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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1307266
審判番号 不服2014-13069  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-04 
確定日 2015-10-28 
事件の表示 特願2012-548325「UEの多重搬送波に対するサポート能力の情報の伝送方法及び伝送システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月21日国際公開、WO2011/085608、平成25年 5月16日国内公表、特表2013-517651〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)10月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年1月15日、中国)を国際出願日とする国際出願であって、平成24年9月18日付けで手続補正書が提出され、平成25年10月8日付けで拒絶理由が通知され、平成26年1月22日付けで手続補正書が提出され、同年2月24日付けで拒絶査定がなされた。
これに対して、平成26年7月4日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、手続補正書が提出されたものである。



第2.平成26年7月4日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年7月4日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)を却下する。

[理由]
1.平成26年7月4日付けの手続補正書の補正の内容
本件補正は、平成26年1月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の記載を、本件補正後の特許請求の範囲の記載に変更するものであって、その本件補正前の特許請求の範囲、及び、本件補正後の特許請求の範囲の記載は、それぞれ、以下のとおりである(なお、下線は請求人が付与した。)。

<本件補正前の特許請求の範囲>
「【請求項1】
端末(UE:User Equipment)の多重搬送波に対するサポート能力の情報の伝送方法であって、
UEが多重搬送波をサポートする場合、前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信し、
前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信するステップは、
無線リソース制御接続要求(Radio Resource Control(RRC) Connection Request)メッセージに、UEの多重搬送波に対するサポート能力の指標情報要素を新規に設定し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記指標情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする伝送方法。
【請求項2】
前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信するステップは、
R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素の値を拡張し、拡張後の値は、UEによってサポートされる多重搬送波の数についての能力を示すことに用いられ、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記拡張された情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の伝送方法。
【請求項3】
前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信するステップは、
高速ダウンリンク共有チャネル物理層カテゴリ(High Speed-Downlink Shared CHannel(HS-DSCH) physical layer category)のレベルを拡張して、UEの多重搬送波に対するサポート能力のレベルを追加し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記拡張されたHS-DSCH physical layer categoryを含む無線リソース制御接続確立完了(RRC Connection Setup Complete)メッセージ又はUE能力情報(UE Capability Information)メッセージを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の伝送方法。
【請求項4】
前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信するステップは、
アクセス層リリースインジケーター(Access stratum release indicator)情報要素と、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素とを用いて、UEの多重搬送波に対するサポート能力を示し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記Access stratum release indicator情報要素と、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素とを含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の伝送方法。
【請求項5】
前記Access stratum release indicator情報要素と、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素とを含むRRC Connection Requestメッセージを送信するステップは、
前記Access stratum release indicator情報要素の値がR8であり、且つRRC Connection RequestメッセージにR8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素が含まれる場合、前記UEがダウンリンク二重搬送波に対するサポート能力を持つことを示し、
前記Access stratum release indicator情報要素の値がR10であり、且つRRC Connection RequestメッセージにR8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素が含まれる場合、前記UEがダウンリンク多重搬送波に対するサポート能力とアップリンク二重搬送波に対するサポート能力とを持つことを示し、前記ダウンリンク多重搬送波の数は2より大きい
ことを特徴とする請求項4に記載の伝送方法。
【請求項6】
端末(UE:User Equipment)であって、
UEが多重搬送波をサポートする場合、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信し、
前記UEは、さらに、
無線リソース制御接続要求(Radio Resource Control(RRC) Connection Request)メッセージに、UEの多重搬送波に対するサポート能力の指標情報要素を新規に設定し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記指標情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とするUE。
【請求項7】
前記UEは、さらに、
R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素の値を拡張し、拡張後の値は、UEによってサポートされる多重搬送波の数についての能力を示すことに用いられ、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記拡張された情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする請求項6に記載のUE。
【請求項8】
前記UEは、さらに、
高速ダウンリンク共有チャネル物理層カテゴリ(High Speed-Downlink Shared CHannel(HS-DSCH) physical layer category)のレベルを拡張して、UEの多重搬送波に対するサポート能力のレベルを追加し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記拡張されたHS-DSCH physical layer categoryを含む無線リソース制御接続確立完了(RRC Connection Setup Complete)メッセージ又はUE能力情報(UE Capability Information)メッセージを送信する
ことを特徴とする請求項6に記載のUE。
【請求項9】
前記UEは、さらに、
アクセス層リリースインジケーター(Access stratum release indicator)情報要素と、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素とを用いて、UEの多重搬送波に対するサポート能力を示し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記Access stratum release indicator情報要素と、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素とを含むRRC Connection Requestメッセージを送信する ことを特徴とする請求項6に記載のUE。
【請求項10】
前記Access stratum release indicator情報要素の値がR8であり、且つRRC Connection Requestメッセージに、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素が含まれる場合、前記UEがダウンリンク二重搬送波に対するサポート能力を持つことを示し、
前記Access stratum release indicator情報要素の値がR10であり、且つRRC Connection RequestメッセージにR8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素が含まれる場合、前記UEがダウンリンク多重搬送波に対するサポート能力とアップリンク二重搬送波に対するサポート能力とを持つことを示し、前記ダウンリンク多重搬送波の数は2より大きい
ことを特徴とする請求項9に記載のUE。」

<本件補正後の特許請求の範囲>
「【請求項1】
端末(UE:User Equipment)の多重搬送波に対するサポート能力の情報の伝送方法であって、
UEが多重搬送波をサポートする場合、前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信し、
前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信するステップは、
無線リソース制御接続要求(Radio Resource Control(RRC) Connection Request)メッセージに、UEの多重搬送波に対するサポート能力の指標情報要素を新規に設定し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記指標情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを送信し、
無線ネットワーク制御装置(RNC:Radio Network Controller)が、前記UEから受信された、前記UEの多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを解析し、前記UEの多重搬送波に対するサポート能力の情報を取得し、
前記RNCがUEの多重搬送波に対するサポート能力の情報を取得した後、さらに、前記RNCが、多重搬送波セルを利用してサービスを受信することを決定し、
前記RNCが、多重搬送波セルを利用してサービスを受信することを決定することは、
前記RNCが、ノードB(NodeB)に送信される無線リンク確立要求メッセージ又は無線リンク再構成要求メッセージに含められる補助搬送波セル情報を生成し、
UEに送信される無線ベアラ確立メッセージ又は無線ベアラ再構成メッセージに含められる補助搬送波セル情報を生成することを含む
ことを特徴とする伝送方法。
【請求項2】
前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信するステップは、
R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素の値を拡張し、拡張後の値は、UEによってサポートされる多重搬送波の数についての能力を示すことに用いられ、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記拡張された情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の伝送方法。
【請求項3】
前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信するステップは、
高速ダウンリンク共有チャネル物理層カテゴリ(High Speed-Downlink Shared CHannel(HS-DSCH) physical layer category)のレベルを拡張して、UEの多重搬送波に対するサポート能力のレベルを追加し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記拡張されたHS-DSCH physical layer categoryを含む無線リソース制御接続確立完了(RRC Connection Setup Complete)メッセージ又はUE能力情報(UE Capability Information)メッセージを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の伝送方法。
【請求項4】
前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信するステップは、
アクセス層リリースインジケーター(Access stratum release indicator)情報要素と、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素とを用いて、UEの多重搬送波に対するサポート能力を示し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記Access stratum release indicator情報要素と、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素とを含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の伝送方法。
【請求項5】
前記Access stratum release indicator情報要素と、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素とを含むRRC Connection Requestメッセージを送信するステップは、
前記Access stratum release indicator情報要素の値がR8であり、且つRRC Connection RequestメッセージにR8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素が含まれる場合、前記UEがダウンリンク二重搬送波に対するサポート能力を持つことを示し、
前記Access stratum release indicator情報要素の値がR10であり、且つRRC Connection RequestメッセージにR8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素が含まれる場合、前記UEがダウンリンク多重搬送波に対するサポート能力とアップリンク二重搬送波に対するサポート能力とを持つことを示し、前記ダウンリンク多重搬送波の数は2より大きい
ことを特徴とする請求項4に記載の伝送方法。
【請求項6】
端末(UE:User Equipment)の多重搬送波に対するサポート能力の情報の伝送システムであって、
UEが多重搬送波をサポートする場合、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信し、
前記UEは、さらに、
無線リソース制御接続要求(Radio Resource Control(RRC) Connection Request)メッセージに、UEの多重搬送波に対するサポート能力の指標情報要素を新規に設定し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記指標情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを送信し、
無線ネットワーク制御装置(RNC:Radio Network Controller)が、前記UEから受信された、前記UEの多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを解析し、前記UEの多重搬送波に対するサポート能力の情報を取得し、
前記RNCがUEの多重搬送波に対するサポート能力の情報を取得した後、さらに、前記RNCが、多重搬送波セルを利用してサービスを受信することを決定し、
前記RNCが、多重搬送波セルを利用してサービスを受信することを決定することは、
前記RNCが、ノードB(NodeB)に送信される無線リンク確立要求メッセージ又は無線リンク再構成要求メッセージに含められる補助搬送波セル情報を生成し、
UEに送信される無線ベアラ確立メッセージ又は無線ベアラ再構成メッセージに含められる補助搬送波セル情報を生成することを含む
ことを特徴とするシステム。
【請求項7】
前記UEは、さらに、
R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素の値を拡張し、拡張後の値は、UEによってサポートされる多重搬送波の数についての能力を示すことに用いられ、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記拡張された情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記UEは、さらに、
高速ダウンリンク共有チャネル物理層カテゴリ(High Speed-Downlink Shared CHannel(HS-DSCH) physical layer category)のレベルを拡張して、UEの多重搬送波に対するサポート能力のレベルを追加し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記拡張されたHS-DSCH physical layer categoryを含む無線リソース制御接続確立完了(RRC Connection Setup Complete)メッセージ又はUE能力情報(UE Capability Information)メッセージを送信する
ことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記UEは、さらに、
アクセス層リリースインジケーター(Access stratum release indicator)情報要素と、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素とを用いて、UEの多重搬送波に対するサポート能力を示し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記Access stratum release indicator情報要素と、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素とを含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記Access stratum release indicator情報要素の値がR8であり、且つRRC Connection Requestメッセージに、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素が含まれる場合、前記UEがダウンリンク二重搬送波に対するサポート能力を持つことを示し、
前記Access stratum release indicator情報要素の値がR10であり、且つRRC Connection RequestメッセージにR8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素が含まれる場合、前記UEがダウンリンク多重搬送波に対するサポート能力とアップリンク二重搬送波に対するサポート能力とを持つことを示し、前記ダウンリンク多重搬送波の数は2より大きい
ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。」

すなわち、本件補正は、以下の補正を含んでいる。
(1)本件補正前の請求項1及び6において、
「 無線ネットワーク制御装置(RNC:Radio Network Controller)が、前記UEから受信された、前記UEの多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを解析し、前記UEの多重搬送波に対するサポート能力の情報を取得し、
前記RNCがUEの多重搬送波に対するサポート能力の情報を取得した後、さらに、前記RNCが、多重搬送波セルを利用してサービスを受信することを決定し、
前記RNCが、多重搬送波セルを利用してサービスを受信することを決定することは、
前記RNCが、ノードB(NodeB)に送信される無線リンク確立要求メッセージ又は無線リンク再構成要求メッセージに含められる補助搬送波セル情報を生成し、
UEに送信される無線ベアラ確立メッセージ又は無線ベアラ再構成メッセージに含められる補助搬送波セル情報を生成することを含む」(以下、「補正1の付加事項」という。)ことを付加する補正(以下、「補正1」という。)。

(2)本件補正前の請求項6?10の末尾の記載が「端末」であったものを「システム」とするとともに、本件補正前の請求項6の「端末(UE:User Equipment)」なる記載を「端末(UE:User Equipment)の多重搬送波に対するサポート能力の情報の伝送システム」なる記載とする補正(以下、「補正2」という。)。


2.補正の根拠についての請求人の主張
平成26年7月4日付け審判請求書において、請求人は、補正の根拠について、
「3.補正の説明
補正後の請求項1及び請求項6に係る補正事項は、本願出願当初明細書の段落[0038]?[0040]、[0061]?[0062]等の記載に基づいており、新規事項の追加に該当するものではありません。なお、補正後の請求項6?10では、主題について、「端末(UE)」から「システム」に変更する補正を行っております。」
と主張している。


3.補正1について
3-1.新規事項の有無
(ア)願書に最初に添付された特許請求の範囲には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
端末(UE:User Equipment)の多重搬送波に対するサポート能力の情報の伝送方法であって、
UEが多重搬送波をサポートする場合、前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信する
ことを特徴とする伝送方法。
【請求項2】
前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信するステップは、
無線リソース制御接続要求(Radio Resource Control(RRC) Connection Request)メッセージに、UEの多重搬送波に対するサポート能力の指標情報要素を新規に設定し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記指標情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の伝送方法。
【請求項3】
前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信するステップは、
R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素の値を拡張し、拡張後の値は、UEによってサポートされる多重搬送波の数についての能力を示すことに用いられ、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記拡張された情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の伝送方法。
【請求項4】
前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信するステップは、
高速ダウンリンク共有チャネル物理層カテゴリ(High Speed-Downlink Shared CHannel(HS-DSCH) physical layer category)のレベルを拡張して、UEの多重搬送波に対するサポート能力のレベルを追加し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記拡張されたHS-DSCH physical layer categoryを含む無線リソース制御接続確立完了(RRC Connection Setup Complete)メッセージ又はUE能力情報(UE Capability Information)メッセージを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の伝送方法。
【請求項5】
前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信するステップは、
アクセス層リリースインジケーター(Access stratum release indicator)情報要素と、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素とを用いて、UEの多重搬送波に対するサポート能力を示し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記Access stratum release indicator情報要素と、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素とを含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の伝送方法。
【請求項6】
前記Access stratum release indicator情報要素と、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素とを含むRRC Connection Requestメッセージを送信するステップは、
前記Access stratum release indicator情報要素の値がR8であり、且つRRC Connection RequestメッセージにR8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素が含まれる場合、前記UEがダウンリンク二重搬送波に対するサポート能力を持つことを示し、
前記Access stratum release indicator情報要素の値がR10であり、且つRRC Connection RequestメッセージにR8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素が含まれる場合、前記UEがダウンリンク多重搬送波に対するサポート能力とアップリンク二重搬送波に対するサポート能力とを持つことを示し、前記ダウンリンク多重搬送波の数は2より大きい
ことを特徴とする請求項5に記載の伝送方法。
【請求項7】
端末(UE:User Equipment)の多重搬送波に対するサポート能力の情報の取得方法であって、
無線ネットワーク制御装置(RNC:Radio Network Controller)が、UEから受信された、前記UEの多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを解析し、
前記UEの多重搬送波に対するサポート能力の情報を取得する
ことを特徴とする取得方法。
【請求項8】
前記RNCがUEの多重搬送波に対するサポート能力の情報を取得した後、さらに、前記RNCが、多重搬送波セルを利用してサービスを受信することを決定し、
前記RNCが、多重搬送波セルを利用してサービスを受信することを決定するステップは、
前記RNCが、ノードB(NodeB)に送信される無線リンク確立要求メッセージ又は無線リンク再構成要求メッセージに含められる補助搬送波セル情報を生成し、
UEに送信される無線ベアラ確立メッセージ又は無線ベアラ再構成メッセージに含められる補助搬送波セル情報を生成する
ことを特徴とする請求項7に記載の取得方法。
【請求項9】
前記RNCは、サービスのサービス品質(QoS:Quality of Service)属性、UEの多重搬送波に対するサポート能力及びセル能力に応じて、多重搬送波セルを利用してサービスを受信することを決定する
ことを特徴とする請求項8に記載の取得方法。
【請求項10】
端末(UE:User Equipment)であって、
UEが多重搬送波をサポートする場合、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信する
ことを特徴とするUE。
【請求項11】
前記UEは、さらに、
無線リソース制御接続要求(Radio Resource Control(RRC) Connection Request)メッセージに、UEの多重搬送波に対するサポート能力の指標情報要素を新規に設定し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記指標情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする請求項10に記載のUE。
【請求項12】
前記UEは、さらに、
R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素の値を拡張し、拡張後の値は、UEによってサポートされる多重搬送波の数についての能力を示すことに用いられ、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記拡張された情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする請求項10に記載のUE。
【請求項13】
前記UEは、さらに、
高速ダウンリンク共有チャネル物理層カテゴリ(High Speed-Downlink Shared CHannel(HS-DSCH) physical layer category)のレベルを拡張して、UEの多重搬送波に対するサポート能力のレベルを追加し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記拡張されたHS-DSCH physical layer categoryを含む無線リソース制御接続確立完了(RRC Connection Setup Complete)メッセージ又はUE能力情報(UE Capability Information)メッセージを送信する
ことを特徴とする請求項10に記載のUE。
【請求項14】
前記UEは、さらに、
アクセス層リリースインジケーター(Access stratum release indicator)情報要素と、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素とを用いて、UEの多重搬送波に対するサポート能力を示し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記Access stratum release indicator情報要素と、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素とを含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする請求項10に記載のUE。
【請求項15】
前記Access stratum release indicator情報要素の値がR8であり、且つRRC Connection Requestメッセージに、R8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素が含まれる場合、前記UEがダウンリンク二重搬送波に対するサポート能力を持つことを示し、
前記Access stratum release indicator情報要素の値がR10であり、且つRRC Connection RequestメッセージにR8プロトコルにおけるUEの二重搬送波に対するサポート能力の情報要素が含まれる場合、前記UEがダウンリンク多重搬送波に対するサポート能力とアップリンク二重搬送波に対するサポート能力とを持つことを示し、前記ダウンリンク多重搬送波の数は2より大きい
ことを特徴とする請求項14に記載のUE。
【請求項16】
無線ネットワーク制御装置(RNC:Radio Network Controller)であって、
UEから受信された、前記UEの多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを解析し、
前記UEの多重搬送波に対するサポート能力の情報を取得する
ことを特徴とする無線ネットワーク制御装置。
【請求項17】
前記RNCは、さらに、UEの多重搬送波に対するサポート能力を取得した後、多重搬送波セルを利用してサービスを受信することを決定し、
前記RNCが、NodeBに送信される無線リンク確立要求メッセージ又は無線リンク再構成要求メッセージに補助搬送波セル情報を含ませ、且つUEに送信される無線ベアラ確立メッセージ又は無線ベアラ再構成メッセージに補助搬送波セル情報を含ませる
ことを特徴とする請求項16に記載のRNC。
【請求項18】
前記RNCは、さらに、
サービスのサービス品質(QoS:Quality of Service)属性、UEの多重搬送波に対するサポート能力及びセル能力に応じて、多重搬送波セルを利用してサービスを受信することを決定する
ことを特徴とする請求項17に記載のRNC。」

(イ)願書に最初に添付された明細書の段落【0038】?【0040】には、以下の事項が記載されている。
「【0038】
本発明に係る第1実施形態では、RRC Connection Requestメッセージに、UEの多重搬送波に対するサポート能力を示するための、UEの多重搬送波に対するサポート能力の指標情報要素を新規に追加する。当該指標情報要素は多重搬送波サポート(Multi Carrier Support)情報要素であってもよい。そのプロトコルが表1に示されている。
【0039】

【0040】
図1に示すように、UEが多重搬送波に対するサポート能力を持つ場合、UEは、その値がTRUEに設定されたMulti Carrier Support情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを生成する。そして、UEは、RRC Connection RequestメッセージをRNCに送信する。RNCは、受信されたRRC Connection Requestメッセージを解析し、そしてメッセージにおけるMulti Carrier Support情報要素に応じて、メッセージを送信したUEが多重搬送波をサポートする能力を持つことを認識することができる。」

(ウ)同段落【0061】?【0062】には、以下の事項が記載されている。
「【0061】
また、RNCは、更に、UEの多重搬送波に対するサポート能力の情報を取得した後、サービスのQoS属性、UEの多重搬送波に対するサポート能力及びセル能力に応じて、多重搬送波セルを利用してサービスを受信するかどうかを判定する。
【0062】
具体的には、RNCが、QoS属性、UEの多重搬送波に対するサポート能力及びセル能力に応じて、サービスが多重搬送波をサポートすると判定した場合、RNCは、NodeBに送信される無線リンク確立要求メッセージ又は無線リンク再構成要求メッセージに補助搬送波セル情報を含ませる。また、RNCは、UEに送信される無線ベアラ確立メッセージ又は無線ベアラ再構成メッセージに補助搬送波セル情報をませる。」

そして、補正1の付加事項は、上記(イ)及び(ウ)の摘記事項に言及するまでもなく、上記(ア)で摘記したように、願書に最初に添付された特許請求の範囲の【請求項7】、【請求項8】に記載された事項である。
このため、補正1は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面の記載の範囲内で行われた補正であるといえ、特許法第17条の2第3項の規定を満たしている。

3-2.補正の目的
補正1は、本件補正前の請求項1及び6に係る発明に対して、補正1の付加事項を付加するもの、すなわち、本件補正前の請求項1及び6に係る発明に対して、願書に最初に添付された特許請求の範囲の【請求項7】を引用する同【請求項8】に係る発明を付加する補正であるため、発明特定事項の直列的付加に該当する。
しかしながら、補正1の付加事項は、無線ネットワーク制御装置(RNC:Radio Network Controller)を限定する事項であるが、該無線ネットワーク制御装置は、本件補正前の請求項1に記載された事項、すなわち、特許法第17条の2第5項第2号で規定する「発明を特定するための事項」でないため、補正1が補正前の請求項に記載された発明の発明特定事項の限定に該当しない。
このため、補正1は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正にあたらない。

また、補正1が特許法第17条の2第5項第1号、第3号或いは第4号が規定する、請求項の削除、誤記の訂正或いは明りょうでない記載の釈明を目的とする補正のいずれにもあたらない。

してみると、補正1は、特許法第17条の2第5項各号の規定の何れを目的とする補正であるとはいえない。

3-3.まとめ
補正1は、特許法第17条の2第5項各号の規定の何れを目的とする補正であるとはいえないため、特許法第17条の2第5項の規定に違反する。


4.補正2について
4-1.新規事項の有無
(エ)願書に最初に添付された特許請求の範囲には、以下の事項が記載されている。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク通信における多重搬送波技術に関し、特に、UEの多重搬送波に対するサポート能力の情報の伝送方法及び伝送システムに関する。」

上記(エ)で摘記した事項からみて、「システム」及び「UEの多重搬送波に対するサポート能力の情報の伝送システム」が、願書に最初に添付された明細書に記載された事項であるといえる。
このため、補正2は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面の記載の範囲内で行われた補正であるといえ、特許法第17条の2第3項の規定を満たしている。

4-2.補正の目的
補正2において、本件補正前の請求項6?10の末尾の記載が「端末」であったものを「システム」とするとともに、本件補正前の請求項6の「端末(UE:User Equipment)」なる記載を「端末(UE:User Equipment)の多重搬送波に対するサポート能力の情報の伝送システム」なる記載とする補正は、上記「2.補正の根拠についての請求人の主張」において、請求人が主張しているように、請求項6?10に係る発明の主題を変更する補正である。
補正2のように発明の主題を変更する補正が、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正或いは明りょうでない記載の釈明のいずれにもあたらないことは明らかである。

してみると、補正2は、特許法第17条の2第5項各号の規定の何れを目的とする補正であるとはいえない。

4-3.まとめ
補正2は、特許法第17条の2第5項各号の規定の何れを目的とする補正であるとはいえないため、特許法第17条の2第5項の規定に違反する。


5.むすび
よって、補正1及び2は特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3.本願発明について
1.本願発明
平成26年7月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10係る発明は、平成26年1月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
端末(UE:User Equipment)の多重搬送波に対するサポート能力の情報の伝送方法であって、
UEが多重搬送波をサポートする場合、前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信し、
前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信するステップは、
無線リソース制御接続要求(Radio Resource Control(RRC) Connection Request)メッセージに、UEの多重搬送波に対するサポート能力の指標情報要素を新規に設定し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記指標情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする伝送方法。」


2.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された中国特許出願公開第1741674号明細書(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている(なお、当審訳の下線は当審が付与した。)。

(ア)「

」(公報第8頁(説明書第4頁)第4行目?第19行目)
(当審訳)
「 相対的に、本発明におけるユーザ装置のマルチキャリア周波数能力を取得するための方法は、以下を含んでいてもよい:
a、ユーザ装置の能力メッセージの内容を拡張し、ユーザ装置のマルチキャリア周波数能力パラメータを追加する;
b、ユーザ装置は、無線ネットワークコントローラに、前記拡張された能力メッセージを送信する;
c、無線ネットワークコントローラは、前記拡張された能力メッセージに基づいて、ユーザ装置のマルチキャリア周波数能力を判断する。

好ましくは、ステップaにおける前記「ユーザ装置の能力メッセージの内容を拡張する」とは、以下のようなオプション方式を用いることが良い:
s1、ユーザ装置能力メッセージの既存セルにおいて、マルチキャリア周波数能力パラメータ情報を追加する; または、
s2、ユーザ装置能力メッセージにおいて、マルチキャリア周波数能力を表す新しいマルチキャリア周波数能力パラメータセルを追加する。

好ましくは、前記「ユーザ装置能力メッセージ」とは、以下であるとよい:
ユーザ装置が無線リソース制御接続を確立するプロセスにおいて、ユーザ装置から報告された無線リソース制御接続要求メッセージ; または
ネットワークがユーザ装置の能力を照合するプロセスにおいて、ユーザ装置から報告されたユーザ装置能力情報メッセージ; または
サービング無線ネットワークコントローラの再配置プロセスにおいて、ソース無線ネットワークコントローラが目標無線ネットワークコントローラに送信した再配置要求メッセージ。」

(イ)「

」(公報第9頁(説明書第5頁)第4行目?第11行目)
(当審訳)
「 好ましくは、ステップcは、以下を含んでいることがよい:
c1、無線ネットワークコントローラは、ユーザ装置から報告された能力メッセージにおけるマルチキャリア周波数能力パラメータが、マルチキャリア周波数をサポートできるか否かを判断する、該パラメータが、マルチキャリア周波数をサポートできると判明した場合、該ユーザ装置がマルチキャリア周波数をサポートできると判定してもよい、そうでない場合、該ユーザ装置がマルチキャリア周波数をサポートできないと判定してもよい。

好ましくは、ステップc0は、また以下を含んでいることがよい:
無線ネットワークコントローラは、まず、ユーザ装置から報告された能力メッセージに、マルチキャリア周波数能力パラメータが含まれているか否かを検出する;マルチキャリア周波数能力パラメータが含まれていなかった場合、ユーザ装置がマルチキャリア周波数をサポートできないと判定し、マルチキャリア周波数能力パラメータが含まれていた場合、引き続きステップc1を実行するものとする。」

(ウ)「

」(公報第15頁(説明書第11頁)第3行目?第8行目)
(当審訳)
「 以下に、ユーザ装置メッセージを修正するための第2の方式、すなわちユーザ装置能力メッセージにおいてマルチキャリア周波数能力を表す新規のマルチキャリア周波数能力パラメータセルを追加するという方式について詳述する。次に、上述のような3つのユーザ装置能力メッセージを例に取り、詳述することとする。

ユーザ装置が無線リソース制御接続を確立するプロセスにおいて、ユーザ装置により報告された無線リソース制御接続要求メッセージについて、該RRC CONNECTION REQUEST(RRC接続要求)メッセージに、前記マルチキャリア周波数能力パラメータセルのメッセージ内容が追記/追加されている。詳しくは、表3に示した通りである。」

(エ)「

」(公報第17頁(説明書第13頁)下から第2行目?公報第18頁(説明書第14頁)第1行目)
(当審訳)
「 そのうち、multiCarrierIndicator(マルチキャリアインジケータ)がsupport(サポート)として設定された場合、UEはマルチキャリア周波数をサポートすることを意味する;そうでない場合、(UEは、)マルチキャリア周波数をサポートしないことを意味する。UEにより報告されたメッセージにmultiCaarrierIndicator(マルチキャリアインジケータ)セルが含まれていなかった場合、デフォルト(初期設定)では、UEがマルチキャリア周波数をサポートしないことと認識することになっている。」

してみると、上記(ア)?(エ)の摘記事項を、技術常識に照らし合わせれば、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「 ユーザ装置のマルチキャリア周波数能力を取得するための方法であって、
ユーザ装置の能力メッセージの内容を拡張し、ユーザ装置のマルチキャリア周波数能力パラメータを追加し、
ユーザ装置は、無線ネットワークコントローラに、前記拡張された能力メッセージを送信し、
ユーザ装置の能力メッセージの内容を拡張することは、ユーザ装置能力メッセージの既存セルにおいて、マルチキャリア周波数能力パラメータ情報を追加することであり、
ユーザ装置能力メッセージは、ユーザ装置が無線リソース制御接続を確立するプロセスにおいて、ユーザ装置から報告された無線リソース制御接続要求メッセージであり、
無線ネットワークコントローラは、マルチキャリア周波数能力パラメータが含まれていなかった場合、ユーザ装置がマルチキャリア周波数をサポートできないと判定する
方法」


3.対比・判断
引用発明は、「ユーザ装置のマルチキャリア周波数能力を取得するための方法であって」、「ユーザ装置は、無線ネットワークコントローラに、前記拡張された能力メッセージを送信し」ているとともに、「無線ネットワークコントローラは、マルチキャリア周波数能力パラメータが含まれていなかった場合、ユーザ装置がマルチキャリア周波数をサポートできないと判定」している。
ここで、マルチキャリア周波数能力パラメータはユーザ装置の能力メッセージの拡張により追加されたパラメータであるから、マルチキャリア周波数能力パラメータはマルチキャリア周波数に対するサポート能力の情報に対応するといいえる。
してみると、引用発明は、本願発明と同様に、「端末(UE:User Equipment)の多重搬送波に対するサポート能力の情報の伝送方法」であるといえる。

引用発明では、「ユーザ装置は、無線ネットワークコントローラに、前記拡張された能力メッセージを送信し」、「無線ネットワークコントローラは、マルチキャリア周波数能力パラメータが含まれていなかった場合、ユーザ装置がマルチキャリア周波数をサポートできないと判定」している。
ここで、引用発明のこれらの動作事項からみて、ユーザ端末は、マルチキャリア周波数をサポートする場合には、すくなくとも、マルチキャリア周波数能力パラメータが含む拡張された能力メッセージを送信すると解するのが妥当である。
そして、マルチキャリア周波数をサポートする場合のマルチキャリア周波数能力パラメータは、UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報に対応するといいえる。
してみると、引用発明は、本願発明と同様に、「UEが多重搬送波をサポートする場合、前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信し」ているといえる。

引用発明では、「ユーザ装置の能力メッセージの内容を拡張することは、ユーザ装置能力メッセージの既存セルにおいて、マルチキャリア周波数能力パラメータ情報を追加することであ」るとともに、「ユーザ装置能力メッセージは、ユーザ装置が無線リソース制御接続を確立するプロセスにおいて、ユーザ装置から報告された無線リソース制御接続要求メッセージであ」る。
ここで、「ユーザ装置の能力メッセージの内容を拡張することは、ユーザ装置能力メッセージの既存セルにおいて、マルチキャリア周波数能力パラメータ情報を追加することであ」ることは、UEの多重搬送波に対するサポート能力の指標情報要素を新規に設定することに対応する。
また、無線リソース制御接続要求メッセージは、無線リソース制御接続要求(Radio Resource Control(RRC) Connection Request)メッセージに他ならない。
してみると、引用発明は、本願発明と同様に、「前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信するステップ」は、「無線リソース制御接続要求(Radio Resource Control(RRC) Connection Request)メッセージに、UEの多重搬送波に対するサポート能力の指標情報要素を新規に設定し」、「前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記指標情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを送信する」ことであるといえる。

以上のことから、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する点はない。

<一致点>
「 端末(UE:User Equipment)の多重搬送波に対するサポート能力の情報の伝送方法であって、
UEが多重搬送波をサポートする場合、前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信し、
前記UEが、前記UE自身の多重搬送波に対するサポート能力の情報を含むメッセージを送信するステップは、
無線リソース制御接続要求(Radio Resource Control(RRC) Connection Request)メッセージに、UEの多重搬送波に対するサポート能力の指標情報要素を新規に設定し、
前記UEが多重搬送波をサポートする場合、前記指標情報要素を含むRRC Connection Requestメッセージを送信する
ことを特徴とする伝送方法。」

以上から、本願発明はすべての点で引用発明と一致していることから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができない。

<補足的判断>
また、たとえ相違部分があったとしても、その相違部分は、当業者が適宜採用しえた程度のもの、もしくは、実質的な相違とはいえない程度のものにすぎない。
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

このため、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


4.請求人の主張についての検討
4-1.請求人の主張
請求人は、本願発明と引用発明との差異について、「平成26年1月22日付け意見書」では、
「本願発明は、引用文献1に記載の発明と以下の点で異なっております。まず、適用されるシステムが異なります。引用文献1に記載の発明は、中国において自主的に研究されて提案された第三世代モバイル通信基準としてのTD-SCDMAシステムに用いられるのに対して、本願発明は、国際基準組織3GPPで提案されたモバイル通信基準としてのUMTSシステムに用いられます。そして、情報要素の設計が異なります。引用文献1の場合、RRC CONNECTION REQUESTメッセージまたはUE Radio access capabilityメッセージに新規に追加されたMultiCarrier Indicator情報要素がsupportに設定されている場合、UEが多重搬送波をサポートしていることが示されます。一方、上記情報要素がnot-supportに設定されている場合にはUEが多重搬送波をサポートしていないことが示されます。即ち、UEが多重搬送波をサポートしていない場合でもその情報要素が必須の情報要素として必ずメッセージに含まれることになります。これに対して、本願発明の場合、新規に追加された情報要素はオプショナルな情報要素(OP)であり、この情報要素は必ずRRC Connection Requestメッセージに含まれるとは限らず、UEが多重搬送波をサポートしている場合にのみRRC Connection Requestメッセージに含まれ、サポートしていない場合にはRRC Connection Requestメッセージには含まれません。」
と主張し、
「平成26年7月4日付け審判請求書」では、
「本願発明は、引用文献1に記載の発明と以下の点で異なっております。引用文献1の場合、RRC CONNECTION REQUESTメッセージに新規に追加されたMultiCarrier Indicator情報要素がsupportに設定されている場合、UEが多重搬送波をサポートしていることが示されます。一方、上記情報要素がnot-supportに設定されている場合にはUEが多重搬送波をサポートしていないことが示されます。即ち、UEが多重搬送波をサポートしていない場合でもその情報要素が必須の情報要素として必ずメッセージに含まれることになります。これに対して、本願発明の場合、新規に追加された情報要素はオプショナルな情報要素(OP)であり、この情報要素は必ずRRC Connection Requestメッセージに含まれるとは限らず、UEが多重搬送波をサポートしている場合にのみRRC Connection Requestメッセージに含まれ、サポートしていない場合にはRRC Connection Requestメッセージには含まれません。すなわち、UEが多重搬送波をサポートしておらず、情報要素がRRC Connection Requestメッセージに含まれない場合、RRC Connection Requestメッセージは、拡張されない通常のRRC Connection Requestメッセージとなります。通常のRRC Connection RequestがUEから送信される場合、無線リソースを節約することができます。
また、引用文献1には、本願発明に係る、RNCにおける具体的な処理については、記載されておりません。」と
主張している。

4-2.主張の検討
しかしながら、本願発明と引用発明とでは適用されるシステムが異なっている旨の主張に関しては、本願発明では、適用されるシステムに関する特定はなされていないことから、該主張は本願発明に基づく主張ではなく、採用することはできない。
仮に、このような差異があったとしても、TD-SCDMAシステムもUMTSシステムも3GPPに提案された周知なシステムであるから、引用発明におけるシステムを周知なシステムであるUMTSシステムとすることは、当業者であれば容易に推考し得る事項であり、上記「<補足的判断>」で記載したように、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

「本願発明の場合、新規に追加された情報要素はオプショナルな情報要素(OP)であり、この情報要素は必ずRRC Connection Requestメッセージに含まれるとは限ら」ないのに対して、引用発明では、「UEが多重搬送波をサポートしていない場合でもその情報要素が必須の情報要素として必ずメッセージに含まれることにな」る点で相違する旨の主張に関しては、本願発明において、「新規に追加された情報要素はオプショナルな情報要素(OP)であり、この情報要素は必ずRRC Connection Requestメッセージに含まれるとは限ら」ないことは特定されていないことから、該主張は本願発明に基づく主張ではなく、採用することはできない。
仮に、該特定を本願発明が含んでいたとしても、引用発明では、「無線ネットワークコントローラは、マルチキャリア周波数能力パラメータが含まれていなかった場合、ユーザ装置がマルチキャリア周波数をサポートできないと判定する」ことから、引用発明に、本願発明との該主張のごとき相違は認めらない。

よって、請求人の主張はいずれも、本願発明に基づく主張ではなく、採用することはできない。
仮に該主張が本願発明に基づいた主張であったとしても、格別な差異を生じさせるものではない。


5.まとめ
以上のとおり、本願発明は引用発明と同一のものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができない。
仮に本願発明は引用発明と同一のものでないとしても、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-27 
結審通知日 2015-06-02 
審決日 2015-06-16 
出願番号 特願2012-548325(P2012-548325)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 57- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木下 直哉伊東 和重  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 佐藤 聡史
久松 和之
発明の名称 UEの多重搬送波に対するサポート能力の情報の伝送方法及び伝送システム  
代理人 金山 慎太郎  
代理人 吉田 望  
代理人 折居 章  
代理人 中村 哲平  
代理人 大森 純一  
代理人 金子 彩子  

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