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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B30B
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  B30B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  B30B
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  B30B
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B30B
審判 全部無効 2項進歩性  B30B
審判 全部無効 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  B30B
管理番号 1307605
審判番号 無効2013-800218  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-12-05 
確定日 2015-05-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3537377号発明「円筒式絞り機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3537377号の請求項1ないし6に係る発明についての手続の経緯は、以下のとおりである。

平成12年 4月28日 出願(特願2000-130498号)
平成16年 3月26日 特許権の設定登録
平成16年 6月14日 特許公報発行(特許第3537377号公報)
平成25年12月 5日 本件審判請求書提出
平成26年 2月24日 答弁書提出
平成26年 2月24日 訂正請求書提出
平成26年 4月 3日 上記訂正請求書を対象とする手続補正書提出
平成26年 5月 9日 弁駁書提出
平成26年 6月 4日 審理事項通知
平成26年 8月14日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成26年 8月14日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成26年 8月28日 口頭審理陳述要領書(第2回)提出(被請求人)
平成26年 8月28日 口頭審理

第2 訂正の適否

1. 訂正の内容
平成26年4月3日付け手続補正書により補正された平成26年2月24日付け訂正請求書(以下、「本件補正訂正請求書」という。)による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、本件特許明細書を、本件補正訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正(以下、「本件訂正」という。)することを求めるものであり、その内容を、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。

(1) 訂正事項1及び2
訂正事項1は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の冒頭に、「分離液分を得るために用いる円筒式絞り機であって、」との記載を追加するものであり、訂正事項2は、同請求項1において、「この滞留部に、滞留した分離固形分に圧搾圧力与えるように」との記載を「この滞留部に、滞留した分離固形分に圧搾圧力を与え、対向した多孔筒体の下側面部において微細孔を通して分離液分を筒体に流入させるように」と訂正するものである。
すなわち、訂正事項1及び2は、特許請求の範囲の請求項1について、
「【請求項1】 軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体の少なくとも一方が、多数の微細孔が形成された多孔筒体に形成され、
両絞り用筒体は、対向側が互いに上から下に向けて回転することにより、対向上側面間に受け入れた絞り原料を両絞り用筒体間で圧搾して、分離液分を多孔筒体となる絞り用筒体内に微細孔を通して流入させるように形成され、
両絞り用筒体の対向下側面の途中に分離固形分のスクレーパが設けられ、
このスクレーパと、両絞り用筒体の対向中心部から両スクレーパに至るまでの対向下側面部分と、で囲まれるように分離固形分の滞留部が形成され、
この滞留部に、滞留した分離固形分に圧搾圧力を与えるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した絞り通路が連通されていることを特徴とした円筒式絞り機。」とあるのを、
「【請求項1】
分離液分を得るために用いる円筒式絞り機であって、
軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体の少なくとも一方が、多数の微細孔が形成された多孔筒体に形成され、
両絞り用筒体は、対向側が互いに上から下に向けて回転することにより、対向上側面間に受け入れた絞り原料を両絞り用筒体間で圧搾して、分離液分を多孔筒体となる絞り用筒体内に微細孔を通して流入させるように形成され、
両絞り用筒体の対向下側面の途中に分離固形分のスクレーパが設けられ、
このスクレーパと、両絞り用筒体の対向中心部から両スクレーパに至るまでの対向下側面部分と、で囲まれるように分離固形分の滞留部が形成され、
この滞留部に、滞留した分離固形分に圧搾圧力を与え、対向した多孔筒体の下側面部において微細孔を通して分離液分を筒体に流入させるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した絞り通路が連通されていることを特徴とした円筒式絞り機。」
と訂正するものである。

(2) 訂正事項3
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0007】について、
「【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の円筒式絞り機(請求項1)は、軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体の少なくとも一方が、多数の微細孔が形成された多孔筒体に形成され、両絞り用筒体は、対向側が互いに上から下に向けて回転することにより、対向上側面間に受け入れた絞り原料(例えば、呉)を両絞り用筒体間で圧搾して、分離液分(例えば、豆乳)を絞り用筒体(多孔筒体)内に微細孔を通して流入させるように形成され、両絞り用筒体の対向下側面の途中に分離固形分(例えば、オカラ)のスクレーパが設けられ、このスクレーパと、両絞り用筒体の対向中心部から両スクレーパに至るまでの対向下側面部分と、で囲まれるように分離固形分の滞留部が形成され、この滞留部に、滞留した分離固形分に圧搾圧力を与えるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した絞り通路が連通されている構成とした。」
とあるのを、
「【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の円筒式絞り機(請求項1)は、分離液分を得るために用いる円筒式絞り機であって、軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体の少なくとも一方が、多数の微細孔が形成された多孔筒体に形成され、両絞り用筒体は、対向側が互いに上から下に向けて回転することにより、対向上側面間に受け入れた絞り原料(例えば、呉)を両絞り用筒体間で圧搾して、分離液分(例えば、豆乳)を絞り用筒体(多孔筒体)内に微細孔を通して流入させるように形成され、両絞り用筒体の対向下側面の途中に分離固形分(例えば、オカラ)のスクレーパが設けられ、このスクレーパと、両絞り用筒体の対向中心部から両スクレーパに至るまでの対向下側面部分と、で囲まれるように分離固形分の滞留部が形成され、この滞留部に、滞留した分離固形分に圧搾圧力を与え、対向した多孔筒体の下側面部において微細孔を通して分離液分を筒体に流入させるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した絞り通路が連通されている構成とした。」
と訂正する。

(3) 訂正事項4
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0021】について、
「両絞り用筒体1,1の対向下側面16,16の途中にスクレーパ4,4が設けられ、このスクレーパ4,4と、両絞り用筒体1,1の対向中心部17から両スクレーパ4,4に至るまでの対向下側面部分16a,16aと、で囲まれるようにオカラ(分離固形分)の滞留部5が形成され、この滞留部5には、滞留したオカラに圧搾圧力を与えるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように通路を絞って形成した絞り通路50が形成されている。・・・」
とあるのを、
「両絞り用筒体1,1の対向下側面16,16の途中にスクレーパ4,4が設けられ、このスクレーパ4,4と、両絞り用筒体1,1の対向中心部17から両スクレーパ4,4に至るまでの対向下側面部分16a,16aと、で囲まれるようにオカラ(分離固形分)の滞留部5が形成され、この滞留部5には、滞留したオカラに圧搾圧力を与えるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように通路を絞って形成した絞り通路50が連通されている。・・・」
と訂正する。

(4) 訂正事項5
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0023】について、
「・・・この滞留部5の絞り通路50は、受け入れ量よりも排出量を小さくするように通路を絞って形成されているため、滞留部5には内圧が発生し、この滞留部5に受け入れられたオカラを圧搾することができる。・・・」
とあるのを、
「・・・この滞留部5に連通された絞り通路50は、受け入れ量よりも排出量を小さくするように通路を絞って形成されているため、滞留部5には内圧が発生し、この滞留部5に受け入れられたオカラを圧搾することができる。・・・」
と訂正する。

2. 当事者の主張

(1) 被請求人の主張
本件補正訂正請求書によれば、訂正事項1ないし5についての被請求人の主張の概要は以下のとおりである。

ア. 訂正事項1について(平成26年4月3日付けの手続補正書4ページ18行ないし5ページ1行)
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1において、「分離液分を得るために用いる円筒式絞り機であって、」という記載を追加するもので、「円筒式絞り機」の用途をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、本件特許明細書の段落【0001】に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許請求の範囲を拡張するものでなく、また変更するものでもない。

イ. 訂正事項2について(平成26年4月3日付けの手続補正書5ページ2ないし18行)
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項1において、請求項1に係る発明の「絞り通路」を、より限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、本件特許明細書の段落【0023】に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許請求の範囲を拡張するものでなく、また変更するものでもない。

ウ. 訂正事項3について(平成26年4月3日付けの手続補正書5ページ19行ないし6ページ25行)
訂正事項3は、本件特許明細書の段落【0007】の記載を、上記訂正事項1及び2と整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、上記ア.及びイ.と同様、願書に添付した本件特許明細書の段落【0001】及び【0023】に記載した事項の範囲内においてするもので、実質上特許請求の範囲を拡張するものでなく、また変更するものでもない。

エ. 訂正事項4について(平成26年4月3日付けの手続補正書6ページ26行ないし7ページ27行)
訂正事項4は、本件特許明細書の段落【0021】において、本来別々の部分を示す「滞留部5」と「絞り通路50」とが、あたかも「絞り通路50」が「滞留部5」の一部をなすものであるかのように表現されている誤記を訂正することを目的とするものであり、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び段落【0009】に記載した事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張するものでなく、また変更するものでもない。

オ. 訂正事項5について(平成26年4月3日付けの手続補正書7ページ28行ないし8ページ23行)
訂正事項5は、本件特許明細書の段落【0023】において、本来別々の部分を示す「滞留部5」と「絞り通路50」とが、あたかも「絞り通路50」が「滞留部5」の一部をなすものであるかのように表現されている誤記を訂正することを目的とするものであり、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び段落【0009】に記載の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張するものでなく、また変更するものでもない。

(2) 請求人の主張

ア. 訂正事項1について(弁駁書6ページ5行ないし8ページ12行)
訂正事項1により追加される「分離液分を得るために用いる円筒式絞り機であって、」は、(a)分離液分のみを得るために用いる円筒式絞り機(b)少なくとも分離液分を得るために用いる円筒式絞り機のいずれを意味するものであるのか不明りょうであるから、特許法第134条の2第1項ただし書に掲げるいずれの事項をも目的とするものに該当しない。さらに、(a)である場合は、願書に添付した明細書及び図面の記載や示唆に基づかない新規な事項を追加するものである。(b)である場合は、訂正前の円筒式絞り機は、元より少なくとも分離液分を得るために用いるものであるから、訂正事項1は、訂正前の円筒式絞り機を何ら減縮するものでなく、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないし、特許法第134条の2第1項のその余のいずれの号に掲げる事項を目的とするものにも該当しない。

イ. 訂正事項3について(弁駁書8ページ13ないし16行)
訂正事項3は、本件特許明細書の段落【0007】に対して、訂正事項1と同じ内容を含む訂正を行うものであり、上記ア.と同様な理由で、訂正要件に違反する。

3. 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否の判断
上記訂正事項1ないし5について、以下のとおり検討し、判断する。

ア. 訂正事項1について
訂正事項1は、本件特許請求の範囲の請求項1に、「分離液分を得るために用いる円筒式絞り機であって、」との事項を付加して、本件訂正前の本件特許に係る「円筒式絞り機」を、「分離液分を得るために用いる」ものと限定するするものであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定される、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件特許明細書の段落【0001】には、「【発明の属する技術分野】本発明は、主に、豆腐の製造に際し、呉(絞り原料)からオカラ(固形分)を分離して豆乳(液分)を得るための絞りに用いるほか、酒、油、果汁等の絞りに用いたり、ヘドロから泥分を分離させるための絞り等、固液分離に使用する円筒式絞り機に関する。」との記載があるから、本件特許明細書には、「分離液分を得るために用いる円筒式絞り機」が記載されているといえ、訂正事項1に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第134条の2第9項で準用される第126条第5項に適合するものである。
さらに、当該訂正が、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用される特許法第126条第6項に適合するものである。
請求人は、上記2.(2)ア.に記載したとおり、訂正事項1に係る訂正により加えられる事項は不明りょうであるから、特許法第134条の2第1項ただし書に掲げるいずれの事項をも目的とするものに該当しない、旨主張する。しかし、上記で示したように、訂正事項1に係る訂正の目的は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定される、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当することは明らかであるから、請求人の主張は失当である。また、請求人は、訂正前の円筒式絞り機も、少なくとも分離液分を得るために用いるものであるから、訂正事項1は、訂正前の円筒式絞り機を何ら減縮するものではない、とも主張する。しかし、本件訂正前の「円筒式絞り機」は、「分離液分を得るために用いる」もの以外の「円筒式絞り機」が含まれていたところ、訂正事項1は、「分離液分を得るために用いる」ものに限定したものであり、この点についての請求人の主張も失当である。

イ. 訂正事項2について
訂正事項2は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「絞り通路」が、「滞留した分離固形分に圧搾圧力を与え」るものであることに加えて、「対抗した多孔筒体の下側面部において微細孔を通して分離液分を筒体に流入させるように」するものと、さらに限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定される、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件特許明細書の段落【0023】には、「滞留部5」において分離液分である「豆乳」について、「滞留部5には内圧が発生し、この滞留部5に受け入れられたオカラを圧搾することができる。このように、滞留部5においてオカラが圧搾されるため、滞留部5を形成する両絞り用筒体1,1の対向下側面部分16a,16aにおいて、微細孔11,11を通して豆乳が絞り用筒体1,1内に流入し、これが二次絞りとなる」との作用を奏すると記載されているから、訂正事項2は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされるものであるといえ、特許法第134条の2第9項で準用される第126条第5項に適合するものである。
さらに、実質上特許請求の範囲を拡張するものでなく、また変更するものでもないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用される特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ. 訂正事項3について
訂正事項3は、本件特許明細書の段落【0007】の記載を、上記訂正事項1及び2と整合させるためのものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定される明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
さらに、上記ア.及びイ.で検討したとおり、訂正事項3は、本件特許明細書記載の事項の範囲内においてするものであるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
そして、実質上特許請求の範囲を拡張するものでなく、また変更するものでもないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

エ. 訂正事項4について
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1において、「この滞留部に、滞留した分離固形分に圧搾圧力を与えるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した絞り通路が連通されている」と記載され、段落【0009】において「この滞留部に連通した絞り通路は、滞留した分離固形分に圧搾圧力を与えるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成されているため、」と記載されていて、さらに、本件図面において、参照符号5と50がそれぞれ異なる領域を示して、「滞留部(5)」と「絞り通路(50)」が別々の部分であることが看取できる。そして、段落【0021】には、図面の説明として「この滞留部5には、滞留したオカラに圧搾圧力を与えるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように通路を絞って形成した絞り通路50が形成されている。」と、「絞り通路50」が「滞留部5」の一部をなすかのような記載がなされているのを、訂正事項4は、「この滞留部5には、滞留したオカラに圧搾圧力を与えるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように通路を絞って形成した絞り通路50が連通されている。」と訂正して、「滞留部(5)」と「絞り通路(50)」が別々の部分であることを明らかにするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定される、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項4は、上記本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1、段落【0009】及び図面に記載された事項の範囲内においてするものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
そして、実質上特許請求の範囲を拡張するものでなく、また変更するものでもないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

オ. 訂正事項5について
訂正事項5は、訂正事項4と同様に、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1、段落【0009】及び図面には、別々の部分であると記載されている「滞留部」と「絞り通路」を、本件特許明細書の段落【0023】において、「この滞留部5の絞り通路50は、受け入れ量よりも排出量を小さくするように通路を絞って形成されているため、滞留部5には内圧が発生し、この滞留部5に受け入れられたオカラを圧搾することができる。」とあるように「絞り通路50」が「滞留部5」の一部をなすかのような記載がされているところ、訂正事項5は「この滞留部5に連通された絞り通路50は、受け入れ量よりも排出量を小さくするように通路を絞って形成されているため、滞留部5には内圧が発生し、この滞留部5に受け入れられたオカラを圧搾することができる。」と訂正するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定される、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項5は、訂正事項4と同様に、上記本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1、段落【0009】及び図面に記載された事項の範囲内においてするものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
そして、実質上特許請求の範囲を拡張するものでなく、また変更するものでもないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

4. 本件訂正請求におけるむすび
以上のとおりであるから、上記訂正事項1ないし5は、いずれも特許法第134条の2第1項のただし書各号に規定されるものを目的とするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5及び6項の規定に適合するので、適法な訂正と認める。

第3 本件特許の請求項1ないし6に係る発明
上記第2で検討したとおり、本件訂正請求は認められたから、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件特許発明1」等という。)は、本件補正訂正請求書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
分離液分を得るために用いる円筒式絞り機であって、
軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体の少なくとも一方が、多数の微細孔が形成された多孔筒体に形成され、
両絞り用筒体は、対向側が互いに上から下に向けて回転することにより、対向上側面間に受け入れた絞り原料を両絞り用筒体間で圧搾して、分離液分を多孔筒体となる絞り用筒体内に微細孔を通して流入させるように形成され、
両絞り用筒体の対向下側面の途中に分離固形分のスクレーパが設けられ、
このスクレーパと、両絞り用筒体の対向中心部から両スクレーパに至るまでの対向下側面部分と、で囲まれるように分離固形分の滞留部が形成され、
この滞留部に、滞留した分離固形分に圧搾圧力を与え、対向した多孔筒体の下側面部において微細孔を通して分離液分を筒体に流入させるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した絞り通路が連通されていることを特徴とした円筒式絞り機。
【請求項2】
請求項1記載の円筒式絞り機において、左右1対の絞り用筒体の両方が多孔筒体に形成されている円筒式絞り機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の円筒式絞り機において、両絞り用筒体が同一周速度で回転するようにした円筒式絞り機。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の円筒式絞り機において、絞り用筒体の一方又は両方がバネにより対向方向に付勢されている円筒式絞り機。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の円筒式絞り機において、絞り通路の排出口が、滞留部の内圧に応じて開口面積を加減可能に形成されている円筒式絞り機。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の円筒式絞り機において、多孔筒体となる絞り用筒体が絞り原料中に浸漬する状態に設けられている円筒式絞り機。」

第4 当事者の主張
(以下、甲第○号証を「甲○」といい、当事者の主張する甲第○号証に記載された発明あるいは事項を、それぞれ「甲○記載の発明」、「甲○記載の事項」という。また、行数により記載箇所を特定する場合には、空白行を含まない。)

1. 請求人の主張する請求の趣旨及び理由
請求人は、審判請求書、弁駁書及び平成26年8月14日付け口頭審理陳述要領書によれば、本件特許発明1ないし6は無効とする、との審決を求め、その無効理由1ないし6の概要は以下のとおりである。
<無効理由1>
本件特許発明1ないし4は、甲1記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
また、本件特許発明1ないし6は、甲1記載の発明及び甲3ないし5記載の発明あるいは事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由2>
本件特許発明1及び2は、甲2記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
また、本件特許発明1ないし6は、甲2記載の発明及び甲3ないし6記載の発明あるいは事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由3>
本件特許発明1ないし6は、甲2及び3記載の発明並びに甲4ないし6記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由4>
本件特許発明1ないし6は、本件特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由5>
本件特許発明1ないし6は、いずれも発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由6>
本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許発明1ないし6を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、当該発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていない。よって本件特許発明1ないし6は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

そして、無効理由1ないし6ごとに請求人の主張をまとめると以下のとおりである。

(1)無効理由1(審判請求書12ページ17ないし26行、26ページ27行ないし33ページ28行、弁駁書11ページ3行ないし27ページ1行、口頭審理陳述要領書4ページ1行ないし13ページ19行)

ア. 特許法第29条第1項第3号
本件特許発明1について次のとおり主張する。甲1記載の発明において、「滞留部」の受け入れ量よりも、「滞留部」からの排出量の方が、搾り取られた水分に相当する量だけ小さくなることは、当業者にとって自明であるから、甲1記載の発明も、「絞り通路」(両「スロート壁部2」に挟まれた通路)が、「受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した」という構成を備えていることが明らかである。また、甲1記載の発明が、材料から水分を得るために用いる装置であり、かつ、材料から固形分を得るために用いる装置でもあることは、技術常識に照らして自明であり、さらに、固体と液体とが混在した材料を圧搾して固体と液体とを分離する固液分離装置が、分離後の液体を主として利用する目的又は分離後の脱水された固体を主として利用する目的のいずれにも利用可能なことは、例えば甲7及び8に記載されているように従来周知の技術事項である。
本件特許発明2において、本件特許発明1を限定する事項である「左右1対の絞り用筒体の両方が多孔筒体に形成されている」点は、甲1において「圧搾部材1、1’の両方が、多数の微細孔が形成された多孔筒体に形成され」ている点が記載されているから、本件特許発明2も甲1に記載された発明である。
本件特許発明3において、本件特許発明1又は2を限定する事項である「両絞り用筒体が同一周速度で回転するようにした」点は、甲1の図1及び4等の記載から、「圧搾部材(1、1’)」は互いに同一形状であり、同一形状のギアにより互いに反対方向に回転していることが明らかであるから、甲1記載の「圧搾部材(1、1’)」が同一周速度で回転しているといえるので、本件特許発明3も、甲1に記載された発明である。
本件特許発明4において、本件特許発明2及び3を限定する事項である「絞り用筒体の一方又は両方がバネにより対向方向に付勢されている」点は、甲1に、「圧搾部材(1、1’)」が「ばね(10)」により対向方向に付勢されている点が記載されているから、本件特許発明4も甲1に記載された発明である。

イ.特許法第29条第2項
上記ア.記載のとおり、本件特許発明1と甲1記載の発明との間の相違点は実質的なものでないから、仮に本件特許発明1が甲1記載の発明であるとまではいえなかったとしても、甲1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。また、上記ア.記載のとおり、本件特許発明2及び4の各々で特定される事項は甲1に記載されているから、同様に、本件特許発明2及び4も甲1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明3について次のとおり主張する。一般に、いわゆるツインロール式の圧搾機において、両ロールの周速度を同じとすることは、例えば甲4にも記載されているように、当業者において通常行われているから、本件特許発明3は、甲1記載の発明及び甲4記載の事項により当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明5は、本件特許発明1ないし4を、「絞り通路の排出口が、滞留部の内圧に応じて開口面積を加減可能に形成されている」との点で限定するものである。甲5には、ツインローラ式の圧搾機において、ニップの下流において再吸収が生じることを防止するために、ニップの下流側に、経路の開口面積を圧力に応じて可変する手段を設ける技術が記載されているから、本件特許発明5は、甲1記載の発明に、甲1記載の発明と液体の再吸収を防ぐとの点で課題が共通する甲5記載の事項を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明6は、本件特許発明1ないし5を「多孔筒体となる絞り用筒体が絞り原料中に浸漬する状態に設けられている」との点で限定するものである。一般に、ツインローラ式の圧搾機において、絞り用筒体を原料中に浸漬する状態とすることは、例えば、甲3にも記載されているように、従来周知の技術事項であるから、本件特許発明6は、甲1記載の発明及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[予備的主張]
仮に、甲1記載の発明の「スロート部材(2)」で更に圧搾することが、再湿潤を防止するためであって、更なる絞りのためではないと解釈できたとしても、更なる絞りを行う構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
すなわち、ニップを通過した材料は、本件特許発明1の「滞留部」に相当する領域部分に到達するが、当該滞留部に接する圧搾部材1、1’の内部では、ニップの部分で絞り取られた水分が下方に向かって流れているから、滞留部に存在する材料は、圧搾部材1、1’に設けられた小孔を介して水分と接している状態となっていることが明らかである。したがって、物理学的に見て、滞留部に存在する材料と圧搾部材1、1’との間での水分の授受の関係について、(状態A)圧力が高く、水分が、滞留部に存在する材料から小孔を介して圧搾部材1、1’に移動する状態、(状態B)圧力が低く、水分が、圧搾部材1、1’から小孔を介して滞留部に存在する材料に移動(逆流)する状態、(状態C)上記AとBのちょうど中間の圧力であって、水分の移動が全く生じない状態、のいずれかであるところ、一般に、機械を設計するに当たり、部品のばらつきや経年劣化等を考慮して、目標に対してある程度のマージンをとって設計を行うことは当業者の常識であり、圧搾機において水分をより多く抽出することは、当業者が常に念頭においている課題でもあるから、当業者であれば、(状態A)とすること、すなわち、圧力を十分に高くして、対向した多孔筒体の下側面部において微細孔を通して分離液分を筒体に流入させるようにすること(滞留部の受け入れ量よりも排出量の方が小さくなるようにする)は、当然になし得たことというほかない。

(2)無効理由2(審判請求書12ページ27ないし36行、33ページ29行ないし40ページ4行、弁駁書27ページ2行ないし33ページ11行)

ア. 特許法第29条第1項第3号
本件特許発明1について次のとおり主張する。甲2において、「ガイド(4)」の下端部によって形成された通路により、滞留した分離固形分が更に加圧され、滞留部に受け入れられた分離固形分が排出されるまでの間に水分吸引部(21)によって水分が吸収されていることが、第3図の矢印(c)の向き等から明らかであり、「滞留部」の受け入れ量よりも、「滞留部」からの排出量の方が、搾り取られた水分に相当する量だけ小さくなることは、当業者にとって自明である。したがって、本件特許発明1は甲2に記載されたものである。
本件特許発明2は、上記(1)ア.記載の点で、本件特許発明1を限定するものである。甲2には、「フィルターロール(2)、(2)の両方が、多数の微細孔が形成された多孔筒体に形成され」ている点が記載されているから、本件特許発明2も甲2に記載された発明である。

イ. 特許法第29条第2項
本件特許発明1について次のとおり主張する。甲2記載の発明において、できるだけたくさんの水分を搾り取れるよう、通路の幅を狭くする等して、滞留部の圧力を高くし、受け入れ量よりも排出量が小さくなるようにすることは、当業者が容易になし得たことであるから、本件特許発明1は甲2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。本件特許発明2に係る限定事項は、上記ア.で示したように、甲2に記載されているから、本件特許発明2も、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明3は、上記(1)ア.に記載の点で本件特許発明1及び2を限定するものである。上記(1)イ.に示した甲4記載の事項から、本件特許発明3は、甲2記載の発明及び甲4記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明4は、上記(1)ア.に記載の点で本件特許発明1ないし3を限定するものである。ここで、一般に、ツインローラ式の圧搾機において、絞り用筒体の一方又は両方がバネにより対向方向に付勢することは、例えば、甲6にも記載されているように、従来周知の技術事項であるから、本件特許発明4は、甲2記載の発明及び甲6記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明5は、上記(1)イ.に記載の点で本件特許発明1ないし4を限定するものである。甲5には、上記(1)イ.に記載したように、「ツインローラ式の圧搾機において、・・・開口面積を圧力に応じて可変する手段を設け」た技術が記載されているから、本件特許発明5は、甲2記載の発明及び甲5記載の事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明6は、上記(1)イ.に記載の点で本件特許発明1ないし5を限定するもので、上記(1)イ.記載の甲3に例示される従来周知の技術事項から、本件特許発明6は、甲2記載の発明及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 無効理由3(審判請求書13ページ1ないし6行、40ページ5行ないし45ページ11行、弁駁書33ページ12行ないし37ページ2行)

本件特許発明1について次のとおり主張する。甲5には、ニップを過ぎた素材の再吸収を抑制するという甲3記載の発明と同じ課題を解決するために、ツインロールによって形成されるニップの下流に遮断具を設け、この空間領域の植物素材に対抗圧力をもたらすことで、再吸収(再湿潤化)を抑制することが記載されている。また、甲2には、スクレーパ(「ガイド(4)」)を分離固形分(「生鶏糞(3)」)の流れ方向に従って近づくように配置することが記載されている。従来周知の課題であるツインローラ式絞り機における再吸収(再湿潤化)の防止をどのようにして実現するかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項であるから、本件特許発明1は、甲3記載の発明、甲2記載の発明及び甲5記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明2は、上記(1)ア.に記載の点で本件特許発明1を限定するものである。甲3には「軸方向を平行にして並設された左右1対のロール10、10の両方が、多数の穴が形成された多孔筒体に形成されている」点記載されているから、本件特許発明2は、甲3記載の発明、甲2記載の発明及び甲5記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明3は、上記(1)ア.に記載の点で本件特許発明1及び2を限定するものであり、上記(1)イ.に記載した甲4記載の事項から、本件特許発明3は、甲3記載の発明、甲2記載の発明、甲5記載の事項及び甲4記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明4は、上記(1)ア.に記載の点で本件特許発明1ないし3を限定するものである。上記(2)イ.に記載した、甲6に例示される従来周知の技術事項から、本件特許発明4は、甲3記載の発明、甲2記載の発明、甲5記載の事項及び甲6記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明5は、上記(1)イ.に記載の点で本件特許発明1ないし4を限定するもので、上記(1)イ.に記載した甲5事項から、本件特許発明5は、甲3記載の発明、甲2記載の発明及び甲5記載の事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明6は、上記(1)イ.に記載の点で本件特許発明1ないし5を限定するもので、上記(1)イ.記載の甲3発明から、甲3発明も「絞り用筒体を原料中に浸漬する状態に設けられている。」から、本件特許発明3は、甲3記載の発明、甲2記載の発明及び甲5記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4) 無効理由4(審判請求書13ページ7ないし11行、45ページ12行ないし46ページ9行、弁駁書9ページ10行ないし11ページ2行)

(4-1) 「滞留部」と「絞り通路」との関係
「滞留部」と「絞り通路」について、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載及び段落【0009】の記載から、両者は、異なる2つの空間であり、「滞留部」よりも下流側の流路が「絞り通路」となるという構成が読み取れる。一方、訂正前の本件特許明細書の段落【0021】及び【0023】の記載から、滞留部の一部に絞り通路が形成されている構成が読み取れる。そうすると、「滞留部」と「絞り通路」との関係について、矛盾する記載が存在しているから、両者の関係が明確ではない。

(4-2) 「受け入れ量」及び「排出量」
本件特許明細書の請求項1、段落【0009】、【0021】及び【0023】には、「絞り通路」について、受け入れ量よりも排出量を小さくするように通路を絞って形成した絞り通路である旨の記載がある。一方、平成15年9月29日提出の意見書で、特許権者は、「この滞留部に連通する絞り通路を、滞留部に滞留した分離固形分に圧搾圧力を与えるように、滞留部への受け入れ量よりも滞留部からの排出量を小さくするように形成したものである。」及び「滞留部からの排出量を、滞留部への受け入れ量よりも小さくするように形成し、これより滞留部に滞留した分離固形分に圧搾圧力を与えるように形成したものである。」と主張しているから、「受け入れ量」及び「排出量」が「滞留部」の量に言及しているのか、「絞り通路」の量に言及しているのかが明確ではない。

(5) 無効理由5について(審判請求書13ページ12ないし16行、46ページ10ないし19行、口頭審理陳述要領書13ページ20ないし24行)

(5-1)
仮に、上記(4-1)において、「滞留部」と「絞り通路」が異なる2つの空間であったとしても、後者が前者に繋がっていることを意味するならば、本件特許発明1ないし6は、いずれも発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。

(5-2) 本件訂正について
仮に、本件訂正が認められた場合においては、無効理由5は解消すると考える。

(6) 無効理由6について(審判請求書13ページ17ないし22行、46ページ20ないし29行、弁駁書9ページ10行ないし11ページ2行)

(6-1)
上記(4)に記載したとおり、本件特許明細書においては、「滞留部」と「絞り通路」との関係が不明確であり、さらに「受け入れ量」及び「排出量」が「滞留部」の量に言及しているのか、「絞り通路」の量に言及しているのか不明確であるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本件特許発明1ないし6を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

(7) 請求人の証拠方法
証拠方法として、請求人は、審判請求書により、以下の甲第1ないし6号証を提出し、平成26年5月9日付け弁駁書により、以下の甲第7及び8号証を提出した。

甲第1号証:米国特許第1,194,266号明細書及びその翻訳文
甲第2号証:実願昭63-48150号(実開平1-153893号)のマイクロフィルム
甲第3号証:特表平10-510761号公報
甲第4号証:特開昭50-142802号公報
甲第5号証:豪州特許出願公開第64876/94号明細書及びその抄訳文
甲第6号証:特開2000-15297号公報
甲第7号証:特開平9-271612号公報
甲第8号証:特開平5-228695号公報

2. 被請求人の主張する答弁の趣旨
答弁書、平成26年8月14日付け口頭審理陳述要領書(本「2. 被請求人の主張する答弁の趣旨」においては、以下、「口頭審理陳述要領書(第1回)」という。)及び平成26年8月28日付け口頭審理陳述要領書(第2回)(同様に、以下、「口頭審理陳述要領書(第2回)」という。)によれば、被請求人は、本件審判の請求は成り立たないとの審決を求め、その主張の概要は以下のとおりである。

(1) 無効理由1について(答弁書5ページ6行ないし14ページ22行、口頭審理陳述要領書(第1回)3ページ3行ないし11ページ3行、口頭審理陳述要領書(第2回)3ページ4行ないし5ページ5行)
本件特許発明1と甲1記載の発明とを対比すると、以下の4点で相違する。
相違点1:本件特許発明1は、「分離液分を得るために用いる円筒式絞り機」であるのに対して、甲1記載の発明は、材料から水分を取り除くために用いられる絞り機である点。
相違点2:本件特許発明1は、「分離固形分の滞留部」を有しているのに対して、甲1記載の発明はこのような構成を有しているか明らかでない点。
相違点3:本件特許発明1は、絞り通路によって、滞留部に滞留した分離固形分に圧搾圧力を与え、これにより対向した多孔筒体の下側面部に形成された微細孔を通して分離液分を筒体に流入させるのに対して、甲1記載の発明はこのような構成を有していない点。
相違点4:本件特許発明1は、「絞り通路」が「受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した」ものであるのに対して、甲1記載の発明は、このような特定がなされていない点。

ア. 特許法29条第1項第1号について
上記のとおり、本件特許発明1と甲1記載の発明との間には、相違点1ないし4が存在するから、本件特許発明1及び本件特許発明1の構成を全て含む本件特許発明2ないし4が、甲1に記載された発明である、とすることはできない。

イ. 特許法第29条第2項について
そもそも、本件特許発明は、絞り原料から分離液分を得るための装置であるのに対し、甲1記載の発明は、材料を脱水するための装置であるから、用途が全く異なり、目的が逆であるから、甲1は、進歩性を否定するための主引例として適格性を有していない。
相違点1について次のとおり主張する。本件特許発明1と甲1記載の発明とは、最終的に得ようとする物が全く異なるものであり、その目的が逆のものであるから、当業者が容易になし得たものではない。
相違点2について次のとおり主張する。甲1記載の発明において、「領域」内に材料を滞留させようとすると、落下口の大きさを固定して通路の大きさを固定する必要があるが、これは、当業者が通常行うことではない。したがって、甲1記載の発明において「分離固形分の滞留部」を有していると認められる根拠は存在せず、また、甲1記載の発明において積極的に「領域」内に材料を滞留させる技術的意義は存在しない。
相違点3について次のとおり主張する。甲1には、「圧搾部材(1、1’)」によって一旦材料を加圧し、その後、「スロート壁部(2)」によって材料が水分を吸収しない程度に加圧することが記載されているだけであり、ここで絞られた水分が「圧搾部材(1、1’)」の孔から「パン(16)」内に流れるとする根拠はない。また、甲1発明には、「スロート壁部(2)」の間で絞り出された水分を「圧搾部材(1、1’)」の孔に入れようとする動機付けが存在しない。したがって、甲1記載の発明において、「スロート壁部(2)」の間の通路によって、通路の上流側の「領域」内の材料に圧搾圧力を与え、これにより圧搾部材の「対向下側面部」の孔を通して水分を「圧搾部材(1、1’)」に流入させているとは認められない。
相違点4について次のとおり主張する。甲1記載の発明では、大量の材料が「スロート壁部(2)」の間に流れ込んだとしても、単に「スロート壁部(2)」の間の通路が広がるだけであり、通路の上側の「領域」内の材料に対して何ら作用を及ぼさない。
請求人の予備的主張について次のとおり主張する。「領域」内のパルプは、「圧搾部材(1,1’)」により既に脱水されており、仮に「領域」内のパルプにかかる圧力が高まっても、当然にパルプから更に水分が絞り出されることにはならない。さらにいえば、圧力と水分の移動との関係は、材料の含水量、水分の粘度、圧搾部材の回転速度(遠心力)などによっても変化するので、「領域」内のパルプに関する状態が、上記1.(1)イ.でいう状態AないしCの3つの状態に限られることを前提とする請求項人の主張は、誤りである。
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
また、本件特許発明1に従属する本件特許発明2ないし6も同様に、甲1記載の発明、甲5及び6記載の事項並びに従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1は、理由がない。

(2) 無効理由2について(答弁書14ページ23行ないし21ページ16行)
本件特許発明1と甲2記載の発明とを対比すると、以下の5点で相違する。
相違点1:本件特許発明1は、「分離液分を得るために用いる円筒式絞り機」であるのに対して、甲2記載の発明は、材料から水分を取り除くために用いられる絞り機である点。
相違点2:本件特許発明1は、「スクレーパ」を有しているのに対して、甲2記載の発明はそのような構成を有していない点。
相違点3:本件特許発明1は、「分離固形分の滞留部」を有しているのに対して、甲2記載の発明はこのような構成を有しているか明らかでない点。
相違点4:本件特許発明1は、絞り通路によって、滞留部に滞留した分離固形分に圧搾圧力を与え、これにより対向した多孔筒体の下側面部に形成された微細孔を通して分離液分を筒体に流入させるのに対して、甲2記載の発明はこのような構成を有していない点。
相違点5:本件特許発明1は、「絞り通路」が「受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した」ものであるのに対して、甲2記載の発明は、このような特定がなされていない点。

ア. 特許法29条第1項第3号について
上記のとおり、本件特許発明1と甲2記載の発明との間には、相違点1ないし5が存在するから、本件特許発明1及び本件特許発明1の構成を全て含む本件特許発明2が、甲2に記載された発明である、とすることはできない。

イ. 特許法第29条第2項について
本件特許発明と甲2記載の発明とは、用途が全く異なるものであるから、絞り原料から分離液分を得るための装置を改良しようと試みた当業者が、用途が全く異なり、目的が逆である甲2記載の発明を基礎とすることはない。よって甲2は、本件発明の進歩性を否定するための主引例としての適格性を有していない。
相違点1について次のとおり主張する。本件特許発明1と甲2記載の発明とは、最終的に得ようとするもの、即ち絞り出された液体を得るのか、絞った固体を得るのかが逆のものであるから、相違点1は、容易に得られるものではない。
相違点3について次のとおり主張する。甲2記載の発明において「ガイド(4)」によって「生鶏糞(3)」の流れを阻害して「領域部分」内に滞留させる動機付けは一切存在しないから、甲2に触れた当業者は、敢えて「領域部分」内に「生鶏糞(3)」を滞留させる構成を採用するようなことは行わない。よって、相違点3は、甲2記載の発明において容易に得られるものではない。
相違点4について次のとおり主張する。甲2には、「フィルターロール(2)」のニップ部を通過した「生鶏糞(3)」をどのように取り扱うかについて一切記載されていない。そうすると、甲2に接した当業者が、ニップ部を通過した「生鶏糞(3)」を再度絞るという発想を得るための動機付けは一切存在しないから、相違点4は、甲2記載の発明において容易に採用され得るものではない。
相違点5について次のとおり主張する。甲2記載の発明において、この通路の上の空間に圧搾圧力を与える目的で「両ガイド(4)」の間の幅を調整する動機付けは一切存在しないから、甲2記載の発明において、「ガイド(4)」の下端部の間の通路の幅を調整し、「領域部分」への受け入れ量が領域部分からの排出量よりも小さくするように形成することは、当業者が容易になし得たことではない。
以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
また、本件特許発明1に従属する本件特許発明2ないし6も同様に、甲2記載の発明、甲3ないし6記載の発明あるいは事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由2は、理由がない。

(3) 無効理由3について(答弁書21ページ17行ないし25ページ末行)
本件特許発明1と甲3記載の発明とは、その用途が全く異なるから、絞り原料から分離液分を得るための装置を改良しようと試みた当業者が、用途が全く異なり、目的が逆である甲3記載の発明を基礎とすることはない。よって甲3は、本件発明の進歩性を否定するための主引例としての適格性を有していない。
甲3記載の発明は、「ドクターブレード(16)」により、一旦、「ロール(10、10)」内に入った水分の再吸収を防止するものであるのに対し、甲5記載の事項は、ニップの下流の遮断具で素材をせき止めることで、ニップ部で絞り出されたばかりの水分の再吸収を抑制するものであるから、両者は課題と解決するための手段が異なり、さらに、基本的な構造も大きく異なるから、甲5記載の事項を、甲3記載の発明に適用することは当業者が通常行うことではない。
甲3記載の発明と甲2記載の発明との組み合わせについても、甲2記載の発明の目的は、「フィルターロール(2)」内に水分吸引部と高圧流体噴出部を設けることによりロールの目詰まりを防止しかつ水分除去率を向上させることであって、水分の再吸収を防止する、という着想は存在しないから、甲3記載の発明及び甲2記載の発明とを組み合わせる合理的な理由は存在しない。また、甲3記載の発明及び甲2記載の発明の何れも「分離固形分の滞留部」を有しているのか明らかでなく、甲3記載の発明と甲2記載の発明とを組み合わせたとしても、本件特許発明1を得ることができないのは明らかである。
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲3記載の発明、甲2記載の発明及び甲5記載の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
また、本件特許発明1に従属する本件特許発明2ないし6も同様に、甲2記載の発明、甲3記載の発明、甲5記載の事項及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由3は、理由がない。

(4) 無効理由4及び5について(答弁書26ページ1ないし9行、口頭審理陳述要領書(第2回)5ページ6行ないし7ページ9行)
被請求人は、上記本件訂正請求により、本件特許明細書の段落【0021】及び【0023】における誤記を訂正したから、無効理由4及び5は解消している。

(6) 無効理由6について(答弁書26ページ10行ないし27ページ3行、口頭審理陳述要領書(第2回)5ページ6行ないし7ページ9行)
本件特許明細書の段落【0023】には、「両絞り用筒体1,1間を通過して下方に送り出されたオカラは、・・・滞留部5に受け入れられる。」とされており、その直後に、「受け入れ量よりも排出量を小さくするように」という説明がなされている結果、ここでいう「受け入れ量」が滞留部5の受け入れ量について言及していることが明確に記載されている。そして「受け入れ量よりも排出量を小さくするように」という文脈上、ここで比較しているのは、滞留部での「受け入れ量」と滞留部からの「排出量」について言及していることは明らかであり、絞り通路からの排出量について言及していると解釈する余地はない。
そうすると、請求人が主張する無効理由6は、理由がない。

第5 当審の判断
(以下、当審の判断において認定した、甲第○号証に記載された発明あるいは事項を、それぞれ「甲○発明」、「甲○事項」という。)

1. 各書証の記載、各書証記載の発明及び各書証記載の事項
(なお、下線は、理解の便のため当審で付した。)

(1) 甲1
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲1には、図1ないし5とともに以下の記載がある。なお、()内は、請求人が添付した翻訳文をもとに当審が付した翻訳文であり、記載箇所を示す行数は、甲1の左右両端に記載された行数を示す。

ア.
「My invention relates to presses, being more particularly designed for operation on pulp used for the manufacture of paper, and has for a primary object the provision of novel mechanism by which moisture is extracted from the material, and further, in the provision of such a construction wherein the material as advanced from the main presser members is constrained for delivery from the press in a desired condition.
Other object will be set forth as my description progresses and those features of construction, arrangements and combinations of parts on which I desire protection, succinctly defined in my annexed claims.」(1ページ9ないし23行)
(私の発明は、圧搾機、より詳しくは紙の製造に使用されるパルプへの操作のために設計された圧搾機に関連しており、材料から水分を抽出する新規な機構の装備を主たる目的に有し、さらに、当該構成の装備において、主圧搾部材から前進させられる際に材料は所要の状態での圧搾機からの送出のために拘束される。
他の目的は私の説明が進むにつれて表明され、私がその保護を要求する部品の構成、配列および組合せのそれらの特徴は、私の添付クレームにおいて簡潔に規定される。)

イ.
「Referring to the accompanying drawings wherein like numerals of reference indicate like parts throughout: Figure 1 is a top plan, with portions of one of the tension devices broken away. Fig. 2 is an end elevation in partial vertical section. Fig. 3 is a section taken on line 3-3 of Fig. 1. Fig. 4 is a vertical section taken on line 4-4 of Fig. l, parts being broken away, and Fig. 5 is a fragmentary vertical section illustrating the contracted discharge throat and the main presser members.」(1ページ24ないし35行)
(同じ参照数字は全体を通じて同じ部品を指示する添付図面に言及すれば、図1はテンション装置の1個の部分を破断した平面図である。図2は部分垂直断面での端面図である。図3は図1の線3-3で得た断面図である。図4は部分を破断した図1の線4-4で得た垂直断面図である。図5は収縮した放出スロートおよび主圧搾部材を例示する破断垂直断面図である。)

ウ.
「Referring to the drawings by numerals of reference, 1 and 1' indicate perforated or foraminous presser members supported for movement to press and simultaneously advance the material to a discharge throat, comprising opposing laterally adjustable side wall sections 2, which wall sections serve as auxiliary presser members tending to further press or to hold the material in its pressed condition, to thereby prevent it from absorbing moisture from the interior of the rolls or from the superimposed body of material being fed.」(1ページ36ないし48行)
(参照数字によって図面に言及すれば、1および1’は、材料を加圧すると同時に放出スロートに前進させる移動のために支持された穴あきまたは多孔圧搾部材を示しており、放出スロートは対向する横方向に調整可能な側壁部2を含み、その壁部は補助加圧部材として機能し、材料を更に加圧するか、またはその加圧状態に保持し、それによって材料がロールの内部から、または供給されつつ堆積する材料自身から水分を吸収するのを防ぐこととなる。)

エ.
「Presser members 1, 1', which in the present embodiment of my invention are in the form of rolls, each comprises a cylindrical peripheral section supported at spaced points throughout its length on internal annular members 6, to the outer of which said peripheral section is conveniently fixed, as by screws 7. Annular members 6 are rigidly carried by suitable arms, fixed to a shaft 5, as shown. Presser members 1, 1' have their shafts 5 journaled in suitable stands 3 and 4 respectively, the latter of which is slidably supported on the supporting frame 8 for movement toward and from the other. For yieldingly holding stand 4 against movement from stand 3, I provide tension devices, now to be described.」(1ページ49ないし65行)
(私の発明の本実施形態においてロールの形態である圧搾部材1、1’は各々、離間された点でその長さにわたり内部環状部材6に支持された円筒形外面部を含み、内部環状部材6の外面に前記外面部がねじ7によるなどして適宜に固定されている。環状部材6は、図示のとおり、シャフト5に固定された適切なアームによって堅固に保持されている。圧搾部材1、1’はそのシャフト5をそれぞれ適切なスタンド3および4において軸受けされており、そのうちの後者は他方に接近・離去して移動するべく支持フレーム8に摺動可能に支持されている。スタンド3からの移動に抗してスタンド4を柔軟に保持するために、私はここで説明するテンション装置を設けた。)

オ.
「Reference numeral 9 indicates superimposed rods provided in like arrangement at each end of presser members 1, 1' and each being fixed to a respective one of the stands 3 and 4, as by having screw threaded engagement in an internally threaded lug 12 thereof and provided on its projecting portion with a lock nut 13, and having its opposite or free end portion projecting through and slidably guided in a lug 9' of the opposite stand. On the free projecting end portions of rods 9, springs 10 are arranged and confined between nuts l1 and the adjacent lugs 9'.
In slidably mounting stand 4, I provide frame 8 with a wear strip or track 14 on which said stand is held for limited movement by bolts 15 which project upwardly through base slots 15' thereof (see Fig. 3).」(1ページ66ないし84行)
(参照数字9は、圧搾部材1,1’の各端に類似の配列で設けられた重ね合わせロッドを示しており、各々、スタンド3および4の各個に、その雌ねじ突起部12に螺合し突出部分に止めナット13が設けられ、反対側スタンドの突起部9’に突出し摺動可能に案内される反対側または自由端部分を有するねじを持たせることによるなどして、固定されている。ロッド9の自由突出端部分には、ばね10がナット11と隣接突起部9’との間に配置され閉じ込められている。
摺動可能取付スタンド4において、私はフレーム8に摩耗ストリップまたはトラック14を設け、その上に前記スタンドは、ベーススロット15’を上方に突出するボルト15によって、限られた移動で保持される(図3参照)。)

カ.
「Throat wall sections 2 which have their upper end portions directed from one another and preferably engaging the presser members l, l' to clear the same of clinging material, extend downwardly in diverging paths which are eccentric with respect to the adjacent presser members and are then curved upwardly at the outer sides of said members to provide in conjunction with sections 2 moisture receiving chambers or pans 16, which are provided with suitable end walls 16' and inclined downwardly toward one end portion, having an outlet 17.
Moisture receiving chambers or pans 16 are adjustably carried by screws 30, on swingingly supported carriers consisting of levers 18 fulcrumed on the end portions of shafts 5, the said screws having threaded engagement in the lower end portions of said levers and swiveled in lugs 31 of the pans, by which construction the pans can be adjusted toward and from one another on the said levers, through rotation of the screws which can be effected in any desired manner.」(1ページ85ないし109行)
(それぞれの上端部が互いから離れて向いており好ましくは圧搾部材1、1’と係合して同物から粘着材料を取り除くスロート壁部2は、隣接圧搾部材に対して偏心する分岐した経路で下方へ延在し、その後、前記部材の外側で上方へ湾曲して、部分2と連係して水分受け室またはパン16を提供し、これらは適切な端壁16’を備えており、出口17を有する一端部に向けて下方に傾斜している。
水分受け室またはパン16は、シャフト5の端部分を支点にしたレバー18からなる揺動支持されたキャリヤにねじ30によって調整可能に保持されており、前記ねじは前記レバーの下端部に螺合しパンの突起部31においてスイベルで回転し、その構成によってパンは、いずれかの所要の方法でもたらされ得るねじの回転によって、前記レバー上で互いに接近・離去して調整することができる。)

キ.
「In practice, the material is fed between the presser members 1, 1' from their upper sides and as delivered from their lower sides encounters and is fixed between throat members 2, the said presser members 1, 1' and throat members 2 yielding outwardly independently of one another during this operation, as will be apparent. Moisture extracted from the material through the action of presser members 1, 1' passes into the latter through the apertures in the peripheral portions thereof and finally discharges from their lower side portions into chambers or pans 16.」(2ページ15ないし28行)
(実際には、材料は、それらの上側から圧搾部材1、1’の間に供給され、それらの下側から送出される際にスロート部材2に遭遇し、スロート部材2の間で固定され、前記圧搾部材1、1’およびスロート部材2はこの操作の間、互いに独立して外方に開くが、それは明白であろう。圧搾部材1、1’の作用によって材料から抽出された水分は、その外面部分の開口を通じて圧搾部材に移り、最終的にそれらの下側部から室またはパン16に放出される。)

ク.
「8. A press comprising opposing presser members supported for movement, one of said members being foraminous, means for operating said presser members to press the material and simultaneously advance the same in the direction of delivery therefrom, and other presser members opposing one another at the delivery side of said first members and one thereof projecting inwardly between said first named members at the side of the foraminous member.」(2ページ93ないし103行)
(8.移動するべく支持された対向する圧搾部材と、前記部材の1個は多孔性であり、材料を加圧すると同時に同物を送出方向に前進させるべく前記圧搾部材を操作するための手段と、前記最初の部材の送出側で互いに対向する他の加圧部材とを含み、そのうちの1個は多孔部材の側で前記最初に挙げた部材間で内方に突出する、圧搾機。)

ケ.
「9. A press comprising opposing rotatably supported presser members having foraminous peripheral portions, means for operating said presser members to press the material and simultaneously advance the same in the direction of its delivery means, and other presser members one of which is yieldingly supported and opposes the other at the delivery side of said first members for reception therebetween of material to the latter, said last named members projecting inwardly between said first named members on opposite sides of the path of delivery therefrom.」(2ページ104ないし117行)
(9.多孔外面部分を有する回転可能に支持された対向する圧搾部材と、材料を加圧すると同時に同物をその送出手段の方向に前進させるべく前記圧搾部材を操作するための手段と、他の加圧部材であって、そのうちの1個が、柔軟に支持され、後者への材料のその間での受入れのために前記最初の部材の送出側で他方に対向する他の加圧部材とを含み、前記最後に挙げた部材は送出経路の両側で前記最初に挙げた部材間で内方に突出する、圧搾機。)

コ.
図5の記載及び摘記事項ウ.の「参照数字によって図面に言及すれば、1および1’は、材料を加圧すると同時に放出スロートに前進させる移動のために支持された穴あきまたは多孔圧搾部材を示しており、」との記載等から、甲1記載の「圧搾機」においては、「圧搾部材1、1’」は、対向側が互いに上から下に向けて回転するものであることが明らかである。
また、上記摘記事項エ.の「圧搾部材1、1’は各々、・・・円筒形外面部を含み」との記載から、「圧搾部材1、1’」の距離がもっとも接近した対向中心部が存在することが明らかであり、甲1に記載された「スロート壁部2」と、対向中心部から両「スロート壁部2」に至るまでの対向下側面部分と、で囲まれる領域部分が存在していること、及び当該領域部分に両「スロート壁部2」に挟まれた通路が連通していることが、図5から看取できる。そして、上記摘記事項ウ.の「放出スロートは対向する横方向に調整可能な側壁部2を含み、その壁部は補助加圧部材として機能し、材料を更に加圧するか、またはその加圧状態に保持し、」との記載及び上記摘記事項キ.の「実際には、材料は、それらの上側から圧搾部材1、1’の間に供給され、それらの下側から送出される際にスロート部材2に遭遇し、スロート部材2の間で固定され、・・・」との記載から、両「スロート壁部2」の間で圧搾後の分離固形分を加圧し固定することにより、「領域部分」において圧搾後の材料が滞留するものと認められる。

図5



上記摘記事項ア.ないしケ.及び認定事項コ.を、技術常識をもとに、本件特許発明1に照らして整理すると、甲1には以下の甲1発明が記載されていると認める。

「シャフト(5)を平行にして並設された左右1対の圧搾部材(1、1’)の両方が、多数の孔が形成された多孔筒体に形成され、
両圧搾部材(1、1’)は、対向側が互いに上から下に向けて回転することにより、対向上側面間に受け入れた材料を両圧搾部材(1、1’)間で圧搾して、水分を多孔筒体となる圧搾部材(1、1’)内に孔を通して流入させるように形成され、
両圧搾部材(1、1’)の対向下側面の途中にスロート壁部(2)が設けられ、
このスロート壁部(2)と、圧搾部材(1、1’) の対向中心部から両スロート壁部(2)に至るまでの対向下側面部分と、で囲まれるように圧搾後の材料が滞留する領域部分が形成され、
この領域部分に、圧搾後の材料を加圧し固定する両スロート壁部(2)により挟まれた通路が連通されている
圧搾機であり、
圧搾部材(1、1’)がばね(10)により対向方向に付勢されている圧搾機。」

(2) 甲2
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲2には、第1ないし3図とともに以下の記載がある。

ア.
「第1図は本考案脱水機の一実施例を示し、押圧ロール(1)とフィルターロール(2)が左右に平行に並んで設けられ、押圧ロール(1)とフィルターロール(2)間で生鶏糞(3)が圧搾されるようになされている。」(明細書3ページ7ないし10行)

イ.
「押圧ロール(1)は金属等から作製された中空又は中実のロールとなされ、軸が定位置に固定され矢印(a)の方向に回転するようになされている。
フィルターロール(2)は連続多孔質の中空状となされ、軸が定位置に固定され矢印(b)の方向に回転するようになされている。」(明細書3ページ11ないし16行)

ウ.
「又、フィルターロール(2)内には、押圧ロール(1)と相対する側に向けて水分吸引部(21)が設けられ、水分吸引部(21)は真空ポンプ(図示せず)により生鶏糞(3)の水分を矢印(c)の如くフィルターロール(2)を介してロール(2)内に吸引するようになされている。」(明細書4ページ2ないし7行)

エ.
「フィルターロール(2)内には、ロール(2)下方に向けてエアー、蒸気、水等の高圧流体を矢印(d)の如く噴出する高圧流体噴出部(22)が設けられている。この高圧流体噴出部(22)は、フィルターロール(2)の多数の孔に詰った生鶏糞を除去し洗浄するためのものである。
なお、(4)は脱水糞のガイド、(5)は高圧流体や除去糞の排出用ガイドである。」(明細書4ページ10ないし17行)

オ.
「又、第3図は本考案脱水機のさらに他の実施例を示し、第1図の押圧ロール(1)の代わりにフィルターロール(2)が設けられ、2個のフィルターロール(2),(2)間で生鶏糞(3)が圧搾されるようになされている。なお、第3図において、(21),(22),(4),(5),(a)?(d)は第1図と同様のものを示す。」(明細書5ページ7ないし12行)

カ.
上記摘記事項イ.の「押圧ロール(1)は・・・矢印(a)の方向に回転するようになされている。」との記載及び「フィルターロール(2)は・・・矢印(b)の方向に回転する」との記載から、甲2に記載された「フィルターロール(2)、(2)」は、対向側が互いに上から下に向けて回転するものであることが明らかである。さらに上記摘記事項イ.の「フィルターロール(2)は連続多孔質の中空状」との記載から、「フィルターロール(2)」が、多数の微細孔が形成された多孔筒体に形成されたものであることは、明らかである。
また、「フィルターロール(2)、(2)」には両者が最も接近した位置である対向中心部が存在し、「ガイド(4)」と、対向中心部から両「ガイド(4)」に至るまでの対向下側面部分と、で囲まれる領域部分が存在すること、及び両「ガイド(4)」の下端部が離間し、そこを脱水後の「生鶏糞(3)」が通過するように、この両「ガイド(4)」の下端部によって形成された通路が当該領域部分に連通していることが、図3から看取できる。

図3



上記摘記事項ア.ないしオ.及び認定事項カ.を、技術常識をもとに、本件特許発明1に照らして整理すると、甲2には以下の甲2発明が記載されていると認める。

「軸方向を平行にして並設された左右1対のフィルターロール(2)の両方が、多数の微細孔が形成された多孔筒体に形成され、
両フィルターロール(2)は、対向側が互いに上から下に向けて回転することにより、対向上側面間に受け入れた生鶏糞(3)をフィルターロール(2)間で圧搾して、水分を多孔筒体となるフィルターロール(2)内に微細孔を通して流入させるように形成され、
両フィルターロール(2)の対向下側面の途中に脱水糞のガイド(4)が設けられ、
このガイド(4)と、フィルターロール(2)の対向中心部から両ガイド(4)に至るまでの対向下側面部分と、で囲まれる領域部分が形成され、
前記領域部分に、両ガイド(4)の下端部によって形成された通路が連通した、
脱水機。」

(3) 甲3
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲3には、第1ないし3図とともに以下の記載がある。

ア.
「本発明は、材料懸濁液を脱水するための装置に関する。
この装置は、その間にプレスニップを形成する協働する二つのプレスロールを含む。ロールには液体透過性外殻表面が形成され、これによって材料懸濁液、例えばパルプ懸濁液は脱水され、液体は超過圧力によってロールの表面を通過する。材料は最終的に脱水されて、ロールの間のニップにおいて所望の乾物含有量(dry matter content)に達する。」(3ページ3ないし8行)

イ.
「第1図は、本発明による脱水装置の断面図である。
第2図は、脱水されたパルプウェブを移送するためのドクターブレードの拡大図である。
第3図は、本発明による脱水装置の代替実施形態の断面図である。」(4ページ12ないし15行)

ウ.
「第1図に示す装置は、二つの円筒状回転液体透過性プレスロール10を含む。プレスロール10の外殻表面は、ロール本体に好ましくは溶接によって取り付けられた穴あき金属シートからなる。」(4ページ16ないし18行)

エ.
「この二つのロール10は、その間にプレスニップ11を形成する。ロール10の上部は、空間13がこれらのロール10の上に形成されるように、ケーシング12中に閉じ込められている。ケーシング12には材料懸濁液のための入口14が連結されている。」(4ページ20ないし23行)

オ.
「プレスニップ11の下にあるドクターブレード16は、ニップ11から来るパルプウェブを確実に移送し、同時に材料の再湿潤化を防止する。ドクターブレードの下には、パルプを回収する手段、例えばコンベヤスクリュー17またはタンクが置かれている。」(5ページ1ないし4行)

カ.
「ドクターブレード16は、ニップの後をロールの外殻表面を通って液体が浸透して出ることによるニップの後のパルプウェブの再湿潤化を最適に防止するために、ニップ11中をできるだけ長い距離にわたって延びる必要がある。ニップの寸法は1?5mmにすべきである。」(5ページ20ないし23行)

キ.
「脱水しようとする材料懸濁液は、簡単に一つまたは複数の入口14を通して供給され、空間13は材料懸濁液によって満たされる。空間13中の超過圧力によって、液体はロール10の透過性外殻表面を加圧通過し、同時に材料はこれらの表面の上に付着する。材料はロールの回転によってニップ11を通って移動する。ニップの後に、材料は重力によってロールから離れて、コンベヤ17中に落下する。ドクターブレード16は材料ウェブをロールから確実に移送する。」(5ページ末行?6ページ5行)

ク.
第3図の記載(特に、ロール10近傍に記載された矢印)及び上記摘記事項キ.の「材料はロールの回転によってニップ11を通って移動する。」との記載から、甲3に記載された「ロール10、10」は、対向側が互いに上から下に向けて回転するものであることが明らかである。
また、「プレスロール10、10」には、両者が最も接近した位置である「対向中心部」が存在し、「ドクターブレード16」と、対向中心部から両「ドクターブレード16」に至るまでの対向下側面部分とで、パルプウェブが通過する空間が形成されていること、及び当該空間部分に「ドクターブレード16」の下方に位置する両「ドクターブレード16の付根」に挟まれた平行な通路が連通していることが、第3図から看取できる。
また、上記摘記事項キ.の「空間13は材料懸濁液によって満たされる」との記載から、「ロール10、10」が材料懸濁液に浸漬する状態に設けられていることが明らかである。

第2図

第3図



上記摘記事項ア.ないしキ.及び認定事項ク.を、技術常識をもとに、本件特許発明1に照らして整理すると、甲3には以下の甲3発明が記載されていると認める。

「軸方向を平行にして並設された左右1対のロール(10)の両方が、多数の穴が形成された筒体に形成され、
両ロール(10)は、対向側が互いに上から下に向けて回転することにより、対向上側面間に受け入れた材料懸濁液を両ロール(10)間で圧搾して、分離した液体を多数の穴が形成された筒体となるロール(10)内に穴を通して流入させるように形成され、
両ロール(10)の対向下側面の途中に圧搾後の材料のドクターブレード(16)が設けられ、
このドクターブレード(16)と、両ロール(10)の対向中心部から両ドクターブレード(16)に至るまでの対向下側面部分と、で囲まれるように空間が形成され、
この空間に、通路が連通されている、
脱水装置であり、
ロール(10)が材料懸濁液中に浸漬する状態に設けられている脱水装置。」

(4) 甲4
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲4には、第1及び2図とともに以下の記載がある。

ア.
「(5) 繊維懸濁液用の入口と出口、絞り出された液体用の出口、及び孔のあいた表面が設けられハウジング内に軸受をもち、圧搾ニップ内で適当な距離に調整できる、主に同一速度で反対方向に駆動される主に平行な少くとも2個の円筒状ドラム、とを持つハウジングを原則的に備えている装置において、・・・」(4ページ右上欄11ないし17行)

上記摘記事項ア.から、甲4には、以下の甲4事項が記載されていると認める。

「ツインロール式の圧搾機において、2個円筒状ドラムが同一速度で駆動されること。」

(5) 甲5
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲5には、図1及び2とともに以下の記載がある。なお、()内は、請求人が添付した翻訳文をもとに当審が付した翻訳文である。

ア.
「The present invention relates to presses designed to express a liquid out of a material, in the present case, a vegetal material, consisting of two rolls with their axes parallel to each other, between which the material to be processed is squeezed to extract the liquid it contains; the periphery of at least one of the rolls is provided with circumferential grooves allowing liquid drainage.」(明細書1Aページ1ないし5行)
「本発明は、素材、本事例では、植物素材から液体を搾り出すことを目的とした圧搾機であって、軸線が互いに平行である2つのロールから成り、処理される素材をロールとロールの間で圧搾することで、その素材が含有する液体を取り出し、また、それらのロールのうち少なくとも1つの周縁に円周溝が付けられて、液体を抜き取れるようにしている圧搾機に関するものである。」

イ.
「The drawback bound to the reabsorption phenomenon is that a part of the liquid that theoretically should have been squeezed out, crosses the maximum pressure area to be then reabsorbed by the material when it expands, just as a sponge would do, when leaving the nip and that a part of the energy used to squeeze out the juice is wasted.」(明細書1Aページ24ないし28行)
(この再吸収現象に結び付けられる欠点は、理論上は搾り出されたはずの液体の一部が、最大圧力部位を横切ることで、上記ニップから離れているときに、ちょうどスポンジと同じように、素材が膨張するとその素材により液体の一部が再吸収されるようになることと、汁を搾り出すのに使われるエネルギーの一部が無駄になることである。)

ウ.
「The press which is the subject of the present invention is characterized by the fact that the plane of the roll axes is inclined downstreamward with reference to the material displacement, that circumferential, narrow and deep grooves are machined in the lower roll, that a chute inclined downwards is installed at the outlet of the rolls nip, and that this chute is provided with throttling means generating a pressure applied to the material inside this chute, between the rolls and the said throttle.
This throttle can be formed by a barrage arranged transversally inside the chute, the height of which can be adjusted, either manually or automatically, to set the pressure applied to the material between the rolls and barrage. This barrage can be installed on one of the chute walls so that it can be displaced through this wall, and means can be provided to adjust the opening between the barrage and opposite chute wall.」(明細書2ページ1ないし13行)
(本発明の主題である圧搾機は、それらのロール軸線の平面が、素材移動を基準として下流方向に傾斜していること、下部のロールに円周上の細長くて深い溝が切削されていること、ロール・ニップの出口の所に、下向きに傾斜したシュートが取り付けられていること、および、このシュートに絞り手段が付けられて、このシュート内で素材に加えられる圧力を、これらのロールと上記絞り弁との間に発生させることを特徴としている。
この絞り弁は、上記シュート内で横断方向に設けられた遮断具によって形成されることもあり、その遮断具の高さを手動か、自動のいずれかで調整して、これらのロールと遮断具との間で素材に加えられる圧力を設定することができる。この遮断具は、これらのシュート壁面の1つに取り付けられて、このシュート壁面を通して変位できるようにし、また、上記遮断具と、向い合わせのシュート壁面との間の開口を調整する手段が設けられることもある。)

エ.
「Barrage 16 consists of a flap 26 which is mounted in a sealed manner in an opening of one of the front plates 18 between the side plates 20 and can swing around a pin 17, parallel to the roll axes. One or several springs 24 push flap 26 inside the chute and stops, not represented, limit its displacements.
The lower face of flap 26, which is turned towards the roll nip outlet, is inclined to the chute longitudinal axis so that the resultant of pressure stresses applied to this face by the material pushed inside the chute by the rolls has a component parallel to spring 24 axis, which tends to lift the barrage counter to the action of the spring or springs: the spring strength determines the pressure inside the material blanket between the roll and the barrage.」(明細書3ページ13ないし22行)
(遮断具16は、側面板20と側面板20との間で、一方の前面板18の開口にもれのないように設置されて、これらのロール軸線に平行なピン17の周りに旋回できるフラップ26から成っている。1つ、または、いくつかのバネ24は、フラップ26をシュートの中に押し込み、また、止め(図示されてない)は、その変位を制限する。
ロール・ニップの出口の方に転向されるフラップ26の下面は、シュート14の長手方向の軸線に対して傾斜して、これらのロールによりシュート14の中に押し込まれた素材により上記下面に加えられる圧力・応力の合力が、バネ24の軸線に平行な成分を持つようにし、そのような成分が、バネ24(1つまたは複数)の作用に逆らって遮断具16を持ち上げようとし、また、そのバネの強さが、このロールと遮断具16との間で素材ブランケット内の圧力を決定する。)

オ.
「In order to drain this liquid away, mainly from the areas where pressure is high, circumferential grooves 36 are machined in the rolls; these grooves are sufficiently narrow and deep not to get clogged by bagasse and consequently, to allow free flow of juice; rolls with such a grooving are commonly used in cane mills.」(明細書3ページ28ないし32行)
(このような液体を、主として圧力が高い部位から抜き取るために、これらのロールに円周溝36が切削される。また、これらの溝は、バガスが詰まらないくらい、したがって、汁を自由に流れさせるくらい、充分に細長くて深い。さらに、このような溝を付けたロールは、サトウキビ圧搾機において常用されている。)

カ.
「At roll nip outlet, bagasse is pushed by the rolls in the chute 14. The barrage 16 stands in its way, creating a counterpressure in the upstream blanket, between rolls and barrage. 」(明細書3ページ末行ないし4ページ2行)
(ロール・ニップの出口において、バガスは、これらのロールにより、シュート14に押し込まれる。遮断具16は、その通路に立ちふさがっていて、ロールと遮断具との間において、上流のブランケットに対抗圧力をもたらす。)

キ.
「This counterpresure prevents the juice extracted under pressure from being reabsorbed by the material blanket downstream of the nip plane P-P and the slope of this plane as well as the presence of grooves 36 enable juice drainage.」(明細書4ページ8ないし11行)
(このような対抗圧力は、力をかけられて取り出された汁が、ニップ平面P-Pの下流側で素材ブランケットにより再吸収されないようにするとともに、溝36とこの平面の傾斜により、汁の抜き取りが可能になる。)

上記摘記事項ア.ないしキ.から、甲5には以下の甲5事項が記載されていると認める。

「ツインロール式の圧搾機において、ニップを過ぎた素材の再吸収を抑制するため、ツインロールによって形成されるニップの下流に、経路の開口面積を圧力に応じて可変する手段を設けること、及びニップの下流側で素材に圧力をかけて再吸収を抑制し、ロールに形成した溝36により、汁を抜き取ること。」

(6) 甲6
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲6には、【図1】ないし【図9】とともに以下の記載がある。

ア.
「さらに、上記脱水ロール2,2には被脱水物9の脱水率を調節するために、図3(a),(b)に示すようなロール加圧手段により加圧力が加えられるように構成されている。すなわち、脱水ロール2,2の端面中央に設けられたロール軸2aには、一対の平行な軸受案内レール8a,8aの間で、その長手方向に摺動し得るブロック状の滑り軸受8cが外嵌されている。この軸受案内レール8a,8aの両端のそれぞれにはばね力調整ロッド8bが植設され、これらばね力調整ロッド8bに3つのロッド穴を有する加圧力調整板8eが取付けられると共に、ばね力調整ロッド8bの先端に螺刻されたねじにナット8gが螺着されることにより取付けられている。」(段落【0030】)

イ.
「上記脱水ロール2,2のロール軸2a,2aを支持する滑り軸受8c,8cの相反する端面にはコイルばね8fが外装され、上記加圧力調整板8eのロッド穴に通されるばね支持ロッド8dが植設されている。そして、コイルばね8fは、ナット8gのねじ込みによる滑り軸受8cと加圧力調整板8eとの間の距離調整により初期設定長が設定され、その弾発力が調整されるように構成されている。」(段落【0031】)

上記摘記事項ア.及びイ.から、甲6には、以下の甲6事項が記載されていると認める。

「ツインロール式の圧搾機において、ツインロールの両方がバネにより対向方向に付勢されていること」

(7) 甲7
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲7には、【図1】ないし【図7】とともに、以下の事項が記載されている。

ア.
「そして、本発明の固液分離装置1、1aの用途について説明すると、例えば上下水処理によって生ずる汚泥、浄化槽から発生する余剰汚泥、し尿処理場から発生する汚泥、加圧浮上操作から生じるスカム、産業排水の処理によって生じる凝集フロックやその凝集沈殿フロック、砂濾過などの各種濾過機の逆洗浄水、厨房からでる生ゴミなど、また紙パルプ製造業、食品製造業(おからと豆乳)、酒造業、味噌などの醸造業など、各種製造業における固液分離や、各種化学プロセスにおける有価物の回収などに使用することができる。」(段落【0045】)

上記摘記事項ア.から、甲7には、以下の甲7事項が記載されていると認める。

「固液分離装置が、分離後の脱水された固体を主として利用する紙パルプ製造等に使用できるとともに、分離後の液体を主として利用する豆乳を得るためにも使用できること。」

(8) 甲8
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲8には、【図1】ないし【図8】とともに以下の事項が記載されている。

ア.
「以上、本発明に係る固液分離装置を汚泥水を濃縮する目的で使用した実施例を説明したが、この固液分離装置は、各固定リング6の間の間隙幅と遊動リング30の厚さを適宜設定することによって、微小ギャップgの幅を自由に設定できるので、汚泥水の固液分離以外の目的にも広く利用することができる。例えば、すり身の製造、豆腐の製造、製紙加工、ヘドロの浚渫、建設汚泥の固液分離などがその具体例である。」(段落【0054】)

上記摘記事項ア.から、甲8には以下の甲8事項が記載されていると認める。

「固液分離装置が、分離後の脱水された固体を主として利用する製紙加工等に使用できるとともに、分離後の液体を主として利用する豆腐の製造にも使用できること。」

2. 無効理由について
請求人は、上記第4の1.(4)に記載したとおり、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載には、無効理由4に係る記載不備があると主張している。そこで、無効理由4と、無効理由4と相互に関連する無効理由5及び6について、まず検討する。

2-1. 無効理由4について

(1)
無効理由4は、上記第4の1.(4)の「(4-1)『滞留部』と『絞り通路』との関係」と、「(4-2) 『受け入れ量』及び『排出量』」との2つの点で、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は不明確であると主張するものである。そのうち、上記(4-1)については、上記第2.で示したとおり、本件訂正請求が認められ、上記(4-1)に係る主張の根拠である記載は、上記訂正事項4により訂正されたから、この点につき、もはや不明確な記載であるということはできない。
そこで、上記(4-2)について検討する。上記(4-2)に係る主張は、要するに、本件特許明細書の請求項1の「この滞留部に、滞留した分離固形分に圧搾圧力を与え、対向した多孔筒体の下側面部において微細孔を通して分離液分を筒体に流入させるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した絞り通路が連通されている受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した絞り通路が連通されている」との記載において、「受け入れ量」及び「排出量」が「滞留部」の量に言及しているのか、「絞り通路」の量に言及しているのか不明確であるというものである。ここで、本件特許明細書の段落【0009】の「・・・両絞り用筒体間を通過して下方に送り出されたオカラは、スクレーパによって絞り用筒体(多孔筒体)の外周面から剥ぎ取られながら、滞留部に受け入れられる。そして、この滞留部に連通した絞り通路は、滞留した分離固形分に圧搾圧力を与えるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成されているため、滞留部に内圧が生じ、この滞留部に受け入れたオカラを圧搾することができる。・・・一方、滞留部には、一次絞り後のオカラが連続して受け入れられるため、二次絞り後のオカラは上からの圧力によって絞り通路から連続して押し出され、排出される。・・・」との記載を参照しつつ、本件特許発明1で特定される「滞留部」への分離固形分の出入りに着目すると、「滞留部」への「受け入れ」は、「両絞り用筒体の対向中心部」を通してなされ、「滞留部」からの「排出」は、「絞り通路」へ押し出されることによってなされ、その間に分離固形分から分離液分が二次絞りされて「筒内」へ「流入」する、すなわち、「滞留部」から「排出」されるから、分離固形分は、「滞留部」の「受け入れ」の量よりも「排出」の量の方が、「分離液分」が「筒体」へ「流入」する分だけ小さくなることは、当業者にとって明らかである。
そうすると、本件特許発明1で特定される「受け入れ量」及び「排出量」が「絞り通路」ではなく、「滞留部」の量に言及していることは、明らかであって、かつ、そのように解してなんら矛盾は生じない。
したがって、本件特許発明1における、「受け入れ量」及び「排出量」が「滞留部」の量に言及しているのか、「絞り通路」の量に言及しているのか不明確である、との請求人の主張は失当であると言わざるを得ない。
よって、本件特許明細書の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号の記載要件に適合しないものであるということはできない。

(2) 無効理由4についてのまとめ
以上のとおりであるから、無効理由4についての請求人の主張には理由がない。

2-2. 無効理由5について
無効理由5は、上記第4の1.(5)(5-1)に記載したとおり、仮に「滞留部」と「絞り通路」が異なる2つの空間であったとしても、後者が前者に繋がっていることを意味するならば、本件特許発明1ないし6は、いずれも発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない、というものである。
しかし、上記2-1.(1)に説示したとおり、上記本件訂正請求が認められ、本件特許明細書の段落【0021】には、「この滞留部5には、滞留したオカラに圧搾圧力を与えるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように通路を絞って形成した絞り通路50が連通されている。」と記載されているから、本件特許発明1ないし6は、いずれも発明の詳細な説明に記載された発明である。
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反して特許されたものであるとはいえず、同法123条第1項第4号に該当するから無効とされるべきである、ということはできない。
以上のとおりであるから、無効理由5についての請求人の主張には理由がない。

2-3. 無効理由6について
無効理由6は、本件特許明細書には、無効理由4に係る記載不備があるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許発明1ないし6を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない、というものである。しかし、上記2-1.で示したとおり、無効理由4についての請求人の主張には理由がないから、無効理由6についての請求人の主張はその根拠を欠くものであるといわざるを得ない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえず、特許法第36条第4項第1号に該当し、無効とされるべきであるとする、無効理由6についての請求人の主張には理由がない。

2-4. 無効理由1について

2-4-1. 本件特許発明1について

(1) 甲1発明との対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「シャフト(5)を平行にして並設された左右1対の圧搾部材(1、1’)」は、本件特許発明1の「軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体」に相当する。
甲1発明の「孔」は、本件特許発明1の「微細孔」に相当する。
甲1発明の「材料」は、本件特許発明1の「搾り原料」に相当する。
甲1発明の「水分」及び「圧搾後の材料」は、本件特許発明1の「分離液分」及び「分離固形分」に相当する。
甲1発明の「スロート壁部2」は、「圧搾部材1、1’」の対向下側面の途中に設けられて、「圧搾部材(1、1’)」と係合して圧搾後の材料を「圧搾部材(1,1’)」から取り除くから、本件特許発明1の「スクレーパ」に相当することは明らかである。
甲1発明の「領域部分」は、本件特許発明1の「滞留部」に相当する。
甲1発明の「両スロート壁部(2)」で「圧搾後の材料を加圧し」と、本件特許発明1の「滞留部」で「分離固形分に圧搾圧力を与え」とは、「分離固形分(圧搾後の材料)」に「圧力」を与える限度で共通する。
甲1発明の「通路」は、本件特許発明1の「絞り通路」と「通路」である点で共通する。
甲1発明の「圧搾機」は、本件特許発明1の「円筒式絞り機」に相当する。

そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは以下の点で一致し、かつ少なくとも形式的に相違する。

ア. 一致点
「軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体の少なくとも一方が、多数の微細孔が形成された多孔筒体に形成され、
両絞り用筒体は、対向側が互いに上から下に向けて回転することにより、対向上側面間に受け入れた絞り原料を両絞り用筒体間で圧搾して、分離液分を多孔筒体となる絞り用筒体内に微細孔を通して流入させるように形成され、
両絞り用筒体の対向下側面の途中に分離固形分のスクレーパが設けられ、
このスクレーパと、両絞り用筒体の対向中心部から両スクレーパに至るまでの対向下側面部分と、で囲まれるように分離固形分の滞留部が形成され、
この滞留部に、通路が連通されていて、
分離固形分に圧力を与える円筒式絞り機。」

イ. 相違点

<相違点1-1>
本件特許発明1は、「分離液分を得るために用いる円筒式絞り機」であるのに対して、甲1発明は、そのようなものであるか明らかではない点。

<相違点1-2>
本件特許発明1の「滞留部」は、「受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した絞り通路」が連通されていて、「滞留部」に「滞留した分離固形分に圧搾圧力を与え、対向した多孔筒体の下側面部において微細孔を通して分離液分を筒内に流入させる」ようにしたものであるのに対し、甲1発明の「領域部分」は、「通路」が連通されているものの、「領域部分」に滞留する「圧搾後の材料」に圧力が与えられるようにしたものであるかが明らかではない点。

(2) 判断

(2-1) 特許法第29条第1項第3号について

ア. 相違点1-2について
本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者のスクリュウ式絞り機及び後者の円筒式絞り機のいずれについても、呉を圧搾して微細孔に通すことにより、豆乳を分離するようにしたもので、分離固形分となるオカラについては、そのまま排出してしまう構造になっている。このように、従来では、呉を圧搾して微細孔に通すという絞り作用を1度で終了する、いわゆるワンパスによる絞り機能しかなく、分離固形分となるオカラを再度絞るという機能がないため、絞り効率を向上することができないという問題があった。
また、後者の円筒式絞り機の場合、多孔筒体とゴムローラとで呉を挟み込んで圧搾する絞り作用であるため、絞り効率を高めるには、ゴムローラを多孔筒体の外周面に圧接して、呉の通過抵抗を大きくすることが必要になる。このため、多孔筒体とゴムローラとに磨耗が生じ、耐用寿命が短くなるし、又、ゴムローラの使用については、衛生面で好ましいとは言い難く、また、多孔筒体が1体であり、前者と同様に、ワンパスによる絞り機能しかなく、分離固形分となるオカラを再度絞るという機能がないため、絞り効率が悪いという問題があった。」(段落【0004】及び【0005】)
「次に、上述のようにして、両絞り用筒体間を通過して下方に送り出されたオカラは、スクレーパによって絞り用筒体(多孔筒体)の外周面から剥ぎ取られながら、滞留部に受け入れられる。そして、この滞留部に連通した絞り通路は、滞留した分離固形分に圧搾圧力を与えるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成されているため、滞留部に内圧が生じ、この滞留部に受け入れたオカラを圧搾することができる。このように、滞留部においてオカラが圧搾されるため、滞留部を形成する両絞り用筒体の対向下側面部分において、微細孔を通して豆乳が絞り用筒体(多孔筒体)内に流入し、これが二次絞りとなる。一方、滞留部には、一次絞り後のオカラが連続して受け入れられるため、二次絞り後のオカラは上からの圧力によって絞り通路から連続して押し出され、排出される。これにより、滞留部の内圧が一定に保持され、安定した絞り作用を行うことができる。
したがって、本発明の円筒式絞り機では、ワンパスによる1度絞りではなく、一次絞りと二次絞りとのツーパスによる2度絞りを行うため、絞り効率を向上させることができる。また、滞留部を設けたことによって、一次絞り時における呉の通過抵抗が高くなるため、両絞り用筒体同士を圧接させる必要がなく、一次絞りの絞り効率を向上させながら絞り用筒体の磨耗を防止できる。尚、両絞り用筒体同士を圧接させる必要はないが、絞り効率を向上させる上からは、両絞り用筒体を可及的近接状態(隙間ゼロ状態)に並設させるのが望ましい。」(段落【0009】及び【0010】)
以上の記載から、本件特許発明1が、上記相違点1-2に係る構成を有することの技術的意義は、従来は、「多孔筒体」と「ゴムローラ」を圧接して「一次絞り」のみを行っており、「多孔筒体」と「ゴムローラ」との間に摩擦が生じる等の問題点があったところ、「二次絞り」を行うことで、「絞り用筒体」同士を圧接させるほどの「一次絞り」を行わなくとも、「一次絞り」と「二次絞り」を併せた全体として効率の良い絞りを行うものであると解される。
ここで、甲1には、「領域部分」に存在する「圧搾後の材料」に対して圧力を加えて、「二次絞り」を行うことについて、明確な記載はないし示唆もされていない。さらに、上記1.(1)の摘記事項ウ.の「その壁部は補助加圧部材として機能し、材料を更に加圧するか、またはその加圧状態に保持し、それによって材料がロールの内部から、または供給されつつ堆積する材料自身から水分を吸収するのを防ぐこととなる。」との記載から、甲1発明は、「圧搾後の材料」が、「圧搾部材(1,1’)」内部から「水分を吸収」することを防ぐことを課題とするものであり、さらに、上記1.(1)の摘記事項カ.の「水分受け室またはパン16は、シャフト5の端部分を支点にしたレバー18からなる揺動支持されたキャリヤにねじ30によって調整可能に保持されており、」との記載から、甲1発明の「水分受け室またはパン16」の壁部である「スロート壁部(2)」は、「領域部分」の「圧搾後の材料」の圧力が上昇しようとすると、揺動して圧力上昇を妨げようとするものであると解される。
そうすると、本件特許発明1の「滞留部」に相当する甲1発明の「領域部分」において、圧搾後の材料に対して圧搾圧力を加えて、「水分」を「圧搾部材(1,1’)」内部へ流入させるようにしたことが甲1に記載されている、ということはできず、本件特許発明1と甲1発明とはこの点で相違するから、上記相違点1-2が、実質的なものではない、ということはできない。

そうすると、上記相違点1-1が実質的なものか検討するまでもなく、本件特許発明1が甲1に記載された発明であるということはできない。

イ. 小括
上記ア.で示したとおり、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるということはできないから、本件特許発明1が特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができない、との請求人の主張は失当である。

(2-2) 特許法第29条第2項について

ア. 本件特許発明1と甲1発明について

(ア) 相違点1-1について
上記1.(7)及び(8)に記載した甲7及び8事項から、固液分離装置を固形分を得るためにも液分を得るためにも使用可能とすることは、従来周知の技術事項であるといえる。そして、甲1発明の「絞り機」も、「受け入れた材料」のうち「水分」が「圧搾部材(1、1’)」の「孔」をとおして、「材料」から分離され、「圧搾後の材料」として「固形分」が残るから、甲1発明の「絞り機」を「分離液分を得るために用いる」ことは、上記従来周知の技術事項に基づいて、固液分離の対象として、「液分」を得ようとするものを選択することで、当業者が容易になし得たものである。

(イ) 相違点1-2について
上記(2-1)ア.で説示したとおり、甲1発明は、「圧搾後の材料」が、「圧搾部材(1,1’)」内部から「水分を吸収」することを防ぐことを課題とするものであり、「水分受け室またはパン16」の壁部である「スロート壁部(2)」は、「領域部分」の「圧搾後の材料」の圧力が上昇しようとすると、揺動して圧力上昇を妨げようとするものであると解されるから、甲1発明の「領域部分」において、「圧搾後の材料」に対して「圧力」を加えて、「圧搾部材(1,1’)」内に「水分」を流入させることの動機があるということはできない。
さらに、甲1発明において、両「スロート壁部(2)」の上端を上方に伸ばして、「圧搾部材(1,1’)」の「対向中心部」に近づけることで、「対向中心部」を通過した「圧搾後の材料」が、ただちに両「スロート壁部(2)」により加圧され、固定されるようにする方が、「圧搾後の材料」による水分の吸収を妨げる上で、より望ましいことが理解できる。しかし、両「スロート壁部(2)」の上端を上方へ伸ばすことは、甲1発明の「領域部分」から「圧搾部材(1,1’)」内部へ水分が移動する経路となり得る、「圧搾部材(1,1’)」の「孔」を、両「スロート壁部(2)」により「領域部分」に対して覆うこととなるから、その結果、「領域部分」から「圧搾部材(1,1’)」内部への水分の移動が一層困難となることが明らかであり、甲1発明の「領域部分」において、「圧搾後の材料」に対して「圧力」を加えて、「圧搾部材(1,1’)」の内部へ水分を移動させることを当業者が想到することは、容易であるとはいえない。
本件特許発明1は、「絞り通路」が、上記相違点1-2に係る構成を備えることで、「滞留部」の「受け入れ量よりも排出量を小さくするよう」にして、「絞り通路」によって、「滞留部に滞留した分離固形分に圧搾圧力を与え、これにより対向した多孔筒体の下側面部に形成された微細孔を通して分離液分を筒体に流入させる」ようにすることで、「本発明の円筒式絞り機では、ワンパスによる1度絞りではなく、一次絞りと二次絞りとのツーパスによる2度絞りを行うため、絞り効率を向上させることができる。また、滞留部を設けたことによって、一次絞り時における呉の通過抵抗が高くなるため、両絞り用筒体同士を圧接させる必要がなく、一次絞りの絞り効率を向上させながら絞り用筒体の磨耗を防止できる。・・・」(本件特許明細書、段落【0010】)との格別な作用・効果を奏するものであるといえる。
そうすると、甲1発明において、上記相違点1-2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるということはできないから、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<請求人の予備的主張に対する検討>
請求人は、上記第4の1.(1)イ.に示したとおりの予備的主張をしているから検討する。当該予備的主張は、要するにスロート部材2で更に圧搾することが、再湿潤を防止するためであって、更なる絞りのためではないとしても、一般に、機械を設計するに当たり、部品のばらつきや経年劣化等を考慮して、目標に対してある程度のマージンをとって設計を行うことは当業者に常識であり、圧搾機において水分をより多く抽出することは、当業者が常に念頭に置いている課題であるから、当業者であれば、圧力を充分に高くして、対向した多孔筒体の下側面部において微細孔を通して分離液分を筒体に流入させるようにすること(滞留部の受け入れ量よりも排出量の方が小さくなるようにすること)は、当然になし得たことであるというものである。
上記1.(1)の摘記事項カ.の「水分受け室またはパン16は、シャフト5の端部分を支点にしたレバー18からなる揺動支持されたキャリヤにねじ30によって調整可能に保持されており、」との記載から、甲1発明の「水分受け室またはパン16」の壁部である「スロート壁部(2)」は、「領域部分」の「圧搾後の材料」の圧力が上昇しようとすると、揺動して圧力上昇を妨げようとするものであると解される。よって、「スロート壁部(2)」による「材料」への更なる加圧の程度を、マージンを見込んで、上記「材料を更に加圧するか、またはその加圧状態に保持し、それによって材料がロールの内部から、または供給されつつ堆積する材料自身から水分を吸収するのを防ぐ」との作用を奏する程度のものよりも高くするにしても、「領域部分」で材料が圧搾される程度にまで高くできるとの記載や示唆が甲1にはあるとはいえない。
そうすると、当業者であれば、圧力を充分に高くして、対向した多孔筒体の下側面部において微細孔を通して分離液分を筒体に流入させるようにすること(滞留部の受け入れ量よりも排出量の方が小さくなるようにすること)は、当然になし得たこととの上記請求人の主張は採用することはできない。

イ.甲1発明と他の甲号証記載の発明あるいは事項との組み合わせについて

(ア) 甲2について
甲2には、上記1.(2)に示した甲2発明が記載されている。
甲2発明は、「領域部分」を有するものではあるものの、当該「領域部分」に圧力を加え、「領域部分」に存在する「脱水糞」から、「フィルターロール(2)」内へ「水分」を移動させる点について、甲2には記載も示唆もされていない。そして、上記イ.で示したとおり、そもそも甲1発明には、上記相違点1-2に係る構成を備えることについての動機がない。
そうすると、甲1発明に甲2発明を適用して、上記相違点1-2に係る構成を備えることが、当業者にとって容易になし得たものであるということはできない。

(イ) 甲3について
甲3には、上記1.(3)に示した甲3発明が記載されている。
甲3発明は、「ドクターブレード(16)と、両ロール(10)の対向中心部から両ドクターブレード(16)に至るまでの対向下側面部分と、で囲まれるように空間」を有するものではあるが、当該「空間」に「圧搾後の材料」が滞留すること、そして、当該「空間」に圧力を加え、「空間」に存在する「圧搾後の材料」に圧力を加え、「ロール(10)」内へ「液体」を移動させる点について、甲3には記載も示唆もされていない。
そして、そもそも甲1発明には、上記相違点1-2に係る構成を備えることについての動機がない。
そうすると、甲1発明に甲3発明を適用して、上記相違点1-2に係る構成を備えることが、当業者にとって容易になし得たものであるということはできない。

(ウ) 甲4について
甲4には、上記1.(4)に示した甲4事項が記載されている。
甲4事項は、「2個円筒状ドラムが同一速度で駆動」するものであるが、当該「円筒状ドラム」は、対向側が互いに上から下に向けて回転することや、「2個円筒状ドラム」に圧搾され排出されたものが、滞留すること、そして、当該圧搾され排出されたものに対して、圧力を加え、「2個円筒状ドラム」内へ液体を移動させる点について、甲4には記載も示唆もされていない。そして、そもそも甲1発明には、上記相違点1-2に係る構成を備えることについての動機がない。
そうすると、甲1発明に甲4事項を適用して、上記相違点1-2に係る構成を備えることが、当業者にとって容易になし得たものであるということはできない。

(エ) 甲5について
甲5には、上記1.(5)に示した甲5事項が記載されている。
甲5事項の課題が、「ツインロール」により圧搾された「素材」に対して、圧力をかけて再吸収を抑制」することは、明らかである。甲1発明の課題は、上記イ.で示したように、「圧搾後の材料」が、「圧搾部材(1,1’)」内部から「水分を吸収」することを防ぐことであるから、両者とも圧搾後の被圧搾材料が再び水分を吸収することを防止する点で、課題が共通するといえる。しかし、甲1発明には、上記相違点1-2に係る構成を備えることについての動機がない。
そうすると、甲1発明に甲5事項を適用して、上記相違点1-2に係る構成を備えることが、当業者にとって容易になし得たものであるということはできない。

(オ) 甲6について
甲6には、上記1.(6)に示した甲6事項が記載されている。
甲6事項は、「ツインロールの両方がバネにより対向方向に付勢された」「圧搾機」であるが、当該「ツインロール」で圧搾されたものを滞留させる点や、当該滞留した圧搾されたものに対して圧力を加えて、さらに水分を搾る点について、甲6には記載も示唆もされていない。そして、そもそも甲1発明には、上記相違点1-2に係る構成を備えることについての動機がない。
そうすると、甲1発明に甲6事項を適用して、上記相違点1-2に係る構成を備えることが、当業者にとって容易になし得たものであるということはできない。

(カ) 甲7及び甲8について
甲7には、上記1.(7)に示した甲7事項が、甲8には、上記1.(8)に示した甲8事項がそれぞれ記載されている。甲7及び甲8は、両者とも固液分離装置ではあるものの、軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体により構成されたものではなく、上記相違点1-2に係る構成について、記載も示唆もされていない。そして、そもそも甲1発明には、上記相違点1-2に係る構成を備えることについての動機がない。
そうすると、甲1発明に甲7あるいは8事項を適用して、上記相違点1-2に係る構成を備えることが、当業者にとって容易になし得たものであるということはできない。

本件特許発明1は、相違点1-2に係る構成を備えることで、上記ア.(イ)に記載したとおりの格別な作用効果を奏するものである。

ウ. 小括
上記ア.及びイ.で示したとおり、甲1発明と他の甲号証記載の発明あるいは事項及び従来周知の技術事項を組み合わせることで、上記相違点1-2に係る構成としたことは、当業者が容易になし得たものであるということはできないから、甲1発明、他の甲号証記載の発明あるいは事項及び従来周知の技術事項から当業者が容易に発明することができたものであるということはできない。
したがって、本件特許発明1が、甲1発明、他の甲号証記載の発明あるいは事項及び従来周知の技術事項に基づいて特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との請求人の主張は失当である。

2-4-2. 本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1を直接あるいは間接に引用し、本件特許発明1の特定事項を全て包含するものである。

ア. 特許法第29条第1項第3号について
上記2-4-1.(2-1)ア.で示すとおり、本件特許発明と甲1発明との間の上記相違点1-2は、実質的な相違点ではないということはできないから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるということはできない。そうすると、本件特許発明1の特定事項の全てを含み、さらに限定したものである特許発明2ないし4も、甲1に記載された発明であるということはできないから、本件特許発明2ないし4が、甲1に記載された発明であるということもできない。
したがって、本件特許発明2ないし4が、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、との請求人の主張は失当である。

イ. 特許法第29条第2項について
上記2-4-1.(2-2)ア.及びイ.で示すとおり、本件特許発明1は、甲1発明、他の甲号証記載の発明あるいは事項及び従来周知の技術事項から当業者が容易に発明することができたものであるということはできないから、本件特許発明1の特定事項の全てを含み、さらに限定したものである特許発明2ないし6も、甲1に記載された発明及びその他甲号証記載の発明あるいは事項及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
したがって、本件特許発明2ないし6が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との請求人の主張は失当である。

2-4-3. 無効理由1についてのむすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし4は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができず、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、及び、本件特許発明1ないし6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、との無効理由1についての請求人の主張には理由がない。

2-5. 無効理由2について

2-5-1. 本件特許発明1について

(1) 甲2発明との対比
甲2発明における「軸方向を平行にして並設された左右1対のフィルターロール(2)」は、本件特許発明1の「軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体」に相当する。
甲2発明の「生鶏糞」は、本件特許発明1の「搾り原料」に相当する。
甲2発明の「水分」は、本件特許発明1の「分離液分」に相当する。
甲2発明の「脱水糞」は、本件特許発明1の「分離固形分」に相当する。
甲2発明の両「フィルターロール(2)」の対向下側面の途中に設けられた「ガイド(4)」が、本件特許発明1の「スクレーパ」に相当することは明らかである。
甲2発明の「ガイド(4)と、フィルターロール(2)の対向中心部から両ガイド(4)に至るまでの対向下側面部分と、で囲まれる領域部分」について検討する。図3及び摘記事項エ.の「(4)は脱水糞のガイド」との記載から、フィルターロール(2)のニップで圧搾された「脱水糞」は「ガイド(4)」に案内され、上記「領域部分」にたまることは明らかであるから、当該「領域部分」は、本件特許発明1の「滞留部」に相当する。
甲2発明の「通路」は、本件特許発明1の「絞り通路」と「通路」である点で共通する。
甲2発明の「脱水機」は本件特許発明1の「円筒絞り機」に相当する。

そうすると、本件特許発明1と甲2発明とは以下の点で一致し、かつ少なくとも形式的に相違する。

ア. 一致点
「軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体の少なくとも一方が、多数の微細孔が形成された多孔筒体に形成され、
両絞り用筒体は、対向側が互いに上から下に向けて回転することにより、対向上側面間に受け入れた絞り原料を両絞り用筒体間で圧搾して、分離液分を多孔筒体となる絞り用筒体内に微細孔を通して流入させるように形成され、
両絞り用筒体の対向下側面の途中に分離固形分のスクレーパが設けられ、 このスクレーパと、両絞り用筒体の対向中心部から両スクレーパに至るまでの対向下側面部分と、で囲まれるように分離固形分の滞留部が形成され、 この滞留部に、通路が連通されている円筒式絞り機。」

イ. 相違点

<相違点2-1>
本件特許発明1は「分離液分を得るために用いる円筒式絞り機」であるのに対して、甲2発明は、そのようなものであるか明らかではない点。

<相違点2-2>
本件特許発明1の「滞留部」は、「受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した絞り通路」が連通されていて、「滞留部」に「滞留した分離固形分に圧搾圧力を与え、対向した多孔筒体の下側面部において微細孔を通して分離液分を筒内に流入させる」ようにしたものであるのに対し、甲2発明の「領域部分」は、「通路」が連通されているものの、「領域部分」に滞留する「脱水糞」に圧力が与えられるようにしたものであるかが明らかではない点。

(2) 判断

(2-1) 特許法第29条第1項第3号について

ア. 相違点2-2について
甲2発明の「ガイド(4)」と「フィルターロール(2)」の下側部分で囲まれた領域で滞留する脱水後の「脱水糞」が加圧されるか否かについて、甲2には、明記されていないし、示唆もされていない。
ここで、甲2の上記1.(2)の摘記事項エ.の「フィルターロール(2)内には、ロール(2)下方に向けてエアー、蒸気、水等の高圧流体を矢印(d)の如く噴出する高圧流体噴出部(22)が設けられている。この高圧流体噴出部(22)は、フィルターロール(2)の多数の孔に詰った生鶏糞を除去し洗浄するためのものである。」との記載から、甲2発明は、2個の「フィルターロール(2)」の上側面での圧搾に加えて、「水分吸引部」による吸引によって、「フィルターロール(2)」の「微細孔」は「生鶏糞(3)」が詰まることが理解できる。そうすると、上記領域に存在する脱水後の「脱水糞」に対して圧力を加えたとしても、「フィルターロール(2)」は詰まっているから、「フィルターロール(2)」内への更なる水分の移動が生じることは期待できない。
そうすると、本件特許発明1の「滞留部」に相当する甲2発明の「領域部分」において、滞留する「脱水糞」に圧力を与えて「フィルターロール(2)」内に「水分」を流入させることが記載されているとはいえず、本件特許発明1と甲2発明とはこの点で相違するから、上記相違点2-2が、実質的なものではない、ということはできない。
以上のことから、上記相違点2-1が実質的なものか検討するまでもなく、本件特許発明1が甲2に記載された発明であるということはできない。

イ. 小括
上記ア.で示したとおり、本件特許発明1は、甲2に記載された発明であるということはできないから、本件特許発明1が特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができない、との請求人の主張は失当である。

(2-2) 特許法第29条第2項について

ア. 本件特許発明1と甲2発明について

(ア) 相違点2-1について
上記2-4-1.(2-2)ア.(ア)で示したように、固液分離装置を固形分を得るためにも液分を得るためにも使用可能とすることは、甲7及び甲8事項から、従来周知の技術事項である。
そうすると、「生鶏糞」を固形分である「脱水鶏糞」と液体分である「水分」に分離する固液分離装置である甲2発明を、「分離液分を得るために用いる」ことは、上記従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易になし得たものである。

(イ) 相違点2-2について
上記(2-1)ア.で示したとおり、甲2発明の「ガイド(4)」と「フィルターロール(2)」の下側部分で囲まれた領域に存在する脱水後の「脱水糞」に対して圧力を加えたとしても、「フィルターロール(2)」は詰まっているから、「フィルターロール(2)」内への更なる水分の移動が生じることは期待できない。したがって、上記領域で滞留する脱水後の「脱水糞」に対して、「圧搾圧力」を加えて、「脱水糞」から「水分」を分離せしめて、当該「水分」を「フィルターロール(2)、(2)」内に流入させることの動機が、甲2発明に存在するということはできない。
本件特許発明1は、相違点2-2に係る構成を備えることで、上記2-4-1.(2-2)ア.(イ)に記載したとおりの格別な作用効果を奏するものである。
そうすると、甲2発明において、相違点2-2に係る構成を備えることは、当業者が容易になし得たものであるということはできない。

イ. 甲2発明と他の甲号証記載の発明あるいは事項との組み合わせについて

(ア) 甲1について
甲1には、上記1.(1)に示した甲1発明が記載されている。
甲1発明は、「領域部分」を有するものではあるが、当該「領域部分」に圧力を加え、「領域部分」に存在する「材料」から、「圧搾部材(1,1’)」内へ「水分」を移動させる点について、甲1には記載も示唆もされていない。しかし、上記イ.に示したように、そもそも、甲2発明には、上記相違点2-2に係る構成を備えることについての動機がない。
そうすると、甲2発明に甲1発明を適用して、上記相違点2-2に係る構成を備えることが、当業者にとって容易になし得たものであるということはできない。

(イ) 甲3及び4について
上記2-4-1.(2-2)イ.(イ)で示したとおり、甲3発明の「空間」に「圧搾後の材料」が滞留すること、そして、当該「空間」に存在する「圧搾後の材料」に圧力を加え、「ロール(10)」内へ「液体」を移動させる点について、甲3には記載も示唆もされていない。
また、同(ウ)で示したとおり、甲4事項は「2個円筒状ドラムが同一速度で駆動」するものであるが、当該「円筒状ドラム」は、対向側が互いに上から下に向けて回転することや、「2個円筒状ドラム」に圧搾され排出されたものが、滞留すること、そして、当該圧搾され排出されたものに対して、圧力を加え、「2個円筒状ドラム」内へ液体を移動させる点について、甲4には記載も示唆もされていない。そして、そもそも甲2発明には、上記相違点2-2に係る構成を備えることについての動機がない。
そうすると、甲2発明に甲3発明あるいは甲4事項を適用して、上記相違点2-2に係る構成を備えることが、甲2発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるということはできない。

(ウ) 甲5について
上記2-4-1.(2-2)イ.(エ)で示したとおり、甲5事項は、「ツインロール」により圧搾された「素材」に対して、「圧力をかけて・・・汁を抜き取る」ものである。しかし、上記(2-1)ア.で示したように、上記領域に存在する「脱水糞」に対して圧力を加えたとしても、「フィルターロール(2)」の「多数の微細孔」は「生鶏糞(3)」が詰まっており、「フィルターロール(2)」内への更なる水分の移動が生じることは期待できないから、甲2発明に甲5事項を適用することの動機に欠けるといわざるをえない。そして、そもそも甲2発明には、上記相違点2-2に係る構成を備えることについての動機がない。
したがって、甲2発明に甲5事項を適用して、上記相違点2-2に係る構成を備えることが、当業者にとって容易になし得たものであるということはできない。

(エ) 甲6について
上記2-4-1.(2-2)イ.(オ)で示したとおり甲6事項は、「ツインロールの両方がバネにより対向方向に付勢された」「圧搾機」であるが、当該「ツインロール」で圧搾されたものを滞留させる点や、当該滞留した圧搾されたものに対して圧力を加えて、さらに水分を搾る点について、甲6には記載も示唆もされていない。そして、そもそも甲2発明には、上記相違点2-2に係る構成を備えることについての動機がない。
そうすると、甲2発明に甲6事項を適用して、上記相違点2-2に係る構成を備えることが、当業者にとって容易になし得たものであるとすることはできない。

(オ) 甲7及び甲8について
上記2-4-1.(2-2)イ.(カ)で示したとおり、甲7及び8事項は両者とも固液分離装置ではあるものの、軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体により構成されたものではなく、上記相違点2-2に係る構成について、記載も示唆もされていない。そして、そもそも甲2発明には、上記相違点2-2に係る構成を備えることについての動機がない。
そうすると、甲2発明に甲7あるいは8事項を適用して、上記相違点2-2に係る構成を備えることが、当業者にとって容易になし得たものであるということはできない。

本件特許発明1は、相違点2-2に係る構成を備えることで、上記2-4-1.(2-2)ア.(イ)に記載したとおりの格別な作用効果を奏するものである。

ウ. 小括
上記ア.及びイ.で示したとおり、甲2発明において、上記相違点2-2に係る構成としたことは、当業者が容易になし得たものであるということはできないから、甲2発明、他の甲号証記載の発明あるいは事項及び従来周知の技術事項から当業者が容易に発明することができたものであるということもできない。
したがって、本件特許発明1が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との請求人の主張は失当である。

2-5-2. 本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1を直接あるいは間接に引用し、本件特許発明1の特定事項を全て包含するものである。

ア. 特許法第29条第1項第3号について
上記2-5-1.(2-1)ア.に示すとおり、本件特許発明1と甲2発明において、上記相違点2-2に係る構成は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲2に記載された発明であるということはできない。そうすると、本件特許発明1の特定事項の全てを含み、さらに限定したものである特許発明2も、甲2に記載された発明であるということはできないから、本件特許発明2が甲2に記載された発明であるということもできない。
したがって、本件特許発明2が、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができない、との請求人の主張は失当である。

イ. 特許法第29条第2項について
上記2-5-1.(2-2)ア.及びイ.に示すとおり、本件特許発明1は、甲2発明、他の甲号証記載の発明あるいは事項及び従来周知の技術事項から当業者が容易に発明することができたものであるということはできないから、本件特許発明1の特定事項の全てを含み、さらに限定したものである特許発明2ないし6も、甲2発明、その他甲号証記載の発明あるいは事項及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
したがって、本件特許発明2ないし6が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との請求人の主張は失当である。

2-5-3. 無効理由2についてのむすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができないものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、及び、本件特許発明1ないし6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、との無効理由2についての請求人の主張には理由がない。

2-6. 無効理由3について

2-6-1. 本件特許発明1について

(1) 甲3発明との対比
甲3発明における「軸方向を平行にして並設された左右1対のロール(10)」は、本件特許発明1の「軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体」に相当する。
甲3発明の「多数の穴が形成された筒体」は、本件特許発明1の「多数の微細孔が形成された多孔筒体」に相当することは、明らかである。
甲3発明の「材料懸濁液」は、本件特許発明1の「搾り原料」に相当する。
甲3発明の「液体」は、本件特許発明1の「分離液分」に相当する。
甲3発明の「圧搾後の材料」は、本件特許発明1の「分離固形分」に相当する。
甲3発明の「ロール(10)」の対向下側面の「ドクターブレード(16)」が、本件特許発明1の「スクレーパ」に相当することは明らかである。
甲3発明の「ドクターブレード(16)と、両ロール(10)の対向中心部から両ドクターブレード(16)に至るまでの対向下側面部分と、で囲まれるように空間が形成され」たことと、本件特許発明1の「このスクレーパと、両絞り用筒体の対向中心部から両スクレーパに至るまでの対向下側面部分と、で囲まれるように分離固形分の滞留部が形成され」たこととは、「このスクレーパと、両絞り用筒体の対向中心部から両スクレーパに至るまでの対向下側面部分と、で形成される空間部が設けられ」ている限度で一致する。
甲3発明の「この空間に、通路が連通されている」と本件特許発明1の「この滞留部に、滞留した分離固形分に圧搾圧力を与え」「るように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した絞り通路が連通されていることを特徴とした」とは、「空間部に、通路が連通されている」限度で共通する。
甲3発明の「脱水装置」は、請求項1発明の「円筒式絞り機」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲3発明とは以下の点で一致し、かつ相違する。

ア. 一致点
「軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体の少なくとも一方が、多数の微細孔が形成された多孔筒体に形成され、
両絞り用筒体は、対向側が互いに上から下に向けて回転することにより、対向上側面間に受け入れた絞り原料を両絞り用筒体間で圧搾して、分離液分を多孔筒体となる絞り用筒体内に微細孔を通して流入させるように形成され、
両絞り用筒体の対向下側面の途中に分離固形分のスクレーパが設けられ、
このスクレーパと、両絞り用筒体の対向中心部から両スクレーパに至るまでの対向下側面部分と、で形成される空間部が設けられ、
この空間部に、通路が連通されている円筒式絞り機。」

イ. 相違点

<相違点3-1>
本件発明1は、「分離液分を得るために用いる円筒式絞り機」であるのに対して、甲3発明は、そのようなものであるか明らかではない点。

<相違点3-2>
本件特許発明1の「滞留部」は、「受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した絞り通路」が連通されていて、「滞留部」に「滞留した分離固形分に圧搾圧力を与え、対向した多孔筒体の下側面部において微細孔を通して分離液分を筒内に流入させる」ようにしたものであるのに対し、甲3発明の「空間」は、「通路」が連通されているものの、「空間」に「圧搾後の材料」が滞留するか否かや、当該「圧搾後の材料」に圧力が与えられるようにしたものであるかが明らかではない点。

(2) 判断

ア. 相違点3-1について
上記2-4-1.(2-2)ア.(ア)で示したように、固液分離装置を固形分を得るためにも液分を得るためにも使用可能とすることは、例えば、甲7事項及び甲8事項から、従来周知の技術事項である。
そうすると、「材料懸濁液」を固形分である「圧搾後の材料」と「液体」分に分離する固液分離装置である甲3発明を、「分離液分を得るために用いる」ことは、上記従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易になし得たものである。

イ. 相違点3-2について

(ア) 動機について
上記1.(3)の摘記事項オ.の「プレスニップ11の下にあるドクターブレード16は、ニップ11から来るパルプウェブを確実に移送し、同時に材料の再湿潤化を防止する。」との記載及び同摘記事項カ.の「ドクターブレード16は、ニップの後をロールの外殻表面を通って液体が浸透して出ることによるニップの後のパルプウェブの再湿潤化を最適に防止するために、ニップ11中をできるだけ長い距離にわたって延びる必要がある。・・・」との記載から、甲3発明は、「対向中心部」を通過した「圧搾後の材料」が「ロールの外殻表面を通って液体が浸透して出ることによる」「再湿潤化」を防止することを課題とするものであり、甲3発明の「空間」において、「圧搾後の材料」を滞留させ「圧力」を加えて、「ロール(10)」内に「液体」を流入させることの動機があるということはできない。

(イ) 甲3発明と、甲2発明及び甲5事項との組み合わせについて
請求人は、第4の1.(3)に記載したように、本件特許発明1は、甲3記載の発明、甲2記載の発明及び甲5記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張しているから、まず、甲2発明及び甲5事項との組み合わせてについて検討する。
甲2には、上記1.(2)に示した甲2発明が記載されている。そして、甲2には、上記2-4-1.(2-2)イ.(ア)に示した点が、記載も示唆もされていない。また、上記(ア)で示したように、そもそも甲3発明は、「空間」において、「圧搾後の材料」を滞留させ「圧力」を加えて、「ロール(10)」内に「液体」を流入させることの動機があるということはできない。
また、甲5には、上記1.(5)に示した甲5事項が記載されている。甲5事項の課題は、上記2-4-1.(2-2)イ.(エ)に記載したとおりであり、「圧搾後の材料」の「再湿潤」を防止することを課題とする点で、甲3発明の課題と共通する。しかし、甲5事項は、「経路の開口面積を圧力に応じて可変する手段」を設けることで、「ニップの下流側で素材に圧力をかけて再吸収を抑制し、ロールに形成した溝36により汁を抜き取る」ことにより当該課題を解決するものであるから、甲5事項の「圧搾後の材料」は、一定範囲に亘って「ロール」と接触する必要があるのに対し、甲3発明の「圧搾後の材料」は、「ドクターブレード(16)」により「ロール(10)」との接触を少なくすることで、当該課題を解決しようとするものであるから、甲3発明に甲5事項を組み合わせることの動機があるということはできない。
以上のとおりであるから、甲3発明に、甲2発明または甲5事項を適用して、あるいは甲2発明及び甲5事項を適用して、上記相違点3-2に係る構成を備えることが、当業者にとって容易になし得たものであるということはできない。

(ウ) 甲3発明と、他の甲号証記載の発明あるいは事項との組み合わせについて

a. 甲1について
甲1には、上記1.(1)に示した甲1発明が記載されている。
しかし、甲1には、上記2-5-1.(2-2)イ.(ア)に示した点が、記載も示唆もされていない。そもそも、甲3発明には、上記相違点3-2に係る構成を備えることについての動機がない。
そうすると、甲3発明に甲1発明を適用して、上記相違点3-2に係る構成を備えることが、当業者にとって容易になし得たものであるということはできない。

b. 甲4及び甲6について
上記1.(4)に記載したとおり、甲4事項は「2個円筒状ドラムが同一速度で駆動」するものであるが、上記2-5-1.(2-2)イ.(イ)で示した点について、甲4には記載も示唆もされていない。
また、上記1.(6)に記載したとおり、甲6事項は、「ツインロールの両方がバネにより対向方向に付勢された」「圧搾機」であるが、上記2-5-1.(2-2)イ.(エ)で示した点について、甲6には記載も示唆もされていない。
そして、そもそも甲3発明には、上記相違点3-2に係る構成を備えることについての動機がない。
そうすると、甲3発明に甲4あるいは6事項を適用して、上記相違点3-2に係る構成を備えることが、当業者にとって容易になし得たものであるということはできない。

c. 甲7及び8について
上記2-4-1.(2-2)イ.(カ)で示したとおり、甲7事項及び甲8事項は両者とも固液分離装置ではあるものの、軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体により構成されたものではなく、上記相違点2に係る構成について、記載も示唆もされていない。そして、そもそも甲3発明には、上記相違点3-2に係る構成を備えることについての動機がない。
そうすると、甲3発明に甲7あるいは8事項を適用して、上記相違点3-2に係る構成を備えることが、当業者にとって容易になし得たものであるということはできない。

本件特許発明1は、相違点3-2に係る構成を備えることで、上記2-4-1.(2-2)ア.(イ)に記載したとおりの格別な作用効果を奏するものである。

ウ. 小括
上記ア.及びイ.で示したとおり、甲3発明において、上記相違点3-2に係る構成としたことは、当業者が容易になし得たものであるということはできないから、本件特許発明1は、甲3発明、甲2発明、甲5事項及び他の甲号証記載の発明あるいは事項並びに従来周知の技術事項から当業者が容易に発明することができたものであるということはできない。
したがって、本件特許発明1が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との請求人の主張は失当である。

2-6-2. 本件特許発明2ないし6について
上記2-6-1.(2)で示したとおり、本件特許発明1は、甲3発明、甲2発明、甲5事項及び他の甲号証記載の発明あるいは事項並びに従来周知の技術事項から当業者が容易に発明することができたものであるということはできないから、本件特許発明1の特定事項の全てを含み、さらに限定したものである特許発明2ないし6も、甲3発明、甲2発明、甲5事項及び他の甲号証記載の発明あるいは事項並びに従来周知の技術事項から当業者が容易に発明することができたものであるということもできない。
したがって、本件特許発明2及び4が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との請求人の主張は失当である。

2-6-3. 無効理由3についてのむすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、との無効理由3についての請求人の主張には理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
円筒式絞り機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離液分を得るために用いる円筒式絞り機であって、
軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体の少なくとも一方が、多数の微細孔が形成された多孔筒体に形成され、
両絞り用筒体は、対向側が互いに上から下に向けて回転することにより、対向上側面間に受け入れた絞り原料を両絞り用筒体間で圧搾して、分離液分を多孔筒体となる絞り用筒体内に微細孔を通して流入させるように形成され、
両絞り用筒体の対向下側面の途中に分離固形分のスクレーパが設けられ、
このスクレーパと、両絞り用筒体の対向中心部から両スクレーパに至るまでの対向下側面部分と、で囲まれるように分離固形分の滞留部が形成され、
この滞留部に、滞留した分離固形分に圧搾圧力を与え、対向した多孔筒体の下側面部において微細孔を通して分離液分を筒体に流入させるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した絞り通路が連通されていることを特徴とした円筒式絞り機。
【請求項2】
請求項1記載の円筒式絞り機において、左右1対の絞り用筒体の両方が多孔筒体に形成されている円筒式絞り機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の円筒式絞り機において、両絞り用筒体が同一周速度で回転するようにした円筒式絞り機。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の円筒式絞り機において、絞り用筒体の一方又は両方がバネにより対向方向に付勢されている円筒式絞り機。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の円筒式絞り機において、絞り通路の排出口が、滞留部の内圧に応じて開口面積を加減可能に形成されている円筒式絞り機。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の円筒式絞り機において、多孔筒体となる絞り用筒体が絞り原料中に浸漬する状態に設けられている円筒式絞り機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、豆腐の製造に際し、呉(絞り原料)からオカラ(固形分)を分離して豆乳(液分)を得るための絞りに用いるほか、酒、油、果汁等の絞りに用いたり、ヘドロから泥分を分離させるための絞り等、固液分離に使用する円筒式絞り機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、豆乳用の絞り機として、筒壁に多数の微細孔が形成された絞り用筒体の内部にスクリュウ軸を設けたスクリュウ式絞り機が知られている。このスクリュウ式絞り機は、絞り用筒体の内部に供給された絞り原料としての呉をスクリュウ軸の送り作用によって圧搾することにより、分離液分としての豆乳を、微細孔を通して絞り用筒体の外部に流出させ、一方、分離固形分としてのオカラは、絞り用筒体の先端部から排出させるようになっていた。
【0003】
又、軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体の一方が、多数の微細孔が形成された多孔筒体に形成され、他方がゴムローラに形成された円筒式絞り機が知られている。この円筒式絞り機は、多孔筒体とゴムローラとを互いに対向側を上から下に向けて回転させることにより、多孔筒体とゴムローラとの間に受け入れた呉をゴムローラで圧搾して、豆乳を多孔筒体内に微細孔を通して流入させ、一方、オカラは、多孔筒体の外周面に付着することから、これをスクレーパにより剥ぎ取って排出させるようになっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者のスクリュウ式絞り機及び後者の円筒式絞り機のいずれについても、呉を圧搾して微細孔に通すことにより、豆乳を分離するようにしたもので、分離固形分となるオカラについては、そのまま排出してしまう構造になっている。このように、従来では、呉を圧搾して微細孔に通すという絞り作用を1度で終了する、いわゆるワンパスによる絞り機能しかなく、分離固形分となるオカラを再度絞るという機能がないため、絞り効率を向上することができないという問題があった。
【0005】
又、後者の円筒式絞り機の場合、多孔筒体とゴムローラとで呉を挟み込んで圧搾する絞り作用であるため、絞り効率を高めるには、ゴムローラを多孔筒体の外周面に圧接して、呉の通過抵抗を大きくすることが必要になる。このため、多孔筒体とゴムローラとに磨耗が生じ、耐用寿命が短くなるし、又、ゴムローラの使用については、衛生面で好ましいとは言い難く、また、多孔筒体が1体であり、前者と同様に、ワンパスによる絞り機能しかなく、分離固形分となるオカラを再度絞るという機能がないため、絞り効率が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、上述のような従来の問題点を解決するためになされたもので、円筒式絞り機において、絞り原料を圧搾して微細孔に通すという絞り作用(一次絞り)に加えて、分離固形分を再度絞る(二次絞り)ことができ、又、絞り原料の通過抵抗を高めて絞り効率を向上させると共に、絞り用筒体の磨耗を防止することができ、さらに微細孔の詰まりを防止できるようにした円筒式絞り技術を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の円筒式絞り機(請求項1)は、分離液分を得るために用いる円筒式絞り機であって、軸方向を平行にして並設された左右1対の絞り用筒体の少なくとも一方が、多数の微細孔が形成された多孔筒体に形成され、両絞り用筒体は、対向側が互いに上から下に向けて回転することにより、対向上側面間に受け入れた絞り原料(例えば、呉)を両絞り用筒体間で圧搾して、分離液分(例えば、豆乳)を絞り用筒体(多孔筒体)内に微細孔を通して流入させるように形成され、両絞り用筒体の対向下側面の途中に分離固形分(例えば、オカラ)のスクレーパが設けられ、このスクレーパと、両絞り用筒体の対向中心部から両スクレーパに至るまでの対向下側面部分と、で囲まれるように分離固形分の滞留部が形成され、この滞留部に、滞留した分離固形分に圧搾圧力を与え、対向した多孔筒体の下側面部において微細孔を通して分離液分を筒体に流入させるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した絞り通路が連通されている構成とした。
【0008】
この円筒式絞り機を用いて、例えば、豆腐製造に伴なう豆乳を絞る場合、両絞り用筒体の対向上側面間に呉を供給しながら、両絞り用筒体を、対向側を互いに上から下に向けて回転させるもので、これにより、呉が両絞り用筒体間に挟み込まれる状態で圧搾される。この圧搾により、豆乳が絞り用筒体(多孔筒体)内に微細孔を通して流入し、これが一次絞りとなるもので、一方、オカラは、両絞り用筒体間を通過して下方に送り出される。
【0009】
次に、上述のようにして、両絞り用筒体間を通過して下方に送り出されたオカラは、スクレーパによって絞り用筒体(多孔筒体)の外周面から剥ぎ取られながら、滞留部に受け入れられる。そして、この滞留部に連通した絞り通路は、滞留した分離固形分に圧搾圧力を与えるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成されているため、滞留部に内圧が生じ、この滞留部に受け入れたオカラを圧搾することができる。このように、滞留部においてオカラが圧搾されるため、滞留部を形成する両絞り用筒体の対向下側面部分において、微細孔を通して豆乳が絞り用筒体(多孔筒体)内に流入し、これが二次絞りとなる。一方、滞留部には、一次絞り後のオカラが連続して受け入れられるため、二次絞り後のオカラは上からの圧力によって絞り通路から連続して押し出され、排出される。これにより、滞留部の内圧が一定に保持され、安定した絞り作用を行うことができる。
【0010】
従って、本発明の円筒式絞り機では、ワンパスによる1度絞りではなく、一次絞りと二次絞りとのツーパスによる2度絞りを行うため、絞り効率を向上させることができる。また、滞留部を設けたことによって、一次絞り時における呉の通過抵抗が高くなるため、両絞り用筒体同士を圧接させる必要がなく、一次絞りの絞り効率を向上させながら絞り用筒体の磨耗を防止できる。尚、両絞り用筒体同士を圧接させる必要はないが、絞り効率を向上させる上からは、両絞り用筒体を可及的近接状態(隙間ゼロ状態)に並設させるのが望ましい。
【0011】
又、この円筒式絞り機においては、豆乳が微細孔を通して絞り用筒体(多孔筒体)の外周面から内部に向けて流入するため、オカラが微細孔の流入口側、即ち、絞り用筒体(多孔筒体)の外周面に付着する。この付着したオカラについては、スクレーパにより取り除くことができるし、又、微細孔の詰まりについては、絞り用筒体(多孔筒体)の回転による遠心力でオカラを振り払うことができる。特に、本発明では、滞留部を設けているため、この滞留部では、微細孔に圧搾圧力が加わり、この滞留部を過ぎると、圧搾圧力が急激に開放される。従って、微細孔には、滞留部を通るたびに圧縮による押し込みと、圧力開放による吐き出しが繰り返される、いわゆる呼吸が生じ、圧力開放による吐き出しによって微細孔に詰まったオカラを取り除くことができる。
【0012】
又、本発明の円筒式絞り機において、左右1対の絞り用筒体の両方が多孔筒体に形成されている態様(請求項2)がある。このように、絞り用筒体の両方共、多孔筒体に形成すると、2体の絞り用筒体(多孔筒体)内にそれぞれ豆乳を流入させるように絞ることができ、コンパクトに構成しながら絞り効率を向上させることができる。尚、左右1対の絞り用筒体のうち、一方を多孔筒体に形成し、他方を微細孔が形成されていない通常筒体や通常ロール体に形成してもよい。又、両絞り用筒体の大きさ(直径)については、絞り用筒体の両方を多孔筒体に形成した場合でも、或いは一方を多孔筒体に形成した場合でも、その直径を同一に形成してもよいし、異径に形成してもよい。又、絞り用筒体の軸方向長さについても、適宜に決定することができる。
【0013】
又、本発明の円筒式絞り機において、両絞り用筒体が同一周速度で回転するようにした態様(請求項3)がある。このように、両絞り用筒体を同一周速度で回転させると、両絞り用筒体同士が擦れ合うことがなく、磨耗を防止できる。尚、両絞り用筒体の周速度に差を持たせることを否定するものではなく、周速度に差を持たせると、両絞り用筒体間に挟み込んだ絞り原料を擦り切る作用が生じるため、固形分による微細孔への詰まりを防止することができる。
【0014】
又、本発明の円筒式絞り機において、絞り用筒体の一方又は両方がバネにより対向方向に付勢されている態様(請求項4)がある。本発明の円筒式絞り機では、両絞り用筒体を可及的近接状態(隙間ゼロ状態)に並設させるのが望ましいが、滞留部の内圧が所定圧力以上に上昇したような場合、このように、絞り用筒体を対向方向に付勢させておくと、バネによる付勢に抗して絞り用筒体間の間隔を拡大できるため、滞留部への無理な供給を抑えて圧搾圧力を安定させることができるし、両絞り用筒体間に無理に挟み込むことにより生じるトラブル、例えば、絞り用筒体の磨耗、微細孔の詰まり等を防止できる。尚、この場合、絞り原料の種類や状態(固形分濃度や粘度等)に応じて付勢力を調節できるようにしてもよい。
【0015】
又、本発明の円筒式絞り機において、絞り通路の排出口が、滞留部の内圧に応じて開口面積を加減可能に形成されている態様(請求項5)がある。滞留部における圧搾圧力(内圧)は、絞り通路の排出口の開口面積によっても左右されるもので、この開口面積を一定値に固定すると、滞留部の内圧が所定圧力以上に上昇したような場合、これを逃がすことができず、トラブルの原因になる。従って、例えば、絞り通路の排出口に、この排出口を閉鎖する方向に付勢した蓋体を設けて、この蓋体の開放加減により排出口の開口面積を滞留部の内圧に応じて調整するように形成すると、滞留部の内圧が所定圧力以上に上昇したような場合に、この蓋体が付勢に抗して排出口を開放させていくため、滞留部に加わる過大な内圧を逃がすことができ、滞留部での圧搾圧力を安定させることができる。尚、絞り通路の排出口を一定の開口面積に固定することを否定するものではなく、絞り原料がムラのない均一な濃度で、滞留部での圧搾圧力が一定に安定するような場合には、絞り通路の排出口を一定の開口面積に固定することも可能である。
【0016】
又、本発明の円筒式絞り機において、絞り用筒体(多孔筒体)が絞り原料中に浸漬する状態に設けられている態様(請求項6)がある。このように、絞り用筒体(多孔筒体)を絞り原料中に浸漬しておくと、微細孔の流入口に引っかかった分離固形分が絞り原料によってふやけて軟弱になるため、前記した絞り用筒体(多孔筒体)の回転による遠心力、及び滞留部での押し込みと吐き出しによる呼吸によって、容易に取り除くことができる。尚、絞り用筒体の両方を多孔筒体に形成した場合は、この両方の絞り用筒体(多孔筒体)を絞り原料中に浸漬することになるが、一方を多孔筒体に形成した場合は、一方の絞り用筒体(多孔筒体)のみを絞り原料中に浸漬してもよいし、一方の絞り用筒体(多孔筒体)及び他方の絞り用筒体(通常筒体や通常ロール体)の両方を絞り原料中に浸漬してもよい。このように、両方の絞り用筒体を絞り原料中に浸漬しておくと、絞り作用を絞り原料中で行うことができるため、酸化を防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面により詳述する。図1は本発明の実施の1形態である円筒式絞り機の断面図である。尚、この実施の形態では、豆腐製造に伴う豆乳用絞り機として使用する円筒式絞り機について説明する。
【0018】
図において、1,1は左右1対の絞り用筒体で、軸方向を平行にして併設され、この場合、両絞り用筒体1,1共に、多数の微細孔11が形成された多孔筒体に形成されている。この絞り用筒体1は、厚板に多数のパンチング孔10が形成されたベース筒1aを補強部材とし、このベース筒1aの外周面に、薄板による筒壁に多数の微細孔11が形成されたメッシュ筒1bを重ね合わせることにより形成されている。尚、一方の絞り用筒体1を微細孔11が形成された多孔筒体に形成し、他方の絞り用筒体1を微細孔11が形成されていない通常筒体や通常ロール体に形成してもよい。
【0019】
又、この両絞り用筒体1,1は、同一直径(異径直径でもよい)に形成され、対向側が互いに上から下に向けて(矢印A方向)同一周速度で回転するように支持されている。この場合、一方の絞り用筒体1の取り付け位置は固定され、他方の絞り用筒体1は、対向方向に移動可能に支持されると共に、バネ12によって対向方向に付勢され、常時は、ストッパ13により係止されて両絞り用筒体1,1の隙間がゼロになるように、可及的近接状態で並設されている。又、図示省略したが、両絞り用筒体1,1は、軸方向にやや傾斜した状態で架設され、その傾斜下側の端面に豆乳(分離液分)の絞り通路が形成され、この絞り通路から排出された豆乳を、パイプを介して豆乳槽に回収するようにしている。尚、この絞り用筒体1,1は、必ずしも傾斜させる必要はなく、水平に架設してもよい。
【0020】
また、両絞り用筒体1,1は、その上端から対向反対面を経て対向下側面の途中に至る部分が空隙2,2を保持して左右のケーシング3,3内に納まるように支持されている。これにより、左右のケーシング3,3の上端間は、両絞り用筒体1,1の対向上側面15,15に臨むように開放して、ここが呉G(絞り原料)の供給口30として形成されると共に、両絞り用筒体1,1が呉G中に浸漬するようにしている。
【0021】
両絞り用筒体1,1の対向下側面16,16の途中にスクレーパ4,4が設けられ、このスクレーパ4,4と、両絞り用筒体1,1の対向中心部17から両スクレーパ4,4に至るまでの対向下側面部分16a,16aと、で囲まれるようにオカラ(分離固形分)の滞留部5が形成され、この滞留部5には、滞留したオカラに圧搾圧力を与えるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように通路を絞って形成した絞り通路50が連通されている。この場合、絞り通路50の排出口51には、この排出口51を閉鎖する方向にバネ52によって付勢した蓋体53が設けられ、この蓋体53により、滞留部5の内圧に応じて排出口51の開口面積を加減可能に形成している。
【0022】
次に、この円筒式絞り機の作用を説明する。この円筒式絞り機では、絞り原料となる呉Gを、供給口30に供給しながら、両絞り用筒体1,1を、互いに矢印A方向に回転させるもので、これにより、絞り用筒体1,1の対向上側面15,15間に受け入れられた呉Gが両絞り用筒体1,1間に挟み込まれる状態で圧搾される。この圧搾により微細孔11,11を通して豆乳が絞り用筒体1,1内に流入し、これが一次絞りとなるもので、絞り用筒体1,1内に流入した豆乳は、豆乳槽(図示せず)に回収され、一方、オカラは、両絞り用筒体1,1間を通過して下方に送り出される。
【0023】
このようにして、両絞り用筒体1,1間を通過して下方に送り出されたオカラは、スクレーパ4,4によって絞り用筒体1,1の外周面から剥ぎ取られながら、滞留部5に受け入れられる。この滞留部5に連通された絞り通路50は、受け入れ量よりも排出量を小さくするように通路を絞って形成されているため、滞留部5には内圧が発生し、この滞留部5に受け入れられたオカラを圧搾することができる。このように、滞留部5においてオカラが圧搾されるため、滞留部5を形成する両絞り用筒体1,1の対向下側面部分16a,16aにおいて、微細孔11,11を通して豆乳が絞り用筒体1,1内に流入し、これが二次絞りとなる。一方、滞留部5には、一次絞り後のオカラが連続して受け入れられるため、二次絞り後のオカラは上からの圧力によって絞り通路50の排出口51から連続して押し出され、排出される。これにより、滞留部5の内圧が一定に保持され、安定した絞り作用を行うことができる。
【0024】
従って、この円筒式絞り機では、ワンパスによる1度絞りではなく、一次絞りと二次絞りとのツーパスによる2度絞りを行うため、絞り効率を向上させることができる。また、滞留部5を設けたことによって、一次絞り時における呉Gの通過抵抗が高くなるため、両絞り用筒体1,1同士を圧接させる必要がなく、一次絞りの絞り効率を向上させながら絞り用筒体1,1の磨耗を防止できるし、両方(2体)の絞り用筒体1,1を用いて絞ることができるため、コンパクトに構成しながら絞り効率を向上させることができる。
【0025】
又、絞り用筒体1,1の外周面に付着したオカラについては、スクレーパに4,4より取り除くことができるし、又、微細孔11,11の詰まりについては、絞り用筒体1,1の回転による遠心力でオカラを振り払うことができる。特に、滞留部5では、微細孔11に圧搾圧力が加わり、この滞留部5を過ぎると、圧搾圧力が急激に開放される。従って、微細孔11には、滞留部5を通るたびに圧縮による押し込みと、圧力開放による吐き出しが繰り返される、いわゆる呼吸が生じ、圧力開放による吐き出しによって微細孔11に詰まったオカラを取り除くことができる。又、絞り用筒体1,1を絞り原料としての呉G中に浸漬したので、微細孔11の流入口に引っかかったオカラが呉Gによってふやけて軟弱になり、前記した絞り用筒体1の回転による遠心力、及び滞留部5での押し込みと吐き出しによる呼吸によって、容易に取り除くことができるし、絞り作用を呉G中で行うことができるため、豆乳の酸化を防止することができる。
【0026】
両絞り用筒体1,1を同一周速度で回転させるようにしたので、両絞り用筒体1,1同士が擦れ合うことがなく、磨耗を防止できる。又、絞り用筒体1,1を対向方向に付勢させたので、滞留部5の内圧が所定圧力以上に上昇したような場合、バネ12による付勢に抗して絞り用筒体1,1間の間隔を拡大できるため、滞留部5への無理な供給を抑えて圧搾圧力を安定させることができるし、両絞り用筒体1,1間に無理に挟み込むことにより生じる絞り用筒体1,1の磨耗や微細孔11の詰まりといったトラブルを防止できる。
【0027】
又、絞り通路50の排出口51に、この排出口51を閉鎖する方向に付勢した蓋体53を設けて、排出口51の開口面積を、滞留部5に滞留したオカラの圧搾圧力に応じて加減可能に形成したので、滞留部5の内圧が所定圧力以上に上昇したような場合に、この蓋体53がバネ52による付勢に抗して排出口51を開放させていく。従って、滞留部5に生じる過大な内圧を逃がすことができ、滞留部5での圧搾圧力を安定させることができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態を図面により説明したが、具体的な構成はこれに限定されることはない。例えば、本発明の円筒式絞り機は、豆乳絞り機として使用する以外に、酒、油、果汁等の絞り機として使用したり、又、ヘドロから泥分を分離させるための絞り機等、固液分離に使用する絞り機に適用できる。又、絞り用筒体の筒壁の材料及び微細孔について、鉄やステンレス等の金属やプラスチック材やゴム材に微細孔を形成したメッシュ板やパンチング板、あるいは、スポンジ材やポーラスゴム材、布材等を使用することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の円筒式絞り機にあっては、滞留部を設けたので、絞り原料を圧搾して微細孔に通すという絞り作用(一次絞り)に加えて、分離固形分を再度絞る(二次絞り)という2度絞りを行うことができるため、絞り効率を向上させるができる。又、滞留部により絞り原料の通過抵抗を高めて一次絞りの絞り効率を向上させることができると共に、両絞り用筒体を圧接させる必要がないので、絞り用筒体の擦れによる磨耗を防止して、耐用寿命を向上させることができる。又、絞り用筒体の回転による遠心力及び、滞留部を設けたことによる呼吸によって、微細孔につかえた固形分を取り除くことができ、微細孔の詰まりを防止して、長時間に亘る連続運転が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の1形態である円筒式絞り機の断面図である。
【符号の説明】
1 絞り用筒体
1a ベース筒
1b メッシュ筒
10 パンチング孔
11 微細孔
12 バネ
13 ストッパ
15 対向上側面
16 対向下側面
16a 対向下側面部分
17 対向中心部
2 空隙
3 ケーシング
30 供給口
4 スクレーパ
5 滞留部
50 絞り通路
51 排出口
52 バネ
53 蓋体
G 呉(絞り原料)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-03-24 
結審通知日 2015-03-26 
審決日 2015-04-14 
出願番号 特願2000-130498(P2000-130498)
審決分類 P 1 113・ 852- YAA (B30B)
P 1 113・ 121- YAA (B30B)
P 1 113・ 536- YAA (B30B)
P 1 113・ 537- YAA (B30B)
P 1 113・ 853- YAA (B30B)
P 1 113・ 851- YAA (B30B)
P 1 113・ 113- YAA (B30B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 敏史  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 長屋 陽二郎
刈間 宏信
登録日 2004-03-26 
登録番号 特許第3537377号(P3537377)
発明の名称 円筒式絞り機  
代理人 吉野 亮平  
代理人 田中 成志  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 高石 秀樹  
代理人 濱田 百合子  
代理人 杉本 賢太  
代理人 高石 秀樹  
代理人 吉野 亮平  
代理人 ▲吉▼田 和彦  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 北島 健次  
代理人 本山 慎也  
代理人 ▲吉▼田 和彦  

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