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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1308258
審判番号 不服2015-5919  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-31 
確定日 2015-12-22 
事件の表示 特願2014- 71892「通信システム、通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月13日出願公開、特開2014-212516、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年3月31日(優先権主張平成25年4月1日)の出願であって、平成26年8月1日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月6日付けで手続補正がなされ、同年12月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年3月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成27年3月31日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否

1.補正の内容

本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1である
「複数の機器相互間の通信を可能とする通信システムであって、
物理的、及び/又は論理的に形成された複数の伝送路と、
それぞれの前記伝送路を介して前記機器相互間を通信可能に接続する接続手段と、
前記伝送路を用いた通信態様の制御を行う通信態様制御手段とを備え、
前記通信態様制御手段は、一又は複数の前記伝送路の帯域利用率を検出する構成を備えると共に、
前記伝送路の前記帯域利用率が予め設定された所定の基準値を越えている場合には、伝送される前記データを分割し、該分割した前記データを複数の前記伝送路を用いて伝送すると共に、
前記帯域利用率が前記所定の基準値以下の場合には、前記データを分割せずに一の前記伝送路を用いて伝送することを特徴とする通信システム。」
を、
「複数の機器相互間の通信を可能とする通信システムであって、
物理的、及び/又は論理的に形成された複数の伝送路と、
それぞれの前記伝送路を介して前記機器相互間を通信可能に接続する接続手段と、
前記伝送路を用いた通信態様の制御を行う通信態様制御手段とを備え、
前記通信態様制御手段は、一又は複数の前記伝送路の帯域利用率を検出する構成を備えると共に、
前記伝送路の前記帯域利用率が予め設定された所定の基準値を越えている場合には、伝送される前記データを分割し、前記データの前記分割後に、複数の前記伝送路のそれぞれの使用状況を確認して未使用の前記伝送路を検出し、検出された未使用の前記伝送路を複数用いて前記分割した前記データを伝送すると共に、
前記帯域利用率が前記所定の基準値以下の場合には、前記データを分割せずに一の前記伝送路を用いて伝送することを特徴とする通信システム。」
とする補正(以下「補正事項1」という。)を含むものである。

2.補正の適否

本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記伝送路の前記帯域利用率が予め設定された所定の基準値を越えている場合には、伝送される前記データを分割し、該分割した前記データを複数の前記伝送路を用いて伝送すると共に、」という事項について、「前記伝送路の前記帯域利用率が予め設定された所定の基準値を越えている場合には、伝送される前記データを分割し、前記データの前記分割後に、複数の前記伝送路のそれぞれの使用状況を確認して未使用の前記伝送路を検出し、検出された未使用の前記伝送路を複数用いて前記分割した前記データを伝送すると共に、」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-64568号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。本説明では、自動車に搭載された車載機器を伝送路に接続した車載通信システムを例にして説明する。
(第1の実施の形態)
本発明に係る通信システムの例を図1(a)に示す。図1(a)の例では、機器10a-10b間及び機器10a-10c間が、第1伝送路12及び第2伝送路14によって接続されている。例えば、機器10aはナビゲーションシステムであり、機器10bはディスプレイであり、機器10cはDVDプレーヤである。また、第1伝送路12及び第2伝送路14は、例えばIEEE1394に準拠した伝送路である。各機器10a,10b,10cは、1もしくは複数の伝送路を使用してデータを送信する送信処理部20、及び/又は、1もしくは複数の伝送路を使用して送信されたデータを受信する受信処理部40を備える。
【0017】
送信処理部20の例を図2に示す。送信処理部20は、機器本体部に接続され、機器本体部から送信データを受取るデータ分割部22と、データ分割部22及び第1伝送路12間に接続された第1送信部30と、データ分割部22及び第2伝送路14間に接続された第2送信部32と、データ分割部22に接続された分割判定部26とを備える。
【0018】
第1送信部30及び第2送信部32は、データ分割部22から送信データを受取り、受取ったデータを夫々第1伝送路12及び第2伝送路14を使用して送信する。データ分割部22は、機器本体部から受取った送信データを第1送信部30に送ったり、受取った送信データを分割等して夫々第1送信部30及び第2送信部32に送る。データ分割部22が受取ったデータ及び分割したデータは、データ分割部22が備える分割用バッファ24に一時的に記憶される。
【0019】
分割判定部26は、データ分割部22から送信される単位時間あたりのデータ量(データ送信量)を検出する手段(送信量検出手段)、検出したデータ送信量(以下、データ伝送量)が基準量(以下、規定伝送量)に達しているか否かを判定する手段(判定手段)として動作し、検出したデータ送信量が規定伝送量に達している場合は、データ分割部22へ、第1伝送路12及び第2伝送路14を使用したデータ伝送を指示する。規定伝送量は、分割判定部26内の図示しない不揮発性メモリに記憶されている。
【0020】
規定伝送量は、第1伝送路12を使用して伝送することが可能な最大データ伝送量に設定される。または、最大データ伝送量の例えば80%に設定すること等も可能である。また、分割判定部26は、例えば分割用バッファ24内の送信待ちデータの記憶容量を検出し、検出した記憶容量が所定値に達した場合に、第1伝送路12及び第2伝送路14を使用したデータ伝送を指示することも可能である。
【0021】
受信処理部40の例を図3に示す。受信処理部40は、第1伝送路12及び第2伝送路14に夫々接続された第1受信部50及び第2受信部52と、第1受信部50及び第2受信部52に接続されたデータ合成部42とを備える。データ合成部42は、機器本体部に接続され、機器本体部に受信データを送る。
【0022】
第1受信部50及び第2受信部52は、夫々第1伝送路12及び第2伝送路14を使用して送信されてくるデータを受信し、受信したデータをデータ合成部42に送る。データ合成部42は、第1受信部50から受取ったデータを受信データとして出力したり、第1受信部50及び第2受信部52から受取ったデータを合成等し、合成等したデータを受信データとして出力する。データ合成部42が受取ったデータ及び合成したデータは、データ合成部42が備える合成用バッファ44に一時的に記憶される。
【0023】
上述したデータの分割及び合成は、小容量の各データをデータ分割部22で第1送信部30及び第2送信部32に振り分けて送信したり、大容量のデータをデータ分割部22で分割し、分割した各データを第1送信部30及び第2送信部32に振り分けて送信し、分割したデータをデータ合成部42で合成して元のデータに戻すことが可能である。」

「【0028】
次に、本発明に係る通信システムを用いたデータ伝送について説明する。
データ伝送に使用する伝送路数の切換手順の例を図6に示す。ただし、初期状態として、第1伝送路12のみを使用してデータ伝送を行っているものとする。
【0029】
送信側機器の送信処理部20の分割判定部26は、単位時間あたりのデータ伝送量を検出する(S10)。データ伝送量がゼロに近く、データ伝送が終了していると見なせる場合(S12:YES)は、処理を終了する。なお、データ伝送が再開された場合は、分割判定部26によりデータ伝送が検出される。データ伝送が行われている場合(S12:NO)、分割判定部26により、規定伝送量と単位時間あたりのデータ伝送量とが比較される(S14)。規定伝送量の方が大きい場合(S14:NO)は、分割判定部26による単位時間あたりのデータ伝送量の検出を続ける(S10)。データ伝送量の方が大きい場合(S14:YES)は、分割判定部26からデータ分割部22に、2本の伝送路(第1伝送路12及び第2伝送路14)の使用を指示する(S16)。
【0030】
2本の伝送路の使用指示を受取ったデータ分割部22は、送信データを2つのグループに分割し、分割した各グループのデータを夫々第1送信部30及び第2送信部32に送り、第1伝送路12及び第2伝送路14を使用した送信を行わせる。前記各グループには、データ又は1つのデータを分割したデータが含まれる。
【0031】
2本の伝送路を使用した場合においても、分割判定部26により、単位時間あたりのデータ伝送量を検出する(S18)。データ伝送が終了した場合(S20:YES)は、処理を終了する。データ伝送が行われている場合(S20:NO)、分割判定部26により、規定伝送量と単位時間あたりのデータ伝送量とが比較される(S22)。データ伝送量の方が大きい場合(S22:NO)は、分割判定部26による単位時間あたりのデータ伝送量の検出を続ける(S18)。規定伝送量の方が大きい場合(S22:YES)は、分割判定部26からデータ分割部22に、1本の伝送路(第1伝送路12)の使用を指示する(S24)。
【0032】
1本の伝送路の使用指示を受取ったデータ分割部22は、送信データの分割を中止し、送信データを第1送信部30に送り、第1伝送路12を使用した送信を行わせる。1本の伝送路を使用した場合においても、分割判定部26により、単位時間あたりのデータ伝送量を検出する(S10)。」

ここで、上記記載を本願優先日前からの技術常識等に照らせば、以下のことがいえる。

ア.一般に、「複数の伝送路」は、「物理的、及び/又は論理的に形成された複数の伝送路」である。したがって、段落【0016】の記載から、引用文献1には、機器間を物理的、及び/又は論理的に形成された複数の伝送路によって接続することが記載されているといえる。

イ.段落【0019】から【0020】までの記載、特に、段落【0020】の「規定伝送量は、第1伝送路12を使用して伝送することが可能な最大データ伝送量に設定される。または、最大データ伝送量の例えば80%に設定すること等も可能である。」という記載から、引用文献1に示される通信システムは、規定伝送量として、一の伝送路の最大伝送量に対する所定の割合(率)を設定できるといえる。

そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「複数の機器相互間の通信を可能とする通信システムであって、
物理的、及び/又は論理的に形成された複数の伝送路と、
それぞれの前記伝送路を介して前記機器相互間を通信可能に接続する送信処理部及び受信処理部と、
データ分割部から送信される単位時間当たりのデータ量であるデータ伝送量を検出する手段、及び前記検出したデータ伝送量が、一の伝送路を使用して伝送することが可能な最大伝送量に対する所定の割合である規定伝送量に達しているか否かを判定する手段として動作する分割判定部とを備え、
前記分割判定部は、データ伝送量を検出し、規定伝送量とデータ伝送量とを比較し、規定伝送量の方が大きい場合は単位時間当たりのデータ伝送量の検出を続け、データ伝送量の方が大きい場合は、データ分割部に複数の伝送路の使用を指示し、
複数の伝送路の使用指示を受け取った前記データ分割部は、送信データを複数のグループに分割し、分割した各グループのデータを夫々複数の伝送路を用いて伝送することを特徴とする通信システム。」

また、特開2007-317011号公報(以下「引用文献2」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0012】
本発明の第2のデータ処理装置は、ホスト装置と、このホスト装置と複数のホストバスにより接続されたブリッジと、このブリッジと複数のデバイスバスにより接続された複数のデバイスを備えている。
ホスト装置は、デバイス装置に送信するデータをデータ転送を行っていないホストバスである未使用バスの本数に分割して分割データを生成しこの分割データをメモリに格納するデータ分割手段と、未使用バスを特定する未使用バス特定情報をブリッジに通知する未使用バス特定情報通知手段と、メモリに格納された各分割データをそれぞれ一本の未使用バスを用いてブリッジに送信するデータ送信手段と、ブリッジから送信された分割データを受信しメモリに格納する分割データ受信手段と、この分割データ受信手段によりメモリに格納された分割データを結合するデータ結合手段を備えている。
ブリッジは、未使用バス特定情報を基に、デバイスから受信したデータを未使用バスの本数で分割し、未使用バスを介してホスト装置に送信する機能と、ホスト装置から受信した分割データを結合してデバイスに送信する機能とを備えたデータ分割結合器を備えている(請求項5)。」

「【0035】
次に、本発明の第2の実施形態であるデータ処理装置7ついて図面を参照して詳細に説明する。データ処理装置4と共通する構成要素には、第1の実施形態の場合と同一の符号を付して説明を省略する。
図5は、データ処理装置7の全体構成を示すブロック図である。
データ処理装置7は、ホスト5とブリッジ6とデバイス群2により構成されている。ホスト5とブリッジ6、ブリッジ6とデバイス群2に含まれるデバイス20は、図1と同様に、それぞれ、ホストバスとデバイスバスで接続されている。
図1のデータ処理装置4においては、ホスト1は、データ分割/結合器11を備えているが、データ処理装置7ではデータ分割/結合器11が行う処理をソフトウェアで行うことにより、従来のホストのハードウェア構成をそのまま使用する。
ブリッジ部6は、データ分割/結合器61を備えている。データ分割/結合器61の構成は、図3に示したものと同様であるが、その動作はやや異なっている。ブリッジ部3ではデータを分割/結合するのみで、図4のように従来のS-ATAのデータ転送フォーマットの未使用フィールドに「PortNumber」および「DataNumber」フィールドを追加する処理は行わない。
【0036】
図6は、ホスト5の機能ブロック図である。
ホスト5は、データ分割手段501、データ結合手段502、メモリ503、未使用バス特定情報通知手段504を備えている。
データ分割手段501は、デバイス20に送信するデータを送信に使用するホストバスの本数に分割しメモリ503に格納する。
データ結合手段502は、上位層ap1、ap2、ap3、ap4がブリッジ6から受信しメモリ503に格納した分割されたデータを結合する。
未使用バス特定情報通知手段504は、ホストバス41、42、43、44のそれぞれがどのデバイス20により使用されているかを示す情報、すなわち未使用バスを特定する情報をブリッジ6に通知する。この通知は、例えば、シリアルATAのコマンドのうち未使用のものを利用して行うことができる。
上記の各手段は、ホスト5のCPU(Central
Processing Unit)がコンピュータプログラムを実行し、ホスト5の各ハードウェアを制御することにより実現される。
【0037】
次に、データ処理装置7の動作について説明する。
データを分割するサイズは任意であるが、ここでは、シリアルATAの最小データサイズに合わせてDwordで説明する。以下の詳細説明では4つのデバイスのうち、デバイス24のみがデータ転送を行う場合の動作を説明する。このデバイスは6Gbpsのデータ転送能力がありホスト側が1.5Gbpsのデータ転送能力しかないため、ホストバス41、42、43、44を全てデバイス24のデータ転送のために使用することによりデバイス24のフルデータ転送能力を使用することができる。
【0038】
では、以下に具体例で説明する。
まず、ホスト5からデバイス24へのデータ転送について説明する。
(1)ソフトウェアによりメモリ上にDword毎に4分割、すなわちデータ転送に使用するホストバスの本数に分割されたデータを用意する。具体的には、データ分割手段501がデータを4分割しメモリ503に格納する。
(2)未使用バス特定情報通知手段504は、未使用バスを特定する情報をブリッジ6に通知する。
(3)ホスト5は、デバイス24に対してコマンドを発行する。
(4)データ転送を開始しホスト側は上位層ap1,2,3,4からそれぞれ4分割されたデータを受信する。
(5)ホスト5は、ap1,2,3,4からのデータをそのままホストバス41、42、43、44に送信する。
(6)ブリッジ6は、デバイス24からDMA(Direct
Memory Access)送信要求(DMA_ACTIVATE_FIS)を受信する。
(7)ブリッジではデータ分割/結合器31内のデータ結合部311がホスト5から受信した分割されたデータh2b1,2,3,4を結合してデータ(b2d4)を生成し、デバイスバス54に送信する。つまり、h2b1のN番目のデータとh2b2のN番目のデータとh2b3のN番目のデータとh2b4のN番目のデータ(N=1,2・・・)というふうに結合する。
(8)デバイス24がb2d4を受信する。」

そうすると、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。

ア.ホスト装置が、ブリッジを介してデバイス装置に送信するデータを未使用バス(データ転送を行っていないホストバス)の本数で分割することによって分割データを生成し、分割データのそれぞれを未使用バスを用いてブリッジに送信すること

(2)対比

本願補正発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明における「送信処理部」及び「受信処理部」は、本願補正発明における「接続手段」に相当する。

イ.引用発明における「データ伝送量」は、伝送路に送信される単位時間当たりのデータ量であるから、送信するデータが伝送路に占める使用帯域といえる。
また、引用発明における「規定伝送量」は、伝送路を使用して伝送することが可能な最大伝送量に対する所定の割合(率)である。
これらの事情を考慮すると、引用発明において、データ伝送量が規定伝送量に達しているか否かを判定するということは、送信するデータが伝送路に占める使用帯域の、伝送路の最大伝送量に対する割合(率)が、所定の割合(率)に達しているか否かを判定することといえる。
したがって、引用発明において、データ分割部から送信される単位時間当たりのデータ伝送量を検出すること、及びデータ伝送量が規定伝送量に達しているか否かを判定することはそれぞれ、本願補正発明において、「一又は複数の伝送路の帯域利用率を検出する」ことと、「伝送路の前記帯域利用率が予め設定された所定の基準値を越えている場合」を判断することに相当する。

ウ.上記イの事項を考慮すると、引用発明の「分割判定部」及び「データ分割部」は、本願補正発明における「通信態様制御手段」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)

「複数の機器相互間の通信を可能とする通信システムであって、
物理的、及び/又は論理的に形成された複数の伝送路と、
それぞれの前記伝送路を介して前記機器相互間を通信可能に接続する接続手段と、
前記伝送路を用いた通信態様の制御を行う通信態様制御手段とを備え、
前記通信態様制御手段は、一又は複数の前記伝送路の帯域利用率を検出する構成を備えると共に、
前記伝送路の前記帯域利用率が予め設定された所定の基準値を越えている場合には、伝送される前記データを分割し、前記伝送路を複数用いて前記分割した前記データを伝送すると共に、
前記帯域利用率が前記所定の基準値以下の場合には、前記データを分割せずに一の前記伝送路を用いて伝送することを特徴とする通信システム。」

(相違点)

本願補正発明は、データの分割後に、複数の伝送路のそれぞれの使用状況を確認して未使用の伝送路を検出し、検出された未使用の伝送路を複数用いて分割したデータを伝送するのに対し、引用発明は、そのようなものとはされていない点

(3)判断

上記相違点について検討する。

引用文献2記載の技術的事項は、ホスト装置が、ブリッジを介してデバイス装置に送信するデータを未使用バス(データ転送を行っていないホストバス)の本数で分割することによって分割データを生成し、分割データのそれぞれを未使用バスを用いてブリッジに送信するものである。
したがって、引用文献2記載の技術的事項は、ホスト装置が、送信するデータの分割に先立って、未使用バスの本数を把握するものといえ、本願補正発明のように、データの分割後に、複数の伝送路のそれぞれの使用状況を確認して未使用の伝送路を検出するものとはいえない。

よって、引用発明に引用文献2記載の技術的事項を適用したとしても、上記相違点に係る「データの分割後に、複数の伝送路のそれぞれの使用状況を確認して未使用の伝送路を検出し、検出された未使用の伝送路を用いて分割したデータを伝送する」という本願補正発明の構成を導出することはできず、そのような構成を採用することが、当業者にとって容易であるとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
ほかに、本願補正発明を特許出願の際独立して特許を受けることができないものというべき理由を発見しない。
よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

3.むすび

本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明

本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1-6に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-12-07 
出願番号 特願2014-71892(P2014-71892)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 575- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 古河 雅輝  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 玉木 宏治
稲葉 和生
発明の名称 通信システム、通信方法  
代理人 石井 明夫  
代理人 佐野 弘  

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