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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E06B
管理番号 1308340
審判番号 不服2015-5450  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-23 
確定日 2015-12-04 
事件の表示 特願2011-190977「窓シャッター装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月21日出願公開、特開2013- 53421〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成23年 9月 1日の出願であって、平成26年 8月29日付けの拒絶理由通知に対し、平成26年10月28日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成26年12月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成27年 3月23日に本件審判が請求されたものである。


2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし9に係る発明は、平成26年10月28日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載されたとおりのものであって、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「シャッターカーテンの幅方向両端部がガイドレールに案内されて降下し、シャッターカーテンの下端の座板が建物外壁に対して持ち出し状に設けられた下枠に近接ないし接触して窓開口部を閉鎖する窓シャッター装置において、
前記下枠は、窓開口部全閉状態において、室外空間に面しない部位を備えており、
前記座板は、窓開口部全閉状態において、室外空間に面しない部位を備えており、
前記座板は、窓開口部全閉状態において、前記下枠の前記室外空間に面しない部位と当該座板の前記室外空間に面しない部位との間で間隙を形成しており、
前記座板の前記室外空間に面しない部位には、窓開口部全閉状態における火災時に前記間隙の少なくとも一部を閉塞するように、火災時の熱で膨張する熱膨張耐火部材が設けてある、窓シャッター装置。」


3 引用例
(1)刊行物1に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、特開2003-232175号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(1-a)「【0008】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。尚、本明細書中で、“風圧”とは、特に断りのない場合にはシャッターカーテンにかかる負の風圧を指すものとする。また“変位”とはたわみ及び移動を含む表現として使用するものとする。図1は本発明の窓シャッター装置の正面図、図2は同縦断面図、図3は同横断面図である。図面において、1は金属製のスラット1aを上下に連結して構成されるシャッターカーテンであって、シャッターカーテン1の上端は開口部5の上方に位置するシャッターケース2の内部に架設された巻き取りシャフト3に装着されており、巻き取りシャフト3の正逆回転により開口部5の左右に立設したガイドレール4にガイドされながらシャッターカーテン1が繰り出し、巻き取られ開口部5を開閉する構成となっている。6はシャッターカーテンの下端に設けられる座板であり、また7は開口部5の下部に取り付けられるシャッター下枠であって、シャッター下枠7はシャッターカーテン1の全閉状態において前記座板6と当接するようになっている。またシャッターカーテン1を構成する各スラット1aの両端には図示しない耐風フック等が設けられており、風圧がかかった場合にガイドレール4からシャッターカーテン1が抜け出すことを防止するようになっている。」

(1-b)「【0010】シャッターカーテン1の最下端に連結される座板6は、図4に示すように、スラット1aのインターロック部に連結するカール状の連結部61と、連結部61から下方に延出する本体部62と、下方に開口する略コ字状の下端部63から構成されている。下端部63は開口部5に取り付けたときに屋外側となる屋外側片63aが本体部62の下端から屋外側下方に向けて湾曲垂下するように形成されており、一方開口部5に取り付けたときに屋内側に位置する部分は略L字形状となっており、本体部62の下端から屋内側に延出する第一屋内側片63bと第一屋内側片63bの先端から下方に延出する第二屋内側片63cと、さらに第二屋内側片63cの先端から屋外側に突出した係止片63dが形成されている。そして下端部63の係止片63dは本発明の規制手段及び係止部に相当する部分である。」

(1-c)「【0012】図5に示すように、シャッター下枠7はサッシ下枠81bから連続する台形状の本体部71と、この本体部71の屋外側に形成され、上方に開口が開いた略コ字状の溝部72とで構成されるが、溝部72は本体部71の屋外側下端から屋外側へと延出する延出片72aと該延出片72aの先端から上方に突出する突出片72bからなると共に突出片72bの先端から屋内側に突出する被係止片72cが形成さている。そして被係止片72cは、本発明の規制手段及び被係止部に相当するものである。
【0013】図6は風圧が作用していない通常時におけるシャッターカーテン1の全閉状態を示す図で、座板6の第二屋内側片63cはシャッター下枠7の溝部72に入り、第二屋内側片63cと突出片72bは、突出片72bが屋外側に位置して対向する状態となっている。また座板6の係止片63dはシャッター下枠7の延出片72aに当接している。シャッター下枠7の被係止片72cは座板6の係止片63dに対して上方でかつ屋外側に間隔Lをもった状態の位置関係となっている。この状態からシャッターカーテン1を巻き上げた場合には、座板6の係止片63dとシャッター下枠7の被係止片72cは間隔Lを維持した状態で上動することになり、座板6の係止片63dはシャッター下枠7の被係止片72cに係止されることないため、通常時においてはシャッターカーテン1の開閉動作がスムーズに行われることなる。」

(1-d)図2を参酌すると、サッシ8は屋内側と屋外側の境界に位置していることから、サッシ8の上下に位置する部材のうち、屋外側の面は建物外壁であるといえる。
そうすると、図2には、下枠7が建物外壁に対して持ち出し状に設けられることが開示されているといえる。

(1-e)図6には、屋外側片63aが突出片72bよりも屋外側に位置することが開示されている。

上記の事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物1発明」という。)。
「巻き取りシャフト3の正逆回転により開口部5の左右に立設したガイドレール4にガイドされながらシャッターカーテン1が繰り出し、巻き取られ開口部5を開閉し、開口部5の下部に取り付けられ、建物外壁に対して持ち出し状に設けられるシャッター下枠7はシャッターカーテン1の全閉状態において、シャッターカーテン1の下端に設けられる座板6と当接する窓シャッター装置において、座板6を構成する下端部63は開口部5に取り付けたときに屋外側となる屋外側片63aが本体部62の下端から屋外側下方に向けて湾曲垂下し、突出片72bよりも屋外側に位置するように形成されており、一方開口部5に取り付けたときに屋内側に位置する部分には本体部62の下端から屋内側に延出する第一屋内側片63bと第一屋内側片63bの先端から下方に延出する第二屋内側片63cと、さらに第二屋内側片63cの先端から屋外側に突出した係止片63dが形成されており、シャッターカーテン1の全閉状態で座板6の第二屋内側片63cはシャッター下枠7の溝部72に入り、第二屋内側片63cと突出片72bは、突出片72bが屋外側に位置して対向する状態となり、シャッター下枠7の被係止片72cは突出片72bの先端から屋内側に突出し、座板6の係止片63dに対して上方でかつ屋外側に間隔Lをもった状態の位置関係となっている窓シャッター装置。」


4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

(1)刊行物1発明の「シャッターカーテン1」は、本願発明の「シャッターカーテン」に相当し、
以下同様に、
「ガイドレール4」は、「ガイドレール」に、
「ガイド」は、「案内」に、
「シャッターカーテン1の下端に設けられる座板6」は、「シャッターカーテンの下端の座板」に、
「建物外壁に対して持ち出し状に設けられるシャッター下枠7」は、「建物外壁に対して持ち出し状に設けられた下枠」に、
「開口部5」は、「窓開口部」に、
「開口部5を(開)閉」することは、「窓開口部を閉鎖する」ことに、
「シャッターカーテン1の全閉状態」は、「窓開口部全閉状態」に、
相当する。

(2)刊行物1発明の「シャッターカーテン1」は、「開口部5の左右に立設したガイドレール4にガイドされながら」「繰り出」すので、「シャッターカーテン1」の幅方向両端部がガイドレール4にガイドされていることは自明である。

(3)刊行物1発明において、「座板6の第二屋内側片63c」は「開口部5に取り付けたときに屋内側に位置」しており、また、本願明細書【0017】の「本明細書において「室外空間に面しない部位」は、当該室外空間に面しない部位と前記室外空間との間に壁部が介在しており、当該壁部に覆われることで室外空間に直接面しない部位を言う。ある部材の室外空間に面しない部位における壁部は、当該部材の部分あるいは他の部材の部分により形成される。」という記載を参照した上で、「開口部5に取り付けたときに屋外側となる屋外側片63a」が「突出片72bよりも屋外側に位置する」という位置関係を考慮すると、刊行物1発明の「座板6の第二屋内側片63c」は、本願発明の「座板」の「窓開口部全閉状態において、室外空間に面しない部位」に相当する。

(4)刊行物1発明において、「シャッター下枠7」の「突出片72b」は、本願明細書【0017】の「本明細書において「室外空間に面しない部位」は、当該室外空間に面しない部位と前記室外空間との間に壁部が介在しており、当該壁部に覆われることで室外空間に直接面しない部位を言う。ある部材の室外空間に面しない部位における壁部は、当該部材の部分あるいは他の部材の部分により形成される。」という記載を参照した上で、「開口部5に取り付けたときに屋外側となる屋外側片63a」との位置関係を考慮すると、刊行物1発明の「シャッター下枠7」の「突出片72b」は、本願発明の「座板」の「窓開口部全閉状態において、室外空間に面しない部位」に相当する。

(5)刊行物1発明において、「シャッターカーテン1の全閉状態」で「第二屋内側片63cと突出片72bは、突出片72bが屋外側に位置して対向する状態」となっており、また、「突出片72bの先端から屋内側に突出」する「シャッター下枠7の被係止片72c」は、「第二屋内側片63cの先端から屋外側に突出した係止片63d」に対し、「屋外側に間隔Lをもった状態の位置関係となっている」ので、第二屋内側片63cと突出片72bとの間には間隙が形成されていることは自明である。

(6)したがって、本願発明と刊行物1発明とは、
「シャッターカーテンの幅方向両端部がガイドレールに案内されて降下し、シャッターカーテンの下端の座板が建物外壁に対して持ち出し状に設けられた下枠に近接ないし接触して窓開口部を閉鎖する窓シャッター装置において、
前記下枠は、窓開口部全閉状態において、室外空間に面しない部位を備えており、
前記座板は、窓開口部全閉状態において、室外空間に面しない部位を備えており、
前記座板は、窓開口部全閉状態において、前記下枠の前記室外空間に面しない部位と当該座板の前記室外空間に面しない部位との間で間隙を形成している、窓シャッター装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:
本願発明は、「座板の前記室外空間に面しない部位には、窓開口部全閉状態における火災時に前記間隙の少なくとも一部を閉塞するように、火災時の熱で膨張する熱膨張耐火部材が設けてある」のに対し、刊行物1発明にはそのような特定はない点。


5 判断
上記相違点について検討する。
(1)火災時の延焼を防止するために、シャッター等の下部と、その下にある部材との隙間を熱膨張耐火部材で閉塞することは、下記のとおり、周知の技術である(以下「周知技術1」という。)。
例えば、原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された、特開2001-132363号公報には、「【0110】この膨張体72は、図30に示すように、可撓性を有する細長形状のシート状に形成され、重錘体20の平面状の下面にこの重錘体20の長手方向に沿って固定して取り付けられている。この膨張体72は、重錘体20の下面の略全面にわたって位置している。
【0111】また、この膨張体72は、図3の膨張体18と同様に、加熱により所定の膨張温度、例えば150℃程度の温度に達すると膨張する細長矩形状で薄肉のシート状の膨張材にて形成されている。この膨張材72は、特殊耐熱繊維と特殊グラファイトとを耐熱バインダでシート状に成形した柔軟性のあるもので、例えば珪酸ナトリウム系やグラファイト系の防火発泡材を用いたものである。
【0112】次に、上記第4の実施の形態の作用を説明する。
【0113】耐火スクリーン装置71は、通常時には閉鎖シート体11がシート巻体10に巻き取られ、被閉鎖部2が開口している。なお、この通常時である被閉鎖部2の開口状態時には、重錘体20および膨張体72がまぐさ9a,9b間に位置する。
【0114】この状態で、例えば、火災が発生すると、閉鎖シート体11がシート巻体10の巻き戻しにより下降し、重錘体20が膨張体72を介して床面4と接触し、被閉鎖部2が閉鎖される。
【0115】そして、この火災時に、閉鎖シート体11が、火炎、煙等からの熱を受けて収縮変形した場合には、重錘体20がその収縮変形に応じて上昇し、その結果、重錘体20と床面4との間に間隙73が一旦生じる。
【0116】しかし、この間隙73は、図31に示すように、火炎、煙等からの熱を受けて膨張した膨張体72にて瞬時に埋められる。
【0117】したがって、膨張体72が膨張して閉鎖体11の移動方向の先端側と床面4との間の間隙73を埋めるので、火災側からの火炎、煙等が間隙73を通過することがなく、膨張体72による簡単な構成で、閉鎖体11の重錘体20と床面4との間の気密性を適切に確保できる。」と記載されている。
また、原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用された、特公平3-71556号公報には、「この第2パツキン6は熱膨張性のセラミツクフアイバーシートで構成され、不燃性であるとともに高熱下で膨張して3?4倍の厚さに変形する性質を備える。また、同じく船体側部材である船艙床面7と扉体1の底部との間にパツキン8を設ける。パツキン8は弾性体を袋状断面に成型したものであり、扉体1の底部に沿つて取り付けられ、その内側に前記第2パツキン6と同様の材質の第2パツキン9を収装する。」(2頁左欄42行?右欄6行)、「ところで、航行中はシヤツターを閉じておくが、この状態で船艙に火災が発生するとその区画を画成する扉体1にも高熱が作用する。この時、船内に備えた自動消火装置から消火用の炭酸ガスが区画内に射出されるが、鎮火が遅れると弾性材のパツキン5や8が高熱で溶けてしまう恐れがある。しかし、そのような高熱下では第2パツキン6と9が膨張して扉体1と枠部材4及び床面7との間を塞ぐため、扉体1はパツキン5や8を溶失した後も機密性を保持する。」(3頁左欄8?17行)、「したがつて、高熱下においてもシヤツターは気密状態を保ち、噴出する炭酸ガスを外に逃がさず、外部から区画内への空気流入も遮断されるので、消火活動が効率良く行なわれる。また、火災に伴つて発生する有毒ガスや煙りが外に漏れる恐れもない。」(3頁左欄20?25行)と記載されている。

(2)火災時の延焼を防止するために、扉体と下枠との間隙に熱膨張耐火部材を配置することは、下記のとおり、周知の技術である(以下「周知技術2」という。)。
例えば、原査定の拒絶の理由に引用文献5として引用された、特開昭61-75189号公報には、「扉14に接する上枠11の戸当り面の下端に凹部15が形成されている。また、下枠12及び縦枠13の戸当り面にもそれぞれ凹部15が設けられ、これら凹部15には耐火膨張材17が嵌入されている。」(2頁左上欄20行?右上欄5行)と記載されている。
また、原査定の拒絶の理由に引用文献6として引用された、特開2004-232294号公報には、「前記屋外100側からの火炎により、前記外枠材4と框材5との間の空間17の温度が上昇すると、該外枠材4と框材5との間に設置された炭素系発泡材からなる加熱膨張材9が、温度上昇によって約20倍程度の体積に膨張し、かかる加熱膨張材9の体積膨張により、前記外枠材4と框材5との間の空間17を完全に封鎖し、火炎が該空間17を通して屋内200側に伝達されるのを阻止する。」(【0032】)と記載されている。

(3)そして、窓シャッターに防火、耐火性能を持たせることは、当業者であれば当然認識している課題であり、また、上記(1)及び(2)で説示したように周知である熱膨張耐火部材をどこに配置するかは、どの隙間を閉塞したいかによって適宜選択されるべきものといえるところ、刊行物1発明に周知技術1及び2を採用して、シャッター下枠7とシャッターカーテン1の下端に設けられる座板との間隙を閉塞するために、座板6の第二屋内側片63cに熱膨張耐火部材を適宜配置し、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。

(4)請求人の主張について
ア 請求人は平成27年 3月23日付け審判請求書(11?12頁)において以下のとおり主張する。
「(イ)請求項1に係る発明の「前記下枠は、窓開口部全閉状態において、室外空間に面しない部位を備えており、
前記座板は、窓開口部全閉状態において、室外空間に面しない部位を備えており、
前記座板は、窓開口部全閉状態において、前記下枠の前記室外空間に面しない部位と当該座板の前記室外空間に面しない部位との間で間隙を形成しており」
という構成については、その構成を知った上で、引用文献1の図6の態様に当てはめることはできるが、引用文献1に接した当業者(本願発明についての事前知識を持ち合わせていない)において、例えば図6を見た時に、座板6、シャッター下枠7の各部位を、窓開口部全閉状態において、室外空間に面しない部位(火災時の熱の影響を受けにくい部位である)であるか否かという視点で捉えることはなく、構成要件B、C、Dは、引用文献1に記載されているとは言えない。」

イ しかしながら、本願発明についての事前知識を持ち合わせていなくとも、刊行物1(引用文献1)の図6を見た時に、座板6、シャッター下枠7の各部位を、窓開口部全閉状態において、室外空間に面しない部位であると判断できるといえる。その際、火災時の熱の影響を受けにくい部位であるという視点で各部位を捉える必要はない。
また、火災時の熱の影響を受けにくい部位に「熱膨張耐火部材」を設ける点についても、上記(1)?(3)で検討したとおり、当業者が刊行物1発明及び周知技術に基づいて容易に想到することができたものである。
よって、請求人の主張は採用できない。

ウ また、請求人は平成27年 3月23日付け審判請求書(15頁)において以下のとおり主張する。
「(エ)叙上のように、引用文献1には、窓シャッターの耐風圧構造に係るものであり、また、窓シャッターにおいて、耐風性能に加えて防火性能を考慮することは従来周知の課題や技術常識ではなく、引用文献1に開示された窓シャッターにおいて、耐風性に加えて防火性能を考慮して、シャッターの設計を行うことは自明であるとは言えず、引用文献1に開示された座板6とシャッター下枠7の構成を利用して、防火性能を向上させようという契機はない。
したがって、窓シャッターの耐風圧構造について記載する引用文献1に、防火性能の向上を目的として熱膨張耐火部材を設けることは、当業者において容易に想到されることはでない。

(オ)引用文献2?4には、防火シャッターが開示されているものの、開口部全閉時にはシャッターカーテン下端が床面に接触するものであって、下枠は開示されていないことから、「下枠における室外空間に面しない部位」という構成は一切開示されておらず、よって、「窓開口部全閉状態において、下枠の室外空間に面しない部位と座板の室外空間に面しない部位との間で間隙を形成する」という構成や「座板の室外空間に面しない部位に熱膨張耐火部材を設けて前記間隙を塞ぐ」という技術思想は存在せず、
引用文献5、6はそもそも防火シャッターではなく、「窓開口部全閉状態において、下枠の室外空間に面しない部位と座板の室外空間に面しない部位との間で間隙を形成する」という構成は存在せず、
引用文献2?6には、シャッターカーテン下端の座板と下枠との関係については一切開示されておらず、本願発明の構成要件D、Eについての契機となるような記述は一切無い。」

エ しかしながら、上記(1)ないし(3)で検討したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

(5)本願発明が奏する効果について
上記相違点によって本願発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明及び周知技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

(6)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が刊行物1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。


6 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が刊行物1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-30 
結審通知日 2015-10-01 
審決日 2015-10-16 
出願番号 特願2011-190977(P2011-190977)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村田 泰利  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 中田 誠
門 良成
発明の名称 窓シャッター装置  
代理人 稲葉 滋  

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