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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1307953
審判番号 不服2014-25305  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-10 
確定日 2015-11-27 
事件の表示 特願2012-233239「携帯情報機器、電子ブック及び情報記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月28日出願公開、特開2013- 58224〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年11月25日に出願した特願平10-350728号の一部を平成19年5月17日に新たな特許出願(特願2007-132000号)とし、さらにその一部を平成21年9月26日に新たな特許出願(特願2011-209363号)とし、さらにその一部を平成24年10月22日に新たな特許出願としたものであって、26年1月29日付けで拒絶の理由が通知され、平成26年4月7日付けで手続補正がなされたが、平成26年9月2日付けで拒絶査定がなされたものである。これを不服として、平成26年12月10日に本件審判請求がなされ、同時に手続補正がなされた。

第2 本願発明について
1.本願発明
本願の請求項1-60に係る発明は、平成26年12月10日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-60の記載により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものであると認める。

「ディスプレイとタッチパネルとカメラレンズとを備えた携帯情報機器であって、
前記ディスプレイに録画を開始するための第1のボタンが表示され、
前記第1のボタン上の前記タッチパネルにおける接触が検出されることにより、動画の撮影が開始され、前記第1のボタンから動画の撮影を中断するための第2のボタンに表示が切り替わり、
次に、前記第2のボタン上の前記タッチパネルにおける接触が検出されることにより、前記動画の撮影が中断されること、
を特徴とする携帯情報機器。」

2.刊行物1発明
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-77192号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0024】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0025】
まず、図1?10を用いて、本発明の第1実施例である位置センサ付携帯コンピュータについて説明する。
【0026】
図1に、位置センサ付携帯コンピュータ10の構成を示し、コンピュータ10の外観イメージを図2に示す。図1および図2において、コンピュータ10は、CPU(中央処理装置)11、メインメモリ12、デイスク13、デイスプレイ2、デイスプレイインターフェイス15、タブレット16、ペンインターフェイス17、カメラ5、映像処理装置18、マイク19、スピーカ20、音声処理装置21、位置センサ1、通信装置14を備え、各部がバス24を介して接続されている。」

「【0028】
以下、各部の具体内容について説明する。
【0029】
CPU11は各種のテキストやグラフィック情報を生成し、生成した情報をデイスプレイインターフェイス15を介してデイスプレイ2に描画するようになっている。デイスプレイ2の上には透明タブレット16が重ねて一体化されている。ペン3を用いてタブレット16上の画像を指定するときには、ペン3の位置がタブレット6によって検知され、ペン3の位置情報がCPU11に転送されるようになっている。同様に、ペン3に付随するボタン4の押し下げ、開放もタブレット16によって検知され、検知出力がCPU11に転送されるようになっている。さらに、ユーザはペン3を用いて、文字や図形情報をコンピュータ10に入力することができる。
【0030】
またコンピュータ10には、周囲の状況を静止画像や動画像として記録するためのカメラ5が装備されている。このカメラ5は折り曲げが自在なフレキシブルアームによってコンピュータ本体に取り付けられており、このアームを適当に曲げることにより、周囲の映像を自在に撮影できる。カメラ5で撮影された映像を処理する映像処理装置18は、CPU11からの指令に従ってカメラ5からの映像信号をアナログからデジタルに変換し、さらに、デジタル化された信号を圧縮し、適当なフォーマットの画像データとしてメインメモリ12に記録する。さらに、映像処理装置18は、CPU11からの指令に従って、メインメモリ12内に記憶された圧縮画像データを伸長し、このデータに従った画像をデイスプレイインターフェイス15を介してデイスプレイ2の画面上に表示するようになっている。」

「【0047】
アイコン40が選択されると、カメラプログラムが起動され、デイスプレイ2には、図4に示すような表示形態になる。このときデイスプレイ2の主要部には、静止画像または動画像入力ツール60が表示され、入力ツール60の中央部の領域79にはカメラ5により撮影された映像が表示される。即ち、この領域79には、カメラ5で撮影中の映像またはメモリ12に記憶されたデジタル画像データを再生した画像が表示される。領域79の下方の表示部77にはアイコン69が選択されたときに位置情報が表示され、表示部78には、アイコン68が選択されたときに、現在の日時が表示されるようになっている。そして領域79の映像がカメラ5が現在撮影中の映像である場合には、表示部77には現在の位置情報が表示される。
【0048】
ここで、アイコン61が選択されると、カメラ5のシャッタが作動し、カメラ5が撮影していた映像が静止画像としてメモリ12に記憶され、その映像が領域79に表示される。さらにアイコン61が選択されたときには、静止画像データとともに、そのときの日時と、位置センサ1によって測定された位置情報が静止画像データと対応付けてメモリ12に記録される。なお、アイコンまたはメニュー項目の選択はペン3の先を所望のアイコンまたはメニュー項目の上においてボタン4を開放することにより行なわれる。」

以上の記載から次のことがいえる。

刊行物1には、携帯コンピュータ10(【0025】)が記載され、該携帯コンピュータ10は、ディスプレイ2と、ディスプレイ2の上に重ねて一体化された透明タブレット16と、カメラ5とを備えている(【0026】、【0029】)。

刊行物1に記載された携帯コンピュータ10では、ディスプレイ2に開始/停止と表示されたアイコン62(開始/停止アイコン62)が表示される(【0049】、【図4】)。

刊行物1に記載された携帯コンピュータ10では、ペンの先をアイコンの上におくことによりアイコン62を選択すると、動画像データの記録が開始され、この後、再度アイコン62を選択すると、動画像データの記録が終了する(【0048】、【0049】)。

以上により、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていると認められる。

[刊行物1発明]
ディスプレイ2と、ディスプレイ2の上に重ねて一体化された透明タブレット16と、カメラ5とを備えた携帯コンピュータ10であって、
前記ディスプレイ2に開始/停止アイコン62が表示され、
ペンの先をアイコンの上におくことによりアイコン62を選択すると、動画像データの記録が開始され、
この後、再度アイコン62を選択すると、動画像データの記録が終了する、
携帯コンピュータ。

3.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

刊行物1発明の「ディスプレイ2の上に重ねて一体化された透明タブレット16」は、ディスプレイに表示されたアイコンの上にペンの先をおくことによりアイコンが選択し得るものであるから、本願発明の「タッチパネル」に相当する。
刊行物1発明の「カメラ5」は、当然にレンズを備えているから、本願発明の「カメラレンズ」に相当する。
刊行物1発明の「携帯コンピュータ10」は「携帯情報機器」といえる。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「ディスプレイとタッチパネルとカメラレンズとを備えた携帯情報機器」である点で一致する。

刊行物1発明のおける、ディスプレイに表示される「開始/停止アイコン62」は、選択すると動画像データの記録が開始されるものであるから、本願発明の「録画を開始するための第1のボタン」に相当する。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「前記ディスプレイに録画を開始するための第1のボタンが表示され」るものである点で一致する。

刊行物1発明では、「ペンの先をアイコンの上におくことによりアイコン62を選択すると、動画像データの記録が開始され」る。
ペン先をアイコンの上におくことによりアイコン62が選択されるということは、アイコン62上の透明タブレット16におけるペン先の接触が検出されるということに他ならない(【0029】も参照されたい)。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「前記第1のボタン上の前記タッチパネルにおける接触が検出されることにより、動画の撮影が開始され」るものである点で一致する。

刊行物1発明では、「この後、再度アイコン62を選択すると、動画像データの記録が終了する」。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「次に、前記タッチパネルにおける接触が検出されることにより、前記動画の撮影が中断される」ものである点では共通している。

以上により、本願発明と刊行物1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
ディスプレイとタッチパネルとカメラレンズとを備えた携帯情報機器であって、
前記ディスプレイに録画を開始するための第1のボタンが表示され、
前記第1のボタン上の前記タッチパネルにおける接触が検出されることにより、動画の撮影が開始され、
次に、前記タッチパネルにおける接触が検出されることにより、前記動画の撮影が中断されること、
を特徴とする携帯情報機器。

[相違点]
本願発明は、「前記第1のボタン上の前記タッチパネルにおける接触が検出されることにより、動画の撮影が開始され、前記第1のボタンから動画の撮影を中断するための第2のボタンに表示が切り替わり、次に、前記第2のボタン上の前記タッチパネルにおける接触が検出されることにより、前記動画の撮影が中断される」ものであるのに対し、刊行物1発明は、「前記第1のボタン上の前記タッチパネルにおける接触が検出されることにより、動画の撮影が開始され」、「次に、前記タッチパネルにおける接触が検出されることにより、前記動画の撮影が中断される」ものとはいえるものの、撮影が開始されたときに「前記第1のボタンから動画の撮影を中断するための第2のボタンに表示が切り替わ」るものではなく、「次に、前記第2のボタン上の前記タッチパネルにおける接触が検出されることにより、前記動画の撮影が中断される」ものではない点。

4.当審の判断
相違点について検討する。

刊行物1発明は、動画の撮影を行うものであり、「開始/停止アイコン62」を、一度、選択すると動画の撮影が開始され、再度、選択すると動画の撮影が中止されるものである。
そのような動画の撮影を行う情報機器においては、機器が、現在、撮影中であるか否かの状態がすぐに分かるように、撮影が開始された後には撮影中を示す表示を、撮影が停止された後には撮影中でないことを示す表示をすることは普通に行われることであって、動画の撮影を行う情報機器である刊行物1発明においてもそのような表示を行うことは当業者が想定し得ることである。
一方、表示されたアイコンのタッチ操作により機器の状態を選択するものにおいて、現在の機器の状態がすぐ分かるように、現在の機器の状態に応じてアイコンの表示を切り替えることは周知の技術(これを示す文献については下記の(*)を参照されたい)である。
そして、「開始/停止アイコン62」により機器の状態(撮影中か否か)を切り替える刊行物1発明において、機器が、現在、撮影中であるか否かの状態がすぐに分かるようにその旨の表示を行おうとする場合に、上記周知技術が有用かつ採用可能であることは当業者に明らかである。
したがって、刊行物1発明に上記周知技術を適用して、アイコンの表示を、撮影が開始された後には撮影中を示す表示、撮影が停止された後には撮影中でないことを示す表示とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、このようにすることは、刊行物1発明において、「前記第1のボタン上の前記タッチパネルにおける接触が検出されることにより、動画の撮影が開始され、前記第1のボタンから動画の撮影を中断するための第2のボタンに表示が切り替わり、次に、前記第2のボタン上の前記タッチパネルにおける接触が検出されることにより、前記動画の撮影が中断される」ようにすることに他ならない。

よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。また、容易に想到し得た構成が奏する効果も当業者が予測し得るものである。

(*)表示されたアイコンのタッチ操作により機器の状態を選択するものにおいて、現在の機器の状態がすぐ分かるように、現在の機器の状態に応じてアイコンの表示を切り替えることが周知の技術であることを示す文献例

・特開平10-224729号公報
電子カメラにおいて、「モニタの表示例を示す図」として【図5】(a)には、「録画が行われていない状態」の図が、【図5】(b)には、「録画が開始された時点の状態」の図が記載されている。
【図5】(a)の「録画が行われていない状態」では、録画ボタンのアイコンは白で、【図5】(b)の「録画が開始された時点の状態」では、録画ボタンのアイコンは黒の斜線で表示されている。

・特開平8-112258号公報
【0030】-【0031】には、【図3】とともに、タッチパネルに表示されたスタート/ストップ選択スイッチ51に関して次のように記載されている。
「【0030】
図3に示す初期設定画面39のうち、スタート/ストップ連動機能設定ブロック45には、スタート/ストップ選択スイッチ51及び機能選択スイッチ52が設定されている。このスタート/ストップ選択スイッチ51は、スタート時の機能設定かストップ時の機能設定かを選択するスイッチである。現在(図示例)の画面は、スタート時の機能設定が選択されている。機能選択スイッチ52a?52eは、各種機能を設定するためのスイッチであり、スタート/ストップ選択スイッチ51がスタート側になっているので、スタート時の各機能を選択設定することになる。
【0031】
一方、ストップ時の機能はスタート/ストップ選択スイッチ51を再度押し、スイッチ上の表示をストップ側にしてから同様に機能を選択する。」

・Catherine Plaisant, Daniel Wallace,TOUCHSCREEN TOGGLE DESIGN,CHI '92 Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems,米国,Association for Computing Machinery Press,1992年5月7日,1992(CHI '92),Pages.667-668,(ISBN:0-89791-513-5)
第668頁左欄8?32行には、Fig 2とともに、次のように記載されている。
「・One-button toggle(Pushbutton): The main problem with pushbuttons is that their identification as a toggle (and not a simple indicator) might not be obvious; users may not realize that they can change the state by touching it. Once recognized as a toggle the pushbutton has the advantage of being graphically simple and unclutterd and its size can be reduced if necessary.」

・Catherine Plaisant, Daniel Wallace,Touchscreen toggle switches: push or slide? Design issues and usability study,Tech Report HCIL (HCIL-90-08,CS-TR-2557,CAR-TR-521),米国,University of Maryland, Human-Computer Interaction,1990年11月30日,HCIL-90-08,Pages.1-10
第4頁には、図面とともに、次のように記載されている。
「One-button toggle(Pushbutton): The state is shown by label and color only. When the device is ON the pushbutton shows a label ON in black letters on a bright buttercup yellow background (as if lighted). When users touch the buttern the background color darkens and the state changes to OFF when the finger is released. The OFF label is in gray letters on dark gray background. When the device is switched to OFF a low pich click is prodused(respectiveely a high pitch click when turned ON).
The main problem with pushbuttons is that their identification as a toggle (and not a simple indicator) might not be obvious for all users: They may not realize that they can change the state by touching it. Once recognized as a toggle the pushbutton has the advantage of being graphically simple and unclutterd and its size can be reduced if necessary.」

第3 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-16 
結審通知日 2015-09-30 
審決日 2015-10-14 
出願番号 特願2012-233239(P2012-233239)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 猪瀬 隆広  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 千葉 輝久
白石 圭吾
発明の名称 携帯情報機器、電子ブック及び情報記憶媒体  
代理人 布施 行夫  
代理人 大渕 美千栄  

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