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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D
管理番号 1307783
審判番号 不服2014-22148  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-31 
確定日 2015-11-24 
事件の表示 特願2012-288754「ゲージ上の透過性ディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月22日出願公開、特開2013-142694〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る特許出願(以下、「本願」という。)は、平成24年12月28日(パリ条約による優先権主張2012年(平成24年) 1月 6日、米国)の出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
平成25年12月18日付け:拒絶理由の通知
平成26年 3月24日 :意見書、手続補正書の提出
平成26年 6月25日付け:拒絶査定(同年同月30日送達)
平成26年10月31日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年10月31日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。)
「 第1の基板の上に重なっているアナログ指示器と、
前記アナログ指示器と整合された目盛りと、
前記アナログ指示器の上に重なっている透過性ディスプレイと、
を備え、
前記透過性ディスプレイは、前記アナログ指示器の一部の上に重なっている透明部分と、情報を表示するための非透明部分とを有し、
前記アナログ指示器及び目盛りは、乗員に見えるようになっており、
前記目盛りは、前記アナログ指示器上に重なっている前記透過性ディスプレイに前記透過性ディスプレイによって表示される、
ことを特徴とする車両の計器盤。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成26年 3月24日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 第1の基板の上に重なっているアナログ指示器と、
前記アナログ指示器と整合された目盛りと、
前記アナログ指示器の上に重なっている透過性ディスプレイと、
を備え、
前記透過性ディスプレイは、前記アナログ指示器の一部の上に重なっている透明部分と、情報を表示するための非透明部分とを有し、
前記アナログ指示器及び目盛りは、乗員に見えるようになっており、
前記目盛りは、前記アナログ指示器上に重なっている前記透過性ディスプレイ上に表示される、
ことを特徴とする車両の計器盤。」

(3)本件補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「目盛り」について、上記下線部のとおり限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 本件補正発明の独立特許要件についての検討
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願のパリ条約による優先権主張の基礎となる出願の出願日(以下、「優先日」という。)前に頒布された刊行物である、特開2005-181054号公報(平成17年 7月 7日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審が付した。)
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車を代表とする各種車両に搭載される計器装置に関する。」
b 「【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)以下、図面に基づいて本発明による計器装置の第1実施形態について説明する。図1?図4は、本発明の第1実施形態を示すもので、図1は本発明の第1実施形態による計器装置の正面図、図2は図1のA-A断面図、図3は図2中、一部を拡大して示す要部断面図、図4は同実施形態による指針の側面図である。
【0013】
図1,図2において、本実施形態による計器装置は、回路基板1と、この回路基板1に導通装着され回転軸2が前方に延びる駆動装置3と、回転軸2にて回転駆動される指針4と、この指針4の背後に位置して回路基板1上に配置される指標板5と、この指標板5を覆うように指針4の前方側に配置される表示素子6と、指針4を照明する指針用光源7と、指標板5を照明する照明手段8と、回路基板1と指標板5との間に配置され指針用光源7を収納するケース体9と、指針4の後述する露出部や指標板5の後述する指標部を露出させるための見返し板10と、表示素子6の前方側に配置される透視パネル11とから構成される。」
c 「【0019】
指標板5は、指針4の回転軌道に沿った円弧状の配列形状を有し指示部41(先端部41c)の指示対象となる目盛51a,数字51b並びにレッドゾーン領域に対応する着色部51cからなる指標部51と、この指標部51の背景を形成する地色部52とを有している。なお、指標部51の内側であって指針4の遮光性カバー42の回転領域に対応した地色部52の略中央部領域上方には表示素子6の前記反射板が位置しているため、地色部52の前記略中央部領域は遮光性カバー42と同様に前記反射板の作用により観察者側からは視認されにくくなっており、これにより地色部52は指標部51に対応した円環状を有するように視認される。なお、本実施形態における指標板5は自動車のエンジン回転計を示しており、着色部51cはエンジン回転数が8000?9000r/min領域における各目盛51a内に設けられている。」
d 「【0021】
表示素子6は、図示しないセンサ類からの検出信号(電気信号)に基づいて所定情報を表示する表示部Dを有しており、この場合、表示部Dは車両の速度を表示する速度表示部からなる第1の表示部D1と、車両の走行距離を表示する走行距離表示部である第2の表示部D2とを備えている。各表示部D1,D2は上下2段に並設され、上側には第1の表示部D1、下側には第2の表示部D2がそれぞれ所定桁数の「日」の字型セグメントからなるデジタル表示像として表示される。なお、表示部Dはドット型の表示部であってもよい。
【0022】
また表示素子6は、例えば図3に示すように一対の透光性基板間に液晶を封入した液晶セル61の前後面に前面偏光膜62,背面偏光膜63をそれぞれ設けた液晶パネルからなる。前面偏光膜62は液晶セル61の表面に一様に貼り付けられ、また背面偏光膜63は液晶セル61の背面に部分的に貼り付けられいる。すなわち、この背面偏光膜63は指針4の遮光性カバー42の回転領域に対応した液晶セル61の背面中央領域に設けられており、その周囲には背面偏光膜63の形成されない抜き部64と後述する反射部が形成されない領域とで構成され、指針4の一部と指標部51を透視可能とする透視部Tが形成されている。
【0023】
そして、背面偏光膜63の背面には反射部65が重ねて設けられており、この反射部65は、透視パネル11を通じて前方から入射した例えば自然光等の光を観察者側に反射し、また前記光源からの光を液晶セル61側に透過する例えばシルバー系の色調を有する半透過性印刷層からなる。また、反射部65は、指針4の回転中心領域Rを含む遮光性カバー42上に位置し、またその周囲には指針4の先端側である先端部41cが部分的に露出しており、この先端部41cが透視部Tを通じて観察者側に視認されるようになっている。つまり、本実施形態では透視部Tが反射部65の周囲に形成されている。なお、本実施形態では反射部65が自然光を反射する例を示したが、前方から光を入射することができれば人工光、すなわち専用の光源を用いてもよい。
【0024】
また、液晶セル61は前記「日」の字型セグメントに対応して形成された電極への電圧印可により前記液晶の分子配列を変化させ、これにより各偏光膜62,63を通じて前記各「日」の字型セグメントの透過状態、不透過状態が切り換わるようになっている。例えば、本実施形態では前記透過状態のときには各表示部D1,D2を構成する所定のセグメントが観察者側に視認されず、前記不透過状態のときには所定のセグメントが観察者側に視認されるようになっており、車速センサ等の検出信号に応じて所定のセグメントが選択的に表示され、これにより観察者に前記検出信号に基づいて変動する数値表示を行っている。」
e 「【0046】
(第2実施形態)図5,図6は本発明の第2実施形態を示しており、本実施形態では、前記第1実施形態において指標板5に設けた指標部51が表示素子6の透視部T(抜き部64)に形成された例を示している。すなわち、透視部Tの背面には指針4の先端部41cの指示対象となる目盛66a,数字66b並びにレッドゾーン領域に対応する着色部66cからなる指標部66が形成されている。目盛66a,数字66bは例えば青色の印刷層により設けられ、着色部66cは例えば赤色の印刷層により設けられている。
【0047】
このため、本第2実施形態では前記第1実施形態で採用した指標板5が指標部を有していないことから、この指標板5の替えて背景板100が採用されている。この背景板100には図示しない透光性合成樹脂からなる薄板状の基材上に例えば白色系インクからなる地色部102が形成されている。かかる実施形態においても、自然光等の外光が入射すると、各表示部D1,D2の背景部D3が反射部65自体の色調であるシルバー色で視認されると共に、背景部D3の周囲が指標部66の背景となる地色部102の色調である白色で視認されるため、前記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。」

(イ)上記記載により、引用文献1から、次の技術的事項が読み取れる。
a 引用文献1には、車両に搭載される計器装置が記載されている。(段落0001)

b 表示素子6は、所定情報を表示する表示部Dを有しており、表示部Dは第1の表示部D1と、第2の表示部D2とを備えている。(段落0021)

c 表示素子6は、一対の透光性基板間に液晶を封入した液晶セル61の前後面に前面偏光膜62,背面偏光膜63をそれぞれ設けた液晶パネルからなる。(段落0022)

d 背面偏光膜63は液晶セル61の背面中央領域に設けられており、その周囲には、指針4の一部を透視可能とする透視部Tが形成されている。(段落0022)

e 液晶セル61は、各偏光膜62,63を通じてセグメントの透過状態、不透過状態が切り換わるものであり、透過状態のときには各表示部D1,D2を構成する所定のセグメントが観察者側に視認されず、前記不透過状態のときには所定のセグメントが観察者側に視認されるようになっており、所定のセグメントが選択的に表示され、これにより観察者に数値表示を行っている。(段落0024)

f 背面偏光膜63の背面には、前方から入射した光を観察者側に反射する反射部65が重ねて設けられている。(段落0023)

g 指針4の先端側である先端部41cが透視部Tを通じて観察者側に視認される。(段落0023)

h 表示素子6の透視部Tの背面には指針4の先端部41cの指示対象となる目盛66aが形成されている。(段落0046)

また、図5から、
i 目盛66aが観察者側に視認されること
さらに、図6から、
j 背景板100の上に指針4が重なっていること
及び
k 指針4の上に表示素子6が重なっていること
が見て取れる。

(ウ)上記技術的事項b、c及びeから、表示部Dに背面偏光膜63が設けられていることが分かる。すると、上記技術的事項fも併せて考慮すると、表示部Dに反射部65が設けられていることが分かる。
そこで、上記技術的事項aないしkを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 背景板100の上に重なっている指針4と、
前記指針4の指示対象となる目盛66aと、
前記指針4の上に重なっている表示素子6と、
を備え、
前記表示素子6は、前記指針4の一部を透視可能とする透視部Tと、前方から入射した光を観察者側に反射する反射部65が設けられて所定情報を表示する表示部Dとを有し、
前記指針4及び目盛66aは、観察者側に視認されるようになっており、
前記目盛66aは、前記指針4上に重なっている前記表示素子6に形成される、
ことを特徴とする車両に搭載される計器装置。」

イ 引用文献2
(ア)本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開昭54-153066号公報(昭和54年12月 1日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審が付した。)
a 「本発明は、指針(または疑似指針表示)と文字板の時刻目盛とによつて時間、分、秒等の時刻をアナログ的に表わすアナログ電子時計の改良に関する。」(第2ページ右下欄第2?5行)
b 「また本発明の最も好ましい実施例では、上記の電子表示文字板として内面に少なくとも一方が透明な電極を設けた少なくとも一方が透明な一対の電極板間に液晶物質をはさんだ液晶文字板を用い、これらの少なくとも一方の電極は、文字、記号等のパターンにより、時間、分等の時刻を表わせるように、この文字板の周囲に中心から放射状に配置された複数の時刻目盛電極からなり、かつこれらの時刻目盛電極に選択的に給電するための目盛表示切換手段を設けてある。」(第3ページ右上欄末行?同ページ左下欄第9行)
c 「 そして1は電池10の直流電流を昇圧する昇圧回路、2は交流電圧発生回路、20は後で詳しく説明する液晶文字板(電子表示文字板)、3はリユーズ、押ボタン等のスイツチ操作部材4の操作により液晶文字板20の時刻目盛電極を選択して切換える切換スイツチ回路である。」(第3ページ右下欄第2?7行)
d 「 従つて、第1図示のリユーズ(竜頭)、押ボタン等のスイツチ操作部材4の操作により切換スイツチ回路3を動作させると、第2図示の液晶文字板20の複数の時刻目盛パターンの少なくとも1つが選択されて、文字板20上に複数の種類中の少なくとも1種類の時刻目盛パターンが表示される。
この実施例で選択的に表示できる種々の時刻目盛パターンのデザインは、第5A、B、C、D、E、F図に示されている。」(第4ページ右下欄末行?第5ページ左上欄第9行)
e 「 以下に本発明の他の実施例を第6図?第11図により説明する。これらの実施例は第1図?第4図に示した第1実施例と基本的構成は同様であるが、偏光板30a、30bの配置個所(位置)が異なつている。なお、第1実施例を示す図面と同じ部分には同じ符号を付けてあるので、第1実施例と共通な説明は省略する。
第6図、第7図は、それぞれ本発明の他の実施例を示す断面図、分解斜視図である。この実施例では液晶文字板20の下側に第2の偏光板30bが設けられ、第2の偏光板30bの下側に指針17(17a、17b)が配置され、指針17の下側に反射板40が設けられている。反射板40の中央には駆動軸(回転軸)9よりも直径の大きい貫通孔が設けられ電子時計本体50と指針17とを軸9で連結している。」(第5ページ左下欄第12行?同ページ右下欄第7行)

(イ)上記記載により、引用文献2から、次の技術的事項aないしcが読み取れる。
a 引用文献2には、指針17と時刻目盛とによって時刻を表わすアナログ電子時計が記載されている。(上記記載a)

b 液晶文字板20の時刻目盛電極に給電することで、時刻目盛を液晶文字板20上に表示する。(上記記載bないしd)

c 液晶文字板20の下側に指針17が配置されている。(上記記載e)

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「背景板100」は、本件補正発明の「第1の基板」に相当する。
(イ)本件補正発明の「アナログ指示器」とは、本願の明細書(段落0022を参照)によると、針、ポインタ、ゲージ、又は選択/リセットなどの、車両の条件又は作動状態を示すために使用することができる任意の可動機械装置である。一方、引用発明の「指針4」は、自動車のエンジン回転数を示すために(引用文献1の段落0019を参照)回転駆動される(引用文献1の段落0013を参照)ものである。自動車のエンジン回転数とは車両の条件又は作動状態であり、また、回転駆動される指針は可動機械装置としての針ということができる。すると、引用発明の「指針4」は、本件補正発明の「アナログ指示器」に相当する。
(ウ)引用発明の「目盛66a」は、本件補正発明の「目盛り」に相当する。
(エ)引用発明において、「目盛66a」は回転駆動される指針4の指示対象である。そして、引用文献1の図5からも理解されるように、指針4の動きと整合する位置に「目盛66a」が設けられることは当然である。そうすると、引用発明の「前記指針4の指示対象となる目盛66a」は、本件補正発明の「前記アナログ指示器と整合された目盛り」に相当する。
(オ)引用発明において、「透視部T」は指針4(「アナログ指示器」に相当)の一部を透視可能とするものである。つまり、重なっている指針4を「透視部T」を介して透かして見ることが可能である。そして、透かして見ることが可能であるからには、「透視部T」は透明である。すると、引用発明の「前記指針4の一部を透視可能とする透視部T」は、本件補正発明の「前記アナログ指示器の一部の上に重なっている透明部分」に相当する。
(カ)引用発明において、「表示部D」は所定情報を表示するためのものである。また、「表示部D」には前方から入射した光を観察者側に反射する反射部65が設けられているので、「表示部D」は透明ではない。すると、引用発明の「前方から入射した光を観察者側に反射する反射部65が設けられて所定情報を表示する表示部D」は、本件補正発明の「情報を表示するための非透明部分」に相当する。
(キ)引用発明の「表示素子6」は、所定情報を表示するものであるから(引用文献1の段落0021を参照)、表示装置すなわちディスプレイである。また、「表示素子6」は透明な「透視部T」(上記(オ)を参照)を有しているところ、透明とは可視光の透過性を有することにほかならない。すると、引用発明の「表示素子6」は、本件補正発明の「透過性ディスプレイ」に相当する。
(ク)引用発明の「観察者側に視認される」は、本件補正発明の「乗員に見える」に相当する。
(ケ)引用発明において、目盛66aは表示素子6に形成されており、かつ、観察者側に視認される。つまり、目盛66aは表示素子6上に表示されているといえる。すると、引用発明の「前記目盛66aは、前記指針4上に重なっている前記表示素子6に形成される」と、本件補正発明の「前記目盛りは、前記アナログ指示器上に重なっている前記透過性ディスプレイに前記透過性ディスプレイによって表示される」とは、「前記目盛りは、前記アナログ指示器上に重なっている前記透過性ディスプレイ上に表示される」で共通する。
(コ)引用発明の「車両に搭載される計器装置」は、本件補正発明の「車両の計器盤」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「 第1の基板の上に重なっているアナログ指示器と、
前記アナログ指示器と整合された目盛りと、
前記アナログ指示器の上に重なっている透過性ディスプレイと、
を備え、
前記透過性ディスプレイは、前記アナログ指示器の一部の上に重なっている透明部分と、情報を表示するための非透明部分とを有し、
前記アナログ指示器及び目盛りは、乗員に見えるようになっており、
前記目盛りは、前記アナログ指示器上に重なっている前記透過性ディスプレイ上に表示される、
ことを特徴とする車両の計器盤。」

(相違点)
本件補正発明では、目盛りが透過性ディスプレイによって表示されるのに対し、引用発明はそのような構成を有しない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 引用文献2には、上記(2)イ(イ)のaないしcに示したとおりの技術的事項が記載されている。この引用文献2の記載から、以下の(ア)ないし(ウ)に挙げることが導き出される。
(ア)時刻目盛は、液晶文字板20の時刻目盛電極に給電することで、液晶文字板20上に表示されるのであるから、液晶文字板20によって表示される目盛りであるといえる。
(イ)液晶文字板20は、時刻目盛を表示するものであるから、表示装置すなわちディスプレイである。しかも、アナログ電子時計に用いられている以上、時刻目盛が視認できることはもちろん、液晶文字板20を介して指針17をも視認できる必要があることから、液晶文字板20が可視光の透過性を有していることは当業者にとって明らかである。つまり、液晶文字盤20は、透過性ディスプレイにほかならない。
(ウ)液晶文字板20の下側に指針17が配置されているということは、液晶文字板20は指針17の上に重なっているということである。
次に、アナログ電子時計とは、時間を計測する計器装置にほかならない。
これらを総合すると、当業者であれば、引用文献2の記載から、計器装置において、指針上に重なっている透過性ディスプレイ上に表示する目盛りを、前記透過性ディスプレイによって表示する手法を読み取り得る。

イ 上記(3)ア(ケ)において検討したように、引用発明は、目盛66aを表示素子6上に表示するものである。
一般に、表示素子は、表示素子によって表示素子上に情報や図形等を表示するためのものであるから、表示素子上に表示される情報や図形等を表示素子によって表示することは、当業者にとってごく自然な着想である。
すると、引用文献2に接した当業者が、計器装置である引用発明における目盛66aの表示について、同じく計器装置の目盛りの表示に関する引用文献2の手法を適用し、指針4上に重なっている表示素子6(「透過性ディスプレイ」に相当)上の目盛66aを、前記表示素子6によって表示するよう構成することに困難性は見いだせない。

ウ また、上記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本件補正発明は、引用文献1ないし2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正却下の決定のむすび
上記のとおり、本件補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成26年10月31日に提出された手続補正書による補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成26年 3月24日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明における「前記目盛りは、前記アナログ指示器上に重なっている前記透過性ディスプレイに前記透過性ディスプレイによって表示される」から、「(前記目盛りは、)前記透過性ディスプレイによって(表示される)」との事項、つまり、上記相違点に係る構成を本件補正発明から削除し、「前記目盛りは、前記アナログ指示器上に重なっている前記透過性ディスプレイ上に表示される」としたものである。
この点、上記第2の[理由]2(3)ア(ケ)において検討したように、引用発明は、「前記目盛りは、前記アナログ指示器上に重なっている前記透過性ディスプレイ上に表示される」に相当する事項を有する。
そうしてみると、本願発明と引用発明とに相違点はなく、発明を特定するために必要な事項において差異がない。
よって、本願発明は、引用発明と同一である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-16 
結審通知日 2015-06-22 
審決日 2015-07-06 
出願番号 特願2012-288754(P2012-288754)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G01D)
P 1 8・ 121- Z (G01D)
P 1 8・ 575- Z (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 憲二  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 清水 稔
堀 圭史
発明の名称 ゲージ上の透過性ディスプレイ  
代理人 弟子丸 健  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 松下 満  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 井野 砂里  

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