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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B |
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管理番号 | 1307343 |
審判番号 | 不服2014-15762 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-08-08 |
確定日 | 2015-11-02 |
事件の表示 | 特願2009-223073「カードリーダ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月 7日出願公開、特開2011- 70746〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成21年9月28日の出願であって、平成25年8月15日付けで拒絶理由が通知され、同年10月18日付けで手続補正がなされ、平成26年5月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月8日に拒絶査定不服の審判が請求され、平成27年4月15日付けで当審による拒絶理由が通知され、同年6月10日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成27年6月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 カードに記録された磁気データを読み取るカードリーダにおいて、 前記カードに記録された磁気データを読み取るためのリードコアおよび前記リードコアに巻回されるリード側コイルを有する磁気ヘッドを備えるとともに、前記カードに記録された磁気データの読取時に前記リード側コイルに流れる電流を読取電流とし、前記リード側コイルに流れる電流であって前記読取電流とは異なる電流を非読取電流とすると、前記非読取電流を前記リード側コイルに発生させるための非読取電流発生手段とを備え、 前記非読取電流発生手段は、前記リード側コイルが接続されるリード側信号線に接続され、 前記非読取電流の波形の周期は、前記カードに記録された磁気データの記録密度と前記カードリーダ内での前記カードの移動速度とによって定まる周期となっていることを特徴とするカードリーダ。」 3.引用例 当審の拒絶理由で引用した特開2003-223620号公報(以下「引用例1」という。)には、「スキミング防止装置及び方法」について、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、POS(Point Of Sales)端末,クレジット決済処理端末,デビット決済処理端末,ATM(automatic teller machine:自動現金引出し装置)等の磁気カードに記録されている情報に基づいて決済処理を行なう装置に適用されるスキミング防止技術に関する。」 イ.「【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のスキミング防止技術では、次のような解決すべき技術的課題が残っていた。すなわち、装置の筐体が分解されたことに応じて内部メモリのデータを破壊するスキミング防止技術にあっては、一旦破壊された内部メモリのデータを復旧させることが不可能だった。このため、内部回路の故障等により装置の筐体を正当に分解しなければならない場合には、事前に内部メモリのデータをバックアップするなどの作業が必要であり、面倒であった。また、装置の筐体が分解されたことに応じて内部メモリをアクセス不能にするスキミング防止技術にあっては、一旦アクセス不能になった内部メモリをアクセス可能とするためには所定の暗証番号を入力しなければならなかった。このため、筐体を正当に分解した場合には後でパスワードの入力作業が必要となり、煩雑感があった。 【0004】本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、装置筐体の正当な分解に対して格別な作業が強いられることなくスキミングを確実に防止できるスキミング防止装置及び方法を提供しようとするものである。」 ウ.「【0007】図1は本実施の形態における磁気カードリーダの要部構成を示すブロック図であり、この磁気カードリーダは、磁気カード読取部1と、カードデータ処理部2とから構成されている。カードデータ処理部2は、制御部本体を構成するCPU(Central Processing Unit)21、プログラム等の固定的データが予め格納されたROM(Read Only Memory)22、前記磁気カード読取部1で読取られた磁気カードデータ等の可変的データを記憶するRAM(Random Access Memory)23、外部機器とのデータ通信を制御する通信インタフェース24、信号ライン3を介して前記磁気カード読取部1と接続し、該磁気カード読取部1で読取られた磁気カードデータを取込む磁気カードインタフェース25及びダミー信号送出回路26等で構成されている。CPU21と、ROM22,RAM23,通信インタフェース25及びダミー信号送出回路26とは、アドレスバス,データバス等のバスライン27で接続されている。 【0008】ダミー信号送出回路26は、カードデータ読取部1で読取られたカードデータをカードデータ処理部2に供給するための信号ライン3に、カードデータ読取部1によって磁気カードからカードデータが読込まれているかのようにカードデータダミー信号を送り込む機能を有した回路である。」 エ.「【0023】 【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、装置筐体の正当な分解に対して格別な作業が強いられることなくスキミングを確実に防止できる効果を奏する。」 ・上記ア,イ及びエによれば、上記引用例1には、磁気カードに記録されている情報を読取る磁気カードリーダについて記載されており、スキミングを確実に防止することを課題としている。 ・上記ウ(段落【0008】)によれば、カードデータ読取部1で読取られたカードデータをカードデータ処理部2に供給するための信号ライン3を備えることが記載されている。 ・上記ウ(段落【0008】)及び図1によれば、ダミー信号送出回路26は、信号ライン3に接続されており、磁気カードからカードデータが読込まれているかのようにカードデータとは異なるデータであるカードデータダミー信号を信号ライン3に送り込む機能を有することが記載されている。 したがって、引用例1には、スキミングを確実に防止することを課題とする、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「磁気カードに記録された情報を読取る磁気カードリーダにおいて、 磁気カード読取部1を備えるとともに、磁気カード読取部1で読取られたカードデータとは異なるデータであるカードデータダミー信号を、前記カードデータをカードデータ処理部2に供給するための信号ライン3に送り込むためのダミー信号送出回路26とを備え、 ダミー信号送出回路26は、信号ライン3に接続され、磁気カードからカードデータが読込まれているかのようにカードデータダミー信号を信号ライン3に送り込む機能を有している ことを特徴とする磁気カードリーダ。」 4.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「磁気カードリーダ」は、本願発明の「カードリーダ」に相当する。 b.引用発明の「磁気カード読取部1」は、本願発明の「カードに記録された磁気データを読み取るための磁気ヘッド」に相当する。 但し、本願発明は、磁気ヘッドが「リードコアおよび前記リードコアに巻回されるリード側コイル」を備えているのに対し、引用発明はこのような特定を有していない。 c.引用発明は、カードデータ読取部1で読取られたカードデータを信号ライン3を介してカードデータ処理部に供給するものである。そして、一般的に、データが信号ラインを通過する際は電流の形態をとるから、引用発明の「カードデータ」は本願発明の「読取電流」に相当するものである。よって、引用発明における「磁気カード読取部1で読取られたカードデータ」は、本願発明の「カードに記録された磁気データの読取時に流れる電流(読取電流)」に相当する。 但し、本願発明の「読取電流」はリード側コイルに流れるのに対し、引用発明はこのような特定を有していない。 d.引用発明は、ダミー信号送出回路26が信号ライン3にカードデータダミー信号を送り込むことを特定している。そして、一般的に、データが信号ラインを通過する際は電流の形態をとるから、引用発明の「カードデータダミー信号」「ダミー信号送出回路26」は、本願発明の「非読取電流」「非読取電流発生手段」に相当するものである。よって、引用発明の「カードデータとは異なるデータであるカードデータダミー信号を、前記カードデータをカードデータ処理部2に供給するための信号ライン3に送り込むためのダミー信号送出回路26」は、本願発明の「読取電流とは異なる電流を非読取電流とすると、前記非読取電流を発生させるための非読取電流発生手段」に相当する。 但し、本願発明の「非読取電流」はリード側コイルに流れるのに対し、引用発明はこのような特定を有していない。 e.引用発明の「信号ライン3」は本願発明の「リード側信号線」に相当するものである。よって、引用発明の「ダミー信号送出回路26は、信号ライン3に接続」されることは、本願発明の「非読取電流発生手段は、リード側信号線に接続」されることに相当する。 但し、本願発明の「リード側信号線」はリード側コイルに接続されるのに対し、引用発明はこのような特定を有していない。 f.本願発明は、非読取電流の波形の周期を「カードに記録された磁気データの記録密度とカードリーダ内でのカードの移動速度とによって定まる周期」としているのに対し、引用発明はこのような特定を有していない。 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「カードに記録された磁気データを読み取るカードリーダにおいて、 前記カードに記録された磁気データを読み取るための磁気ヘッドを備えるとともに、前記カードに記録された磁気データの読取時に流れる電流を読取電流とし、前記読取電流とは異なる電流を非読取電流とすると、前記非読取電流を発生させるための非読取電流発生手段とを備え、 前記非読取電流発生手段は、リード側信号線に接続され、 前記非読取電流の波形の周期は、前記カードに記録された磁気データの記録密度と前記カードリーダ内での前記カードの移動速度とによって定まる周期となっていることを特徴とするカードリーダ。」 (相違点1) 本願発明は、磁気ヘッドが「カードに記録された磁気データを読み取るためのリードコアおよび前記リードコアに巻回されるリード側コイル」を備えているのに対し、引用発明はこのような特定を有していない点。 (相違点2) 本願発明は、読取電流及び非読取電流がリード側コイルを流れるのに対し、引用発明はこのような特定を有していない点。 (相違点3) 本願発明は、リード側信号線にリード側コイルが接続されるのに対し、引用発明はこのような特定を有していない点。 (相違点4) 本願発明は、非読取電流の波形の周期を「カードに記録された磁気データの記録密度とカードリーダ内でのカードの移動速度とによって定まる周期」としているのに対し、引用発明はこのような特定を有していない点。 そこで、上記相違点1ないし3について検討する。 磁気ヘッドとして、「リードコアおよび前記リードコアに巻回されるリード側コイルを有する」ものを用いることは、特開昭64-42008号公報(以下「引用例2」という。)の〔従来の技術〕欄に記載されているように通常行われていることであるから、引用発明の磁気ヘッドとして引用例2に記載されたものを採用することに格別の困難性はない。そして、引用発明の信号ライン3を引用例2のライト・リード用の巻線7と接続した場合、信号ライン3を流れるカードデータダミー信号は、前記ライト・リード用の巻線7にも流れることとなる。 よって、引用発明の磁気カード読取部として、引用例2に記載された技術を適用し、相違点1ないし3の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。 次に、上記相違点4について検討する。 本願発明において、非読取電流の波形の周期を「カードに記録された磁気データの記録密度とカードリーダ内でのカードの移動速度とによって定まる周期」とするのは、本願明細書(特に段落【0064】)によれば、非読取電流と読取電流とを略等しい電流とすることにより両者の判別を困難とするためである。そして、引用発明も、磁気カードからカードデータが読込まれているかのようにカードデータダミー信号を信号ライン3に送り込むことを特定しているものであるから、相違点4に係る構成は引用発明に実質的に記載されている事項であって格別の差異ではない。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-08-21 |
結審通知日 | 2015-08-28 |
審決日 | 2015-09-11 |
出願番号 | 特願2009-223073(P2009-223073) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 斎藤 眞 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
ゆずりは 広行 井上 信一 |
発明の名称 | カードリーダ |
代理人 | 小平 晋 |