• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1307331
審判番号 不服2014-10625  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-04 
確定日 2015-11-04 
事件の表示 特願2011-537661「入力機構としての動き認識」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 5月27日国際公開、WO2010/059956、平成24年 4月19日国内公表、特表2012-509544〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年(2009年)11月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年12月10日、アメリカ合衆国;2008年11月20日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成25年3月26日付けで拒絶理由通知がなされ、同年7月2日付けで手続補正がなされ、平成26年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年6月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成26年6月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔結論〕
平成26年6月4日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕
1.補正内容
平成26年6月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1を、補正後の請求項1に変更する補正事項を含むものである。
そして、補正前の請求項1に係る発明及び補正後の請求項1に係る発明は、それぞれ、以下のとおりである。
なお、<補正後の請求項1>における下線は補正箇所を表している。

<補正前の請求項1>
「 【請求項1】
携帯コンピュータ装置上のグラフィカルユーザインタフェースと相互にやりとりする方法であって、
前記携帯コンピュータ装置の画像取得エレメントを用いて、第1の画像を取得することであって、前記第1の画像は前記携帯コンピュータ装置のユーザの少なくとも1つの顔の特徴を含むことと、
前記画像取得エレメントを用いて、第2の画像を取得することであって、前記第2の画像は前記携帯コンピュータ装置の前記ユーザの前記少なくとも1つの顔の特徴を含むことと、
前記携帯コンピュータ装置により、取得された前記第1の画像および前記第2の画像を解析して、前記携帯コンピュータ装置に対する前記ユーザの前記顔の特徴の位置の変化を判定することと、
前記判定された変化に少なくとも部分的に基づいて前記グラフィカルユーザインタフェース内に表示された情報を変更することとを含み、前記グラフィカルユーザインタフェース内に表示された前記情報は、前記第1の画像と前記第2の画像とのいずれかまたは双方を表現したものを除外すること
を含む方法。」

<補正後の請求項1>
「 【請求項1】
携帯コンピュータ装置上のグラフィカルユーザインタフェースと相互にやりとりする方法であって、
前記携帯コンピュータ装置の画像取得エレメントを用いて、第1の画像を取得することであって、前記第1の画像は前記携帯コンピュータ装置のユーザの少なくとも1つの顔の特徴を含むことと、
前記画像取得エレメントを用いて、第2の画像を取得することであって、前記第2の画像は前記携帯コンピュータ装置の前記ユーザの前記少なくとも1つの顔の特徴を含むことと、
前記携帯コンピュータ装置により、取得された前記第1の画像および前記第2の画像を解析して、前記携帯コンピュータ装置に対する前記ユーザの前記顔の特徴の位置の変化を判定することと、
前記判定された変化および前記ユーザに対する前記携帯コンピュータ装置の配向情報に少なくとも部分的に基づいて前記グラフィカルユーザインタフェース内に表示された情報を変更することとを含み、前記グラフィカルユーザインタフェース内に表示された前記情報は、取得された前記第1の画像と前記第2の画像とのいずれかまたは双方を表現したものを除外すること
を含む方法。」

2.本件補正に対する判断
本件補正の内の上記補正事項は、「前記判定された変化に少なくとも部分的に基づいて前記グラフィカルユーザインタフェース内に表示された情報を変更すること」という補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を、「前記判定された変化および前記ユーザに対する前記携帯コンピュータ装置の配向情報に少なくとも部分的に基づいて前記グラフィカルユーザインタフェース内に表示された情報を変更すること」に限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとした課題は同一であるといえる。
したがって、上記補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」と呼ぶ。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。

2-1.本願補正発明
本願補正発明は、上記「1.」の<補正後の請求項1>の欄に転記したとおりのものと認める。

ただし、補正後の請求項1中の「前記ユーザに対する前記携帯コンピュータ装置の配向情報」という記載(以下、「記載A」という。)は、以下の点を考慮し、少なくとも、「単軸または多軸の加速度計であり得る配向検出エレメントから得られる情報であって、携帯コンピュータ装置のユーザに対する位置や向きが動いた場合に得られる情報」を含むものと解する。
(1)「配向情報」という用語は、その意味内容が当業者の間に定着している一般的な技術用語とは認められず、請求項1の他の箇所の記載を参酌してもその意味内容は明確であるとはいえないので、本願の出願当初の特許請求の範囲、明細書、図面の記載を参酌してその意味内容を把握するのが妥当であるが、本願の出願当初の特許請求の範囲、明細書、図面中には、「配向情報」という用語は、次の2とおりの文脈で使用されているのみである。
ア.「周囲環境に対する前記コンピュータ装置の第2の相対的な配向を判定するために、前記コンピュータ装置の配向検出エレメントを用いて取得された装置の配向情報を解析する」(【請求項10】、段落【0105】)
イ.「例えば、顔の特徴が閾値で上下に移動したことが検出された、装置を上下に移動し、装置を回転することにより閾値が満たされたのか、または装置が比較的静止している間に生じたのかを判定するために、配向情報を解析することも必要となり得る。」(段落【0067】)
(2)そして、上記(1)のア.でいう「配向情報」が、「画像取得エレメント」とは異なる「配向検出エレメント」から得られる情報を表していることは、該【請求項10】の全体、及び図2等の記載から明らかである。
(3)また、上記(1)のイ.の記載も、「配向情報」が「画像取得エレメント」とは異なる「配向検出エレメント」から得られる情報を表していると考えれば、矛盾なく理解することができる。すなわち、上記上記(1)のイ.の記載は、技術常識を踏まえると、「『画像取得エレメント』からの情報のみでは、装置を上下に移動し、装置を回転することにより閾値が満たされたのか、または装置が比較的静止している間に生じたのかを判定できないが、『画像取得エレメント』とは異なる『配向検出エレメント』から得られる情報である『配向情報』を合わせ解析すれば、その判定が可能になる。」といった技術的事項を表していると理解される。
(4)ここで、上記「配向検出エレメント」についてみるに、本願明細書の段落【0020】には、「一例において、少なくとも1つの配向検出エレメント110には、振動、衝撃等のみならず、装置の3次元位置、装置の振幅方向および移動方向などの要因を検出することができる、少なくとも1つの単軸または多軸加速度計が用いられる。」という記載があり、本願明細書でいう「配向検出エレメント」は、「単軸または多軸の加速度計」であることが想定されているものである。
(5)記載Aでいう「前記ユーザに対する」は、「配向情報」が「携帯コンピュータ装置のユーザに対する位置や向きが動かされた場合に得られる情報」であることを表していると理解できる記載である。
(6)請求人は、審判請求書において、記載Aは、本願明細書の段落【0051】、【0067】等の記載に基づく旨主張しているが、そのうちの段落【0067】における記載Aに関する記載は、上記(1)イ.の記載を含むもので、記載Aについての上記解釈と矛盾しない。
また、段落【0051】の記載も、「さらに加速度計などの配向検出エレメントからの方位情報を、配向または他の態様に関して判定を行うために用いることができる。」という記載を含んでおり、やはり、記載Aについての上記解釈と矛盾しない。

2-2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2002-164990号公報(以下、「引用例」と呼ぶ。)には、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】

・・・中略・・・

【請求項4】 画像を撮像する撮像部と、
所定のメニュー項目又は入力文字列を表示する表示部と、
該表示部に表示されているメニュー項目又は入力文字列のうち少なくとも1つのメニュー項目又は入力文字にカーソルの位置を合わせるカーソル手段と、
前記撮像部の撮像画面の変化に基づいて前記カーソルの位置を移動させるように前記カーソル手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする携帯通信端末装置。

・・・中略・・・

【請求項9】 前記装置全体を使用者に近づけたり遠ざけたりすることにより、前記メニュー項目又は入力文字列の各文字を大きくしたり小さくしたりするなど前記表示部の表示が3次元的に変化するよう、前記制御手段が制御することを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の携帯通信端末装置。」

「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば携帯電話機等の携帯通信端末装置に関し、特にその文字入力時の操作性の向上を図った携帯通信端末装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】パソコン(パーソナルコンピュータ)、ワープロ(ワードプロセッサ)等におけるその文字入力方法は、主にキーボードを用いた文字入力方法がほとんどであった。このようなキーボードを用いた文字入力方法の場合は、大きさの制限があまり無いと共に、豊富な種類のキーがあるので文字入力の操作性が良いものとなっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】携帯電話機等の携帯通信端末装置においても、文字入力方法としてはキーボードを用いたものがほとんどである。ところが携帯電話機等の携帯通信端末装置は小型であるため、そのキーボードも小型となると共に、そのキー(ボタン)の種類や数が少ないために、文字を入力する上で非常に手間がかかり操作性が悪化したものとなっている。
【0004】すなわち、一つの文字を入力するだけでも何度も同じキーを押す必要があったり、一つのキーに非常に多くの機能や選択肢が割り当てられているので、それを覚えなければならないことも操作性を悪化させている。このため誤入力が起き易く、その修正が難しい場合も少なくない。
【0005】このようなキーボードを用いる他に、付属のペンにより文字を検索してタッチするタッチパネルを用いて文字を入力する方法や、回転ダイヤルを用いて文字列を回転させて文字を検索して入力する方法もあるが、前者の文字の入力方法は片手での操作ができないと共に、付属のペンを忘れたら入力することができないという問題を有し、後者の文字の入力方法は回転ダイヤルを操作することによりカーソルを、回転ダイヤルの回転方向と同じ一方向にしか移動できないという問題を有し、いずれの文字入力方法も操作性の大幅な改善には至っていない。
【0006】そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、小型のキーボードを用いた場合でも文字の入力操作性を大幅に改善することができる携帯通信端末装置を提供することを課題とするものである。

・・・中略・・・

【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。図1ないし図4は、本発明による携帯通信端末装置の一実施の形態について説明するために参照する図である。
【0010】図1は、本発明の一実施の形態に係る携帯電話機10(携帯通信端末装置)を示す図である。同図に示す携帯電話機10は、その上部にCCDカメラ部12(撮像部)が固定して(又は着脱自在に)設けられ、その下方に順に、後述する文字列が表示される第1表示部14、入力されることが確定した文字を表示する第2表示部16、後述する決定ボタン18等の各種ボタンが配列された入力操作部20が設けられている。
【0011】図2は、携帯電話機10の制御回路を示す図である。同図において、CCDカメラ部12、第1表示部14、第2表示部16、及び決定ボタン18は図1において示したものであり、この他に、画像処理部22、記憶部24、外部記憶部26、画像認識部27と制御部28を有するCPU30(制御手段)を具備している。そして携帯電話機10はさらに、制御部28に制御されて第1表示部14に表示されるカーソル位置を駆動するカーソル駆動部32(カーソル手段)を有している。
【0012】以下に、図3のフローチャートに基づいて、携帯電話機10の動作手順について説明する。文字入力モードがスタートすると、まずCCDカメラ部12がその近傍にあるユーザー(図示せず)の顔を撮像し、この撮像して得た初期データは画像処理部22に送られて画像データ(図4(a)参照)として処理される。
【0013】この画像データはCPU30の画像認識部27に送られて、枠内の像の位置を基準位置として設定し(ステップS1)、このときの画像データは基準画像データとして記憶部24に記憶される。以降新たに基準画像データを設定しない限りはこの画像データを基準画像データとして使用する。
【0014】制御部28により第1表示部14には、図1に示すような文字列の初期画面が表示され(ステップS2)、この文字列の初期画面の中央部の初期位置にはカーソル位置が表示される(ステップS3)。文字列としては、制御部28が外部記憶部26から呼び出した50音表、アルファベット、漢字辞典、電話帳機能からの電話番号等が第1表示部14に表示される。
【0015】カーソル位置の表示は、その位置にある一文字の色が他の文字の色と異なる色に変換することにより表示されるようになっている。画像処理部22は常時CCDカメラ部12からの撮像データを画像処理し(ステップS4)、この画像処理した画像データは画像認識部27に送られる。
【0016】ユーザーが携帯電話機10をいずれかの方向に回動したとき、その画像データは画像認識部27において、記憶部24に記憶された基準画像データと比較されることにより、画像が移動したかが判別される(ステップS5)。但し、携帯電話機10の回動量が少ないときは手ぶれや誤操作等と認識されて、画像が移動したとは判別されない。
【0017】画像が移動したと判別されたら(ステップS5のYES)、画像が左に移動したかが判別され(ステップS7)、YESのときは制御部28がカーソル駆動部32を制御して、カーソルの位置を第1表示部14の中央位置(初期位置)から左に移動させる(ステップS8)。ちなみに、携帯電話機10をその縦軸の回りに左側に回動させることにより、図4(b)に示すように画像は左側に移動するようになっている。
【0018】画像が左に移動しないとき(ステップS7のNO)は右に移動したかが判別され(ステップS9)、YESのときはカーソル駆動部32によりカーソルの位置を第1表示部14の中央位置から右に移動させる(ステップS10)。ちなみに、携帯電話機10をその縦軸の回りに右側に回動させることにより、図4(c)に示すように画像は右側に移動するようになっている。
【0019】画像が右に移動しないとき(ステップS9のNO)は上に移動したかが判別され(ステップS11)、YESのときはカーソル駆動部32によりカーソルの位置を上ではなく下に移動させるように、カーソル駆動部32は制御部28により制御されるようになっている(ステップS12)。
【0020】ちなみに、携帯電話機10を横軸の回りに下側に回動させることにより、図4(d)に示すように画像は上側に移動するようになっている。このため、携帯電話機10を横軸の回りに下側に回動させたときはカーソルの位置を下に移動させることができる。
【0021】画像が上に移動しないとき(ステップS11のNO)は下に移動したかが判別され(ステップS13)、YESのときはカーソル駆動部32によりカーソルの位置を下ではなく上に移動させるように、カーソル駆動部32は制御部28により制御されるようになっている(ステップS14)。
【0022】ちなみに、携帯電話機10を横軸の回りに上側に回動させることにより、図4(e)に示すように画像は下側に移動するようになっている。このため、携帯電話機10を横軸の回りに上側に回動させたときはカーソルの位置を上に移動させることができる。
【0023】また、画像の移動があったと判断された場合、CPU30の制御部28から、CCDカメラ部12が撮像した画像の移動量に合わせた分のカーソルの位置の移動の指示が出るので、その指示を受けたカーソル駆動部32によりカーソルの位置をその画像の移動量に合わせた分だけ移動させる。カーソルの位置を何文字分も飛び越えて大きく動かすときは、後述するように文字列をスクロールすることにより行うことができる。
【0024】このように携帯電話機10を縦軸や横軸の回りに回動させることを繰り返して、例えば図1に示すように、入力したい文字の「い」のところにカーソルの位置を持ってきたら(ステップS15)、図1に示す入力操作部20の決定ボタン18を押して、選択した「い」の文字を確定し(ステップS16のYES)、その選択した「い」の文字を入力したい文字として第2表示部16に表示させる。
【0025】そして、次に入力したい文字がある場合は(ステップS17のYES)、再びステップS4に戻って上記と同様の動作を繰り返し、次に入力したい文字がなくなったら(ステップS17のNO)文字入力モードを終了する。
【0026】このように携帯電話機10は装置本体を縦軸と横軸の回りに繰り返し回動させることにより、その都度回動方向と同方向に上記カーソルの位置を移動させるようにしたため、操作が簡単で誤入力が起き難い。またユーザーは決定ボタン18のみを押せばいいので、手の持ち替えが不要のため片手での操作が可能である。また、カーソルの位置の移動方向も上下方向のみならず左右方向にも移動が可能であるため、文字の入力操作性を大幅に改善することができる。

・・・中略・・・

【0030】また、電車に乗っているとき等において、携帯電話機10を回動させないのに画像の背景が動いたためにそれを携帯電話機10の回動として認識され、カーソルの位置が変ってしまうことを防止するために、背景を含む枠内の周部の画像はキャンセルして枠内の中央部の画像の移動の有無のみを判別することにより、カーソルの位置を変えるようにすることができる。
【0031】このように背景の移動をキャンセルする必要がないとき、すなわち電車等に乗っていないときでも、背景を含む枠内の周部の画像はキャンセルして、枠内の中央部の画像の移動の有無のみを判別するようにしてもよい。このようにすることにより処理するデータ量が少なくなって、枠内全体のデータをすべて処理する場合に比べて高速処理が可能となり、CPU30への負担も軽くなる。
【0032】なお、上記実施の形態においては携帯電話機10を回動させる場合のみについて説明したが、携帯電話機10をユーザーの顔に近づけたり遠ざけたりしてもよく、このように携帯電話機10を動かすことにより、第1表示部14の文字列の各文字を大きくしたり小さくしたりするなど第1表示部14の表示を3次元的に変化させることもできる。
【0033】また、上記実施の形態においてはカーソルの位置を入力文字列の中の1つの文字に合わせる場合について説明したが、文字の他にも、例えば、複数のメニュー項目の中の1つのメニュー項目にカーソルの位置を合わせるように使用することもできる。

・・・中略・・・

【発明の効果】以上説明したように、本発明の携帯通信端末装置によれば、装置本体を縦軸と横軸の回りに回動させることにより、この回動方向と同方向にカーソルの位置を移動させるようにしたため、操作が簡単で、片手での操作が可能で、カーソル位置の移動方向も上下方向及び左右方向の二方向に移動が可能であるため、小型のキーボードを用いた場合でも文字の入力操作性を大幅に改善することができる。」

ここで、上記記載事項を引用例の関連図面と技術常識に照らせば、以下のことがいえる。
(1)引用例の段落【0012】?【0033】には、携帯通信端末装置10の図1の表示部14に示されるような画面上で、カーソルの位置を所望の文字またはメニュー項目の位置へ移動させる方法(以下、「カーソルの位置を移動させる方法」という。)が説明されている。
(2)上記(1)でいう「カーソルの位置を移動させる方法」は、CCDカメラ部12を用いて画像を順次取得することを含んでいるが、その画像のうちの段落【0013】でいう「基準画像データ」の基になる画像は、「第1の画像」といい得るものであり、段落【0012】にも記載されるように、携帯通信端末装置10のユーザの顔を含むものである。
また、その画像のうちの段落【0016】でいう「画像データ」(基準画像データと比較される画像データ)の基になる画像は、「第2の画像」といい得るものであり、これも携帯通信端末装置10のユーザの顔を含むものである。
(3)引用例の段落【0016】等の記載から明らかなように、上記(1)でいう「カーソルの位置を移動させる方法」は、上記(2)でいう「第1の画像」と「第2の画像」を基に、「画像が移動したか」の判別を行うことと、その「画像が移動したか」の判別に基づいてカーソルの位置を移動させること、を含んでおり、その判別は、携帯通信端末装置10により行われるものである。。

したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。
「携帯通信端末装置10の画面上で、カーソルの位置を所望の文字またはメニュー項目の位置へ移動させる方法であって、
前記携帯通信端末装置10のCCDカメラ部12を用いて、第1の画像を取得することであって、前記第1の画像は前記携帯通信端末装置10のユーザの顔を含むことと、
前記CCDカメラ部12を用いて、第2の画像を取得することであって、前記第2の画像は前記携帯通信端末装置10のユーザの顔を含むことと、
前記携帯通信端末装置10により、前記第1の画像と前記第2の画像を基に、画像が移動したかの判別を行うことと、
前記画像が移動したかの判別に基づいて前記カーソルの位置を移動させること
を含む方法」

2-3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(1)引用発明の「携帯通信端末装置10」は、本願補正発明の「携帯コンピュータ装置」に相当し、その画面上で、カーソルの位置を所望の文字またはメニュー項目の位置へ移動させる際に、ユーザからの情報の入力とユーザへの情報の出力がグラフィカルなインターフェースを介して行われていることは明らかであるから、引用発明の方法は、本願補正発明と同様に「携帯コンピュータ装置上のグラフィカルユーザインタフェースと相互にやりとりする方法」といえる。
(2)引用発明の「CCDカメラ部12」は、本願補正発明の「画像取得エレメント」に相当する。
(3)一般に、CCDカメラで撮影した顔の画像が少なくとも1つの「顔の特徴」といい得るものを含んでいることは明らかであり、引用発明のCCDカメラ部12を用いて取得する「第1の画像」及び「第2の画像」についても「顔の特徴」といえるものを含まないと考えるべき理由はない。
したがって、引用発明において「第1の画像」及び「第2の画像」が「ユーザの顔を含むこと」は、本願発明において、「第1の画像」及び「第2の画像」が「ユーザの少なくとも1つの顔の特徴を含むこと」に相当する。
(4)本願明細書の段落【0017】、【0018】等の記載によれば、本願補正発明でいう「携帯コンピュータ装置に対するユーザの顔の特徴の位置の変化」が少なくとも「携帯コンピュータ装置に対するユーザの目、鼻、口などの位置の変化」を含んでいることは明らかであり、その「ユーザの目、鼻、口などの位置の変化」は、「ユーザの位置の変化」ともいい得る。
一方、引用発明の「第1の画像」及び「第2の画像」が「ユーザの顔を含むこと」と、引用例の段落【0030】?【0032】等の記載を合わせ考えると、引用発明でいう「画像が移動したか」が、少なくとも「携帯通信端末装置10に対するユーザの位置の変化があったか」といい得る事項を含んでいることは明らかである。
したがって、引用発明の「前記携帯通信端末装置10により、前記第1の画像と前記第2の画像を基に、画像が移動したかの判別を行うこと」と、本願補正発明における「前記携帯コンピュータ装置により、取得された前記第1の画像および前記第2の画像を解析して、前記携帯コンピュータ装置に対する前記ユーザの前記顔の特徴の位置の変化を判定すること」は、「前記携帯コンピュータ装置により、前記携帯コンピュータ装置に対する前記ユーザの位置の変化を判定すること」である点で共通する。
(5)引用発明の「カーソルの位置を移動させること」は、本願補正発明の「グラフィカルユーザインタフェース内に表示された情報を変更すること」に相当する。
また、引用発明においてカーソルの位置を移動させる画面にCCDカメラ部12を用いて取得した画像を表示させるべき理由はないこと、引用例の図1に例示される携帯通信端末装置10の画面にも、CCDカメラ部12で撮影した画像は表示されていないこと、引用例のいずれの箇所にもグラフィカルインターフェースといい得る部分にCCDカメラ部12で撮影した画像を表示する旨の記載はないこと、等からみて、引用発明も本願補正発明の「前記グラフィカルユーザインタフェース内に表示された前記情報は、取得された前記第1の画像と前記第2の画像とのいずれかまたは双方を表現したものを除外すること」に相当する構成を備えているといえる。
以上のことと、上記(4)で述べたことを踏まえると、引用発明の「前記画像が移動したかの判別に基づいて前記カーソルの位置を移動させること」と、本願補正発明の「前記判定された変化および前記ユーザに対する前記携帯コンピュータ装置の配向情報に少なくとも部分的に基づいて前記グラフィカルユーザインタフェース内に表示された情報を変更することとを含み、前記グラフィカルユーザインタフェース内に表示された前記情報は、取得された前記第1の画像と前記第2の画像とのいずれかまたは双方を表現したものを除外すること」は、「前記判定された変化に少なくとも部分的に基づいて前記グラフィカルユーザインタフェース内に表示された情報を変更することとを含み、前記グラフィカルユーザインタフェース内に表示された前記情報は、取得された前記第1の画像と前記第2の画像とのいずれかまたは双方を表現したものを除外すること」である点で共通するといえる。

以上によれば、本願補正発明と引用発明の間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「携帯コンピュータ装置上のグラフィカルユーザインタフェースと相互にやりとりする方法であって、
前記携帯コンピュータ装置の画像取得エレメントを用いて、第1の画像を取得することであって、前記第1の画像は前記携帯コンピュータ装置のユーザの少なくとも1つの顔の特徴を含むことと、
前記画像取得エレメントを用いて、第2の画像を取得することであって、前記第2の画像は前記携帯コンピュータ装置の前記ユーザの前記少なくとも1つの顔の特徴を含むことと、
前記携帯コンピュータ装置により、前記携帯コンピュータ装置に対する前記ユーザの位置の変化を判定することと、
前記判定された変化に少なくとも部分的に基づいて前記グラフィカルユーザインタフェース内に表示された情報を変更することとを含み、前記グラフィカルユーザインタフェース内に表示された前記情報は、取得された前記第1の画像と前記第2の画像とのいずれかまたは双方を表現したものを除外すること
を含む方法。

(相違点1)
本願補正発明の「携帯コンピュータ装置に対するユーザの位置の変化を判定すること」は「取得された第1の画像および第2の画像を解析して、携帯コンピュータ装置に対するユーザの顔の特徴の位置の変化を判定すること」であるのに対し、引用発明の「携帯コンピュータ装置に対するユーザの位置の変化を判定すること」(画像が移動したかの判別を行うこと)は、「取得された第1の画像および第2の画像を解析して、携帯コンピュータ装置に対するユーザの顔の特徴の位置の変化を判定すること」ではない点。

(相違点2)
本願補正発明の「グラフィカルユーザインタフェース内に表示された情報を変更すること」は、「判定されたユーザの顔の特徴の位置の変化およびユーザに対する携帯コンピュータ装置の配向情報」に少なくとも部分的に基づいて行われるものであるのに対し、引用発明の「グラフィカルユーザインタフェース内に表示された情報を変更すること」は、「判定されたユーザの顔の特徴の位置の変化およびユーザに対する携帯コンピュータ装置の配向情報」に基づいて行われるものではない点。

2-4.判断

(1)(相違点1)について
以下の事情を総合すると、引用発明において上記相違点1に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
ア.引用例の段落【0003】等の記載から把握される引用発明の課題からみて、引用発明における「携帯コンピュータ装置に対するユーザの位置の変化を判定すること」(画像が移動したかの判別を行うこと)の具体的手法は任意であるといえる。
イ.一方、画像の比較によりユーザの位置の変化を判定する際、画像を解析して得られるユーザの顔の特徴の位置を利用することは、原査定に参考文献Aとして例示された特開2002-351603号公報の段落【0036】や、今回新たに提示する特開2007-243250号公報の段落【0024】等にも示されるように周知であり、該周知の手法が引用発明においても有用かつ採用可能であることは当業者に明らかである。
ウ.してみれば、引用発明における「携帯コンピュータ装置に対するユーザの位置の変化を判定すること」(画像が移動したかの判別を行うこと)を画像を解析して得られるユーザの顔の特徴の位置を利用して行うようにすることは、当業者が容易に推考し得たことである。
エ.そして、以上のことは、引用発明において上記相違点1に係る本願補正発明の構成を採用することが、当業者にとって容易であったことを意味している。

(2)(相違点2)について
以下の事情を総合すると、引用発明において上記相違点2に係る本願補正発明の構成を採用することも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
ア.上記2-1.の「ただし」以下に示した記載Aの解釈を踏まえると、相違点2に係る本願補正発明の構成である「『グラフィカルユーザインタフェース内に表示された情報を変更すること』が、『判定されたユーザの顔の特徴の位置の変化およびユーザに対する携帯コンピュータ装置の配向情報』に少なくとも部分的に基づいて行われる」という技術的事項は、「『グラフィカルユーザインタフェース内に表示された情報を変更すること』が、『判定されたユーザの顔の特徴の位置の変化』と『単軸または多軸の加速度計であり得る配向検出エレメントから得られる情報であって、携帯コンピュータ装置のユーザに対する位置や向きが動いた場合に得られる情報』に少なくとも部分的に基づいて行われる」という技術的事項を少なくとも含んでいるといえる。
イ.一方、今回新たに提示する特開2007-121489号公報の段落【0014】等には、引用発明の携帯通信端末装置10と同様に装置筐体とは別個の操作部を必ずしも必要としない携帯表示装置において、表示内容の操作を正確にかつ自然な操作感で行うことができるようにするために、装置筐体に設けられた撮像手段で撮影された画像の情報と、装置筐体内に設けられた加速度計測手段により計測された加速度の情報の両方を利用すること(以下、「公知技術A」という。)が記載されており、該公知技術Aが引用発明においても有用かつ採用可能であることは当業者に明らかである。また、該公知技術Aが有用かつ採用可能であることは、上記ア.にしがって引用発明において上記相違点1に係る本願補正発明の構成を採用したものにおいても何ら変わるところはない。
ウ.してみれば、引用発明において、上記相違点1に係る本願補正発明の構成を採用するとともに、上記公知技術Aをも合わせ採用することは当業者が容易に推考し得たことであり、そのことは、引用発明において上記相違点2に係る本願補正発明の構成を採用することが、当業者にとって容易であったことを意味している。

(3)本願補正発明の効果について
本願補正発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明から当業者が容易に想到し得た構成のものが奏するであろうと当業者が予測し得る範囲を超えるものではなく、本願補正発明の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。

(4)まとめ
よって、本願補正発明は、引用発明と周知の手法及び公知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成25年7月2日付けの手続補正書の請求項1に記載されたとおりのものであり、上記「第2」の「1.」の<補正前の請求項1>の欄に転記したとおりのものである。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、およびその記載事項は、上記「第2」の「2.」の「2-2.」の欄に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、相違点2を生じさせた限定事項を省いたものであるから、本願発明と引用発明の間の一致点は、上記「第2」で認定した一致点と同じであり、相違点は、同「第2」で認定した相違点1と同じである。
そうすると、本願発明は、上記「第2」で引用した公知技術Aを引用するまでもなく、引用発明と周知の手法に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-04 
結審通知日 2015-06-09 
審決日 2015-06-22 
出願番号 特願2011-537661(P2011-537661)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 尊志  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山澤 宏
小曳 満昭
発明の名称 入力機構としての動き認識  
復代理人 濱中 淳宏  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 窪田 郁大  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ