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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) C02F |
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管理番号 | 1307383 |
判定請求番号 | 判定2015-600018 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2015-05-29 |
確定日 | 2015-11-19 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4744641号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号説明書に示す「MH-IA」は、特許第4744641号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨と手続の経緯 請求人の請求の趣旨は、イ号説明書に示す「MH-IA」(以下、「イ号物件」という。)は、特許第4744641号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 なお、請求人は、「5.請求の趣旨」において、「・・・特許第4744641号の技術的範囲に属する、との判定を求める。」と記載しているものの、「6.請求の理由」においては、本件発明として請求項1に係る発明を構成要件に分説し、それ以降では、分説された各構成要件毎にイ号物件の要件充足性を主張するにとどまり、請求項1以外の請求項に関する発明に対しては何ら具体的な主張をしていないので、請求人の請求の趣旨を上記のとおりとした。 また、本件に係る手続の経緯は、以下のとおりである。 平成22年10月18日 特許出願(特願2010-233312号) 平成23年 5月20日 特許登録 平成27年 5月29日 本件判定請求書の提出 同 年 7月15日 判定請求答弁書の提出(被請求人) 同 年 7月31日(特許庁受領日) 平成27年7月27日付け上申書(被請求人)(審決注:消印不明のため提出年月日は不明) そして、上記イ号説明書(甲第1号証)に加え、証拠方法として、請求人からは以下の書証が提出されている。 (1) 甲第2号証 本件特許登録原簿謄本(特許第4744641号) (2) 甲第3号証 本件特許公報(特許第4744641号) (3) 甲第4号証 株式会社NTCドリームマックス ウエブページ印刷物 http://www.ntcdm.jp/ 2015/01/29印刷 (4) 甲第5号証 平成27年5月25日付け 実験報告書 MiZ株式会社 (5) 甲第6号証 平成27年1月28日付け 試験報告書 一般財団法人化学物質評価研究機構 (6) 甲第7号証 平成27年5月29日付け 写真撮影報告書 メリットパートナーズ法律事務所 (7) 甲第8号証 Dr.CATION Personal 2007 水素カプセル専用MH-I 安全上のご注意 株式会社ドリームマックス また、被請求人は、判定請求答弁書とともに以下の乙第1?6号証を提出し、平成27年7月27日付け上申書とともに乙第7号証を提出した。 (1) 乙第1号証 イ号図面 (2) 乙第2号証 特開2012-20962号公報 (3) 乙第3号証 特開2013-163135号公報 (4) 乙第4号証 特開2004-231466号公報 (5) 乙第5号証 水質基準項目と基準値(51項目) 厚生労働省 (6) 乙第6号証 浄水水質検査結果 JWWA-GLP045 水道GLP認定 (7) 乙第7号証 本件判定に並行して請求された特許第4652479号の判定請求事件(判定2015-600019号)で判定請求人が提出した甲第1号証 なお、以下では、「甲第1号証」、「乙第1号証」等を、「甲1」、「乙1」などと表記する。 第2 本件特許発明 特許第4744641号の請求項1?9に係る特許発明は、特許明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?9に記載されたとおりのものであり、請求人が上記判定を求める請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)につき、その構成を構成要件毎に符合を付して分説すると、次のとおりである(以下、「構成要件A」などという。)。 「 A 水素発生剤として金属アルミニウム粒子、及び酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムのうち少なくともいずれか一方を含む水素発生反応促進剤を近接して含む水素発生系を有する生体適用液への水素添加器具であって、 B 該水素発生系と発生用水を反応させることを通じて水素ガスを原水である前記生体適用液に添加するとともに、アルミナセメントを含む、水素発生反応の副生成物の形成を通じて前記原水へのアルミニウムイオンの溶出を抑制しながら水素含有生体適用液を得ることを特徴とし、 C 水道水を脱塩素処理して得られる浄水を515cc充填した、口部までの満水充填で約530cc容量の炭酸飲料用ペットボトルの前記浄水中に前記水素添加器具を設置し、前記ペットボトルを横に倒して10分間放置した後、模範的な自然的振盪(ペットボトル中腹部を利手に保持し、手首のみを左右に動かすことでキャップが手首上空に半円の弧を描くように、2往復/秒のペースで120往復)を行ったとき、振盪直後の前記水素含有生体適用液のアルミニウムイオン濃度が、前記浄水のアルミニウムイオン濃度±15ppmの範囲に収まることを特徴とする、 D 生体適用液への水素添加器具。」 第3 イ号物件の構成 1 請求人の主張するイ号物件 請求人は、判定請求書第6頁において、MH-IAは、次の構成を有すると主張する(以下では、「構成a」などという。)。 「a 水素発生剤として金属アルミニウム粒子、及び酸化カルシウムを含む水素発生反応促進剤を近接して含む水素発生系を有する生体適用液への水素添加器具であって、 b 該水素発生系と発生用水を反応させることを通じて水素ガスを原水である前記生体適用液に添加するとともに、アルミナセメントを含む、水素発生反応の副生成物の形成を通じて前記原水へのアルミニウムイオンの溶出を抑制しながら水素含有生体適用液を得ることを特徴とし、 c 水道水を脱塩素処理して得られる浄水を515cc充填した、口部までの満水充填で約530cc容量の炭酸飲料用ペットボトルの前記浄水中にMH-IA(2)(イ号)を設置し、前記ペットボトルを横に倒して10分間放置した後、模範的な自然的振盪(ペットボトル中腹部を利手に保持し、手首のみを左右に動かすことでキャップが手首上空に半円の弧を描くように、2往復/秒のペースで120往復)を行ったとき、振盪直後の前記水素含有生体適用液のアルミニウムイオン濃度が、前記浄水のアルミニウムイオン濃度±0.29ppmの範囲に収まることを特徴とする、 d 生体適用液への水素添加器具。」 2 当審の認定するイ号物件 そこで、イ号物件であるMH-IAが、甲1?8及び乙1?7の記載からみて、請求人の主張するとおりの構成を有するかを検討する。 (1)構成a、dについて ア 生体適用液への水素添加器具について 甲1のイ号説明書でイ号物件として説明される商品名「MH-IA」は、「MH-I(Dr.CATION Personal 2007 水素発生キット)」に収容して販売されていると記載されているが、甲8の左下の表の原材料及び数量の記載によれば、MH-IBとともに、商品名である「MH-I(Dr.CATION Personal 2007 水素発生キッット)」を構成するものである。また、同じく、甲8の右上部分には、「MH-Iは、Dr.CATION Personal 2007 水素カプセル専用の水素発生キットです。」と記載されているので、MH-IAとMH-IBは、「Dr.CATION Personal 2007 水素カプセル」(以下、「水素カプセル」という。)で専用に使用される。 そして、甲4の第1頁の中程の「いつでもどこでも水素水」の欄には、「Personal 2007」について、「還元力の強い水素水をいつでもどこでもその場で作れてすぐ飲める! 水素水生成カプセルPersonal 2007誕生!!」と記載されているので、上記水素カプセルは、MH-IAとMH-IBとの反応により水素ガスを発生させて、飲料用の水素水を作る器具である。 また、該水素カプセルの断面図を示す乙7の図面1(第10頁)を参照すると、MH-IAは、開閉式の弁(16)を有するボトル底面部(13)及び下側キャップ(14)で形成される部分に収納されることが示され、該部分は、該部分の上部に位置する開閉式の弁(16)を介して透明ボトル部分(12)につながっているので、ボトル底面部(13)と下側キャップ(14)とに囲まれた部分で発生した水素ガスは、飲料用の水素水、すなわち、生体適用液を貯蔵すると認められる透明ボトル部分(12)へ送り込まれるものであると認められる。 これらの記載によれば、該水素カプセルは、MH-IAとMH-IBとの反応により水素ガスを発生し、この水素ガスが生体適用液を収容する透明ボトル部分(12)に送り込まれて水素含有水を得ることからなる、飲料用の水素水を作る器具である。 そして、MH-IAは、MH-IBとの反応により水素ガスを発生させ、水素含有生体適用液を得るために水素ガスを発生させるための水素発生キットを構成するものなので、「生体適用液への水素の添加手段」である。 したがって、イ号物件は、次の構成d’を有する。 「d’生体適用液への水素の添加手段。」 イ MH-IAの内容物について MH-IAは、甲8の左下の表の原材料の欄の記載によれば、マグネシウム、酸化カルシウム、アルミニウム、他を含有し、MH-IBは水を含有する。 また、甲7の写真4(第5頁)は1個のMH-IAを開封した状況を示すが、これによれば、アルミニウムと酸化カルシウム等は粒子状である。そして、写真3(第4頁)とあわせてみれば、MH-IAにおいて、粒子状のアルミニウムと酸化カルシウムは布からなる1つの包装体に収容されているといえるので、「近接して」保持されている。 ここで、粒子状のアルミニウム、すなわち金属アルミニウム粒子は、酸化カルシウム共存下で水と反応して水素を発生する物質であることは技術常識であり(例えば、特開2004-231466号公報)、上記粒子状のアルミニウムは「水素発生剤」としての「金属アルミニウム粒子」であるといえる。また、アルミニウムは酸化カルシウムとの共存下で水と反応して水素を発生するので、酸化カルシウムは金属アルミニウム粒子の「水素発生反応促進剤」であるといえる。 このため、金属アルミニウム粒子と酸化カルシウムは、「水素発生剤」と「水素発生反応促進剤」であるので、これらは「水素発生系」を成している。また、上記アで認定したとおり、MH-IAは「生体適用液への水素の添加手段」であることをあわせみれば、MH-IAは、「水素発生系を有する生体適用液への水素の添加手段」である。 とすると、MH-IAは、請求人の主張する構成aとは異なり、構成a’として次の構成を有する。 「水素発生剤として金属アルミニウム粒子、及び酸化カルシウムを含む水素発生反応促進剤を近接して含む水素発生系を有する生体適用液への水素の添加手段」。 (2)構成bについて 請求人の提示するイ号物件の構成bは、「水素発生系と発生用水を反応させることを通じて水素ガスを・・・生体適用液に添加するとともに、・・・水素発生反応の副生成物の形成を通じて・・・アルミニウムイオンの溶出を抑制しながら水素含有生体適用液を得ることを特徴」とすると記載されており、その記載ぶりから、イ号物件の「生体適用液への水素添加器具」の使用形態を特定するものである。 そこで、イ号物件であるMH-IAがどのような使用形態であるかを証拠に基づいて具体的に検討する。 この点に関し、上記水素カプセルは、上記2(1)アに記載したとおり、MH-IAとMH-IBとの反応により水素ガスを発生し、この水素ガスが生体適用液を収容する透明ボトル部分(12)に送り込まれて水素含有水を得ることからなる、飲料用の水素水を作る器具である。 そして、その断面図が乙7の図面1(第10頁)に示されており、これによれば、MH-IAは、該水素カプセルの開閉式の弁(16)を有するボトル底面部(13)及び下側キャップ(14)で形成される部分に収容されている。 また、この開閉式の弁(16)は、乙7の写真8(第9頁)に外観が示され、図面1(第10頁)ではくさび型に描かれているとともに、図面2(第11頁)にはその斜視図が示されており、これによれば直線状の開口部を有している。 そこで、上記水素カプセルの断面図に描かれた開閉式の弁(16)(図面1)、及び開閉式の弁(16)の斜視図(図面2)を考慮すれば、該開閉式の弁(16)は、MH-IA(21)とMH-IB(22)の反応により、 開閉式の弁(16)を有するボトル底面部(13)及び下側キャップ(21)で形成される部分に発生する水素ガスのガス圧によって押し開けられることで水素ガスを透明ボトル部分(12)に排気するが排気後には閉じるものであると認められる。 さらに、甲8の右上には、「MH-Iは、Dr.CATION Personal 2007 水素カプセル専用の水素発生キットです。」と記載され、同じく甲8の警告の欄の最初の強制には、MH-Iについて、「規定外の容量などで使用すると破損・ケガ・その他身体的な問題の原因となります。」と記載されている。 これらの記載事項からすれば、MH-IAは、開閉式の弁を有するボトル底面部及び下側キャップで形成される部分に収納され、MH-IBと反応して水素ガスを発生し、発生した水素ガスは開閉式の弁を介して生体適用液を収容する透明ボトル部分に送り込まれる。 このため、上記水素カプセルにおいては、MH-IAは生体適用液中に設置されて使用されるのではなく、生体適用液とは隔離された状態で使用される。 そうすると、該水素カプセルにおいては、MH-IAとMH-IBとの水素発生反応で副生成物が生成され、これが生体適用液中へ溶出することが想定されていない。実際に、水素カプセルにおいては、水素ガス発生系と生体適用液を収容する透明ガラス部分とは、水素ガスを排気するが排気後には閉じる開閉式の弁を介して隔離されているといえ、水素発生反応の副生成物が生体適用液中に溶出することはないので、MH-IAは、水素発生反応の副生成物の形成を通じて前記原水へのアルミニウムイオンの溶出を抑制するものではない。 したがって、MH-IAは、請求人の主張する構成bのうちの「アルミナセメントを含む、水素発生反応の副生成物の形成を通じて前記原水へのアルミニウムイオンの溶出を抑制しながら」という構成を有さない。 結局、構成bについては、請求人の主張のとおり認定することはできず、せいぜい、次のとおり認定できるにとどまる。 「b’ 該水素発生系と発生用水を反応させることを通じて水素ガスを原水である前記生体適用液に添加することにより水素含有生体適用液を得ることを特徴とし、」 (3)構成cについて 本件特許発明の構成要件Cは、水素添加器具のアルミニウムイオン溶出特性に関し、特定の測定条件下で特定の水素添加処理を行った場合のアルミニウムイオン溶出量を規定するものである。そこで、水素の添加手段としてのMH-IAが、該特定の測定条件で特定の水素添加処理を行った場合に同等のアルミニウム溶出特性を有するといえるかを検討する。 これに関しては、甲6の「4.試験方法」の「4.1 前処理」の「処理水」の項の説明によれば、甲6は、MH-IAを使用して構成要件Cで規定する特定の測定条件で特定の水素添加処理を行った後の、生体適用液のアルミニウムイオンの定量結果を報告するものである。 これによれば、アルミニウムイオン濃度は、浄水のアルミニウム濃度の±0.29ppmの範囲に収まっている。 したがって、イ号物件は、次の構成c’を有する。 「c’ 水道水を脱塩素処理して得られる浄水を515cc充填した、口部までの満水充填で約530cc容量の炭酸飲料用ペットボトルの前記浄水中に前記水素の添加手段を設置し、前記ペットボトルを横に倒して10分間放置した後、模範的な自然的振盪(ペットボトル中腹部を利手に保持し、手首のみを左右に動かすことでキャップが手首上空に半円の弧を描くように、2往復/秒のペースで120往復)を行ったとき、振盪直後の前記水素含有生体適用液のアルミニウムイオン濃度が、前記浄水のアルミニウムイオン濃度±0.29ppmの範囲に収まることを特徴とする、」 (4)イ号物件の構成 以上の検討の結果から、当審ではイ号物件の構成を次のとおり認定する(以下、「構成要件a’」などという。)。 「a’水素発生剤として金属アルミニウム粒子、及び酸化カルシウムを含む水素発生反応促進剤を近接して含む水素発生系を有する生体適用液への水素の添加手段であって、 b’ 該水素発生系と発生用水を反応させることを通じて水素ガスを原水である前記生体適用液に添加することにより水素含有生体適用液を得ることを特徴とし、 c’ 水道水を脱塩素処理して得られる浄水を515cc充填した、口部までの満水充填で約530cc容量の炭酸飲料用ペットボトルの前記浄水中に前記水素の添加手段を設置し、前記ペットボトルを横に倒して10分間放置した後、模範的な自然的振盪(ペットボトル中腹部を利手に保持し、手首のみを左右に動かすことでキャップが手首上空に半円の弧を描くように、2往復/秒のペースで120往復)を行ったとき、振盪直後の前記水素含有生体適用液のアルミニウムイオン濃度が、前記浄水のアルミニウムイオン濃度±0.29ppmの範囲に収まることを特徴とする、 d’ 生体適用液への水素の添加手段。」 第4 対比と判断 イ号物件の構成a’?d’が、本件特許発明の構成要件A?Dを充足するかを検討する。 1 構成a’、d’について (1)使用形態に関する記載事項 本件特許発明に係る「生体適用液への水素添加器具」の使用形態に関し、本件特許明細書には次の事項の記載がある。 「【0021】 本発明において金属アルミニウムと水酸化カルシウムが近接した状態にあるとは、金属アルミニウムと水酸化カルシウムが混合され、打錠などにより錠剤化または固形化された状態、または隔離体に混合充填された状態を含む。錠剤または固形剤がさらに隔離体内に保持されてもよい。また、水素発生系を錠剤化または固形化することにより、金属アルミニウムの粉塵爆発の危険性を防止することができる。」 「【0022】 なお、本発明の隔離体は、生体適用液から水素発生系を隔離し、かつ、水素発生剤と水素発生促進剤を近接した状態に維持するとともに、隔離体を生体適用液中に設置したときは、生体適用液の一部が、発生用水として隔離体内に導入されるものである。したがって、隔離体は、水素ガスを放出することができるとともに、適宜な量の水を透過させることができるガス透過膜などを有することが望ましい。・・・すなわち、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンのような高分子物質を用いてつくられていたり、または、製造時や加工時に撥水処理を施されていたりする不織布や合成樹脂膜などのガス透過膜であっても、本発明のガス透過膜として好適に使用され得る。」 (2)本件発明の水素添加器具の使用形態 これらの記載事項からすれば、本件特許発明においては、水素発生系を構成する金属アルミニウムと水酸化カルシウム(又は酸化カルシウム)は、錠剤化あるいは固形化された状態、又は不織布等の隔離体に混合充填され、水素添加器具として生体適用液中に設置され、生体適用液の一部が生成用水として水素添加器具に導入される。 このことは、実施例の記載からも確認することができ、実施例1、2、5及び追加の実施例では、水素発生系を不織布に包み込み、これをペットボトル中の水道水に投与して水素ガスを発生させ、実施例3では、水素発生系を不織布で包み込み筒状の多孔容器に収容した後に、実施例4では、水素発生系を錠剤化した後に、それぞれ、この水素添加器具をペットボトル中の水道水に投与している。 本件特許発明では、このように、水素添加器具を生体適用液中に設置することで、生体適用液の一部を発生用水として取り込んで水素ガスを発生させるとともに、アルミニウムイオンに対し、水素発生反応の副生成物の形成を通じて生体適用液中への溶出を抑制するもので、本件特許発明の水素添加器具は、このような態様で使用される器具であることを前提とする。 したがって、構成要件Bで規定する、水素ガスの生体適用液への添加と、アルミニウムイオンの溶出抑制は、水素添加器具を生体適用液中に設置することを前提としたものである。また、構成要件Cで規定するアルミニウムイオン溶出特性についても、同様に、水素添加器具を生体適用液中に設置することを前提としたものである。 (3)要件充足性の判断 上記したように、イ号物件の水素の添加手段であるMH-IAは、生体適用液中に設置されて使用されるのではなく、生体適用液とは隔離された状態で使用される。これに対し、本件発明の水素添加器具は、生体適用液の中に設置して使用される。 このため、イ号物件の水素の添加手段と本件特許発明の水素添加器具は、外形的には、「水素発生剤として金属アルミニウム粒子、及び酸化カルシウムを含む水素発生反応促進剤を近接して含む水素発生系を有する生体適用液へ」水素を添加するためのものであるという点で共通するとしても、その使用形態が異なる。 したがって、イ号物件の構成a’、d’は、本件特許発明の構成要件A、Dを充足しない。また、イ号物件には、構成a’、d’以外に本件特許発明の構成要件A、Dに対応する構成はない。 2 構成b’について イ号物件は、水素カプセル専用のMH-Iの構成要素の1つであって、水素カプセルにおいてのみ使用されるものであり、その使用形態において、開閉式の弁を介して原水からは隔離されているので、水素発生反応の副生成物であるアルミニウムイオンの溶出を抑制する機能を有さない。 このため、イ号物件は、構成要件Bで規定する「アルミナセメントを含む、水素発生反応の副生成物の形成を通じて前記原水へのアルミニウムイオンの溶出を抑制しながら水素含有生体的溶液を得る」という構成を有さない。 したがって、イ号物件の構成bは、本件特許発明の構成要件Bを充足しない。また、イ号物件には、構成b’以外に本件特許発明の構成要件Bに対応する構成はない。 3 構成c’について まず、本件特許発明の水素添加器具とイ号物件の水素の添加手段は、上記1の構成aで検討したとおり、異なるものである。 次に、上記第3、2(3)で述べたとおり、イ号物件の水素の添加手段は、本件特許発明の構成要件Cで特定する測定条件下で溶出するアルミニウムイオン濃度は、浄水のアルミニウム濃度の±0.29ppmの範囲内に収まっている。 しかし、上記しているとおり、イ号物件の水素の添加手段であるMH-IAは、本件特許発明の水素添加器具と異なり、生体適用液とは隔離された状態で使用される。このため、MH-IAは、構成要件Cで特定するアルミニウムイオンの溶出特性を有するといえるとしても、構成要件Cで特定する環境下で使用されることは予定されていない。 したがって、構成c’は構成要件Cを充足しないし、イ号物件には本件特許発明の構成要件Bに対応する構成はない 4 請求人の主張について 請求人は、判定請求書第10頁以降において、イ号物件は構成要件A?Dを充足する旨を主張する。 しかし、第3、2、(2)及び第4、1、(1)で述べたとおり、本件特許発明の水素添加器具とイ号物件のMH-IAとは、その使用形態が異なるものである。 このため、イ号物件の水素添加器具が外形や特性等が本件特許発明の水素添加器具と同等のものであったとしても、イ号物件の構成a’?d’は、本件特許発明の構成要件A?Dを充足しない。 したがって、請求人の主張は採用することができない。 5 小活 以上のとおりであるので、イ号物件は、本件特許発明の構成要件A、B、C、Dのいずれをも充足しないので、イ号物件は本件特許発明の技術的範囲に属しない。 第5 むすび したがって、イ号物件は、本件特許発明の技術範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2015-11-09 |
出願番号 | 特願2010-233312(P2010-233312) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(C02F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 片山 真紀 |
特許庁審判長 |
河原 英雄 |
特許庁審判官 |
後藤 政博 真々田 忠博 |
登録日 | 2011-05-20 |
登録番号 | 特許第4744641号(P4744641) |
発明の名称 | 生体適用液への水素添加器具 |
代理人 | 知念 芳文 |
代理人 | 西出 眞吾 |
代理人 | 関山 健一 |
代理人 | 酒井 正之 |
代理人 | 高田 幸彦 |