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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1307350
審判番号 不服2014-21214  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-20 
確定日 2015-11-04 
事件の表示 特願2012-257679「分散アパーチャディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日出願公開、特開2013-101347〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成17年12月20日(優先権主張2004年12月29日、米国)を国際出願日とする出願の分割出願であって、平成25年10月25日付けの拒絶理由通知に対し、平成26年4月30日に手続補正がなされたが、同年6月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成26年10月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。


2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成26年4月30日付けの手続補正書によって補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。

「各ピクセル(30、30A-30P、102、104)が可変の透明度又は輝度の1又はそれ以上の構成色に関する切替可能領域(32、32A-32P、92-94)と構成色の各々に関する非切替可能領域(34、34A-34P、103、105)とを有するピクセル(40)のアレイを備え、
前記ピクセル(30、30A-30P、102、104)の各々の各構成色に関する前記切替可能領域(32、32A-32P、92-94)が、構成色に関する前記非切替可能領域(34、34A-34P、103、105)の有意な部分によって少なくとも部分的に分離された構成色に関する少なくとも2つの切替可能部分に分割され、
各構成色に関する前記少なくとも2つの切替可能部分が、同時に切り替えられるように構成されている、
ことを特徴とするディスプレイ。」


3 引用刊行物及びその記載内容
(1)引用刊行物
引用文献1:特開平3-24524号公報

(2)記載内容
原審の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記引用文献1には、以下の事項が記載されている。
ア 第2頁右上欄13行?左下欄3行
「従来より、液晶表示装置、EL表示装置、プラズマ表示装置等に於いては、マトリクス状に配列された絵素電極が選択駆動され、画面上に表示パターンが形成される。選択された絵素電極とこれに対向する対向電極との間に電圧が印加され、その間に介在する表示媒体の光学的変調が行われる。この光学的変調が表示パターンとして視認される。絵素電極の駆動方式として、個々の独立した絵素電極を配列し、この絵素電極のそれぞれにスイッチング素子を連結して駆動するアクティブマトリクス駆動方式が知られている。」
イ 第5頁右上欄1行?左下欄18行
「本発明を実施例について以下に説明する。第1図に本発明の表示装置の一実施例に用いられるアクティブマトリクス基板を示す。透明導電膜(ITO)から成る絵素電極5がマトリクス状に配列され、絵素電極5は一対の絵素電極部5a及び5bに分割されている。一対の絵素電極部5a及び5bの間には、走査信号を供給するゲートバス配線3が形成されている。ゲートバス配線3に直交して、データ信号を供給するソースバス配線4が形成されている。ゲートバス配線3は一般にTa,Al、Ti、Mo等の単層又はこれらの多層金属で形成されるが、本実施例ではTaを使用している。ソースバス配線4bも同様の金属で形成されるが、本実施例ではTiを使用している。ゲートバス配線3とソースバス配線4の交差領域42には、後述するベース絶縁膜11が介在している。
ゲートバス配線3からは絵素電極部5aに向かって、ゲートバス支線8aがソースバス配線4に平行して分岐している。該支線8a上にはTFT6aが配されている。同様に、ゲートバス支線8bが絵素電極部5bに向かって分岐し、該支線8b上にはTFT6bが配されている。TFT6a及びTFT6bは、それぞれソース電極15a及び15bによって、同一のソースバス配線4に電気的に接続されている。TFT6aと絵素電極部5aとの間、及びTFT6bと絵素電極部5bとの間は、それぞれドレイン電極16a及び16bによって電気的に接続されている。TFT6a近傍の拡大平面図を第5図に示す。ドレイン電極16aが接続される絵素電極部5aの部分には矩形の切欠部38が設けられ、ドレイン電極16aは該切欠部38の最も離れた辺に接続されている。
上述の構成により、一対の絵素電極部5a及び5bは、それぞれ別のTFT6a及び6bを介して、同一の走査信号及び同一のデータ信号によって駆動される。従って、一つの絵素電極5を構成する二つの絵素電極部5a及び5bは、同時に同じ表示動作を行うことができる。」
ウ 第5頁左下欄19行?第6頁右上欄8行
「第2図に第1図のII-II線に沿った表示装置の断面図を示す。TFT6a近傍の断面構成を第2図に従って説明する。
・・・
絵素電極部5aの形成されたガラス基板1に対向する他方のガラス基板20の内面には、カラーフィルタ21、対向電極22、及び配向層23が重畳形成されている。カラーフィルタ21の周囲には必要に応じてブラックマトリクス(図示せず)が設けられている。
上記一対のガラス基板1、20の間には表示媒体として、ツィステドネマチック液晶分子18が封入されている。液晶分子18は絵素電極5と対向電極22との間に印加電圧に応答して配向変換され、光学的変調が行われる。この光学的変調が表示パターンとして視認される。」

(3)引用発明
上記記載事項を含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「マトリクス状に配列され、一対の絵素電極部に分割された絵素電極、該一対の絵素電極部の間にTa金属層として形成されたゲートバス配線、及びカラーフィルタ、対向電極を備え、選択された絵素電極とこれに対向する対向電極との間に電圧が印加され、その間に介在する表示媒体の光学的変調が行われるものであって、
一つの絵素電極を構成する二つの絵素電極部は、同時に同じ表示動作を行うことができるように構成されている、
ことを特徴とする表示装置。」


4 対比
本願発明と引用発明を対比する。

ア 引用発明はカラーフィルタを備える表示装置であるから、技術常識からみて、2色以上(通常はRGBの3色以上)のカラーフィルタの色部分を有し、各々の該色部分が少なくとも1つの絵素電極に対応して配置されていること、また、異なる該色部分(及び対応する絵素電極)が隣接して配置され、合わせて1つのピクセルを形成することは明らかである。
そして、引用発明は「選択された絵素電極とこれに対向する対向電極との間に電圧が印加され、その間に介在する表示媒体の光学的変調が行われるもの」であるから、該ピクセル中の「一対の絵素電極部」を含む領域が、本願発明における「可変の透明度又は輝度」の「切替可能領域」に相当し、また「一対の絵素電極部の間にTa金属層として形成されたゲートバス配線」は光を透過しない構造であるから、該配線を含む領域は、本願発明における「非切替可能領域」に相当する。また、これらの領域が各々の色部分に対応することは当然であり、これは、本願発明における「1又はそれ以上の構成色に関する」もしくは「構成色の各々に関する」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「マトリクス状に配列され、一対の絵素電極部に分割された絵素電極、該一対の絵素電極部の間にTa金属層として形成されたゲートバス配線、及びカラーフィルタ、対向電極を備え、選択された絵素電極とこれに対向する対向電極との間に電圧が印加され、その間に介在する表示媒体の光学的変調が行われるもの」であるという構成は、本願発明の「各ピクセル(30、30A-30P、102、104)が可変の透明度又は輝度の1又はそれ以上の構成色に関する切替可能領域(32、32A-32P、92-94)と構成色の各々に関する非切替可能領域(34、34A-34P、103、105)とを有するピクセル(40)のアレイを備え」るという構成に相当する。

イ 引用発明は、「一対の絵素電極部に分割された絵素電極」、「該一対の絵素電極部の間にTa金属層として形成されたゲートバス配線」を備えているので、各々の対応する色部分について、絵素電極がゲートバス配線を含む領域によって2つに分割されているといえる。
そうすると、引用発明の「一対の絵素電極部に分割された絵素電極、該一対の絵素電極部の間にTa金属層として形成されたゲートバス配線」を有する構成と、本願発明の「前記ピクセル(30、30A-30P、102、104)の各々の各構成色に関する前記切替可能領域(32、32A-32P、92-94)が、構成色に関する前記非切替可能領域(34、34A-34P、103、105)の有意な部分によって少なくとも部分的に分離された構成色に関する少なくとも2つの切替可能部分に分割され」る構成は、「前記ピクセルの各々の各構成色に関する前記切替可能領域が、構成色に関する前記非切替可能領域によって少なくとも部分的に分離された構成色に関する少なくとも2つの切替可能部分に分割され」ている点で共通する。

ウ 引用発明の「一つの絵素電極を構成する二つの絵素電極部は、同時に同じ表示動作を行うことができるように構成されている」点は、本願発明の「各構成色に関する前記少なくとも2つの切替可能部分が、同時に切り替えられるように構成されている」点に相当する。

エ 引用発明の「表示装置」は、本願発明の「ディスプレイ」に相当する。
してみると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
【一致点】
「各ピクセルが可変の透明度又は輝度の1又はそれ以上の構成色に関する切替可能領域と構成色の各々に関する非切替可能領域とを有するピクセル(40)のアレイを備え、
前記ピクセルの各々の各構成色に関する前記切替可能領域が、構成色に関する前記非切替可能領域によって少なくとも部分的に分離された構成色に関する少なくとも2つの切替可能部分に分割され、
各構成色に関する前記少なくとも2つの切替可能部分が、同時に切り替えられるように構成されている、
ことを特徴とするディスプレイ。」

【相違点】
本願発明において、「切替可能領域」は、「非切替可能領域の有意な部分によって」少なくとも2つの切替可能部分に分割されるのに対し、引用発明は「一対の絵素電極部に分割された絵素電極、該一対の絵素電極部の間にTa金属層として形成されたゲートバス配線」を備えているものの、絵素電極を分割する「Ta金属層として形成されたゲートバス配線」を含む領域が「有意な部分」であるのかは不明である点で一応相違する。


5 判断
以下,相違点について検討する。
引用発明において、絵素電極を分割する領域は「Ta金属層として形成されたゲートバス配線」を含み、少なくとも該配線以上の幅をもつ非透過領域であるから、これが表示装置の観察者の視覚に影響を与えうるものであることは明らかである。(引用文献1の第1図を見ても、絵素電極を分割する領域の幅は、絵素電極間の領域(ソースバス配線を含む領域)の幅と同等のものとなっている。)
したがって、引用発明の「Ta金属層として形成されたゲートバス配線」を含む領域は、本願発明でいう「非切替可能領域の有意な部分」に相当し、上記相違点は実質的な相違点ではない。

してみると、本願発明は引用発明であるといえる。
また、当業者がゲートバス配線としての十分な性能を確保するべく、その幅を十分なものとすることは設計的事項にすぎないから、本願発明は引用発明から当業者が容易に発明をすることができたともいえる。


6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明であり、特許法第29条1項第3号に規定する発明であるから特許を受けることができない。また、本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-01 
結審通知日 2015-06-08 
審決日 2015-06-19 
出願番号 特願2012-257679(P2012-257679)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
P 1 8・ 113- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 直行  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 中塚 直樹
樋口 信宏
発明の名称 分散アパーチャディスプレイ  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 夫馬 直樹  
代理人 小林 泰  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  

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