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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08G
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G08G
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G08G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08G
管理番号 1308335
審判番号 不服2014-23623  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-19 
確定日 2015-12-04 
事件の表示 特願2010- 63207「運転評価装置、車両間隔管理方法および車両間隔管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月 6日出願公開、特開2011-197947〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下,「本願」と言う。)は,平成22年3月18日の特許出願であって,平成25年11月8日付けで通知された拒絶の理由に対して,平成26年1月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成26年2月25日付で最後の拒絶理由が通知され,これに対して平成26年5月7日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが,平成26年8月13日付けで補正の却下の決定がされるとともに同日付で拒絶査定がされたところ,これに対して,平成26年11月19日に本件拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けの手続補正書が提出されたものである。

第2.平成26年11月19日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年11月19日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.特許請求の範囲の請求項1の記載は,平成26年11月19日付けの手続補正書による補正(以下,「本件補正」という。)により,次のように補正された。
(1)本件補正前
「運転中の車両の前方を走行中の車両を撮像範囲に含む画像を取得する画像取得部と,前記運転中の車両の位置情報を取得する位置情報取得部と,
記憶部に記憶された車両間隔の適正判断に用いる間隔判断情報と,前記画像取得部により取得された前記画像とに基づき,前記運転中の車両と前記運転中の車両の前方を走行中の車両との車間距離の適正判断をする判断部と,
前記判断部の判断の結果,車間距離が不適切との判断がなされた場合,前記位置情報に基づき,該不適切との判断がなされた際に車両が走行していた位置を含む地図データを出力する出力部と,
を有することを特徴とする車両間隔管理装置。」(平成26年1月14日付けの手続補正書を参照。)
(2)本件補正後
「運転中の車両の前方を走行中の車両を撮像範囲に含む画像を取得する画像取得部と,前記運転中の車両の位置情報を取得する位置情報取得部と,記憶部に記憶された車間距離の適正判断に用いる間隔判断情報と,前記画像取得部により取得された前記画像に含まれる前記前方を走行中の車両のナンバープレートのサイズとに基づき,前記運転中の車両と前記前方を走行中の車両との車間距離の適正判断をする判断部と,を含むコンピュータから車間距離が不適切との判断が含まれる前記判断の結果を取得し,該不適切との判断がなされた際に前記運転中の車両が走行していた位置と前記前方を走行中の車両に関する情報とを含む地図データを出力する出力部,
を有することを特徴とする運転評価装置。」(なお,下線は,補正個所を示すために当審で付与したものである。)

2.新規事項
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1には,「判断部」について,「記憶部に記憶された車間距離の適正判断に用いる間隔判断情報と,前記画像取得部により取得された前記画像に含まれる前記前方を走行中の車両のナンバープレートのサイズとに基づき,前記運転中の車両と前記前方を走行中の車両との車間距離の適正判断をする判断部」と記載されている。この記載によれば,「判断部」とは,「運転中の車両と前方を走行中の車両との車間距離」の適正判断をするものであって,その判断は,間隔判断情報と前方を走行中の車両のナンバープレートのサイズとに基づいてなされるものである。
ア.これに対し,本願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」と言う。)には,「運転中の車両と前方を走行中の車両との車間距離」の適正判断をする「判断部」(実施例では「車間距離判定部」がこれに相当するものと判断する。)について,次のように記載されている。
(ア)「【請求項1】
車両の速度と、サイズの異なるテンプレートとを対応づけたデータテーブルを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されたデータテーブルに基づき、前記運転中の車両の速度に対応したサイズのテンプレートを選択する選択部と、
運転中の車両の前方を走行中の車両のナンバープレートの画像を取得する取得部と、
前記選択部により選択されたテンプレートと、前記取得部により取得されたナンバープレートの画像とに基づき、前記運転中の車両と、前記運転中の車両の前方を走行中の車両との車間距離に関する判断をする判断部と
を有することを特徴とする車両間隔管理装置。
【請求項2】
前記運転中の車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部により位置情報が取得された時刻を取得する時刻情報取得部と、
前記判断部により前記車間距離が適当ではないと判断された場合に、前記取得部により取得された画像と、前記位置情報取得部により取得された前記位置情報と、前記時刻情報取得部により取得された前記時刻とを対応付けて記憶部に記録する記録部と
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の車両間隔管理装置。
【請求項3】
・・・・・
【請求項4】
車両の運転者の属性あるいは車両の属性に応じて前記テンプレートのサイズを補正するためのパラメータを記憶するパラメータ記憶部と、
前記運転中の車両の属性、該車両の運転者の属性および該車両の前方を走行中の車両の運転者の属性に対応する前記パラメータを前記パラメータ記憶部から読み込み、該読み込まれたパラメータを用いて、前記選択部により選択されたテンプレートのサイズを補正する補正部と
をさらに有し、
前記判断部は、前記補正部によりサイズの補正がなされたテンプレートと、前記取得部により取得されたナンバープレートの画像とに基づき、前記運転中の車両と、前記運転中の車両の前方を走行中の車両との車間距離の適否を判断することを特徴とする請求項1または2に記載の車両間隔管理装置。
【請求項5】
車両間隔管理装置に適用される車両間隔管理方法であって、
車両の速度と、サイズの異なるテンプレートとを対応づけたデータテーブルを記憶する記憶部から該データテーブルを読み込み、該読み込んだテーブルに基づき、運転中の車両の速度に対応したサイズのテンプレートを選択する選択ステップと、
前記運転中の車両の前方を走行中の車両のナンバープレートの画像を取得する取得ステップと、
前記選択ステップにより選択されたテンプレートと、前記取得ステップにより取得されたナンバープレートの画像とに基づき、前記運転中の車両と、前記運転中の車両の前方を走行中の車両との車間距離に関する判断をする判断ステップと
を含むことを特徴とする車両間隔管理方法。
【請求項6】
車両間隔管理装置として機能するコンピュータに実行させる車両間隔管理プログラムであって、
前記コンピュータに、
車両の速度と、サイズの異なるテンプレートとを対応づけたデータテーブルを記憶する記憶部から該データテーブルを読み込み、該読み込んだテーブルに基づき、運転中の車両の速度に対応したサイズのテンプレートを選択する選択手順と、
前記運転中の車両の前方を走行中の車両のナンバープレートの画像を取得する取得手順と、
前記選択手順により選択されたテンプレートと、前記取得手順により取得されたナンバープレートの画像とに基づき、前記運転中の車両と、前記運転中の車両の前方を走行中の車両との車間距離に関する判断をする判断手順と
を実行させることを特徴とする車両間隔管理プログラム。」
(イ)「【0009】
本願の開示する車両間隔管理装置は,一つの態様において,記憶部と,選択部と,取得部と,判断部とを有する。記憶部は,車両の速度と,サイズの異なるテンプレートとを対応づけたデータテーブルを記憶する。選択部は,記憶部に記憶されたデータテーブルに基づき,運転中の車両の速度に対応したサイズのテンプレートを選択する。取得部は,運転中の車両の前方を走行中の車両のナンバープレートの画像を取得する。判断部は,選択部により選択されたテンプレートと,取得部により取得されたナンバープレートの画像とに基づき,運転中の車両と,運転中の車両の前方を走行中の車両との車間距離に関する判断をする判断部とを有する。」
(ウ)「【0014】
記憶部11は、車両の速度と、サイズの異なるテンプレートとを対応づけたデータテーブルを記憶する。選択部12は、記憶部11に記憶されたデータテーブルに基づき、運転中の車両の速度に対応したサイズのテンプレートを選択する。取得部13は、運転中の車両の前方を走行中の車両のナンバープレートの画像を取得する。判断部14は、選択部11により選択されたテンプレートと、取得部13により取得されたナンバープレートの画像とに基づき、運転中の車両と、運転中の車両の前方を走行中の車両との車間距離に関する判断をする。」
(エ)「【0036】
車間距離判定部110bは、前方車両との間に適正な車間距離が確保されているか否かを判定する。例えば、車間距離判定部110bは、車速センサー102から自車両の走行速度を入力する。次に、車間距離判定部110bは、画像処理部110aから前方車両のナンバープレートの画像を取り込み、ナンバープレートの種別および自車両の走行速度に対応する適正車間距離対応テンプレートをテンプレート記憶部108bから読み込む。そして、車間距離判定部110bは、画像処理部110aから前方車両のナンバープレートの画像のサイズが、テンプレート記憶部108bから読み込んだ適正車間距離対応テンプレートよりも小さいか否かを判定する。
【0037】
車間距離判定部110bは、判定の結果、前方車両のナンバープレートの画像のサイズが、適正車間距離対応テンプレートよりも小さい場合には、画像処理部110aによって次の前方車両の画像が入力されるのを待機する。
【0038】
一方、車間距離判定部110bは、判定の結果、前方車両のナンバープレートの画像のサイズが、適正車間距離対応テンプレートよりも小さくない場合には、前回入力画像から切り出されたナンバープレートの画像を画像処理部110aから読み込む。そして、車間距離判定部110bは、現入力画像のナンバープレートと、前回入力画像のナンバープレートが同一であるか否かを判定する。
【0039】
車間距離判定部110bは、判定の結果、ナンバープレートが同一である場合には、車体の種別や車体の色などの前方車両データを画像処理部110aから取得する。そして、車間距離判定部110bは、前方車両データと、時刻情報取得部107から出力される位置情報および時刻情報とを関連付けて、車間距離判定結果として車間距離判定結果記憶部108aに記録する。
【0040】
一方、車間距離判定部110bは、判定の結果、ナンバープレートが同一ではない場合には、前方に車両の割り込みがあったことを示す「割り込みフラグ」を生成する。次に、車間距離判定部110bは、車体の種別や車体の色などの前方車両データを画像処理部110aから取得する。そして、車間距離判定部110bは、割り込みフラグと、前方車両データと、時刻情報取得部107から出力される位置情報および時刻情報とを関連付けて、車間距離判定結果として車間距離判定結果記憶部108aに記録する。
【0041】
車間距離判定結果の記録後、車間距離判定部110bは、適正な車間距離が取れていない旨の警告を運転者に通知する。例えば、車間距離判定部110bは、適正な車間距離が取れていない旨を示す警告情報を表示部104に表示出力させるとともに、適正な車間距離が取れていない旨の音声ガイダンスを音声出力部105に出力させる。そして、車間距離判定部110bは、画像処理部110aによって次の前方車両の画像が入力されるのを待機する。」
(オ)「【0051】
続いて、車間距離判定部110bは、車速センサー102から自車両の走行速度を入力する(ステップS606)。次に、車間距離判定部110bは、前方車両のナンバープレートの種別および自車両の走行速度に対応する適正車間距離対応テンプレートをテンプレート記憶部108bから読み込む(ステップS607)。そして、車間距離判定部110bは、画像処理部110aから前方車両のナンバープレートの画像のサイズが、テンプレート記憶部108bから読み込んだ適正車間距離対応テンプレートよりも小さいか否かを判定する(ステップS608)。
【0052】
車間距離判定部110bは、判定の結果、前方車両のナンバープレートの画像のサイズが、適正車間距離対応テンプレートよりも小さい場合には(ステップS608,YES)、上述したステップS601に戻る。
【0053】
一方、車間距離判定部110bは、判定の結果、前方車両のナンバープレートの画像のサイズが、適正車間距離対応テンプレートよりも小さくない場合には(ステップS608,NO)、次の判定を実行する。すなわち、車間距離判定部110bは、現入力画像のナンバープレートと、前回入力画像のナンバープレートとが同一であるか否かを判定する(ステップS609)。
【0054】
車間距離判定部110bは、判定の結果、ナンバープレートが同一である場合には(ステップS609,YES)、前方車両データ、位置情報および時刻情報を関連付けて、車間距離判定結果として車間距離判定結果記憶部108aに記録する(ステップS610)。
【0055】
一方、車間距離判定部110bは、判定の結果、ナンバープレートが同一ではない場合には(ステップS609,NO)、前方に車両の割り込みがあったことを示す「割り込みフラグ」を生成する(ステップS611)。そして、車間距離判定部110bは、上述したステップS610に移行し、割り込みフラグ、前方車両データ、位置情報および時刻情報を関連付けて、車間距離判定結果として車間距離判定結果記憶部108aに記録する。
【0056】
車間距離判定結果の記録後、車間距離判定部110bは、適正な車間距離が取れていない旨の警告を運転者に通知する(ステップS612)。そして、車間距離判定部110bは、上述したステップS601に戻る。」
(カ)「【0063】
車間距離判定部110bは、車速センサー102から自車両の走行速度を入力する。次に、車間距離判定部110bは、画像処理部110aから前方車両のナンバープレートの画像を取り込む。そして、車間距離判定部110bは、自車両の走行速度と、前方車両のナンバープレートの画像のサイズの変化とに基づいて、前方車両と自車両との間の相対速度を算出する。
【0064】
例えば、車間距離判定部110bは、自車両の走行速度を一定に保った状態で、ある所定時間における前方車両のナンバープレートの画像のサイズの変化を取得する。次に、車間距離判定部110bは、ある所定時間における車間距離の変化量を算出し、自車両の走行速度と車間距離の変化量とに基づいて、前方車両の走行速度を算出する。そして、車間距離判定部110bは、例えば、自車両に対する前方車両の相対速度、つまり自車両から見た前方車両の相対速度を算出する。
【0065】
相対速度の算出後、車間距離判定部110bは、ナンバープレートの種別および自車両と前方車両との間の相対速度に対応する適正車間距離対応テンプレートをテンプレート記憶部108bから読み込む。そして、車間距離判定部110bは、画像処理部110aから前方車両のナンバープレートの画像のサイズが、テンプレート記憶部108bから読み込んだ適正車間距離対応テンプレートよりも小さいか否かを判定する。」
(キ)「【0079】
車間距離判定部110bは、ナンバープレートの種別および自車両の走行速度に対応する適正車間距離対応テンプレートをテンプレート記憶部108bから読み込む。さらに、車間距離判定部110bは、自車両の特性、運転者の特性および前方車両の運転者の特性に応じたパラメータをパラメータ記憶部108cから読み込む。そして、車間距離判定部110bは、読み込んだパラメータを用いて、適正車間距離対応テンプレートのサイズを補正する。」
(ク)「【0085】
(2)車両間隔管理方法
上述してきた実施例により、以下に説明するような車両間隔管理方法が実現される。この車両間隔管理方法は上述した車両間隔管理部110に適用される。この車両間隔管理方法は、選択ステップと、取得ステップと、判断ステップとを含む。
【0086】
上述した選択ステップは、車両の速度と、サイズの異なるテンプレートとを対応づけたデータテーブルを記憶する記憶部から該データテーブルを読み込み、該読み込んだテーブルに基づき、運転中の車両の速度に対応したサイズのテンプレートを選択する。
【0087】
上述した取得ステップは、運転中の車両の前方を走行中の車両のナンバープレートの画像を取得する。
【0088】
上述した判断ステップは、上述した選択ステップにより選択されたテンプレートと、上述した取得ステップにより取得されたナンバープレートの画像とに基づき、運転中の車両と、運転中の車両の前方を走行中の車両との車間距離の適否を判断する。」
(ケ)「【0099】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0100】
(付記1)車両の速度と、サイズの異なるテンプレートとを対応づけたデータテーブルを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されたデータテーブルに基づき、前記運転中の車両の速度に対応したサイズのテンプレートを選択する選択部と、
運転中の車両の前方を走行中の車両のナンバープレートの画像を取得する取得部と、
前記選択部により選択されたテンプレートと、前記取得部により取得されたナンバープレートの画像とに基づき、前記運転中の車両と、前記運転中の車両の前方を走行中の車両との車間距離に関する判断をする判断部と
を有することを特徴とする車両間隔管理装置。
【0101】
(付記2)前記運転中の車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部により位置情報が取得された時刻を取得する時刻情報取得部と、
前記取得部により取得されたナンバープレートの画像から、前記前方を走行中の車両との車間距離を計算する計算部と、
前記判断部により前記車間距離が適当ではないと判断された場合に、前記取得部により取得された画像と、前記情報取得部により取得された前記情報と、前記計算部により計算された前記車間距離とを対応付けて記憶部に記録する記録部と
をさらに有することを特徴とする付記1に記載の車両間隔管理装置。
【0102】
(付記3)前記判断部により前記車間距離が適当ではないと判断された場合に、前記運転中の車両の運転者に警告を通知する警告通知部をさらに有することを特徴とする付記1または2に記載の車両間隔管理装置。
【0103】
(付記4)前記運転中の車両の速度と、前記取得部により取得されたナンバープレートの画像とに基づいて、前記運転中の車両と、前記運転中の車両の前方を走行中の車両との間の相対速度を計算する相対速度計算部をさらに有し、
前記選択部は、前記相対速度計算部により計算された前記相対速度に対応したテンプレートを選択することを特徴とする付記1または2に記載の車両間隔管理装置。
【0104】
(付記5)車両の運転者の属性あるいは車両の属性に応じて前記テンプレートのサイズを修正するためのパラメータを記憶するパラメータ記憶部と、
前記運転中の車両の属性、該車両の運転者の属性および該車両の前方を走行中の車両の運転者の属性に対応する前記パラメータを前記パラメータ記憶部から読み込み、該読み込まれたパラメータを用いて、前記選択部により選択されたテンプレートのサイズを補正する補正部と
をさらに有し、
前記判断部は、前記補正部によりサイズの補正がなされたテンプレートと、前記取得部により取得されたナンバープレートの画像とに基づき、前記運転中の車両と、前記運転中の車両の前方を走行中の車両との車間距離の適否を判断することを特徴とする付記1または2に記載の車両間隔管理装置。
【0105】
(付記6)前記車両間隔管理装置に適用される車両間隔管理方法であって、
車両の速度と、サイズの異なるテンプレートとを対応づけたデータテーブルを記憶する記憶部から該データテーブルを読み込み、該読み込んだテーブルに基づき、運転中の車両の速度に対応したサイズのテンプレートを選択する選択ステップと、
前記運転中の車両の前方を走行中の車両のナンバープレートの画像を取得する取得ステップと、
前記選択ステップにより選択されたテンプレートと、前記取得ステップにより取得されたナンバープレートの画像とに基づき、前記運転中の車両と、前記運転中の車両の前方を走行中の車両との車間距離に関する判断をする判断ステップと
を含むことを特徴とする車両間隔管理方法。
【0106】
(付記7)前記運転中の車両の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
前記位置情報取得ステップにより位置情報が取得された時刻を取得する時刻取得ステップと、
前記取得ステップにより取得されたナンバープレートの画像から、前記前方を走行中の車両との車間距離を計算する計算ステップと、
前記判断ステップにより前記車間距離が適当ではないと判断された場合に、前記取得ステップにより取得された画像と、前記位置情報取得ステップにより取得された位置情報と、前記時刻取得ステップにより取得された時刻と、前記計算ステップにより計算された前記車間距離とを対応付けて記憶部に記録する記録ステップと
をさらに含んだことを特徴とする付記6に記載の車両間隔管理方法。
【0107】
(付記8)前記判断ステップにより前記車間距離が適当ではないと判断された場合に、前記運転中の車両の運転者に警告を通知する警告通知ステップをさらに含んだことを特徴とする付記6または7に記載の車両間隔管理方法。
【0108】
(付記9)前記車両間隔管理装置として機能するコンピュータに実行させる車両間隔管理プログラムであって、
前記コンピュータに、
車両の速度と、サイズの異なるテンプレートとを対応づけたデータテーブルを記憶する記憶部から該データテーブルを読み込み、該読み込んだテーブルに基づき、運転中の車両の速度に対応したサイズのテンプレートを選択する選択手順と、
前記運転中の車両の前方を走行中の車両のナンバープレートの画像を取得する取得手順と、
前記選択手順により選択されたテンプレートと、前記取得手順により取得されたナンバープレートの画像とに基づき、前記運転中の車両と、前記運転中の車両の前方を走行中の車両との車間距離に関する判断をする判断手順と
を実行させることを特徴とする車両間隔管理プログラム。
【0109】
(付記10)前記コンピュータに、
前記運転中の車両の位置情報を取得する位置情報取得手順と、
前記位置情報取得手順により位置情報が取得された時刻を取得する時刻取得手順と、
前記取得手順により取得されたナンバープレートの画像から、前記前方を走行中の車両との車間距離を計算する計算手順と、
前記判断手順により前記車間距離が適当ではないと判断された場合に、前記取得手順により取得された画像と、前記位置情報取得手順により取得された位置情報と、前記時刻取得手順により取得された時刻と、前記計算手順により計算された前記車間距離とを対応付けて記憶部に記録する記録手順と
をさらに実行させることを特徴とする付記9に記載の車両間隔管理プログラム。
【0110】
(付記11)前記コンピュータに、
前記判断手順により前記車間距離が適当ではないと判断された場合に、前記運転中の車両の運転者に警告を通知する警告通知手順をさらに実行させることを特徴とする付記9または10に記載の車両間隔管理プログラム。」
イ.これらの当初明細書等の記載によれば,運転中の車両と前方を走行中の車両との車間距離の適正判断は,運転中の車両の速度を記憶しておくことを前提として,運転中の車両の速度に対応して選択されたサイズのテンプレートと前方を走行中の車両のナンバープレートの画像とに基づいてなされるものであって,運転中の車両の速度に対応して選択されたサイズのテンプレートを用いないことは把握できない。
そうしたところ,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された「判断部」は,運転中の車両の速度に対応して選択されたサイズのテンプレートを用いるものではないから,そのような構成の「判断部」は,当初明細書等に記載されていない。また,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された「判断部」は,当初明細書等から当業者にとって明らかなものでもない。
(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,「第2.1.(2)」に記載したとおりであって,当該請求項の発明は,「運転評価装置」に係るものであり,当該運転評価装置は,「画像取得部」,「位置情報取得部」,「判断部」及び「出力部」を有するものである。
ア.これに対し,当初明細書等には,既に「第2.2.(1)ア.」に摘記した記載があり,特にその「(ア)」にあるように,「車両の速度と、サイズの異なるテンプレートとを対応づけたデータテーブルを記憶する記憶部」,「運転中の車両の速度に対応したサイズのテンプレートを選択する選択部」,「運転中の車両の前方を走行中の車両のナンバープレートの画像を取得する取得部」,「判断部」を有する「車両間隔管理装置」を開示するものである。
当初明細書等における「運転評価装置」に関する記載は,以下のとおりである。
・「【0043】
図5は、実施例2に係る運転評価装置の構成を示す図である。運転評価装置200を操作する運転評価者は、例えば、記憶媒体を車両100の外部記憶書込部109に接続し、車間距離判定結果記憶部108aに記憶されている車間距離判定結果のデータを記憶媒体に保存し、記憶媒体に保存された車間距離判定結果のデータを運転評価装置200の内部に保存する。そして、運転評価装置200のユーザは、車間距離判定結果のデータを元に運転評価装置200により生成された運転評価情報を取得する。
【0044】
運転評価装置200は、図5に示すように、表示部210と、記憶部220と、運転評価情報出力部230とを有する。また、運転評価装置220は、例えば、プリンタなどの印刷装置300とデータのやり取りが可能な状態に接続される。印刷装置300は、運転評価装置200から出力される運転評価情報を紙媒体に印字出力する。
【0045】
表示部210は、運転評価情報を表示出力することにより運転評価者に提供する。記憶部220は、車間距離判定結果記憶部220aおよび地図データ記憶部220bを有する。車間距離判定結果記憶部220aは、車間距離判定結果記憶部108aに記憶されている車間距離判定結果のデータと同一のデータを記憶する。地図データ記憶部220bは、地図データを記憶する。
【0046】
運転評価情報出力部230は、例えば、運転評価者から運転評価情報の出力指示操作を受け付けると、車間距離判定結果記憶部220aから車間距離判定結果のデータを読み込むとともに、地図データ記憶部220bから地図データを読み込む。次に、運転評価情報出力部230は、車間距離判定結果のデータに含まれる位置情報に基づいて、車間距離判定結果のデータに含まれる他のデータを地図データ上に展開することにより運転評価情報を生成する。そして、運転評価情報出力部230は、生成した運転評価情報を表示部210に表示出力させるとともに、印刷装置300に送信する。
【0047】
なお、運転評価装置200は、記憶媒体を介して、車間距離判定結果のデータをやり取りする場合を上述したが、これに限られるものではない。例えば、運転評価装置200と、車両100に搭載された車両間隔管理部110と通信可能な状態に接続することにより、車間距離判定結果記憶部108aに記憶されている車間距離判定結果のデータを運転評価装置200に取り込むようにしてもよい。」
イ.この当初明細書等における「運転評価装置」に関する記載からすると,「運転評価装置」は,車間距離判定結果のデータを自ら生成するものではなく,車間距離判定結果のデータを元に運転評価情報を生成するものであり,その運転評価情報が地図データとともに出力されるものである。
そうしてみると,当初明細書等の記載では,「車両間隔管理装置」と「運転評価装置」は,あくまで別異の装置と観念されているものというべきであって,後者は,地図データ等の「出力部」を有するものの,「画像取得部」,「位置情報取得部」,「判断部」は,前者が有しており,後者は前者の車間距離判定結果を受け取るものである。
したがって,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されたような,「画像取得部」,「位置情報取得部」,「判断部」に加えて「出力部」までをも有する「運転評価装置」は,当初明細書等に記載されておらず,また,当初明細書等から当業者にとって明らかなものとも言えない。
(3)上記(1),(2)を踏まえれば,本件補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものと認めることはできない。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本件補正の目的
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1の記載について,本件補正前にはそれが「車両間隔管理装置」に係るものであったものを,「運転評価装置」に係るものとする補正事項を含むものである。
既に「第2.2.(2)」で検討した事項を踏まえれば,「車両間隔管理装置」と「運転評価装置」は,あくまで別異の装置であり,両装置は,実質的にも異なる装置と言うべきである。
この補正事項の目的は,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮(以下,「限定的減縮」という。)に該当せず,また,誤記の訂正,明瞭でない記載の釈明,請求項の削除のいずれにも該当しないことは,明らかである。
したがって,本件補正は,特許法17条の2第5項に規定される目的のいずれにも該当しない補正事項を含むものであるから,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4.本願補正発明の独立特許要件
本件補正は,上述した理由があるので却下すべきものであるが,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載に発明特定事項を付加することを含んでいることは,明らかである。
そこで,仮に,本件補正が限定的減縮を目的とするものであると解釈できた場合について,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)についても,次に検討しておく。
(1)引用例及び引用発明
ア.原査定の拒絶の理由に示された発明協会公開技報公技番号2004-505777号(以下「引用例1」という。)には,「車間距離検出方法」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。
・「先ず,初期設定として車両の一部を設定する(例えばナンバープレート)。次に,搭載したカメラで前方を走行している車両画像を取得し,解析ソフトに入力する。解析画像中に移動物体として車両の存在が認識され,さらに車両後部の中央の大きさ,色の規定されているナンバープレートが存在の有無を判断する。ナンバープレートの存在を認識すると,以降画像解析を周期的に行い,画像中のナンバープレートの大きさが設定値以上となったならば,その時点での車両速度を読み出す。車両速度が設定値以上ならば危険車間距離状態と判断する。この状態の遷移が認識されたならば,画像解析部より信号を出力し,表示部より警報(LEDや音声等)を出力し,ドライバーへの安全運転を指示する。安全管理と言う点で,危険車間距離状態に遷移したことをデータとして記録するために,GPSを利用し,本状態に遷移した位置(緯度,経度),時間をメモリに記録する。同時に,通信モジュールの利用により,本状態遷移を外部のサーバに送信でき,リアルタイムでの管理者による安全管理が可能となる。」(技術の概要[構成]の欄の7行目から同欄の末尾まで。)
イ.引用例1の図2を見れば,車両に備えられ,カメラで撮像した画像を解析したデータを車両管理機器が処理しているものと認められ,この車両管理機器は,CPU及びメモリを備えているので,これをコンピュータと言うことができる。
ウ.以上を踏まえると,引用例1には,次の発明が記載されていると認めることができる(以下,この発明を「引用発明」という。)。
「前方を走行している車両画像を取得する手段と,GPSと,画像中のナンバープレートの大きさが設定値以上となったならば,その時点での車両速度を読み出し,当該車両速度が設定値以上ならば危険車間距離状態と判断する手段と,を含むコンピュータから,本状態に遷移した位置(緯度,経度),時間をメモリに記録すると同時に,表示部より警報を出力する手段を有する車両。」
エ.同じく原査定の拒絶の理由に示された,特開2007-140616号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】
過去の車両に関する運転情報を記録媒体から読出して運転実績を解析する運転支援装置において,
予め定める車両にかかるイベントの発生に従って記録媒体に記録された運転情報を読出す読出手段によって読出された運転情報に基づき,前記イベントの発生に対応した車両の位置情報を示す車両マークを地図上に表示させるとともに,当該位置情報に対応する車両の周辺画像を当該マークと同時に表示部に表示させる制御手段を備えることを特徴とする運転支援装置。」
・「【請求項8】
前記制御手段は,運転情報のうち前記イベントの1つである運転危険情報の内容を,その位置情報に対応させて地図上に表示させることを特徴とする請求項1記載の運転支援装置。」
・「【0007】
本発明(1)は,過去の車両に関する運転情報を記録媒体から読出して運転実績を解析する運転支援装置において,
予め定める車両にかかるイベントの発生に従って記録媒体に記録された運転情報を読出す読出手段によって読出された運転情報に基づき,前記イベントの発生に対応した車両の位置情報を示す車両マークを地図上に表示させるとともに,当該位置情報に対応する車両の周辺画像を当該マークと同時に表示部に表示させる制御手段を備えることを特徴とする運転支援装置である。
【0008】
また本発明(2)は,前記制御手段は,イベントが発生したときの位置情報に対応して,当該イベントの内容を地図上に表示させることを特徴とする。」
・「【0014】
また本発明(8)は,前記制御手段は,運転情報のうち前記イベントの1つである運転危険情報の内容を,その位置情報に対応させて地図上に表示させることを特徴とする。」
・「【0016】
また本発明(10)は,過去の車両に関する運転情報を記録媒体から読出して運転実績を解析する運転情報算出システムにおいて,
入力手段,演算手段および出力手段を含むコンピュータを,
予め定める車両にかかるイベントの発生に従って記録媒体に記録された運転情報を読出す読出手段によって読出された運転情報に基づき,前記イベントの発生に対応した車両の位置情報を示す車両マークを地図上に表示させるとともに,当該位置情報に対応する車両の周辺画像を当該マークと同時に表示部に表示させる手段として機能させるための運転情報算出システムである。」
オ.同じく原査定の拒絶の理由に示された,特開2008-74318号公報(以下「引用例3」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
・「【0001】
本発明は,前方を走行している車両(以下,「前方車両」という)との車間距離を制御する車間距離処理装置に関する。」
・「【0008】
請求項1の発明は,車両に備えた撮像装置で撮像した画像情報に基づいて,車間距離の算出処理を行う車間距離処理装置であって,前記車間距離処理装置は,前記撮像装置で撮像した画像情報を取得する画像情報取得部と,前記画像情報から,前方車両の車両特性を示す画像を検出し,その車両特性を判定する車両特性判定部と,前記車両特性に基づいて,前記前方車両との適切な車間距離を算出する車間距離算出部と,を有する車間距離処理装置である。」
(2)対比・判断
ア.本願補正発明と引用発明とを対比する。
・引用発明の「前方を走行している車両画像を取得する手段」は,本願補正発明の「運転中の車両の前方を走行中の車両を撮像範囲に含む画像を取得する画像取得部」に相当し,引用発明の「GPS」は,本願補正発明の「前記運転中の車両の位置情報を取得する位置情報取得部」に相当する。
・引用発明の「画像中のナンバープレートの大きさが設定値以上となったならば,その時点での車両速度を読み出し,当該車両速度が設定値以上ならば危険車間距離状態と判断する手段」と本願補正発明の「記憶部に記憶された車間距離の適正判断に用いる間隔判断情報と,前記画像取得部により取得された前記画像に含まれる前記前方を走行中の車両のナンバープレートのサイズとに基づき,前記運転中の車両と前記前方を走行中の車両との車間距離の適正判断をする判断部」は,少なくとも,「運転中の車両と前方を走行中の車両との車間距離の適正判断をする判断部」であるという点で一致している。
・引用発明の,「コンピュータから,通信モジュールの利用により,本状態遷移を外部のサーバに送信するとともに,本状態に遷移した位置(緯度,経度),時間をメモリに記録すると同時に,表示部より警報を出力する手段」と,本願補正発明の「コンピュータから車間距離が不適切との判断が含まれる前記判断の結果を取得し,該不適切との判断がなされた際に前記運転中の車両が走行していた位置と前記前方を走行中の車両に関する情報とを含む地図データを出力する出力部」とは,いずれも,「コンピュータから車間距離が不適切との判断が含まれる前記判断の結果を取得し,出力を行う出力部」である限りで一致している。
・本願補正発明では,画像,位置情報を取得した上で,車間距離が適正であるかどうか判断し,コンピュータから車間距離が不適切との判断が含まれる前記判断の結果を取得し,該不適切との判断がなされた際に前記運転中の車両が走行していた位置に関する情報を含むデータを出力する出力部を有するものを「運転評価装置」としている。引用発明の「車両」も,画像,位置情報等を取得した上で車間距離につき判断し,その結果を出力するものであるから,本願補正発明の「運転評価装置」に相当するものと言える。
イ.そうすると,本願補正発明と引用発明との一致点,相違点は,次のとおりである。
《一致点》
「運転中の車両の前方を走行中の車両を撮像範囲に含む画像を取得する画像取得部と,前記運転中の車両の位置情報を取得する位置情報取得部と,前記運転中の車両と前記前方を走行中の車両との車間距離の適正判断をする判断部と,
を含むコンピュータから車間距離が不適切との判断が含まれる前記判断の結果を取得し,出力を行う出力部,
を有する運転評価装置。」
《相違点1》
運転中の車両と前方を走行中の車両との車間距離の適正判断をする判断部が,本願補正発明では,記憶部に記憶された車間距離の適正判断に用いる間隔判断情報と,画像取得部により取得された画像に含まれる前記前方を走行中の車両のナンバープレートのサイズとに基づき,前記運転中の車両と前記前方を走行中の車両との車間距離の適正判断をするものであるのに対して,引用発明では,画像中のナンバープレートの大きさが設定値以上となったならば,その時点での車両速度を読み出し,当該車両速度が所定値以上ならば危険車間距離状態と判断するものである点。
《相違点2》
出力部の出力に関し,本願補正発明では「不適切との判断がなされた際に運転中の車両が走行していた位置と前記前方を走行中の車両に関する情報とを含む地図データ」とされているのに対し,引用発明はそのように特定されるものではない点。
ウ.相違点について検討する。
(ア)相違点1について
本願の明細書には,車間距離の適正判断をする際には,運転中の車両の速度を考慮することが開示されているから,本願補正発明の「判断部」の技術的内容として,運転中の車両の速度を考慮することは,少なくとも排除されていない。
そして,引用発明の判断部,すなわち,画像中のナンバープレートの大きさが設定値以上となったならば,その時点での車両速度を読み出し,当該車両速度が設定値以上ならば危険車間距離状態と判断する手段におけるナンバープレートについての“設定値”及び車両速度についての「設定値」は,予め定められている,車間距離の適正判断に用いるものと解せるから,本願補正発明の「記憶部に記憶された車間距離の適正判断に用いる間隔判断情報」に相当するものである。
そうすると,引用発明も,本願補正発明で言う「記憶部に記憶された車間距離の適正判断に用いる間隔判断情報」と「画像取得部により取得された画像に含まれる前方を走行中の車両のナンバープレートのサイズ」とに「基づいて」車間距離の適正判断を行うものと言えるから,上記相違点1は,実質的なものではないと言うべきである。
(イ)相違点2について
引用例2には,運転中に発生した危険運転情報を記録媒体から読出してその発生した位置とともに地図上に表示して,運転実績を解析する運転支援装置に係る発明が記載されているが,この発明は,運転評価装置に係る発明と言うこともできる。
そして,運転中に発生する危険情報としては,前方を走行中の車両との不適切な車間距離も,当業者にとって当然認識されることと言える。
また,引用例3には,前方を走行中の車両との車間距離が不適切であることを判断する際に,車間距離を計測するだけでなく,前方を走行中の車両特性も用いる発明が記載されている。
この引用例3に記載された発明のように,車間距離の計測の対象たる前方を走行中の車両に関する情報を合わせて取得,利用することは,当業者にとって適宜なし得た事項と言える。
これら引用例2,3に記載された発明を考慮すれば,引用発明において,メモリに記録された位置の情報,及び,前方を走行中の車両に関する情報を含む地図データを出力する構成を採用すること,すなわち,相違点2に係る本願補正発明の構成を採用することは,当業者にとっての格別の創作能力を発揮してなし得る域を越えるものではない。
(ウ)また,本願補正発明の構成により,引用発明及び引用例2,3に記載された発明から見て格別顕著な効果がもたらされると言うこともできない。
したがって,本願補正発明は,引用発明及び引用例2,3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(3)まとめ
したがって,本件補正は,仮に,限定的減縮を目的としたものと解したとしても,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成26年1月14日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(「第2.1.(1)」参照。以下,これを「本願発明」と言う。)。
2.原査定の拒絶の理由についての当審の判断
原査定の拒絶の理由は,「この出願については,平成26年 2月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって,拒絶をすべきものです。」と言うものであって,平成26年 2月25日付け拒絶理由通知書には,理由1?3が記載されている。
(1)理由1(新規事項の追加)について
ア.平成26年1月14日付け手続補正書の請求項1には,「判断部」について,「記憶部に記憶された車両間隔の適正判断に用いる間隔判断情報と,前記画像取得部により取得された前記画像とに基づき,前記運転中の車両と前記運転中の車両の前方を走行中の車両との車間距離の適正判断をする判断部」と記載されている。
これに対し,既に「第2.2.(1)」で述べたように,当初明細書等からすると,運転中の車両と前方を走行中の車両との車間距離の適正判断は,運転中の車両の速度を記憶しておくことを前提として,運転中の車両の速度に対応して選択されたサイズのテンプレートと前方を走行中の車両のナンバープレートの画像とに基づいてなされるものである。平成26年1月14日付け手続補正書の請求項1の記載における「判断部」は,当初明細書等に記載された「判断部」で必要不可欠とされていたナンバープレートの情報を用いることすら捨象されており,当初明細書等で開示された「判断部」を上位概念化したものと言える。そして,ナンバープレートの情報を用いずにそれ以外の情報を用いた「判断部」は,当初明細書等に接した当業者にとって自明でもない。
さらに,当初明細書等には,そもそも「間隔判断情報」なる概念は示されていない。
イ.平成26年1月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載は,当該請求項の発明が「車両間隔管理装置」に係るものであって,当該車両間隔管理装置が「画像取得部」,「位置情報取得部」,「判断部」及び「出力部」を有するものであると表現したものである。
これに対し,当初明細書等の記載では,「車両間隔管理装置」と「運転評価装置」が明確に区別されており,後者は,「出力部」を有するものの,「画像取得部」,「位置情報取得部」,「判断部」は,前者が有しており,後者は前者の車間距離判定結果を受け取るものである。
したがって,平成26年1月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された,「画像取得部」,「位置情報取得部」,「判断部」及び「出力部」を有する「車両間隔管理装置」は,当初明細書等に記載されておらず,また,当初明細書等から当業者にとって自明なものとも言えない。
ウ.まとめ
上記ア,イを踏まえれば,平成26年1月14日付け手続補正書による補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものと認めることはできない。
よって,平成26年1月14日付け手続補正書による補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反する。
(2)理由2(発明の進歩性欠如)について
ア.引用発明
原査定の拒絶の理由に示された引用例1,2及びその記載事項並びに引用発明は,前記「第2.4.(1)」に記載したとおりである。
イ.対比・判断
(ア)本願発明と引用発明を対比する。
・引用発明の,「コンピュータから,本状態に遷移した位置(緯度,経度),時間をメモリに記録すると同時に,表示部より警報を出力する手段」と,本願発明の「前記判断部の判断の結果,車間距離が不適切との判断がなされた場合,前記位置情報に基づき,該不適切との判断がなされた際に車両が走行していた位置を含む地図データを出力する出力部」とは,いずれも,「前記判断部の判断の結果,車間距離が不適切との判断がなされた場合,出力を行う出力部」である点で共通する。
・本願発明では,判断部から車間距離が不適切との判断が含まれる前記判断の結果を取得し,該不適切との判断がなされた際に前記運転中の車両が走行していた位置に関する情報を含むデータを出力する出力部を有するものを「車両間隔管理装置」としているので,引用発明の「車両」も本願補正発明の「車両間隔管理装置」に相当するものと言える。
これらの事項と前記「第2.4.(2)ア.」に記載した事項を踏まえると,本願発明と引用発明との一致点,相違点は,次のとおりである。
《一致点》
「運転中の車両の前方を走行中の車両を撮像範囲に含む画像を取得する画像取得部と,前記運転中の車両の位置情報を取得する位置情報取得部と,
前記運転中の車両と前記前方を走行中の車両との車間距離の適正判断をする判断部と,
前記判断部の判断の結果,車間距離が不適切との判断がなされた場合,出力を行う出力部と,
を有する車両間隔管理装置。」
《相違点1》
運転中の車両と前方を走行中の車両との車間距離の適正判断をする判断部が,本願発明では,記憶部に記憶された車両間隔の適正判断に用いる間隔判断情報と,画像取得部により取得された前記画像とに基づき,前記運転中の車両と前記運転中の車両の前方を走行中の車両との車間距離の適正判断をするものであるのに対して,引用発明では,画像中のナンバープレートの大きさが設定値以上となったならば,その時点での車両速度を読み出し,当該車両速度が所定値以上ならば危険車間距離状態と判断するものである点。
《相違点2》
出力部の出力に関し,本願発明では「前記位置情報に基づき,該不適切との判断がなされた際に車両が走行していた位置を含む地図データ」とされているのに対し,引用発明は,そのように特定されたものではない点。
(イ)相違点について検討する。
相違点1については,既に「第2.4.(2)ウ.(ア)」で述べたことを踏まえれば,実質的なものではないと言うべきである。
そして,相違点2については,既に「第2.4.(2)ウ.(イ)」で述べたように,引用例2には,運転危険情報をその発生した位置とともに地図上に表示する発明が記載されており,また,引用発明は,危険車間距離状態に遷移した際に,「本状態に遷移した位置(緯度,経度),時間をメモリに記録する」ことも行っているのであるから,引用発明において,メモリに記録された情報である位置の情報を用いて出力部に不適切との判断がなされた際に車両が走行していた位置を含む地図データを出力する構成を採用すること,すなわち,上記相違点に係る本願発明の構成を採用することは,当業者が格別の創作能力を要さずになし得たことである。
また,本願発明の構成により,引用発明及び引用例2に記載された発明から見て格別顕著な効果がもたらされると言うこともできない。
ウ.むすび
したがって,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.むすび
以上のとおりであるから,本願は,理由1によっても,理由2によっても,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-29 
結審通知日 2015-10-06 
審決日 2015-10-20 
出願番号 特願2010-63207(P2010-63207)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (G08G)
P 1 8・ 561- Z (G08G)
P 1 8・ 575- Z (G08G)
P 1 8・ 121- Z (G08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 達也近藤 利充  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 松永 謙一
新海 岳
発明の名称 運転評価装置、車両間隔管理方法および車両間隔管理プログラム  
代理人 酒井 宏明  

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