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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1308215
審判番号 不服2014-10545  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-04 
確定日 2015-12-02 
事件の表示 特願2012- 61956「小型カタジオプトリック型対物系を用いた検査システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月 5日出願公開、特開2012-128453〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2004年7月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年7月7日、米国)を国際出願日とする特願2006-518859号の一部を平成24年3月19日に新たな特許出願としたものであって、平成26年1月6日に手続補正がなされ、同年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成26年6月4日になされた手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成26年6月4日になされた手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成26年6月4日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、本件補正前の特許請求の範囲に、
「 【請求項1】
285nmから320nmの波長域にて照明光エネルギを発するアークランプを有する照明サブシステムと、
前記照明サブシステムからの照明光エネルギを受け取り標本に向かわせるよう構成及び方向設定された結像サブシステムと、
を備え、
結像サブシステムが、100mm未満の直径を有し、すべてが単一の軸に沿って配置された複数個の素子を有し、
結像サブシステムが、照明システムから受け取る光エネルギに対して、NA値が0.90において0.4mmの視野サイズを提供するように構成された、標本検査システム。
【請求項2】
上記複数個の素子が配列マンジャンミラーを含み、前記配列マンジャンミラーは少なくとも一つの反射コーティングされた表面を有するマンジャンミラーを備える請求項1記載のシステム。
【請求項3】
上記複数個の素子が標本からの反射光エネルギを集めるカタジオプトリック型集光器を含む請求項1記載のシステム。
【請求項4】
結像サブシステム及び照明サブシステムが、明視野、環状暗視野、方向性暗視野、全天、空中結像、共焦点及び蛍光の各検査モードのうち少なくとも1個により前記標本の検査をサポートする請求項1記載のシステム。
【請求項5】
結像サブシステムが可変焦点系を使用する請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記結像サブシステムは結像レンズを用いて倍率を上げる請求項1記載のシステム。
【請求項7】
標本からの反射光エネルギを表すデータを分析し標本上の各欠陥位置を随時記録するデータ分析サブシステムを備える請求項1記載のシステム。」とあったものを、

「 【請求項1】
285nm以上320nm以下の波長域にて照明光エネルギを発するアークランプを有する照明サブシステムと、
前記照明サブシステムからの照明光エネルギを受け取り標本に向かわせるよう構成及び方向設定された結像サブシステムと、
を備え、
前記結像サブシステムは、さらに、
前記アークランプからの光を受けて、集光された光線を生じさせる少なくとも1つの集光レンズを含む集光レンズ群と、
前記集光レンズ群から前記集光された光線を受けて中間の光線を生じさせる視野レンズと、
前記視野レンズから前記中間の光線を受けて前記標本に光線を方向付ける配列マンジャンミラーと、を備え、
前記配列マンジャンミラーは、曲面を有し、前レンズ面と中央部を除いて反射被覆で覆われた後反射面とを組み合わせた凹球面反射レンズ/ミラー素子と、前記凹球面反射レンズ/ミラー素子と比較して曲率が小さい曲面を有し、前レンズ面と中央部を除いて反射被覆で覆われた後反射面とを組み合わせた平面レンズ/ミラー素子と、を備え、
結像サブシステムは、単一の軸に沿って配置され、100mm未満の直径を有し、
結像サブシステムが、照明システムから受け取る光エネルギに対して、NA値が0.90において0.4mmの視野サイズを提供するように構成された、標本検査システム。」とする補正を含むものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(2)本件補正後の特許請求の範囲に係る上記(1)の補正は、以下アないしエのとおりの補正である。
ア 本件補正前の請求項2ないし7を削除する補正。
イ 本件補正前の請求項1の「285nmから320nmの波長域」を「285nm以上320nm以下の波長域」と明確にする補正。
ウ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「結像サブシステム」について「前記アークランプからの光を受けて、集光された光線を生じさせる少なくとも1つの集光レンズを含む集光レンズ群と、前記集光レンズ群から前記集光された光線を受けて中間の光線を生じさせる視野レンズと、前記視野レンズから前記中間の光線を受けて前記標本に光線を方向付ける配列マンジャンミラーと、を備え、前記配列マンジャンミラーは、曲面を有し、前レンズ面と中央部を除いて反射被覆で覆われた後反射面とを組み合わせた凹球面反射レンズ/ミラー素子と、前記凹球面反射レンズ/ミラー素子と比較して曲率が小さい曲面を有し、前レンズ面と中央部を除いて反射被覆で覆われた後反射面とを組み合わせた平面レンズ/ミラー素子と、を備え」と限定する補正。
エ 本件補正前の請求項1の「結像サブシステム」が、「100mm未満の直径を有し、すべてが単一の軸に沿って配置された複数個の素子を有し」ているものから、「単一の軸に沿って配置され、100mm未満の直径を有し」ているものに明確にする補正。

2 本件補正の目的
本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、上記1(2)アで述べたように、本件補正前の請求項2ないし7を削除し、上記1(2)イで述べたように、本件補正前の請求項1において記載されていた「285nmから320nmの波長域」を出願当初明細書【0037】、【0068】及び【0077】の記載に基づいて「285nm以上320nm以下の波長域」と明確にし、上記1(2)ウで述べたように、本件補正前の請求項1において記載されていた「結像サブシステム」について、出願当初明細書【0044】、【0070】ないし【0072】、図16の記載に基づいて「前記アークランプからの光を受けて、集光された光線を生じさせる少なくとも1つの集光レンズを含む集光レンズ群と、前記集光レンズ群から前記集光された光線を受けて中間の光線を生じさせる視野レンズと、前記視野レンズから前記中間の光線を受けて前記標本に光線を方向付ける配列マンジャンミラーと、を備え、前記配列マンジャンミラーは、曲面を有し、前レンズ面と中央部を除いて反射被覆で覆われた後反射面とを組み合わせた凹球面反射レンズ/ミラー素子と、前記凹球面反射レンズ/ミラー素子と比較して曲率が小さい曲面を有し、前レンズ面と中央部を除いて反射被覆で覆われた後反射面とを組み合わせた平面レンズ/ミラー素子と、を備え」と限定し、上記1(2)エで述べたように、本件補正前の請求項1の「結像サブシステム」が、「100mm未満の直径を有し、すべてが単一の軸に沿って配置された複数個の素子を有し」ているものから、出願当初の【請求項1】の記載に基づいて、「単一の軸に沿って配置され、100mm未満の直径を有し」ているものとして明確にするものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たし、また、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平10-177139号公報(以下「引用例」という。)」には、次の事項が図とともに記載されている。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、広帯域スペクトルの紫外線(UV)画像を処理する光学システムに関わる。特に、広帯域スペクトルの紫外線画像を処理することを可能にする反射及び屈折の両特性を備えた光学レンズを用いた新しい画像光学システムに関わる。即ち、1つ或いは2つの要素レンズを組み合わせ、更に1つ或いは2つの要素反射面(鏡面)を加えて組み合わせ、新しい画像光学システムを構成している。本発明は、画像のゆがみ、ひずみ並びにそれ等と関連する色収差の矯正に関る諸問題について光学システムの設計的観点から解決を図ることを目的とする。」

(2)「【0007】
【課題を解決するための手段】この発明によれば、色収差の補正に加えて、優れた紫外線画像を観察する顕微鏡用の対物レンズ、或いはリソグラフを実現する為の、即ち超LSI向けの画像投影装置の為の光学系を提供することが可能になる。最終画像の質を上げる為に開口数を大きくとり、一画面の視野を観察試料上で少なくとも一辺0.5mm程度を可能にしている。 この光学系は、好ましいことにテレセントリック(平行光線機能を持つ)である。
【0008】色収差補正がされるフィールドレンズを複合レンズで構成して成る反射及び屈折の両特性を具備する画像システムを構築することに依って、本発明の目的は達せられる。ここで言及した複合レンズは、2種或いはそれ以上の異なった屈折特性を持つ要素素材を組合わせる。一例として、熔融石英と弗化ガラスを組み合わせる。このフィールドレンズは、複合レンズ故ダブレット(2つで一組み)や、出来ればトリプレット(3つで一組み)が考えられる。これら各レンズ単体どうしを互いにセメンとで接着して一体にして複合化することが出来る。場合に依ってはお互いに少々の間隔を空ける方が良い場合もある。熔融石英と弗化ガラスは、その遠紫外での分散特性が互いに大きく異なるものでは無く従って各々のレンズ単体の倍率を大きく採ることが可能である。上記の如き収差補正がされているダブレット或いは、トリプレットのフィールドレンズは、長軸方向のみならず、横軸方向についてもその色収差の完全補正が広帯域にわたって可能である。繰返すが、収差補正の為のフィールドレンズはダブレット或いは、トリプレット構成の複合レンズであって単体のレンズであってはならない。
【0009】本発明による光学系は、少なくとも紫外線帯域0.20から0.29ミクロンの波長域で動作し、出来るなら、0.20から0.40ミクロンを越える範囲で動作するのが望ましいと言う観点に基づく。その構成は、焦点形成の為のレンズがあって、これは上と同じく単数でなく複数で構成する複合レンズであるが、但し全てなるべく同一素材である様に配備する。そしてこの表面は曲面加工を施して固有の屈折特性をもたせ、その設置位置を調整して、中間像を形成するように選定する。当然、中間像は高次の補正が施される結果を生ずる。従って、このシステムは、0.193ミクロンの波長帯域に於て機能することが可能である。更に本システムは、上述のフィールドレンズ群を保有する。このフィールドレンズ群は中間像の近傍に設置して、全ての色収差、長軸に関る高次補正と横軸の色収差の補正を実行する。中間像が形成される平面の位置は、フィールドレンズ群の内部、或いは外部でも構わなく、要は最適化を図ることが重要である。反射と屈折の両特性を持つカタディオプトリックレンズ群は、球面凹型反射体を保有する。これは鏡を用いても良いがレンズに反射膜を被覆しても良い。他に平坦或いはそれにに近い「ほぼ平坦形状の反射体」を、レンズに反射膜を被覆して形成し、最終画像面の近傍に設置する。上で述べた2つの反射体は、共に開口部(反射体等の障害物は無く光が透過する)をその中心に形成して、光線が中間像と凹面反射体を結んで通過し、平坦(「ほぼ平坦」)反射体で反射し、凹面反射体に入射して反射し、次は途中の補助レンズを通って平坦反射体を通過する。
【0010】このシステムでは、その開口数が少なくとも0.7となり、更なる特長は大きな視野画面、試料上で一辺0.5mmが得られることである。且つ広帯域に及ぶ好ましいスペクトル特性を実現し、近紫外から遠紫外線迄、広く平坦な特性を保持する。このシステムは、複数の光学系の組合わせで有効に動作する。例を挙げれば、明視野照明光学系、指向性並びに非指向性暗視野光学系、蛍光画像の処理装置、ドーム状散乱光処理系及びコンフォーカルと称する焦点共有型の顕微鏡等々である。これ等の紫外光画像系は、良好な分解能を提供するのみならず、物質の定性分析、即ち物質の同定に有効である。その理由は、紫外での反射率や吸収、散乱特性(波長のマイナス4乗に比例する)、屈折高調波、更に蛍光発光特性が物質の特性に依る変動等々、物質依存性が強いからに他ならない。広帯域紫外光画像系は、光源に紫外線ランプを導入して構成する。当然、この紫外線光源は非可干渉光を提供するので、通常の非干渉画像処理を実施することが出来る。一方、勿論であるが他の特殊技術に応用することも可能である。例えば、ニッポーディスクをこの紫外線スペクトルと組合わせて、コンフォーカル、即ち焦点共有型の顕微鏡等々を構築することが出来る。紫外並びに遠紫外広帯域レンズの応用範囲は広く存在する。一例はパターンが転写されてなるウェーハ並びにマスク、レチクルを外観検査観察する応用、物資を一部被覆しその上で切断する応用、集積回路のリソグラフに使用する応用、生物学的顕微鏡に使う応用、金属工学顕微鏡への応用、スペクトル分析への応用等々である。」

(3)「【0011】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施形態を示しており、カタディオプトリック(反射と屈折の両特性を有する)を共に具備して成る画像システムであって、特に広帯域遠紫外線に於ける応用を意図している。先ず、フォーカス(焦点形成)レンズ群11にて構成され、中間像13を形成する。そして、フィールドレンズ群15を中間像13の近くに設置して、歪みの為に発生する色収差の補正を実行する。更に、反射と屈折の両特性を共に具備して成る画像光学要素群17があって中間像13からの光線を通過せしめ最終画像19が形成される様にする。この画像システムは以下に述べる点で最適化されている。その詳細を述べると、単色光に見られるSeidel氏の光学的歪み、長軸並びに横軸方向の光学的歪みと収差、更に単色光の光学的歪み等々が全て重なって原因となる色収差の全てを補正且つ修正することが出来る。この系が機能するスペクトル範囲は、遠紫外域にわたって大変広く、少なくとも0.20ミクロンから0.29ミクロンを包含する。但し、場合によってはもっと広範囲にわたって機能し、そのスペクトル域は0.20ミクロンから0.40ミクロンを包含する。従って、上記何れの場合でも、KrF エキシマレーザー光線0.248ミクロンと0.254ミクロンの水銀アーク放電管の光をその範囲内に含んでいる。上記の広いスペクトル帯域は、0.365ミクロンの水銀アーク放電管からの光線(i線と呼ばれる)を含んでおり、0.351ミクロンのXeF エキシマレーザー光線、並びに0.325ミクロンのHe-Cd レーザー光をも包含している。上記の他に広範囲のレーザー光源やアーク放電光源が、この範囲に存在して実用化されていることを銘記する。勿論本システムは、色収差補正装置として有効であり、上記以外の紫外域でもその画像処理能力を提供することが出来る。その一例を述べれば、0.19から0.40ミクロンのバンドが考えられるので0.193ミクロンのArF エキシマレーザー光に依る画像を、本発明の方法で画像処理することが出来る。勿論、狭帯域光にも応用出来ることは言う迄もない。本発明に依る反射と屈折の両特性を共に具備して成る画像システムは、種々の紫外線域の画像処理装置に応用可能である。二、三例を示すと、紫外線顕微鏡用対物レンズ、ウェーハ外観検査装置に於ける表面散乱光に対する其の集光器、或いは集積回路製造に使う紫外線フォトリソグラフ工程に於ける紫外線マスクパターン投影の為の光学系等々がある。
【0012】図1中の焦点設定レンズ群11は、各21から27迄の7つのレンズ単体が構成する。その内21と22の2つのレンズは、他の23から27迄の5つのレンズとは、相当の距離を置いて設置する。この焦点レンズ群でレンズ21と22の対を、わざわざ残りの5つのレンズ群23から27迄(これ等5つが、主になって焦点設定サブグループを構成している)と離間して設置する状況をここに特記する。その離間距離は、23から27迄の5つの全レンズの厚さ総計の半分程度に設定する。例えば、要素レンズ群23から27は、空間距離60mmに分布して設置させる。そして、要素レンズ22は、要素レンズ23からの距離30乃至60mmの点に設置する。上記レンズの実際の設定位置は、全体的要素を勘案した設計値でもって決定する。さて、レンズ21と22は、対でもって第零次の色収差補正と単色光的な画像歪の補正に有効である。これでもって、コマ収差と非点収差が原因で発生する色収差が補正出来る。迎角(field angle) に依ってもたらされる、この対になった2つのレンズ上の光軸のズレは、これ等レンズを相対的に遠くに設置する時に最大値になる。ズレは最大になるが、それでもって、非点収差に依る色収差の補正を実行する上で最大の効果が出る。図1に於て、次にこの焦点レンズ群の内の5つのレンズ23から27迄は、焦点形成の為の主たる(サブグループ)レンズ群を構成し、其の内訳は、1つの厚い凹凸両面を持った皿状の(全体として負、即ち凹レンズとして機能する)レンズ23と、それに対向して強い曲率で凹凸両面を有する皿状の(全体として負、即ち凹レンズ機能の)レンズ24、強い曲率の両面が凸状のレンズ25、強い曲率で凹凸両面を有する皿状の(全体として正、即ち凸レンズ機能の)レンズ26、それに対して逆を向き、強い曲率で凹凸両面を有する皿状の(全体として弱い正、或いは弱い負、即ち弱い凸、或いは弱い凹レンズ機能の)レンズ27でもって構成する。勿論、上記レンズ23から27の細かな内訳の内容を変えても良い。フォーカス(サブグループレンズ)群は中間像を結像する。当然であるが、レンズ面の曲率を選択して、単色光に於ける歪を最小にするのが良い。更に、対になっている21と22の選定に於て、歪が光源の色、即ち波長依存性が最小に成るように設計するのが良い。
【0013】フィールドレンズ群15は、図2に示した。これは通常、色収差を補正したトリプレット(三つ組み)でもって構築する。勿論、2つで構成するダブレット(対)であっても良い。素材は、熔融石英及びCaF_(2)ガラスを使う。他に遠紫外で透明な屈折体は、MgF_(2)、SrF_(2)、LaF_(3)それからLiF を成分とするガラス或いは、これ等 の混合物が使用出来よう。しかし、注意すべきは、これ等の一部の素材は完全に非晶体でないと複屈折性を有することである。完全に非晶体でないということは、ミクロに見て結晶性を有することを意味する。遠紫外を透過する2つ材料である熔融石英とCaF2ガラスに於て、光分散に着目すると、遠紫外域で両者の分散特性はそれ程変わらないことが解る。一方、フィールドレンズ群15の各要素はそれぞれ大きな硬度を有する。三つ組みレンズ群15の内容は、例えば皿状の石英凹(負)レンズ31、両凸面(正)CaF_(2)レンズ33、及び熔融石英製で両凹面(負)レンズ35で構成し、全てをセメントで接着する。この組合わせでの最適設計を実施すると、中間像13を三つ組みレンズ群15の内部に結像することが出来る。一方に於て、図3で見られる様に、色収差を補正するフィールドレンズ群の構成を次の様にすることが出来る。その組合わせは、2つの熔融石英に依る皿状凹レンズ51と53を少々(約1mm程)の距離を置いて対面させて設置し、続けて両凸面(正)CaF_(2)レンズ55を、2番目の両凸面(正)CaF_(2)レンズ53の近傍に隣接して置く。上記の第2の組合わせでの最適設計を実施すると、中間像13を三つ組みレンズ群15の外部であって、CaF_(2)レンズを越えて、その向う側に結像させることが出来る。これ等の実施形態に於てどちらの場合も、フィールドレンズ群15の設計に関して、各レンズの表面曲率と設置位置を調整して残っている高次(第2、第3次)の長軸並びに横軸方向の色収差を補正することが可能である。第1次色収差の補正は主としてレンズ自体で実行することが出来て、実際に上の例では、反射と屈折の両特性を共に具備して成るレンズグループ17と、フォーカスレンズ群11が、その作用を有する。さて、フィールドレンズ群15に於て2つ或いはそれ以上の屈折特性を有する素材を使うことを考えよう。その実例は、熔融石英と弗化カルシューム(CaF_(2))ガラスがあるが、単一素材を用いたフィールドレンズ群が長軸方向の色収差を補正する事実は、公知例で知られているが、本発明の場合は、更に加えて横軸方向の高次色収差をも完全に補正することを得る。
【0014】図2、図3に見る様に、中間像、即ち中間焦点はフィールドレンズ群15の内側にも外側にも設定することが可能である。但し、もし中間像がフィールドレンズ群15の内側に設定されれば、収差及び画像の歪みはもっとも効果的に修正されることを見出した。一方に於ては、中間像13はフィールドレンズ群15の外側に設定した方が好ましい場合がある。それは光出力が極度に大きい場合であって、その時の危険は、強い熱が発生してフィールドレンズ群の1つの或いは複数のレンズのガラス材を傷めてしまうことがあり得る。更に、レンズのガラス材の不均一性に由来して画像の微小な擾乱が発生することは、屡々見られる。しかし、フィールドレンズ群15と中間像13を空間的に離せば、この問題はより少なくなる。
【0015】図1の反射と屈折の両特性を共に具備して成る画像システムに於て、その反射屈折両性レンズ群17を構成するのは、第1の光学要素と第2の光学要素である。第1の光学要素は、熔融石英製皿状レンズ39にて構築し、この裏側の凹面は反射特性を持たせる目的で塗布物質41を塗る。次に、第2の光学要素は、第1の石英製レンズ43にて構築し、この裏側の凹面は反射特性を持たせる目的で塗布物質45を塗る。(反射屈折両性レンズ群17の2つのレンズ39と43は、その前面が互いに向き合う様にセットする。)反射性表面塗布材41と45は、アルミニュームが代表的に使える。そして酸化を防ぐ為に、弗化マグネシュームMgF_(2)をその上に塗布して被覆する。アルミニュームは、遠紫外から近紫外にわたって、少なくとも92%近くの高い反射率を有し、その均一性も高い。反射性表面塗布材として、可視光に於て使用出来る他の素材も存在するが、その波長依存性が大き過ぎて使用には耐えない。或る場合は、可視光で使えても遠紫外では不透明であって使えず、更に悪い素材では、光の吸収体になってしまう場合がある。例えば銀の場合は0.32ミクロンの波長では、その反射率がたかだか4%に迄減少する。唯、アルミニュームに代わるべき素材は60%という幾分劣る反射率ではあるが、モリブデン、タングステン、それにクロームがある。光出力が相当程度に高い場合、例えばレーザー切削機への応用では、これ等は有効であろう。特殊な塗布材には、長波長通過型フィルター向きのもの、短波長通過型フィルター向きのもの、更にバンドパス向きのもの、入射角度でその色が変化して見える2色性反射材、一部波長でのみ透過性、或いは反射性のもの、蛍光性塗料等々があって、応用に依って使い分けることが出来る。
【0016】第1の光学要素である皿状レンズ39は、その中央に小孔37を形成しそこを光軸が通過する様にする。レンズ表面上の反射性塗料41は、当然ながら中央の小孔37で終端するので、この小孔は中央の開口部として作用し、光の通過を可能にして、レンズ39も反射膜41もこれを遮蔽することはない。小孔37が形成する光学的開口部は、中間像13の近傍に存在する様に設計して光エネルギーの損失を最小にする。色収差補正の為のフィールドレンズ群15は、小孔37の中か近傍に設置する。第2レンズ43には通常小孔を設けない。但し、表面反射膜45には開口部、即ち窓の部分47を設けて、その部分は反射膜を塗布しない、即ちここは膜の欠損部になる。この部分が、窓47の中心に形成されて、別の光学的開口部となる。反射膜41を有するレンズ39に於ける光学的開口は、必ずしもそのレンズの小孔37に依って定義する必要は無くて、反射膜41の欠損部にて定義するべきと考える。この場合も、レンズ43と塗布膜45の時と同様に考えれば良い。この場合、光線はもう1度だけ、レンズ39の屈折性表面を通過することになる。
【0017】塗布膜を有する鏡45は、平坦か或いは、緩やかなカーブ面が好ましい。緩やかなカーブ面であれば、この反射要素としての鏡の中心点の決定に於て若干の誤差が許容される。一方、平らな鏡であれば一切そのような誤差許容は無い。その為に、平らな鏡45では組立て時の正確な位置決めの精度が、そうでない時と較べてより厳しくなる。以下に更に詳しくのべる。もし塗布鏡膜45が緩やかなカーブの凹面であれば、この鏡膜45が、反射屈折両特性を備えたこの画像システムにて観察下にあるウェーハの表面、或いは他の観察物体と接触する事例は稀になる。従って、レンズ43の裏面の鏡膜45及び観察物体の両方の接触に依る損傷を防ぐことが出来る。
【0018】中間像からの光線は、第1レンズ39中の光学的開口37を経由し、更に第2レンズ43本体を通過するが、此処で平坦な或いは平坦に近いレンズ43の後部に設ける反射膜45が形成する鏡の効果で反射が起きるように設定する。次に光線は、再び第1レンズ39を通って後、鏡面41にて反射して逆進し、第1レンズ39本体を通過する。最後に、光線は強い集光性を帯び、第2レンズ43本体内を3度目の通過をする。第1及び第2レンズの曲面とその位置は、フォーカスレンズ群11との関係で長軸並びに横軸方向に於ける第1次色収差補正が達成される様に選定すると好都合である。」

(4)「【0020】広帯域の紫外線光学系に於ける最適設計の2例を次頁と次々頁に示した。その1つは図2のフィールドレンズ群であり、他の例は、図3のフィールドレンズ群である。これ等について、次に述べる。以下のレンズ表面に関る設計データは、0.200、0.220、0.245、0.290及び0.400ミクロンの波長の屈折率の値(空気に対する相対値)に基づいている。結果として得た設計例では、開口数0.9、視野画面の対角線長を0.5mmとした。設計値を変動させて種々の設計的研究を実施した。その結果解ったことは、開口数をやや小さめに、例えば0.7にすることも出来、この時は系の長さ、特に対物レンズと観察試料間の距離が大きくなり、この条件下でレンズ表面の曲率を最適化することが出来る。このような設計例は、レチクル検査に適している。何故なら、レチクル検査では、対物レンズとレチクル間の距離を大きくとることが好ましいからである。レンズ表面の曲率の設計値を変動させることが、同様に出来る。この場合で長軸及び横軸の収差が補正されている狭帯域光と言う条件で、0.193ミクロンのArF エキシマーレーザー光源を含む様に、0.19ミクロンから0.400ミクロンの、或いは更に狭い波長域に於て、この光学系を最適化することが出来る。実施形態1と実施形態2は以下に示した。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】図1の画像処理システムを発展させて、顕微鏡の対物レンズ系に筒型形状を使う設計の例を図4に示した。紫外線光源61からの光は図1の対物レンズを通して、観察試料表面を照射する。この場合の紫外線光源61には、水銀蒸気ランプかエキシマレーザーを用いる。一方この設計実例は、伝統的な照明光学系のレンズとスリット等、63、65、67をも同時に具備し、その上更に対物レンズ系に於ける光線の経路にはビーム分割器69を配備する。図1の対物レンズ系が受けた光線が 画像処理される為に設定する経路には、上述のビーム分割器69を配備し、これを通過した光線は顕微鏡筒に進入する。この顕微鏡は、反射屈折両特性レンズ群を具備することも出来る。顕微鏡筒は、皿状の凹レンズ対71と73を包含し、これ等は互いに接近して対向するべく設置する。そして、2つの円形の鏡75と77を導入して互いに一定の距離を置く様にし、更にこれ等は、凹レンズ対71と73からも一定の距離を置く様にする。そしてこの例では、その一定距離としては各々、最小400mmとする。鏡75は、鏡77と凹レンズ対71と73に向けて凹面に設定する。一方、鏡77は、鏡75に向けて凸面に設定する。これ等の曲率は、1,000mmとする、即ち殆ど平面である。2つの鏡73と75で光線は折りたたまれ、この時に光線は筒の軸線から外れる傾向になる。従って、筒長は500mmを越えるのは難しい。図1で対物光学系を最適化した例では、以下に示す表3の通りに屈折性と反射性を光学要素71、73、75と77に持たせる。」

(5)「【図1】



(6)図1(上記(5))は、反射と屈折の両特性を共に具備して成る画像システムの側面を示す原理図であって、反射屈折両性レンズ群17とフォーカスレンズ群とが光軸に沿って直線状に配置されていることが看取できる。また、第2の光学要素を構成するレンズ43は、前記第1の光学要素を構成するレンズ39と比較して曲率が小さい曲面を有していることが看取できる。また、前記図1からみて、光学素子のうち最大径を有するのが反射膜41であり、該図1に対応した【表1】(上記(4))に示された値より、前記反射膜41の曲率半径は64.290mmである。

(7)上記(1)ないし(6)から、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。
「紫外線顕微鏡用対物レンズ、ウェーハ外観検査装置に於ける表面散乱光に対する其の集光器、或いは集積回路製造に使う紫外線フォトリソグラフ工程に於ける紫外線マスクパターン投影の為の光学系に応用可能である、カタディオプトリック(反射と屈折の両特性を有する)を具備して成る画像システムであって、
フォーカスレンズ群11にて中間像13を形成し、フィールドレンズ群15を中間像13の近くに設置し、
この系が機能するスペクトル範囲は、0.20ミクロンから0.40ミクロンを包含し、上記何れの場合でも、KrF エキシマレーザー光線0.248ミクロンと0.254ミクロンの水銀アーク放電管の光をその範囲内に含み、上記の広いスペクトル帯域は、0.365ミクロンの水銀アーク放電管からの光線(i線と呼ばれる)を含んでおり、0.351ミクロンのXeF エキシマレーザー光線、並びに0.325ミクロンのHe-Cd レーザー光をも包含し、上記の他に広範囲のレーザー光源やアーク放電光源が、この範囲に存在して実用化されており、
反射屈折両性レンズ群17を構成するのは、第1の光学要素と第2の光学要素であり、第1の光学要素は、熔融石英製皿状レンズ39にて構築し、この裏側の凹面は反射特性を持たせる目的で塗布物質41を塗り、次に、第2の光学要素は、第1の石英製レンズ43にて構築し、この裏側の凹面は反射特性を持たせる目的で塗布物質45を塗り、前記第1の光学要素と比較して曲率が小さい曲面を有し、反射屈折両性レンズ群17の2つのレンズ39と43は、その前面が互いに向き合う様にセットされるものであり、前記塗布物質41は曲率半径が64.290mmで光学素子のうち最大の直径を有する光学素子であり、
第1の光学要素である皿状レンズ39は、その中央に小孔37を形成しそこを光軸が通過する様にし、第2レンズ43の表面反射膜45には開口部、即ち窓の部分47を設けて、その部分は反射膜を塗布せず、この部分が、窓47の中心に形成されて別の光学的開口部となり、塗布膜を有する鏡45は、平坦か或いは緩やかなカーブ面が好ましく、
中間像からの光線は、第1レンズ39中の光学的開口37を経由し、更に第2レンズ43本体を通過するが、此処で平坦な或いは平坦に近いレンズ43の後部に設ける反射膜45が形成する鏡の効果で反射が起きるように設定し、次に光線は、再び第1レンズ39を通った後、鏡面41にて反射して逆進し、第1レンズ39本体を通過し、最後に、光線は強い集光性を帯び、第2レンズ43本体内を3度目の通過をするものであり、
具体的な設計例として、反射屈折両性レンズ群17とフォーカスレンズ群11とが光軸に沿って直線状に配置され、開口数0.9、視野画面の対角線長を0.5mmとしたが、設計値を変動させて種々の設計的研究を実施した結果、開口数をやや小さめに、例えば0.7にすることも出来、この時は系の長さ、特に対物レンズと観察試料間の距離が大きくなり、この条件下でレンズ表面の曲率を最適化することが出来る、
画像システム。」(以下「引用発明」という。)

4 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「アーク放電光源」、「フォーカスレンズ群11」、「中間像13」、「フィールドレンズ群15」、「『カタディオプトリック』又は『反射屈折両性レンズ群17』」、「『第1の光学要素』である『皿状レンズ39』又は『第1レンズ39』」及び「『第2の光学要素』又は『第2レンズ43』」は、それぞれ本願補正発明の「アークランプ」、「集光レンズ群」、「中間の光線」、「視野レンズ」、「配列マンジャンミラー」、「凹球面反射レンズ/ミラー素子」及び「平面レンズ/ミラー素子」に相当する。

(2)引用発明の「画像システム」は、紫外線顕微鏡用対物レンズ、ウェーハ外観検査装置に於ける表面散乱光に対する其の集光器に応用可能であるから、本願補正発明の「標本検査システム」に相当する。

(3)引用発明の「標本検査システム(画像システム)」は、「アークランプ(アーク放電光源)」を光源として有し、該「アークランプ」は、照明光を発する照明システムを構成するといえるから、本願補正発明の「標本検査システム」とは、「照明光エネルギを発するアークランプを有する照明サブシステム」を備える点で一致する。

(4)ア 引用発明において、「標本検査システム(画像システム)」は、「アークランプ(アーク放電光源)」を光源として有しているとすれば、【0023】(上記3(4))のように、該「アークランプ」からの光が「集光レンズ群(フォーカスレンズ群11)」、「中間の光線(中間像13)」を形成する「視野レンズ(フィールドレンズ群15)」及び「配列マンジャンミラー(反射屈折両性レンズ群17)」の各レンズ群を通過して観察試料表面を照射することは明らかであるから、引用発明の「標本検査システム」は、本願補正発明の「標本検査システム」における、「前記照明サブシステムからの照明光エネルギを受け取り標本に向かわせるよう構成及び方向設定された結像サブシステム」を備えている。
イ 上記アからみて、引用発明の「結像サブシステム」は、さらに、本願補正発明の「結像サブシステム」における、「前記アークランプからの光を受けて、集光された光線を生じさせる少なくとも1つの集光レンズを含む集光レンズ群と、前記集光レンズ群から前記集光された光線を受けて中間の光線を生じさせる視野レンズと、前記視野レンズから前記中間の光線を受けて前記標本に光線を方向付ける配列マンジャンミラーと」の構成を備えている。

(5)ア 引用発明において、「配列マンジャンミラー(反射屈折両性レンズ群17)」を構成するのは、「凹球面反射レンズ/ミラー素子(第1の光学要素)」と「平面レンズ/ミラー素子(第2の光学要素)」であり、「凹球面反射レンズ/ミラー素子(第1の光学要素)」は、熔融石英製皿状レンズ39にて構築し、この裏側の凹面は反射特性を持たせる目的で塗布物質41を塗り、次に、「平面レンズ/ミラー素子(第2の光学要素)」は、第1の石英製レンズ43にて構築し、この裏側の凹面は反射特性を持たせる目的で塗布物質45を塗り、「凹球面反射レンズ/ミラー素子及び平面レンズ/ミラー素子(2つのレンズ39と43)」は、その前面が互いに向き合う様にセットされるものであり、「凹球面反射レンズ/ミラー素子(第1の光学要素である皿状レンズ39)」は、その中央に小孔37を形成しそこを光軸が通過する様にし、平坦な或いは平坦に近い「第2レンズ43」の表面反射膜45には開口部、即ち窓の部分47を設けて、その部分は反射膜を塗布せず、この部分が、窓47の中心に形成されて別の光学的開口部となり、塗布膜を有する鏡45は、平坦か或いは緩やかなカーブ面が好ましいものとなっている。
イ してみると、引用発明の「配列マンジャンミラー」は、本願補正発明の「配列マンジャンミラー」における、「曲面を有し、前レンズ面と中央部を除いて反射被覆で覆われた後反射面とを組み合わせた凹球面反射レンズ/ミラー素子と、前記凹球面反射レンズ/ミラー素子と比較して曲率が小さい曲面を有し、前レンズ面と中央部を除いて反射被覆で覆われた後反射面とを組み合わせた平面レンズ/ミラー素子と」の構成を備えている。

(6)引用発明は、具体的な設計例として、反射屈折両性レンズ群17とフォーカスレンズ群11とが光軸に沿って直線状に配置され、開口数0.9、視野画面の対角線長を0.5mmとしているから、引用発明の「結像サブシステム」と、本願補正発明の「単一の軸に沿って配置され、100mm未満の直径を有し、結像サブシステムが、照明システムから受け取る光エネルギに対して、NA値が0.90において0.4mmの視野サイズを提供する」「結像サブシステム」とは、「単一の軸に沿って配置され」「照明システムから受け取る光エネルギに対して、NA値が0.90を提供するように構成された」点で一致する。

(7)上記(1)ないし(6)からみて、本願補正発明と引用発明とは、
「照明光エネルギを発するアークランプを有する照明サブシステムと、
前記照明サブシステムからの照明光エネルギを受け取り標本に向かわせるよう構成及び方向設定された結像サブシステムと、
を備え、
前記結像サブシステムは、さらに、
前記アークランプからの光を受けて、集光された光線を生じさせる少なくとも1つの集光レンズを含む集光レンズ群と、
前記集光レンズ群から前記集光された光線を受けて中間の光線を生じさせる視野レンズと、
前記視野レンズから前記中間の光線を受けて前記標本に光線を方向付ける配列マンジャンミラーと、を備え、
前記配列マンジャンミラーは、曲面を有し、前レンズ面と中央部を除いて反射被覆で覆われた後反射面とを組み合わせた凹球面反射レンズ/ミラー素子と、前記凹球面反射レンズ/ミラー素子と比較して曲率が小さい曲面を有し、前レンズ面と中央部を除いて反射被覆で覆われた後反射面とを組み合わせた平面レンズ/ミラー素子と、を備え、
結像サブシステムが、単一の軸に沿って配置され、照明システムから受け取る光エネルギに対して、NA値が0.90を提供するように構成された、標本検査システム。」である点(以下、「一致点」という。)で一致し、次の点で相違する。

・相違点1:
前記「アークランプ」が、
本願補正発明では、「285nm以上320nm以下の波長域にて照明光エネルギを発する」のに対し、
引用発明では、具体的に如何なる波長域にて照明光エネルギを発するのかが不明である点。

・相違点2:
前記「結像サブシステム」は、
本願補正発明では、「100mm未満の直径を有し」、「照明システムから受け取る光エネルギに対して、NA値が0.90において0.4mmの視野サイズを提供するように構成される」のに対し、
引用発明では、直径が100mm未満であるかどうかは不明であり、一例としてNA値が0.90において視野画面の対角線長を0.5mmとしている点。

5 判断
(1)上記相違点1について検討する。
ア 本願明細書には、その【0037】に、「なお、特定スペクトル領域を増強したいならドーパント素材を添加した混合ガスを用いるとよい。そのようにすれば、例えば様々な種類のアークランプから、より広い波長域に亘る光を得ることができる。次の表は、一般に入手及び利用可能な種々の光源についてその光源に典型的な波長域を示した表である。
【表1】

」と記載され、
また、【0076】に、「図16及び表7に示した実施形態は一種類のガラス素材たる熔融シリカを用いて構成されているが、他種素材も使用可能である。熔融シリカを使用するにせよ他種素材を使用するにせよ、本実施形態にて使用する素材に対しては190nmから赤外域までの広い波長域に亘り吸収率が低いことが要求されることに、注意すべきである。熔融シリカを用いた場合、この波長域内であればどのような中心波長に対しても、本実施形態を調整して最適化し直すことができる。例えば、193、198.5、213、244、248、257、266、308、325、351、355又は364nmのレーザ波長で使用できるよう本実施形態を最適化することや、192?194、210?216、230?254、285?320及び365?546nmのランプスペクトル帯域で使用できるよう最適化することができる。」と記載されている。
イ 本願明細書の記載全体、特に上記アの摘記事項からみて、「285nm以上320nm以下の波長域」の全領域の照明光エネルギを発する具体的な「アークランプ」の存在について記載も示唆もないから、本願補正発明において、「アークランプ」が「285nm以上320nm以下の波長域にて照明光エネルギを発する」が意味することは、アークランプが285nm以上320nm以下の波長域のうち、いずれかの部分領域において照明光エネルギを発することであると解される。
ウ してみると、上記ア及びイからみて、引用発明において、光源の波長域が200ないし400nm(0.20ミクロンから0.40ミクロン)を包含し、上記何れの場合でも、KrF エキシマレーザー光線0.248ミクロンと0.254ミクロンの水銀アーク放電管の光をその範囲内に含み、上記の広いスペクトル帯域は、0.365ミクロンの水銀アーク放電管からの光線(i線と呼ばれる)を含んでおり、0.351ミクロンのXeF エキシマレーザー光線、並びに0.325ミクロンのHe-Cd レーザー光をも包含し、上記の他に広範囲のレーザー光源やアーク放電光源が、この範囲に存在して実用化されているのであるから、「アークランプ」が「285nm以上320nm以下の波長域にて照明光エネルギを発する」ことは引用発明に記載されている事項であるといえ、上記相違点1は実質的な相違点ではない。

(2)上記相違点2について検討する。
ア 球面光学素子の直径は、その曲率半径の2倍を超えないから、引用発明の直径が最大の光学素子である反射膜41の直径は、64.290×2=128.58mmを超えることはない。
イ 引用発明の「視野画面の対角線長」は視野サイズであることは当業者に自明であり、本願明細書の【0110】にも記載されているように、視野画面の対角線長(視野サイズ)がレンズ直径に依存することが技術常識である。
ウ システムを小型化するという課題は本願明細書にも記載されているとおり周知の課題であるから、引用発明の最大の光学素子の直径及び視野サイズをどの程度にするかは、光学系のNA値とともに、上記ウの技術常識やその他の課題を比較衡量して、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
そして、引用発明において、NA値を維持しつつ、直径が最大の光学素子である反射膜の直径を約100mm未満とし、視野サイズを4.0mmに設計することも当業者にとって格別困難なことではない。
エ してみると、上記アないしウからみて、引用発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。

(3)本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果から予測することができた程度のものである。

(4)したがって、本願補正発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
本願補正発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成26年1月6日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年1月6日に補正された特許請求の範囲の記載からみて、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用例
引用例及びその記載事項は、上記「第2〔理由〕3」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明を特定するために必要な事項を限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕5」に記載したとおり、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-02 
結審通知日 2015-07-07 
審決日 2015-07-22 
出願番号 特願2012-61956(P2012-61956)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 山村 浩
鉄 豊郎
発明の名称 小型カタジオプトリック型対物系を用いた検査システム  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  

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