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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G07G
管理番号 1307362
審判番号 不服2014-15257  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-04 
確定日 2015-11-05 
事件の表示 特願2009-203376号「レジ精算装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月17日出願公開、特開2011- 54007号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成21年9月3日の特許出願であって、平成26年4月25日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成26年8月4日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされ、その後、平成27年6月25日付けで当審から拒絶の理由が通知され、同年8月24日に意見書とともに手続補正書が提出され、特許請求の範囲及び明細書について補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、上記平成27年8月24日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。(以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「【請求項1】
買い物代金の集計や登録を行うキャッシュレジスタと、前記キャッシュレジスタに接続され、買い物代金としての貨幣を投入可能な投入口や釣銭を払い出す払出口等が設けられた操作部を筐体の一方側に配置した貨幣処理機と、これらを載置して配置するレジ台とを備えたレジ精算装置において、前記レジ台は、前記キャッシュレジスタと前記貨幣処理機をそれぞれ個別に載置してなり、前記貨幣処理機を載置する態様でその操作部の向きを、これを管理する係員側に向けた通常操作位置と、顧客側に向けたセルフ操作位置とに容易に切り替え可能に構成された回転自在な回転板部を有することを特徴とするレジ精算装置。」

第3 引用刊行物記載の発明
これに対して、当審での平成27年6月25日付けの拒絶の理由に引用された、本件の出願日前に頒布された刊行物である特開2009-187078号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の発明が記載されていると認められる。

1 刊行物1に記載された事項
刊行物1には、「POS装置」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】
買上商品の情報を自動的に読み取り登録するPOS装置であって、
鉛直方向に固定された回転軸と、
回転軸を中心に回転自在に設けられた回転板と、
回転板に搭載され、少なくともスキャナとプリンタとを有する回転部分と、
回転軸の先端に設けられた店員用の表示装置及び顧客用の表示装置とを有することを特徴とするPOS装置。」

(イ)「【0008】
本発明では、1台のPOS装置をシェアして利用することで、店員が居る場合には店員サービスのできるPOS装置として利用でき、店員が少ない時間帯や品出しのために店員が席を外す場合などにおいて、装置の必要部分を回転させて利用することにより、セルフサービスPOS装置としても利用できる。」

(ウ)「【0011】
まず、図1及び図2を参照して、本発明のPOS装置の構成を説明する。図1は、本発明のPOS装置の構成を示す概観図である。図2は、本発明のPOS装置の構成の側面図である。
【0012】
POS装置100は、買上商品の情報を自動的に読み取り登録するための装置である。POS装置100は、机1に鉛直方向に固定された回転軸2と、回転軸2を中心に回転自在に設けられた回転板3と、回転板3に搭載され、バーコードスキャナ4(固定式レーザ)とレシートプリンタ5とを有する回転部分6と、回転軸2の先端に設けられた店員用の表示装置(以下、LCD7という)及び顧客用の表示装置(以下、LCD8という)とを有する。さらに、回転部分6の横側には決済端末9が設置されている。
【0013】
回転板3は、回転軸2を中心として180度回転自在に構成され、これに伴い、回転部分6が図1の矢印A方向に回転するようになっている。ここで、LCD7及びLCD8は回転しないように構成されている。」

(エ)「【0015】
図3は、本発明のPOS装置の概観構成を示す図であり、(a)は定員サービス時(通常時)(当審注:「定員」は「店員」の誤記。以下同様。)の状態、(b)はセルフサービス時の状態をそれぞれ示す。
【0016】
定員サービス時には、図3(a)に示すように、レシートプリンタ5とバーコードスキャナ4は店員側を向いているので、顧客はレシートプリンタ5とバーコードスキャナ4を操作できない。
【0017】
一方、セルフサービス時には、図3(b)に示すように、レシートプリンタ5とバーコードスキャナ4は顧客側を向いているので、顧客はレシートプリンタ5とバーコードスキャナ4を操作可能である。」

(オ)「【0019】
図4は、店員側のLCD7の横側にPOSキーボードを設置した構成を示す。
【0020】
図4に示すように、LCD7の横側に設置されたPOSキーボード10から、店員が顧客の預かり金額を入力すると、POS装置100はお釣り金額を計算して店員側のLCD7あるいは顧客側のLCD8に表示する。ここで、顧客がキーボードを操作することは不慣れな場合が多いので、本実施例では、店員側のみにPOSキーボード10を設置している。」

(カ)「【0023】
(実施例)
次に、図6及び図7を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0024】
図6は、店員サービス時のPOS装置100の具体的な構成を示す図である。図7は、顧客サービス時のPOS装置100の具体的な構成を示す図である。ここで、図1乃至図4と同じ構成部分には同じ参照番号が付されている。
【0025】
POS装置100は、机1上に設けられた土台61上に設置されている。土台61には、釣り銭や預かり金を保管するためのキャッシュドロワー62が設置されており、POS装置100と接続されている。また、POS装置100には、バーコードハンドスキャナ63が設置されている。バーコードハンドスキャナ63は、固定式のバーコードスキャナ4の補助として手に持つタイプのスキャナである。・・・(後略)」


(キ)「【0027】
まず、図6を参照して、店員サービス時の動作を説明する。
【0028】
初めに、POS装置100に顧客が購入したい商品を持って来る。店員は、バーコードスキャナ4やバーコードハンドスキャナ63を使用して商品をPOS装置100に登録する。バーコードの無い商品の場合には、タッチパネルによって商品をPOS装置100に登録する。」

(ク)「【0039】
顧客側のLCD8には、商品が登録される度に小計が計算され表示される。電子決済の決済カードがプリペイド式の場合は小計金額が、残高を超えた場合には顧客へ「残高不足」を知らせることもできる。・・・」

(ケ)「【0065】
また、本発明の実施例では、セルフサービス時には電子決済に特化しているが、自動釣り銭機などのユニットをPOS装置100に接続することで、現金決済または電子決済へのチャージ機能として活用するようにしても良い。」

(コ)上記記載事項(キ)に「バーコードの無い商品の場合には、タッチパネルによって商品をPOS装置100に登録する。」とあり、また上記記載事項(オ)に「LCD7の横側に設置されたPOSキーボード10から、店員が顧客の預かり金額を入力する」とあることから、「LCD7」と「LCD7の横側に設置されたPOSキーボード10」を合わせて、「買い物代金の集計や登録を行うLCD7及びPOSキーボード10」ということができる。

(サ)上記記載事項(ウ)の「バーコードスキャナ4とレシートプリンタ5とを有する回転部分6」は、上記認定事項(コ)の「買い物代金の集計や登録を行うLCD7及びPOSキーボード10」と接続されているものと認められる。

(シ)上記認定事項(サ)の「バーコードスキャナ4とレシートプリンタ5とを有する回転部分6」に関し、上記記載事項(エ)の図3(a),(b)に示される「レシートプリンタ5」と「バーコードスキャナ4」の配置を踏まえれば、「バーコードスキャナ4とレシートプリンタ5とを筐体の一方側に配置した回転部分6」ということができる。

2 刊行物1発明
そこで、刊行物1の上記記載事項(ア)ないし(ケ)及び上記認定事項(コ)ないし(シ)を図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下「刊行物1発明」という。)
「買い物代金の集計や登録を行うLCD7及びPOSキーボード10と、前記LCD7及びPOSキーボード10に接続され、コードスキャナ4とレシートプリンタ5とを筐体の一方側に配置した回転部分6と、これらを載置して配置する土台61とを備えたPOS装置100において、前記土台61は、前記LCD7及びPOSキーボード10と、前記回転部分6をそれぞれ個別に載置してなり、前記回転部分6の向きを、これを管理する店員係側に向けた店員サービス時(通常時)の位置と、顧客側に向けたセルフサービス時の位置とに容易に切り替え可能に構成された回転自在に設けられた回転板3を有し、さらに、セルフサービス時に現金決済機能として活用される自動釣り銭機などのユニットをPOS装置100に接続するPOS装置100。」

第4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「買い物代金の集計や登録を行う」「LCD7及びPOSキーボード10」が本願発明の「買い物代金の集計や登録を行う」「キャッシュレジスタ」に相当することは、その機能に照らして明らかであり、以下同様にそれぞれの機能及び技術常識を踏まえれば、「土台61」は「レジ台」に、「POS装置100」は「レジ精算装置」に、「店員係側」は「係員側」に、「店員サービス時(通常時)の位置」は「通常操作位置」に、「セルフサービス時の位置」は「セルフ操作位置」に、「回転自在に設けられた回転板3」は「回転自在な回転板部」に相当することも明らかである。
次に、刊行物1発明の「コードスキャナ4とレシートプリンタ5とを筐体の一方側に配置した回転部分6」は、本願発明の「買い物代金としての貨幣を投入可能な投入口や釣銭を払い出す払出口等が設けられた操作部を筐体の一方側に配置した貨幣処理機」とは、本願発明の該「貨幣処理機」が「その操作部の向きを」「回転自在」であることを踏まえ、両者は、「処理機能を筐体の一方側に配置した回転部分」である限りにおいて共通する。

したがって、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「買い物代金の集計や登録を行うキャッシュレジスタと、前記キャッシュレジスタに接続され、処理機能を筐体の一方側に配置した回転部分と、これらを載置して配置するレジ台とを備えたレジ精算装置において、前記レジ台は、前記キャッシュレジスタと前記回転部分をそれぞれ個別に載置してなり、前記回転部分の向きを、これを管理する係員側に向けた通常操作位置と、顧客側に向けたセルフ操作位置とに容易に切り替え可能に構成された回転自在な回転板部を有するレジ精算装置。」

そして、本願発明と刊行物1発明とは、以下の2点で相違している。
<相違点1>
処理機能を筐体の一方側に配置した回転部分に関し、本願発明は、買い物代金としての貨幣を投入可能な投入口や釣銭を払い出す払出口等が設けられた操作部を筐体の一方側に配置した貨幣処理機であるのに対し、刊行物1発明は、コードスキャナ4とレシートプリンタ5とを筐体の一方側に配置した回転部分6である点。
<相違点2>
本願発明は、貨幣処理機を載置する態様でその操作部の向きを回転自在とするのに対し、刊行物1発明は、セルフサービス時に現金決済機能として活用される自動釣り銭機などのユニットをPOS装置100(レジ精算装置)に接続するものの、該自動釣り銭機などのユニットが回転自在か不明である点。

第5 相違点の検討
1 <相違点1>及び<相違点2>について
刊行物1発明は、セルフサービス時に現金決済機能として活用される「自動釣り銭機などのユニット」をPOS装置100に接続するものである。ここで、そのような「現金決済機能として活用される自動釣り銭機などのユニット」は、セルフサービス時のみならず、通常の店員サービス時にも有用なものであるから、これを通常の店員サービス時にも活用することは、装置全体の簡素化の観点から、当業者において十分動機付けがあることといえる。
そして、そのように「現金決済機能として活用される自動釣り銭機などのユニット」をセルフサービス時と通常の店員サービス時に兼用させようとする場合、刊行物1発明は、処理機能を筐体の一方側に配置し、通常時の位置とセルフサービス時の位置の向きに回転自在とされた「回転部分6」を有することから、該「回転部分6」に「現金決済機能として活用される自動釣り銭機などのユニット」を筐体の一方側に加えて配置することを試みるのは、当業者が容易に想到し得ることというべきである。
そうした場合、処理機能を筐体の一方側に配置した回転部分6は、現金決済機能として活用される自動釣り銭機などのユニットを筐体の一方側に配置した回転部分6として構成されることになり、すなわち、相違点1に係る本願発明の構成に対応することとなる。また、その場合は、回転部分6は、貨幣処理機たる「現金決済機能として活用される自動釣り銭機などのユニット」を載置する態様で回転自在となるから、相違点2に係る本願発明の構成にも対応する。
そうしてみると、相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成は、刊行物1発明から、当業者が容易に想到し得たものと解するのが相当である。

2 請求人の主張について
請求人は、平成27年8月24日付け意見書にて、本願発明が、レジ清算装置への商品の登録を係員が行うことを前提に、貨幣受け払い業務を係員が行う係員操作方式と顧客が行う顧客操作方式とに必要に応じて変更可能としたものであるのに対し、刊行物1に記載された発明は、商品の登録および貨幣受け払い業務のすべてを店員または顧客が行う方式に係るものであることから、本願請求項1に係る発明のように、商品の登録を店員が行い、貨幣受け払い業務を係員が行う係員操作方式と顧客が行う顧客操作方式とに必要に応じて変更可能とする必要のないものである旨主張する。(意見書5.5-1)2)項)
しかしながら、本願発明と刊行物1発明とにその使用形態の相違があるにせよ、本願発明のような貨幣受け払い業務のみをセルフ可能とする使用形態も、刊行物1発明のような全セルフ可能とする使用形態も、いずれも当業者によく知られた使用形態であり、いずれの使用形態を用いるかは当業者が適宜選択し得るものである。
よって、請求人の主張には理由がない。

3 小括
したがって、本願発明は、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-01 
結審通知日 2015-09-08 
審決日 2015-09-24 
出願番号 特願2009-203376(P2009-203376)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G07G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮下 浩次柳本 陽征  
特許庁審判長 内藤 真徳
特許庁審判官 熊倉 強
長屋 陽二郎
発明の名称 レジ精算装置  
代理人 松本 洋一  

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