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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01F
管理番号 1307877
審判番号 不服2013-24684  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-16 
確定日 2015-11-18 
事件の表示 特願2011-209542「混合混練機並びに、混合混練機を使用してポリ(メタ)アクリレートを製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月22日出願公開、特開2012- 55887〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成17年9月28日(パリ条約に基づく優先権主張2004年9月28日、ドイツ連邦共和国(DE))を出願日とする出願(特願2007-532859)の一部を平成23年9月26日に、新たな出願としたものであって、平成25年8月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年12月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
その後、当審において平成26年9月2日付けで拒絶の理由を通知したところ、平成27年3月6日に意見書の提出及び手続補正がなされた。


第2.本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成25年3月19日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「少なくとも2つの軸(2,3)を備えた混合混練機であって、これらの軸の表面においてウェブ(5)に混練棒(4)が配置されていて、軸がハウジング(6)によって取り囲まれており、該ハウジング(6)において、少なくとも1つの開口(10)が軸の上に形成され、かつ生成物排出のための少なくとも1つの開口(11)が形成されており、さらに軸(2,3)が、互いに同速度又は異なった速度でかつ同方向又は逆方向で回転可能であるように、両端部において支承されていて、少なくとも1つの端部において駆動される形式のものにおいて、軸の構造が、軸における曲げの固有振動数と励起体振動数との差の絶対値を、曲げの固有振動数で割った値に100を掛けて得られる数値が少なくとも5であるように、構成されていることを特徴とする混合混練機。」


第3.引用刊行物
当審の拒絶の理由に引用した特開平6-233925号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「混練装置」の発明に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。
(1)「【産業上の利用分野】この発明は、少なくとも2個の平行回転軸を備え、機械的、化学的あるいは熱的に処理するための混練装置に関し、少なくとも主軸と命名された1個の軸に、混練杆を備えた板状平面が形成され、これに浄化軸と呼称される他方の軸に配設された清浄、混練および搬送要素が摺接されて成るものである。」(段落[0001])
(2)「【実施例】図1の通り、混練装置Pには、複数個の区画1a,1b,1cよりなるハウジングを備え、各区画はフランジ結合部2によって連結されている。第1の区画1aには、内部で処理される物体を導入する導入管3が、第3の区画1cには処理された物体を排出する排出管4が配設されている。」(段落[0016])
(3)「被処理物体は、第2の回転軸5,6および混練搬送部材7により、排出管4の方へ搬送され、その間に物体の混合と練成ないしは熱処理が行われる。このために軸5,6さらには混練部材7および詳細に図示していないがハウジング壁8も加熱される。回転軸5,6へ、さらには混練搬送部材7の内部へ加熱媒体を導入させるために接続管9および10が配設され、これらの接続管9,10は、軸5,6によって導入される加熱媒体を排出するための排出ニップル11,12の周囲に設けられている。この媒体の導入および帰還は公知の技術であるために、以下詳細は省略する。」(段落[0017])
(4)「接続管9,10の間には、軸5,6に連結された管栓部13,14によって付属室15が突設され、ハウジング側には、軸5,6を閉止するための閉止ブッシュ16,17が各々配設されている。管栓部13,14は、区画の外部において、例えば歯車等の適宜な変速部材17,18により相互に結合され、部材17は変速機19を介して駆動源20に結合されている。駆動源20と変速機19により、少なくとも変速部材17が回転運動に変換され、これが回転軸5に伝達される。変速部材18への回転運動の伝達は、同方向・反対方向、あるいは等回転数・異回転数のいずれも可能であるが、これらの機構は周知であるから詳細は省略する。」(段落[0018])
(5)「発明においては混練兼搬送部材7の形状および回転軸5,6の構造が重要である。以下解り易いために、それぞれ主軸5、浄化軸6と称する。各々には前記部材7が付設されており、各々の軸5,6に対するベースとして板状表面21を有する。図5ないし図8は、板状表面21を有する。図5ないし図8は、板状表面21の種々の形状を示す。図5では環状体21aとして形成されている。」(段落[0019])
(6)「重要な点は、板状表面周辺部23には主軸5ならびに表面21が配設され、浄化軸6にU字状の混練杆25が配設されたことにあり、即ち、特有な搬送脚26が周辺部23上にあり、他方軸5,6の各々に対して、前記搬送脚26から両側に翼状片27,28が突設されている。かくして特に図2に図示の通り、混練搬送部材7はT字状の外形を備えたものとなる。」(段落[0023])
(7)上記(2)及び図1に記載された事項から、以下の事項が看取される。
ア.主軸5、浄化軸6は、複数個の区画1a,1b,1cよりなるハウジングによって取り囲まれていること。
イ.第1の区画1aには、内部で処理される物体を導入する導入管3が、前記主軸5、浄化軸6の上側に配設され、第3の区画1cには、処理された物体を排出する排出管4が配設されていること。
ウ.前記主軸5、浄化軸6は、前記複数個の区画1a,1b,1cよりなるハウジングの両端部において支承されていること。
(8)上記(5)、(6)及び図2?図8に記載された事項から、板状表面21に混練杆25が配置されていることが看取される。

以上を踏まえ、上記事項を、本願発明に照らして整理すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「主軸5、浄化軸6を備えた混練装置であって、前記主軸5、浄化軸6に対するベースとして板状表面21を有し、前記板状表面21に混練杆25が配置されていて、前記主軸5、浄化軸6が複数個の区画1a,1b,1cよりなるハウジングによって取り囲まれており、第1の区画1aには、内部で処理される物体を導入する導入管3が、前記主軸5、浄化軸6の上側に配設され、第3の区画1cには、処理された物体を排出する排出管4が配設されており、前記主軸5、浄化軸6は、前記複数個の区画1a,1b,1cよりなるハウジングの両端部において支承されており、前記主軸5、浄化軸6に連結された管栓部13、14は、歯車等の適宜な変速部材17、18により相互に結合され、前記変速部材17は変速機19を介して駆動源20に結合され、前記駆動源20と変速機19により、前記変速部材17が回転運動に変換され、これが回転軸5に伝達され、前記変速部材18への回転運動の伝達は、同方向・反対方向、あるいは等回転数・異回転数のいずれも可能である、混練装置。」


第4.対比
引用発明における「主軸5」、「浄化軸6」、「混練装置」「板状表面21」、「混練杆25」、「複数個の区画1a,1b,1cよりなるハウジング」は、各々、本願発明における「軸3」、「軸2」、「混合混練機」「ウェブ(5)」、「混練棒(4)」、「ハウジング(6)」に相当する。

引用発明において「板状表面21に混練杆25が配置されてい」る場所は、「主軸5、浄化軸6を備えた混練装置であって、前記主軸5、浄化軸6に対するベースとして板状表面21を有」していること及び図2、図5?8の記載からみて、「主軸5、浄化軸6」の表面といえる。
ゆえに、引用発明における「前記主軸5、浄化軸6に対するベースとして板状表面21を有し、前記板状表面21に混練杆25が配置されていて」は、本願発明における「これらの軸の表面においてウェブ(5)に混練棒(4)が配置されていて」に相当する。

引用発明において、「複数個の区画1a,1b,1cよりなるハウジング」の「第1の区画1a」には、「導入管3」の内部とハウジングの内部とを連通する「開口」が設けられ、「第3の区画1c」には、「排出管4」の内部とハウジングの内部とを連通する「開口」が設けられることは、明らかである。
一方、本願発明における「開口(10)」について、本願明細書の「ハウジング6において主軸2及び掃除軸3の上には、破線で示された開口10が設けられている。」との記載(段落[0062]を参照)及び図1の記載を参酌すると、本願発明における「該ハウジング(6)において、少なくとも1つの開口(10)が軸の上に形成され」とは、「ハウジング(6)」において、「開口10」が「形成され」る位置が、主軸2及び掃除軸3の上側となる位置であることを特定しようとしていることが明らかである。
ゆえに、引用発明における「前記主軸5、浄化軸6が複数個の区画1a,1b,1cよりなるハウジングによって取り囲まれており、第1の区画1aには、内部で処理される物体を導入する導入管3が、前記主軸5、浄化軸6の上側に配設され、第3の区画1cには、処理された物体を排出する排出管4が配設されており」は、本願発明における「軸がハウジング(6)によって取り囲まれており、該ハウジング(6)において、少なくとも1つの開口(10)が軸の上に形成され、かつ生成物排出のための少なくとも1つの開口(11)が形成されており」という要件を満たす。

引用発明では「前記主軸5、浄化軸6に連結された管栓部13、14は、歯車等の適宜な変速部材17、18により相互に結合され、前記変速部材17は変速機19を介して駆動源20に結合され、前記駆動源20と変速機19により、前記変速部材17が回転運動に変換され、これが回転軸5に伝達され、前記変速部材18への回転運動の伝達は、同方向・反対方向、あるいは等回転数・異回転数のいずれも可能である」ことから、主軸5と浄化軸6とが互いに同速度又は異なった速度でかつ同方向又は逆方向で回転可能であることが明らかである。
また、引用発明では「前記主軸5、浄化軸6は、前記複数個の区画1a,1b,1cよりなるハウジングの両端部において支承されて」いる。
ゆえに、引用発明における「前記主軸5、浄化軸6は、前記複数個の区画1a,1b,1cよりなるハウジングの両端部において支承されており、前記主軸5、浄化軸6に連結された管栓部13、14は、歯車等の適宜な変速部材17、18により相互に結合され、前記変速部材17は変速機19を介して駆動源20に結合され、前記駆動源20と変速機19により、前記変速部材17が回転運動に変換され、これが回転軸5に伝達され、前記変速部材18への回転運動の伝達は、同方向・反対方向、あるいは等回転数・異回転数のいずれも可能である」ことは、本願発明における「軸(2,3)が、互いに同速度又は異なった速度でかつ同方向又は逆方向で回転可能であるように、両端部において支承されていて、少なくとも1つの端部において駆動される」との要件を満たす。

してみれば、両者の一致点および相違点は以下のとおりである。

《一致点》
「少なくとも2つの軸を備えた混合混練機であって、これらの軸の表面においてウェブに混練棒が配置されていて、軸がハウジングによって取り囲まれており、該ハウジングにおいて、少なくとも1つの開口が軸の上に形成され、かつ生成物排出のための少なくとも1つの開口が形成されており、さらに軸が、互いに同速度又は異なった速度でかつ同方向又は逆方向で回転可能であるように、両端部において支承されていて、少なくとも1つの端部において駆動される形式のものである混合混練機。」

《相違点》
本願発明では、「軸の構造が、軸における曲げの固有振動数と励起体振動数との差の絶対値を、曲げの固有振動数で割った値に100を掛けて得られる数値が少なくとも5であるように、構成されている」のに対し、引用発明では、軸の構造が、軸における曲げの固有振動数や励起体振動数との関係で特定されていない点。


第5.判断
相違点について検討する。
本願発明における「励起体振動数」とは、「回転数と回転数の数倍とによって生ぜしめられる。」ものである。(本願明細書の段落[0016])
また、本願発明における「曲げの固有振動数と励起体振動数との差の絶対値を、曲げの固有振動数で割った値に100を掛けて得られる数値が少なくとも5である」ことは、「曲げの固有振動数」と「励起体振動数」とが、前記「曲げの固有振動数」の5%以上の値で乖離すること、すなわち、「曲げの固有振動数」と「励起体振動数」との乖離の程度が「曲げの固有振動数」の5%以上であることを意味するものと解される。
一方、当審の拒絶の理由で述べたように、回転軸を持つ構造物について、回転軸の固有振動数に起因する共振による様々な悪影響を排除するために、当該回転軸の構造等に影響を受ける軸の曲げ固有振動数が、回転数の整数倍と一致しないようにする技術自体は、例えば、当審の拒絶の理由で周知技術として例示した特開2002-39177号公報(以下、「刊行物2」という。)や特開2000-65062号公報(以下、「刊行物3」という。)にも記載されているように、本願の優先日前の周知技術である。
そして、引用発明は、回転軸を有するから、回転軸の固有振動数に起因する共振による悪影響が発生し得るものであることが、直ちに想定し得る。
ゆえに、引用発明において、前記周知技術に基づき、主軸5や浄化軸6の曲げ固有振動数が、その回転数の整数倍、すなわち、励起体振動数と一致しないようにすることは、当業者であれば容易に着想し得たことに過ぎない。
そして、一致しないようにするための具体的な手法(軸等の構造設計によるか制御によるか)や、軸の曲げ固有振動数と励起体振動数(軸の回転数の整数倍)との乖離(一致させない)の程度は、当業者が適宜設定し得たことというべきである。

ところで、請求人は、平成27年3月6日に提出された意見書の3.(II)(3)(ii)?(iv)において、以下(1)?(5)を主張している。
(1)引用発明2(審決注:刊行物2に記載された発明)の「非接触軸受スピンドル装置」はその構造に関して、引用発明1(審決注:引用発明)の「混練装置」とは全く異なっている。
(2)引用発明2で実施される共振回避の方法は、主軸4の回転数をずらすことであり、本願発明におけるように軸自体の構造をどのように設計するかとは全く異なっており、さらに、引用文献2(審決注:刊行物2)には、軸の振動励起を回避することができる、前記本願発明独特の構成が開示も示唆もされていない。
(3)引用発明2はエンドミルのような工具を装着されるスピンドル装置であり、引用発明1の混練装置を改良するのに、主軸4が高速回転するスピンドル装置における技術を、当業者が使用することはあり得ない。
(4)本願発明では、前記本願発明独特の構成におけるように、「軸における曲げの固有振動数と励起体振動数との差の絶対値を、曲げの固有振動数で割った値に100を掛けて得られる数値が少なくとも5」という小さな数値によって、所望の効果が得られるという大きな利点があり、緩衝手段を必要とすることなしに、軸の固有振動数と励起体振動数との関係を本願発明におけるように設定するだけで、混練棒(4)を備えたウェブ(5)を含む軸(2,3)の振動励起を回避できるということは、当業者にとって驚くべきことである。
(5)引用発明3(審決注:刊行物3に記載された発明)の「回転体共振抑制装置」では、共振を抑制するために、回転体1に設けられた調整空間部21の内部に調整マス部材31が配置されていて、この調整マス部材31を回転体1の軸方向において移動させるようになっており、この引用発明3にも、上記本願発明独特の構成は存在しない。

主張(1)、(2)、(5)について検討する。
請求人が述べているように、刊行物2には、「非接触軸受スピンドル装置」について、主軸4の回転数をずらすことで共振を回避することも記載され、刊行物3には、「回転体共振抑制装置」について、回転体1に設けられた調整空間部21の内部に配置された調整マス部材31を回転体1の軸方向において移動させることで共振を抑制することも記載されている。
しかしながら、上記したとおり、刊行物2、3は、「回転軸の固有振動数に起因する共振による様々な悪影響を排除するために、当該回転軸の構造等に影響を受ける軸の曲げ固有振動数が、回転数の整数倍の振動数と一致させないようにする」技術が本願の優先日前の周知技術であることを例示するものである。
そして、刊行物2の段落[0002]の「工具の種類および突き出し長さ等によって、曲げ固有転動数が変化する。多刃工具を使って加工したときに、(回転数)×(刃数)の整数倍が上記曲げ固有振動数に一致すると、共振によりびびり振動が生じて綺麗な切削が困難になる。」との記載や刊行物3の段落[0003]の「例えば、回転体の回転数の整数倍である高調波と回転体の弾性1次振動周波数とが一致する場合等がこれに相当し、回転体に共振を生じて振動する。」との記載から、当業者であれば、前記技術が把握できることは明らかである。
しかも、上記「主軸4の回転数をずらす」ことや「調整マス部材31を回転体1の軸方向において移動させる」ことは、いずれも、「軸の曲げ固有振動数が、回転数の整数倍の振動数と一致させないようにする」ために行われる具体的な解決策であるところ、こうした具体的な解決策が本願発明と異なることは、刊行物2や刊行物3の記載から前記技術が把握できることを妨げる要因にはならない。
さらに、前記技術が、技術分野を問わない、本願の優先日前の周知技術であることは、上記刊行物2、3の他にも、例えば、「無刷子直流電動機、磁気軸受装置、及びターボ分子ポンプ装置」に関する特開平11-313471号公報(特に、段落[0004]を参照)、「動力伝達軸」に関する特開平11-303845号公報(特に、段落[0003]を参照)、「遠心抽出機」に関する特開昭64-85153号公報(特に、第1頁右下欄第4行?11行を参照)等の記載からも明らかである。
ゆえに、上記主張(1)、(2)、(5)は、いずれも失当である。

主張(3)について検討する。
刊行物2は、上記したとおり、「回転軸の固有振動数に起因する共振による様々な悪影響を排除するために、当該回転軸の構造等に影響を受ける軸の曲げ固有振動数が、回転数の整数倍の振動数と一致させないようにする」という周知技術の例示にすぎないから、上記主張(3)は、当審の拒絶の理由を曲解してなされたものといわざるを得ない。
さらに、前記周知技術は、回転軸を持つ構造物に共通する技術課題である「回転軸の固有振動数に起因する共振による様々な悪影響を排除する」ものであり、前記技術課題は、引用発明1においても内在する技術課題であることは、当業者に明らかである。
そして、このことは、例えば、本願発明や引用発明と同じく混合混練機の技術分野に属する特開平11-138528号公報の記載(特に、[要約]、段落[0004]、[0005]を参照)からも裏付けられるし、上記意見書の3.(I)で、請求人自身が「混合混練機は低速の回転システムなので、励起体振動数は、単に、回転数に依存し、かつ回転数の倍数に依存します。当業者は、曲げの固有振動数と励起体振動数の間における差が低下すると、振動が始まり、装置の危険が高まるということを知っています。」と述べていることからも裏付けられることである。
ゆえに、上記主張(3)も失当である。

主張(4)について検討する。
上記したように、軸の曲げ固有振動数が、その回転数の整数倍と一致しないようにするための具体的な手法として、軸の構造設計を選択するか、制御を選択するかは当業者が適宜決定し得たことである。
しかも、軸の構造設計を選択し、軸の曲げ固有振動数が、その回転数の整数倍と一致しないようにすることは、例えば、上記特開平11-303845号公報(特に、段落[0003]を参照)にも記載されているように、何ら格別なことではない。
さらに、「「軸における曲げの固有振動数と励起体振動数との差の絶対値を、曲げの固有振動数で割った値に100を掛けて得られる数値が少なくとも5」という小さな数値によって、所望の効果が得られる」との主張について、本願の明細書には、段落[0016]に「軸の振動励起は、軸の構造が、軸における曲げの固有振動数と励起体振動数との差の絶対値を、曲げの固有振動数で割った値に100を掛けて得られる数値が少なくとも5、有利には少なくとも15、特に有利には少なくとも20であるように、構成されていると、回避される。」との記載があるのみであり、前記「少なくとも5」について、5という値を境に「所望の効果が得られる」か否かについて、すなわち、前記5という値にどのような技術的意義があるかについて、実験データ等に基づく実証的な説明がされている訳でもない。
ゆえに、上記主張(4)は、上記判断を左右するものではない。

以上を踏まえると、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-16 
結審通知日 2015-06-22 
審決日 2015-07-07 
出願番号 特願2011-209542(P2011-209542)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関口 哲生  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 渡邊 真
渡邊 豊英
発明の名称 混合混練機並びに、混合混練機を使用してポリ(メタ)アクリレートを製造する方法  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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