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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1308230
審判番号 不服2014-18953  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-22 
確定日 2015-12-02 
事件の表示 特願2011-525988「リードフレーム及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月11日国際公開、WO2010/027231、平成24年 1月26日国内公表、特表2012-502462〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成21年9月7日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 平成20年9月5日 韓国(KR))を国際出願日とする出願であって、平成24年5月29日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年8月31日付けで手続補正がなされ、平成25年5月9日付け最後の拒絶理由通知に対する応答時、同年10月21日付けで手続補正がなされたが、当該手続補正について、平成26年5月16日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月22日付けで拒絶査定不服審判請求がなされたものである。

第2.審判請求の趣旨

本件審判請求の趣旨は、平成26年5月16日付けでなされた、平成25年10月21日付けの手続補正に対する補正の却下の決定を取り消すとともに、原査定を取り消し、本願は特許をすべきものであるとの審決を求めるものである。

第3.平成26年5月16日付けの補正の却下の決定の適否

1.補正の内容

平成25年10月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、平成24年8月31日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲、
「【請求項1】
銅基板と、
前記銅基板の表面に形成され、表面粗度が110nm?300nmであるラフ銅層と、
前記ラフ銅層の直上のニッケル層と、
前記ニッケル層の上のパラジウム層と、
前記パラジウム層の上の金層と、
前記ラフ銅層の上に局部的に形成された銀メッキ層と、を含み、
前記ラフ銅層は0.3μm?0.6μmの厚さを有し、
前記銅基板は、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、及びシリコン(Si)を含むことを特徴とする、リードフレーム。
【請求項2】
前記金層は、表面粗度が90nm?270nmである、請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項3】
前記ニッケル層は前記パラジウム層より厚く、前記パラジウム層は前記金層より厚い、請求項1に記載のリードフレーム。」
(以下、上記引用の請求項各項を、「補正前の請求項」という)
を、
「【請求項1】
銅基板と、
前記銅基板の表面に形成され、表面粗度が110nm?300nmであるラフ銅層と、
前記ラフ銅層の上に局部的に形成された銀メッキ層と、を含み、
前記ラフ銅層は0.3μm?0.6μmの厚さを有し、
前記銅基板は、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、及びシリコン(Si)を含むことを特徴とする、リードフレーム。
【請求項2】
前記金層は、表面粗度が90nm?270nmである、請求項1に記載のリードフレーム。」
(以下、上記引用の請求項各項を、「補正後の請求項」という)
に補正された。

2.補正の却下の理由の概要

「補正により、補正前の発明に記載された発明を特定するために必要と認める事項の一部である『前記ラフ銅層の直上のニッケル層と、前記ニッケル層の上のパラジウム層と、前記パラジウム層の上の金層と、』を削除しており、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、特許法第17条の2第5項の他の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
よって、この補正は同法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により上記結論のとおり決定する。」

3.当審の判断

本件補正は、補正前の請求項1における発明特定事項である、「前記ラフ銅層の直上のニッケル層と、前記ニッケル層の上のパラジウム層と、前記パラジウム層の上の金層」との構成を削除するものであるから、請求項の限定的減縮を目的としたものとは認められない。
また、原審において、補正前の請求項1における各層の配置等について明りょうではないとの指摘は行っていないので、本件補正は、拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明を目的としたものでもない。
さらに、この補正が、請求項の削除、誤記の訂正を目的とするものにも該当しないことは明らかである。
なお、審判請求人は、平成26年9月22日付け審判請求書において、「そして、上記構成を削除する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、自明な誤りを明確にする補正であると考えます。」(第5ページ第10?11行)と主張しているが、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的としたものとは認められないから、この主張を採用することはできない。

4.補正の却下の決定についてのむすび

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4.本願発明について

平成25年10月21日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、これを「本願発明」という。)は、平成24年8月31日付け手続補正により補正された、上記「第3.平成26年5月16日付けの補正の却下の決定の適否」の「1.補正の内容」において、補正前の請求項1として記載した次のとおりのものである。

「銅基板と、
前記銅基板の表面に形成され、表面粗度が110nm?300nmであるラフ銅層と、
前記ラフ銅層の直上のニッケル層と、
前記ニッケル層の上のパラジウム層と、
前記パラジウム層の上の金層と、
前記ラフ銅層の上に局部的に形成された銀メッキ層と、を含み、
前記ラフ銅層は0.3μm?0.6μmの厚さを有し、
前記銅基板は、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、及びシリコン(Si)を含むことを特徴とする、リードフレーム。」

1.原査定の理由の概要

原査定の理由である平成25年5月9日付け最後の拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、以下のとおりである。
「平成24年8月31日付けでした手続補正は、下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文等又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。



・請求項 1?3
・備考
請求項1の記載は、(a)ラフ銅層の直上のニッケル層と、ニッケル層の上のパラジウム層と、パラジウム層の上の金層と、金層の上に局部的に形成された銀メッキ層や、(b)ラフ銅層の直上のニッケル層と、ニッケル層の上のパラジウム層と、パラジウム層の上の金層と、パラジウム層と金層の間に局部的に形成された銀メッキ層や、(c)ラフ銅層の直上のニッケル層と、ニッケル層の上のパラジウム層と、パラジウム層の上の金層と、ラフ銅層の上であって、ニッケル層、パラジウム層及び金層とは別の場所に局部的に形成された銀メッキ層などを含む記載となっているが、これらは、当初翻訳文等に記載されておらず、また自明でもない。」

2.当審の判断

本願の当初明細書の段落【0016】?【0020】の記載は、以下のとおりである。
「【0016】
図1は、本発明の第1実施形態によるリードフレームを示す断面図である。
【0017】
図1を参照すると、第1実施形態によるリードフレームは、銅基板10、及び上記銅基板10の表面に形成されたラフ(Rough)銅層20が含まれる。
【0018】
ラフ銅層20の表面には局部的に銀メッキ層30が形成される。
【0019】
銅基板10は、銅(Cu)または銅を主成分とする合金で形成される。銅基板10は銅材料の機械的、電気的な特性を改善するために多様な不純物が含まれる。例えば、銅基板10は、銅(Cu)にニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、及びシリコン(Si)のうち、少なくとも1つの不純物を含んで製作することができる。
【0020】
ラフ銅層20は、0.3-0.6μmの平均厚さと、110-300nmの表面粗度を有する。」

したがって、段落【0016】?【0020】には、
「銅基板と、
前記銅基板の表面に形成され、表面粗度が110nm?300nmであるラフ銅層と、
前記ラフ銅層の上に局部的に形成された銀メッキ層と、を含み、
前記ラフ銅層は0.3μm?0.6μmの厚さを有し、
前記銅基板は、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、及びシリコン(Si)を含むことを特徴とする、リードフレーム。」
について記載されている。

また、段落【0048】?【0050】の記載は、以下のとおりである。
「【0048】
図5は、本発明の第2実施形態によるリードフレームを説明する図である。
【0049】
図5を参照すると、前述した第1実施形態ではラフ銅層20の上に局部的に銀メッキ層30を形成することが開示されているが、第2実施形態ではラフ銅層20の上にニッケル(Ni)層40、パラジウム(Pd)層50、金(Au)層60を順次にメッキすることもできる。
【0050】
即ち、ラフ銅層20の上にニッケル層40をメッキし、ニッケル層40の上にパラジウム層50をメッキし、パラジウム層50の上に金層60をメッキすることができる。」

したがって、段落【0048】?【0050】には、
「銅基板と、
前記銅基板の表面に形成され、表面粗度が110nm?300nmであるラフ銅層と、
前記ラフ銅層の直上のニッケル層と、
前記ニッケル層の上のパラジウム層と、
前記パラジウム層の上の金層と、
前記ラフ銅層は0.3μm?0.6μmの厚さを有し、
前記銅基板は、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、及びシリコン(Si)を含むことを特徴とする、リードフレーム。」
について記載されている。

しかしながら、出願当初明細書において、ラフ銅層上に「ニッケル層、パラジウム層及び金層」と「銀メッキ層」の両方を設けることは一切記載も示唆もされておらず、特に、出願当初明細書の段落【0049】の記載によれば、ラフ銅層上に「ニッケル層、パラジウム層及び金層」を設けることに代えて「銀メッキ層」を設けるようにすることが把握し得るのみである。また、ラフ銅層上に「ニッケル層、パラジウム層及び金層」と「銀メッキ層」の両方を設けることは出願当初明細書の記載から自明な事項でもない。

よって、補正後の請求項1ないし3の各請求項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲を超えた内容を含むものであって、新たな技術的事項を導入するものであり、平成24年8月31日付けでした手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17の2第3項に規定する要件を満たしていない。

3.むすび

以上のとおり、本件出願は、平成24年8月31日付けでした手続補正は特許法第17の2第3項に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-29 
結審通知日 2015-06-30 
審決日 2015-07-22 
出願番号 特願2011-525988(P2011-525988)
審決分類 P 1 8・ 574- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 561- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 園子  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 ゆずりは 広行
井上 信一
発明の名称 リードフレーム及びその製造方法  
代理人 中村 健一  
代理人 鶴田 準一  
代理人 青木 篤  
代理人 河合 章  
代理人 南山 知広  

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