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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16J
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 F16J
管理番号 1308559
審判番号 不服2015-7390  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-20 
確定日 2015-12-08 
事件の表示 特願2014-525252「油圧回路用孔の閉塞構造」拒絶査定不服審判事件〔請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、2014年1月7日(日本国)を国際出願日とする出願であって、平成26年10月7日付けで拒絶理由が通知され、平成26年12月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年3月3日付け(発送日:平成27年3月10日)で拒絶査定され、平成27年4月20日に拒絶査定不服審判の請求され、その審判の請求と同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正の適否

1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
軸部の先端部に雄ネジ部が設けられるとともに、前記軸部の基端部外周にOリングが装着されたプラグを本体ボディに形成した油圧回路用孔の開口端部に螺合させ、前記Oリングを前記軸部の外周面及び前記油圧回路用孔の内周面にそれぞれ押圧させることにより、前記油圧回路用孔と前記プラグとの間をシールするようにした油圧回路用孔の閉塞構造において、
前記プラグは、前記Oリングが装着される収容溝の基端側となる部位に前記軸部よりも外径の大きなフランジ部を有するとともに、前記フランジ部の基端側となる部位に締付工具が装着される多角柱状の頭部を有したものであり、前記フランジ部は前記軸部の長手方向に沿った板厚寸法が、前記頭部の高さ寸法及び前記収容溝を形成した部分の長手方向に沿った寸法の双方よりも小さく、かつ前記軸部の外径の1/4より小さくなるように構成し、前記頭部は前記油圧回路用孔の開口以下となる外径を有するように構成し、前記油圧回路用孔の開口端部に螺合させた場合に前記フランジ部を座面とし、前記フランジ部を弾性変形させた状態で前記本体ボディの外表面に圧接させることを特徴とする油圧回路用孔の閉塞構造。」
とする補正を含むものである。

2 補正の目的、新規事項、シフト補正について
本件補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「フランジ部」の「軸部の長手方向に沿った板厚寸法」について、「軸部の外径の1/4より小さくなるように構成」するとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3 刊行物の記載事項
(1) 刊行物1
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2007-78094号公報(以下、「刊行物1」という。)の段落【0013】-【0015】及び図面【図1】及び【図2】には、本願補正発明に則って整理すると、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「軸部の先端部に雄ねじ8bが設けられたプラグ8を、給油パイプ18bの給油口4のねじ穴6に螺合させた、作動油タンク18の給油口4の閉塞構造において、
前記プラグ8は、前記軸部よりも外径の大きなフランジ8dを有するとともに、前記フランジ8dの基端側となる部位に着脱用の六角頭8eを有したものであり、前記フランジ8dは、前記軸部の長手方向に沿った板厚寸法が、前記六角頭8eの高さ寸法より小さく、かつ前記軸部の外径の1/4より小さくなるように構成し、前記六角頭8eは、前記給油口4の開口以下となる外径を有するように構成した、作動油タンク18の給油口4の閉塞構造。」

(2) 刊行物2
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である実公昭44-13726号公報(以下、「刊行物2」という。)の第1ページ左欄第29?35行、第1ページ右欄第33行?第2ページ右欄第4行及び図面FIG.1?FIG.3には、本願補正発明に則って整理すると、以下の事項(以下、「刊行物2に記載された事項」という。)が記載されている。
「軸部の基端部外周に密封リング21が装着されたキャップ16を、圧力流体の入った本体13に形成した、円錐面15を備えた孔11のねじ部14に螺合させ、密封リング21を軸部の円錐面19及び前記円錐面15にそれぞれ押圧させることにより、孔11とキャップ16との間をシールする閉塞構造。」

(3) 刊行物3
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日に頒布された刊行物である米国特許第3214181号明細書(以下、「刊行物3」という。)の第2欄第28-33行には、以下の事項が記載されている。
「FIG. 2 fragmentarily shows the cover 14 disassembled from the housing and inculding a cap portion 32 terminating with a peripheral surface 33 and a threaded portion 34 that is adapted to mate with corresponding threads 36 formed on the inner counterbored wall of the housing 12. 」
当審仮訳
「図2は、ハウジングから取り外されたカバー14が断片的に示されており、外周表面33の終端を持つキャップ部32とハウジング12の内孔面に形成されたねじ山36と係合するねじ部34とを含んでいる。」

(4) 刊行物4
原査定に従来周知の技術として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である実願平1-60560号(実開平3-312号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物4」という。)の第3ページ第10?17行には、以下の事項が記載されている。
「本考案の座金付きねじは、通常のねじと同様にねじ孔または下穴に螺入して使用する。この座金付きねじをねじ孔等に螺入し、そのフランジが座面に当接した後も、さらに強く螺入させると、3?10°の下向き勾配を有するフランジは軸方向へのばね力を及ぼして座面に固着する。前記3?10°の下向き勾配はねじ材料の強度、特にばね性を維持するための好適条件である。」

(5) 刊行物5
原査定に従来周知の技術として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である登録実用新案第3133033号公報(以下、「刊行物5」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0014】
本考案の請求項1に記載の考案によれば、ねじ頭の下方周縁部に逆皿状の鍔を一体に形成したばね性の鍔付きねじにおいて、前記ねじ頭がなべ頭に形成され、該なべ頭にはドライバーのビットが挿入されるリセスが形成され、前記鍔の鍔径はなべ径に対し1.35?1.45倍の直径に形成されることを特徴とするので、寸法、大きさが極めて小さく、ねじ頭の下方周縁部に一体形成された小径な鍔が適度のばね常数、撓み量を得てばね性を発揮し、十分な締め付けトルクが得られ、緩みを確実に防止でき、また、カムアウト、およびリームアウトが無く、ねじ頭がなべ頭に形成され、十分なねじ頭の高さに形成されるとともに鍔の厚さが加わるため、リセスを深く形成することができることになり、さらには締め付けトルクに対してねじ頭部の破壊や引きちぎれが確実に防止される。
【0015】
また、本考案の請求項2に記載の考案によれば、前記鍔付きねじが、冷間圧造用炭素鋼線にて表面には浸炭処理されて形成されるとともにリセスの長さが1.2?4.2mm、前記鍔の鍔厚が0.250+0.1?0.60±0.2mm、鍔の上面および下面の両面での狙い目鍔角度が約6°に形成されることを特徴とするので、ねじの寸法、大きさが極めて小さいねじでも、加工し易く、浸炭加工により表面を硬化あいて構造堅牢にできるため、ねじ頭の下方周縁部に一体形成された小径な鍔が適度のばね常数、撓み量を得てばね性を発揮し、十分な締め付けトルクが得られ、緩みを確実に防止できる。また、ドライバーのビットがカムアウト、およびリームアウトすることが無く、さらには締め付けトルクに対してねじ頭部の破壊や引きちぎれが確実に防止される。」

4 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「雄ねじ8b」は、本願補正発明の「雄ネジ部」に相当し、以下同様に、「プラグ8」は「プラグ」に、「給油パイプ18bの給油口4」は「油圧回路用孔」に、「ねじ穴6」は「開口端部」に、「フランジ8d」は「フランジ部」に、「着脱用の六角頭8e」は「締付工具が装着される多角柱状の頭部」に、それぞれ相当する。.
したがって、本願補正発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点1ないし3で相違する。

[一致点]
「軸部の先端部に雄ネジ部が設けられるプラグを油圧回路用孔の開口端部に螺合させるようにした油圧回路用孔の閉塞構造において、
前記プラグは、前記軸部よりも外径の大きなフランジ部を有するとともに、前記フランジ部の基端側となる部位に締付工具が装着される多角柱状の頭部を有したものであり、前記フランジ部は前記軸部の長手方向に沿った板厚寸法が、前記頭部の高さ寸法よりも小さく、かつ前記軸部の外径の1/4より小さくなるように構成し、前記頭部は前記油圧回路用孔の開口以下となる外径を有するように構成した、油圧回路用孔の閉塞構造。」

[相違点1]
本願補正発明は、「前記軸部の基端部外周にOリングが装着された」プラグを「本体ボディに形成した」油圧回路用孔の開口端部に螺合させ、「前記Oリングを前記軸部の外周面及び前記油圧回路用孔の内周面にそれぞれ押圧させることにより、前記油圧回路用孔と前記プラグとの間をシールする」構造(以下、「相違点1に係る構造」という。)を有するのに対し、引用発明は、このような構造を有しない点。

[相違点2]
本願補正発明のプラグは、「前記Oリングが装着される収容溝の基端側となる部位に」フランジ部を有し、フランジ部は、軸部の長手方向に沿った板厚寸法が、「前記収容溝を形成した部分の長手方向に沿った寸法よりも小さ」いのに対し、引用発明のプラグ8及びフランジ8dは、このような構造を有しない点。

[相違点3]
本願補正発明は、プラグを「前記油圧回路用孔の開口端部に螺合させた場合に前記フランジ部を座面とし、前記フランジ部を弾性変形させた状態で前記本体ボディの外表面に圧接させる」のに対し、引用発明は、このような構造を有しない点。

5 当審の判断
以下、相違点1ないし3について検討する。

(1)[相違点1]について
相違点1に係る構造と、刊行物2に記載された事項とを対比すると、刊行物2に記載された事項の「密封リング21」は、相違点1に係る構造の「Oリング」に相当し、以下同様に、「キャップ16」は「プラグ」に、「圧力流体の入った本体13」は「本体ボディ」に、「円錐面15を備えた孔11」は「油圧回路用孔」に、「円錐面15を備えた孔11のねじ部14」は「油圧回路用孔の開口端部」に、「軸部の円錐面19」は「軸部の外周面」に、「円錐面15」は「油圧回路用孔の内周面」にそれぞれ相当するから、相違点1に係る構造は、刊行物2に記載された事項と同一である。
しかしながら、引用発明は、作動油タンク18の給油口4の閉塞構造であるのに対し、刊行物2に記載された事項は、圧力流体の入った本体13の孔11の閉塞構造であり、両者は、閉塞すべき圧力条件が異なっており、引用発明に刊行物2に記載された事項を適用する動機付けがあるとはいえない。

また、刊行物3には、ハウジング12のカバー14に関する事項が記載されており、ハウジング12のカバー14と引用発明のプラグ8とは、部材としての技術的な関連性が乏しく、引用発明のプラグ8に刊行物3に記載されたカバー14に関する事項を適用する動機付けがあるとはいえない。

したがって、引用発明のプラグ8に刊行物2に記載された事項又は刊行物3に記載された事項を適用して、相違点1に係る構造とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(2)[相違点2]及び[相違点3]について
刊行物2ないし5には、フランジ部の、軸部の長手方向に沿った板厚寸法が、収容溝を形成した部分の長手方向に沿った寸法よりも小さくした点が記載されていない。また、刊行物4及び5には、プラグを油圧回路用孔の開口端部に螺合させることは記載されていない。そして、本願補正発明は、この板厚寸法をフランジ部が採ることによって、「軸部21において収容溝25を形成した部分に加えて、フランジ部が弾性的に曲げ変形されることとなり、長手方向に沿った弾性変形量が増大する」(明細書段落【0021】参照。)という格別顕著な効果を奏するものである。

したがって、引用発明に刊行物2ないし5に記載された事項を適用して、相違点2及び相違点3に係る構造とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2ないし5に記載された事項から容易に発明をすることができたものとはいえない。

よって、本件補正のうち請求項1についてする補正事項は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

そして、本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし3に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-11-25 
出願番号 特願2014-525252(P2014-525252)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16J)
P 1 8・ 575- WY (F16J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 佳祐莊司 英史竹村 秀康  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 内田 博之
大内 俊彦
登録日 2015-12-25 
登録番号 特許第5859126号(P5859126)
発明の名称 油圧回路用孔の閉塞構造  
代理人 酒井 宏明  

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