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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01L
管理番号 1308236
審判番号 不服2014-22292  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-04 
確定日 2015-12-02 
事件の表示 特願2012-514108「工業プロセス制御システムにおける使用のための圧力トランスミッタ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 9日国際公開、WO2010/141655、平成24年11月15日国内公表、特表2012-529057〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2010年6月3日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2009年6月4日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年4月11日付けの拒絶理由通知に対して同年9月17日付けで手続補正がなされ、平成26年6月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月4日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、平成27年5月15日付けで上申書が提出されたものである。

第2 平成26年11月4日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年11月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正

本件補正は、特許請求の範囲について、本件補正前に、
「【請求項1】
工業プロセスにおいてプロセス流体の圧力を計測するための圧力トランスミッタであって、
加圧に関する出力を有する圧力センサと、
加圧に関するトランスミッタ出力を提供するように構成され、圧力センサに結合された計測回路と、
加圧を圧力センサに伝達するように配設され、内部に開口を有する圧力結合面と、及び プロセス流体を圧力結合面の開口に運ぶように構成され、圧力結合面に当接するフランジ面を有する圧力結合フランジと、を含み、
圧力結合面及びフランジ面の少なくとも一方の全面が、外方かつ圧力結合面及びフランジ面の他方へ湾曲している、圧力トランスミッタ。」
とあったところを、

「【請求項1】
工業プロセスにおいてプロセス流体の圧力を計測するための圧力トランスミッタであって、
加圧に関する出力を有する圧力センサと、
加圧に関するトランスミッタ出力を提供するように構成され、前記圧力センサに結合された計測回路と、
加圧を前記圧力センサに伝達するように配設され、内部に開口を有する圧力結合面と、
前記プロセス流体を前記圧力結合面の開口に運ぶように構成され、前記圧力結合面に当接するフランジ面を有する圧力結合フランジと、及び
前記圧力結合面及び前記フランジ面を貫通し、前記圧力結合面と前記フランジ面との間に取り付け力を加える任意の数、配置のボルトと、を含み、
前記圧力結合面及び前記フランジ面の少なくとも一方の全面が、外方かつ前記圧力結合面及び前記フランジ面の他方へ湾曲している、圧力トランスミッタ。」
とすることを含むものである。

本件補正について検討する。

本件補正は、本件補正前の請求項1の特定事項に対し、「前記圧力結合面及び前記フランジ面を貫通し、前記圧力結合面と前記フランジ面との間に取り付け力を加える任意の数、配置のボルト」と補正して、圧力結合面及び前記フランジ面に関する事項を限定するとともに、「圧力センサ」、「プロセス流体」、「圧力結合面」、及び「フランジ面」の冒頭に「前記」を付加して、用語の対応関係を限定するものである。

よって、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)について以下に検討する。


2 引用例、周知例及びその記載事項

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特表2002-513148号公報(平成14年5月8日公表、以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a 「【0001】
発明の背景
本発明はプロセス制御用機器に関する。より詳細には、本発明は隔離ダイアフラムを備えた圧力伝送器に関する。」

b 「【0007】
好適な実施形態の詳細な説明
図1は、本発明による圧力伝送器10を示している。この圧力伝送器10は伝送器本体12と、フランジ(あるいは、共面マニホールド)13と、センサ本体14とを有している。ここでは、共面フランジを有するように図示されているが、本発明は、プロセス流体を受け入れるように適応された、どのようなタイプのフランジやマニホールドを用いてもよいし、その他の連結装置を用いてもよい。センサ本体14は圧力センサ16を含み、伝送器本体12は伝送回路20を含んでいる。センサ回路18は、通信バス22を介して、伝送回路20に接続されている。
【0008】
伝送回路20は、プロセス流体の圧力に関する情報を、二線式4-20mAプロセス制御ループ23を介して送信する。圧力伝送器10は、プロセス流体の圧力に関する情報を、プロセス制御ループ23に接続された制御室60、あるいは、その他の装置(図示せず)に送信する。制御室60は、電源62および抵抗器64として、代表的に図示されている。圧力伝送器10は、プロセス制御ループ23を通して受け取る電力によって、完全に給電される。
【0009】
圧力センサ16は、絶対圧力センサあるいは差圧センサである。圧力センサ16が差圧センサである実施の形態においては、圧力センサ16は、流路24における圧力P1と、フランジ13の流路26における圧力P2との圧力差を計測する。圧力P1は、流路32を介して圧力センサ16に結合されている。一方の圧力P2は、流路34を介して圧力センサ16に結合されている。
【0010】
流路32は、カプリング36とチューブ40を介して延びている。流路34は、カプリング38とチューブ42を介して延びている。流路32および流路34は、油のような、比較的非圧縮性の流体によって満たされている。カプリング36および38は、センサ本体14にねじ止めされ、センサ回路18があるセンサ本体の内部と、流路24および26内に含まれるプロセス流体との間に、長い火炎冷却通路を構成する。
【0011】
流路24は、センサ本体14における開口部28に隣接して設けられている。流路26は、センサ本体14における開口部30に隣接して設けられている。ダイアフラム46は、開口部28内に位置し、流路24の近くでセンサ本体14に結合される。流路32は、カプリング36とセンサ本体14を通して、ダイアフラム46にまで延びている。ダイアフラム50は流路26の近くでセンサ本体14に結合される。流路34は、カプリング38とセンサ本体14を通してダイアフラム50にまで延びている。」

c 「【0014】
動作について説明すると、圧力伝送器10がフランジ13にボルトで締めつけられると、フランジ13の支持面58は、溶接リング48および52を圧迫すると共に、またシール54および56をも圧迫する。溶接リングおよびシールに加えられるボルト締め、あるいは取付け力によってシールが圧迫され、それによって、プロセス流体が、流路24および26から、または開口部28および30から漏洩するのを防ぐことができる。取付け力はまた、溶接リング48および52を変形させる。」

d 図1には、圧力センサ16とセンサ回路18とが接続されていることが示されている。

e 図1には、フランジ13の流路24、流路26が、それぞれ、センサ本体14における開口部28、開口部30と相対向して設けられていることが示されている。


ア 上記aの「【0001】‥‥‥本発明はプロセス制御用機器に関する。より詳細には、本発明は‥‥‥圧力伝送器に関する。」との記載、及び上記bの「【0007】‥‥‥図1は、本発明による圧力伝送器10を示している。」との記載から、引用例には、「プロセス制御用機器である圧力伝送器10」が記載されているということができる。

イ 上記bの「【0007】‥‥‥圧力伝送器10は伝送器本体12と、フランジ‥‥‥13と、センサ本体14とを有している。‥‥‥プロセス流体を受け入れるように適応された、‥‥‥フランジ‥‥‥を用いてもよい‥‥‥センサ本体14は圧力センサ16を含み、伝送器本体12は伝送回路20を含んでいる。センサ回路18は、通信バス22を介して、伝送回路20に接続されている。」との記載において、フランジ13は、プロセス流体を受け入れるように適応されたものであるから、引用例1には、「圧力伝送器10は、伝送器本体12と、プロセス流体を受け入れるように適応されたフランジ13と、センサ本体14とを有し、センサ本体14は、圧力センサ16を含み、伝送器本体12は、伝送回路20を含み、センサ回路18は、通信バス22を介して、伝送回路20に接続されている」ことが記載されているということができる。
ここで、圧力センサ16とセンサ回路18とが接続されている(上記d)から、「圧力センサ16が接続されたセンサ回路18は、通信バス22を介して、伝送回路20に接続されている」といえる。
したがって、引用例1には、「圧力伝送器10は、伝送器本体12と、プロセス流体を受け入れるように適応されたフランジ13と、センサ本体14とを有し、センサ本体14は、圧力センサ16を含み、伝送器本体12は、伝送回路20を含み、圧力センサ16が接続されたセンサ回路18は、通信バス22を介して、伝送回路20に接続されている」ことが記載されているということができる。

ウ 上記bの「【0008】伝送回路20は、プロセス流体の圧力に関する情報を、‥‥‥制御ループ23を介して送信する。圧力伝送器10は、プロセス流体の圧力に関する情報を、プロセス制御ループ23に接続された制御室60‥‥‥に送信する。」において、上記イから、「圧力伝送器10は、伝送器本体12‥‥‥を有し、‥‥‥伝送器本体12は伝送回路20を含」むことから、プロセス流体の圧力に関する情報を、プロセス制御ループ23に接続された制御室60に送信するものは、伝送回路20であるといえる。したがって、引用例1には、「伝送回路20が、プロセス流体の圧力に関する情報を、プロセス制御ループ23を介して制御室60に送信する」ことが記載されているということができる。

エ 上記bの「【0009】圧力センサ16は、絶対圧力センサあるいは差圧センサである。圧力センサ16が差圧センサである実施の形態においては、圧力センサ16は、流路24における圧力P1と、フランジ13の流路26における圧力P2との圧力差を計測する。圧力P1は、流路32を介して圧力センサ16に結合されている。一方の圧力P2は、流路34を介して圧力センサ16に結合されている。」との記載において、流路24は、上記eから、「フランジ13の流路24、流路26」ということができるから、引用例1には、「圧力センサ16は、絶対圧力センサあるいは差圧センサであり、圧力センサ16が差圧センサである実施の形態においては、圧力センサ16は、フランジ13の流路24における圧力P1と、フランジ13の流路26における圧力P2との圧力差を計測するものであって、圧力P1は、流路32を介して圧力センサ16に結合され、一方の圧力P2は、流路34を介して圧力センサ16に結合されている」ことが記載されているということができる。

オ 上記bの「【0010】‥‥‥流路24および26内にプロセス流体‥‥‥【0011】流路24は、センサ本体14における開口部28に隣接して設けられている。流路26は、センサ本体14における開口部30に隣接して設けられている。‥‥‥」との記載から、引用例1には、「流路24および26内にはプロセス流体が含まれる」ことが記載されている。
また、流路24が開口部28に、流路26が開口部30に隣接して設けられていることに関し、上記eの記載から、「フランジ13の流路24、流路26は、それぞれ、センサ本体14における開口部28、開口部30と相対向して設けられている(図1)といえるから、引用例1には、「フランジ13の流路24は、センサ本体14における開口部28に、また、フランジ13の流路26は、センサ本体14における開口部30に相対向して設けられている」ことが記載されているということができる。

カ 上記cの記載から、引用例1には、「圧力伝送器10がフランジ13にボルトで締めつけられると、取付け力によってプロセス流体が、流路24および26から、または開口部28および30から漏洩するのを防ぐ」ことが記載されている。

したがって、上記引用例1に記載された事項、図面の記載、及び上記アないしカを総合すると、引用例1には、次の事項が記載されている(以下、引用発明という。)。

「プロセス制御用機器である圧力伝送器10であって、
圧力伝送器10は、
伝送器本体12と、プロセス流体を受け入れるように適応されたフランジ13と、センサ本体14とを有し、
センサ本体14は、圧力センサ16を含み、
伝送器本体12は、伝送回路20を含み、
圧力センサ16が接続されたセンサ回路18は、通信バス22を介して、伝送回路20に接続され、
伝送回路20が、プロセス流体の圧力に関する情報を、プロセス制御ループ23を介して制御室60に送信し、
圧力センサ16は、絶対圧力センサあるいは差圧センサであり、圧力センサ16が差圧センサである実施の形態においては、圧力センサ16は、フランジ13の流路24における圧力P1と、フランジ13の流路26における圧力P2との圧力差を計測するものであって、圧力P1は、流路32を介して圧力センサ16に結合され、一方の圧力P2は、流路34を介して圧力センサ16に結合され、
流路24および26内にはプロセス流体が含まれ、
フランジ13の流路24は、センサ本体14における開口部28に、また、フランジ13の流路26は、センサ本体14における開口部30に相対向して設けられ、
圧力伝送器10がフランジ13にボルトで締めつけられると、取付け力によってプロセス流体が、流路24および26から、または開口部28および30から漏洩するのを防ぐ、
圧力伝送器。」


(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である実願昭60-24471号(実開昭61-140286号)のマイクロフィルム(昭和61年8月30日公開、以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「本考案に係るフランジ継手とは、フランジ接合面を外径側から内径側へ向けて突出するテーパ面として形成した点に要旨が存在するものである。」(5頁3行ないし5行)

b「[実施例]
第1図(A),(B),(C)は前第2図(A),(B),(C)に夫々対応するものであり、本例では予め外径側に隙間Saを形成しているので締付後の第1図(C)では隙間が見られず、全面密着による完全シールが達成される。尚フランジ接合面21a,21bは直線的なテーパとしたが、鎖線で示す如くわずかな凸球面としておいてもよい。
[考案の効果]
本考案は上記の様に構成されているのでフランジの変形による隙間腐食の発生が防止されると共に、むしろ内径側における面圧が高くなるのでシール効果も高くなる。」(6頁17行ないし7頁9行)

上記a、bの事項から、引用例2には、次の技術的事項が記載されているということができる。

「フランジ継手において、フランジ接合面を外径側から内径側へ向けて突出する僅かな凸球面として形成することにより、シール効果を高くする」技術。

(3)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特表2007-524084号公報(平成19年8月23日公開、以下「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「【0001】
本発明は、圧力送信機モジュールに関し、特に、密封されたセンサハウジングを有する圧力送信機モジュールに関する。

b「【0013】
図1,2は典型的な従来技術に係る圧力送信機100の正面及び側面を表す。圧力送信機100は、電気回路を収容する電気部ハウジング101と、隔離ダイアフラム、圧力センサおよび関連するセンサ回路を収容するモジュールハウジング102を含んでいる。モジュールハウジング102はボルト105によって圧力フランジ104にボルト止めされている。ボルト105はまたフランジアダプタユニオン118を貫通している。該フランジアダプタユニオン118は、ねじ加工されたプロセスパイプ(図示しない)と接続可能なねじ加工された入口部を有している。圧力フランジ104は圧力測定のために一またはそれ以上のプロセス流体圧力106を送信機100に供給する。圧力送信機100は、該圧力送信機100を駆動するとともにプロセス制御システム内で使用される双方向通信を提供するプロセスループ103に接続される。圧力フランジ104およびボルト105とモジュールハウジング102との接続は、図3に関連して以下で詳細に記述する。
【0014】
図3の従来技術は、図1,2に示したモジュールハウジング102の下部、圧力フランジ104、フランジアダプタユニオン118、およびボルト105の分解図を示している。
【0015】
モジュールハウジング102は、該モジュールハウジング102に直接溶接された隔離ダイアフラムを含んでいる。モジュールハウジング102は、また、隔離ダイアフラム110の周囲の、規格パターンでねじ加工されたボルト孔112を含んでいる。ガスケット114は隔離ダイアフラム110の周囲で圧力フランジ104をモジュールハウジング102に封着する機械的圧縮シールである。ねじ116は、輸送中および現場でのプロセス接続前に圧力フランジ104およびガスケット114を一時的に所定位置に保持する。圧力フランジ104は、排出孔/通孔弁(drain/vent valves)124に適合している。
【0016】
フランジアダプタユニオン118はプロセス流体パイプ(図示せず)にねじ込まれて、ガスケット120によって圧力フランジ104に封着される。ガスケット120は機械的圧縮タイプのシールである。プロセスパイプは、フランジアダプタユニオン118を使用するのに代えて、圧力フランジ104内のねじ孔122に直接ねじ込んでもよい。ボルト105はフランジアダプタユニオン118(これを使用する場合は)、圧力フランジ104を貫通し、ねじ加工されたボルト孔112にねじ込まれる。ガスケット114および120は、ボルト105が締め付けられたときに圧縮されてプロセス流体を収容するための機械的圧縮封着部を提供する。ガスケット114,120はプロセス流体の漏れ個所となる可能性のある機械的圧縮封着部を提供する。以下に記載した実施例では、ガスケット114による機械的圧縮封着部の使用によってもたらされる漏れの可能性を低減することによって安全性と信頼性を改善する構成を説明する。以下に記載した実施例においては、プロセスパイプはモジュールハウジング上のねじ加工されたプロセス入口部に直接ねじ込むことができ、これによってガスケット114,120の必要性をなくすことができる。」

c 図3には、ボルト105は、モジュールハウジング102の圧力フランジ104が当接する面及び、圧力フランジ104のモジュールハウジング102が当接する面を貫通するものであることが示されている。

ここで、ボルト105及びねじ加工されたボルト孔112によって、モジュールハウジング102の圧力フランジ104が当接する面と圧力フランジ104のモジュールハウジング102が当接する面との間に取り付け力が加わることは明らかであるから、上記aないしcの記載から、周知例1には、次の事項が記載されているということができる。

「圧力送信機モジュールに関し(上記a)、
圧力送信機100は、圧力センサおよび関連するセンサ回路を収容するモジュールハウジング102を含み(上記b(【0013】))、
モジュールハウジング102はボルト105によって圧力フランジ104にボルト止めされており(上記b(【0013】))、
モジュールハウジング102は、ボルト孔112を含み(上記b(【0015】))、
ボルト105は、圧力フランジ104を貫通し、ねじ加工されたボルト孔112にねじ込まれ(上記b(【0013】))、
ボルト105は、モジュールハウジング102の圧力フランジ104が当接する面及び、圧力フランジ104のモジュールハウジング102が当接する面を貫通し(上記c(図3))、
ボルト105及びねじ加工されたボルト孔112によって、モジュールハウジング102の圧力フランジ104が当接する面と圧力フランジ104のモジュールハウジング102が当接する面との間に取り付け力が加わる、
圧力送信機モジュール。」

そして、「モジュールハウジング102の圧力フランジ104が当接する面」は、「モジュールハウジング102」が「圧力センサおよび関連するセンサ回路を収容する」ことから、圧力フランジ104と圧力的に結合されている「圧力結合面」と捉えることができ、また、「圧力フランジ104のモジュールハウジング102が当接する面」は、「フランジ面」と捉えることができるから、周知例1には、
「ボルト105は、圧力結合面、及びフランジ面を貫通し、ボルト105及びねじ加工されたボルト孔112によって、圧力結合面、及びフランジ面との間に取り付け力が加わる、圧力送信機モジュール。」
が記載されているということができる。

3 対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明は、「プロセス制御用機器である圧力伝送器10であって、圧力伝送器10は、伝送器本体12と、プロセス流体を受け入れるように適応されたフランジ13と、センサ本体14とを有し、センサ本体14は圧力センサ16を含み、伝送器本体12は、伝送回路20を含み、圧力センサ16が接続されたセンサ回路18は、通信バス22を介して、伝送回路20に接続され、伝送回路20が、プロセス流体の圧力に関する情報を、プロセス制御ループ23を介して制御室60に送信」するものであり、ここで、「プロセス制御用機器」である「圧力伝送器」を工業プロセスに用いることは常套手段であり、また、「プロセス流体の圧力に関する情報」を送信することは、典型的には「プロセス流体の圧力」を計測して送信することということができるから、引用発明の「圧力伝送器10」は、本願補正発明の「工業プロセスにおいてプロセス流体の圧力を計測するための圧力トランスミッタ」に相当する。

(2)引用発明の「圧力センサ16」は、「プロセス流体の圧力」を検知するものであって、ここで「プロセス流体」に圧力が加わっていることは明らかであるから、引用発明の「圧力センサ16」は、本願補正発明の「加圧に関する出力を有する圧力センサ」に相当する。

(3)引用発明は、「圧力センサ16が接続されたセンサ回路18は、通信バス22を介して、伝送回路20に接続され、伝送回路20が、プロセス流体の圧力に関する情報を、プロセス制御ループ23を介して制御室60に送信」するものであって、伝送回路20が制御室60に送信するものは、「プロセス流体の圧力に関する情報」であって、典型的には「プロセス流体の圧力」であり(上記(1))、また、「プロセス流体」は圧力が加わっているものであるから(上記(2))、プロセス流体の加圧に関する出力を送信しているものということができる。
そして、引用発明は、「圧力センサ16」、「センサ回路18」、「伝送回路20」の直列的なブロックでもって、プロセス流体の加圧に関する出力を送信しているものであるから、このような直列的なブロックのいずれかにおいて、プロセス流体の加圧に関する出力を提供する計測回路を有しているということができる。したがって、引用発明の「圧力センサ16」、「センサ回路18」、「伝送回路20」のシステムと、本願発明の「加圧に関するトランスミッタ出力を提供するように構成され、前記圧力センサに結合された計測回路」とは、本願発明の「加圧に関するトランスミッタ出力を提供するように構成された計測回路」である点で共通する。

(4)引用発明は、「圧力センサ16は、絶対圧力センサあるいは差圧センサであり、圧力センサ16が差圧センサである実施の形態においては、圧力センサ16は、フランジ13の流路24における圧力P1と、フランジ13の流路26における圧力P2との圧力差を計測するものであって、圧力P1は、流路32を介して圧力センサ16に結合され、一方の圧力P2は、流路34を介して圧力センサ16に結合され、流路24および26内にはプロセス流体が含まれ、フランジ13の流路24は、センサ本体14における開口部28に、また、フランジ13の流路26は、センサ本体14における開口部30に相対向して設けられ」るものである。
ここで、引用発明の「開口部28」及び「開口部30」は、圧力センサ16に、フランジ13の流路24および26内のプロセス流体の圧力が伝達されるように配設されているということができるから、本願補正発明と同様に「加圧を前記圧力センサに伝達するように配設され」ているということができる。
また、「フランジ13の流路24における圧力P1と、フランジ13の流路26における圧力P2」が、センサ本体14に設けられた開口部28、開口部30に伝達され、圧力的に結合されているということができるから、引用発明の「センサ本体14に設けられた開口部28、開口部30」側の面は、本願補正発明の「内部に開口を有する圧力結合面」に相当する。
したがって、引用発明のセンサ本体14に設けられた開口部28、開口部30側の面は、本願補正発明の「加圧を前記圧力センサに伝達するように配設され、内部に開口を有する圧力結合面」に相当する。

(5)引用発明は、「圧力伝送器10がフランジ13にボルトで締めつけられると、取付け力によってプロセス流体が、流路24および26から、または開口部28および30から漏洩するのを防ぐ」ものであって、これにより、「フランジ13の流路24における圧力P1と、フランジ13の流路26における圧力P2」が、センサ本体14に設けられた開口部28、開口部30に伝達され、圧力的に結合されているということができる。
そして、圧力が伝達されることについて、フランジ13側からみれば、センサ本体14に設けられた開口部28、開口部30側の面と当接するフランジ13の面は、本願補正発明の「圧力結合面に当接するフランジ面」に相当し、また、「フランジ13」は、「圧力結合フランジ」と捉えることができるから、引用発明の「フランジ13」は、本願補正発明の「前記プロセス流体を前記圧力結合面の開口に運ぶように構成され、前記圧力結合面に当接するフランジ面を有する圧力結合フランジ」に相当する。

(6)引用発明において、「圧力伝送器10がフランジ13にボルトで締めつけられる」ことは、本願補正発明の「前記圧力結合面及び前記フランジ面を貫通し、前記圧力結合面と前記フランジ面との間に取り付け力を加える任意の数、配置のボルトと、を含」むことと、「圧力トランスミッタと圧力結合フランジとの間に取り付け力を加える任意の数、配置のボルト、を含」む点で共通する。

(7)引用発明のセンサ本体14に設けられた開口部28、開口部30側の面は、本願補正発明の「圧力結合面」に相当し(上記(4))、開口部28、開口部30側の面と当接するフランジ13の面は、本願補正発明の「フランジ面」に相当する(上記(5))から、引用発明と本願補正発明とは「前記圧力結合面及び前記フランジ面を有している」点で共通する。

(8)引用発明の「圧力伝送器10」は、「圧力トランスミッタ」に相当する(上記(1))。


すると、本願補正発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「工業プロセスにおいてプロセス流体の圧力を計測するための圧力トランスミッタであって、
加圧に関する出力を有する圧力センサと、
加圧に関するトランスミッタ出力を提供するように構成された計測回路と、
加圧を前記圧力センサに伝達するように配設され、内部に開口を有する圧力結合面と、
前記プロセス流体を前記圧力結合面の開口に運ぶように構成され、前記圧力結合面に当接するフランジ面を有する圧力結合フランジと、及び
圧力トランスミッタと圧力結合フランジとの間に取り付け力を加える任意の数、配置のボルトと、を含み、
前記圧力結合面及び前記フランジ面を有している、圧力トランスミッタ。」


<相違点>ア
本願補正発明が、「前記圧力センサに結合された」計測回路であるのに対し、引用発明は、このような特定がない点。

<相違点>イ
取り付け力を加える任意の数、配置のボルトについて、本願補正発明が、「前記圧力結合面及び前記フランジ面を貫通し、前記圧力結合面と前記フランジ面」との間に取り付け力を加えるのに対し、引用発明は、このような特定がない点。

<相違点>ウ
本願補正発明が、前記圧力結合面及び前記フランジ面の「少なくとも一方の全面が、外方かつ前記圧力結合面及び前記フランジ面の他方へ湾曲」しているのに対し、引用発明は、湾曲していない点。


4 判断

<相違点>アについて
引用発明は、「圧力センサ16が接続されたセンサ回路18は、通信バス22を介して、伝送回路20に接続され、伝送回路20が、プロセス流体の圧力に関する情報を、制御ループ23を介して制御室60に送信」するものであるから、「圧力センサ16」、「センサ回路18」、「伝送回路20」の直列的なブロックでもって、プロセス流体の加圧に関する出力を送信しているものといえ、このようなブロックのいずれかにおいて、プロセス流体の加圧に関する出力を提供するように構成された計測回路を有しているということができる(上記3(3))。
そして、プロセス流体の加圧に関する出力を出力するために、いずれのブロックに計測回路としての機能を持たせるかは、当業者が適宜決定し得る事項であるから、「センサ回路18」に「計測回路」の機能を持たせることにより、「圧力センサに結合された」計測回路とすることに格別の困難性を見出すことはできない。

よって、本願補正発明の<相違点>アに係る構成のようにすることは格別なことではない。

<相違点>イについて
ボルトを、圧力結合面、及びフランジ面に貫通させ、圧力結合面、及びフランジ面との間に取り付け力が加わるように配置することは、周知技術であり(周知例1には、「ボルト105は、圧力結合面、及びフランジ面を貫通し、ボルト105及びねじ加工されたボルト孔112によって、圧力結合面、及びフランジ面との間に取り付け力が加わる、圧力送信機モジュール。」が記載されている(上記2(3)))、引用発明においても、「圧力伝送器10がフランジ13にボルトで締めつけられる」にあたり、ボルトについて、圧力結合面及びフランジ面を貫通し、圧力結合面とフランジ面との間に取り付け力が加えるようにすることは当業者が適宜なし得る事項である。

よって、本願補正発明の<相違点>イに係る構成のようにすることは格別なことではない。

<相違点>ウについて
引用例2には、「フランジ継手において、フランジ摂動面を外径側から内径側へ向けて突出する僅かな凸球面として形成することにより、シール効果を高くする」技術が記載されており(上記2(2))、フランジの接合面を凸球面とすることに格別の困難性を有しないから、引用発明おいて、「取付け力によってプロセス流体が、流路24および26から、または開口部28および30から漏洩するのを防ぐ」ために、フランジの接合面を凸球面とすることは当業者が適宜なし得る事項である。

よって、本願補正発明の<相違点>ウに係る構成のようにすることは格別なことではない。

なお、請求人は、審判請求書3.(4)イ)において、「なお、引用文献2の7頁2?4行目には、「尚フランジ接合面21a、21bは直線的なテーパとしたが、鎖線で示す如くわずかな凸球面としておいてもよい。」との記載がある。しかし、第1図(B)に示された鎖線は、フランジ接合面21a、21bのうちの外径側のみに示されており、開口部を設けた内径側は、依然として平面である。このため、フランジ接合面21a、21bの外径側のみを凸球面とした場合でも、上述した相違点1は解消されない。」と主張している。

しかしながら、引用発明の「圧力センサ16」が「差圧センサ」であって複数の開口部を有する場合においても、「シール効果を高くする」ために、「フランジ摂動面を外径側から内径側へ向けて突出する僅かな凸球面として形成する」技術を引用発明に適用する場合においては、フランジの当接面を僅かな凸球面として、複数の開口部を設けることになるから、その開口部の内部断面は平面ではなく、曲面状になるものであるといえる。したがって、開口部を設けた内径側は、依然として平面であることでもって、相違点1(当審注:<相違点>ウに相当する相違点)は解消されないとする請求人の主張は採用することができない。

また、本願補正発明においては、開口の数については特定がないから、一の開口を有するものも含むものであり、この場合には、フランジ面の中心部に一の開口部が設けられているために、フランジ面が湾曲している場合であっても、開口部の内部断面は平面で表されることになる。
一方、引用発明においても、「圧力センサ16」が「絶対圧力センサ」である場合が示されており、この場合には、通常、フランジの中心部に一の開口を有することになる。したがって、引用発明と本願補正発明とは、この点について格別の相違はなく、一の開口を設けた引用発明に引用例2記載の前記技術を用いることにより、開口部の内部断面は平面で表されることになるから、この点からも、開口部を設けた内径側は、依然として平面であることでもって、相違点1(当審注:<相違点>ウに相当する相違点)は解消されないとする請求人の主張は採用することができない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は、引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。


5 本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明

平成26年11月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1 」の本件補正前の「請求項1」として記載したとおりのものである。

2 引用例

原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2[理由]2 引用例、周知例及びその記載事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は、本願補正発明から、上記「第2 1 本件補正」で検討した本件補正に係る限定を削除するものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 [理由] 4 判断」に示したとおり、引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-30 
結審通知日 2015-07-07 
審決日 2015-07-23 
出願番号 特願2012-514108(P2012-514108)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01L)
P 1 8・ 575- Z (G01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三笠 雄司  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 樋口 信宏
酒井 伸芳
発明の名称 工業プロセス制御システムにおける使用のための圧力トランスミッタ  
代理人 小國 泰弘  
代理人 柴田 明夫  
代理人 三宅 俊男  
代理人 生川 芳徳  
代理人 田中 洋子  
代理人 津国 肇  
代理人 特許業務法人 津国  

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