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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1308357
審判番号 不服2015-2768  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-12 
確定日 2015-12-22 
事件の表示 特願2010-119387「情報処理装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月 8日出願公開、特開2011-248511、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成22年5月25日の出願あって、平成26年3月26日付けで拒絶理由が通知され、平成26年6月2日付けで手続補正がなされたが、平成26年11月6日付けで拒絶査定がなされ、これを不服とし、平成27年2月12日に本件審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成27年2月12日付け手続補正(以下、「本件補正」という)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年2月12日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を補正後の請求項1の記載とする補正(以下、「補正事項1」という)を含んでおり、それぞれの記載は次のとおりである。
なお、補正後の請求項1の下線は、補正箇所を表している。また、該下線部における「ホットファルダ」は「ホットフォルダ」の誤記と考え、訂正して記載した。

(1)補正前の請求項1
「印刷データをホットフォルダに投入することにより、該ホットフォルダに設定された印刷設定を印刷データに適用し、該印刷データを印刷装置へ送信する情報処理装置において、
第1のホットフォルダと、
第2のホットフォルダと、
前記第1のホットフォルダまたは前記第2のホットフォルダに対する印刷データの投入を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された前記第1のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付けた状態で、投入順にしたがって第1の投入順リストに登録する第1の記憶手段と、
前記検知手段により検知された前記第2のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付けた状態で、投入順にしたがって第2の投入順リストに登録する第2の記憶手段と、
前記第1の投入順リストの先頭の印刷データに対応づけられた投入時刻と前記第2の投入順リストの先頭の印刷データに対応づけられた投入時刻とを比較して、投入時刻が古い方の印刷データから順に送信リストへ登録していくことによって、前記送信リストの登録順にしたがって前記第1のホットフォルダに投入された印刷データと前記第2のホットフォルダに投入された印刷データの前記印刷装置への送信順を決定する登録手段と
を有することを特徴とする情報処理装置。」

(2)補正後の請求項1
「印刷データをホットフォルダに投入することにより、該ホットフォルダに設定された印刷設定を印刷データに適用し、該印刷データを印刷装置へ送信する情報処理装置において、
第1のホットフォルダと、
第2のホットフォルダと、
前記第1のホットフォルダまたは前記第2のホットフォルダに対する印刷データの投入を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された前記第1のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付けた状態で、投入順にしたがって第1の投入順リストに登録する第1の記憶手段と、
前記検知手段により検知された前記第2のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付けた状態で、投入順にしたがって第2の投入順リストに登録する第2の記憶手段と、
前記第1の投入順リストの先頭の印刷データに対応づけられた投入時刻と前記第2の投入順リストの先頭の印刷データに対応づけられた投入時刻とを比較して、投入時刻が古い方の印刷データから順に送信リストへ登録していくことによって、前記送信リストの登録順にしたがって前記第1のホットフォルダに投入された印刷データと前記第2のホットフォルダに投入された印刷データの前記印刷装置への送信順を決定する登録手段と、を有し、
前記第1のホットフォルダまたは前記第2のホットフォルダへ印刷データが投入された順に印刷データを前記印刷装置へ送信する投入順優先モードと、前記第1のホットフォルダまたは前記第2のホットフォルダに複製が完了した印刷データから順に印刷データを前記印刷装置へ送信するスピード優先モードとを切り換え可能であることを特徴とする情報処理装置。」

なお、補正後の請求項1の下線部は、補正前の請求項2に記載されていた事項の一部と対応するが、補正前の請求項2に記載されていた事項の全部に対応するものではない。したがって、「補正後の請求項1は、補正前の請求項2を補正したもの」とはいえない。

2.補正の適否
本件補正の補正事項1は、補正前の請求項1に、「前記第1のホットフォルダまたは前記第2のホットフォルダへ印刷データが投入された順に印刷データを前記印刷装置へ送信する投入順優先モードと、前記第1のホットフォルダまたは前記第2のホットフォルダに複製が完了した印刷データから順に印刷データを前記印刷装置へ送信するスピード優先モードとを切り換え可能であること」を付加するものである。
この付加された事項の内容は、補正前の請求項1に記載した発明の、投入順に印刷データを送信する動作を「投入順優先モード」とし、それに「スピード優先モード」をさらに備えて、それらのモードを切り換え可能にするというものであり、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。さらに、同法同条同項第1号、第3号、第4号のいずれの目的とするものにも該当しない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成27年2月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-6に係る発明は、平成26年6月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という)は、上記「第2.1.(1)補正前の請求項1」に記載したとおりのものである。

2.原査定の理由の概要
平成26年3月26日付け拒絶理由通知書に記載した原査定の理由の概要は次のとおりである。

「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項: 1?10
・引用文献: 1?2
・備考:
引用文献1には、本願発明の請求項1?2,5?6,9?10に係る事項が開示されており、本願発明と引用文献1に開示される発明とを対比すると、以下の点で相違している。

(1)複製の完了順に送信順を登録するスピード優先モードが開示されていない点
(2)投入順優先モードと前記スピード優先モードを切り換え可能とする切換手段が開示されていない点

上記相違点について検討する。
・相違点(1)(2)について
引用文献2の119,121段落には、本願のスピード優先モードに相当する事項が開示されている。また、上記のように送信する順序を指定できるものであるのであるから、引用文献1に引用文献2を組み合わせる際に、それぞれのモードをそれぞれ切り換え可能とすることについても、当業者が容易に相当し得ることである。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2010-097287号公報
2.特開2006-344172号公報」

3.刊行物の記載事項
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由で引用された特開2010-097287号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線部は当審により付与した)。

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイル制御装置、印刷システム、及びそれらを制御するプログラムに関する。例えば、印刷ジョブ生成装置、印刷ジョブ管理装置、印刷装置からなる印刷システムにおいて、大量のファイルを順番に効率よく印刷するための印刷ジョブの制御と、ホットフォルダの作成制御、ならびに制御を実行するプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷システムとして、例えば、社内の部門をクライアントとし、上記クライアントから発注された印刷物(マニュアル、顧客向け報告書等)の作成依頼を受注し、所望の印刷物を作成して上記クライアントに納品するような、所謂社内印刷システムがある。このような顧客から受け取ったファイルを簡易に印刷を実施する印刷システムとして、所謂ホットフォルダ機能を使用した印刷が実施されている。例えば、ホットフォルダ機能を使用して印刷設定情報を指定して、印刷システムを構成する周知の画像形成装置が有する、出力された原稿用紙をフィニッシング装置で製本処理(ステイプル、穴あけ、中綴じ製本、包み製本等)を行う。
【0003】
以下、従来のホットフォルダ(以下、HFとも記す)を使用したPOD(Print On Demand)システムにおける印刷ジョブ処理の一例を説明する。
【0004】
図29Aと図29Bは、HFにファイルが投入された順番に印刷されている一例を示す。図30は、HFクライアントアプリにファイルが投入されてから、HFサーバアプリから印刷ジョブとして送信されるまでの一例を示す。
【0005】
図29Aは、従来例のPODシステムの全体構成を説明する図を使用して、HF(以下、HFとも示す)にファイルが投入される順番を説明する図である。
【0006】
本従来例のHFクライアントPCは、HFクライアントPC22と23と40とで構成されている。また、46?48は、HFクライアントPC22,23,40で動作するHFクライアント・アプリケーション(以下、HFクライアントアプリと称す)である。HFクライアント22と23と40は、同一のPC上で構成されても構わない。41から43は、複数のオペレータから送られて来た印刷用のコンテンツデータファイルを示す。本従来例では、PDFファイルとし、第一番目にファイル41がHFクライアントアプリ46へ投入される。そして、第二番目にファイル42が、HFクライアントアプリ46へ投入され、最後にファイル43がHFクライアントアプリ48へ投入されることを示している。
【0007】
4aは、HFサーバPC20で動作するHFサーバ・アプリケーション(以下、HFサーバアプリと称す)であり、その内部にカラーMFP37等の印刷機器へ印刷データを転送する為の送信キュー44を所持している。送信キュー44には、セットされた順番でカラーMFP36や37へ送信処理される。49は、HFサーバPC20で動作するジョブ管理アプリケーショ(以下、ジョブ管理アプリと称す)であり、HFサーバアプリ4aから送信される印刷ジョブの監視や、カラーMFP37内の印刷ジョブのステータスの監視等に使用される。
【0008】
4bは、カラーMFP37に構築されているジョブ制御部であり、その内部にプリントキュー45を所持している。プリントキュー45にセットされた順番にカラーMFP37で印刷処理がなされる。また、プリントキュー45には、RIP済の印刷ジョブがセットされ、カラーMFP37の各種制限を受ける。4cは、カラーMFP37に構築されているジョブ処理部であり、プリントキュー45に記録されているジョブを印刷実行する。カラーMFP36の4dと4eに関しては、4bと4cに同様である。なお、上記従来例では、プリントキューには、RIP済の印刷ジョブがセットされるとしたが、以下の実施形態では、RIP前の印刷ジョブがセットされても構わない。
【0009】
図29Bは、図29Aの続きの処理を示している。HFにファイルが投入された後、印刷されるまでの処理を説明する図である。なお、図29Aと同じ要素は同じ参照番号で示されている。
【0010】
図29Aの操作後、PDFファイル-1とPDFファイル-2が、HFアプリ46上にコピーされている。また、PDFファイル-3は、HFアプリ47上にコピーされている。そして、HFクライアントアプリ46と47は、コピーされたPDFファイル-1、-2、-3を、順次にHFサーバアプリ4aに転送する。そして、HFサーバアプリ4a上で印刷設定情報ファイルであるJDF(Job Definition Format)を付加し、印刷ジョブ50?52に変換し、送信キュー44上にセットしていく。印刷ジョブ50がPDFファイル-1に対応し、印刷ジョブ51がPDFファイル-2に対応し、印刷ジョブ52がPDFファイル-3に対応する。印刷ジョブ50?52は、送信キュー44にセットされた順番に、其々の印刷ジョブ50?52のJDFファイルに記述されているデバイス(カラーMFP36,37)に送信される。
【0011】
本従来例では、印刷ジョブ50と51はカラーMFP37に送信され、印刷ジョブ50はプリントキュー45上にセットされ、印刷ジョブ53として印刷中であることを示している。また、印刷ジョブ51は、印刷ジョブ50の後にMFP37へ送信され、プリントキュー45上で印刷待機中の印刷ジョブ54であることを示している。印刷ジョブ52もカラーMFP37で印刷する指示がなされているが、カラーMFP37の制限により、印刷ジョブ53が終了するまで転送待ちとなっている。デバイス(カラーMFP36,37)の制限には、DISK容量や、頁毎に異なる設定を行う例外設定数や、用紙の挿入を指示する挿入指示数等がある。詳細に関しては、実施形態において後ほど説明する。
【0012】
図30は、図29Aと図29Bにおける送信キュー44からの送信までのHFサーバアプり4aの処理を詳細に説明している。
【0013】
P150?P155は、処理内容(プロセス)を示し、この番号順に処理される。P150で、PDFファイル-1(41)をHFクライアントアプリ46へDrag&Dropする。本従来例では、HFクライアントアプリ46は、A3用紙で中綴じ印刷を実施する設定が記録されている。HFクライアントアプリ46が、PDFファイル-1(41)が投入されたことを検知すると、P151でHFクライアントアプリはHFサーバアプリ4aにデータ処理の依頼を通知する。HFサーバアプリ4aはデータ処理用のJDFジョブ生成スレッド1(158)を生成する。そして、HFクライアント46からPDFファイル-1(41)をHFサーバアプリ4aへ転送する。P152では、HFサーバアプリ4aとカラーMFPで処理可能なファイル種かどうかPDFファイル-1(41)のチェックを行う。そして、P153では、HFクライアントアプリ46に設定されている印刷設定情報が記録されている印刷指示書であるJFDファイル150を生成する。P154では、PDFファイル-1(41)とJFDファイル150とをMIMEエンコーディングして、印刷ジョブ50を生成する。そして、P155にて生成した印刷ジョブ50を送信を制御する送信スレッド159上の送信キュー44に転送する。この時の転送待ちの印刷ジョブ50をジョブ1(53)で示す。なお、156と157は、JDFジョブ生成スレッド1(158)とは別の、例えば、PDFファイル-2(42),PDFファイル-3(43)に対応するジョブ生成スレッド2,3である。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述した従来のHFによる印刷技術には、以下のような問題点がある。
【0016】
図31は、上記従来の例において、投入した順番と異なる順番でカラーMFP37のプリントキュー45に印刷ジョブがセットされる例を示す。なお、図29A及び図29Bと同じ要素は同じ参照番号で示されている。
【0017】
PDFファイル-1(41),-2(42),-3(43)の順番でHFクライアントアプリ46または47に投入されたことは、図29A及び図29Bの例と同じである。しかし、図31では、送信キュー44に、印刷ジョブ50、52、51の順番でセットされていることが、図29Bの例と異なる。送信キュー44にセットされている順番が異なるため、カラーMFP37のプリントキュー45にセットされる印刷ジョブの順番もPDFファイルを投入した順番と異なってしまっている。すなわち、PDFファイル-3(43)に対応する印刷ジョブ55が先にプリントキュー45にセットされ印刷されることになる。
【0018】
このような順番の逆転は、次のような理由で発生する。例えば、図30で説明したように、PDFファイルのHFクライアントアプリ46,47への投入から、送信キュー44へのセットまでには多数の工程を経る。従って、投入されたPDFファイルのサイズや生成するJDFファイルの複雑さやサイズ、またHFサーバPC30上の環境によって、送信キュー44にセットするまでの処理時間に差が発生する。その結果、送信キュー44及びプリントキュー45にセットされる印刷ジョブの順番の、PDFファイルの投入の順番に対する逆転が発生する。
【0019】
また、図32は、上記従来の例において、カラーMFP37の制限により印刷ジョブ52を転送できず、カラーMFP37のプリントキュー45に印刷待ちのジョブを作成出来ない例を示している。なお、図29A及び図29Bと同じ要素は同じ参照番号で示されている。
【0020】
本従来例においては、印刷中の印刷ジョブ54が終了するまで、次の印刷ジョブ52を送信できず、印刷ジョブ54が終了後にカラーMFP37において印刷待ちが発生してしまい、パフォーマンスがダウンする例を示している。
【0021】
更に、複数のHFクライアントアプリからの同時処理時に異なるクライアントアプリからのジョブが混在するため、印刷後に各クライアントアプリ単位に印刷物の仕分けが必要になる。すなわち、印刷オペレータA(X社担当)と印刷オペレータB(Y社担当)が、2つのHFクライアントアプリから同時に印刷処理を実行している場合には、異なる顧客(印刷設定)のジョブが混在して出力されることになる。そのため、各クライアントアプリ単位に印刷物の仕分けが必要となり、パフォーマンスがダウンする。特に、出力された印刷物をフィニッシング装置で製本処理(ステイプル、穴あけ、中綴じ製本、包み製本等)を行う場合には、パフォーマンスのダウンが著しい。
【0022】
以上のように、従来技術においては、次のような問題点があった。HFクライアントアプリへの投入順に印刷されない場合がある。また、同じクライアントアプリに対する、他のHFクライアントアプリからの連続する印刷ジョブの投入と印刷処理が、印刷デバイスの制限でできない場合がある。更に、複数のHFクライアントアプリからの同時処理時に異なる顧客(印刷設定)の印刷ジョブが混在し、印刷物の仕分けが必要となる。
【0023】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、HFクライアントアプリへの投入順に印刷されるよう制御されるファイル制御装置、印刷システム、及びそれらを制御するプログラムを提供する。
【0024】
また、印刷デバイスの制限の下であっても、同じクライアントアプリに対する、他のHFクライアントアプリからの連続する印刷ジョブの投入と印刷処理が可能に制御されるファイル制御装置、印刷システム、及びそれらを制御するプログラムを提供する。
【0025】
更に、複数のHFクライアントアプリからの同時処理時に異なる顧客(印刷設定)の印刷ジョブが混在しないように制御されるファイル制御装置、印刷システム、及びそれらを制御するプログラムを提供する。」

「【0099】
<実施形態1のPODシステムの動作例>
図12及び図13は、実施形態1における、PDFファイルがHFクライアントアプリに投入された順番での印刷を可能とするPODシステムの動作例に関して説明する。
【0100】
(HFクライアントアプリ46とHFサーバアプリ4aでの詳細動作例)
図12は、従来例の図30に対応する実施形態1のHFクライアントアプリ46とHFサーバアプリ4aとの詳細な処理手順を示す図である。なお、以下の説明では、図30からの変更点を中心に説明する。図30と同じ要素や処理は同じ参照番号で示す。
【0101】
PDFファイル-1(41)がHFクライアントアプリ46にDrag&Dropされると、HFクライアントアプリ46はOSからPDFファイル-1が投入されたイベントを受け取る。HFクライアントアプリ46は、イベントを受信すると以下のデータを生成する。すなわち、HFクライアントアプリ毎に事前にユニークに設定されているHFクライアントアプリ名称、HFクライアントアプリ46にファイルが投入される毎に+1される投入ファイル番号、イベントを受け取った時間、を順序データとして生成する。この順序データは、図8のジョブ管理情報の対応する。そして、HFクライアントアプリ46は、投入されたPDFファイル-1に付加する印刷指示書であるJDFデータを生成する。処理P160は、このJDFファイル162内に、順序データを埋め込む処理を示す。処理P161は、生成したJDFファイル162と投入されたPDFファイル-1(41)をHFサーバ20のHFサーバアプリ4aに転送する処理を示す。
【0102】
次に、HFサーバアプリ4aでは、転送されたJDFファイル162と投入されたPDFファイル-1(41)とから印刷ジョブ生成して、印刷ジョブ記憶部105a(図5参照)に保持する。HFサーバアプリ4aは、保持された印刷ジョブを、JDFファイル内に記録した順序データを使用して投入されたHFクライアントアプリ名称毎にソートする。また、HFクライアントアプリ名称毎に投入された順序である投入ファイル番号を連番でソートする。
【0103】
JDF内には、同じHFクライアントアプリ名称の投入ファイル番号は連番で記入されているので、上記ソートにより、同じHFクライアントアプリ名称のPDFファイルはHFクライアントアプリへの投入順に並べられて、送信キュー44に送られる。その結果、送信キュー44からデバイス(カラーMFP)への印刷ジョブの送信順序は、PDFファイルのHFクライアントアプリへの投入順序に一致する。
【0104】
なお、上記ソートは印刷ジョブの送信キュー44への転送毎に行われてもよい。また、データを送信する送信スレッド159からの印刷ジョブデータの送信は、連番で次となる印刷ジョブが送信キューにない場合には、送信しないように処理することでも構わない。
【0105】
(PODシステムでの動作例)
図13は、上記図12の処理に従うPODシステムでの動作例を説明する図である。なお、図13は、図31に従って課題の欄で説明したHFサーバアプリ4aへのPDFファイルの転送順序が、PDFファイルのHFクライアントアプリ46,47への投入順序と異なる場合の実施形態1での処理を示している。ここでは、各クライアントアプリ46?48であるホットフォルダ-1?-3は、PC20上に作成されたHFサーバアプリ4aのフォルダをネットワーク共有することで実現している。なお、図4、図29A、図29B、図31及び図32と同じ要素は同じ参照番号で示されている。
【0106】
PDFファイル-1(41),-2(42),-3(43)の順番でHFクライアントアプリ46または47に投入されたが、HFサーバアプリ4aへの転送順序がPDFファイル-1,-3,-2となった状況は、図31と同じである。
【0107】
このような順番の逆転は、次のような理由で発生する。例えば、PDFファイルのHFクライアントアプリ46,47への投入から、送信キュー44へのセットまでには多数の工程を経る。従って、投入されたPDFファイルのサイズや生成するJDFファイルの複雑さやサイズ、またHFサーバPC30上の環境によって、送信キュー44にセットするまでの処理時間に差が発生する。その結果、送信キュー44及びプリントキュー45にセットされる印刷ジョブの順番の、PDFファイルの投入の順番に対する逆転が発生する。
【0108】
図13においては、図12で説明したように、HFクライアントアプリ46または47で投入されたPDFファイルに対応する順序データを含むJDFファイルが生成されて、PDFファイルとJDFファイルの対としてHFサーバアプリ4aへ転送される。例えば、PDFファイル-1(41),-2(42),-3(43)には、生成された順次データを含むJDFファイル-1(41a),-2(42a),-3(43a)が付加されて、HFサーバアプリ4aへ転送される。PDFファイルとJDFファイルの対は、図13に50a?52aで示されている。
【0109】
従って、JDFジョブ生成スレッド2に、PDFファイル-3(43)とJDFファイル-3(43a)の対が転送された後に、PDFファイル-2(42)とJDFファイル-2(42a)の対が転送される場合がある。この場合であっても、送信キュー44には投入順に並べられる。
【0110】
また、投入されたPDFファイルのサイズや生成するJDFファイルの複雑さやサイズ、またHFサーバPC30上の環境によって、送信キュー44にセットするまでの処理時間に差が発生した場合を想定する。この場合であっても、実施形態1の処理によって、送信キュー44及びプリントキュー45にセットされる印刷ジョブの順番はPDFファイルの投入の順番に一致する。更に、異なるHFクライアントアプリ(異なる顧客(印刷設定))から投入されたPDFファイルが混在した場合を想定する。この場合であっても、PDFファイルはHFクライアントアプリ名称でソートされるので、送信キュー44及びプリントキュー45への印刷ジョブのセットにおいてHFクライアントアプリ(異なる顧客(印刷設定))が混在することがない。
【0111】
(実施形態1のジョブ管理アプリでのHFジョブリストの表示例)
図14Aから図14Dは、HFサーバアプリ4aからの印刷ジョブの送信順番変更が行われている例を、ジョブ管理アプリ49上における表示を用いて説明する。なお、ジョブ4まであることを除いて、上記図13と同じ状況の場合を示す。
【0112】
図14Aにおいて、170はジョブ管理アプリ49がHFサーバアプリ4a中の印刷ジョブのステータスを表示している画面である。171はHF名称を示し、選択するとHFサーバアプリ4aに転送された印刷ジョブから、選択されたHFクライアントアプリ名称から送信処理中のジョブのみが表示される。本例では、HF名称として"A3-中綴じHF"172が選択され、"A3-中綴じHF"に投入されたPDFファイルから生成された印刷ジョブのみが表示されている。
【0113】
本HFサーバアプリ4aでは自動でHF名称と投入された順番で印刷ジョブをソートすることとするが、HF名称を選択したことをトリガとして、印刷ジョブのソートを実行しても構わない。
【0114】
174はHFサーバアプリ4aに存在する、選択されたHFクライアントアプリ名称の印刷ジョブである。図14Aでは、174の1つだけが存在している。なお、173を選択すると、HF名称に関係なくHFサーバアプリ4aに存在する全印刷ジョブが表示される。
【0115】
図14Bは、HFサーバアプリ4aに存在する、"A3-中綴じHF"に投入されて作成された印刷ジョブが1つ追加になっている状態を示している。180は"A3-中綴じHF"に3番目に投入されたPDFファイルである。本例では、便宜上、ジョブ名に投入された順番の番号を付けて分かり易くしている。すなわち、図14Bは、"A3-中綴じHF"に最初に投入されたA社ジョブ1の次に、"A3-中綴じHF"に3番目に投入されたA社ジョブ3がHFサーバアプリ4aに転送された、あるいはA社ジョブ3が送信キューに移行したことを示している。
【0116】
図14Cは、更にHFサーバアプリ4aに、"A3-中綴じHF"に投入されて作成された印刷ジョブが2つ追加になっている状態を示している。但し、190は"A3-中綴じHF"に投入された2番目のPDFファイルであり、200は"A3-中綴じHF"に投入された4番目のPDFファイルである。
【0117】
図14Dは、実施形態1の順序データに基づくソートにより、HFサーバアプリ4aの印刷ジョブが、投入されたHFの名称毎、且つそのHFクライアントアプリに投入された順番でソートされた結果を示している。2番目に"A3-中綴じHF"に投入されたPDFファイルの印刷ジョブ(A社ジョブ2)190と、3番目に"A3-中綴じHF"に投入された印刷ジョブ(A社ジョブ3)180との順番が投入順に変更されている。順番の変更には、JDFファイルに記録したHFクライナトアプリ名称と連番の投入ファイル番号とを使用して、HFサーバアプリ4aが実行する。
【0118】
<実施形態1のPCの処理手順例>
図15及び図16は、実施形態1の処理を実現するための、HFクライアントPC及びHFサーバPCの処理手順例を示すフローチャートである。なお、図15及び図16は、実施形態1に特徴的な一部の手順のみを示している。かかるフローチャートは、図5のCPU101により実行される。
【0119】
図15は、実施形態1のHFクライアントPCの処理手順例を示すフローチャートである。
【0120】
まず、ステップS151で、CPU101は、PDFファイルのHFクライアントアプリへの投入を待機する。CPU101は、PDFファイルの投入があればステップS152に進んで、クライアントアプリ名称、投入ファイル番号、イベント受取時刻を取得する。投入ファイル番号の取得は、HFクライアントアプリからHFサーバアプリ4aに要求することで行われる。CPU101は、ステップS153で取得した情報から順序データとなるJDF管理情報を作成する。
【0121】
ステップS154では、CPU101は、ステップS153で作成したJDF管理情報を含むJDFファイルを作成する。ステップS155で、CPU101は、このJDF管理情報を含むJDFファイルと投入されたPDFファイルとを対にして、HFサーバのHFサーバアプリに転送する。
【0122】
ステップS156で、CPU101は、同じクライアントアプリ名称への投入ファイル番号を1つ加算して、ステップS151に戻って次のPDFファイルの投入を待つ。CPU101は、ステップS157でHFクライアントアプリの終了指示があれば、処理を終了する。
【0123】
図16は、実施形態1のHFサーバPCの処理手順例を示すフローチャートである。
【0124】
まず、ステップS161で、CPU101は、HFクライアントアプリPCからのPDFファイルとJDFファイルとの対の転送を待機する。CPU101は、PDFファイルとJDFファイルとの対の転送があればステップS162に進んで、JDFジョブ生成スレッドを生成する。CPU101は、ステップS163で転送されたPDFファイルのコンテンツチェックを行う。ステップS164では、CPU101は、PDFファイルとJDFファイルとを含むJDFジョブ(印刷ジョブ)を生成して格納する。ステップS165では、CPU101は、PDFファイルの投入が更にあればステップS161に戻って、PDFファイルとJDFファイルとの対の転送を待つ。
【0125】
PDFファイルの更なる投入が無ければ、CPU101は、ステップS166で、JDFファイルの順序データであるクライアントアプリ名称と投入ファイル番号とで印刷ジョブをソートする。ソートしてHFクライアントアプリへの投入順に並んだ印刷ジョブを送信キューに移行する。なお、印刷ジョブの送信キューへの移行毎にソートを行って、順番を入れ替えてもよい。かかる処理が、印刷ジョブ変更処理に含まれる。」

以上の記載から、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていると認められる。

[刊行物1発明]
印刷用のコンテンツデータファイル(PDFファイル)を、HF(ホットフォルダ)クライアントアプリに投入することにより、該ホットフォルダに設定された印刷設定情報であるJDFファイルを生成し、該JDFファイルを前記PDFファイルに付加して印刷ジョブに変換し、該印刷ジョブをデバイス(カラーMFP)へ送信するファイル制御装置において、
HFクライアントPC22のHFクライアントアプリ46と、
HFクライアントPC23のHFクライアントアプリ47と、
前記HFクライアントアプリ46または47に対するPDFファイルの投入を待機し、PDFファイルの投入があれば、クライアントアプリ名称、投入ファイル番号、イベント受取時刻を取得し、取得した情報から順序データとなるJDF管理情報を作成して作成したJDF管理情報を含むJDFファイルを作成し、このJDFファイルと投入されたPDFファイルとを対にして、HFサーバ20のHFサーバアプリ4aに転送し、PDFファイルとJDFファイルとを含むJDFジョブ(印刷ジョブ)を生成して格納し、PDFファイルの更なる投入が無ければ、JDFファイルの順序データであるクライアントアプリ名称と投入ファイル番号とで印刷ジョブをソートしてHFクライアントアプリへの投入順に並んだ印刷ジョブを送信キュー44に移行するファイル制御装置。

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由で引用された特開2006-344172号公報(以下、「刊行物2」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0005】
ホットフォルダは、予めジョブチケットを関連づけておくことができるコマンド付きフォルダである。フォルダとは、階層化ファイル管理システムにおける一階層を示すノードであり、その下にフォルダやファイルを関連づけることができる。フォルダは、その中に他のフォルダやファイルを保存できる、と言い換えることもできる。複数のジョブチケット設定が必要な場合には、予め複数個のホットフォルダを準備しておいて、それぞれに相異なるジョブチケットを関連づけておく。それら複数のホットフォルダをジョブの用途に応じて使い分ける。そして、利用者により指定されたドキュメントが、ドラッグアンドドロップ操作やファイル検索などによりホットフォルダに投入される。ホットフォルダは、ホットフォルダを実現するためのプログラムにより予め決められた時間周期でポーリングされている。ポーリングによりホットフォルダにファイルが投げ込まれたことを知る。ファイルが投げ込まれた場合には、そのファイルは、予め定義されたジョブチケットを添えて画像形成装置側にジョブ(ドキュメントデータ+ジョブチケットデータ)として送付される。ホットフォルダに投入された文書データを、ポーリングの都度繰返し印刷しないように制御する技術も提案されている(特許文献3等参照)。」

「【0007】
近年、デジタルカメラが普及している。ディジタルカメラで撮影された画像データの圧縮形式としてJPEGが選択されることが多い。JPEGでは、一つの写真データが一つのJPEGファイルとして扱われる。そして、ディジタルカメラで撮影された写真は、一つまたは複数が一枚の紙に印刷されることが多い。ディジタルカメラで撮影した写真を印刷するためにホットフォルダを用いることもできる。ホットフォルダに投入(ドラッグアンドドロップ操作等による)された文書データは、その都度(あるいはポーリングされる都度)印刷ジョブとしてプリンタに送信される。そのため、複数個のJPEGファイルを選択して、一斉にホットフォルダに投げ込んだ(複数ファイルを選択して、ホットフォルダへとドラッグアンドドロップ操作)場合、印刷される順序は保証されない。これは下記の3つの要因による。
(1) ホットフォルダにジョブが投入されたことを検知するには、ポーリングなどの周期的な検索方法が利用されているため、その周期の間に投入された複数のジョブ間で、順序が決められない。
(2) ポーリングは、ユーザがジョブを投げ込むタイミングとは非同期に行われるため、1つずつファイルを投げ込んでも順序どおりに画像形成装置に送られるとは限らない。
(3) ホットフォルダ内に複数のファイルが存在する場合、その複数個のファイル間で順序がつけられていないため、送信順序が一意に決まらない。」

「【0110】
[ホットフォルダへの複数ファイルの投入方法]
図15から図20を用いて、ホットフォルダに文書データ(文書ファイル)を投入する方法を説明する。まず予めホットフォルダと印刷ファイル作成しておく。図15から図20においては、HotFolder_1という名前のホットフォルダと、File-A、File-B、File-Cという名前の印刷ファイルを例として示している。図15から図20の操作は、作成されたホットフォルダを示すアイコン1501と、印刷しようとする文書データのアイコンとを、たとえばウインドウズ(登録商標)のエクスプローラを用いて表示したり、デスクトップに表示するなどした状態で行える。この画面はホットフォルダを利用するクライアントにおいて表示される。なお、本実施形態では、ホットフォルダはプリントサーバ101により提供されている。それに対して文書データはクライアントが有する場合が多い。そのため、ひとつの画面に表示されているとはいえ、ホットフォルダと文書データとは、物理的には相異なるコンピュータに存在している場合もある。図18から図20は、3つのファイルを1つずつ投入する方法を示す。
【0111】
操作者はファイルFile-Aをクリックして選択し、ドラッグしてホットフォルダHotFolder_1にドロップする(図15)。次に操作者はファイルFile-Bをクリックして選択し、ドラッグしてホットフォルダHotFolder_1にドロップする(図16)。最後に操作者はファイルFile-Cをクリックして選択し、ドラッグしてホットフォルダHotFolder_1にドロップする(図17)。以上の操作により、文書データのアイコンに関連づけられた3つの文書データを、これもホットフォルダのアイコン1501に関連づけらホットフォルダHotFolder_1に投入(すなわち移動または複製)することが出来る。この方法では、一つずつドラッグ&ドロップの操作を行うので、最初のファイルの投入開始から最後のファイルの投入完了まで時間差が生じる。
【0112】
図18から図20は、3つのファイルを一挙に投入する方法を示す。まず一挙に投入するファイルを選択する。図18と図19ではFile-A、File-B、File-Cを選択するところを示している。全部選択したなら、それらをまとめてHotFolder_1にドロップする(図20)。以上の操作により、3つのファイルを同時にホットフォルダHotFolder_1に投入することが出来る。この方法では、投入の指示はまとめて行えるが、ファイルの移動やコピーはひとつずつ行われるため、最初のファイルの投入(移動または複製)開始から最後のファイルの投入(移動または複製)完了まで時間差が生じる。しかし、図15から図17で示した一つずつ投入する方法に比べると、時間差は少ない。
【0113】
このようにしてホットフォルダに投入された文書データは、ホットフォルダを監視しているホットフォルダプログラムの動作によりMFPに送信されて印刷される。」

「【0119】
図22は、選択されているホットフォルダに投入された文書データの画像形成装置への送信順序を設定する画面を示す。ホットフォルダの属性として、複数のファイルを後述する方法で同時に投げ込むことを許可するかどうかを設定するチェックボックス2201がある。これにチェックされていると(すなわち投入可能に設定されていると)、その下のチェックボックス2202が設定可能になる。なお、この説明では図22に合わせてファイルという用語を用いる。「ファイル」は詳細な説明の冒頭付近でのべた文書データと同義であり、印刷対象であるデータファイル一般を指す。
【0120】
さて、チェックボックス2202により、投げ込まれた複数ファイルの画像形成装置への送信順序を設定するかどうかが設定できるようになる。これがチェックされていると(順序を指定するに設定されていると)、その下の画像形成装置への送信順序指定のプルダウンメニュ2203が有効になる。プルダウンメニュ2203から複数ファイルの画像形成装置への送信順序を指定する。図22においては、ファイル名順に送信、ファイルの日付順に送信、ユーザが指定した順序で送信の3つが示されている。「ユーザが指定した順序で送信」が選択されると、選択されているホットフォルダ内の個々のファイルについて、たとえばファイルリスト2204内で選択したファイルを移動するなどの操作を操作者が行って、ファイルの順序を指定する。「ファイル名順に送信」が選択されていると、ファイルの属性の一項目として各ファイルに与えられているファイル名をキーとしてソートした順序で、各ファイルに基づいて作成された印刷ジョブが画像形成装置に送信される。「ファイルの日付順に送信」についても、ソートキーが日付になる点を除いて同様である。
【0121】
なお、図22は指定メニューの一例であり、他の属性項目をキーとした指定例もありうる。たとえば、サイズやファイルの種類もキーとして指定できる。また、複数の属性項目をキーとして指定し、各属性項目の優先順位を指定することもできる。たとえば日付とファイル名とをキーとして指定し、日付の優先順位を最高順位とし、ファイル名の優先順位を2番目として指定されたとする。この場合、同一日付のファイルが複数あれば、同一日付のファイルの中で、ファイル名をキーとしてソートした順序で、各ファイルに対応する印刷ジョブが出力される。」

4.本願発明1と刊行物1発明との対比
刊行物1発明の「印刷用のコンテンツデータファイル(PDFファイル)」、「HF(ホットフォルダ)クライアントアプリ」、「デバイス(カラーMFP)」、「ファイル制御装置」、「HFクライアントアプリ46」、「HFクライアントアプリ47」は、それぞれ、本願発明1の「印刷データ」、「ホットフォルダ」、「印刷装置」、「情報処理装置」、「第1のホットフォルダ」、「第2のホットフォルダ」に相当するものである。

刊行物1発明では、HFクライアントアプリ46または47に対するPDFファイルの投入を待機し、PDFファイルの投入があれば、JDF管理情報を作成するから、刊行物1発明は、本願発明1の「前記第1のホットフォルダまたは前記第2のホットフォルダに対する印刷データの投入を検知する検知手段」に相当する構成を有していることは明らかである。

刊行物1発明は、HFクライアントアプリ46または47に対するPDFファイルの投入があれば、クライアントアプリ名称、投入ファイル番号、イベント受取時刻を取得し、取得した情報から順序データとなるJDF管理情報(図8の85)を作成して作成したJDF管理情報を含むJDFファイルを作成し、このJDFファイルと投入されたPDFファイルとを対にして、HFサーバ20のHFサーバアプリ4aに転送するものであり、これは、「検知手段により検知された前記第1のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付け」ること、「検知手段により検知された前記第2のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付け」ることといえる。
したがって、本願発明1と刊行物1発明は、「前記検知手段により検知された前記第1のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付け、前記検知手段により検知された前記第2のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付け」る点では共通するものであるといえる。

刊行物1発明は、JDFファイルの順序データであるクライアントアプリ名称と投入ファイル番号とで印刷ジョブをソートしてHFクライアントアプリへの投入順に並んだ印刷ジョブを送信キュー44に移行するものである。
ここで、該印刷ジョブは、HFクライアントアプリ46、47に投入されたPDFファイルの印刷ジョブであり、また、送信キュー44は、「印刷装置への送信順を決定する登録手段」といえるから、本願発明1と刊行物1発明とは、「前記第1のホットフォルダに投入された印刷データと前記第2のホットフォルダに投入された印刷データの前記印刷装置への送信順を決定する登録手段」を有するといえる点で共通するものである。

よって、本願発明1と刊行物1発明の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
印刷データをホットフォルダに投入することにより、該ホットフォルダに設定された印刷設定を印刷データに適用し、該印刷データを印刷装置へ送信する情報処理装置において、
第1のホットフォルダと、
第2のホットフォルダと、
前記第1のホットフォルダまたは前記第2のホットフォルダに対する印刷データの投入を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された前記第1のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付け、
前記検知手段により検知された前記第2のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付け、
前記第1のホットフォルダに投入された印刷データと前記第2のホットフォルダに投入された印刷データの前記印刷装置への送信順を決定する登録手段と
を有することを特徴とする情報処理装置。

[相違点]
本願発明1は、
「前記検知手段により検知された前記第1のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付けた状態で、投入順にしたがって第1の投入順リストに登録する第1の記憶手段と、
前記検知手段により検知された前記第2のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付けた状態で、投入順にしたがって第2の投入順リストに登録する第2の記憶手段と、
前記第1の投入順リストの先頭の印刷データに対応づけられた投入時刻と前記第2の投入順リストの先頭の印刷データに対応づけられた投入時刻とを比較して、投入時刻が古い方の印刷データから順に送信リストへ登録していくことによって、前記送信リストの登録順にしたがって前記第1のホットフォルダに投入された印刷データと前記第2のホットフォルダに投入された印刷データの前記印刷装置への送信順を決定する登録手段と」
を有するのに対し、
刊行物1発明は、「前記検知手段により検知された前記第1のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付け、」「前記検知手段により検知された前記第2のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付け、」「前記第1のホットフォルダに投入された印刷データと前記第2のホットフォルダに投入された印刷データの前記印刷装置への送信順を決定する登録手段」は有するものの、
「前記検知手段により検知された前記第1のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付けた状態で、投入順にしたがって第1の投入順リストに登録する第1の記憶手段と、
前記検知手段により検知された前記第2のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付けた状態で、投入順にしたがって第2の投入順リストに登録する第2の記憶手段と、
前記第1の投入順リストの先頭の印刷データに対応づけられた投入時刻と前記第2の投入順リストの先頭の印刷データに対応づけられた投入時刻とを比較して、投入時刻が古い方の印刷データから順に送信リストへ登録していくことによって、前記送信リストの登録順にしたがって前記第1のホットフォルダに投入された印刷データと前記第2のホットフォルダに投入された印刷データの前記印刷装置への送信順を決定する登録手段と」
を有さない点。

5.当審の判断
相違点について検討する。
刊行物1発明は、発明の詳細な説明の【0023】に記載されているように、HFクライアントアプリへの投入順に印刷されるよう制御されるファイル制御装置を提供することを目的とするものであり、また、【0025】に記載されているように、更に、複数のHFクライアントアプリからの同時処理時に異なる顧客(印刷設定)の印刷ジョブが混在しないように制御されるファイル制御装置を提供することも、他の目的とするものであるから、あるHFクライアントアプリと他のHFクライアントアプリとの間の投入順を考慮して投入順に印刷を行うことは、そもそも想定していないものである。
したがって、刊行物1発明には、本願発明1の「前記検知手段により検知された前記第1のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付けた状態で、投入順にしたがって第1の投入順リストに登録する第1の記憶手段」と、「前記検知手段により検知された前記第2のホットフォルダに投入された印刷データを投入時刻と対応付けた状態で、投入順にしたがって第2の投入順リストに登録する第2の記憶手段」を有し、「前記第1の投入順リストの先頭の印刷データに対応づけられた投入時刻と前記第2の投入順リストの先頭の印刷データに対応づけられた投入時刻とを比較」するという構成に対応する構成を採用することに対する動機付けは存在しない。
この点は、拒絶の理由で引用された他の刊行物2、平成26年11月6日付けの拒絶査定や平成27年3月10日付けの前置報告書で提示された特開2003-316560号公報にも記載乃至示唆はされていないし、周知の技術であるともいえないから、刊行物1発明において、相違点を克服することが容易に想到し得るものであるとする理由はない。
したがって、本願発明1は、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、請求項1を引用する請求項2、単に発明のカテゴリーの異なるものを対象とした請求項3、5、6、及び請求項3を引用する請求項4に係る発明も、同様の理由により、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1-6に係る発明は、当業者が刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-12-07 
出願番号 特願2010-119387(P2010-119387)
審決分類 P 1 8・ 572- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 猪瀬 隆広  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 千葉 輝久
山田 正文
発明の名称 情報処理装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体  
代理人 阿部 琢磨  
代理人 黒岩 創吾  

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