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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1307364
審判番号 不服2014-17716  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-05 
確定日 2015-11-05 
事件の表示 特願2013-47800「部品内蔵配線板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年6月6日出願公開、特開2013-110441〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年11月1日に出願した特願2007-284754号(以下「原出願」という。)の一部を平成25年3月11日に新たな特許出願としたものであって、平成26年6月4日付け(発送日:6月10日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年9月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
そして、当審において、平成27年5月7日付けで拒絶の理由が通知され、それに対して平成27年7月8日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年7月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
第1の絶縁板上に積層された金属箔をパターニングし、端子パッドを有する半導体チップと、該端子パッドに電気的に接続されたグリッド状配列の表面実装用端子とを備えた半導体素子を実装するためのランドである第1のランドと、表面実装用のチップ部品を実装するためのランドである第2のランドとを含む配線パターンを形成する工程と、
前記第1の絶縁板上の前記第1、第2のランド上にクリームはんだまたは未硬化の導電性組成物を適用する工程と、
前記クリームはんだまたは前記導電性組成物を介して前記第1の絶縁板の前記第1のランド上に前記半導体素子を載置する工程と、
前記クリームはんだまたは前記導電性組成物を介して前記第1の絶縁板の前記第2のランド上に、前記半導体素子よりも全高サイズが大の表面実装用のチップ部品を載置する工程と、
前記第1のランド上に前記半導体素子が載置され前記第2のランド上に前記チップ部品が載置された状態において、前記クリームはんだをリフローすべくまたは前記導電性組成物を硬化すべく加熱して、前記半導体素子を前記第1のランドにおよび前記チップ部品を前記第2のランドに接続する工程と、
前記第1の絶縁板とは別の絶縁板である第2の絶縁板として、硬化された層である硬化層と硬化前の層であるプリプレグ層とが積層され、かつ、該第2の絶縁板が前記第1の絶縁板に対向されたとき、前記第1のランドに接続された前記半導体素子および前記第2のランドに接続された前記チップ部品に対応する位置に、前記硬化層と前記プリプレグ層とに連続している開口部が形成された絶縁板を用意する工程と、
前記第1、第2の絶縁板とは別の絶縁板である、均一厚みを有する第3の絶縁板をも用い、前記第1、第2、第3の絶縁板内に前記半導体素子および前記チップ部品を埋め込むように、前記第1の絶縁板に積層状に、前記第2の絶縁板の前記プリプレグ層の側を、前記開口部内に前記半導体素子および前記チップ部品を位置させつつ対向させ、かつ該第2の絶縁板の前記硬化層の側に前記第3の絶縁板を対向させて加圧し、前記半導体素子に加わる圧力を該半導体素子よりも全高サイズが大の前記チップ部品に加わる圧力により緩和させつつ、前記第1、第2、第3の絶縁板を積層一体化する工程と
を具備する部品内蔵配線板の製造方法。」

第3 刊行物
1.当審の拒絶の理由に引用された、原出願の出願日前に日本国内において頒布された特開2007-73866号公報(以下「刊行物1」という。)には、「部品内蔵配線板」に関し、図面(特に、図3ないし5参照。)とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与するものである。以下、同様。)。

ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁板中に電気/電子部品を埋設して有する部品内蔵配線板に係り、特に、部品内蔵によって配線板としての信頼性が低下することを防止するのに好適な部品内蔵配線板に関する。」

イ.「【0034】
次に、図1に示した部品内蔵配線板の製造工程を図3ないし図5を参照して説明する。図3ないし図5は、それぞれ、図1に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図である。これらの図において図1中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0035】
図3から説明する。図3は、図1中に示した各構成のうち絶縁層11を中心とした部分の製造工程を示している。まず、図3(a)に示すように、厚さ例えば18μmの金属箔(電解銅箔)22A上に例えばスクリーン印刷により、層間接続体31となるペースト状の導電性組成物をほぼ円錐形のバンプ状(底面径例えば200μm、高さ例えば160μm)に形成する。この導電性組成物は、ペースト状の樹脂中に銀、金、銅などの金属微細粒または炭素微細粒を分散させたものである。説明の都合で金属箔22Aの下面に印刷しているが上面でもよい(以下の各図も同じである)。層間接続体31の印刷後これを乾燥させて硬化させる。
【0036】
次に、図3(b)に示すように、金属箔22A上に厚さ例えば公称100μmのFR-4のプリプレグ11Aを積層して層間接続体31を貫通させ、その頭部が露出するようにする。露出に際してあるいはその後その先端を塑性変形でつぶしてもよい(いずれにしても層間接続体31の形状は、積層方向に一致する軸を有しその軸方向に径が変化する形状である。)。続いて、図3(c)に示すように、プリプレグ31A(当審注:「11A」の誤記)上に金属箔(電解銅箔)21Aを積層配置して加圧・加熱し全体を一体化する。このとき、金属箔21Aは層間接続体31と電気的導通状態となり、プリプレグ11Aは完全に硬化して絶縁層11になる。
【0037】
次に、図3(d)に示すように、片側の金属箔22Aに例えば周知のフォトリソグラフィによるパターニングを施し、これを、実装用ランドを含む配線パターン22に加工する。そして、加工により得られた実装用ランド上に、図3(e)に示すように、例えばスクリーン印刷により上記説明のクリーム半田51Aを印刷する。クリーム半田51Aは、スクリーン印刷を用いれば容易に所定パターンに印刷できる。スクリーン印刷に代えてディスペンサを使用することもできる。
【0038】
次に、チップ部品41をクリーム半田51Aを介して実装用ランド上に例えばマウンタで載置し、さらにその後クリーム半田51Aを例えばリフロー炉でリフローさせる。これにより、図3(f)に示すように、接続部51を介してチップ部品41が配線層22の実装用ランド上に接続された状態の配線板素材1が得られる。この配線板素材1を用いる後の工程については図5で後述する。
【0039】
次に、図4を参照して説明する。図4は、図1中に示した各構成のうち絶縁層13および同12を中心とした部分の製造工程を示している。まず、図4(a)に示すように、両面に例えば厚さ18μmの金属箔(電解銅箔)23A、24Aが積層された例えば厚さ300μmのFR-4の絶縁層13を用意し、その所定位置にスルーホール導電体を形成するための貫通孔62をあけ、かつ内蔵するチップ部品41に相当する部分に開口部61を形成する。
【0040】
次に、無電解めっきおよび電解めっきを行い、図4(b)に示すように、貫通孔62の内壁にスルーホール導電体33を形成する。このとき開口部61の内壁にも導電体が形成される。さらに、図4(c)に示すように、金属箔23A、24Aを周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングして配線層23、24を形成する。配線層23、24のパターニング形成により、開口部61の内壁に形成された導電体も除去される。
【0041】
次に、図4(d)に示すように、配線層23上の所定の位置に層間接続体32となる導電性バンプ(底面径例えば200μm、高さ例えば160μm)をペースト状導電性組成物のスクリーン印刷により形成する。続いて、図4(e)に示すように、絶縁層12とすべきFR-4のプリプレグ12A(公称厚さ例えば100μm)を配線層23側にプレス機を用い積層する。プリプレグ12Aには、絶縁層13と同様の、内蔵するチップ部品41に相当する部分の開口部をあらかじめ設けておく。
【0042】
この積層工程では、層間接続体32の頭部をプリプレグ12Aに貫通させる。なお、図10(e)における層間接続体32の頭部の破線は、この段階でその頭部を塑性変形させてつぶしておく場合と塑性変形させない場合の両者あり得ることを示す。この工程により、配線層23はプリプレグ12A側に沈み込んで位置することになる。以上により得られた配線板素材を配線板素材2とする。
【0043】
なお、以上の図4に示した工程は、以下のような手順とすることも可能である。図4(a)の段階では、貫通孔62のみ形成し内蔵部品用の開口部61を形成せずに続く図4(b)から図4(d)までの工程を行う。次に、図4(e)に相当する工程として、プリプレグ12A(開口のないもの)の積層を行う。そして、絶縁層13およびプリプレグ12Aに部品内蔵用の開口部を同時に形成する、という工程である。
【0044】
次に、図5を参照して説明する。図5は、上記で得られた配線板素材1、2などを積層する配置関係を示す図である。ここで、図示上側の配線板素材3は、下側の配線板素材1と同様な工程を適用し、かつそのあと層間接続体34およびプリプレグ14Aを図示中間の配線板素材2における層間接続体32およびプリプレグ12Aと同様にして形成し得られたものである。ただし、部品(チップ部品41)およびこれを接続するための部位(実装用ランド)のない構成であり、さらにプリプレグ14Aにはチップ部品41用の開口部も設けない。そのほかは、金属箔(電解銅箔)26A、絶縁層15、層間接続体35、配線層25、プリプレグ14A、層間接続体34とも、それぞれ配線板素材1の金属箔21A、絶縁層11、層間接続体31、配線層22、配線板素材2のプリプレグ12A、層間接続体32と同じである。
【0045】
図5に示すような配置で各配線板素材1、2、3を積層配置してプレス機で加圧・加熱する。これにより、プリプレグ12A、14Aが完全に硬化し全体が積層・一体化する。このとき、加熱により得られるプリプレグ12A、14Aの流動性により、チップ部品41の周りの空間およびスルーホール導電体33内部の空間にはプリプレグ12A、14Aが変形進入し空隙は発生しない。また、配線層22、24は、層間接続体32、34にそれぞれ電気的に接続される。この積層工程の後、上下両面の金属箔26A、21Aを周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングし、図1に示したような部品内蔵配線板を得ることができる。」

ウ.図3及び上記イの段落【0037】、【0038】の記載によれば、図3(d)の工程は「配線板素材1となる絶縁層11上に積層された金属箔22Aをパターニングし、表面実装用のチップ部品41を実装するためのランドを含む配線層22を形成する工程」といえ、図3(e)の工程は「絶縁層11上のランド上にクリーム半田51Aを適用する工程」といえ、図3(f)の工程は「クリーム半田51Aを介して絶縁層11のランド上に、表面実装用のチップ部品41を載置する工程と、ランド上にチップ部品41が載置された状態において、クリーム半田51Aをリフローすべく加熱して、チップ部品41をランドに接続する工程」といえる。

エ.図4及び上記イの段落【0039】、【0041】及び【0042】の記載によれば、配線板素材2は「硬化された絶縁層13と硬化前の層であるプリプレグ12Aとが積層され、かつ、配線板素材1に対向されたとき、ランドに接続されたチップ部品41に対応する位置に、前記絶縁層13と前記プリプレグ12Aとに連続している開口部61が形成されたもの」といえる。

オ.図5及び上記イの段落【0044】の「ただし、部品(チップ部品41)およびこれを接続するための部位(実装用ランド)のない構成であり、さらにプリプレグ14Aにはチップ部品41用の開口部も設けない。そのほかは、金属箔(電解銅箔)26A、絶縁層15、層間接続体35、配線層25、プリプレグ14A、層間接続体34とも、それぞれ配線板素材1の金属箔21A、絶縁層11、層間接続体31、配線層22、配線板素材2のプリプレグ12A、層間接続体32と同じである。」との記載から、配線板素材3は配線板素材1、2とは別の、均一の厚みを有する絶縁板ということができる。また、図5及び上記イの段落【0045】の記載によれば、図5の工程は「配線板素材1、2、3内にチップ部品41を埋め込むように、配線板素材1に積層状に、配線板素材2のプリプレグ12Aの側を、開口部61内に前記チップ部品41を位置させつつ対向させ、かつ該配線板素材2の絶縁層13の側に配線板素材3を対向させて加圧し、全体を積層一体化する工程」といえる。

上記記載事項、図示内容及び認定事項を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「配線板素材1となる絶縁層11上に積層された金属箔22Aをパターニングし、表面実装用のチップ部品41を実装するためのランドを含む配線層22を形成する工程と、
前記絶縁層11上の前記ランド上にクリーム半田51Aを適用する工程と、
前記クリーム半田51Aを介して前記絶縁層11の前記ランド上に、表面実装用のチップ部品41を載置する工程と、
前記ランド上に前記チップ部品41が載置された状態において、前記クリーム半田51Aをリフローすべく加熱して、前記チップ部品41を前記ランドに接続する工程と、
前記配線板素材1とは別の配線板素材2として、硬化された絶縁層13と硬化前の層であるプリプレグ12Aとが積層され、かつ、該配線板素材2が前記配線板素材1に対向されたとき、前記ランドに接続された前記チップ部品41に対応する位置に、前記絶縁層13と前記プリプレグ12Aとに連続している開口部61が形成された配線板素材2を用意する工程と、
前記配線板素材1、2とは別の、均一の厚みを有する配線板素材3をも用い、前記配線板素材1、2、3内に前記チップ部品41を埋め込むように、前記配線板素材1に積層状に、前記配線板素材2の前記プリプレグ12Aの側を、前記開口部61内に前記チップ部品を位置させつつ対向させ、かつ該配線板素材2の前記絶縁層13の側に前記配線板素材3を対向させて加圧し、全体を積層一体化する工程と
を具備する部品内蔵配線板の製造方法。」

2.当審の拒絶の理由に引用された、原出願の出願日前に日本国内において頒布された特開2005-333109号公報(以下「刊行物2」という。)には、「積層基板」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0005】
図27は、従来の半導体素子の装着工程であり、この半導体装着工程8では、半導体素子7が基板1上へ装着される。図28は、従来の積層基板の製造方法の中間材注入工程における中間材注入手段の断面図である。図27に示すように半導体装着工程8で、電子部品4が接続された基板1へ半導体素子7を装着し、中間材注入工程10では、半導体素子7と基板1との間とを接続するとともに、半導体素子7と基板1間の隙間31を埋めるために、ディスペンサ32などで半導体素子7と基板1との間に中間材33を注入していた。また、電子部品4と基板1との間にも中間材を注入する場合もあった。そして、乾燥工程11でこれらの中間材33を乾燥させることによって、半導体素子7に形成されたバンプ34と半導体素子接続パターン21aとを電気的、機械的に接続していた。」

イ.「【0009】
図30は、従来の積層基板の製造方法によって製造された積層基板の断面図である。以上のような工程によって、プラテン45でプリプレグ41を加熱しながら圧縮することで、プリプレグ41を孔43や孔44へ流入させ、さらに樹脂が硬化する温度まで上昇させることによって得ていた。」

ウ.「【0018】
まず図2を用いて本実施の形態1における積層基板の構成を説明する。図2において、101は熱硬化性の樹脂基板であり多層に形成されている。そして、この層内はインナービア(図示せず)で各層の上面と下面が接続されている。また、各層の上面には銅箔パターン(図示せず)が敷設され、各電子回路を形成している。
【0019】
そして、この基板101の上面には、ランドパターン104a,104bが形成されており、この基板101の上面に載置された半導体素子(電子部品の一例として用いた)105とランドパターン104aの間ははんだバンプ102で接続され、一方抵抗(電子部品の一例として用いた)106とランドパターン104bとの間は、はんだ(接続固定材の一例として用いた)107で接続されている。」

エ.「【0028】
図7は、本実施の形態1のプリプレグ積層工程における積層基板の断面図である。図1、図7において、116はリフロー工程の後に設けられたプリプレグ積層工程である。このプリプレグ積層工程116では、基板101上に孔付プリプレグ141(シートの一例として用いた)を積層する工程であり、この孔付プリプレグ141は、孔加工工程117で、プリプレグ12に予め半導体素子105が挿入される孔146と、抵抗106が挿入される孔142とが加工されたものを用いる。なお、本実施の形態1におけるプリプレグ12は、ガラス不織布に熱硬化性樹脂を含浸させ、乾燥させたものである。本実施の形態1においては、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いているが、これは、フェノールなど他の熱硬化性樹脂を用いても良い。また、本実施の形態1においては、ガラス不織布を用いたが、これはガラス織布であるとか、他のアラミド樹脂などの樹脂系繊維などによる布を用いても良い。」

オ.「【0031】
本実施の形態1においては、基板101の上面に厚さ0.2mmのプリプレグ141a?141fの6枚からなるプリプレグ141がこの順に積層されている。この内、基板101の上面には、プリプレグ141aから141dまでの4枚のシートがこの順に積層されており、これらのシートに関しては、半導体素子105が挿入される孔146と、抵抗106が挿入される孔142とが形成されている。
【0032】
また、プリプレグ141dの上面に積層されるプリプレグ141eには抵抗106が挿入される孔142だけが設けられており、半導体素子105が挿入される孔146は設けられていない。即ち、電子部品の高さに応じた孔を設ける。なおこの場合、半導体素子105や抵抗106の上方にも空隙143a,144aを設けておくと良い。これは、後述する一体化工程118で加えられる圧縮圧力により、半導体素子105や抵抗106が、破壊しないようにするためである。つまりこれは、エポキシ樹脂108が軟化する前に、半導体素子105や抵抗106へ圧縮圧力がかかることを防ぐものである。
【0033】
なお、本実施の形態1において基板101上には、半導体素子105と、抵抗106の2種類の電子部品しか搭載していない。従って、プリプレグの積層枚数は6枚としている。しかしながら、さらに多種の電子部品が搭載される場合には、電子部品の高さも多種存在するので、これら種々の電子部品の高さに応じた隙間の高さを設定する必要が生じる。従って、そのような場合においては、さらに厚みの薄いプリプレグを用い積層枚数を増やしても良い。例えば0.1mmの厚みのプリプレグを用いて、それを12枚積層することや、2種類以上の厚みのプリプレグを混ぜて積層しても構わない。しかしその場合には、プリプレグの積層回数が増加することとなるので、電子部品の高さの差へ対応できる範囲内で、できる限り積層枚数を少なくなるようにすることが望ましい。」

カ.「【0124】
ここで、プリプレグ302に孔を設けないので、本実施の形態2において半導体素子105や抵抗106の周囲に形成される隙間331は、実施の形態1で形成される空隙143,144よりも大きくなる。そこで、本実施の形態2における強制流入工程305の温度は100℃とすることで、確りと隙間331や隙間156,157へエポキシ樹脂317を充填できる。」

キ.図30及び上記記載事項ア、イから、半導体素子7と該半導体素子7より全高サイズが大の電子部品4とを内蔵した積層基板が、また、図2及び記載事項ウから、半導体素子素子105と該半導体素子105より全高サイズが大の抵抗106とを内蔵した積層基板が看取できることから、刊行物2には「半導体素子と、該半導体素子よりも全高サイズが大のチップ部品とを内蔵した配線基板」が記載されているといえる。(以下「刊行物2に記載の技術事項」という。)

第4 対比
引用発明の「配線板素材1?3」は、本願発明の「第1?3の絶縁板」に相当し、以下同様に、「金属箔22A」は「金属箔」に、「配線層22」は「配線パターン」に、「チップ部品41」は「チップ部品」に、「ランド」は「第2のランド」に、「クリーム半田51A」は「クリームはんだ」に、「開口部61」は「開口部」に、それぞれ相当するから、本願発明と引用発明とは、次の一致点、相違点を有するものと認められる。

[一致点]
「第1の絶縁板上に積層された金属箔をパターニングし、表面実装用のチップ部品を実装するためのランドである第2のランドを含む配線パターンを形成する工程と、
前記第1の絶縁板上の前記第2のランド上にクリームはんだを適用する工程と、
前記クリームはんだを介して前記第1の絶縁板の前記第2のランド上に、表面実装用のチップ部品を載置する工程と、
前記第2のランド上に前記チップ部品が載置された状態において、前記クリームはんだをリフローすべく加熱して、前記チップ部品を前記第2のランドに接続する工程と、
前記第1の絶縁板とは別の絶縁板である第2の絶縁板として、硬化された層である硬化層と硬化前の層であるプリプレグ層とが積層され、かつ、該第2の絶縁板が前記第1の絶縁板に対向されたとき、前記第2のランドに接続された前記チップ部品に対応する位置に、前記硬化層と前記プリプレグ層とに連続している開口部が形成された絶縁板を用意する工程と、
前記第1、第2の絶縁板とは別の絶縁板である、均一厚みを有する第3の絶縁板をも用い、前記第1、第2、第3の絶縁板内に前記チップ部品を埋め込むように、前記第1の絶縁板に積層状に、前記第2の絶縁板の前記プリプレグ層の側を、前記開口部内に前記チップ部品を位置させつつ対向させ、かつ該第2の絶縁板の前記硬化層の側に前記第3の絶縁板を対向させて加圧し、前記第1、第2、第3の絶縁板を積層一体化する工程と、
を具備する部品内蔵配線板の製造方法。」

[相違点1]
配線板に内蔵される部品が、本願発明では、「端子パッドを有する半導体チップと、該端子パッドに電気的に接続されたグリッド状配列の表面実装用端子とを備えた半導体素子」及び「表面実装用のチップ部品」であるのに対して、引用発明では、「表面実装用のチップ部品」である点。

[相違点2]
本願発明では、チップ部品が「半導体素子よりも全高サイズが大」であり、「前記半導体素子に加わる圧力を該半導体素子よりも全高サイズが大の前記チップ部品に加わる圧力により緩和させ」るのに対して、引用発明では、そもそも半導体素子を有していない点。

[相違点3]
本願発明では、半導体素子「を実装するためのランドである第1のランド」を有し、第1のランド上にクリームはんだ等を適用する工程、前記クリームはんだ等を介して前記第1の絶縁板の第1のランド上に半導体素子を載置する工程、半導体素子をリフロー等により該第1のランドに接続する工程を備え、さらに、第2の絶縁板が半導体素子に対応する位置に開口部が形成され、第1、第2、第3の絶縁板内に半導体素子を埋め込むのに対して、引用発明では、そもそも半導体素子を有していない点。

第5 当審の判断
[相違点1]、[相違点2]について
刊行物2には、上記第3、2.キのとおり「半導体素子と、該半導体素子よりも全高サイズが大のチップ部品とを内蔵した配線基板」が記載されている。なお、「多種の電子部品が搭載される場合には、電子部品の高さも多種存在する」(刊行物2の記載事項オの段落【0033】)との記載からみて、部品内蔵配線板において、高さの異なる多種の電子部品を内蔵させることは普通に行われていることである。また、「端子パッドを有する半導体チップと該端子パッドに電気的に接続されたグリッド状配列の表面実装用端子とを備えた半導体素子」は周知であるから、引用発明の部品内蔵配線板に、「端子パッドを有する半導体チップと該端子パッドに電気的に接続されたグリッド状配列の表面実装用端子とを備えた半導体素子」と、該半導体素子よりも全高サイズが大のチップ部品とを内蔵させるようにすることは、刊行物2に記載の技術事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、引用発明において、刊行物2に記載の技術事項を適用したものは、チップ部品の全高サイズが、半導体素子よりも大であるから、半導体素子に加わる圧力は、チップ部品に加わる圧力により緩和されることは明らかである。この点に関して、請求人は刊行物2の図29を参照し、半導体素子や抵抗(チップ部品)の真上のギャップの大小に依存する旨主張しているが、引用発明は均一の厚みを有する配線板素材3を用いるものであるから、請求人の主張は当たらない。また、刊行物2には、ギャップに関して「一体化工程118で加えられる圧縮圧力により、半導体素子105や抵抗106が、破壊しないようにするため」との記載(刊行物2の記載事項オの段落【0032】参照)があるにも拘わらず、半導体素子やチップ部品との間にギャップを設定しない実施の形態(刊行物2の記載事項カ、図18、図19参照)が記載されていることからみて、均一の厚みを有する配線板素材3を用いる引用発明に刊行物2に記載の技術事項(半導体素子と、該半導体素子よりも全高サイズが大のチップ部品とを内蔵した配線基板。)の適用を阻害するとはいえず、相違点1及び相違点2に係る特定事項とすることは、刊行物2に記載の技術事項及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3]について
上記「[相違点1]、[相違点2]について」において検討したとおり、配線板に半導体素子とチップ部品とを内蔵することは、当業者が容易に想到し得ることであるところ、チップ部品だけでなく半導体素子をも内蔵するためには、半導体素子のためのランドが必要になること(刊行物2の記載事項ウ参照)、また、該ランドに半導体素子を載置・接続する工程が必要になること(刊行物2の記載事項ア、ウ参照)、さらに、半導体素子内蔵のための開口部が必要になること(刊行物2の記載事項エ、オ参照)はいうまでもないから、相違点3に係る特定事項は、相違点1及び相違点2に係る特定事項を採用するについて、当然に採用すべき技術事項といえ、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明が奏する作用効果についても、引用発明、刊行物2に記載の技術事項及び周知の事項から予測の範囲のものにすぎない。

したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載の技術事項及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載の技術事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-03 
結審通知日 2015-09-08 
審決日 2015-09-24 
出願番号 特願2013-47800(P2013-47800)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 正章遠藤 秀明  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 内田 博之
森川 元嗣
発明の名称 部品内蔵配線板の製造方法  
代理人 須山 佐一  

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