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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05D
管理番号 1307838
審判番号 不服2014-8905  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-14 
確定日 2015-11-20 
事件の表示 特願2011- 50428「移動型ロボット清掃機」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月30日出願公開、特開2011-129155〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2002(平成14)年6月12日(パリ条約による優先権主張2001(平成13)年6月12日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願である特願2003-504174号の一部を、平成20年9月25日に分割して新たな特許出願とした特願2008-246310号の一部を、平成23年3月8日にさらに分割して新たな特許出願としたものであって、平成26年1月17日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、同年5月14日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、特許請求の範囲について補正がなされた。その後、同年9月4日に上申書が提出され、平成27年3月4日付けで当審から拒絶の理由が通知され、同年6月2日に意見書とともに手続補正書が提出され、特許請求の範囲、明細書及び図面についてさらに補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし15に係る発明は、上記平成27年6月2日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。(以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「 【請求項1】
任意の大きさおよび形状を有する床面を清掃する移動型ロボット清掃機であって、
前記移動型ロボット清掃機を床面上で移動させる移動手段と、
前記移動型ロボット清掃機の移動中に前記移動型ロボット清掃機が接触または近接する障害物を検出する衝突センサと、
絶壁を検出する絶壁センサと、
前記衝突センサと前記絶壁センサからの出力信号に基づいて、前記移動手段を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記絶壁センサが絶壁を検出した場合、前記移動型ロボット清掃機が前記絶壁から離れるように前記移動手段を制御し、かつ前記絶壁センサが所定時間を超えて絶壁を検出した場合、前記移動手段による前記移動型ロボット清掃機の移動を停止し、
前記衝突センサからの出力信号に基づいて、前記移動型ロボット清掃機が小さな限定された領域に入ったと判断される場合、前記衝突センサを用いて縁端を辿るよう制御する、移動型ロボット清掃機。」

第3 引用刊行物記載の発明
これに対して、当審での平成27年3月4日付けの拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された下記刊行物には、以下の発明、あるいは事項が記載されていると認められる。

刊行物1:特公平 7- 34791号公報
刊行物2:特表平11-510935号公報

1 刊行物1
(1)刊行物1に記載された事項
刊行物1には、「自走式掃除機」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。


「【請求項1】本体を移動させる駆動装置と、本体の移動方向を変える操舵装置と、本体に設けられた電動送風機、フィルタ、床ノズルなどからなる清掃装置とを有し、前記床ノズルは本体の進行方向側の前方に位置し、本体に対して上下動自在に取付けられるとともに、床面の凹凸により上下動する床ノズルの上下位置を検出する床ノズル上下位置検出手段を備え、この床ノズル上下動位置検出手段は床ノズルか所定の上限位置または下限位置に移動したのを検出すると、駆動装置を停止または操舵装置により方向を変換する構成である自走式掃除機。」(特許請求の範囲)


「産業上の利用分野
この発明は、清掃機能とを備え、床面の清掃を自動的に行なう自走式掃除機に関するものである。」(明細書第1欄第13?15行)


「発明が解決しようとする問題点
しかしながら、移動経路があらかじめ設定されない自走式掃除機では、床面の有無あるいは凹凸状態を知る床面検出手段が重要になる。すなわち、床面の状態によって、そこが移動できる場所かどうかを判断して経路を決定する必要がある。特に2階等の作業では、床面の段差が分からないと、階段から転落することも考えられ、最悪の場合には人身事故につながる可能性があった。また、凸段差についても、それが分からずに乗り上げて移動できなくなり清掃を続けられないことがあった。
そこで本発明は、床面の凹凸状態を検出して移動経路を的確に決定し、清掃の途中で止まったり、転落したりすることのない自走式掃除機を提供するものである。」(明細書第2欄末行?第3欄第12行)


「この技術的手段による作用は次のようになる。
すなわち、全く平坦な床面を移動する場合には床ノズルは本体に対して全く上下動しないが、床面に凹凸がある場合にはその凹凸に応じて床ノズルが上下動するため、この床ノズルの上下位置を検出することにより前方の床面の状態を知ることができる。したがって、例えば床ノズルが所定の位置より下がったときには駆動装置に制動をかけて移動を停止させるようにしておけば、たとえ前方の床面が落ち込んでなくなっていても、まず床ノズルがその落ち込みに入り停止できるので、本体が転落することは防止できるものである。」(明細書第3欄第26?36行)


「第1?2図に示す自走式掃除機において、1は本体、2は電動送風機、3はフィルタ、4は集塵室で、この集塵室4は蛇腹ホース5およびノズルパイプ6を介して床ノズル7と接続している。床ノズル7の底面には回動自在なローラー8が取付けられており、床面Aに当接する。9は集塵室4に集められたゴミの逆流を防止する逆止弁である。また、ノズルパイプ6は本体1内に固定された2枚のノズル受け板10A、10Bに挿通され、上下動自在に支持されるとともに、スプリング11によって下方に付勢されている。12はリミットスイッチ,リードスイッチなどからなる床ノズル7の上下位置検出手段である。13L,13Rはそれぞれ本体1の左右に設けられた一対の操舵兼駆動輪で、駆動モータ14L,14Rとそれぞれ連結している。15L,15Rは本体1の底面に回動自在に取付けられた従輪である。16L,16Rは左右の駆動モータ14L,14Rの回転軸と結合しているロータリエンコーダである。17,17′および18,18′および19,19′および20,20′は、それぞれ本体1の前面,左右側面,後面に2個ずつ設けられた障害物検知センサである。21F,21Rはそれぞれ本体1の前後に設けられたバンパーで、内部に設けた接触センサによって衝突を検知すると同時に衝撃を緩和する。22は鉛蓄電池等の電源、23は判断処理回路である。
第3図は床ノズル7の上下位置検出手段12の詳細図である。24はノズルパイプ6に取付けられた作動爪で、床ノズル7の上下動に従って上下に移動し、本体1に固定されたリミットスイッチ25,26をON/OFFする。このリミットスイッチ25,26はそれぞれ、床ノズル7が上限位置または、下限位置に来たときに作動爪24によって作動する位置に調整され取付けられている。
第4図は本実施例のシステムブロック図で、ロータリエンコーダ16R,16L,障害物検知センサ17,17′,18,18′,19,19′,20,20′,バンパー21F,21Rおよび床ノズル7の上下位置検出手段を構成するリミットスイッチ25,26からの信号はすべて判断処理回路23に入力され、この判断処理回路23からの出力信号で駆動モータ14L,14Rを駆動し、本体1の移動制御を行なう。この判断処理回路23にはマイクロコンピュータを用いている。」(明細書第3欄第40行?第4欄第26行)



「以上のように構成された自走式掃除機について、以下その動作を説明する。
清掃領域内にこの自走式掃除機を置くと、操舵兼駆動輪13L,13Rが駆動モータ14L,14Rによって駆動され矢印Bの方向へ移動し始める。このときロータリエンコーダ16R,16Lおよび障害物検知センサ17,17′,18,18′,19,19′,20,20′,およびバンパー21F,21Rおよびリミットスイッチ25,26からの信号により判断処理回路23で移動経路を決定しつつ駆動モータ14R,14Lを制御して、直進,停止,方向変換を繰返しながら清掃領域内全体を移動する。
移動中にもし床面が平坦でない場所、例えば第5図に示すような階段等の凹段差Cのある所に来ると、床ノズル7は自重とスプリング11の弾性力によって下方へ移動し、床ノズルと接続したノズルパイプ6に取付けられた作動爪24はリミットスイッチ26を作動する。リミットスイッチ26が作動すると判断処理回路23は駆動モータ14に信号を送り本体1の移動を停止させるとともに、これ以上は前進できないと判断して、方向変換あるいは後進して次の移動を開始する。このとき、本体1は操舵兼駆動輪13R,13Lと従輪15R,15Lの四輪に支えられ重心は操舵兼駆動輪13より後にあるので、もちろん凹段差に落ちることはない。また、もし移動中に第6図に示すような凸段差Dのある所へ来ると、床ノズル7は上方へ押し上げられ今度はリミットスイッチ25を作動する。この場合も凹段差の時と同様にこれ以上前進できないと判断して、方向変換あるいは後進を行なう。なお、床面の凹凸が小さい場合には、その凹凸に従って床ノズル7は上下動するが、作動爪24がリミットスイッチ25,26を作動させない限り移動を続ける。」(明細書第4欄第27行?第5欄第6行)



「以上のように本発明は、床ノズルを本体の前方に上下動自在に取付けるとともに、この床ノズルの上下位置検出手段を備えることにより、前方床面の凹凸状態を知ることができ、凹段差から転落したり、凸段差に乗り上げて移動できず清掃が続けられないことのない安全性にすぐれ信頼性の高い自走式掃除機が提供できるものである。」(明細書第6欄第5?10行)


「床面」が「任意の大きさおよび形状を有する」のは技術常識であり、上記記載事項イからみて、刊行物1には「任意の大きさおよび形状を有する床面を清掃する自走式掃除機」が記載されているといえる。


上記記載事項オの「17,17′および18,18′および19,19′および20,20′は、それぞれ本体1の前面,左右側面,後面に2個ずつ設けられた障害物検知センサである。」との記載からみて、刊行物1には「自走式掃除機の移動中に前記自走式掃除機が接触する障害物を検出する障害物検知センサ」が記載されているといえる。


上記記載事項アの「床面の凹凸により上下動する床ノズルの上下位置を検出する床ノズル上下位置検出手段を備え」との記載、及び、上記記載事項オの「第3図は床ノズル7の上下位置検出手段12の詳細図である。24はノズルパイプ6に取付けられた作動爪で、床ノズル7の上下動に従って上下に移動し、本体1に固定されたリミットスイッチ25,26をON/OFFする。」との記載からみて、刊行物1には「床面の凹凸を検出する床ノズル上下位置検出手段」が記載されているといえる。


上記記載事項オの「ロータリエンコーダ16R,16L,障害物検知センサ17,・・・,バンパー21F,21Rおよび床ノズル7の上下位置検出手段を構成するリミットスイッチ25,26からの信号はすべて判断処理回路23に入力され、この判断処理回路23からの出力信号で駆動モータ14L,14Rを駆動し、本体1の移動制御を行なう。」との記載、及び、上記記載事項カの「このときロータリエンコーダ16R,16Lおよび障害物検知センサ17,・・・,およびバンパー21F,21Rおよびリミットスイッチ25,26からの信号により判断処理回路23で移動経路を決定しつつ駆動モータ14R,14Lを制御して、直進,停止,方向変換を繰返しながら清掃領域内全体を移動する。・・・リミットスイッチ26が作動すると判断処理回路23は駆動モータ14に信号を送り本体1の移動を停止させるとともに、これ以上は前進できないと判断して、方向変換あるいは後進して次の移動を開始する。」との記載からみて、刊行物1には「障害物検知センサと床ノズル上下位置検出手段からの出力信号に基づいて、駆動モータを制御する判断処理回路」が記載されているといえる。


上記記載事項アの「この床ノズル上下動位置検出手段は床ノズルか所定の上限位置または下限位置に移動したのを検出すると、駆動装置を停止または操舵装置により方向を変換する」との記載、及び、上記記載事項カの「例えば第5図に示すような階段等の凹段差Cのある所に来ると、床ノズル7は自重とスプリング11の弾性力によって下方へ移動し、床ノズルと接続したノズルパイプ6に取付けられた作動爪24はリミットスイッチ26を作動する。リミットスイッチ26が作動すると判断処理回路23は駆動モータ14に信号を送り本体1の移動を停止させるとともに、これ以上は前進できないと判断して、方向変換あるいは後進して次の移動を開始する」との記載、さらには上記記載事項キの「・・・凹段差から転落したり、凸段差に乗り上げて移動できず清掃が続けられないことのない安全性にすぐれ信頼性の高い・・・」との記載からみて、刊行物1には「判断処理回路は、床ノズル上下動位置検出手段が床面の凹凸を検出した場合、自走式掃除機が凹段差から転落しないように方向変換あるいは後進するように駆動モータを制御する」ことが記載されていると認められる。

(2)刊行物1発明
そこで、刊行物1の上記記載事項アないしキ及び上記認定事項クないしシを図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下「刊行物1発明」という。)
「任意の大きさおよび形状を有する床面を清掃する自走式掃除機であって、
前記自走式掃除機を床面上で移動させる駆動モータと、
前記自走式掃除機の移動中に前記自走式掃除機が接触する障害物を検出する障害物検知センサと、
床面の凹凸を検出する床ノズル上下位置検出手段と、
前記障害物検知センサと前記床ノズル上下位置検出手段からの出力信号に基づいて、前記駆動モータを制御する判断処理回路と、を備え、
前記判断処理回路は、
前記床ノズル上下動位置検出手段が床面の凹凸を検出した場合、前記自走式掃除機が凹段差から転落しないように方向変換あるいは後進するように前記駆動モータを制御する、自走式掃除機。」

2 刊行物2
(1)刊行物2に記載された事項
刊行物2には、「自己方向決定装置用のシステムと装置」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、記載箇所は空白行を含まない行数にて示す。


「技術分野
本発明は、自己方向決定装置、特に(真空)掃除機に関し、より正確には、自律型装置の移動経路中に存在する障害物を有効に検出する超音波ソナー・システムにより隣接環境の中で方向を決定するシステムと装置とに関するものである。
発明の背景
長い間、船舶のレーダなどに類似した、水平方向をスイープするセンシングシステムにより制御される、特に掃除機のような、床面を取り扱う自律型装置などに対する要請があった。
その要望とは、たとえば、あらかじめ決められたパターン、または所定の戦略にしたがって掃除機能を実行でき、同時に室内にある障害物との衝突を回避し、さらに室内の壁との衝突も回避できるように、自律型装置が室内で自己の方向を自身で決定できるということである。」(明細書第6ページ第3?14行)


「本装置の停止と停止の間の距離及び方向転換の回数は監視され、数回の方向転換の後、走行距離が所定の最小距離を越えない場合には、”自由走行モード”から”スタック、ブレークアウトモード”へモードが切り換えられる。ソナーが”見えない”ものと現に衝突し、そのものがバンパー接触センサによってのみ検出された場合には、本装置は、まず数センチ後退し、次に、あたかもその物体がその側面において検出されたかのごとく動作する。
本装置は、本装置が停止と停止との間で十分な距離を走行していないということを検出した場合には、あいている通路が発見されるまで、又は、完全に一周するまで、常に方向転換を行うというものにその戦略を変える。短い距離を走行した後、他の障害物が発見された場合には、同じプロセスが繰り返される。この場合に、方向転換の方向は、前回と同じである。障害物に当たらずに、最小距離を走行した場合には、再び”自由走行モード”が採用される。一方、本装置は、障害物を発見し続けると、方向転換を数回繰り返した後に、動作を停止する。」(明細書第16ページ第25行?第17ページ第10行)

(2)刊行物2事項
刊行物2の上記記載事項ア及びイを整理すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認められる。(以下「刊行物2事項」という。)
「自律型掃除機において、方向転換を数回繰り返しても障害物が検出され続ける場合には、動作を停止すること。」

第4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物1発明の「自走式掃除機」は本願発明の「移動型ロボット清掃機」に相当することは、その機能に照らして明らかであり、以下同様に技術常識も踏まえると、「駆動モータ」は「移動手段」に、「障害物検知センサ」は「衝突センサ」に、「判断処理回路」は「コントローラ」に相当することも明らかである。

次に、本願明細書の段落【0040】に「また、好適な実施形態は、任意の個数の赤外線絶壁センサ14を備えており、これによって、清掃機が階段や他の垂直の落ち込みで転落しないようになっている。これら絶壁センサは、壁面追従センサと同様の構成であるが、壁ではなく床を観測する向きに配設されている。・・・」と記載されていることからみて(下線は当審で付した)、本願発明の「絶壁」は、「階段の垂直の落ち込み」を含むものであるといえる。
一方、上記第3の1(1)記載事項ウの「・・・特に2階等の作業では、床面の段差が分からないと、階段から転落することも考えられ」および同記載事項カの「・・・例えば第5図に示すような階段等の凹段差Cのある所に来ると、床ノズル7は自重とスプリング11の弾性力によって下方へ移動し、床ノズルと接続したノズルパイプ6に取付けられた作動爪24はリミットスイッチ26を作動する。」からみて、刊行物1発明の「床面の凹凸」も「階段の垂直の落ち込み」を含むものであるといえる。そして、刊行物1発明の「床ノズル上下位置検出手段」は「床面の凹凸」を検出しているのであるから、「センサ」の一種であるといえる。
そうすると、刊行物1発明の「床面の凹凸」、「床ノズル上下位置検出手段」及び「凹段差から転落しないように」は、それぞれ、本願発明の「絶壁」、「絶壁センサ」及び「絶壁から離れるように」に相当する。

したがって、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「任意の大きさおよび形状を有する床面を清掃する移動型ロボット清掃機であって、
前記移動型ロボット清掃機を床面上で移動させる移動手段と、
前記移動型ロボット清掃機の移動中に前記移動型ロボット清掃機が接触する障害物を検出する衝突センサと、
絶壁を検出する絶壁センサと、
前記衝突センサと前記絶壁センサからの出力信号に基づいて、前記移動手段を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記絶壁センサが絶壁を検出した場合、前記移動型ロボット清掃機が前記絶壁から離れるように前記移動手段を制御する、移動型ロボット清掃機。」

そして、本願発明と刊行物1発明とは、以下の2点で相違している。
<相違点1>
本願発明は、絶壁センサが所定時間を超えて絶壁を検出した場合、移動手段による前記移動型ロボット清掃機の移動を停止するように制御するのに対し、刊行物1発明はそのような制御を行うか不明である点。
<相違点2>
本願発明は、衝突センサからの出力信号に基づいて、移動型ロボット清掃機が小さな限定された領域に入ったと判断される場合、衝突センサを用いて縁端を辿るよう制御するのに対し、刊行物1発明はそのような制御を行うか不明である点。

第5 相違点の検討
1 <相違点1>について
上記第3の2(2)にて述べたように、刊行物2事項は、「自律型掃除機において、方向転換を数回繰り返しても障害物が検出され続ける場合には、動作を停止する」ものであるところ、これを本願発明の用語で表現すれば、刊行物2事項の「自律型掃除機」は「移動型ロボット清掃機」と表現でき、同様に「動作を停止」は「移動を停止」と表現できる。さらに、刊行物2事項の「方向転換を数回繰り返す」ということは、直ちに停止せず、「障害物の検出」が「所定時間」を超えて続くことを意味しているから、これらを踏まえ刊行物2事項は、「移動型ロボット清掃機において、所定時間を超えて障害物を検出した場合には、移動を停止する」と言い改めることができる。
ここで、刊行物1発明と刊行物2事項とは、移動型ロボット清掃機である点で技術分野が共通しており、また、刊行物1発明の「床面の凹凸」も「障害物」の一種であるから、さらに安全性を高めるために、刊行物1発明に刊行物2事項を適用し,所定時間を超えて床面の凹凸(絶壁)を検出した場合、移動型ロボット清掃機の移動を停止するように構成する、すなわち、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者において十分動機付けが存在し、容易に想到し得ることというべきである。

2 <相違点2>について
自走式掃除機たる刊行物1発明においては、掃除対象領域が入り組んだ形状であることも少なくないから、自走式掃除機が小さな限定された領域に入り込んでしまうことも、当業者がごく自然に想起し得る好ましくない状況である。
一方、自走式掃除機(移動型ロボット清掃機)の技術分野において、センサ信号に基づいて自走式掃除機が小さな限定された領域に入ったと判断される場合、縁端を辿るよう制御することは、例えば、特開平9-146640号公報(段落【0040】における「・・・主基準面までの距離が所定値より小さく、しかも副基準面までの距離が所定値より小さい場合、図3のルーチンにおいてステップST1,ST2を経てステップST7に進み、車体21を反転せずに後退処理のみを実行する。・・・」との記載等を参照)、特開平1-149114号公報(第16図とそれに関する説明を参照)に示されるように、従来周知の技術事項である。
そして、刊行物1発明において、小さな限定された領域に入り込んでしまうという好ましくない状況に対処すべく、上記従来周知の技術事項を適用することによって、センサ信号に基づいて自走式掃除機が小さな限定された領域に入ったと判断される場合、縁端を辿るよう制御することは、当業者が容易になし得たものというべきである。そして、縁端を辿るような制御を行う際にセンサを援用することもごく一般的な技術に過ぎない。
よって、相違点2に係る本願発明の構成も、刊行物1発明に従来周知の技術事項を適用することによって、当業者が容易に想到し得たものである。

3 本願発明の効果について
本願発明により得られる効果も、刊行物1発明、刊行物2事項及び従来周知の技術事項から当業者であれば予測し得る範囲のものであって格別のものとはいえない。

4 小括
したがって、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2事項及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2事項及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-26 
結審通知日 2015-06-29 
審決日 2015-07-10 
出願番号 特願2011-50428(P2011-50428)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (G05D)
P 1 8・ 121- WZ (G05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 長屋 陽二郎
栗田 雅弘
発明の名称 移動型ロボット清掃機  
代理人 松岡 修平  
代理人 尾山 栄啓  

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