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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1307272
審判番号 不服2014-24423  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-01 
確定日 2015-10-28 
事件の表示 特願2012-194695「レンズ状表面を有する高効率III族窒化物LED」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月13日出願公開、特開2012-248893〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成17年9月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年9月22日、米国、2005年3月17日、米国)を国際出願日とする特願2007-533544号(以下「原出願」という。)の一部を平成24年9月5日に新たな特許出願としたものであって、平成24年9月18日及び平成26年4月1日に手続補正がなされ、同年7月29日付けで拒絶査定がなされ、同年12月1日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。
そして、その請求項に係る発明は、平成26年4月1日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)については、次のとおりである。

「p型半導体層と、
n型半導体層と、
前記n型半導体層と前記p型半導体層との間の活性領域と、
前記p型半導体層の反対側の前記n型半導体層上の不透明なフィーチャと、
前記n型半導体層の反対側の前記p型半導体層の表面上の反射金属接触と
を備える発光デバイスであって、
前記反射金属接触は、前記不透明なフィーチャと位置合わせされる前記p型半導体層の前記表面の導電率低減区域以外の領域において前記p型半導体層へのオーム接触上に形成され、
前記発光デバイスは前記p型半導体層の前記表面上に非オーム接触をさらに含み、
前記非オーム接触は前記p型半導体層とオーム接触を形成しない反射金属を含むことを特徴とする発光デバイス。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された、原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平7-273369号公報(以下「引用例1」という。)には、図とともに次の記載がある(下線は、当審による。)。

ア 「【0019】
【実施例】次に、本発明の光半導体デバイスの実施例を図面を参照して詳細に説明する。図1は、この光半導体デバイスの第1の実施例の構成を示す断面図である。図2はエネルギーギャップEgを示すエネルギー構造の概略図である。図3はこの実施例の斜視図である。図1において、光半導体デバイス10は、半導体基板11と組成傾斜層12と第1クラッド層13と活性層14と第2クラッド層15とを有しており、第2クラッド層15には穴あき電極17を形成し、この穴あき電極17に対応した光半導体デバイスの反対側の半導体基板11には円板状電極16を形成している。」

イ 「【0021】この実施例の光半導体デバイス10は、例えばMOCVD法により、次のようにして順次エピタキシャル成長させる。先ず、厚さ300μmのnタイプのGaP半導体基板11の上に、nタイプのGaPからnタイプのIn_(0.3)(Ga_(0.3) Al_(0.7))_(0.7) Pに段階的に組成を変えた組成傾斜層12を10μm程度に形成し、この組成傾斜層12の上にnタイプのIn_(0.3)(Ga_(0.3) Al_(0.7))_(0.7) Pの第1クラッド層13を10μm程度エピタキシャル成長させ、次いで、iタイプのIn_(0.3) Ga_(0.7) Pの活性層14を1μm程度エピタキシャル成長させる。そして、pタイプのIn_(0.3)(Ga_(0.3) Al_(0.7))_(0.7) Pの第2クラッド層15を10μm程度エピタキシャル成長させる。」

ウ 「【0024】半導体基板を保持して表面にエピタキシャル成長させるため、半導体基板の底面にはエピタキシャル成長層がない。エピタキシャル成長層を下側に半導体基板を表裏反転させ、この半導体基板面を光取り出し面とし、円形状のオーミック電極16を中央に形成する。この電極に対向させて、裏面となったエピタキシャル成長層の第2クラッド層15表面にオーミック性の穴あき電極17を形成する。これらの電極形成は蒸着、ペースト等で行い、Au合金を使用する。Au合金に変えてAlやCu合金でもよい。また、電気伝導性のよい半導体を電極として結晶成長の最終工程で形成してもよい。
【0025】次に、この実施例における作用について説明する。図1及び図3を参照して、穴あき電極17から光半導体デバイス10に電流を注入すると、第1クラッド層を経てキャリアが活性層に注入され、キャリアの再結合により発光する。注入電流に関して、半導体基板11が300μmと厚く、また抵抗率も比較的小さいため、この基板が電流拡散層となる。また、穴あき電極17に対向する位置に電極16の電極部分がないため、図1の矢印のように電流が流れる。したがって、光を取り出す半導体基板11の電極16下方に位置する活性層14からの発光を極めて低くできる。また、キャリアが活性層14で再結合して発光するが、光が出射する方向18に光を遮断する電極部分がないため、外部への光取り出し効率を格段に向上できる。」

上記記載によれば、引用例1には、
「nタイプの半導体基板11とnタイプの組成傾斜層12とnタイプの第1クラッド層13と活性層14とpタイプの第2クラッド層15とを有しており、第2クラッド層15の表面にオーミック性の穴あき電極17を形成し、この穴あき電極17に対応した光半導体デバイスの反対側の半導体基板11に円板状電極16を形成している光半導体デバイス10。」(以下「引用発明」という。)
が記載されているものと認められる。

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「pタイプの第2クラッド層15」、「nタイプの半導体基板11とnタイプの組成傾斜層12とnタイプの第1クラッド層13」、「活性層14」及び「光半導体デバイス10」は、それぞれ、本願発明の「p型半導体層」、「n型半導体層」、「前記n型半導体層と前記p型半導体層との間の活性領域」及び「発光デバイス」に相当する。

(2)引用発明の「(半導体基板11に形成している)円板状電極16」は、引用例1の【0025】に「光を遮断する電極部分」と記載されているように、光を遮断するものと認められるから、「不透明なフィーチャ」ということでき、本願発明の「前記p型半導体層の反対側の前記n型半導体層上の不透明なフィーチャ」に相当する。

(3)引用発明の「穴あき電極17」は、第2クラッド層15の表面に形成される電極であるから、本願発明の「反射金属接触」と、「前記n型半導体層の反対側の前記p型半導体層の表面上の金属接触」の点で一致する。

(4)引用発明の「穴あき電極17」は、「オーミック性」であり、また、その穴部は、「第2クラッド層15」の表面において、「円板状電極16」に対応して位置しているものと認められるから、引用発明の「穴あき電極17」は、本願発明の「反射金属接触」と同様に、「前記不透明なフィーチャと位置合わせされる前記p型半導体層の前記表面の区域以外の領域において前記p型半導体層へのオーム接触上に形成され」たものといえる。

(5)以上のことから、両者は、
「p型半導体層と、
n型半導体層と、
前記n型半導体層と前記p型半導体層との間の活性領域と、
前記p型半導体層の反対側の前記n型半導体層上の不透明なフィーチャと、
前記n型半導体層の反対側の前記p型半導体層の表面上の金属接触と
を備える発光デバイスであって、
前記金属接触は、前記不透明なフィーチャと位置合わせされる前記p型半導体層の前記表面の区域以外の領域において前記p型半導体層へのオーム接触上に形成されている発光デバイス。」
の点で一致する。

(6)一方、両者は、次の点で相違する。
a 本願発明は、「金属接触」が「反射金属接触」であるのに対し、引用発明の「穴あき電極17」が反射電極であるか不明な点。
b 本願発明は、「p型半導体層の前記表面上に非オーム接触をさらに含み、前記非オーム接触は前記p型半導体層とオーム接触を形成しない反射金属を含む」とされるものであるのに対し、引用発明は、このようなものでない点。
c 本願発明は、「不透明なフィーチャと位置合わせされる前記p型半導体層の前記表面の区域」について、「導電率低減区域」としているのに対し、引用発明は、「穴あき電極17」の穴部における「第2クラッド層15の表面」がこのようなものとはされていない点。

4.判断
(1)上記相違点aについて検討する。
引用例1の図1及び【0025】の「光を取り出す半導体基板11」、「光が出射する方向18」の記載から明らかなように、引用発明は、図1において上方向に光を取り出すものであるから、図1において下方向、すなわち、「穴あき電極17」側に向かう光については、これを反射させて上方向から取り出すようにすることが望ましいことは当業者に明らかである。そして、光取り出し面と反対側の面に形成されるオーミック電極を反射性のものすることが周知であることに鑑みれば(この点、必要ならば、原査定において引用された特開2000-91638号公報【0021】の「p側電極7はp型コンタクト層5の表面のほぼ全面に形成され、活性層3からの全面均一な発光を得るためにp型コンタクト層5に対するオーミック電極として機能させている。これと同時に、p側電極7は、活性層3で発生した光のうちp側電極7の方へ向かう光を反射させてn側電極6の方へ向かわせる反射電極としても機能する。」との記載、同じく、特開平11-330559号公報【0024】の「p側電極16は、p側GaNコンタクト層26とオーミックに接続し、かつ反射率が高いものであればよい。」の記載を参照されたい。)、引用発明の「穴あき電極17」を反射電極として、上記相違点aに係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(2)上記相違点b及びcについて検討する。
拒絶理由に引用された特開平7-273368号公報(以下「引用例2」という。)には、引用発明と同様に下部電極を穴あき電極とした発光ダイオードについて記載され、その【0016】には、下部電極の穴あき部に関し、「この部分の基板2の表面を研磨加工やエッチングにより鏡面仕上げしたり、非オーミックに金属蒸着などにより光反射性に形成することにより、下面方向に放射される光を有効に反射して、光取出し面5よりの発光出力に寄与する」と、下部電極の穴あき部を光反射性の非オーミックな金属とすることが記載されているから、引用発明の「穴あき電極17」の穴部に非オーム接触の反射金属を設け、上記相違点bに係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に採用し得たものである。
そして、その際、引用発明は、引用例1の【0025】に「キャリアが活性層14で再結合して発光するが、光が出射する方向18に光を遮断する電極部分がないため、外部への光取り出し効率を格段に向上できる。」と記載されているように、光を遮断する電極部分、すなわち、円板状電極16の下方で活性層が発光しないようにするものであるから、「穴あき電極17」の穴部に設けた反射金属から円板状電極16の下方の活性層に電流が流れないようにすることは当然のことであって、「穴あき電極17」の穴部における「第2クラッド層15の表面」を「導電率低減区域」とすることに格別の困難性はない。

そして、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2の記載事項及び上記周知技術から予測できる程度以上の格別の効果を奏するものともいえない。

5.むすび
以上のとおりであって、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2の記載事項及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-04 
結審通知日 2015-06-05 
審決日 2015-06-17 
出願番号 特願2012-194695(P2012-194695)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 星野 浩一
近藤 幸浩
発明の名称 レンズ状表面を有する高効率III族窒化物LED  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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