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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1307826
審判番号 不服2014-26134  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-22 
確定日 2015-11-19 
事件の表示 特願2013-164081「部品内蔵配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月31日出願公開、特開2013-225711〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成20年8月7日に出願した特願2008-203804号(以下「原出願」という。)の一部を平成25年8月7日に新たな特許出願としたものであって、平成26年2月27日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同年5月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月29日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年10月7日)、これに対し、同年12月22日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成26年5月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層に対して積層状に位置する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層に埋設された、2つ以上の端子を有する電気/電子部品と、
前記電気/電子部品を実装するための複数のランドを含み、該複数のランドの実質的な平面的広がりである第1の領域からなる平面図形が180度点対称図形であり、かつ、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とに接して挟まれて設けられている、表層まで銅でできた配線パターンと、
前記配線パターンの前記複数のランドの前記第1の領域と前記電気/電子部品の前記2つ以上の端子とをそれぞれ電気的、機械的に接続するはんだと、
前記配線パターンの前記複数のランドの前記第1の領域のそれぞれと、該第1の領域のそれぞれから延設された前記配線パターン上であって前記はんだが接触しない領域である第2の領域とを隔てるように該配線パターン上に設けられた樹脂パターンと
を具備することを特徴とする部品内蔵配線板。」

第2 刊行物
1 刊行物1
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願前に頒布された特開2008-10616号公報(以下「刊行物1」という。)には、「部品内蔵配線板」に関して、図面(特に、図1、図3及び図5参照。)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層に対して積層状に位置する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層に埋め込まれて設けられた、端子を有する電気/電子部品と、
前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とに挟まれて設けられた、前記電気/電子部品の実装用ランドを含む配線パターンと、
前記電気/電子部品の前記端子と前記実装用ランドとを接続する接続部とを具備し、
前記電気/電子部品の前記端子が、材料として、融点260℃以上の金属、合金、およびこれらを含有する組成物からなる群より選択される1種以上からなること
を特徴とする部品内蔵配線板。」

(2)「【0021】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、この部品内蔵配線板は、絶縁層11(第1の絶縁層)、同12、同13、同14、同15(12、13、14、15で第2の絶縁層)、配線層21(第2の配線パターン)、同22(配線パターン)、同23(もうひとつの第2の配線パターン)、同24、同25、同26(=合計6層)、層間接続体31、同32、同34、同35、スルーホール導電体33、チップ部品41(電気/電子部品)、接続部51を有する。
【0022】
チップ部品41は、ここでは例えばチップコンデンサであり、その平面的な大きさは例えば0.6mm×0.3mm、あるいは例えば1.0mm×0.5mmである。両端に端子(電極)41aを有し、その下側が配線層22による内蔵部品実装用ランドに対向位置している。チップ部品41の端子41aと実装用ランドとは接続部51により電気的・機械的に接続されている。」

(3)「【0038】
次に、図1に示した部品内蔵配線板の製造工程を図3ないし図5を参照して説明する。図3ないし図5は、それぞれ、図1に示した部品内蔵配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図である。これらの図において図1中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0039】
図3から説明する。図3は、図1中に示した各構成のうち絶縁層11を中心とした部分の製造工程を示している。まず、図3(a)に示すように、厚さ例えば18μmの金属箔(電解銅箔)22A上に例えばスクリーン印刷により、層間接続体31となるペースト状の導電性組成物をほぼ円錐形のバンプ状(底面径例えば200μm、高さ例えば160μm)に形成する。この導電性組成物は、ペースト状の樹脂中に銀、金、銅などの金属微細粒または炭素微細粒を分散させたものである。説明の都合で金属箔22Aの下面に印刷しているが上面でもよい(以下の各図も同じである)。層間接続体31の印刷後これを乾燥させて硬化させる。
【0040】
次に、図3(b)に示すように、金属箔22A上に厚さ例えば公称100μmのFR-4のプリプレグ11Aを積層して層間接続体31を貫通させ、その頭部が露出するようにする。露出に際してあるいはその後その先端を塑性変形でつぶしてもよい(いずれにしても層間接続体31の形状は、積層方向に一致する軸を有しその軸方向に径が変化する形状である。)。続いて、図3(c)に示すように、プリプレグ31A上に金属箔(電解銅箔)21Aを積層配置して加圧・加熱し全体を一体化する。このとき、金属箔21Aは層間接続体31と電気的導通状態となり、プリプレグ11Aは完全に硬化して絶縁層11になる。
【0041】
次に、図3(d)に示すように、片側の金属箔22Aに例えば周知のフォトリソグラフィによるパターニングを施し、これを、実装用ランド22aを含む配線パターン22に加工する。そして、加工により得られた実装用ランド22a上に、図3(e)に示すように、例えばスクリーン印刷によりクリーム半田51Aを印刷する。クリーム半田51Aは、フラックス中に微細な半田粒(ここでは融点260℃以上300℃以下)を分散させたものでありスクリーン印刷を用いれば容易に所定パターンに印刷できる。スクリーン印刷に代えてディスペンサを使用することもできる。なお、すでに説明したように、ここでクリーム半田51Aに代えて導電性接着性樹脂(硬化前のもの)を使用することもできる。
【0042】
次に、上記説明のチップ部品41をクリーム半田51Aを介して実装用ランド22a上に例えばマウンタで載置し、さらにその後クリーム半田51Aを例えばリフロー炉でリフローさせる(リフロー温度はクリーム半田51Aが含有する半田粒の融点を考慮して決めておく)。なお導電性接着性樹脂を使用する場合はこれを例えば熱により硬化させる。これにより、図3(f)に示すように、接続部51を介してチップ部品41が実装用ランド22a上に接続・固定された状態の配線板素材1が得られる。この配線板素材1を用いる後の工程については図5で後述する。」

(4)「【0048】
次に、図5を参照して説明する。図5は、上記で得られた配線板素材1、2などを積層する配置関係を示す図である。ここで、図示上側の配線板素材3は、下側の配線板素材1と同様な工程を適用し、かつそのあと層間接続体34およびプリプレグ14Aを図示中間の配線板素材2における層間接続体32およびプリプレグ12Aと同様にして形成し得られたものである。ただし、部品(チップ部品41)およびこれを接続するための部位(実装用ランド)のない構成であり、さらにプリプレグ14Aにはチップ部品41用の開口部も設けない。そのほかは、金属箔(電解銅箔)26A、絶縁層15、層間接続体35、配線層25、プリプレグ14A、層間接続体34とも、それぞれ配線板素材1の金属箔21A、絶縁層11、層間接続体31、配線層22、配線板素材2のプリプレグ12A、層間接続体32と同じである。
【0049】
図5に示すような配置で各配線板素材1、2、3を積層配置してプレス機で加圧・加熱する。これにより、プリプレグ12A、14Aが完全に硬化し全体が積層・一体化する。このとき、加熱により得られるプリプレグ12A、14Aの流動性により、チップ部品41の周りの空間およびスルーホール導電体33内部の空間にはプリプレグ12A、14Aが変形進入し空隙は発生しない。また、配線層22、24は、層間接続体32、34にそれぞれ電気的に接続される。この積層工程の後、上下両面の金属箔26A、21Aを周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングし、図1に示したような部品内蔵配線板を得ることができる。」

これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「絶縁層11と、
前記絶縁層11に対して積層状に位置する絶縁層12ないし15と、
前記絶縁層12ないし15に埋設された、2つの端子41a、41aを有するチップ部品41と、
前記チップ部品41を実装するための2つの実装用ランド22a,22aを含み、前記絶縁層11と前記絶縁層12ないし15とに接して挟まれて設けられている、配線パターン22と、
前記配線パターン22の前記2つの実装用ランド22a,22aと前記チップ部品41の前記2つの端子41a、41aとをそれぞれ電気的、機械的に接続する接続部51とを具備する部品内蔵配線板。」

2 刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願前に頒布された特開2006-310421号公報(以下「刊行物2」という。)には、「部品内蔵型プリント配線板」に関して、図面(特に、図1及び図2参照。)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0025】
(第一の実施の形態)
発明を実施するための最良の形態に関し、第一の実施の形態を図1及び図2を使用して説明する。
【0026】
特に、図1では実装が比較的容易な、サイズの大きい第一のチップ部品をプリント配線板に搭載する工程を説明し、図2では、絶縁層を積み重ねた後に、第一のチップ部品よりサイズが小さく、実装の難易度が高い第二のチップ部品を搭載する工程を説明する。
【0027】
まず、図1(a)に示されるように、プリント配線板のベース材料として、絶縁材の両面に銅箔2a及び銅箔2bを有する両面銅張積層板1を用意する。次いで、図1(b)に示されるように、当該両面銅張積層板1の片面の銅箔2aのみを回路形成し、チップ部品を実装するための実装パッド3及び回路配線4を形成する。
【0028】
回路形成は、従来のプリント配線板の回路形成方法であるドライフィルムエッチングレジストや電着レジストを使用したサブトラクティブ工法より行なう。例えば、両面銅張積層板1の銅箔粗化を処理した後、銅箔表面にドライフィルムエッチングレジストをラミネート貼付し、次いで、露光機にて紫外線露光及び炭酸ナトリウム水溶液による現像を行ない、塩化第二鉄液を用いてエッチングを行なった後、ドライフィルムエッチングレジストを剥離し、前記実装パッド3や回路配線4を形成し、図1(b)に示される構造体を得る。
【0029】
次いで、図1(c)に示されるように、前記回路形成後の実装パッド3及び回路配線4の導体面に保護膜5を所望の位置に形成する。ここでの保護膜5の形成は、電気接続材料としてはんだペーストを使用した場合、実装パッド3にチップ部品を実装する際に、他の導体部へのはんだペーストの流れ込みや飛び散りなどの不具合発生を抑制し、加えて位置精度良くチップ部品を実装パッド3に実装するためのものである。
【0030】
前記保護膜5の材料としては絶縁性の有機樹脂が使用でき、例えば、ソルダーレジストが好適に使用できる。また、保護膜5を所望の位置に形成する方法としては、フィルム型のソルダーレジストを使用し、バキュームアプリケータを用いて熱圧着した後にホットプレスを行ない、ソルダーレジストをフローさせて表面を平滑な状態で貼り付ける。その後、露光機にて紫外線露光及び炭酸ナトリウム水溶液にて現像を行ない、その現像後に乾燥炉でポストベークをすることにより、図1(c)に示される構造体を得る。」

(2)上記(1)の「回路形成後の実装パッド3及び回路配線4の導体面に保護膜5を所望の位置に形成する。ここでの保護膜5の形成は、電気接続材料としてはんだペーストを使用した場合、実装パッド3にチップ部品を実装する際に、他の導体部へのはんだペーストの流れ込みや飛び散りなどの不具合発生を抑制し、加えて位置精度良くチップ部品を実装パッド3に実装するためのものである。」(段落【0029】)との記載からみて、刊行物2には、次の事項が記載されているといえる(以下「刊行物2に記載された事項」という。)。

部品内蔵型プリント配線板において、実装パッドにチップ部品を実装する際に他の導体部へのはんだペーストの流れ込みが生じること。

3 刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願前に頒布された実願昭61-105900号(実開昭63-10582号)のマイクロフィルム(以下「刊行物3」という。)には、「印刷配線板」に関して、図面(特に、図1ないし図3参照。)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「第1図は本考案の一実施例の印刷配線板の平面図、第2図は第1図の印刷配線板に電子部品をはんだ付けした状態を示す平面図、第3図は第2図の印刷配線板における電子部品の取付状態を示す部分断面図である。
図中、1は基板、2はストリップライン、3は絶縁膜、4は電子部品、5ははんだである。
本実施例の印刷配線板は、基板1上に印刷してあるストリップライン2と、このストリップライン間にはんだ付けする電子部品4の両端付近に塗布してある絶縁膜(絶縁物に相当する)3とからなる。
基板1は、高周波回路に適したフッ素樹脂系積層板からなる。この基板1上には、銅、金又ははんだのストリップライン3が印刷してある。
導体回路を構成する各ストリップライン3間には第2図及び第3図に示すように、電子部品4がはんだ付けされる。
絶縁膜3は、シルク印刷などの工法により、はんだ付けされる電子部品4の両端付近に塗布してある。この絶縁膜は、細線状をなし、ソルダーレジストや文字印刷などからなる。また、例えばエポキシ樹脂系材料のような電気的特性に影響を与える材料であっても、0.3mm程度の細線状にすれば、高周波回路に何らの支障も与えない。
本実施例の印刷配線板によれば、はんだ付けする電子部品の両端付近にはんだ流れ防止用の絶縁膜3が塗布してあるので、電子部品4をはんだ付けした際、そのはんだ5が導体回路に過度に流れるのをせき止めて防止することができる。」(3ページ1行?4ページ10行)

(2)第1図及び第2図には、ストリップライン2上の細線状の絶縁膜3によって限定された領域の2つを対とする平面図形が、2つの領域間にある点のまわりを180度回転させたときにもとの図形と重なることが示されているから、複数のストリップライン2の絶縁膜3によって限定された領域は点対称な図形であるといえる。

(3)第3図には、はんだ5が上記限定された領域と電子部品4の両端とを接続することが示されている。
また、上記(1)の「はんだ付けする電子部品の両端付近にはんだ流れ防止用の絶縁膜3が塗布してあるので、電子部品4をはんだ付けした際、そのはんだ5が導体回路に過度に流れるのをせき止めて防止する」との記載とあわせみると、ストリップライン2の上記限定された領域のそれぞれと、該限定された領域のそれぞれから延設されたストリップライン2上であってはんだ5が接触しない領域とを隔てるように該ストリップライン2上に設けられた絶縁膜3が示されているといえる。

(4)上記(1)ないし(3)を総合すると、刊行物3には、次の事項が記載されているといえる(以下「刊行物3に記載された事項」という。)。

複数のストリップライン2の絶縁膜3によって限定された領域からなる平面図形が点対称な図形であり、はんだ5が前記限定された領域と電子部品4の両端とを接続し、前記ストリップライン2の前記限定された領域のそれぞれと、該限定された領域のそれぞれから延設された前記ストリップライン2上であって前記はんだ5が接触しない領域とを隔てるように該ストリップライン2上に設けられた絶縁膜3を具備すること。

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「絶縁層11」は前者の「第1の絶縁層」に相当し、以下同様に、「絶縁層12ないし15」は「第2の絶縁層」に、「チップ部品41」は「電気/電子部品」に、「2つの端子41a、41a」は「2つ以上の端子」に、「2つの実装用ランド22a,22a」は「複数のランド」に、「接続部51」はクリーム半田51Aをリフローさせたものであるから「はんだ」にそれぞれ相当する。

また、後者の「配線パターン22」は「金属箔(電解銅箔)22A」にパターニングを施して加工された後、各配線板素材1、2、3を積層配置してプレス機で加圧・加熱されたものであるから、後者の「絶縁層11と前記絶縁層12ないし15とに接して挟まれて設けられている、配線パターン22」は前者の「第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とに接して挟まれて設けられている、表層まで銅でできた配線パターン」に相当する。

したがって、両者は、
「第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層に対して積層状に位置する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層に埋設された、2つ以上の端子を有する電気/電子部品と、
前記電気/電子部品を実装するための複数のランドを含み、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とに接して挟まれて設けられている、表層まで銅でできた配線パターンと、
前記配線パターンの前記複数のランドと前記電気/電子部品の前記2つ以上の端子とをそれぞれ電気的、機械的に接続するはんだとを具備する部品内蔵配線板。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願発明は、配線パターンの「該複数のランドの実質的な平面的広がりである第1の領域からなる平面図形が180度点対称図形」であり、はんだが「前記第1の領域」と端子とを接続し、「前記配線パターンの前記複数のランドの前記第1の領域のそれぞれと、該第1の領域のそれぞれから延設された前記配線パターン上であって前記はんだが接触しない領域である第2の領域とを隔てるように該配線パターン上に設けられた樹脂パターン」を具備するのに対し、
引用発明は、配線パターン22及び2つの実装用ランド22a,22aがかかる発明特定事項を備えていない点。

第4 当審の判断
そこで、相違点について検討する。
本願発明の「複数のランドの実質的な平面的広がりである第1の領域」に関して、本願明細書には、「ランド22aの実質的な平面的広がりとは、はんだ51が必ず濡れ広がることを意図して提供されている、配線パターン22上の領域を意味している。なお、この実施形態では、堰き止め樹脂パターン52を設けるものの、この堰き止めパターン52より外の領域に、さらに樹脂パターンを延設するには及ばないので、例えば絶縁層12との密着性劣化のおそれはほとんどなく、問題となるような構造的な信頼性劣化は生じない。この実施形態を、図1、図8に示した実施形態と比較すると、図1、図8では、配線パターン22における複数のランド22aそれぞれの実質的な平面的広がりが、配線パターン22自体の広がりによって限定されていると言える。図9に示す実施形態では、この目的で堰き止め樹脂パターン52を設けて、はんだ51の広がり制御をより確実化している。また、堰き止め樹脂パターン52を設けることにより、ランド22aからの引き出しパターンの方向および太さについての限定がほぼ不要になる。」(段落【0082】ないし段落【0084】)との記載があり、この記載からみて、本願発明の「複数のランドの実質的な平面的広がりである第1の領域」は、ランド22a上の堰き止め樹脂パターン52によって限定された領域と解される。

それを踏まえ、相違点に係る本願発明の発明特定事項と刊行物3に記載された事項とを対比すると、後者の「絶縁膜3」は前者の「樹脂パターン」に相当し、以下同様に、「絶縁膜3によって限定された領域」は「実質的な平面的広がりである第1の領域」に、「点対称な図形」は「180度点対称図形」に、「はんだ5」は「はんだ」に、「電子部品4の両端」は「端子」に、「ストリップライン2」は「配線パターン」に、「前記はんだ5が接触しない領域」は「前記はんだが接触しない領域である第2の領域」にそれぞれ相当する。
そうすると、刊行物3に記載された事項は、本願発明の用語で表すと、複数の配線パターンの実質的な平面的広がりである第1の領域からなる平面図形が180度点対称図形であり、はんだが前記第1の領域と端子とを接続し、前記配線パターンの前記第1の領域のそれぞれと、該第1の領域のそれぞれから延設された前記配線パターン上であって前記はんだが接触しない領域である第2の領域とを隔てるように該配線パターン上に設けられた樹脂パターンを具備することといえる。

ところで、引用発明の「前記配線パターン22の前記2つの実装用ランド22a,22aと前記チップ部品41の前記2つの端子41a、41aとをそれぞれ電気的、機械的に接続する接続部51」は、刊行物2に記載された事項に照らせば、引用発明の実装用ランド22a,22aにおいて「実装パッドにチップ部品を実装する際に他の導体部へのはんだペーストの流れ込みが生じる」との技術的課題があることが理解できる。

そして、当該技術的課題に対して、刊行物2には、部品内蔵型プリント配線板において、絶縁性の有機樹脂(例えば、ソルダーレジスト)からなる保護膜5を実装パッド3及び回路配線4の導体面の所望の位置に形成することで解決することが記載されており、他方、刊行物3には、細線状をなしソルダーレジストなどからなる絶縁膜3をはんだ付けされる電子部品4の両端付近に塗布して、そのはんだ5が導体回路に過度に流れるのをせき止めて防止することが記載されている。

ここで、刊行物2の保護膜5と刊行物3の絶縁膜3とは、刊行物3の絶縁膜3が刊行物2の保護膜5と同種の樹脂材料(ソルダーレジスト)からなることで一致するから、刊行物3の絶縁膜3は、刊行物2の保護膜5と同様、部品内蔵型プリント配線板において使用できることが把握できる。

そうすると、引用発明の上記技術的課題を解決するために、引用発明の実装用ランド22a,22aに刊行物3に記載された事項を適用して、「該複数のランドの実質的な平面的広がりである第1の領域からなる平面図形が180度点対称図形」であり、はんだが「前記第1の領域」と端子とを接続し、「前記配線パターンの前記複数のランドの前記第1の領域のそれぞれと、該第1の領域のそれぞれから延設された前記配線パターン上であって前記はんだが接触しない領域である第2の領域とを隔てるように該配線パターン上に設けられた樹脂パターン」を具備するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明が奏する効果は、引用発明に刊行物3に記載された事項を適用したものに比して格別ではない。

したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項及び刊行物3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項及び刊行物3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-17 
結審通知日 2015-09-24 
審決日 2015-10-07 
出願番号 特願2013-164081(P2013-164081)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 正章遠藤 秀明  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 冨岡 和人
内田 博之
発明の名称 部品内蔵配線板  
代理人 須山 佐一  

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