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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F23C
管理番号 1307687
審判番号 不服2013-15741  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-14 
確定日 2015-11-12 
事件の表示 特願2009-537216「粉末燃料、粉末燃料のディスパージョン、および粉末燃料関連の燃焼装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月29日国際公開、WO2008/063549、平成22年 4月 2日国内公表、特表2010-510469〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2007(平成19)年11月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年11月17日 アメリカ合衆国,2006年12月4日 アメリカ合衆国,2007年9月10日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成21年5月18日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出された後、平成21年7月16日に特許法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、要約書及び図面の翻訳文が提出され、平成22年11月15日に手続補正書及び上申書が提出され、平成24年7月23日付けで拒絶理由が通知され、平成25年1月31日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年4月11日付けで拒絶査定がなされ、平成25年8月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、さらに、当審において平成26年1月20日付けで書面による審尋がなされ、平成26年7月25日に回答書が提出され、その後、平成26年10月7日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成27年4月14日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成27年4月14日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに平成21年7月16日に提出された明細書及び図面の翻訳文の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「 【請求項1】
200メッシュ以上のサイズを有する粒子が5重量%未満で、325メッシュ未満のサイズを有する粒子が少なくとも25重量%である粒子サイズ分布を有する爆発性の粉末燃料を、酸素を含む酸化ガスと混合して、爆発可能な範囲に維持された爆発性の粉末燃料ディスパージョンを形成すること、
爆発性の粉末燃料ディスパージョンを、点火源を通過する制御された流れに誘導すること、および
爆発性の粉末燃料ディスパージョンに点火し、静止の爆燃波を生成することによって、爆発性の粉末燃料ディスパージョンを消費してエネルギーを生成すること、
を含む、エネルギーを生成する方法。」

3.引用文献
(1)引用文献の記載
本願の優先日前に頒布され、当審において平成26年10月7日付けで通知した拒絶理由で引用した刊行物である特開平8-338259号公報(以下、「引用文献」という。)には、「微粉炭直接噴射燃焼タービン」に関し、図面とともに次の記載がある。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、燃焼器で直接微粉炭を噴射燃焼させる燃焼タービンに関する。」(段落番号【0001】)

(イ)「【0010】
【作用】本発明では燃料となる石炭は微粉砕されていることが基本である。昨今の技術の進歩は、石炭等の固形物を超微細な粒子に粉砕すること、及び石炭を炉内で燃焼するに際し種々の温度領域,種々の燃焼速度等の中から必要な燃焼状況を選んで燃焼させること等は、ほぼ完成の域に達している。
【0011】従って超微細な粒子になるように微粉砕した石炭を燃焼器の中に直接噴入して燃焼させると微粉炭の高速燃焼,即ち爆発的燃焼が行われ、燃焼排ガスが発生する。この燃焼排ガスを、別途設けた圧縮機等で作成された圧縮空気と共にタービンの動翼に向けて噴射し、タービンを回転させる。」(段落【0010】及び【0011】)

(ウ)「【0016】
【実施例】本発明の実施例を図1に基づいて説明する。石炭船(1)で運ばれた石炭は揚炭機(2)で貯炭場(3)に陸揚げされる。陸揚げされた石炭はコンベア(4)でコールバンカ(5)へ運ばれ、粉砕機(ミル)(6)に投入され微粉に粉砕される。粉砕された微粉は、図示しない供給源からの高圧空気で微粉炭管(7)の中を圧送され、燃焼器(10)へ噴入される。
【0017】同燃焼器(10)へ直接噴入された微粉炭は燃焼空気と予め設定された最適比率で混合され爆発的燃焼を行ないタービン(12)を回転させ、同タービン(12)と連結された発電機(100)を回転して発電を行なう。
【0018】なお、同タービン(12)の発電機(100)連絡端と反対側端には、同タービン(12)と同軸に空気圧縮機(9)が接続されており空気(8)を吸入,圧縮して上記燃焼器(10)で必要とした燃焼空気及びタービン(12)で必要とする圧縮空気を供給している。」(段落【0016】ないし【0018】)

(2)引用文献記載の事項
上記(1)及び図1の記載から、引用文献には次の事項が記載されていることが分かる。

(カ)上記(1)(ア)ないし(ウ)には、微粉炭の爆発的燃焼により発生した燃焼排ガスによりタービン12を回転させ、同タービン12に連結された発電機100を回転して発電を行う旨が記載されているから、引用文献には、微粉炭の爆発的燃焼により、発電を行う方法が記載されていることが分かる。

(キ)上記(1)(イ)及び(ウ)並びに図1の記載から、引用文献に記載された発電を行う方法は、超微細な粒子になるように微粉砕した石炭を燃焼用空気と予め設定された最適比率で混合し、爆発的燃焼を行うことによって、タービン12を回転させることを含むものであることが分かる。

(3)引用文献に記載された発明
上記(1)及び(2)並びに図1の記載から、引用文献には、次の発明が記載されているといえる。

「超微細な粒子になるように微粉砕した石炭を燃焼用空気と予め設定された最適比率で混合し、爆発的燃焼を行うことによって、タービン12を回転させることを含む発電を行う方法。」(以下、「引用発明」という。)

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明において「微粉砕した石炭」は、爆発的燃焼を行うものであるから、その作用からみて、本願発明における「爆発性の粉末燃料」に相当する。
また、引用発明における「燃焼用空気」は、その機能からみて、本願発明における「酸素を含む酸化ガス」に相当する。そして、引用発明において「微粉砕した石炭を燃焼用空気と予め設定された最適比率で混合し、爆発的燃焼を行うこと」は、微粉砕した石炭を爆発可能な範囲に分散された状態に維持することを意味するから、その技術的意義からみて、本願発明において「酸素を含む酸化ガスと混合して、爆発可能な範囲に維持された爆発性の粉末燃料ディスパージョンを形成すること」に相当する。
さらに、引用文献における記載「同タービン(12)と同軸に空気圧縮機(9)が接続されており空気(8)を吸入,圧縮して上記燃焼器(10)で必要とした燃焼空気及びタービン(12)で必要とする圧縮空気を供給している。」(上記3.(1)(ウ)の段落【0018】)における「タービンで必要とする圧縮空気」とは、技術常識からみて、タービンの冷却等に用いられる圧縮空気であることは明らかである。また、引用発明において「微粉砕した石炭を燃焼用空気と予め設定された最適比率で混合し、爆発的燃焼を行う」ということは、燃料と空気との混合気に点火して爆燃波を生成するものであることは自明である。そして、引用発明が、爆発的燃焼によってタービン12を連続的に回転させるものである以上、本願発明と同様に爆発的な燃焼における火炎前面が定常的となって持続するものであることも明らかである。したがって、引用発明において「爆発的燃焼を行うこと」は、本願発明において「爆発性の粉末燃料ディスパージョンに点火し、静止の爆燃波を生成することによって爆発性の粉末燃料ディスパージョンを消費」することに相当する。
そして、引用発明において「タービン12を回転させること」は、その技術的意義からみて、本願発明における「エネルギーを生成すること」に相当し、同様に、「発電を行う方法」は「エネルギーを生成する方法」に相当する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「 爆発性の粉末燃料を、酸素を含む酸化ガスと混合して、爆発可能な範囲に維持された爆発性の粉末燃料ディスパージョンを形成すること、および
爆発性の粉末燃料ディスパージョンに点火し、静止の爆燃波を生成することによって、爆発性の粉末燃料ディスパージョンを消費してエネルギーを生成すること、
を含む、エネルギーを生成する方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
(a)本願発明においては、爆発性の粉末燃料が「200メッシュ以上のサイズを有する粒子が5重量%未満で、325メッシュ未満のサイズを有する粒子が少なくとも25重量%である粒子サイズ分布を有する」のに対し、引用発明においては、石炭が「超微細な粒子になるように微粉砕した」ものである点(以下、「相違点1」という。)。
(b)本願発明においては、「爆発性の粉末燃料ディスパージョンを、点火源を通過する制御された流れに誘導する」のに対し、引用発明においては、そのような構成を有するのか不明である点(以下、「相違点2」という。)。

5.判断
上記相違点1に関し、本願の明細書の段落【0013】ないし【0016】には、「粒子の約5重量%未満が200メッシュ以上のサイズを有し、粒子の少なくとも約25重量%が325メッシュ未満のサイズを有している粒子サイズ分布を有する粉末を含む粉末燃料」、「粒子の5重量%未満が50メッシュ以上のサイズを有しており、粒子の15重量%未満が80メッシュ以上のサイズを有しており、粒子の少なくとも20重量%が200メッシュ未満のサイズを有している、粒子サイズ分布を有する粉末化針葉樹材(softwood)粒子を含む粉末燃料」、「粒子の5重量%未満が80メッシュ以上のサイズを有しており、粒子の少なくとも30重量%が200メッシュ未満のサイズを有している、粒子サイズ分布を有する粉末化広葉樹材(hardwood)粒子を含む粉末燃料」及び「粒子の5重量%未満が200メッシュ以上のサイズを有しており、粒子の少なくとも65重量%が325メッシュ未満のサイズを有しており、粒子の少なくとも25重量%が、400メッシュ未満のサイズを有している、粒子サイズ分布を有する粉末化草粒子を含む粉末燃料」の各態様が示されている。
また、本願の明細書の段落【0056】には、粉末燃料の粒子サイズに関し、50メッシュ以下の粒子サイズとして、約60ないし450メッシュの粒子を含む粉末燃料など、より厳しい要件の粉末燃料であっても良い旨が記載されている。
これらの記載は、粉末燃料の粒子サイズが小さいほど燃焼速度が速くなり、爆発燃焼性が高まるという、一般的な事項を示しているにすぎず、これらの記載において挙げられている数値に格別技術的な意義はない。
したがって、本願発明における「200メッシュ以上のサイズを有する粒子が5重量%未満で、325メッシュ未満のサイズを有する粒子が少なくとも25重量%である粒子サイズ分布を有する」という発明特定事項に、臨界的な意義を見出すことはできない。
これに対し、引用発明における石炭は、爆発的燃焼を起こす程度に超微細な粒子になるように微粉砕したものであるところ、引用発明において、爆発的燃焼を起こす範囲の中で具体的に粒子サイズをどの範囲に設定するかは、コスト等を勘案して設計上適宜定める事項にすぎない。
以上のことから、引用発明において、超微細な粒子になるように微粉砕した石炭の粒子のサイズを特定することによって、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、装置設計上の事項として格別な創意を要することなく想到し得たことである。

次に、上記相違点2に関して検討すれば、燃焼排ガスによってタービンを回転させる燃焼器において、点火源を設け、燃料と空気との混合気を点火源を通過する流れに誘導することは、ごく普通に行われていることであるから、引用発明において、上記相違点2における本願発明の発明特定事項のようにすることは、格別な創意を要することなく想到し得たことである。

また、本願発明を全体として検討しても、引用発明から予測される以上の格別の効果を奏するものではない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-27 
結審通知日 2015-06-16 
審決日 2015-06-29 
出願番号 特願2009-537216(P2009-537216)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲葉 大紀  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 中村 達之
金澤 俊郎
発明の名称 粉末燃料、粉末燃料のディスパージョン、および粉末燃料関連の燃焼装置  
代理人 佐伯 憲生  
代理人 佐伯 裕子  
代理人 中村 正展  
代理人 牛山 直子  
代理人 佐伯 拓郎  

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