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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47K
管理番号 1307910
審判番号 不服2014-14494  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-07 
確定日 2015-11-17 
事件の表示 特願2009-166138号「ペ-パホルダの巻紙端片繰出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年1月13日出願公開、特開2011-5203号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年6月23日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成22年 6月30日:手続補正書(明細書の補正)の提出、
手続補正書(図面の補正)の提出
平成22年 9月 7日:本願の審査請求、
手続補正書(明細書の補正)の提出、
手続補正書(図面の削除)の提出
平成24年 6月18日:拒絶理由の通知(起案日)
平成24年 8月22日:意見書及び手続補正書の提出
平成25年 5月 2日:最後の拒絶理由の通知(起案日)
平成25年 7月10日:意見書及び手続補正書の提出
平成26年 5月14日:平成25年7月10日付けの手続補正書による
補正の却下の決定(起案日)、
拒絶査定(起案日)
平成26年 7月 7日:本願の審判請求
平成26年10月11日差出(平成26年10月10付け):
手続補正書(審判請求書の補正)
平成27年3月31日(起案日)、同年4月7日(発送日):
当審による拒絶理由の通知
平成27年 5月28日:意見書の提出
平成27年 6月 8日:期間延長請求書(1ヶ月延長)の提出
平成27年 7月 2日:意見書及び手続補正書の提出
平成27年7月6日差出(平成27年7月5日付け):
意見書及び手続補正書の提出
平成27年 7月14日:上申書の提出

なお、平成27年5月28日付け意見書、同年7月2日付け意見書及び手続補正書、並びに同年7月5日付け意見書及び手続補正書は、平成27年3月31日付け拒絶理由通知に応答するための指定期間内に提出されたものであるが、平成27年7月14日付け上申書は、上記指定期間経過後に提出されたものである。

第2 平成27年3月31日付け拒絶理由通知書の理由
当審による平成27年3月31日付け拒絶理由通知書の理由は、以下のとおりである。

「 理 由

1.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



理由1
・請求項1
・備考
請求項1に記載の「巻紙端片(3)を繰り出し巻紙芯管(2)と巻紙回動盤(10)を回動すればゼンマイ回動盤(8)のゼンマイばね(37)が巻上げられ巻紙端片(3)を紙切板(47)の紙切縁(48)で切り離せばゼンマイ回動盤(8)のゼンマイばね(37)が巻戻しゼンマイ回動盤(8)は巻紙回動盤(10)との摺接離脱し介在駆動輪(12)に摺接し介在駆動輪(12)は巻紙回動盤(10)と巻紙芯管(2)が回動し、巻紙端片(3)を繰り出るペ-パホルダの巻紙端片繰出装置。」について。
本願明細書(平成24年8月22日付け手続補正書)には「【0038】図1と図2と図3に示す元状態は巻紙回動盤10に装着した巻紙芯管2の巻紙端片3が紙切板47の紙切縁48から繰出し、ゼンマイ回動盤8の摺動曲弦面43左端縁は巻込開始突起45に当接し巻戻始終突起46は摺動曲弦面43の左右両端縁の中央位置に存る。又ゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11は介在駆動輪12の外周駆動縁11に接蝕し、介在駆動輪12は外周駆動縁11で巻紙回動盤10の外周駆動縁11に摺接、さらに摺動曲弦面43の曲周縁の左右両端縁はゼンマイ回動盤8中心から等距離だが中央になるほど遠隔距離になる。つまり、ゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11の摺動曲弦面43の左右端縁が巻込開始突起45及び巻戻始終突起46に当接するときは正円回動に位置し、摺動曲弦面43の中央位置が巻込開始突起45及び巻戻始終突起46に近接動作する程ゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11を押出し介在駆働輪12の外周駆動縁11に当接する。したがってゼンマイ回動盤8の右左4分1回動の際は摺動曲弦面43の巻戻始終突起46と巻込開始突起45との当接位置で巻紙回動盤10及び介在駆動輪12に離接摺動する。
【0039】
図4に示す巻紙端片3を引っ張り出し巻紙芯管2を手回動せしめれば巻紙回動盤10の外周駆動縁11がゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11に摺動作し(この際巻紙回動盤10は介在駆動輪12にも摺接し巻紙回動盤10は正時計まわり介在駆動輪12は反時計まわりに従動さらにゼンマイ回動盤8以外とも対向摺動するがゼンマイ回動盤8の反転動作のときは負荷はかからない)ゼンマイ回動盤8は四分1の周回でゼンマイばね37を反時計回りに巻上巻戻し反転所定位置の回動自在凹縁44にて巻紙回動盤10の外周駆動縁11と当接しゼンマイ回動盤8は一時停止し巻紙端片3の引き出し終了と共に巻紙回動盤10も回動停止すればゼンマイ回動盤8は反転しゼンマイばね37は巻戻動作する。ゼンマイ回動盤8の摺動曲弦面43の動作で反時計回りしながら巻込開始突起45でゼンマイ回動盤8を巻紙回動盤10の方向え押出し巻込始終突起46で介在駆動輪12と圧接を緩め、又ゼンマイ回動盤8の摺動曲弦面43と巻戻始終突起46の動作は主に介在駆動輪12に対し余力は巻紙回動盤10方向に往復摺動作し介在駆動輪12とは対行摺動する。」と記載されている。
上記記載によれば、図3の元状態から、図4の巻紙端片3を引っ張り出し巻紙芯管2を手回動した状態(図4)を経て、図5のゼンマイ回転盤8の左右端縁が巻戻始終突起に当接し、図5のゼンマイばねの巻き上げ状態、そして、前記ゼンマイばねを巻き上げた状態から、図6のゼンマイばねの巻き戻り行程途中を経て、図7、図3の元状態へ戻ることになる。
そして、各状態において、
ゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11と巻紙回動盤10の外周駆動縁11間の摩擦力をA、ゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11と介在駆動輪12の外周駆動縁11間の摩擦力をB、介在駆動輪12の外周駆動縁11と巻紙回動盤10の外周駆動縁11間の摩擦力をC
とすると、
図3→図4→図5へ至る行程において、摩擦力はA>B、Cの関係が成立し、そして、介在駆動輪12の外周駆動縁11は、ゼンマイ回動輪12の外周駆動縁11に従動し、巻紙回動盤10の外周駆動縁11に対し滑る状態、あるいは、ゼンマイ回動輪12の外周駆動縁11に対し滑り、巻紙回動盤10の外周駆動縁11に従動する状態のいずれかの態様をなすことから、介在駆動輪12の外周駆動縁11は、ゼンマイ回動輪12の外周駆動縁11あるいは巻紙回動盤10の外周駆動縁11のいずれかに対し、従動するか滑ることになる。
図5の状態において、「図4に示す巻紙端片3を引っ張り出し巻紙芯管2を手回動せしめれば巻紙回動盤10の外周駆動縁11がゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11に摺動作し(この際巻紙回動盤10は介在駆動輪12にも摺接し巻紙回動盤10は正時計まわり介在駆動輪12は反時計まわりに従動さらにゼンマイ回動盤8以外とも対向摺動するがゼンマイ回動盤8の反転動作のときは負荷はかからない)ゼンマイ回動盤8は四分1の周回でゼンマイばね37を反時計回りに巻上巻戻し反転所定位置の回動自在凹縁44にて巻紙回動盤10の外周駆動縁11と当接しゼンマイ回動盤8は一時停止し・・・」(【0039】)との記載により、「回動自在凹縁44にて巻紙回動盤10の外周駆動縁11と当接し」、ゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11と巻紙回動盤10の外周駆動縁11間の摩擦力Aが減少し、「巻紙回動盤10は正時計まわり介在駆動輪12は反時計まわりに従動」することから、摩擦力はC、B>Aの関係を満たすことになるものと解される。
巻紙端片の引き出しにより、「ゼンマイ回動盤8の摺動曲弦面43と巻戻始終突起46の動作は主に介在駆動輪12に対し余力は巻紙回動盤10方向に往復摺動作し介在駆動輪12とは対行摺動する。」ことからすると、巻紙回動盤10の外周駆動縁11が時計方向に回転し、巻紙回動盤10に摺接し、介在駆動輪12の外周駆動縁11が反時計方向に回転、介在駆動輪12に摺接し、ゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11が時計方向に回転する。
そうすると、巻紙端片の引き出しに伴って「ゼンマイ回動盤8の摺動曲弦面43と巻戻始終突起46の動作は・・・往復摺動作」することから、「回動自在凹縁44にて巻紙回動盤10の外周駆動縁11と当接」した状態の摩擦力の関係C、B>Aと図3→図4→図5へ至る行程の摩擦力A>B、Cの関係を交互に繰り返すことと解される。
一方、図5から図6を経て図7の元状態へ戻る行程では、「・・・巻紙端片3を引き出し紙切板47の紙切縁48で切り離なせばゼンマイ回動盤8は回動自在凹縁44の巻紙回動盤10との当接解除でゼンマイ回動盤8のゼンマイばね37の巻戻しで介在駆動輪12に摺接して介在駆動輪12は反時計回りで巻紙回動盤10を時計回りにし巻紙端片3を繰り出し次回の所用にそなえる。」(【0040】)の記載からすると、図5から図6を経て図7の元状態へ戻る行程において、摩擦力の関係はB、C>Aになると解される。
そして、介在駆動輪12の外周駆動縁11は、ゼンマイ回動輪12の外周駆動縁11に従動し、巻紙回動盤10の外周駆動縁11にも従動する。
そうすると、図5から図6を経て図7の元状態へ戻る行程は、図3→図4→図5へ至る行程と同じ行程であるにもかかわらず、摩擦力の関係が相反しており技術的に矛盾した関係が生じていることは明らかである。
詳説すれば、例えば、図3の元状態から図5の一時停止の行程の途中である図4と、図5の一時停止の状態から図7の元状態へ戻る行程の途中である図6を見比べると、図4においては、上記の通り摩擦力はA>B、Cの関係を満たしている。一方、図6においては、摩擦力はB、C>Aの関係になるとしている。
図4及び図6は、いずれも、ゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11と巻紙回動盤10の外周駆動縁11と介在駆動輪12の外周駆動縁11は、いずれも同じ位置関係にあるのだから、各外周駆動縁11は同じ当接状態であり、そして、同じ摩擦力を生じることは明らかである。
また、介在駆動輪12は、図3→図4→図5へ至る行程において、介在駆動輪12の外周駆動縁11は、ゼンマイ回動輪12の外周駆動縁11あるいは巻紙回動盤10の外周駆動縁11のいずれかに対し、従動あるいは滑ることになるのに対し、図5から図6を経て図7の元状態へ戻る行程では、ゼンマイ回動輪12及び巻紙回動盤10のいずれの外周駆動縁11にも従動することになる。しかし、本願明細書及び図面を参酌しても、そのような介在駆動輪12の構造が記載されていない。
そうすると、ゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11と巻紙回動盤10の外周駆動縁11と介在駆動輪12の外周駆動縁11は、同じ行程及び同じ摺接状態にもかかわらず、摩擦力の関係が相反しており、また、相反する摩擦力の関係を技術的にいかにして生じ得るのかが何ら記載されておらず、さらに、技術常識と矛盾している以上、当業者が発明を実施しようとした場合に、どのように実施するかが理解できない。
したがって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に出願時の技術常識を考慮しても実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

理由2 (省略) 」

第3 請求人が提出した意見書及び手続補正書並びに上申書について
1 意見書及び上申書について
請求人は、意見書及び上申書において以下のとおり主張している。
(1)平成27年5月28日付け意見書の内容
「(おねがい)
今回の拒絶理由処置と前に特許になりました考案の試験装置の製作がかさなりまして月日だけがたち困っておりましたがこのたびは実施実験のほうを重点的に行ないますので何卒良ろしくお願い申し上げます
拒絶理由の製作のほうは期間がすぎても行ない提出いたしますのでお願い申します。
処分は受入れます。」
(2)平成27年7月2日付け意見書の内容
「今回の補正は私自身の申出から行はれさして頂いた期間ですが思いがけぬ事がおきまして何もできないことになりました。
1.私の兄88才で他界し十日間程の葬儀手間がかゝりました(兄は宇治病院に入院しておりました)
私は83才です
2.何卒明細書図面の補正は後日に行なわして頂きたくお願い申し上げます。ほったらかしにわいたしません。私はつかれておりますが縣命にやっております。以上
補正出願書は後日お送りいたします
雑文で申し訳ありません。」
(3)平成27年7月5日付け意見書の内容
「ペーパホルダの巻紙端片繰出装置を補正し新たに出願したい
その為には何卒今回の通知書を一時参考書類として確保させて欲しい。
上記考案を確保しておきたい。」
(4)平成27年7月14日付け上申書の内容
指定期間経過後に提出された当該上申書には、「別紙の意見書(案)手続補正書(案)のとおり。」と記載されているとともに、意見書(案)と手続補正書(案)が添付されており、また、意見書(案)には、「添付書類御参照」と記載されている。

2 手続補正書について
請求人が提出した手続補正書の補正内容は、以下のとおりである。
(1)平成24年8月22日付け手続補正書(拒絶査定時の特許請求の範囲、明細書及び図面)
当該手続補正書による補正は、特許請求の範囲の全文、明細書の全文、及び図面の全図を補正するものであって、当該補正後の特許請求の範囲及び明細書には、以下のとおり記載されている。
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
巻紙ペ-パホルダ(1)の器械室(17)に装着した器械基盤(5)の下右所定位置に回動連芯軸(7)同芯軸(7)から上左傾斜方向所定位置にゼンマイ芯軸(9)、さらに回動連芯軸(7)とゼンマイ芯軸(9)の軸中心を結ぶ二等辺三角形頂点所定位置に介在芯軸(13)を突出形成し回動連芯軸(7)に巻紙回動連(6)をゼンマイ芯軸(9)にゼンマイ回動盤(8)を介在芯軸(13)には介在駆動輪(12)を装入着し、ゼンマイ芯軸(9)軸中心と対面する右補強板(14)の所定位置に紙切板軸受(15)を貫設し回動連芯軸(7)軸中心と対面する所定位置に押込連取付穴(16)を貫設、回動連芯軸(7)に巻紙回動連(6)を巻紙回動軸孔(23)で挿入して回動連芯軸(7)の留金溝(24)に留輪金(25)を差し込み装着、押込連取付穴(16)に巻紙押込連(27)の押込連軸受(26)を装入、ゼンマイ芯軸(9)にはゼンマイばね(37)の初回層に巻込固定筒(38)の交叉取込溝(39)を挟み込み軸穴でゼンマイ芯軸(9)に装入固着しゼンマイ回動盤(8)の右内径より輪郭体側円板(40)を挿着し、ゼンマイ動作穴(41)にゼンマイばね(37)を包容し固定筒装入穴(41)で巻込固定筒(38)に装入し輪郭体側円板(40)の交叉取込溝(39)をゼンマイばね(37)の上層に挟み込み固着したうえ合体し装着したゼンマイ回動盤(8)及び輪郭体側円板(40)とゼンマイばね(37)を一周巻上げながらゼンマイ回動盤(8)の摺動曲弦面(43)の左端縁を巻込開始突起(45)に当接せしめ、摺動曲弦面(43)の中間位置を巻戻始終突起(46)に当接するように装着、紙切板(47)の紙切架設軸筒(49)に装入した架設芯軸(51)の左右両端芯軸に復元追従ばね(50)を装着し、さらに紙切板(47)の右端縁から突出する架設芯軸(51)の小バネを挿入し紙切板軸受(15)に挿入一旦押し込み左端縁から突出する架設芯軸(51)の外周縁にワッシヤ円板を挿着し巻込固定筒(38)の軸芯穴に装入し紙切板(47)右端縁と紙切板軸受(15)の間隙に蹄形留輪(52)を挿入し、巻紙回連連(6)に巻紙芯管(2)を挿着して巻紙押込盤(28)で押し込んだ巻紙回動盤(10)とのゼンマイ回動盤(8)の連係動作を中介する介在駆動輪(12)は外周駆動縁(11)を巻紙回動盤(10)の外周駆動縁(11)には常時摺接し、ゼンマイ回動盤(8)の外周駆動縁(11)に対してゼンマイ回動盤(8)の動作方向から連動摺接する介在芯軸(13)に装入着し、巻紙端片(3)を繰り出し巻紙芯管(2)と巻紙回動盤(10)を回動すればゼンマイ回動盤(8)のゼンマイばね(37)が巻上げられ巻紙端片(3)を紙切板(47)の紙切縁(48)で切り離せばゼンマイ回動盤(8)のゼンマイばね(37)が巻戻しゼンマイ回動盤(8)は巻紙回動盤(10)との摺接離脱し介在駆動輪(12)に摺接し介在駆動輪(12)は巻紙回動盤(10)と巻紙芯管(2)が回動し、巻紙端片(3)を繰り出るペ-パホルダの巻紙端片繰出装置。」
イ 明細書(抜粋)
「【0038】
図1と図2と図3に示す元状態は巻紙回動盤10に装着した巻紙芯管2の巻紙端片3が紙切板47の紙切縁48から繰出し、ゼンマイ回動盤8の摺動曲弦面43左端縁は巻込開始突起45に当接し巻戻始終突起46は摺動曲弦面43の左右両端縁の中央位置に存る。又ゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11は介在駆動輪12の外周駆動縁11に接蝕し、介在駆動輪12は外周駆動縁11で巻紙回動盤10の外周駆動縁11に摺接、さらに摺動曲弦面43の曲周縁の左右両端縁はゼンマイ回動盤8中心から等距離だが中央になるほど遠隔距離になる。つまり、ゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11の摺動曲弦面43の左右端縁が巻込開始突起45及び巻戻始終突起46に当接するときは正円回動に位置し、摺動曲弦面43の中央位置が巻込開始突起45及び巻戻始終突起46に近接動作する程ゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11を押出し介在駆働輪12の外周駆動縁11に当接する。したがってゼンマイ回動盤8の右左4分1回動の際は摺動曲弦面43の巻戻始終突起46と巻込開始突起45との当接位置で巻紙回動盤10及び介在駆動輪12に離接摺動する。
【0039】
図4に示す巻紙端片3を引っ張り出し巻紙芯管2を手回動せしめれば巻紙回動盤10の外周駆動縁11がゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11に摺動作し(この際巻紙回動盤10は介在駆動輪12にも摺接し巻紙回動盤10は正時計まわり介在駆動輪12は反時計まわりに従動さらにゼンマイ回動盤8以外とも対向摺動するがゼンマイ回動盤8の反転動作のときは負荷はかからない)ゼンマイ回動盤8は四分1の周回でゼンマイばね37を反時計回りに巻上巻戻し反転所定位置の回動自在凹縁44にて巻紙回動盤10の外周駆動縁11と当接しゼンマイ回動盤8は一時停止し巻紙端片3の引き出し終了と共に巻紙回動盤10も回動停止すればゼンマイ回動盤8は反転しゼンマイばね37は巻戻動作する。ゼンマイ回動盤8の摺動曲弦面43の動作で反時計回りしながら巻込開始突起45でゼンマイ回動盤8を巻紙回動盤10の方向え押出し巻込始終突起46で介在駆動輪12と圧接を緩め、又ゼンマイ回動盤8の摺動曲弦面43と巻戻始終突起46の動作は主に介在駆動輪12に対し余力は巻紙回動盤10方向に往復摺動作し介在駆動輪12とは対行摺動する。
【0040】
図4及び図5に示す巻紙回動盤10は巻紙端片3の引っぱり動作でゼンマイ回動盤8のゼンマイばね37の巻上回動で回動自在凹縁44に当接しゼンマイ回動盤8は回動を一時停止して巻紙回動盤10は巻紙端片3を引き出し紙切板47の紙切縁48で切り離なせばゼンマイ回動盤8は回動自在凹縁44の巻紙回動盤10との当接解除でゼンマイ回動盤8のゼンマイばね37の巻戻しで介在駆動輪12に摺接して介在駆動輪12は反時計回りで巻紙回動盤10を時計回りにし巻紙端片3を繰り出し次回の所用にそなえる。
【0041】
図6と図7(図3元状態図)は図5においてゼンマイ回動盤8の摺動曲弦面43の中央位置が巻込開始突起45に当接して反時計回わりし巻紙回動盤10に摺接し、同時に摺動曲弦面43の右端縁が巻戻始終突起46に当接してゼンマイ回動盤8の介在駆動輪12との摺接を解除するが図6はゼンマイ回動盤8のゼンマイばね37の正時計回わりの迅速な巻戻しにより図4と図5の逆行程の動作で図7(図3)の元状態に復帰してゆく。」

(2)平成27年7月2日付け手続補正書
当該手続補正書による補正は、特許請求の範囲の全文、明細書の全文、及び図面の全図を補正するものであって、当該補正後の特許請求の範囲及び明細書には、以下のとおり記載されている。なお、図面の補正は、平成22年9月7日付け手続補正書(図面の削除)で削除した図9及び10を追加するとともに、軽微な補正であり、実質的には補正前のものと同じである。
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
巻紙ペ-パホルダ(1)の器械室(17)に装着した器械基盤(5)の所定位置に装置した回動連芯軸(7)の中心軸から上左傾斜方向所定位置にゼンマイ芯軸(9)、さらに回動連芯軸(7)とゼンマイ芯軸(9)の軸中心を結ぶ二等辺三角形頂点所定位置に介在芯軸(13)を突出形成し回動連芯軸(7)に巻紙回動連(6)をゼンマイ芯軸(9)にゼンマイ回動盤(8)を介在芯軸(13)には介在駆動輪(12)を装入着し、ゼンマイ芯軸(9)軸中心と対面する右補強板(14)の所定位置に紙切板軸受(15)を貫設し回動連芯軸(7)軸中心と対面する所定位置に押込連取付穴(16)を貫設、回動連芯軸(7)に巻紙回動連(6)を巻紙回動軸孔(23)で挿入して回動連芯軸(7)の留金溝(24)に留輪金(25)を差し込み装着、押込連取付穴(16)に巻紙押込連(27)の押込連軸受(26)を装入、ゼンマイ芯軸(9)にはゼンマイばね(37)の初回層に巻込固定筒(38)の交叉取込溝(39)を挟み込み軸穴でゼンマイ芯軸(9)に装入固着しゼンマイ回動盤(8)の右内径より輪郭体側円板(40)を装着し、ゼンマイ動作穴(41)にゼンマイばね(37)を包容し固定筒装入穴(42)で巻込固定筒(38)に装入し、輪郭体側円板(40)の交叉取込溝(39)をゼンマイばね(37)上層に挟み込み固着したうえ合体し装着したゼンマイ回動盤(8)及び輪郭体側円板(40)とゼンマイばね(37)を一周巻上げながらゼンマイ回動盤(8)の摺動曲弦面(43)の左端縁を巻込開始突起(45)に当接せしめ、摺動曲弦面(43)の中間位置を巻戻始終突起(46)に当接するように装着、紙切板(47)の紙切架設軸筒(49)に装入した架設芯軸(51)の左右両端芯軸に復元追従ばね(50)を装着し、さらに紙切板(47)の右端縁から突出する架設芯軸(51)の小バネを挿入し紙切板軸受(15)に挿入一旦押し込み左端縁から突出する架設芯軸(51)の外周縁にワッシヤ円板を挿着し巻込固定筒(38)の軸芯穴に装入し紙切板(47)右端縁と紙切板軸受(15)の間隙に蹄形留輪(52)を挿入着し、巻紙芯管(2)を巻紙回動連(6)に装着したしたうえ巻紙回動盤(10)は回動連芯軸(7)で回動しゼンマイ回動盤(8)と介在駆動輪(12)と摺動し介在駆動輪(12)は外周駆動縁(11)を巻紙回動盤(10)の外周駆動縁(11)には常時摺接しゼンマイ回動盤(8)の外周駆動縁(11)にはゼンマイ回動盤(8)の回動方向から連動摺接する介在芯軸(13)に装入着し巻紙端片(3)を繰出し巻紙芯管(2)と巻紙回動盤(10)を回動すればゼンマイ回動盤(8)のゼンマイばね(37)が巻上げられ巻紙端片(3)を紙切板(47)の紙切縁(48)で切り離せばゼンマイ回動盤(8)のゼンマイばね(37)が巻戻しゼンマイ回動盤(8)は巻紙回動盤(10)との摺接離脱し介在駆動輪(12)に摺接し介在駆動輪(12)は巻紙回動盤(10)と巻紙芯管(2)が回動し、巻紙端片(3)を繰り出るペ-パホルダの巻紙端片繰出装置。」
イ 明細書(抜粋)
「【0041】
図3及び図9に示す元状態は巻紙回動盤10に装着した巻紙芯管2の巻紙端片3が繰り出てゼンマイ回動盤8の摺動曲弦面44左端縁が巻込開始突起45に当接し巻戻始終突起46は摺動曲弦面44の左右両端縁の中間位置に存る、図示する案件器械配置はゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11を介在芯軸13の外周駆動縁11に圧接し、巻紙回動盤10の外周駆動縁11には接触する、これは摺動曲弦面44の曲周縁の左右両端縁はゼンマイ回動盤8中心軸から等距離だが中央になるほど遠隔距離になる。つまりゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11の摺動曲弦面44左右端縁が巻込開始突起45及び巻戻始終突起46に当接するときは正円回動に位置し、摺動曲弦面44中央位置が巻込開始突起45および巻戻始終突起46に近接動作するほどゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11を押出し介在駆動輪12の外周駆動縁11また巻紙回動盤10の外周駆動縁11に当接する。
【0042】
所用のときは前もって繰り出た巻紙端片3を手動で必要の長さに引き出し巻紙芯管2を複数回にわたり回動せしめるが直動する巻紙回動盤10の外周駆動縁11は摺接連動するゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11も周回動作する。ところがゼンマイ回動盤8は1/4周回でゼンマイばね38を反時計回りに巻上げして所定位置で反転し巻戻しをおこなう。図5はこの際の摺動曲弦面44の動作で反時計回りし巻込開始突起45でゼンマイ回動盤8を巻紙回動盤10方向え押出し巻込始終突起46で介在駆動輪12との圧接を緩める。
【0043】
図5及び図10に示すゼンマイ回動盤8のゼンマイばね38巻上巻戻し反転所定位置で巻紙端片3を引き出し巻紙芯管2を複数回動せしめなければならない。ゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11と巻紙回動盤10の外周駆動縁11の回動摺接停止箇所に形成した凹縁になる回動自在凹縁55で巻紙回動盤10の外周駆動縁11が当着しゼンマイ回動盤8の回動作を一時とどまったところで巻紙端片3を引っぱり出し紙切板47の紙切縁48で切り離なせばゼンマイ回動盤8は回動自在凹縁55の当接解除でゼンマイバネ38の時計回り巻戻しで介在駆動輪12に摺接連動し介在駆動輪12は反時計回りで巻紙回動盤10を時計回りにし直動する巻紙芯管2を回動し巻紙端片3を繰出しおき次回所用にそなえる。
【0044】
図6と図7(図3と同じ元状態図)は図5においてゼンマイ回動盤8の摺動曲弦面44の中央位置が巻込開始突起45に当接する反時計回わりして巻紙回動盤10に摺接し、同時に摺動曲弦面44の右端縁が巻戻始終突起46に当接してゼンマイ回動盤8の介在駆動輪12との摺接を解除するが図6はゼンマイ回動盤8のゼンマイバネ38の正時計回わりの迅速な巻戻しにより図4の逆行程の動作で図7(図3)の元状態に復帰してゆく。」

(3)平成27年7月5日付け手続補正書
「【補正対象項目名】特許請求の範囲(請求項1)
【補正方法】補正
【補正の内容】補正書参照。」
なお、当該手続補正書には、「補正書」などの添付書類はない。

第4 当審の判断
1 意見書及び上申書について
請求人は、当審による平成27年3月31日付け拒絶理由の通知に対して、同年5月28日、同年7月2日及び同年7月5日付けの意見書、並びに同年7月14日付けの上申書を提出しているが、それらの内容(すなわち、請求人の主張)は、上記第3の1で摘記したとおりであって、拒絶理由に対する意見(反論)または釈明とはいえない。
よって、請求人が提出した意見書及び上申書による主張は、平成27年3月31日付け拒絶理由通知書(上記第2を参照。)で示した拒絶の理由1を覆す根拠を示すものではない。

2 手続補正書について
(1)平成27年7月2日付け手続補正書について
平成27年7月2日付け手続補正書は、特許請求の範囲、明細書、及び図面を補正するものである。
当該補正後の請求項1にも、補正前と同様に、「巻紙端片(3)を繰出し巻紙芯管(2)と巻紙回動盤(10)を回動すればゼンマイ回動盤(8)のゼンマイばね(37)が巻上げられ巻紙端片(3)を紙切板(47)の紙切縁(48)で切り離せばゼンマイ回動盤(8)のゼンマイばね(37)が巻戻しゼンマイ回動盤(8)は巻紙回動盤(10)との摺接離脱し介在駆動輪(12)に摺接し介在駆動輪(12)は巻紙回動盤(10)と巻紙芯管(2)が回動し、巻紙端片(3)を繰り出るペ-パホルダの巻紙端片繰出装置。」との発明特定事項が記載されている。
そして、当該補正後の明細書においても、「所用のときは前もって繰り出た巻紙端片3を手動で必要の長さに引き出し巻紙芯管2を複数回にわたり回動せしめるが直動する巻紙回動盤10の外周駆動縁11は摺接連動するゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11も周回動作する。」(段落【0042】)、及び「巻紙端片3を引っぱり出し紙切板47の紙切縁48で切り離なせばゼンマイ回動盤8は回動自在凹縁55の当接解除でゼンマイバネ38の時計回り巻戻しで介在駆動輪12に摺接連動し介在駆動輪12は反時計回りで巻紙回動盤10を時計回りにし直動する巻紙芯管2を回動し巻紙端片3を繰出しおき次回所用にそなえる。」(段落【0043】)と記載されているように、補正後のものも「介在駆動輪12は、図3→図4→図5へ至る行程において、介在駆動輪12の外周駆動縁11は、ゼンマイ回動輪12の外周駆動縁11あるいは巻紙回動盤10の外周駆動縁11のいずれかに対し、従動あるいは滑ることになるのに対し、図5から図6を経て図7の元状態へ戻る行程では、ゼンマイ回動輪12及び巻紙回動盤10のいずれの外周駆動縁11にも従動することになる。」(上記第2の平成27年3月31日付け拒絶理由を参照。)といえる。
しかしながら、当該補正後の明細書及び図面を参酌しても、そのような介在駆動輪12の構造は記載されていない。
したがって、当該補正後の明細書及び図面においても、平成27年3月31日付け拒絶理由通知書で示した拒絶の理由1で指摘したように、ゼンマイ回動盤8の外周駆動縁11と巻紙回動盤10の外周駆動縁11と介在駆動輪12の外周駆動縁11は、同じ行程及び同じ摺接状態にもかかわらず、摩擦力の関係が相反しており、また、相反する摩擦力の関係を技術的にいかにして生じ得るのかが何ら記載されておらず、さらに、技術常識と矛盾している以上、当業者が発明を実施しようとした場合に、どのように実施するかが理解できない。
よって、当該補正により、平成27年3月31日付け拒絶理由通知書(上記第2を参照。)で示した拒絶の理由1が解消されているとはいえない。

(2)平成27年7月5日付け手続補正書について
平成27年7月5日付けの手続補正書は、具体的な補正内容が記載されていない。
よって、当該手続補正書による補正は、実質的なものでない。

3 まとめ
以上のとおりであるから、平成27年3月31日付け拒絶理由通知書(上記第2を参照。)の拒絶の理由1として示したように、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願の請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-28 
結審通知日 2015-09-08 
審決日 2015-09-25 
出願番号 特願2009-166138(P2009-166138)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 七字 ひろみ  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 小野 忠悦
門 良成
発明の名称 ペ-パホルダの巻紙端片繰出装置  

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