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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47L
管理番号 1308303
審判番号 不服2014-1572  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-29 
確定日 2015-12-04 
事件の表示 特願2009-238614号「清掃具用のホルダ、および清掃具」拒絶査定不服審判事件〔平成23年4月28日出願公開、特開2011-83435号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年10月15日の出願であって、平成25年11月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成26年1月29日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされた(同手続補正に対しては、同年2月26日に手続補正がされている。)。
その後、当審において、平成27年4月3日付けの拒絶理由に対して、同年6月8日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月29日付けの最後の拒絶理由に対して、同年8月31日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2 平成27年8月31日の手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成27年8月31日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、補正前の
「筒部を有する清掃部材を着脱可能に保持するための清掃具用のホルダであって、
上記清掃部材の筒部に挿脱可能なヘッド部を有し、
上記ヘッド部は、複数の樹脂シートを厚み方向に積層して成形した構造をもっており、当該構造は、それ自体、厚み方向への撓み変形後の形状保持特性をもっていることを特徴とする、清掃具用のホルダ。」
から、
「筒部を有する清掃部材を着脱可能に保持するための清掃具用のホルダであって、
上記清掃部材の筒部に挿脱可能なヘッド部を有し、
上記筒部は、上記ヘッド部を全長にわたって内部に収容可能であり、
上記ヘッド部は、複数の樹脂シートを厚み方向に積層して成形した構造をもっており、当該構造は、それ自体、一軸方向に分子配列した樹脂シートを厚み方向に積層して成形されることにより形状保持特性をもっていることを特徴とする、清掃具用のホルダ。」
へと変更する補正事項を含むものである。

2 補正の目的
上記補正事項は、補正前の請求項1に係る発明を特定する事項である「清掃部材の筒部」について「ヘッド部を全長にわたって内部に収容可能」であることに限定し、かつ、「ヘッド部」の「形状保持特性」の「構造」について「一軸方向に分子配列した樹脂シートを厚み方向に積層して成形されることによ」るものであることに限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

3 独立特許要件
(1)本願補正発明
本願補正発明は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、平成27年8月31日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2 1 補正の内容」の補正後の請求項1参照。)により特定されたとおりのものと認める。

(2)引用文献の記載事項
当審における平成27年6月29日付けの最後の拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭62-30056号(実開昭63-136561号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)、登録実用新案第3070795号公報(以下「引用文献2」という。)及び特開2009-22700号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審にて付与した。)。
ア 引用文献1
(ア) 「本考案は室内掃除用のブラシ器に於てブラシ器の中軸に錆びない曲折自在のプレキパイプ等を設けこれにポリプロピレン製の紐或は木綿製等の適切な材料を用いてその紐を以ってブラシとする如くその一端をプレキパイプに円筒形ブラシ状になる如く多数を他の強靭な細紐を以って締着固定させ第一図第二図の如き掃除用ブラシを形成させるもので、而して壁、天井、間隙等の幅の狭い個所に合せて掃除を可能にするためプレキパイプを適当な個所より折り曲げてブラシを矩形状にすると如何なる個所にも適したブラシ器となるものである而してこのブラシ器に従来より使用されている中継式手持柄を中軸に連繋させて設け、この二個の持柄の脱着により持柄の長短を加減し得る様にした曲折自在の室内掃除用ブラシ器。」(実用新案登録請求の範囲)
(イ) 「(ハ)考案が解決しようとする問題点
本考案は(イ)(ロ)の項に述べた如く従来の不利な條件を除くため、清掃する個所の幅に応じてブラシの適切な個所より(3)及(4)の如く自在に曲折させその清掃する個所の幅に合わせたブラシの幅を形成させて容易に且つ完璧な掃除が可能となる如く考案されたブラシ器であって、塵埃に汚染されたブラシは主婦の手で家庭に於て洗濯出来るものであり、又手持柄は二本の連管式であり二本が取り外し出来、高所の掃除には二本の持柄を連繋接続し使用するものとなすのである。」
」(明細書5頁12行?6頁1行)
(ウ) 「(ニ)問題点を解決するための手段
本考案器は錆びず曲折自在なプレキパイプ等の材料を用いた中軸(1)を設け、これにポリプロピレン或は木綿紐類の如き粗材を用いた紐類(2)の一端を中軸に他の細糸或は細紐類を以って固く締着させて第一図及第二図の如くブラシを構成させるものである、而してこのブラシは曲折自在のプレキパイプを曲げることによって(3)及(4)の如く矩形状に曲折し得るものでこの中軸に連なるブラシの手持柄(5)は一般使用の二本連管にして接続部(6)に於て差し込み或は捻じ込み等を以って着脱を可能にし長短の変化を行はせる如くするものである。」(明細書6頁2?13行)
(エ) 「(ホ)作用
ブラシの中軸に曲折自在のプレキパイプが使用されており、第一図、第二図の如くブラシが清掃する個所の幅に応じてその幅に合わせて(3)(4)の如く曲折変更出来るので個所の清掃に適応する便利な掃除器となるものである、又中軸に連なる手持柄(5)が(ニ)の項に述べた如く着脱自在の二本の連管より成るため、高所又は家具と家具との間隙或は机及テーブルの下或はピアノの下等の狭い個所の清掃に特に便利である。」(明細書6頁13行?7頁3行)
(オ) 「(ヘ)実施例
本器を使用することにより従来不可能であった壁や部屋の隅、天井の隅及家具の狭い間隙或は箪笥の裏、或はテーブルや椅子又はピアノの下等の狭い個所をその個所の幅にブラシを曲げた先端の幅を合わせて完璧に清掃することが出来る掃除器となしたものである。」(明細書7頁4?10行)
(カ) 「(ト)考案の効果
本考案は粗材が容易に入手出来、製作も簡単であるため製産コストを低廉にし、而も従来清掃不可能の如くされていた部屋や天井の隅々まで完全に清掃出来るようになり、又ブラシの洗濯も自宅で手軽に出来るので取り換えるための出費の節約も出来る便利で経済的に有利な掃除器となるものである。」(明細書7頁11?18行)
(キ) 上記記載事項(ア)?(カ)を総合し、「手持柄が連なる中軸」について着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「掃除用ブラシと共に室内掃除用のブラシ器を構成する手持柄が連なる中軸であって、
中軸は、曲折自在なプレキパイプであり、
掃除用ブラシの多数の紐類の一端はプレキパイプに締着固定されており、
曲折自在のプレキパイプを、清掃する個所の幅に応じてブラシの適切な個所より曲折させることによって、掃除用ブラシは、その清掃する個所の幅に合わせたブラシの幅に形成できるようにしている、
室内掃除用のブラシ器の手持柄が連なる中軸。」

イ 引用文献2
(ア) 「【0012】
他方、(M)は上記電気掃除機(C)と別個なモップであり、その掃除機(C)の延長管(15)に沿って延在する一定長さの把手(17)を備えている。その把手(17)を図示のような伸縮式や継ぎ足し式などとして、長さ調整自在に形成することが好ましい。
【0013】
(18)はそのモップ(M)における把手(17)の先端部へ、上記電気掃除機(C)のゴミ吸口盤(16)と追従して回動し得るように枢着されたフレキシブルアームであって、フレキシブルな金属螺旋管やワイヤー軸などから成り、これを手先により折り曲げた場合、その折り曲げ形状を自づと維持できるようになっている。
【0014】
又、(19)はゴミ吸着用の化学ぞうきんであって、布地やその他の柔軟な材料から上記フレキシブルアーム(18)とほぼ対応する長さの帯状に形成されたフレキシブル支持ベース(20)と、その支持ベース(20)から一体的に起毛された多数の綿糸(21)とを備え、その綿糸(21)にゴミ吸着用の薬液(その主成分-鉱物系油剤、非イオン系界面活性剤、流動パラフィンなど)が含浸されている。
【0015】
そして、その化学ぞうきん(19)のフレキシブル支持ベース(20)に設けられた吊りバンドや差込み袋などの係止具(22)が、上記フレキシブルアーム(18)へ抜き差し自在に差し込まれて、そのフレキシブルアーム(18)への係止状態に付属一体化されるようになっている。」
(イ) 「【0029】
更に、上記電気掃除機(C)の延長管(15)とモップ(M)の把手(17)とは着脱自在であるため、その電気掃除機(C)とモップ(M)とを各別の単独でも使用することができ、その場合にはモップ(M)の上記フレキシブルアーム(18)とフレキシブル支持ベース(20)を、図7のような直線形態に保って掃除作業すれば良く、適当に折り曲げて使うことも可能である。」

ウ 引用文献3
(ア) 「【請求項1】
角柱、円柱等の細長いスポンジと、スポンジ内部に設けられた芯材とにより構成され、スポンジの形状を変化させたときに、その変化したスポンジの形状が芯材によって保持することができることを特徴とする形状自在スポンジ。」
(イ) 「【0006】
本発明の第1の実施の形態を説明する。
(イ)角柱のスポンジ(1)のほぼ中心部に針金や形状保持性のある樹脂等の芯材(2)を設ける。なお、スポンジは、軸方向に長いものであれば円柱形等でも問題なく、端部が円錐、角錐のように細くなっている形状等でも問題ない。
(ロ)図面では、芯材(2)は、角柱のスポンジ(1)の全体に通してあるが、不連続であっても形状が保持できる程度に設ければ問題ない。
(ハ)角柱のスポンジ(1)の側面、側面の一部、若しくは全面に、角柱のスポンジ(1)と異なる網目等のものや研磨材入り不織物等の素材を設けても問題ない。
本発明は、以上の構成よりなっている。
本発明を使用するときは、様々な形状の食器等に対応できるように、本発明の形状を変化させて使用する。」

(3)対比・判断
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「室内掃除用のブラシ器」及び「掃除用ブラシ」は、その機能からみて、本願補正発明の「清掃具」及び「清掃部材」に相当する。
引用発明の「中軸」は、掃除用ブラシの多数の紐類の一端が締着固定されるものであり、掃除用ブラシは締着固定されて、中軸に保持されることになるから、本願補正発明の「ヘッド部」に相当する。よって、引用発明の「掃除用ブラシ」が「締着固定される」「中軸」と本願補正発明の「清掃部材の筒部に挿脱可能なヘッド部」とは、「清掃部材を保持するヘッド部」であるという限りにおいて一致する。
本願補正発明の「ホルダ」は、その形状・構造が明らかでないところ、本願明細書の記載を考慮してその用語の意義を解釈すると、「本実施形態の清掃具Aは、たとえば壁や床、天井といった平面状あるいは曲面状の清掃面に対する清掃に適したものであり、ヘッド部1、柄2、および清掃部材3を備える(図1および図2参照)。ヘッド部1および柄2は、互いに連結されて一体となり、清掃部材3を保持するホルダとして用いられる。」(【0022】)との記載から、「ヘッド部1および柄2は、互いに連結されて一体となり、清掃部材3を保持する」ものであることが把握される。そうすると、引用発明の「手持柄が連なる中軸」は、互いに連結されて一体となって、掃除用ブラシを保持するものであるから、本願補正発明の「ホルダ」に相当する。
引用発明の「中軸」を構成する「曲折自在なプレキパイプ」は、「清掃する個所の幅に応じてブラシの適切な個所より曲折させることによって、掃除用ブラシは、その清掃する個所の幅に合わせたブラシの幅に形成できる」から、本願補正発明の「ヘッド部」が「それ自体」、「形状保持特性をもっている」「構造」であることに相当する。

イ よって、本願補正発明は、引用発明とは、
「清掃部材を保持するための清掃具用のホルダであって、
上記清掃部材を保持するヘッド部を有し、
上記ヘッド部の構造は、それ自体、形状保持特性をもっている、清掃具用のホルダ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
清掃部材について、本願補正発明は、筒部を有し、当該筒部はヘッド部を全長にわたって内部に収容可能であり、ヘッド部を挿脱可能にして、清掃具用のホルダに着脱可能に保持されるものであるのに対して、引用発明は、掃除用ブラシは中軸に締着固定されている点。
[相違点2]
形状保持特性をもつ構造について、本願補正発明は、複数の樹脂シートを厚み方向に積層して成形した構造をもっており、当該構造は、それ自体、一軸方向に分子配列した樹脂シートを厚み方向に積層して成形されるものであるのに対して、引用発明は、曲折自在なプレキパイプである点。

ウ そこで、上記各相違点について検討する。
まず、上記相違点1について検討する。
引用文献2には、モップ(M)のフレキシブルアーム(18)に備えられる化学ぞうきん(19)であって、当該化学ぞうきん(19)のフレキシブル支持ベース(20)には吊りバンドや差込み袋などの係止具(22)が設けられ、当該係止具(22)にモップ(M)のフレキシブルアーム(18)を抜き差し自在に差し込んで、フレキシブルアーム(18)に係止一体化する構造の化学ぞうきん(19)が記載されている(上記記載事項イ(ア))。そして、上記係止具(22)は、フレキシブルアームが差し込まれる部分の形状・構造からみて、筒状又は有底筒状ということができる。そうすると、引用文献2に記載された上記構造の化学ぞうきん(19)は、本願補正発明の「筒部を有し、ヘッド部を挿脱可能にして、清掃具用のホルダに着脱可能に保持される清掃部材」に相当する。
また、引用文献2に記載された筒状又は有底筒状の係止具(22)は、フレキシブルアーム(18)の全長にわたって設けられてはいないが、この種の清掃具において、清掃部材を着脱可能に保持する構成として、清掃部材に筒部を設け、当該筒部が清掃具のヘッド部を全長にわたって内部に収容可能であり、ヘッド部を挿脱可能にして、清掃具用のホルダに着脱可能に保持されるようにすることは、例えば、特開2005-237591号公報(袋状の布地からなるモップ状清掃部材4、可撓性チューブ3、3A?3G【0026】?【0046】、【図1】?【図12】)、特開2007-68772号公報(清掃部材の装着袋11a、可撓性張出し部15、【0008】?【0021】、【図1】?【図2】)、特開2006-204723号公報(鞘状部55、保持部12、【0018】、【0026】、【図1】?【図2】)及び特開平10-328109号公報(袋状の拭き取り具1、ホルダー2の挿入部6、【0009】?【0015】、【図1】?【図4】)にみられるように本願出願前の周知技術である。
そして、引用発明の「手持柄が連なる中軸」と引用文献2に記載された「把手(17)の先端部に枢着されたフレキシブルアーム(18)」は、曲折自在な部分に清掃部材を保持させた清掃具用のホルダであって、曲折自在な部分は、折り曲げた場合にはその折り曲げ形状を自ずと維持できる構造を有する点で共通するものであるところ、引用発明に引用文献2に記載された上記技術的事項を適用しようとする程度のことは当業者であれば容易になし得ることであり、その適用を阻害する要因もない。
そうすると、引用発明の掃除用ブラシに筒状又は有底筒状の係止具を設け、当該係止具に中軸を抜き差し自在に差し込んで、中軸に係止一体化することは、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用することにより当業者が容易になし得ることであり、その際、当該筒状の係止具を中軸の全長にわたって内部に収容可能に設けるようにする程度のことは、上記周知技術に照らして当業者が通常の創作能力を発揮することにより適宜に採用し得た設計的事項である。
よって、引用発明において上記相違点1に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得ることである。
次に、上記相違点2について検討する。
引用発明の清掃具における曲折自在な部材(中軸)はプレキパイプからなるところ、引用文献3には、清掃部材の形状を保持する芯材を屈曲自在でかつ屈曲後の形状を保持することが可能な材質で構成することが記載されており、当該芯材の材質に形状保持性のある樹脂を用い得ることが記載されている(上記記載事項ウ(ア)(イ))。
そして、形状保持性のある樹脂の具体的素材として、複数の樹脂シートを厚み方向に積層して成形した構造をもっており、当該構造は、それ自体、一軸方向に分子配列した樹脂シートを厚み方向に積層して成形される素材を用いること自体は、例えば当審における平成27年6月29日付けの最後の拒絶理由に引用した引用文献4[特開2008-308175号公報](【0008】?【0043】)、引用文献5[特開2009-153701号公報](【0007】?【0048】)、引用文献6[特開2009-153702号公報](【0011】?【0050】)にみられるように本願出願前の周知技術である。
引用発明の中軸の素材について、同様の形状保持特性をもつ素材として引用文献3記載の形状保持性のある樹脂を用いる程度のことは当業者が容易に想到し得ることであるし、その際、そのような樹脂素材として周知である複数の樹脂シートを厚み方向に積層して成形した構造をもっており、当該構造は、それ自体、一軸方向に分子配列した樹脂シートを厚み方向に積層して成形される素材を具体的に選択することに特段の困難性は認められない。
よって、引用発明において上記相違点2に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

エ そして、上記相違点1及び2に係る事項をあわせみても、本願補正発明の奏する効果は引用発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項並びに上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであり、格別顕著なものとはいえない。

オ よって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項並びに上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)小括
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項並びに上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年6月8日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2 1 補正の内容」の補正前の請求項1参照。)により特定されるとおりのものと認める。

2 引用文献の記載事項
当審における平成27年6月29日付けの最後の拒絶理由に引用された引用文献及びその記載事項並びに引用発明は、前記「第2 3(2)引用文献の記載事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断
(1) 本願発明と引用発明とを対比する。
上記「第2 3(3)ア」における引用発明と本願補正発明との対比を参酌すると、本願発明は引用発明とは、
「清掃部材を保持するための清掃具用のホルダであって、
上記清掃部材を保持するヘッド部を有し、
上記ヘッド部の構造は、それ自体、形状保持特性をもっている、清掃具用のホルダ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1’]
清掃部材について、本願発明は、筒部を有し、ヘッド部を挿脱可能にして、清掃具用のホルダに着脱可能に保持されるものであるのに対して、引用発明は、掃除用ブラシは中軸に締着固定されている点。
[相違点2’]
形状保持特性をもつ構造について、本願発明は、複数の樹脂シートを厚み方向に積層して成形した構造をもっており、当該構造は、それ自体、厚み方向への撓み変形後の形状保持特性をもっているものであるのに対して、引用発明は、曲折自在なプレキパイプである点。

(2) そこで、上記各相違点について検討する。
まず、上記相違点1’について検討する。
上記相違点1’は、上記「第2 3(3)イ」の[相違点1]において「当該筒部はヘッド部を全長にわたって内部に収容可能であり」という点が省かれたものに相当するから、上記「第2 3(3)ウ」における上記相違点1についての検討を踏まえれば、引用発明において上記相違点1’に係る本願発明の構成を採用することは、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用することにより、当業者が容易になし得ることである。
次に、上記相違点2’について検討する。
引用発明の清掃具における曲折自在な部材(中軸)はプレキパイプからなるところ、引用文献3には、清掃部材の形状を保持する芯材を屈曲自在でかつ屈曲後の形状を保持することが可能な材質で構成することが記載されており、当該芯材の材質に形状保持性のある樹脂を用い得ることが記載されている(上記記載事項ウ(ア)(イ))。
そして、形状保持性のある樹脂の具体的素材として、複数の樹脂シートを厚み方向に積層して成形した構造をもっており、当該構造は、それ自体、厚み方向への撓み変形後の形状保持特性をもっている素材を用いること自体は、例えば当審における平成27年6月29日付けの最後の拒絶理由に引用した引用文献4[特開2008-308175号公報](【0008】?【0043】)、引用文献5[特開2009-153701号公報](【0007】?【0048】)、引用文献6[特開2009-153702号公報](【0011】?【0050】)にみられるように本願出願前の周知技術である。
引用発明の中軸の素材について、同様の形状保持特性をもつ素材として引用文献3記載の形状保持性のある樹脂を用いる程度のことは当業者が容易に想到し得ることであるし、その際、そのような樹脂素材として周知である複数の樹脂シートを厚み方向に積層して成形した構造をもっており、当該構造は、それ自体、一軸方向に分子配列した樹脂シートを厚み方向に積層して成形される素材を具体的に選択することに特段の困難性は認められない。
よって、引用発明において上記相違点2’に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3) そして、上記相違点’1及び2’に係る事項をあわせみても、本願発明の奏する効果は引用発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項並びに上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであり、格別顕著なものとはいえない。

(4) よって、本願発明は、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項並びに上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項並びに上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-05 
結審通知日 2015-10-06 
審決日 2015-10-19 
出願番号 特願2009-238614(P2009-238614)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (A47L)
P 1 8・ 121- WZ (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 睦  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 千壽 哲郎
森本 康正
発明の名称 清掃具用のホルダ、および清掃具  
代理人 吉田 稔  
代理人 田中 達也  

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