2(2A?2D)を実現する基地局1と、当該基地局1とインターネットなどのネットワーク3(3A?3D)を介して接続され、ステージ4(4A,4B)を構成し双方向通信により映像および音声を送受信して情報交換を行う参加端末局5(5A?5F)と、オーディエンス6(6A,6B)を構成し片方向通信によりステージ4で行われる映像および音声を受信する傍聴端末局7(7A?7F)と、から構成され、
なお、ここで、仮想チャットルーム2とは、テレビ会議を行うための基地局用のソフトウェアプログラムを、基地局1上で実行することにより実現される仮想空間であり、各端末局5,7も、同じく自局上でテレビ会議を行うための端末局用のソフトウェアプログラムを実行することで、ネットワーク3を介して基地局1上の仮想チャットルーム2にアクセスし、会議室で会議が行われるように、テレビ会議によるコミュニケーションを実現することができ、
ステージ4とオーディエンス6、参加端末局5と傍聴端末局7を、それぞれ区別して示しているが、これらは、基地局1とネットワーク3を介して接続された、同様の端末局であり、実際には各端末局上で動作するソフトウェアプログラムと、その設定によって区別され、
端末局5,7は、コンピュータ装置を基本として、これに接続されたカメラ20、マイクロフォン21およびスピーカー22などの映像および音声の入出力装置から構成され、そして、各機能は、コンピュータ装置上で動作するソフトウェアプログラムによって実現され、
参加端末局5および傍聴端末局7で動作するソフトウェアプログラムは同一のものであり、所定の設定を施すことによって、1台のコンピュータ装置が、参加端末局5および傍聴端末局7のいずれとしても動作することができ、
傍聴端末局7として機能する場合には、まず、受信処理部23が、基地局1からネットワーク3を介して、各種データを受信する。そして、受信した映像および音声データは、画像伸張処理部25および音声伸張処理部24により伸張され、映像はコンピュータ装置の備える表示装置上に表示したユーザーインターフェース26内に表示され、それと同時に映像に対応する音声がスピーカー22から出力され、
傍聴端末局7は、基地局1およびネットワーク3を介して、他の端末局5,7に対して映像および音声を送信することはできないが、文字を主体とする小容量のデータを送信することは可能である。端末局7の表示装置上に表示されたユーザーインターフェース26において、簡単なテキストを入力したり、アイコンやボタンを操作することで入力された信号は、データ処理部29で処理され、送信処理部35から、ネットワーク3を介して基地局1へ送信され、
参加端末局5として機能する場合には、上述した傍聴端末局7の有する機能に加えて、映像および音声の送信に係る機能を有する。カメラ20およびマイクロフォン21から入力された映像および音声は、そのまま利用する場合だけでなく、後述するプライバシー保護機能によるプライバシー保護を実現するために、変換処理が行われる場合もあり、また、これらの変換処理を施さない場合には、カメラ20およびマイクロフォン21から入力される映像および音声が、変換処理を受けず、そのままの状態で出力されるように、画像合成処理部30および音声変調処理部31の動作に係る設定を変更すればよく、
各端末局5,7は、コンピュータ装置を基本構成とする態様に限らず、ネットワーク3を利用した通信を行うことができれば、STB(Set Top Box)を利用したテレビ装置や、PDA、携帯電話、ゲーム機、カーナビゲーションシステムなどの端末を利用する態様であっても構わない、システム。」

(1-2)当審の拒絶の理由に周知技術を示すものとして引用された、特開2005-141706号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付加したものである。)

(c)「【0006】
上記課題を解決するため、以下のシステムを構築する。
ネットワーク上に特定者間のコミュニケーションを管理するサーバー(以下、管理サーバー)を設置する。
管理サーバーに、コミュニティに参加する特定者の利用者(以下、ユーザー)情報を記録させる。
管理サーバーに、コミュニティに参加するユーザーごとに利用させるべきのコミュニケーション手段(電子メール、TV会議、TV電話、電子掲示板、IP電話、スケジュール通知等)を記録させる。管理サーバーに、コミュニティに参加するユーザーごと、利用させるべきのコミュニケーション手段ごとにコミュニケーション可能な相手を記録させる。
管理サーバーにコミュニテイ内のコミュニケーション利用履歴情報等の記録、集計、照会等を行うプログラムを設置する。
管理サーバーにアンケート結果をレポートに出力するプログラムを設置する。
ネットワークを介してクライアントマシンが管理サーバーに接続を許可する認証データをユーザーごとに発行する。
コミュニティに参加するユーザーの使用するクライアントマシンがパソコンの場合、文字入力用のキーボード、直接入力用のマウス、ディスプレイ画面直接入力用のタッチパネル、画像入力用やTV会議用やTV電話用のカメラ、画像表示用のディスプレイ、音声入力用のマイク、音声出力用のスピーカー(もしくはヘッドセット)等を設置する。
ゲーム機器の場合、直接入力用のコントローラー、画像入力用やTV会議用やTV電話用のカメラ、画像表示用のテレビ、音声入力用のマイク、音声出力用のテレビスピーカー(もしくはヘッドセット)等を設置する。
車載機器の場合、画像入力用やTV会議用やTV電話用のデジタルカメラ等を設置する。
携帯端末等の場合、必要に応じて音声出力用のヘッドセット等を設置する。
さらに、コミュニティに参加するユーザーが使用するクライアントマシンの動作環境ごとに、以下のクライアントプログラムを構築する。
コンピューターグラフィックス技術で描かれたキャラクタを用いてユーザーの操作を支援したり、管理サーバーに記録された情報に従ってユーザーのコミュニケーション手段とコミュニケーション相手を制御したり、ユーザーの利用履歴情報を管理サーバーに送信したりするエージェントプログラム。
エージェントプログラムが人の話し言葉を解釈可能にする音声認識プログラム。
エージェントプログラムが電子メール等の文字を音声で読み上げる音声合成プログラ厶。
TV会議用プログラム。
TV電話用プログラム。
電子メールプログラム。(Webメール、ビデオメール、音声メールも含む)
電子掲示板プログラム。
IP電話プログラム。
スケジュールプログラム。
緊急通報プログラム。
アンケートプログラム等。
これらを構築し、管理サーバーのアクセス先、認証データ等とともに、各ユーザーごとの
配布用媒体に記録する。
もしくは、構築した各プログラムを管理サーバーに記録し、管理サーバーのアクセス先、認証データ等を各ユーザーごとの配布用媒体に記録する。
これらにより、前述した目的を達成しようとするものである。
【発明の効果】
【0007】
以上述べたように本発明によれば、エージェントプログラムへの音声入力やタッチパネル等による簡単で迅速なコミュニケーション手段の利用が可能となり、普段パソコンやゲーム機器や携帯電話や車載機器等に接する機会の少ない高齢者や幼児などでも、簡単にコミュニティに参加することができる。
また、コミュニティの主宰者へ各利用者ごとのコミュニケーション利用履歴情報やアンケート結果情報等の提供を行うことにより、コミュニティ内の各ユーザーへの課金等を行うことができる。例えば、開業医が主宰するコミュニティでは、病院と患者の自宅を本発明のシステムで結び、遠隔診療、自宅からの日々の検査記録の報告、診察スケジュールの通知、患者の家族とのコミュニケーション等に応用できる。
また、学習塾が主宰するコミュニティでは、塾と生徒の自宅を本発明のシステ厶で結び、遠隔授業や日々の宿題の報告、生徒の親とのコミュニケーション等に応用できる。
また、介護サービス事業所が主宰するコミュニティでは、ケアマネージャーと高齢者の自宅とを本発明のシステムで結び、緊急連絡の窓口や、介護サービスのスケジュール通知、遠隔介護サービス、高齢者とその家族の間でのコミュニケーションに応用できる。
また、病院内のみで利用されるコミュニティでは、各患者の病室とナースステーションを本発明のシステムで結び、緊急連絡の窓口や、診察や食事のスケジュール通知、患者同士のコミュニケーション等に応用できる。」

(1-3)当審の拒絶の理由に周知技術を示すものとして引用された、特開2003-242252号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付加したものである。)

(d)「【0075】図9は、入院患者と家族とがテレビ電話の通話を行なう双方向の通信を示す図である。ここでは入院患者と家族との対話が、入院患者からの契機により開始する場合を例に説明する。
【0076】入院患者は、テレビ電話の通話を行なうために、病室用テレビ120に備えられている認証情報入力部123により認証の操作を行なう。認証の操作は、上述のように、指紋や認証情報を記録した入院患者の診察カード等の方式で行なうことができる。」

(e)「【0079】入院患者は、ナースコールボタン130の切り替えスイッチ132を家族との対話モードに切り替えて入力ボタン131を1回押すことにより、家族との対話の開始を指示する。
【0080】なお入力ボタン131を1回押したタイミングで切り替えスイッチ132は、自動的に元のナースコールモードに切り替わることとする。これは、ナースコールボタン130をいつでも看護婦を呼び出せる状態にする配慮のためである。これにより、ファイアウオール150、ルータ160、インターネット300を経由して通話する相手となる家族のパソコン200に接続する。するとそのパソコン200のメールソフトが通話の開始要求のダイヤログを表示し、またそのパソコン200が鳴動して通話の開始要求を通知する。
【0081】通信相手の家族は、その通話要求に気付いて、パソコン200のテレビ電話による通話機能を有すソフトウエアを起動する。これにより、入院患者の病室用テレビ120の画面に通信相手の家族が映し出されテレビ電話の通話を開始することができる。」

(1-4)当審の拒絶の理由に周知技術を示すものとして引用された、特開平11-41578号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付加したものである。)

(f)「【0023】このような構成の本実施の形態の動作を説明する。例えば、電子会議端末装置10aについて説明すると、本実施の形態では、出席者7は、匿名状態で発言をしたい時には、椅子6の前のテーブル5の下面に取り付けられている操作釦8a?8gの何れかを操作した後に発言をし、通常の状態で発言をする場合には、操作釦8a?8gを操作せずに発言をする。
【0024】何れの場合にも、映像・音声入力ユニット1のビデオカメラとマイクが、発言中の出席者7の方向に姿勢を移動して、発言中の出席者7の映像情報と音声情報とを取り込み、匿名設定器8が操作されていない場合には、音声変調制御部16と映像マスク制御部14とは、何らの制御も行なわれず、取り込まれた音声情報は、音声制御部13に入力されて増幅などの信号処理が施され、取り込まれた映像情報は、映像制御部15に入力されて圧縮やAD変換などの信号処理が施される。
【0025】そして、信号処理が施された音声信号と映像信号とには、伝送制御部17によって、データ変換を含む伝送処理が施され、伝送線18を介してコントロールユニット20に送信される。
【0026】一方、出席者7が、匿名設定器8を例えば操作スイッチ8aをONすることにより操作した場合には、音声入力部11から入力される音声情報には、音声変調制御部16によって、原音声が聴覚的に認識不能になるように変調が施され、変調が施された音声信号に対して、音声制御部13で増幅などの信号処理が施される。
【0027】また、映像入力部12から入力される映像情報には、映像マスク制御部14によつて、発言中の出席者が視覚的に識別不能になるように、モザイクを付着するマスク処理が施され、マスク処理が施された映像信号に対して、映像制御部15で圧縮やAD変換などの信号処理が施される。
【0028】そして、このように音声変調が施され信号処理された音声信号と、マスク処理が施され信号処理された映像信号とには、伝送制御部17によって、データ変換を含む伝送処理が施され、伝送線18を介してコントロールユニット20に送信される。」

(1-5)当審の拒絶の理由に周知技術を示すものとして引用された、特開2007-19671号公報(以下、「引用例5」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付加したものである。)

(g)「【0025】
動画像圧縮装置40は、撮影装置10によって撮影され、画像置換装置30によって置換された画像の画像データを圧縮する手段であり、これによって効率の良いデータ送信が行えるようになっている。
画像送信装置50は、動画像圧縮装置40で圧縮された画像データを予め指定された他の地点に送信する送信手段である。
表示方法入力装置80は、利用者が表示方法を入力・設定するための入力手段であり、タッチパネル等で構成される。
画像置換により隠蔽処理を行う場合、利用者はアバター情報格納装置70からその置換に用いる画像を検索し、選択することができる。
【0026】
アバター情報格納装置70は、上記置換に用いる画像を格納し、所定の設定に応じ、必要な画像(アバター情報)を提供するものであり、メモリやハードディスクなどの記憶媒体によって構成されている。
アバター情報は、例えば人物の漫画や背景など、様々な画像を格納させておくことによりバリエーションに富んだ隠蔽処理を施すことが可能となる。
なお、上記表示方法の設定は、表示方法設定記憶装置60に記憶される。
人物認識装置90は、RFIDや顔認識などの種々の方式により人物を認識し、特定する手段である。
この人物認識装置90は、予め個人の属性情報を自己のメモリやハードディスクなどの記憶媒体に格納しており、人物特定の際に利用される。」

(h)「【0035】
次に、画像置換装置30は、表示方法入力装置80による入力を介して、表示方法設定記憶装置60の設定をもとに、撮影装置10で撮影された画像の一部と、アバター情報格納装置70に格納してあるアバター情報を置換して描画を行う。
ここで、本実施形態に係る画像通信システムは、たとえば、前記位置情報に応じて自動的に表示方法を設定する制御を行うことも可能である。
また、オクルージョンが発生した場合は、より制限が強い人物で描画の設定がされるようにすることも可能である。
【0036】
具体的には、図4に示すように、人物Aは、アバター設定となっているため、他の画像に置換され表示される。
また人物Bは、非表示設定のため、表示されないか、もしくは背景画を用いることにより透明で表示される。
ここで、人物Cは、表示設定となっているが、人物Aとオクルージョンが発生しているため、制限の強いアバター表示、即ち、所定の置換画像により表示するように予め設定しておくことも可能である。
また人物Dは、非表示設定となっているが、撮影装置10の直前にいるため素画像を表示するなど、人物の位置に応じて表示方法を自動制御することも可能である。
そして、以上の過程を経て得られた画像は、動画像圧縮装置40で圧縮され、画像送信システム50によって目的の地点(相手側システム)へ送信され、テレビ電話やテレビ会議が行われることとなる。」

(2)対比
次に、本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「コンピュータ装置を基本として、これに接続されたカメラ20、マイクロフォン21およびスピーカー22などの映像および音声の入出力装置」と本願発明の「オーディオ/ビデオインタフェース」とを対比すると、引用発明の「マイクロフォン21」は、本願発明の「マイクロフォン」に相当している。
また、引用発明では「映像はコンピュータ装置の備える表示装置上に表示したユーザインタフェース26内に表示され、それと同時に映像に対応する音声がスピーカー22から出力され」るのであるから、引用発明の「表示装置」及び「スピーカー22」は、本願発明の「テレビ」に相当している。 また、引用発明の「カメラ20」がビデオ記録レンズを備えることは自明であるから、引用発明の「カメラ20」は本願発明の「ビデオ記録レンズを備えたカメラ」に相当している。
そうすると、引用発明の「コンピュータ装置を基本として、これに接続されたカメラ20、マイクロフォン21およびスピーカー22などの映像および音声の入出力装置」と本願発明の「オーディオ/ビデオインタフェース」とは、「テレビ、ビデオ記録レンズを備えたカメラ及びマイクロフォンを有するオーディオ/ビデオインタフェース」である点で共通している。

(イ)引用発明と本願発明の「分散医療サーバ」とを対比する。
本願発明の「分散医療サーバ」は、「各住居に配置され、該住居のオーディオ/ビデオインタフェースに動作接続されるプロセッサ」を有し、「ネットワークを介しビデオ会議処理を実行するためのソフトウェアによりプログラムされ」るものであるが、本願明細書の段落【0031】には、「図示された医療通信システムはまた、プロセッサ58と医療サーバ10とを有する分散医療サーバとみなすことが可能であり、」と記載されていることから、本願発明の「分散医療サーバ」は、更に、複数のコンピュータ装置により処理を実行する分散サーバとして機能するものと解される。
一方、引用発明は、「コンピュータ装置」が、テレビ会議を行うための端末用のソフトウェアプログラムを実行することで、ネットワークを介して基地局1上の仮想チャットルームにアクセスし、会議を行うものであることから、「コンピュータ装置」が端末用のソフトウェアプログラムを実行する「プロセッサ」を備えることは自明であり、また、引用発明の「コンピュータ装置」は、カメラ20、マイクロフォン21に接続され、更に、表示装置を備えるものであるから、「コンピュータ装置」の「プロセッサ」は、オーディオ/ビデオインタフェースに動作接続されるものといえる。
更に、引用発明は、「コンピュータ装置」と「基地局1」とがネットワークを介して会議を行うなうものであることから、複数のコンピュータ装置により処理を実行する分散サーバとして機能しているといえる。
そうすると、引用発明と本願発明の「分散医療サーバ」とは、「テレビ、ビデオ記録レンズを備えたカメラ及びマイクロフォンを有するオーディオ/ビデオインタフェースに動作接続されるプロセッサを有する分散サーバであって、ネットワークを介してビデオ会議処理を実行するためのソフトウェアによりプログラムされている」点で共通している。

(ウ)引用発明の「コンピュータ装置」が傍聴端末局7として機能する場合、基地局1からネットワーク3を介して受信した映像および音声データを、画像伸張処理部25および音声伸張処理部24により伸張し、映像はコンピュータ装置の備える表示装置上に表示し、それと同時に映像に対応する音声がスピーカー22から出力され、更に、テキストを入力してネットワーク3を介して基地局1へ送信することができる。
したがって、引用発明の「システム」と本願発明の「分散医療システム」は、「条件(ii)対象者のオーディオ/ビデオインタフェースのテレビを用いてビデオ会議を視聴可能にし、テキスト入力を対象者が提供することが可能とされる前記ビデオ会議との視聴接続を前記対象者に提供する」点で共通している。

(エ)引用発明の「コンピュータ装置」が参加端末局5として機能する場合、傍聴端末局7の有する機能に加えて、カメラ20およびマイクロフォン21から入力される映像および音声を送信に係る機能を有している。
したがって、引用発明の「システム」と本願発明の「分散医療システム」は、「条件(i)対象者のオーディオ/ビデオインタフェースのテレビを用いてビデオ会議を視聴可能にし、前記対象者の前記オーディオ/ビデオインタフェースのカメラを用いて記録することにより前記ビデオ会議に参加可能にする、前記ビデオ会議との接続を前記対象者に提供する」点で共通している。

(オ)以上の(ア)乃至(エ)から、本願発明と引用発明は、
「テレビ、ビデオ記録レンズを備えたカメラ及びマイクロフォンを有する、オーディオ/ビデオインタフェースと、
前記オーディオ/ビデオインタフェースに動作接続されるプロセッサを有する分散サーバと、
を有するシステムであって、
前記分散サーバは、ネットワークを介しビデオ会議処理を実行するためのソフトウェアによりプログラムされ、
条件(i)対象者のオーディオ/ビデオインタフェースのテレビを用いてビデオ会議を視聴可能にし、前記対象者の前記オーディオ/ビデオインタフェースのカメラを用いて記録することにより前記ビデオ会議に参加可能にする、前記ビデオ会議との接続を前記対象者に提供し、
条件(ii)対象者のオーディオ/ビデオインタフェースのテレビを用いてビデオ会議を視聴可能にし、テキスト入力を対象者が提供することが可能とされる前記ビデオ会議との視聴接続を前記対象者に提供する、ことを含むシステム」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明の「オーディオ/ビデオインタフェース」と「プロセッサ」は、対象者の住居に配置されているのに対し、引用発明の「カメラ20」、「マイクロフォン21」及び「表示装置」と、「コンピュータ装置」の「プロセッサ」は、対象者の住居に配置されるのかどうか不明である点。

[相違点2]
本願発明は、「分散医療サーバ」を有する「医療通信システム」であるのに対し、引用発明は、医療用途に用いることについて言及されていない点。

[相違点3]
本願発明は、選択されたビデオ会議への参加に関してオーディオ/ビデオインタフェースを介し対象者から同意又は拒絶を受け付け、対象者からの同意を受け付けるか、対象者からの拒絶を受け付けるかに応じて、条件(i)か条件(ii)を選択するのに対し、
引用発明は、設定によって条件(i)か条件(ii)を選択するものであり、選択されたビデオ会議への参加に関して対象者から同意又は拒絶を受け付けるようになっていない点。

[相違点4]
本願発明では、条件(ii)で動作する場合、カメラを用いて記録されないのに対し、引用発明では、条件(ii)で動作する場合、傍聴端末局7は映像を送信することはできないものの、カメラを用いて映像を記録するのか否か不明である点。

(3)当審の判断
(3-1)相違点1について
住居に配置されているカメラやテレビ等のインタフェース及びプロセッサを備えるコンピュータ装置を利用して、ネットワークに接続された他のコンピュータ装置の利用者と映像や音声によるコミュニケーションを行うことは、例えば引用例2に「例えば、開業医が主宰するコミュニティでは、病院と患者の自宅を本発明のシステムで結び」、「介護サービス事業者が主宰するコミュニティでは、ケアマネージャーと高齢者の自宅とを本発明のシステムで結び」と記載されているように、普通に行われることである。
してみれば、引用発明において、カメラやテレビ等のインタフェース及びコンピュータ装置のプロセッサを住居に配置し、ビデオ会議に用いることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(3-2)相違点2について
例えば、引用例2や引用例3に記載されているように、ビデオ会議システムを遠隔診療やケアマネージなどの医療分野に用いることは周知技術である。
そして、引用発明の用途を何にするかは任意であるから、引用発明において前記周知技術を採用して医療用途のビデオ会議のために用いることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(3-3)相違点3について
引用発明では、基地局1が複数の仮想チャットルーム2(2A?2D)を実現しており、端末局5,7が複数の仮想チャットルームから会議を行う仮想チャットルームを選択してアクセスすることは自明であるから、引用発明も「選択されたビデオ会議への参加に関して」、条件(i)か条件(ii)の設定を行うものであることは明らかである。

また、例えば、引用例4に、電子会議において匿名で発言したいときに匿名設定器を操作することで、発言者が識別不能になるように映像にマスクし、音声を変調することが記載されているように、また、引用例5に、ビデオ会議システムにおいて利用者が表示方法を入力・設定することで、その利用者を非表示にしたりアバターにしたりすることが記載されているように、ビデオ会議システムにおいて利用者の開示又は非開示に関する意思を受け付けてビデオ会議での公開状態を選択することは、周知技術である。
そして、引用発明は、参加端末局として機能するか傍聴端末局として機能するかによって、他の端末局に対して映像および音声を送信するか否かが決まるものであるから、引用発明において前記周知技術を採用して、他の端末局に対して映像および音声を送信することに同意するか拒絶するかの意思を受け付け、同意を受け付けると、コンピュータ装置を参加端末局として機能するように設定して映像および音声を送信するようにし、拒絶を受け付けると、コンピュータ装置を傍聴端末局として機能するように設定して映像および音声を送信しないようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(3-4)相違点4について
一般に、利用しない機能を動作させないことは普通に行われていることである。そして、引用発明では、傍聴端末局7として機能する場合に、映像を送信できないのであるから、カメラを用いて映像を記録する機能を利用する必要がないものある。
してみれば、引用発明において、傍聴端末局7として機能する場合に、カメラを用いて映像を記録する機能を動作させず、記録されないようにすることは、当業者が適宜実施し得る程度の設計事項である。

(3-5)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-28 
結審通知日 2015-06-02 
審決日 2015-06-17 
出願番号 特願2009-547786(P2009-547786)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青柳 光代  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 緑川 隆
石川 正二
発明の名称 インタラクティブ患者フォーラム  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ