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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C22C
管理番号 1307692
審判番号 不服2014-8477  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-07 
確定日 2015-11-12 
事件の表示 特願2010- 1102「磁気特性と打ち抜き加工性に優れた無方向性電磁鋼板」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月21日出願公開、特開2011-140683〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年1月6日の出願であって、平成26年1月29日付けで拒絶査定がなされ、同年5月7日に拒絶査定不服審判が請求され、当審において平成27年3月9日付けで拒絶理由が通知され、同年4月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年5月11日付けで再度拒絶理由が通知され、同年7月10日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-3に係る発明は、平成27年7月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
質量%で、C:0.003%以下、Si:1.0%以上3.0%以下、Al:0.89%以上0.91%以下、Mn:0.1%以上1.0%以下を含有し、AlとSiの含有量が、0.39≦Al/(Si+Al)≦0.6の関係を満たし、残部Feおよび不可避不純物元素よりなる鋼成分を有し、かつ、(降伏強度/引張強度)で表される降伏比が0.6以上0.9以下で、ビッカース硬度が136以上200以下であることを特徴とする磁気特性と打ち抜き加工性に優れた無方向性電磁鋼板。」(下線部が補正箇所である。)

第3 引用刊行物の記載事項
当審において平成27年5月11日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本出願日前に日本国内において頒布された特開2002-241905号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。

(a)「【請求項1】 質量%で、
C :0.010%以下、
Si:0.1?3.0%、
Al:0.4?3.5%、
Mn:0.1?1.5%
を含有し、残部Feおよび不可避不純物元素よりなる鋼において、ビッカース硬度が180以下で、かつ降伏比が0.65以上であることを特徴とする磁気特性と打抜加工性に優れた無方向性電磁鋼板。」(【特許請求の範囲】
)

(b)「【実施例】次に本発明の実施例を示す。
(実施例1)表1に示した成分の無方向性電磁鋼板(0.50mmt)をエアコンコンプレッサモータ用鉄心として、打ち抜きを含む加工処理を施した。モータ鉄心用素材として要求される磁気特性は、歪取焼鈍後で、鉄損W_(15/50 )が3.0w/kg以下、磁束密度B_(50)が1.71T以上であった。結果を併せて表1に示す。」(【0020】)

(c)「(実施例2)表2に示した成分の無方向性電磁鋼板(0.50mmt)を電気自動車メインモータ用鉄心として、打ち抜きを含む加工処理を施した。モータ鉄心用素材として要求される磁気特性は、鉄損W_(15/50 )が3.0w/kg以下、磁束密度B_(50)が1.68T以上であった。結果を併せて表2に示す。・・・」(【0022】)

(d)「(実施例3)C:0.002%、Si:0.34%、Al:1.08%、Mn:0.25%を基本化学成分として含有する無方向性電磁鋼板(0.35mmt)に、表3に示す化学成分を添加し、磁気特性と打ち抜き加工性を同時に満足させることを試み、汎用モータ用鉄心として、打ち抜きを含む加工処理を施した。モータ鉄心用素材として要求される磁気特性は、鉄損W_(15/50) が3.5w/kg以下、磁束密度B_(50)が1.80T以上であった。結果を併せて表3に示す。・・・」(【0023】)

(e)「【表1】



「 【表2】



「【表3】




第4 引用刊行物記載の発明
上記記載事項(a)によれば、引用刊行物には、
「質量%で、
C :0.010%以下、
Si:0.1?3.0%、
Al:0.4?3.5%、
Mn:0.1?1.5%
を含有し、残部Feおよび不可避不純物元素よりなる鋼において、ビッカース硬度が180以下で、かつ降伏比が0.65以上であることを特徴とする磁気特性と打抜加工性に優れた無方向性電磁鋼板。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

第5 対比・判断
本願発明と引用発明を対比すると、本願発明は、上記「第2」のとおり、Al含有量の下限が0.89に補正されたことから、「0.39≦Al/(Si+Al)≦0.6]の関係式により、Siの含有量の上限値は、実際には、1.42%となる(平成27年7月10日付け意見書の「4-1)本願発明の特徴について」の第3段落)。
また、引用発明では、Si:0.1?3.0%、Al:0.4?3.5%であることから、AlとSiの含有量が、「0.12≦Al/(Si+Al)≦0.97」の関係を有する。

そうすると、両者は、
「質量%で、
C :0.010%以下、
Si:1.0?1.42%、
Al:0.89?0.91%、
Mn:0.1?1.0%
を含有し、AlとSiの含有量が、0.39≦Al/(Si+Al)≦0.6の関係を満たし、残部Feおよび不可避不純物元素よりなる鋼成分を有し、かつ、(降伏強度/引張強度)で表される降伏比が0.65以上0.9以下で、ビッカース硬度が136以上180以下である磁気特性と打ち抜き加工性に優れた無方向性電磁鋼板。」である点で一致しており、相違点は認められない。
そして、上記特定事項を有する本願発明が、引用発明の打ち抜き性、磁気特性(【表1】のNo.2,3,【表2】におけるNo.13,14,及び【表3】におけるNo.22?24)に比べ、格別顕著な効果を奏するものとも認められない。

この点につき、審判請求人は、平成27年7月10日付け意見書の「4-2)本願発明の新規性進歩性について」の第3-6段落において、
「本願発明の鋼成分は、拒絶理由に記載されているとおり、形式的には引用発明に包含される可能性はありますが、これは、引用発明が、Si、Alの含有範囲について、Si:0.1?3.0%、Al:0.4?3.5%という非常に広い範囲を規定している結果にすぎません。
本願発明は、そのような広い範囲の中で好適な特性範囲を選択的に明示するものです。
その特徴の一つとして、高い磁束密度と良好な打抜き加工性を両立することがあります。
例えば、本願発明の発明例である表2のNo.2、3の磁束密度B50は1.75と非常に良好なものとなっています。引用発明においてこれに匹敵する磁束密度を有する例は、表3のNo.22、23、24ですが、これらはSi含有量が本願発明の下限未満の非常に低いもので、磁束密度が高いのはある意味当然の材料です。しかも、それらはSi含有量が低いため、ビッカース硬度は130未満となっており、また、Al/(Si+Al)の値が0.76と非常に高く、同程度のAl/(Si+Al)の値を有する例である本願発明の表3No.15と同様に端面ダレが発生することが予想される材料です。
また、引用発明のその他の例でも、本願発明が規定するAlとSiの含有範囲、及びAl/(Si+Al)値の範囲をすべて満たし、磁束密度B50が1.75以上を示す例は示されていません。
このように、本願発明は、AlとSiの含有範囲、Al/(Si+Al)値の範囲、硬度範囲、降伏比、さらにはC範囲、Mn範囲を規定し、それらを全て満たすことにより、比較発明では到達できていない高度なレベルでの特性の両立が実現されています。」(下線は、当審において付した。)と主張する。
しかしながら、本願発明は、打ち抜き加工性を損なうことなく、鉄損低減効果、磁束密度向上効果を得ることを目的とするものであるところ(【0007】)、本願発明の発明例である上記表2のNo.2、3についてみると、無方向性電磁鋼板において、磁束密度と同様に重要な磁気特性の指標であるところの鉄損W15/50(w/kg)の値は、それぞれ、3.17、3.13であり、上記引用発明(表3のNo.22、23、24)の値3.0、2.8、2.8に比べると高い数値になっており、本願発明が、磁気特性と打ち抜き加工性の両立との点で、引用発明に比べ優れているとはいえない(むしろ、引用発明表1のNo.2、3などは、鉄損低下の観点からすれば、本願発明表2のNo.2、3よりも優れているといえる。)。
したがって、上記「本願発明は、AlとSiの含有範囲、Al/(Si+Al)値の範囲、硬度範囲、降伏比、さらにはC範囲、Mn範囲を規定し、それらを全て満たすことにより、比較発明では到達できていない高度なレベルでの特性の両立が実現されています。」との主張は採用できない。

よって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、引用刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-01 
結審通知日 2015-09-08 
審決日 2015-09-28 
出願番号 特願2010-1102(P2010-1102)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C22C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 真明  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 鈴木 正紀
松嶋 秀忠
発明の名称 磁気特性と打ち抜き加工性に優れた無方向性電磁鋼板  
代理人 福地 律生  
代理人 古賀 哲次  
代理人 亀松 宏  
代理人 中村 朝幸  
代理人 永坂 友康  
代理人 青木 篤  
代理人 石田 敬  

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