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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47K
管理番号 1307701
審判番号 不服2014-18656  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-18 
確定日 2015-11-12 
事件の表示 特願2009-175766「暖房便座」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月10日出願公開、特開2011- 24906〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成21年7月28日の出願であって、平成26年6月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成26年9月18日に拒絶査定不服審判が請求され、その後当審において、平成27年5月19日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成27年7月23日に手続補正書及び意見書が提出されたものである。


2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、平成27年7月23日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「上面部が着座面となる金属製の着座部材の内周縁部および外周縁部のそれぞれの内面部に、下端部に第1の嵌合部が形成された高分子材料製の嵌合部材が一体に設けられており、前記着座部材の縁部分が前記嵌合部材を覆うものである着座部と、着座部の下部に配置され、内周縁部および外周縁部の上面側に第2の嵌合部が形成された合成樹脂製の便座ベースとが、それぞれの内周縁部および外周縁部で着座部の第1の嵌合部と便座ベースの第2の嵌合部とを嵌合して接合され、着座部と便座ベースとから形成される空洞部に着座部を加温するための加温手段が設けられた暖房便座であって、着座部の嵌合部材は、便座ベースよりも熱伝導率を低くして着座部材からの熱の放散を抑制することを特徴とする暖房便座」


3 引用例
(1)刊行物1に記載された発明
当審拒絶理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-44480号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(1-a)「【0024】
図1から図5において、用便後の肛門およびビデを洗う温水洗浄機能付きの暖房便座は、トイレ装置の便器20の後端部に横長の本体21が取り付けられており、この本体21内には温水洗浄機能の一部が内装され、かつ便器20上に載せられた輪状の便座22および便蓋23が回動自在に設けられている。また、本体21の袖部にはトイレ室の人体の有無を検知する人体検知センサー26が内蔵されている。便座22は、図1に示すように合成樹脂製の下枠体27の上部に少なくともアルミニウムで形成された着座部25を含む上枠体24をシール材を介して固定結合して形成し、その内部には水滴等の浸入を阻止できる防滴シールされた空洞部28を有する構造となっている。なお、着座部25はアルミニウムに限ったものではなく、鉄、ステンレスや軽量金属であるマグネシウムなども利用可能であるが、着座部25を均一に加熱するという観点からは、熱伝導率の高いアルミニウムが好適である。
【0025】
空洞部28の内部には、トイレ装置を使用する使用者が腰掛ける便座22の着座部25に対向して、アルミ板を鏡面仕上げした輻射反射板29(反射体)と、着座部25の両側において複数の輻射型発熱体である2本のランプヒーター30とが設けられている。輻射反射板29は、図1に示すように、ランプヒーター30の下枠体27側に水平に設けてあり、その内外端部の全周に上方への折り曲げ部29a(屈曲部)を有しており、その折り曲げ部29aによりランプヒーター30からの輻射エネルギーが偏向されるので、ランプヒーター30から離れている着座部25の外周縁部および内周縁部の輻射密度を上げるように作用し、着座部25への輻射熱分布の均一化を図っている。この折り曲げ部29aの角度は30°?60°が好適であり、30°以下の場合は便座22の断面に対し周縁部の温度が高くなり、60°以上の場合は中央付近の温度が高くなる傾向を示す。ランプヒーター30の近傍には、ランプヒーター30と電気的に直列接続されたサーモスタット31が設けられ、万一の不安全事態に対して便座22の着座部25の温度過昇を防止するよう作用する。なお、輻射反射板29は、軽量にするためにアルミ板にしたが、ステンレス板やメッキ鋼板などを用いてもよい。なお、この折り曲げ部29aの屈曲構成は便座の形状に合わせて適宜、着座部25に集熱できるようにすればよい。」

(1-b)「【0053】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2における暖房便座の要部断面図である、本実施の形態は、実施の形態1の発明と基本的な構成は同じで、異なるのは上枠体24を熱伝導率の異なる複数の部材から構成した点である。
【0054】
図10において、着座部25は金属(アルミ材)で着座部25以外の上枠体24ははプロピレン樹脂で成形してある。これにより、ランプヒーター30で加熱する箇所を必要最小限にして、加熱すべき部分の全体の熱容量を小さくすることにより、より少ない電力でさらに速くに着座部25を昇温することができるようになり、さらに省電力にできる。つまり、着座部25のアルミ材は熱伝導率が高く、熱伝導により温度は均一になるように作用するが、着座部25以外の上枠体24は樹脂で熱伝導率が低いため着座部25の熱は上枠体24やヒンジカバー53にはほとんど奪われない。このように便座22の上側の部材を熱伝導率の異なる複数の部材で構成することで、暖める必要がない部分に余分に熱を奪われることを抑制でき、熱のロスを少なくすることができる。さらに、図10の実施例では輻射反射板29は、その内外端部の全周に上方への折り曲げ部29bを有しているが、この折り曲げ部29bは、アルミ製の着座部25と樹脂製の上枠体24の境界付近まで伸びている。この構成により、ランプヒーター30から発せられる輻射エネルギーが樹脂製の上枠体24に到達するのを防止し、反射光を効率よく着座部25に到達させられるので、加熱のロスが無く、速やかに着座部25の温度を上昇させることができる。」

(1-c)上記(1-b)の「便座22は、図1に示すように合成樹脂製の下枠体27の上部に少なくともアルミニウムで形成された着座部25を含む上枠体24をシール材を介して固定結合して形成し」との記載事項を踏まえて図10をみると、着座部25以外の上枠体24の下端部と下枠体27の上面側にそれぞれ、固定結合するための結合部を有することがみてとれる。

(1-d)上記(1-a)の「便座22は、図1に示すように合成樹脂製の下枠体27の上部に少なくともアルミニウムで形成された着座部25を含む上枠体24をシール材を介して固定結合して形成し、その内部には水滴等の浸入を阻止できる防滴シールされた空洞部28を有する構造となっている。」との記載事項、及び、上記(1-b)の「本実施の形態は、実施の形態1の発明と基本的な構成は同じで、異なるのは上枠体24を熱伝導率の異なる複数の部材から構成した点である。」との記載事項を踏まえて図10をみると、着座部25以外の上枠体24は、着座部25と一体に設けられており、その内周縁部と外周縁部で下枠体27の上部に固定結合されることがみてとれる。

上記の事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物1発明」という。)。
「金属の着座部25、及び、プロピレン樹脂で成形してあり、着座部25と一体に設けられ、その内周縁部と外周縁部で、合成樹脂製の下枠体27と固定結合される、着座部25以外の上枠体24とからなる上枠体24と、合成樹脂製の下枠体27との内部に空洞部28を有し、空洞部28の内部には、着座部25の温度を上昇させるためのランプヒーター30が設けられた暖房便座において、着座部25以外の上枠体24の下端部と下枠体27の上面側にそれぞれ、固定結合するための結合部を有し、着座部25以外の上枠体24の熱伝導率を低くすることで着座部25の熱がほとんど奪われない、暖房便座。」

(2)刊行物2に記載された事項
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-105325号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(2-a)「【0021】
<a>着座部1としての金属製成形品、たとえば具体的にはアルミニウムの板金成形品の裏面内側の内周面に対し、たとえば長さ11mmのガラス繊維40wt%含有のPP樹脂をインサート樹脂成形し、溶着によってインサート樹脂層4、そして段部としての凹部を形成する。」

(2-b)「【0024】
<b>次いで、上記凹部5には、たとえば便座ベース2としてのPP樹脂板材の端部突起6が挿入される。」

(2-c)「【0027】
<c>凹部5には、二次成形によってPP樹脂である二次成形樹脂7が射出、注入され、溶着によって固化される。これによって接合が完了することになる。」

(2-d)「【0031】
以上のようなプロセスにより、たとえば便座を構成する場合にはその内周および外周の全域において、あるいは一部において上記の接合構造を形成することができる。全域において上記接合構造を形成することが、強固で耐久性、耐熱変形に優れた便座となり、水の侵入を抑え、空洞部3に熱源を配置した暖房便座においても熱伝達の良好な耐久性に優れた便座が実現されることになる。」

(2-e)上記(2-a)、(2-d)の記載事項を踏まえて図1をみると、着座部1としての金属製成形品の外周縁部及び内周縁部のそれぞれの内面部に、インサート樹脂層4を、金属製成形品の縁部分で覆うように設けることがみてとれる。

(3)刊行物3に記載された事項
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-160835号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(3-a)「【0016】
以下、本発明を実施した形態について、図面に基づき説明する。
暖房便座の断面図を示す図2に明らかなように、暖房便座装置は、下面を開口させた便座本体1と、便座底板2と、便座本体1の内面に取付けられるヒーター3と、便座本体1と便座底板2とを接続する接続具でもある熱伝達部材5とで構成されている。
図1は便座の断面拡大図とこれを便座内側から見た図を併記した図であり、これに示すように、熱伝達部材5は略H型の断面形状で便座本体1の開口部付近の便座側面4に沿って配置されている。熱伝達部材5は略H型の形状により便座本体1と便座底板2の各々に面する部分が凹部5aとなっている。これに対して便座本体1と便座底板2は熱伝達部材5の凹部に嵌合する凸部1a、2aを備えている。便座本体1の開口部付近は、便座側面4の内側に隙間を持たせて凸部1aが形成されている。
なお、本実施の形態では、熱伝達部材5の凹部5aが便座本体1の開口部付近の便座側面4に沿って連続しているのに対して、便座本体1と便座底板2の凸部1a、2aは部分的に断続させて不連続となっている。これは便座の温度分布を調節するためであり、便座の形状によっては温度分布の調整状態が異なるため、熱伝達部材5の凹部5aの深さを部分的に変化させたり、便座本体1と便座底板2の凸部1a、2aを便座の開口部の便座側面4に沿って連続させても良い。」


4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

(1)刊行物1発明の「金属の着座部25」は、本願発明の「金属製の着座部材」に相当し、
以下同様に、
「プロピレン樹脂で成形(してあり)」は、「高分子材料製」に、
「上枠体24」は、「着座部」に、
「合成樹脂製の下枠体27」は、「着座部の下部に配置され」た「合成樹脂製の便座ベース」に、
「上枠体24」と「下枠体27との内部に」有する「空洞部28」は、「着座部と便座ベースとから形成される空洞部」に、
「着座部25の温度を上昇させるためのランプヒーター30」は、「着座部を加温するための加温手段」に、
「着座部25の熱がほとんど奪われない」は、「着座部材からの熱の放散を抑制する」に、
「暖房便座」は、「暖房便座」に相当する。

(2)刊行物1発明の「着座部25」がその上面部に着座面を有することは明らかであるので、刊行物1発明の「着座部25」は、本願発明の「上面部が着座面となる」「着座部材」に相当する。

(3)刊行物1発明の「着座部25以外の上枠体24」と、本願発明の「嵌合部材」とは、「結合部材」で共通する。

(4)刊行物1発明における「着座部25以外の上枠体24の下端部」の「結合部」が「その内周縁部と外周縁部で」、「下枠体27の上面側」の「結合部」に「固定結合される」ことと、本願発明の「それぞれの内周縁部および外周縁部で着座部の第1の嵌合部と便座ベースの第2の嵌合部とを嵌合して接合され」ることとは、「それぞれの内周縁部および外周縁部で着座部の第1の結合部と便座ベースの第2の結合部とを接合す」ることで共通する。

(5)刊行物1発明における「着座部25以外の上枠体24の熱伝導率を低くすることで着座部25の熱がほとんど奪われない」ことと、本願発明の「着座部の嵌合部材は、便座ベースよりも熱伝導率を低くして着座部材からの熱の放散を抑制する」こととは、「着座部の結合部材は、熱伝導率を低くして着座部材からの熱の放散を抑制する」ことで共通する。

(6)したがって、本願発明と刊行物1発明とは、
「上面部が着座面となる金属製の着座部材に、下端部に第1の結合部が形成された高分子材料製の結合部材が一体に設けられている着座部と、着座部の下部に配置され、内周縁部および外周縁部の上面側に第2の結合部が形成された合成樹脂製の便座ベースとが、それぞれの内周縁部および外周縁部で着座部の第1の結合部と便座ベースの第2の結合部とを接合され、着座部と便座ベースとから形成される空洞部に着座部を加温するための加温手段が設けられた暖房便座であって、着座部の結合部材は、熱伝導率を低くして着座部材からの熱の放散を抑制する、暖房便座。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:
嵌合部材の構成に関して、
本願発明は、「着座部材の内周縁部および外周縁部のそれぞれの内面部に、下端部に第1の嵌合部が形成された」「嵌合部材が一体に設けられており」、「着座部材の縁部分が前記嵌合部材を覆うもので」あって、「内周縁部および外周縁部の上面側に第2の嵌合部が形成された合成樹脂製の便座ベース」と「それぞれの内周縁部および外周縁部で着座部の第1の嵌合部と便座ベースの第2の嵌合部とを嵌合して接合され」るのに対し、刊行物1発明はそのような特定がない点。

相違点2:
嵌合部材の熱伝導率に関して、
本願発明は、「便座ベースよりも熱伝導率を低く」するのに対し、刊行物1発明は「着座部25以外の上枠体24の熱伝導率を低くする」点。


5 判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
ア 刊行物2及び3に記載されているように(上記3(2)、(3)を参照。)、暖房便座において、着座部材の外周縁部及び内周縁部のそれぞれの内面部に、結合部材を、着座部材の縁部分で覆うように設けることは、周知の技術である(以下「周知技術1」という。)し、部材どうしを結合するために嵌合部を設けた嵌合部材を一組設けることは、慣用技術である(例えば、刊行物3の【0016】等参照。)。

イ そして、刊行物1発明と上記アの周知技術、慣用技術はいずれも暖房便座に関する技術分野で共通しているので、刊行物1発明に上記アの周知技術1及び慣用技術を採用して、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
ア まず、本願発明は、「着座部の嵌合部材は、便座ベースよりも熱伝導率を低くして着座部材からの熱の放散を抑制する」ものであるが、着座部材からの熱の放散を抑制するには、嵌合部材の熱伝導率を低くすることが必要なのであって、嵌合部材と便座ベースの熱伝導率の高低が直接、着座部材からの熱の放散に影響を与えるものではないと認められる。

イ そして、一般的に、熱伝導率が低い樹脂として、発泡樹脂、発泡エラストマー、エラストマーを用いることは周知の技術(以下「周知技術2」という。)である(例えば、特開2008-245667号公報の【0075】、特開2008-20789号公報の【0004】等参照のこと。)。

ウ そうすると、刊行物1発明において、着座部25以外の上枠体24に用いる熱伝導率が低い樹脂として、上記周知技術2を採用して、発泡樹脂、発泡エラストマー、エラストマーを用い、結果として、合成樹脂製の下枠体27よりも低い熱伝導率とすること、すなわち、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)本願発明が奏する効果について
上記相違点1及び2によって本願発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明、周知技術1、2及び慣用技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

(4)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が刊行物1発明及び周知技術1、2に基づいて容易に発明をすることができたものである。


6 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が刊行物1発明及び周知技術1、2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-14 
結審通知日 2015-09-15 
審決日 2015-09-28 
出願番号 特願2009-175766(P2009-175766)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 七字 ひろみ  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 住田 秀弘
門 良成
発明の名称 暖房便座  
代理人 西澤 利夫  
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