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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1307721 |
審判番号 | 不服2015-1637 |
総通号数 | 193 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-01-28 |
確定日 | 2015-11-12 |
事件の表示 | 特願2010-152880「集合住宅用インターホンシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月19日出願公開、特開2012- 15945〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成22年7月5日の出願であって,平成26年1月29日付けで拒絶理由が通知され,同年4月7日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,同年10月20日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成27年1月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年1月28日に提出された手続補正書による手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 平成27年1月28日に提出された手続補正書による手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成26年4月7日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された, 「ライフラインメータに接続された住戸インターホン親機と,ロビーインターホンと,それらの通信を制御する制御装置とを有し,前記制御装置は,広域ネットワークに接続するゲートウェイ装置を備えた集合住宅用インターホンシステムにおいて, 前記制御装置は,前記広域ネットワーク側から,緊急地震速報に基づいた地震検知信号を受信すると,地震警報指令を前記住戸インターホン親機に送信し, 前記住戸インターホン親機は,前記地震警報指令を受信すると,所定の地震警報を出力するとともに,前記ライフラインメータに遮断指令を送信して,ライフラインを遮断させて,前記ライフラインの遮断情報を,前記広域ネットワーク側に送信し,その後前記ライフラインが再開されたときには,前記ライフラインの再開情報を,前記広域ネットワーク側に送信する集合住宅用インターホンシステム。」 という発明(以下,「本願発明」という。)を,本件補正に係る手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された, 「ライフラインメータに接続された住戸インターホン親機と,ロビーインターホンと,それらの通信を制御する制御装置とを有し,前記制御装置は,広域ネットワークに接続するゲートウェイ装置を備えた集合住宅用インターホンシステムにおいて, 前記制御装置は,前記広域ネットワーク側から,緊急地震速報に基づいた地震検知信号を受信すると,地震警報指令を前記住戸インターホン親機に送信し, 前記住戸インターホン親機は,前記地震警報指令を受信すると,所定の地震警報を出力するとともに,前記ライフラインメータに遮断指令を送信して,ライフラインを遮断させて,前記ライフラインの遮断情報を,前記広域ネットワーク側に送信し,その後前記ライフラインが再開されたときには,前記ライフラインの再開情報を,前記広域ネットワーク側に送信し, 前記遮断情報,前記再開情報は,前記住戸インターホン親機と前記ゲートウェイ装置との間では所定のインターホン回線プロトコルに従って伝送されることを特徴とする集合住宅用インターホンシステム。」(下線は,請求人が手続補正書において補正箇所を示すものとして付加したものを援用したものである。) という発明(以下,「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。 2.補正の適否 (1)新規事項の有無,補正の目的要件,シフト補正の有無 上記補正は,「前記遮断情報,前記再開情報」が,「前記住戸インターホン親機と前記ゲートウェイ装置との間では所定のインターホン回線プロトコルに従って伝送されることを特徴とする」ものであることを特定する補正である。 そうすると,上記補正は「集合住宅用インターホンシステム」の構成を限定的に減縮することを目的とする補正に該当し,そして,上記補正は願書に最初に添付した明細書(以下,「出願当初明細書」という。)の【0023】?【0029】段落に記載された事項であるから,上記補正は出願当初明細書に記載した事項の範囲内においてなされたことは明らかである。したがって,上記補正は特許法第17条の2第3項(新規事項),及び同法第17条の2第5項第2号(補正の目的)の規定に適合している。また,特許法第17条の2第4項(シフト補正)の規定に違反しないことも明らかである。 (2)独立特許要件 上記補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,補正後の発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものかどうかについて,以下に検討する。 [補正後の発明] 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項において,「補正後の発明」として認定したとおりである。 [引用発明] 原査定の拒絶理由に引用された特開2010-9172号公報(以下,「引用例1」という。)には,「警報監視システム」に関して,図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0014】 地震受信装置12は,情報提供サーバ15から地震情報が送信されてくるネットワークあるいは通信回線を常時監視し,地震情報を受信すると,地震情報と予測震度とを情報盤11に通知する。地震情報は,緊急地震速報としてもよい。その場合は,緊急地震速報に基づいて震度レベルを分析して,予測震度を情報盤11に通知する構成が望ましい。また,所在地情報を予め登録しておき,その情報と緊急地震速報の内容から,予測震度を精密に算出する構成としてもよい。」(4頁24?30行) ロ.「【0024】 図3は,本発明を集合住宅用の警報監視システムに適用したブロック図である。 この警報監視システム1Aは,警報監視盤19と,各住戸において設備機器を監視制御する機能を有した情報盤11と,地震情報を受信する地震受信装置12とで構成されたシステムであるが,警報監視盤19に接続され,住棟全体のガス供給を遮断する住棟遮断バルブ21に付加された住棟遮断バルブ制御装置22と,情報盤11に接続され,住戸毎のガス供給を遮断する遮断バルブ13に付加された住戸遮断バルブ制御装置14とを更に備えている。 【0025】 情報盤11は,基本的には,上記した戸建て住戸用の11情報盤と共通した構成であるが,地震接続部11gを備えず,警報監視盤19との間で制御信号,音声信号を双方向に伝送する通信部11jを備えている。 【0026】 そして,ドアホン子器16,ロビー機20あるいは警報監視盤19で呼出操作を受け付けると,音声入出力部11dのスピーカから呼出音を鳴動させて,操作部11cで応答操作を受け付けると,音声入出力部11dのスピーカ,マイクによって,呼び出した側のドアホン子器16,ロビー機20あるいは警報監視盤19とのハンズフリー通話を許容するインターホン機能と,感知器17が異常を検出したときには,音声入出力部11dから警報音声を出力すると共に,対応した情報を表示部11hに表示し,また警報監視盤19に対しても異常信号を伝送する警報機能とを有している。 【0027】 また,情報盤11は,地震受信装置12が受信した地震情報による予測震度を判別して,第1の所定値を上回る場合には,ガス調理器具18を消火させるか,あるいは住戸遮断バルブ制御装置14によって遮断バルブ13を閉制御させるかの一方または双方を行う構成になっている。なお,ガス調理器具18を消火させたときには,音声入出力部11dから報知音声を出力すると共に,対応した情報を表示部11hに表示することが望ましい。 【0028】 警報監視盤19は,設備機器,特にこの場合は住棟遮断バルブ制御装置22を接続するための接続端子11aを有した設備機器通信部11bと,各種操作釦を有した操作部11cと,ハンドセット等を有した音声入出力部11dと,ロビー機20を制御するロビー機制御部19aと,選択した情報盤11との間で制御信号,音声信号を双方向に伝送する通信部11jと,地震受信装置12を接続する地震接続部11gと,小型液晶パネル等を有した表示部11hとを備えている。 【0029】 そして,ロビー機20あるいは警報監視盤19で住戸番号を指定した呼出操作を受け付けると,指定された住戸の情報盤11を呼び出して,その情報盤11で応答操作がなされると,ロビー機20あるいは警報監視盤19と,情報盤11との間に通話路を形成して通話を許容する通話制御機能と,情報盤11から異常信号が伝送されてくれば,住戸を特定して,近隣の住戸の情報盤11に警報指令信号を伝送して,音声入出力部11dから報知音声を出力させると共に,対応した情報を表示部11hに表示させる警報監視機能とを有している。」(5頁37行?6頁27行) ハ.「【0032】 図4は,警報監視システム1Aの基本的な動作を説明するフローチャートである。 【0033】 この手順では,警報監視システム1Aは,地震受信装置12が地震情報を受信するまで待機する。そして,地震情報を受信すると,情報盤11において,地震情報による予測震度のレベルを判別する(ステップ201,202)。 ここで,予測震度が第1の所定値を上回ると判断した場合は,ガス調理器具18を消火させると共に,遮断バルブ13を閉制御する。そして,ガス調理器具18の消火と,遮断バルブ13を閉じたことを報知する(ステップ203?205)。ガス調理器具18の消火(ステップ203)と,遮断バルブ13の閉制御(ステップ204)は,どちらが先でもよいが,同時に行うことが望ましい。これに対して,予測震度が第1の所定値を下回ると判断した場合は,特別な動作はしないようになっている。」(6頁42行?7頁3行) 上記摘記事項の記載及び図3,図4,並びにこの分野における技術常識を考慮すると, a.上記摘記事項ロ.の【0024】段落に「図3は,本発明を集合住宅用の警報監視システムに適用したブロック図である。」と記載されていることからみて,引用文献1に記載されたものは「集合住宅用の警報監視システム」である。そして,引用文献1の【0026】段落に情報盤に関して「・・・ドアホン子器16,ロビー機20あるいは警報監視盤19で呼出操作を受け付けると,音声入出力部11dのスピーカから呼出音を鳴動させて,操作部11cで応答操作を受け付けると,音声入出力部11dのスピーカ,マイクによって,呼び出した側のドアホン子器16,ロビー機20あるいは警報監視盤19とのハンズフリー通話を許容するインターホン機能と・・・を有している。」と記載されていること,及び,【0028】?【0029】段落によれば,警報監視盤19は,ロビー機20から住戸番号を指定した呼出操作を受け付けると,指定された住戸の情報盤11を呼び出して,その情報盤11で応答操作がなされると,ロビー機20あるいは警報監視盤19と,情報盤11との間に通話路を形成して通話を許容する通話制御機能を有しているから,引用例1に記載されたものは,情報盤11,ロビー機20,とそれらの通信制御をする警報監視盤19を有する「集合住宅用のインターホンシステム」であるということができる。 そして,情報盤11は,住戸遮断バルブ制御装置14を介して住戸毎のガス供給を遮断する遮断バルブ13に接続されているということができる。 また,図3によれば,警報監視盤19は地震受信装置12を介してネットワークに接続されている。 b.上記摘記事項イ.ハ.及び図4の記載によれば,引用例1に記載のものは,ネットワークを介して到来する地震情報が,地震受信装置12,及び警報監視盤19を介して情報盤11で受信されるから,警報監視盤19からみると,ネットワークから地震情報を受信して,情報盤11に地震情報を送信しているということができる。また,地震情報は上記摘記事項イ.には,戸建て住戸用の警報監視システムに適用した場合についての記載ではあるが,「地震情報は,緊急地震速報としてもよい」と記載されており,集合住宅用の警報監視システムにおいても,地震情報として「緊急地震速報に基づく地震情報」が想定されていることは明らかである。 c.上記摘記事項ロ.の【0027】段落によれば,情報盤11は,受信した地震情報による予測震度を判別して,第1の所定値を上回る場合には,住戸遮断バルブ制御装置14によって遮断バルブ13を閉制御し,ガスの供給を遮断する構成が記載されている。 したがって,摘記した引用例1の記載及び図面を総合すると,引用例1には以下のような発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (引用発明) 「住戸遮断バルブ制御装置14を介して,ガス供給を遮断する遮断バルブ13に接続された情報盤11,ロビー機20,とそれらの通信制御をする警報監視盤19を有し,前記警報監視盤19はネットワークに接続されたものである集合住宅用のインターホンシステムにおいて, 前記警報監視盤19は,前記ネットワークを介して緊急地震速報に基づく地震情報を受信して,前記情報盤11に前記地震情報を送信し, 前記情報盤11は,前記地震情報を受信すると,受信した地震情報による予測震度を判別して,第1の所定値を上回る場合には,住戸遮断バルブ制御装置14によって遮断バルブ13を閉制御し,ガスの供給を遮断する,集合住宅用のインターホンシステム。」 [技術事項] 原査定の拒絶理由に引用された特開2009-284417号公報(以下,「引用例2」という。)には,「インターホンシステム」に関して,図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0029】 図4は,本発明を適用した集合住宅用のインターホンシステムの機器間接続図である。 このインターホンシステム1は,図1の構成に対して,警報監視盤14と,住棟玄関口に設置されるロビー機15とが更に備えられている。なお,図1と共通の構成要素には同一の参照符号を付け,説明を省略する。この構成では,親機12は,通話線および制御線によって,警報監視盤14に接続され,地震受信装置24は警報監視盤14に接続されている。 【0030】 インターホンシステム1は,ロビー機15において,住戸番号を指定して呼び出し操作を行うと,警報監視盤14は指定された住戸の親機12を呼び出し,呼び出された親機12で応答操作がなされると,ロビー機15と,その親機12との間に通話路を形成して相互通話を行わせる基本的な機能を有している。・・・(略)・・・ 【0031】 親機12の基本機能は,図1のものと基本的に共通しているが,地震受信装置24が地震情報を受信すると,警報監視盤14によって,制御信号の一つである緊急信号として,制御線を通じて各住戸の親機12に伝送される。そして,親機12は,制御線を通じて送られてきた制御信号から緊急信号を識別したときには,『ヒュンヒュンヒュン,まもなく地震がきます』と警報すると共に,熱調理器具22を緊急停止させて,その緊急停止した理由,具体的には『地震のため,コンロを消しました』等のメッセージを表示部12cから出力する。」(6頁7?28行) 上記摘記事項の記載及び図4,並びにこの分野における技術常識を考慮すると, 【0029】段落に「集合住宅用のインターホンシステム」であることが記載されている。 また,【0031】段落に「地震受信装置24が地震情報を受信すると,警報監視盤14によって,制御信号の一つである緊急信号として,制御線を通じて各住戸の親機12に伝送される。そして,親機12は,制御線を通じて送られてきた制御信号から緊急信号を識別したときには,『ヒュンヒュンヒュン,まもなく地震がきます』と警報する」と記載されており,緊急信号は地震情報に基づく信号といえ,また,「ヒュンヒュンヒュン,まもなく地震がきます」と警報することは,地震が到来することを知らせているのであるから,地震警報を出力することということができる。 したがって,摘記した引用例2の記載及び図面を総合すると,引用例2には以下のような事項(以下,「技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 (技術事項) 「集合住宅用のインターホンシステムにおいて,親機は地震情報に基づく緊急信号を受信すると,地震警報を出力すること。」 [周知技術1] 原査定の拒絶理由に引用された特開2006-25081号公報(以下,「引用例3」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0032】 また,ガスメーターはガスの流量を計測すると共に,各種保安機能も有している。すなわち,ガスメーターはガスの流れを遮断する遮断機能を有しており,ガス漏れや地震等が発生した場合には自動的にガスの流れを遮断すると共に,その旨を通報する。通報先は,通信装置2である。通信装置2はガスメーターが出力した遮断等のアラーム通報を,ガスサービス業者へ通報する。ガスサービス業者は当該家庭へ電話連絡で異常の旨を連絡したり,場合によっては当該家庭へ赴いて対応する。この時,通信装置2はその旨を画面や音声等のユーザーインターフェイスを用いてユーザーに通知することも可能である。」(6頁41?48行) ロ.「【0041】 ・・・・・ガスメーターや水道メーターから検針値を報知する場合や異常時にガスメーターや水道メーターの弁を遮断しその旨を通報する場合も,『流量計測装置群』はその旨を特定小電力無線を用いて通信装置2へ伝送する。『健康機器群』の場合も同様である。 【0042】 また,通信装置2から,『セキュリティセンサ群』に対して警戒動作へ移行する旨の信号を送信する場合や,ガスメーターや水道メーターの『流量計測装置群』に対して弁を遠隔で遮断/復帰する場合,『家電機器群』に動作のON/OFFの指令を送信する場合にも特定小電力無線を用いる。」(8頁1?13行) また,原査定の拒絶理由に引用された特開2005-184190号公報(以下,「引用例4」という。)には,図2とともに以下の事項が記載されている。 ハ.「【0028】 また,ライフライン機器の一例であるガスメータ6の主制御手段は20も同様に,マイコンやその周辺回路で構成し,ガスメータ6全体の制御を行う。検針手段22は超音波式のガス流量センサやその周辺回路で構成し,使用ガス量を測定して主制御手段20に信号を送る。ライフライン機器通信手段21は,中央処理装置21との通信手段である。主制御手段20は,検針手段22の測定結果をライフライン回線通信手段23よりガス会社サーバ装置9に送信したり,ガス会社サーバ装置9から受信したガス弁遮断の制御電文を受信してガス弁を制御するなどの処理を行っている。」(6頁30?37行) 上記摘記事項ハ.において,ガス弁遮断を制御する主制御手段20は,図2も参照すればガスメータ6に含まれ,ガスメータ6全体の制御を行っているから,ガスメータ6がガス弁遮断を行っていることは明らかである。 そうしてみると,上記摘記事項イ.?ハ.によれば,以下の技術事項は周知の技術事項(以下,「周知技術1」という。)であると認められる。 (周知技術1) 「外部からの制御によりガスの流れを遮断する遮断機能を有するガスメータ。」 [周知技術2] 原査定の拒絶理由に引用された特開平11-261714号公報(以下,「引用例5」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0041】図1の構成で可能な次のサービスとして、図3(b)にガス弁遮断に関するフローチャートを示す。これは、ガスメータの制御(遮断・復帰)をネットワーク上に流れる様々な情報をもとに行おうとするものである。 【0042】Step b1:住宅情報盤8の情報制御部13が、ユーザによるガスメータ操作ボタン17の操作(例えば図2の”ガス弁遮断ボタン”の操作)や、設備機器からの異常状態を示すコードやT-NCU2経由で通信される遮断指示などのいずれかひとつを検出したとき、宅内のガス関係のシステムが何らかの異常状態にあると判断する。 【0043】Step b2:情報制御部13が異常状態と判断したら、直ちに、ガスメータ制御部12に遮断信号を出力する。ガスメータ制御部12は通信部10を制御し、ガスメータ4に遮断信号を無線により出力する。 【0044】Step b3:情報制御部13は、情報記憶部14に遮断状況を記録する。具体的には、遮断日時、遮断原因となった信号の種類、復帰時刻などである。これらの情報は情報記憶部の2番目の領域に記憶される。 【0045】Step b4:情報制御部13は、検出した異常状態に応じた情報を情報記憶部14(3番目の領域)から検索し、異常内容やその対応方法を検索する。そして、それらの情報を文字情報表示部16に表示する。 【0046】Step b5:情報制御部13は、通信部10を制御し、情報記憶部14に蓄えられているガスメータに関する遮断などの情報を管理センター1に通報する。通報のタイミングは、遮断が起こる度でも良いし、月1度のガス使用量の自動検針と同時に行ってもよい。後者の場合は、遮断状況を複数まとめたログ情報として管理センター1に通報することになる。また、タイマー部15により、所定時間間隔で遮断情報を管理センター1に通報しても良い。 【0047】以上のような動作を、図1の構成で住宅情報盤8に行わせることにより、設備機器から通信された信号や、管理センターからの信号、あるいはユーザの押しボタン操作などによりガス弁を遠隔遮断することができる。さらに、遮断の原因となった状況や対処方法を文字表示によりユーザに提示でき、また、ガス弁の遮断に関する情報を管理センター1に通報することができる。これにより、ユーザーおよび管理センター側の両者が、ガス関連機器の状況などを確認することができ、システム全体の安全性を高めることができる。 【0048】ガス弁の遮断の後には、その復帰が必要である。従来は、ガス弁を復帰させるために、ユーザが宅外に設置されたガスメータを操作する必要であった。 【0049】図3(c)にガス弁の復帰に関するフローチャートを示す。これは上記したガス弁遮断の動作と同様である。このような動作を図1の構成で住宅情報盤8に行わせることにより、ガス弁の復帰を、設備機器からの異常状態解除の通信や、管理センターからの信号、あるいはユーザの押しボタン操作などによりガス弁を自動で復帰することができる。」(8頁14欄?9頁15欄)(下線は当審において付加した。以下同様。) ロ.「【0096】また、本発明の請求項5にかかる設備情報ネットワークシステムは、請求項4と同様に、ガスメータ操作ボタンの操作や、設備機器制御部や通信部で得られた設備機器の状況や管理センターからの情報から異常状態から正常状態への復帰を判断し、ガスメータ制御部により自動的にガス弁の復帰を行うことができる。さらに文字情報表示部への現在の状態や今後の対応を表すメッセージの表示、および異常状態からの復帰および復帰動作開始を通信部によりT-NCU経由で管理センターに通報できる。この構成により、ユーザはガスメータを直接操作することなく住宅情報盤でのボタン操作あるいは、全く操作なしで管理センターからの信号や設備機器からの信号により、ガスメータを自動的に復帰可能である。」(12頁22欄) 上記摘記事項イ.ロ.及び図3(特に,図3(b)の「Step b5」,図3(c)の「Step c5」に「管理センターへ通報」するステップがあることに注意されたい。)には,ガス弁の遮断と,遮断した後の復帰,及び遮断したこと及び復帰したことを管理センターに通報することが記載されている。 また,[周知技術1]の項で摘記した引用例3(特開2006-25081号公報)の摘記事項イ.ロ.には,ガスメータの弁を遮断/復帰することや,ガスメータの弁を遮断した後時に,その旨をガスサービス業者に通報することが記載されている。 そうしてみると,引用例5の上記摘記事項イ.ロ.及び引用例3の上記摘記事項イ.ロ.によれば,以下の技術事項は周知の技術事項(以下,「周知技術2」という。)であると認められる。 (周知技術2) 「宅内の設備を遠隔制御できるものにおいて,ガス弁の遮断や,その後の復帰を行うこと。そして,当該遮断や復帰についてガスサービス業者に通報すること。」 [対比] 補正後の発明を引用発明と対比すると, a.補正後の発明の「ライフラインメータ」はライフラインを遮断する機能を有するから,引用発明の「ガス供給を遮断する遮断バルブ13」とは,後述する点で相違はするものの,「ライフラインの遮断器」であるという点では共通する。 b.引用発明の「ロビー機20」は,補正後の発明の「ロビーインターホン」に相当する。 c.引用発明の「情報盤11」,「警報監視盤19」は,後述する点で相違はするものの,補正後の発明の「住戸インターホン親機」,「制御装置」にそれぞれ対応する。 d.引用発明では集合住宅用のインターホンシステムは「ネットワーク」に接続されているのに対して,補正後の発明では「広域ネットワーク」に接続されている点で相違するものの,両者は「ネットワーク」に接続されているといえる点では共通する。 e.引用発明の「集合住宅用のインターホンシステム」は,後述する点で相違はするものの,補正後の発明の「集合住宅用インターホンシステム」に対応する。 f.引用発明の「警報監視盤19」(補正後の発明の「制御装置」に対応)は「地震情報」を受信すると,当該「地震情報」をそのまま「情報盤11」(補正後の発明の「住戸インターホン親機」に対応)に送信しているが,補正後の発明では,「制御装置」は「緊急地震速報に基づいた地震検知信号」を受信し,当該地震検知信号とは異なる「地震警報指令」を「住戸インターホン親機」に送信している点で引用発明と補正後の発明とは異なっている。しかしながら,引用発明の「地震情報」も,補正後の発明の「緊急地震速報に基づいた地震検知信号」及び「地震警報指令」も,地震に関する情報であるという点では共通しているから,引用発明の「警報監視盤19」と補正後の発明の「情報盤11」とは,「第1の地震に関する情報」を受信し,「第2の地震に関する情報」を送信するという点では共通しているといえる。(引用発明では「第1の地震に関する情報」と「第2の地震に関する情報」が同じ情報となる。) g.引用発明では「前記情報盤11は,地震情報を受信すると,受信した地震情報による予測震度を判別して,第1の所定値を上回る場合」に「ガスの供給を遮断する」としているのに対して,補正後の発明では「前記地震警報指令を受信すると,・・・,前記ライフラインメータに遮断指令を送信して,ライフラインを遮断させ」るとしているが,地震情報の受信に応じてガスの供給を遮断しているという点では引用発明と補正後の発明とは共通する。 h.補正後の発明では「ライフラインメータに遮断指令を送信して,ライフラインを遮断させて」いるのに対して,引用発明では当該「遮断指令」に対応する構成は明記されていない。しかしながら,引用発明でも前記情報盤11は遮断バルブ13を閉制御しているから,情報盤11は遮断バルブ13を閉制御するために何らかの信号を送信していることは明らかであり,当該信号を「遮断指令」と呼ぶことも任意である。また,補正後の発明の「ライフライン」は引用発明の「ガスの供給」に相当する。そうすると,引用発明と補正後の発明とは,「ライフラインの遮断器に遮断指令を送信して,ライフラインを遮断させ」る点で格別相違するものではない。 したがって,両者は以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「ライフラインの遮断器に接続された住戸インターホン親機と,ロビーインターホンと,それらの通信を制御する制御装置とを有し,前記制御装置は,ネットワークに接続される集合住宅用インターホンシステムにおいて, 前記制御装置は,前記ネットワーク側から,第1の地震に関する情報を受信すると,第2の地震に関する情報を前記住戸インターホン親機に送信し, 前記住戸インターホン親機は,前記第2の地震に関する情報を受信すると,前記ライフラインの遮断器に遮断指令を送信して,ライフラインを遮断させる,集合住宅用インターホンシステム。」 (相違点1) 「ライフラインの遮断器」に関して,補正後の発明では「ライフラインメータ」であるのに対して,引用発明では「ガス供給を遮断する遮断バルブ13」である点。 (相違点2) 「ネットワーク」に関して,補正後の発明では「広域ネットワーク」であるのに対して,引用発明では単にネットワークと記載されているのみであり,どのようなネットワークであるのか不明な点。 (相違点3) 補正後の発明では「制御装置」が「広域ネットワークに接続するゲートウェイ装置」を備えているのに対して,引用発明では同様の構成を有するか不明な点。 (相違点4) 「第1の地震に関する情報」に関して,引用発明では「緊急地震速報に基づく地震情報」であるのに対して補正後の発明では「緊急地震速報に基づいた地震検知信号」であり,「第2の地震に関する情報」に関して,引用発明では「地震情報」であるのに対して補正後の発明では「地震警報指令」である点。 (相違点5) 補正後の発明では「住戸インターホン親機」は「地震警報指令を受信すると,所定の地震警報を出力する」のに対して,引用発明はこれに対応する構成を有しない点。 (相違点6) 補正後の発明では「前記ライフラインの遮断情報を,前記広域ネットワーク側に送信し,その後前記ライフラインが再開されたときには,前記ライフラインの再開情報を,前記広域ネットワーク側に送信する」のに対して,引用発明はこれに対応する構成を有しない点。 (相違点7) 補正後の発明では「前記遮断情報,前記再開情報は,前記住戸インターホン親機と前記ゲートウェイ装置との間では所定のインターホン回線プロトコルに従って伝送され」ているのに対して,引用発明ではどのようなプロトコルで伝送されるか明らかにされていない点。 [判断] (相違点1について) 上記[周知技術1]の項で周知技術1として認定したように,以下の事項は周知である。 「外部からの制御によりガスの流れを遮断する遮断機能を有するガスメータ。」 そうしてみると,引用発明においても「ガス供給を遮断する遮断バルブ13」として「ガスの流れを遮断する遮断機能を有するガスメータ」を用いるように構成することは当業者が容易に想到できた事項にすぎない。そして,また「ガスメータ」が「ライフラインメータ」に含まれることは明らかであるから,上記「ガスの流れを遮断する遮断機能を有するガスメータ」を補正後の発明のように「ライフラインメータ」と称することは任意である。 したがって,相違点1とした補正後の発明の構成は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に構成できたものである。 (相違点2について) 引用発明において,図3の記載も参照すれば情報提供サーバ15からネットワークを介して地震情報が送られてくるが,このときにどのようなネットワークを用いるかは,情報提供サーバがどのようなネットワークに接続されているのかや,地震情報を伝送するために必要とされるネットワークの規模やスペック(遅延時間やデータ量など)などを考慮して設計に際して適宜選択できる事項にすぎず,また,ネットワークの一つとして「広域ネットワーク」は広く知られているものである。してみると,引用発明において「ネットワーク」として「広域ネットワーク」を利用することは当業者が容易に想到できた事項にすぎない。 (相違点3について) 異なるネットワークとの接続にゲートウェイを用いることは常套手段にすぎない(例えば,特開2002-369382号公報の請求項1参照。)から,引用発明においても「集合住宅用のインターホンシステム」を「ネットワーク」に接続する際に,補正後の発明のように「広域ネットワークに接続するゲートウェイ装置を備え」る構成とすることは,当業者が容易に構成できたものである。その際,「集合住宅用のインターホンシステム」は「警報監視盤」を介して「ネットワーク」に接続されることから,当該「ゲートウェイ装置」を「警報監視盤」に備えるようにすることは適宜なし得た事項にすぎない。 (相違点4について) 補正後の発明において「制御装置」は,「緊急地震速報に基づいた地震検知信号」を受信して,「住戸インターホン親機」に「地震警報指令」を送信しており,受信する信号と送信する信号が異なっているが,これは本願明細書【0033】及び【0034】の記載をみれば,「制御装置」に対応する「警報監視盤13」は「地震検知信号」を受信し,予測震度が閾値以上であるか否かを判断し,閾値以上であるときに,「住戸インターホン親機11」へ地震の到来を知らせるために送信されるのが「地震警報指令」であるから,受信する「地震検知信号」と,送信する「地震警報指令」とが異なるためである。 これに対して,引用発明では,「警報監視盤19」(補正後の発明の「制御装置」に相当。)は受信した地震情報をそのまま「情報盤11」に送信し,当該「情報盤11」において,予測震度が第1の所定値を上回るか否かを判別しているため,「警報監視盤19」が送信する信号と受信する信号とが同じ信号となっている。しかしながら,引用発明において,予測震度が第1の所定値を上回るか否かの判別を集合住宅用のインターホンシステム内のどこで行うかは,「警報監視盤19」と「情報盤11」の処理能力や,システムの全体構成を考慮して,設計の際に適宜決定できる事項にすぎないから,引用発明において補正後の発明のように「警報監視盤19」において行う構成に変更することは,当業者が設計に際して適宜なし得る事項にすぎない。そしてこのように構成すれば,「警報監視盤19」が受信する信号は「緊急地震速報に基づく地震情報」であるのに対して,送信する信号は「予測震度が閾値以上であるときに地震の到来を知らせる信号」となり,これらをそれぞれ「緊急地震速報に基づいた地震検知信号」及び「地震警報指令」と称することは適宜なし得る事項である。 したがって,相違点4とした補正後の発明の構成は,引用発明から当業者が容易に想到し得たものである。 (相違点5について) 上記「技術事項」の欄で示したように,「集合住宅用のインターホンシステムにおいて,親機は地震情報に基づく緊急信号を受信すると,地震警報を出力すること。」が知られている。また,地震の到来を検知した場合には安全のためにこれを報知することが自然であると考えられることから,引用発明においても上記「技術事項」を適用し,「情報盤11」が地震情報を受信した場合に,補正後の発明のように地震警報を出力する構成とすることは,格別の創意工夫を要することなく当業者が容易になし得た事項である。 (相違点6について) 上記[周知技術2]の欄で示したように「宅内の設備を遠隔制御できるものにおいて,ガス弁の遮断や,その後の復帰を行うこと。そして,当該遮断や復帰についてガスサービス業者に通報すること。」は周知技術である。 そうすると,地震情報によって外部からガス供給を遮断する遮断バルブを制御し,ガスの供給を遮断する引用発明においても,上記周知技術2を適用することにより,ガスの供給が遮断されたことを,ガスサービス業者に通知したり,ガスの供給が遮断された後に復帰させたり,また,復帰した旨をガスサービス業者に通知したりすることは当業者が容易になし得る程度の事項である。そして,ガスサービス業者への通知は引用発明においてはネット側に送信することになるから,相違点6とした「前記ライフラインの遮断情報を,前記広域ネットワーク側に送信し,その後前記ライフラインが再開されたときには,前記ライフラインの再開情報を,前記広域ネットワーク側に送信する」構成は,引用発明に周知技術2を適用することにより当業者が容易に想到できたものである。 (相違点7について) 一般に,インターホンシステムの内部において,例えば親機と子機間の通信を行う際には,何らかの通信プロトコルに従って伝送が行われていることは技術常識である(例えば,特開2004-320260号公報には,7頁18行?8頁1行に記載されているようにインターホンとして動作するシステムにおいて,10頁3?18行には種々の通信プロトコルが使われることが記載されている。)。そうしてみると,引用発明においても所定のインターホン回線プロトコルに従った伝送を行うことは適宜なされる事項であり,また,「ゲートウェイ装置」は異なるネットワーク間を,プロトコルを変換することによって接続する装置であるから,補正後の発明のように,住戸インターホン親機とゲートウェイ装置との間で所定のインターホン回線プロトコルを使うことは当業者が容易になし得た事項である。 したがって,相違点7とした補正後の発明の構成は,引用発明及び技術常識から当業者が容易に想到できたものである。 そして,補正後の発明が奏する効果も,引用発明,引用例2に記載された技術事項,周知技術,並びに技術常識から,容易に予測できる範囲内のものである。 よって,補正後の発明は,引用発明,引用例2に記載された技術事項,周知技術,並びに技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定によって,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものである。 3.結語 以上のとおり,本件補正は,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合していない。 したがって,本件補正は,特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成27年1月28日に提出された手続補正書による手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は上記「第2 補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりのものである。 2.引用発明及び技術事項 引用発明,引用例2に記載された技術事項及び周知技術は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で引用発明,引用例2に記載された技術事項,周知技術,並びに技術常識として認定したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。 そうすると,本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり,引用発明,引用例2に記載された技術事項,周知技術,並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例2に記載された技術事項,周知技術,並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-09-10 |
結審通知日 | 2015-09-15 |
審決日 | 2015-09-28 |
出願番号 | 特願2010-152880(P2010-152880) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩田 淳、角張 亜希子 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 山本 章裕 |
発明の名称 | 集合住宅用インターホンシステム |
代理人 | 沖本 周子 |
代理人 | 中井 宏行 |
代理人 | 奥村 公敏 |