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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T |
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管理番号 | 1308328 |
審判番号 | 不服2014-18042 |
総通号数 | 193 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-09-10 |
確定日 | 2015-12-04 |
事件の表示 | 特願2010- 80747「画像処理装置、撮像装置、画像処理方法およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月27日出願公開、特開2011-215707〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成22年3月31日の出願であって、平成25年12月2日付けの拒絶理由通知に応答して平成26年2月5日付けで手続補正がなされたが、平成26年6月4日付けで拒絶査定がなされた。 これに対し、平成26年9月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。 第2.平成26年9月10日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年9月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正は、平成26年2月5日付けの手続補正による特許請求の範囲を補正するものであり、請求項1に係る次の補正事項を含むものである(アンダーラインは補正箇所)。 (補正前の請求項1) 「被写体を、光学系を介した複数の波長域の光のそれぞれのフォーカス位置において撮像することによって得られた波長域ごとの複数の画像を取得する画像取得部と、 前記複数の画像のそれぞれの撮像情報を取得する撮像情報取得部と、 前記撮像情報に対応する前記光学系の光学伝達関数に対応する量を波長域ごとに取得する光学伝達関数取得部と、 前記複数の画像のそれぞれに対応する前記光学系の光学伝達関数に対応する量を用いて、波長域ごとに前記複数の画像を回復する画像回復部と、 波長域ごとに回復された複数の画像を合成する画像合成部と、 を有し、 画面内に互いに被写体距離が異なる第1被写体と第2被写体とがある場合、前記画像回復部は、前記第1被写体を各波長域の光に対応する前記フォーカス位置で撮像する際の各波長域の前記光学伝達関数に対応する量を用いて、前記第1被写体と前記第2被写体の各波長域の画像を回復することを特徴とする画像処理装置。」 とあるのを、 (補正後の請求項1) 「第1被写体を、光学系を介した複数の波長域の光のそれぞれのフォーカス位置において撮像することによって得られた波長域ごとの複数の画像を取得する画像取得部と、 前記複数の画像のそれぞれの撮像情報を取得する撮像情報取得部と、 前記撮像情報に対応する前記光学系の光学伝達関数に対応する量を波長域ごとに取得する光学伝達関数取得部と、 前記複数の画像のそれぞれに対応する前記光学系の光学伝達関数に対応する量を用いて、波長域ごとに前記複数の画像を回復する画像回復部と、 波長域ごとに回復された複数の画像を合成する画像合成部と、 を有し、 画面内に前記第1被写体と被写体距離が異なる第2被写体がある場合、前記画像回復部は、前記第1被写体を各波長域の光に対応する前記フォーカス位置で撮像する際の各波長域の前記光学伝達関数に対応する量を用いて、前記第1被写体と前記第2被写体の各波長域の画像を回復することを特徴とする画像処理装置。」 と補正する。 2.補正の適否 2-1.補正の範囲 上記補正事項の「第1被写体を、光学系を介した複数の波長域の光のそれぞれのフォーカス位置において撮像することによって得られた波長域ごとの複数の画像を取得する」、及び、「画面内に前記第1被写体と被写体距離が異なる第2被写体がある場合」という事項は、願書に最初に添付した明細書の記載(段落【0034】)に基づくものであり、上記補正事項は、特許法第17条の2第3項に規定される願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 2-2.補正の目的 上記補正事項は、補正前の請求項1の「被写体を、光学系を介した複数の波長域の光のそれぞれのフォーカス位置において撮像することによって得られた波長域ごとの複数の画像を取得する」の「被写体」を、「第1被写体」という特定の被写体に限定し、それに伴い、補正前の請求項1の「画面内に互いに被写体距離が異なる第1被写体と第2被写体とがある場合」を、「第1被写体」が既出となった「第1被写体」であることを示すために「前記第1被写体」とし、文全体の表現を整合させて「画面内に前記第1被写体と被写体距離が異なる第2被写体がある場合」としたものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 2-3.独立特許要件 上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項であるので、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定された特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記1.の(補正後の請求項1)に記載した事項により特定される次のとおりのものである。なお、本願補正発明の各構成の符号は便宜的に当審で付したものである。 (本願補正発明) (A)第1被写体を、光学系を介した複数の波長域の光のそれぞれのフォーカス位置において撮像することによって得られた波長域ごとの複数の画像を取得する画像取得部と、 (B)前記複数の画像のそれぞれの撮像情報を取得する撮像情報取得部と、 (C)前記撮像情報に対応する前記光学系の光学伝達関数に対応する量を波長域ごとに取得する光学伝達関数取得部と、 (D)前記複数の画像のそれぞれに対応する前記光学系の光学伝達関数に対応する量を用いて、波長域ごとに前記複数の画像を回復する画像回復部と、 (E)波長域ごとに回復された複数の画像を合成する画像合成部と、 を有し、 (F)画面内に前記第1被写体と被写体距離が異なる第2被写体がある場合、前記画像回復部は、前記第1被写体を各波長域の光に対応する前記フォーカス位置で撮像する際の各波長域の前記光学伝達関数に対応する量を用いて、前記第1被写体と前記第2被写体の各波長域の画像を回復すること (G)を特徴とする画像処理装置。 (2)刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1である特開2008-85773号公報(以下「引用例1」という)には、「色収差補正撮像装置及び色収差補正方法」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 (ア)「【発明を実施するための最良の形態】 【0018】 以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。 ここでは、本発明を、デジタルスチルカメラに適用した例について説明する。 図1のブロック図に示すように、本実施形態に係るデジタルスチルカメラ1(色収差補正撮像装置)は、図示せぬ筐体内に、撮像光学系2と、撮像光学系2が結んだ像を画像情報として取得する撮像機能部3と、撮像機能部3が取得した画像情報等の各種画像情報を表示する画像情報表示パネルとを設けた構成とされている。」 (イ)「【0020】 また、撮像機能部3には、撮像光学系2の光軸O方向における後述するイメージセンサ21(撮像素子)と筐体との相対位置を変化させる駆動装置5が設けられている。 駆動装置5は、イメージセンサ21と筐体との相対位置を変化させることにより、光軸O方向における撮像光学系2とイメージセンサ21との相対距離を変化させるものである。駆動装置5は、例えばねじ送り機構やシリンダ機構の他、ピエゾ素子またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いたアクチュエータ等、任意の機構によって構成することができる。」 (ウ)「【0023】 撮像光学系3の背後には、平板状のイメージセンサ21(撮像素子)が配置されている。これにより、イメージセンサ21の平板状の受光エリアには、撮像光学系3によって被写体画像が結像されるようになっている。 イメージセンサ21としては、CCD(Charge Coupled Devices)を用いたものや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を用いたものなど、任意のものを用いることができる。また、グローバルシャッタ方式の高速CMOSセンサや、シングルスロープ型A/D変換器を各画素列ごとに集積して高速化した高速CMOSセンサ等を用いることができる。本実施形態では、イメージセンサ21として、CCDを用いたイメージセンサを用いている。 【0024】 撮像装置本体2には、イメージセンサ21を駆動するCCDドライバ22が設けられている。これにより、イメージセンサ21は、撮像光学系3を介して得られた光学的な被写体画像を電気的な撮像信号に変換して出力する。 撮像装置本体2には、イメージセンサ21が出力する撮像信号を増幅するアンプ23と、アンプ23の出力をデジタル変換するA/D変換器24が設けられている。 【0025】 イメージセンサ21の受光面には微小な受光素子がマトリクス状に配列されている。また、各受光素子には、赤(R),緑(G),青(B)のいずれかの色に対応する微小なマイクロカラーフィルタが設けられている。イメージセンサ21の各受光素子から各マイクロカラーフィルタに対応する色ごとにシリアルに出力される撮影信号は、アンプ23で適切なレベルに増幅された後、A/D変換器24によってデジタル変換されて、赤色,緑色、青色の各画像データとされる。 なお、CCDとしては、上述したマイクロカラーフィルタを用いたカラーCCD方式の色分解方法を利用するCCDの他、周方向に複数の異なるフィルタ部が設けられた円盤状のカラー回転フィルタを有し、カラー回転フィルタを回転させてCCDの受光面を覆うフィルタ部を切り換えることで受光面に入射する光の色分解を行う色フィルタ切換方式のCCDを用いることができる。」 (エ)「【0026】 撮像装置本体2には、イメージセンサ21によって得られた画像データに対してホワイトバランス調節、ガンマ補正などの各種データ処理を行うデータ処理回路25(画像処理装置)と、データ処理回路25によって処理された画像データを画像情報としてLCDパネル4に表示するLCDドライバ26とが設けられている。撮像装置本体2が撮影モードとなっている場合には、データ処理回路25にはA/D変換器24からの画像データが入力され、このデータ処理回路25で必要な処理が行われた1画像分の画像データが次々にLCDドライバ26に送られる。これにより、LCDパネル4には撮影中の被写体画像が動画として表示されるようになる。なお、システムコントローラ20は、撮影モード時では、LCDパネル4にイメージセンサ21で撮影中の画像を表示する表示モードと、LCDパネル4に撮影中の画像を表示しない非表示モードとに切り換えることができるようになっている。」 (オ)「【0032】 以下、このデジタルスチルカメラ1において、撮像光学系2がズームレンズである場合の撮影動作の詳細について、図2のフローチャートを用いて説明する。 [第一回相対位置調整] システムコントローラ20は、入力部32を介して使用者から撮影指令が入力されると、任意のズームポジションにある撮像光学系2に対して、不図示のレンズ駆動装置を操作して、撮像光学系2とイメージセンサ21との相対距離を調整する(ステップS1)。具体的には、撮像光学系2の光軸O方向での撮像光学系2とイメージセンサ21との相対距離を、デジタルスチルカメラ1によって取得する画像情報に含めたい光の波長域のうちの一部の波長域に対する撮像光学系2の焦点距離に一致させる。 次に、撮像光学系2のズームポジションの検出が行われる(ステップS2)。そして検出されたズームポジション及び撮像光学系2のレンズ構成から、予め算出される像面の湾曲状態に合わせて最適な被写体像が得られる撮影回数(2回からn回)が決定されるとともに、イメージセンサ21の移動方向及び作動量が決定される(ステップS3)。 【0033】 [第一回撮影] この状態で、システムコントローラ20は、CCDドライバ22に動作指令を出して、第一回目の撮影を行う(ステップS4)。 本実施形態では、イメージセンサ21の各受光素子から各マイクロフィルタに対応する色ごとにシリアルに出力される撮影信号に基づいて例えば赤色、緑色、青色のうちの一色について画像データが取得される。 この状態では、デジタルスチルカメラ1によって取得する画像情報に含めたい光の波長域のうちの一部の波長域に対応する単色の画像情報が得られる。 【0034】 [第二回相対位置調整] システムコントローラ20は、第一回撮影が終了すると、駆動装置5を操作して、撮像光学系2とイメージセンサ21との相対距離を変更する(ステップS5)。具体的には、撮像光学系2の光軸O方向での撮像光学系2とイメージセンサ21との相対距離を、デジタルスチルカメラ1によって取得する画像情報に含めたい光の波長域のうち、第一回相対位置調整時とは異なる別のRGBの中の一色に対応する波長域の光に対する撮像光学系2の焦点距離に一致させる。 【0035】 [第二回撮影] この状態で、システムコントローラ20は、CCDドライバ22に動作指令を出して、第二回目の撮影を行う(ステップS6)。 この状態では、デジタルスチルカメラ1によって取得する画像情報に含めたい光の波長域のうち、第一回撮影時に得た画像情報とは異なる一部の波長域に対応する単色の画像情報が得られる。 【0036】 以降は、デジタルスチルカメラ1によって取得する画像情報に含めたい光の波長域全体について対応する画像情報が取得されるまで、システムコントローラ20が相対位置調整動作と撮影動作とを繰り返す(ステップSn,Sn+1)。 このように単色の光について個別に画像情報の取得を行うことで、軸上色収差による影響を最小とした、鮮明な単色の画像情報が得られる。」 (カ)「【0038】 本実施形態では、デジタルスチルカメラ1は、可視光域の光全体について画像情報を取得する構成とされている。 具体的には、第一回相対位置調整では、図4に示すように、撮像光学系2の光軸O方向での撮像光学系2とイメージセンサ21との相対距離を、赤色光に対する撮像光学系2の焦点距離DRに一致させる。この状態では、イメージセンサ21の受光面と撮像光学系2による赤色光の結像面が一致するので、受光面には、赤色光のみによる像が鮮明に結像される。 第一回撮影では、システムコントローラ20は、データ処理回路25の動作を制御して、A/D変換器24からデータ処理回路25に出力される画像データのうち、赤色の画像データのみ抽出させる。これにより、赤色光に対応する単色の画像情報が得られる。 【0039】 第二回相対位置調整では、図5に示すように、撮像光学系2の光軸O方向での撮像光学系2とイメージセンサ21との相対距離を、緑色光に対する撮像光学系2の焦点距離DGに一致させる。この状態では、イメージセンサ21の受光面と撮像光学系2による緑色光の結像面が一致するので、受光面には、緑色光のみによる像が鮮明に結像される。 第二回撮影では、システムコントローラ20は、データ処理回路25の動作を制御して、A/D変換器24からデータ処理回路25に出力される画像データのうち、緑色の画像データのみ抽出させる。これにより、緑色光に対応する単色の画像情報が得られる。 【0040】 第三回相対位置調整では、図6に示すように、撮像光学系2の光軸O方向での撮像光学系2とイメージセンサ21との相対距離を、青色光に対する撮像光学系2の焦点距離DBに一致させる。この状態では、イメージセンサ21の受光面と撮像光学系2による青色光の結像面が一致するので、受光面には、青色光のみによる像が鮮明に結像される。 第三回撮影では、システムコントローラ20は、データ処理回路25の動作を制御して、A/D変換器24からデータ処理回路25に出力される画像データのうち、青色の画像データのみ抽出させる。これにより、青色光に対応する単色の画像情報が得られる。」 (キ)「【0042】 次に、システムコントローラ20は、データ処理回路25の動作を制御して、得られた単色の画像情報を合成して、多色の画像情報(完成画像情報)を生成する(ステップSn+2)。 上記のように、各回の撮影では、軸上色収差による影響を最小とした、鮮明な画像情報が得られる。このような鮮明な単色の画像情報を合成することで、軸上色収差による影響を最小とした、鮮明な多色の画像情報が得られる。」 (3)引用発明 a.色収差補正撮像装置 引用例1の前掲(ア)、(イ)の記載によれば、引用例1には、色収差補正撮像装置が記載されており、色収差補正撮像装置は、撮像光学系、撮像機能部を有し、撮像機能部は、イメージセンサ、撮像光学系とイメージセンサとの相対距離を変化させる駆動装置などを有している。 b.イメージセンサ、アンプ、及びA/D変換器 引用例1の前掲(ウ)の記載によれば、引用例1の色収差補正撮像装置が有するイメージセンサは、撮像光学系を介して得られた光学的な被写体画像を電気的な撮像信号に変換して出力するものであり、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかに対応する受光素子を備え、色ごとにシリアルに撮影信号を出力する。そして、アンプ、A/D変換器により、出力される撮影信号から、赤色、緑色、青色の各画像データが形成される。 c.撮影動作 引用例1の前掲(エ)ないし(カ)の記載によれば、引用例1の色収差補正撮像装置は、システムコントローラの制御により、次のような撮影動作を行う。 イメージセンサの受光面を、駆動装置により赤色光、緑色光、青色光のそれぞれの波長域に対応する撮像光学系の焦点距離に一致させて撮影を行い、イメージセンサからそれぞれの波長域に対応する撮影信号を出力する。 A/D変換器は、撮影信号に基づいてそれぞれの波長域に対応する鮮明な単色の画像データを、色収差補正撮像装置に設けられた画像データの処理を行う「データ処理回路(画像処理装置)」に出力する。 「データ処理回路(画像処理装置)」は、画像データからそれぞれの波長域に対応する鮮明な単色の画像情報を取得する。 d.データ処理回路(画像処理装置) 上記b.及びc.の検討をまとめると、「データ処理回路(画像処理装置)」は、「イメージセンサの受光面を、赤色光、緑色光、青色光のそれぞれの波長域に対応する撮像光学系の焦点距離に一致させて撮影された被写体画像の、それぞれの波長域に対応する鮮明な単色の画像情報を取得」するものである。 また、引用例1の前掲(キ)の記載によれば、「データ処理回路(画像処理装置)」は、「得られた単色の画像情報を合成して、鮮明な多色の画像情報を生成する」ものである。 そして、「データ処理回路(画像処理装置)」は、色収差補正撮像装置に設けられた画像データの処理を行う「画像処理装置」であり、この「画像処理装置」を引用例1に記載された発明として認定する。 e.まとめ 以上によれば、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。 (引用発明) (a)イメージセンサの受光面を、赤色光、緑色光、青色光のそれぞれの波長域に対応する撮像光学系の焦点距離に一致させて撮影された被写体画像の、それぞれの波長域に対応する鮮明な単色の画像情報を取得し、 (b)得られた単色の画像情報を合成して、鮮明な多色の画像情報を生成する、 (c)画像処理装置。 (4)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 a.本願補正発明の構成(A)と、引用発明の構成(a)の対比 引用発明の「画像処理装置」の構成(a)は、構成(a)に存在する「被写体像」というものは被写体を撮像光学系によりイメージセンサの受光面に結像させたものであるから、語順を整理して言い換えれば、『被写体を、撮像光学系を介して、赤色光、緑色光、青色光のそれぞれの波長域に対応する撮像光学系の焦点距離に一致させたイメージセンサの受光面に結像させた被写体画像を撮影し、それぞれの波長域に対応する鮮明な単色の画像情報を取得する』という動作を行う構成ということができる。 ここで、イメージセンサの受光面に被写体画像として結像される『被写体』は、撮影される自然画像の中で、撮像光学系の焦点距離が合わせられた特定の距離に存在する被写体であり、それを「第1被写体」と呼称することは任意のことである。 そして、『撮像光学系』は、本願補正発明の「光学系」に相当し、『赤色光、緑色光、青色光のそれぞれの波長域に対応する撮像光学系の焦点距離に一致させたイメージセンサの受光面に結像させた被写体画像を撮影』するということは、本願補正発明の「複数の波長域の光のそれぞれのフォーカス位置において撮像すること」に相当する。 また、そのように撮影し、『それぞれの波長域に対応する鮮明な単色の画像情報を取得する』ということは、本願補正発明の「撮像することによって得られた波長域ごとの複数の画像を取得する」ことに相当する。 よって、引用発明の構成(a)は、本願補正発明の構成(A)の「画像取得部」が行う「第1被写体を、光学系を介した複数の波長域の光のそれぞれのフォーカス位置において撮像することによって得られた波長域ごとの複数の画像を取得する」という動作と一致し、構成(a)を有する「画像処理装置」は、本願補正発明の「画像取得部」に相当する構成を有しているものといえる。 b.本願補正発明の構成(B)、(C)、(D)について 引用発明は、本願補正発明の構成(B)の「前記複数の画像のそれぞれの撮像情報を取得する撮像情報取得部」、構成(C)の「前記撮像情報に対応する前記光学系の光学伝達関数に対応する量を波長域ごとに取得する光学伝達関数取得部」、構成(D)の「前記複数の画像のそれぞれに対応する前記光学系の光学伝達関数に対応する量を用いて、波長域ごとに前記複数の画像を回復する画像回復部」を有していない点で、本願補正発明と相違する c.本願補正発明の構成(E)と、引用発明の構成(b)の対比 引用発明の「画像処理装置」の構成(b)は、「得られた単色の画像情報を合成して、鮮明な多色の画像情報を生成する」ものであり、「得られた単色の画像情報」は「波長域ごとの複数の画像」であり、それらの画像を合成するものである。 ただし、引用発明は、上記b.に述べたように本願補正発明の「画像回復部」を有していないことに起因して、合成される「波長域ごとの複数の画像」が本願補正発明のような「波長域ごとに回復された」複数の画像ではない点で、本願補正発明と相違する。 そして、上記相違する点は存在するものの、引用発明の構成(b)は、本願補正発明の「画像合成部」が行う動作に対応するものであり、構成(b)を有する「画像処理装置」は、本願補正発明の「画像合成部」に相当する構成を有しているものといえる。 したがって、引用発明の構成(b)は、本願補正発明の構成(E)と、「波長域ごとの複数の画像を合成する画像合成部」という点で一致し、「画像合成部」が合成する「波長域ごとの複数の画像」に関して、本願補正発明では「波長域ごとに回復された複数の画像」であるのに対し、引用発明では、そのような複数の画像ではない点で両者は相違する。 d.本願補正発明の構成(F)について 引用発明は、本願補正発明の構成(F)の「画面内に前記第1被写体と被写体距離が異なる第2被写体がある場合、前記画像回復部は、前記第1被写体を各波長域の光に対応する前記フォーカス位置で撮像する際の各波長域の前記光学伝達関数に対応する量を用いて、前記第1被写体と前記第2被写体の各波長域の画像を回復すること」という構成を有していない点で、本願補正発明と相違する。 e.本願補正発明の構成(G)と、引用発明の構成(c)の対比 引用発明の「画像処理装置」は、本願補正発明とは上記b.ないしd.において検討した相違は存在するものの、本願補正発明の「画像処理装置」に相当するものといえる。 (5)一致点・相違点 上記(4)のaないしeの対比結果をまとめると、本願補正発明と引用発明との[一致点]と[相違点]は以下のとおりである。 [一致点] 第1被写体を、光学系を介した複数の波長域の光のそれぞれのフォーカス位置において撮像することによって得られた波長域ごとの複数の画像を取得する画像取得部と、 波長域ごとの複数の画像を合成する画像合成部と、 を有することを特徴とする画像処理装置。 [相違点1] 引用発明は、本願補正発明の「前記複数の画像のそれぞれの撮像情報を取得する撮像情報取得部」、「前記撮像情報に対応する前記光学系の光学伝達関数に対応する量を波長域ごとに取得する光学伝達関数取得部」、「前記複数の画像のそれぞれに対応する前記光学系の光学伝達関数に対応する量を用いて、波長域ごとに前記複数の画像を回復する画像回復部」を有していない点。 [相違点2] 「画像合成部」が合成する「波長域ごとの複数の画像」に関して、本願補正発明では「波長域ごとに回復された複数の画像」であるのに対し、引用発明では、そのような複数の画像ではない点。 [相違点3] 引用発明は、本願補正発明の「画面内に前記第1被写体と被写体距離が異なる第2被写体がある場合、前記画像回復部は、前記第1被写体を各波長域の光に対応する前記フォーカス位置で撮像する際の各波長域の前記光学伝達関数に対応する量を用いて、前記第1被写体と前記第2被写体の各波長域の画像を回復すること」という構成を有していない点。 (6)相違点の判断 a.相違点1について 一般に、光学系による画像のボケを復元する技術として、光学系の伝達関数を用いて画像の復元を行う基本原理が周知のものである(例えば、原査定に引用された特開2009-89082号公報の段落【0065】?【0071】,【0089】?【0093】の他、特開2006-238032号公報の段落【0002】?【0011】、長原一,“符号化撮像”,情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM),情報処理学会,2010-03-11,Vol.2010-CVIM-171,No.14の1頁左欄22行?2頁左欄15行「カメラは、・・・(中略)・・・復元することができる。」などを参照のこと)。 また、光学系の伝達関数は、光学系のズーム位置、フォーカス位置などに基づいて規定されるものであって、光学系の伝達関数を用いて画像の復元を行うために、光学系の情報を取得し、その光学系の情報に対応した復元用の情報を取得することは普通に行われていること(例えば、特開2004-328506号公報の段落【0057】などを参照のこと)である。 そして、引用発明は、それぞれの波長域ごとの単色画像においてより鮮明な画像を取得しようとするものであるから、引用発明に、上述した光学系の伝達関数を用いて画像の復元を行う周知技術を適用し、より鮮明な画像を得ようとすることは、当業者が容易に想到し得ることであり、その際に、複数の画像のそれぞれの撮像時の光学系の情報を取得し、その光学系の情報に対応した光学系の伝達関数に対応する波長域ごとの復元のための情報を取得し、その波長域ごとの復元のための情報を用いて波長域ごとに複数の画像を復元するようにすることは当然のことである。 したがって、引用発明において、複数の画像のそれぞれの撮像時の光学系の情報を取得し、その光学系の情報に対応した光学系の伝達関数に対応する波長域ごとの復元のための情報を取得し、その波長域ごとの復元のための情報を用いて波長域ごとに複数の画像を復元するために、それぞれの処理を行う具体的な処理部を設けること、すなわち、上記相違点1に係る「前記複数の画像のそれぞれの撮像情報を取得する撮像情報取得部」、「前記撮像情報に対応する前記光学系の光学伝達関数に対応する量を波長域ごとに取得する光学伝達関数取得部」、「前記複数の画像のそれぞれに対応する前記光学系の光学伝達関数に対応する量を用いて、波長域ごとに前記複数の画像を回復する画像回復部」を有することは、当業者が容易になし得ることである。 b.相違点2について 上記「a.相違点1について」で検討したように、引用発明において「画像回復部」を設け「複数の画像を回復する」ようにすることが容易になし得ることであるから、そのようにした際には、引用発明の「画像合成部」が合成する「波長域ごとの複数の画像」は、自ずと相違点2に係る「波長域ごとに回復された複数の画像」となるものである。 c.相違点3について 上記「a.相違点1について」において提示した周知技術(特開2006-238032号公報の段落【0002】?【0011】)に示されるように、光学系の伝達関数を用いた画像の復元を画像全体に適用することは普通に行われていることである。 そして、引用発明のような色収差補正撮像装置が撮影する画像に、それぞれ被写体距離が異なる第1被写体、第2被写体のような複数の被写体が存在することは普通のことであり、引用発明に光学系の伝達関数を用いて画像の復元を行う周知技術を適用した際には、第1被写体にフォーカス位置を合わせた際の画像の回復を行うための情報を、被写体距離が異なる第2被写体に適用することは当然のことである。 したがって、上記相違点3に係る「画面内に前記第1被写体と被写体距離が異なる第2被写体がある場合、前記画像回復部は、前記第1被写体を各波長域の光に対応する前記フォーカス位置で撮像する際の各波長域の前記光学伝達関数に対応する量を用いて、前記第1被写体と前記第2被写体の各波長域の画像を回復すること」は、「a.相違点1について」で検討したように、引用発明に、光学系の伝達関数を用いて画像の復元を行う周知技術を適用した際に当然に導かれることにすぎないものである。 (7)効果等について 本願補正発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願補正発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものではない。 (8)まとめ 以上のように、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成26年9月10日付けの手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成26年2月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載した事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、前記第2.1.の(補正前の請求項1)に記載した事項により特定されるとおりのものである。 2.刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、及び、その記載事項は、前記第2.2-3.(2)に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記第2.2.2-2.で摘示した本願補正発明に追加された限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記第2.2.2-3.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-10-02 |
結審通知日 | 2015-10-06 |
審決日 | 2015-10-19 |
出願番号 | 特願2010-80747(P2010-80747) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06T)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐田 宏史 |
特許庁審判長 |
藤井 浩 |
特許庁審判官 |
豊島 洋介 清水 正一 |
発明の名称 | 画像処理装置、撮像装置、画像処理方法およびプログラム |
代理人 | 藤元 亮輔 |