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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1308582
審判番号 不服2014-5639  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-26 
確定日 2015-12-16 
事件の表示 特願2011-274271「改良された軟部組織の超音波歪測定のための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月26日出願公開、特開2012- 81295〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2005年(平成17年)7月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年7月30日、米国)を国際出願日として出願した特願2007-523863号の一部を平成23年12月15日に新たな特許出願としたものであって、平成24年11月29日付けで拒絶理由が通知され、平成25年5月31日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成26年3月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。

その後、当審において請求人に対して本願の技術的内容に関する説明を求めたが、請求人からは技術的内容に関する回答はなされなかった。

第2 本願発明

平成26年3月26日付けの手続補正により、特許請求の範囲は、明りょうでない記載の釈明を目的として補正され、その請求項1ないし23に係る発明は、平成26年3月26日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項3及び8に係る発明は、以下のとおりである(以下、請求項8に係る発明を「本願発明」という。)。

「 【請求項3】
生体組織内の歪を測定する装置であって、
入射超音波波形を前記組織を通して送信し、該組織を通る前記超音波波形の波速度を測定する超音波トランスジューサアセンブリと、
プロセッサであって、(i)前記組織の歪及び(ii)前記組織の物質定数のうちの一方を、該組織の歪及び該組織の物質定数のうちの他方がわかっているときに求めるために、前記波速度を用いることを行うように、記憶されたプログラムに従って動作する、プロセッサと
を備える、生体組織内の歪を測定する装置。

【請求項8】
前記波速度を、以下に示す前記生体組織の数学的モデルに適用する、請求項3に記載の装置。
【数1】

(C_(yy)は前記測定された波速度であり、
ここで、C_(1)、C_(2)、C_(3)及びC_(4)は、既知の物質定数であり、
eは、求める歪であり、
ρは、前記組織の密度である)」


第3 原査定の拒絶の理由

一方、原査定の拒絶の理由のうち、理由2(2)の概要は、次のとおりである。

「 この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


・・・・・

(2)【0056】?【0057】、【0062】における各数式において、既知の物質定数であるC_(1)?C_(4)を求める手法が不明である。また、C_(1)?C_(4)の物理単位等が明確でなく、そのため、C_(1)?C_(4)が、物質におけるどの様な特性を示す定数であるかも不明である。」


第4 請求人の応答

請求人は、審判請求書の請求の理由において、「(理由2)(2)に挙げられた物質定数Cは明細書の段落0045,0046に記載されているように、エクスビトロ(exvitro)の組織の試験によって決定される。Cは 確立された物性である剛性(stiffness)を指すものであることが明らかであるところ、これらの測定は当業者にとって周知である。発明の詳細な説明がこれらの値を得る手法を説明している限り、本願明細書以外のところで物質定数を求める手法を探したり求めたりする必要はないと思料される。要するに、我々は明細書にて物質定数を求める手法を開示していて、その開示は当業者にとって問題なく理解されると確信する。したがって、本願発明は(理由2)に該当しないものである。」と主張している。


第5 当審の判断

本願発明は、生体組織内の歪を測定する装置であって、既知の物質定数C_(1)、C_(2)、C_(3)及びC_(4)を用いて歪eを求めるものである。
本願発明が実施可能であるためには、本願発明に係る生体組織内の歪を測定する装置を使用することができなければならず、そのためには、歪eが未知の状態において、物質定数C_(1)、C_(2)、C_(3)及びC_(4)を知ることができなくてはならない。

これに対し、本願明細書の発明の詳細な説明には、段落【0045】にC_(11)(当審注:「C_(11)」の「C」はチルダ付き。以下同じ。)が超音波の伝播方向に沿った場所xにおける歪eの関数である組織の剛性であることが記載され、段落【0046】にC_(11)はエクスビトロの組織の試験によって経験的に導出されるとの記載はあるものの、物質定数C_(1)、C_(2)、C_(3)及びC_(4)の具体的な求め方は記載されていない。
また、段落【0058】の【数7】に記載された一組の連立方程式から、物質定数C_(1)、C_(2)、C_(3)及びC_(4)の次元を把握することはできるが、物質定数C_(1)、C_(2)、C_(3)及びC_(4)のそれぞれが、どのような物理的意義を有する定数であるのかについては記載されていない。
しかも、本願の優先日時において、物質定数C_(1)、C_(2)、C_(3)及びC_(4)の求め方や物理的意義が技術常識であったといえる根拠を見いだすこともできない。

してみると、物質定数C_(1)、C_(2)、C_(3)及びC_(4)の求め方を、本願明細書の発明の詳細な説明の記載から理解することはできない。

よって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとは認められない。


第6 むすび

以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとは認められないから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本願発明は特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-09 
結審通知日 2015-07-21 
審決日 2015-08-05 
出願番号 特願2011-274271(P2011-274271)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五閑 統一郎  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 渡戸 正義
▲高▼場 正光
発明の名称 改良された軟部組織の超音波歪測定のための方法及び装置  
代理人 瀧野 文雄  
代理人 瀧野 秀雄  
代理人 津田 俊明  
代理人 川崎 隆夫  
代理人 朴 志恩  
代理人 鳥野 正司  

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