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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N |
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管理番号 | 1308601 |
審判番号 | 不服2014-23378 |
総通号数 | 194 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-11-17 |
確定日 | 2015-12-16 |
事件の表示 | 特願2012-280164「排気系」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月18日出願公開、特開2013-139786〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年12月21日(パリ条約による優先権主張 2011年12月23日 ドイツ連邦共和国)の外国語書面出願であって、平成25年2月22日に外国語明細書、外国語特許請求の範囲、外国語図面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文が提出され、平成25年12月9日付けで拒絶理由が通知され、平成26年3月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年8月22日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成26年11月17日に拒絶査定不服審判が請求がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成26年3月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに平成25年2月22日に提出された外国語明細書、外国語特許請求の範囲、外国語図面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 内燃機関用の排気系であって、 排気ガスを通す少なくとも1本の排気パイプ(3)からなる少なくとも1つの排気路(2)と、 消音器筐体(6)と該消音器筐体(6)内に配される少なくとも1つの電気音響変換器(7)とからなる少なくとも1つのアクティブ型消音器(5)と、 前記消音器筐体(6)を前記排気パイプ(3)に流体的に接続する少なくとも1本の接続パイプ(8)と、 前記接続パイプ(8)の内部に設けられる複数の障壁片(17)と を備え、 前記複数の障壁片(17)それぞれは、前記接続パイプ(8)の縦方向中心軸(15)に対して斜め方向に向かって、前記接続パイプ(8)の管壁から内側へ突出しており、 前記複数の障壁片(17)は前記接続パイプ(8)内において、空気伝播音を透過する一方で、前記接続パイプ(8)の横断面(13)を、前記接続パイプ(8)の縦方向中心軸(15)と平行な観察方向(18)から見て反対側への見通しがきかないように配されている ことを特徴とする排気系。」 第3 引用文献 本願の優先日前に頒布され、原査定の理由に引用された刊行物である特開2006-57629号公報(以下、「引用文献」という。)には図面とともに次の記載がある。なお、下線は、当審で付した。 (1)引用文献の記載 ア 「【要約】 【課題】 内燃機関の排気系統のためのアクティブ型排気マフラーにおいて、アンチサウンド発生器の寿命を増大させる。 【解決手段】 アクティブ型排気マフラー1は、配管系統8が通るハウジング2を有する。配管系統8は、第一のスペース9内の空中音に対して透過性を備えるようにデザインされている。アンチサウンド発生器13は、第二のスペース12の中に配置され、アンチサウンドが壁面開口18を介して第三のスペース17に作用する。第一のスペース9は、空中音の伝播のための音の出口20を介して、第三のスペース17につながっている。ラビリンス21が第三のスペース17の中に設けられ、音の出口20と壁面開口18の間の直接の経路22を遮り、且つ、音の出口20と壁面開口18の間の少なくとも一つの非直接的なバイパス23を構成する。」(第1ページ【要約】欄) イ 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 内燃機関の、特に自動車の排気系統(3)のためのアクティブ型排気マフラーであって、 - ハウジング(2)を有し、このハウジングの中を配管系統(8)が通り、この配管系統(8)は、第一のスペース(9)内の空中音に対して透過性を備えるようにデザインされ、 - アンチサウンド発生器(13)を有し、このアンチサウンド発生器は、第二のスペース(12)の中に配置され、運転中に、壁面開口(18)を介して、第三のスペース(17)にアンチサウンド作用を及ぼし、 - 前記壁面開口(18)は、第二のスペース(12)を第三のスペース(17)から隔てる隔壁(16)の中に設けられており、 - 前記第一のスペース(9)は、音の出口(20)を介して前記第三のスペース(17)につながり、それにより、空中音を伝播し、 当該アクティブ型排気マフラーは、下記特徴を備えている: 前記第三のスペース(17)の中に設けられたラビリンス(21)が、空中音の伝播のための、前記音の出口(20)と前記壁面開口(18)の間の直接の経路(22)を遮り、且つ、空中音の伝播のための、前記音の出口(20)と前記壁面開口(18)の間の少なくとも一つの非直接的なバイパス(23)を構成する。 【請求項2】 下記特徴を備えた請求項1に記載の排気マフラー: 前記ラビリンス(21)は、少なくとも一つの断熱壁(24)を有し、この断熱壁は、前記音の出口(20)及び前記壁面開口(18)の双方を完全に覆い、且つ、前記音の出口(20)に面する第一のサイド(25)と、前記壁面開口(18)に面する第二のサイド(26)との間での、少なくとも一つのエッジ(27)に沿う空中音の伝播を可能にする。 【請求項3】 下記特徴を備えた請求項2に記載の排気マフラー: 前記断熱壁(24)は、そのエッジ(27)で、空中音に対する透過性を備えるようにデザインされ、または、前記第三のスペース(17)を取り囲む外部壁面(28)から距離を開けて配置されている。 【請求項4】 下記特徴を備えた請求項2または3に記載の排気マフラー: - 前記断熱壁(24)は、少なくとも部分的に、断熱性を備えるようにデザインされ、および/または、 - 前記断熱壁(24)は、少なくとも部分的に、中空壁としてデザインされ、および/または、 - 前記断熱壁(24)は、少なくとも部分的に、断熱材料が充填され、および/または、断熱材料で作られている。 【請求項5】 下記特徴を備えた請求項2から4のいずれか1項に記載の排気マフラー: 前記断熱壁(24)は、前記第三のスペース(17)の境界をなし且つ前記音の出口(20)を有する境界壁(19)に対して平行に伸び、および/または、 前記断熱壁(24)は、前記隔壁(16)に対して平行に伸びている。 【請求項6】 下記特徴を備えた請求項1から5のいずれか1項に記載の排気マフラー: 前記ラビリンス(21)は、前記音の出口(20)と前記壁面開口(18)の間で、空中音を間接的に伝播するための少なくとも二つのバイパス(23)を形成する。 【請求項7】 下記特徴を備えた請求項1から6のいずれか1項に記載の排気マフラー: 前記音の出口(20)は、前記第三のスペース(17)の境界をなし且つ前記隔壁(16)に対して平行に伸びる境界壁(19)の中に配置されている。 【請求項8】 下記特徴を備えた請求項7に記載の排気マフラー: 前記壁面開口(18)及び前記音の出口(20)は、前記それぞれの壁(16,19)の中に、互いに中心軸を外して配置されている。 【請求項9】 下記特徴を備えた請求項1から8のいずれか1項に記載の排気マフラー: - 前記アンチサウンド発生器(13)は、前記隔壁(16)上に取り付けられ、且つ、他の部分では前記第二のスペース(12)の境界をなす壁面(31)から距離を開けて配置され、 - 前記第二のスペース(12)は、外部に対してエアタイトなシールを有するように構成されている。 【請求項10】 下記特徴を備えた請求項1から9のいずれか1項に記載の排気マフラー: もう一つのスペース即ち第四のスペース(32)が、前記ハウジング(2)の中に設けられ、且つ、ヘルムホルツ・リゾネーターとしてデザインされ、このヘルムホルツ・リゾネーターに、前記配管系統(8)が、前記第一のスペース(9)から上流側で接続されている。 【請求項11】 下記特徴を備えた請求項10に記載の排気マフラー: - 前記配管系統(8)は、前記第四のスペース(32)を配管部分(34)で通過し、および/または、 - 前記第四のスペース(32)は、エアタイトであるようにデザインされている。 【請求項12】 下記特徴を備えた請求項1から11のいずれか1項に記載の排気マフラー: もう一つのスペース即ち第五のスペース(35)が、前記ハウジング(2)の中に設けられ、且つ、吸収チャンバーとしてデザインされ、この吸収チャンバーに、前記配管系統(8)が、前記第一のスペース(9)から下流側で接続されている。 【請求項13】 下記特徴を備えた請求項12に記載の排気マフラー: - 前記第五のスペース(35)には、吸音材料が充填され、および/または、 - 前記配管系統(8)は、前記第五のスペース(35)を、空中音に対する透過性を備えた配管部分(36)で通過し、および/または、 - 前記第五のスペース(35)、外部に対してエアタイトなシールを有するようにデザインされている。 【請求項14】 下記特徴を備えた請求項1から13のいずれか1項に記載の排気マフラー: - 前記第一のスペース(9)は、前記第三のスペース(17)から壁の部分によって隔てられ、 - 前記壁の部分は、空中音に対する透過性を備えるようにデザインされ、前記音の出口(20)を構成する。 【請求項15】 下記特徴を備えた請求項1から14のいずれか1項に記載の排気マフラー: 前記配管系統(8)は、前記ハウジング(2)の排気の入口(5)を、前記ハウジング(2)の排気出口(7)に直接に接続する。 【請求項16】 下記特徴を備えた請求項1から15のいずれか1項に記載の排気マフラー: - 前記配管系統(8)は、パーフォレーションが設けられた配管部分(11)を前記第一のスペース(9)の中に有し、および/または、 - 前記配管系統(18)は、パーフォレーションが設けられた配管部分(36)を第五のスペース(35)の中に有し、および/または、 - 前記第一のスペース(9)を前記第三のスペース(17)から隔てる前記壁の部分は、パーフォレーションが設けられ、および/または、 - 前記断熱壁(24)は、少なくとも一つのパーフォレーションが設けられた部分を、そのエッジ(27)に有し、このエッジは、前記第三のスペース(17)の境界をなす前記外部壁面(28)に接続されている。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項16】) ウ 「【0001】 本発明は、内燃機関の、特に自動車の、排気系統のための、請求項1の前提部分の特徴を有するアクティブ型排気マフラーに係る。 【背景技術】 【0002】 そのような排気マフラーは、例えば、EP-1 055 804 B1 から知られており、配管が通るハウジングを有している。この配管は、この配管が第一のスペース内にパーフォレーションが設けられた配管部分を有すると言う事実のために、第一のスペース内の空中音に対する透過性を備えるように構成されている。それに加えて、この既知の排気マフラーは、第二のスペース内に配置されたラウドスピーカーの形で、アンチサウンド発生器を有している。排気マフラーの運転中、アンチサウンド発生器は、壁面開口を介して第三のスペースに作用するアンチサウンドを発生する。 【0003】 前記壁面開口には、第二のスペースを第三のスペースから隔てる隔壁が設けられている。それに加えて、第一のスペースは、空中音の伝播のための音の出口を介して、第三のスペースにつながっている。 【0004】 その他のアクティブ型排気マフラーは、EP-0,373,188 B1、US-5,233,137、US-4,177,874、US-5,229,556、US-5,336,856、US-5,319,165、US-5,432,857、EP-0,674,097 A1、US-5,619,020、US 5,600,106、EP-0,916,817、及びDE-197,51,596 の中に記載されている。 【0005】 そのようなアクティブ型排気マフラーの運転中、抑制されるべき空中音が、第一のスペースの中の上記配管から発せられ、音の出口を介して、第三のスペースの中に導入される。それと同時に、アンチサウンド、即ち、吸収されるべき音の音圧レベルと逆の位相の音圧レベルを有する音、が発生され、ラウドスピーカーを用いて、第三のスペースに供給される。そして、第三のスペースの中で、音とアンチサウンドが互いに打ち消しあう。このように、現在のタイプのアクティブ型排気マフラーは特徴付けられている。 【0006】 理論的には、効果的なノイズ抑制を、そのようなアクティブ型排気マフラーを用いて実現することが可能である。しかしながら、実際には、重大な問題が生ずる。その原因は、排気中で一般的な高い温度、及び、これまで入手可能であったラウドスピーカーがそのような高い運転温度では十分に長い寿命を備えていないことにある。更に、アクティブ型排気マフラーにおいて要求されるラウドスピーカーは、非常に大きなパワーを有し、排気中で一般的な極めて高い音圧レベルに適切に対応することが可能であり、要求されるノイズ抑制の効果を実現することが可能であることが要求される。しかしながら、高いパワーレベルは、ラウドスピーカーの中に大きな熱を更に発生させると言う結果を招く。 【特許文献1】欧州特許第EP-1,055,804 B1号明細書 【特許文献2】欧州特許第EP-0,373,188 B1号明細書 【特許文献3】米国特許第US-5,233,137号明細書 【特許文献4】米国特許第US-4,177,874号明細書 【特許文献5】米国特許第US-5,229,556号明細書 【特許文献6】米国特許第US-5,336,856号明細書 【特許文献7】米国特許第US-5,319,165号明細書 【特許文献8】米国特許第US-5,432,857号明細書 【特許文献9】欧州特許出願公開EP-0,674,097 A1号明細書 【特許文献10】米国特許第US-5,619,020号明細書 【特許文献11】米国特許第US 5,600,106号明細書 【特許文献12】欧州特許出願公開EP-0,916,817号明細書、 【特許文献13】独国出願公開DE-197,51,596号明細書」(段落【0001】ないし【0006】) エ 「【0007】 本発明は、請求鋼(審決注:「請求鋼」は「請求項」の明らかな誤記と認める。)の前提部分に規定されたタイプのアクティブ型排気マフラーのための、改良された形態を提供する問題に関係している。この実施形態は、特により長い寿命及びより優れた音響学的効率によって特徴付けられる。」(段落【0007】) オ 「【0009】 本発明は、音を防げる、即ち、ラウドスピーカー上に直接作用することを抑制すると言う、一般的なアイデアに基づいている。これは、音の伝播のための音の出口と壁面開口の間の直接の経路を遮断し、その代わりに、少なくとも一つのバイパスを設けることにより実現される。このバイパスを通って、空中音が、音の出口から壁面開口へ間接的にのみ、伝播することができる。これは、従って、高温の排気に対しても当てはまる。 【0010】 抑制されるべき音は、ラウドスピーカー上に直接的には作用しない。従って、ラウドスピーカーは、高温のガスにも曝されない。従って、それに伴い、ラウドスピーカーおよび/または使用されるアンチサウンド発生器に加えられる熱負荷が減少する。その理由は、直接的な熱負荷、例えば、音の出口から壁面開口への熱放射による熱負荷が、音の出口と壁面開口の間の直接の経路を遮断することにより、自動的に妨げられるからである。アンチサウンド発生器に加えられる熱負荷が減少することにより、アンチサウンド発生器の寿命の増大をもたらされ、従って、アクティブ型排気マフラーの寿命の増大がもたされる。 【0011】 この発明において、音の出口と壁面開口の間の直接の経路を遮断することは、ラビリンスを用いて実現される。このラビリンスは、第三のスペースの中に、この目的のためにデザインされている。ここで、前記ラビリンスは、前述の直接の経路を遮断し、それとともに、少なくとも一つの非直接的なバイパスを構成する。それと同時に、前記ラビリンスは、適切なやり方で断熱性を備えるように適切にデザインされている、またそれと同時に、音響学的には透明で、壁面開口から音の出口までの経路上で音の吸収が実質的に無いようにデザインされている。従って、前記アンチサウンド発生器の音響パワーのほぼ全てが、排気を介して伝播される音を抑えるために、即ち、消音のために、使用可能である。 【0012】 上記のラビリンスには、好ましくは、少なくとも一つの断熱壁が設けられる。この断熱壁は、前記壁面開口とともに、前記音の出口を完全に覆い隠し、少なくとも一つのエッジ上で、前記音の出口に面している断熱壁の第一のサイドと、前記壁面開口に面している断熱壁の第二のサイドの間の、空中音の伝播を可能にする。 【0013】 換言すれば、空中音は、前記断熱壁の回りのそれぞれのバイパスに沿ってガイドされる。かくして、運転中、前記断熱壁を、前記音の出口から放出される熱に対して、断熱することができる。それにより、前記断熱壁の先にある前記壁面開口及び前記アンチサウンド発生器が、直接的に熱に曝されることが防止される。」(段落【0009】ないし【0013】) カ 「【0019】 図1は、唯一の図であるが、この発明に基づくアクティブ型排気マフラーの長手方向の断面を、大幅に単純化して概略的に示したものである。 【0020】 図1に示すように、アクティブ型排気マフラー1は、ハウジング2を有し、このハウジングを用いて、排気マフラー1を、内燃機関の排気ガス系統3(ここでは、部分的しか示されていない)組み込むことができる。この内燃機関の他の部分は示されておらず、この内燃機関は、特に自動車に搭載される。インテイク配管4は、取り付けられた状態において、内燃機関からハウジング2の排気ガスの入口5へ、通じている。従って、出口配管6は、ハウジング2の排気出口7から、当該内燃機関の周囲の環境の中へ通じている。 【0021】 排気ガスの入口5は、言及するほどの流れの抵抗無しで、ハウジング2の中を通る配管系統8を介して、排気出口7につながる。ここに示されていない好ましい実施形態において、配管系統8は、単一の配管で構成され、この単一の配管は、排気ガスの入口5を排気出口7に直接つなげ、特に直線でつなげる。 【0022】 第一のスペース9は、ハウジング2の中に形成され、その中を、上記配管、および/または、配管系統8が、通っている。第一のスペース9の中で、配管系統8は、空中音に対して透過性を備えるようにデザインされている。このことは、第一のスペース9の中を通過する配管系統8の配管部分11の対応するパーフォレーション10によって、適切に実現される それに加えて、ハウジング2は、第二のスペース12を有し、その中に、アンチサウンド発生器13が設けられている。このアンチサウンド発生器13は、エアタイトなメンブレン14及びエナジャイザー即ちモータ15を有している。モータ15は、メンブレン14を振動させ、アンチサウンドを発生させることができる。このアンチサウンド発生器13は、通常、ラウドスピーカーとしてデザインされる。隔壁16は、第二のスペース12を第三のスペース17から分離し、壁面開口18を有している。この壁面開口を通って、アンチサウンド発生器13が、アンチサウンドを第三のスペース17の中へ発射することができる。アンチサウンド発生器13は、第二のスペース12の中に適切に配置され、それによって、それが壁面開口18をエアタイトにシールするように構成されている。 【0023】 第三のスペース17はまた、上記隔壁16の反対側で、境界壁19によって境界が定められている。この境界壁19は、好ましくは、隔壁16に対して平行に伸びている。この境界壁19の中に設けられた音の出口20は、空中音に対して透過性を備えるようにデザインされ、空中音の伝播のために、第一のスペース9を第三のスペース17につなげる。例えば、空中音出口20を、境界壁19パーフォレーションが設けられた部分で形成することが可能であり、あるいは、振動可能なメンブレンで形成することも可能である。 【0024】 この発明によれば、ラビリンス21が、第三のスペース17の中に設けられる。このラビリンス21は、空中音の伝播のための、音の出口20と壁面開口18の間の直接の経路22をブロックするように構成される。前記直接の経路は、破線によって示されている。それと同時に、ラビリンス21は、少なくとも一つのバイパスを、即ち、このケースでは、二つのバイパス23を構成する。これらのバイパスは、音の出口20と壁面開口18の間の、空中音の間接的な伝播を可能にする。 【0025】 直接の経路22が遮断され、それと同時にバイパス23が作られている言う事実のために、アンチサウンド発生器13に加えられる熱負荷が大幅に減少する。その理由は、熱負荷が最早、直接の経路22に依存しないからである。ラビリンス21は、少なくとも直接の経路22の領域において、断熱材として適切にデザインされている。 【0026】 ここに示した好ましい実施形態において、ラビリンス21は、少なくとも一つの断熱壁24を有している。この断熱壁は、第三のスペース17の中に配置され、且つ、壁面開口18に加えて音の出口20をも完全に覆うように、その寸法が設定されている。ここで、この断熱壁24は、音の出口20に面する第一のサイド25、及び、壁面開口18に面する第二のサイド26を有している。 【0027】 第三のスペース17の中での断熱壁24の配置及び寸法は、空中音の伝播が、第一のサイド25と第二のサイド26の間において、少なくとも断熱壁24のエッジ領域27の中で、生ずるように設定される。換言すれば、それぞれのバイパス23は、断熱壁24のそれぞれのエッジ領域27を通って、即ち、断熱壁24の回りのそれぞれの壁面領域27を通って、通じている。 【0028】 断熱壁24は、バイパス23を実現するために、そのそれぞれのエッジ領域27を、外部壁面28から距離を開けた位置に有するように設けることができる。 【0029】 更に、図1の中には、代案の実施形態が示されている。この実施形態では、断熱壁24が、空中音に対する透過性を備えるように、エッジ領域27の中にデザインされ、このことは、例えば、対応するパーフォレーション29を用いて実現することができる。 【0030】 断熱壁24は、少なくとも部分的に断熱性を有するように、適切にデザインされる。断熱壁は、好ましくは、このケースのように、中空壁としてデザインされ、従って、その内側に中空スペース30を備えていても良い。この中空スペース30には、ロックウールやグラスウールのような断熱材料が、適切に充填される。また、断熱壁24自体を断熱材料で、適切に作ることもできる。断熱壁24は、好ましくは、第三のスペース17の中に配置され、それによって、隔壁16に対して平行に、且つ、境界壁19に対して平行に伸びるように構成される。断熱壁24はまた、このケースのように、第三のスペース17の中に対称に配置することができる。 【0031】 ここに示された実施形態のそのほかの特徴は、壁面開口18が、音の出口20に関して、中心軸を外して配置されていることである。換言すれば、壁面開口18と音の出口20は、互いの位置が揃わないように、且つ、位置的な重なり合いがほとんどあるいは全くないように、配置される。この中心軸の外れのために、隔壁16に加えられる熱負荷もまた、アンチサウンド発生器13に対して、その中心軸が外れる。 【0032】 ここに示された実施形態において、アンチサウンド発生器13は、隔壁16に、それ以外の場所では第二のスペース12の境界をなす壁面31から距離を開けるように、取り付けられる。換言すれば、このアンチサウンド発生器13は、完全にハウジング2の内側に配置され、しかも、ハウジング2に熱的には直接接続されず、その代わりに隔壁16を介して間接的に接続されるのみである。第二のスペース12は、外部に対してガスタイトなシールを有するように、適切に構成される。」(段落【0019】ないし【0032】) (2)上記(1)及び図面から分かること サ 上記(1)アないしカ及び図面から、引用文献には、アンチサウンド発生器13の作用によりノイズを抑制し、かつ、ラウドスピーカーおよび/または使用されるアンチサウンド発生器13に加えられる熱負荷を減少させる排気マフラーが記載されていることが分かる。 シ 上記(1)カの「このラビリンス21は、空中音の伝播のための、音の出口20と壁面開口18の間の直接の経路22をブロックするように構成される。」(段落【0024】)、「直接の経路22が遮断され」(段落【0025】)等の記載及び図面から、引用文献に記載された排気マフラーにおいて、ラビリンス21は、音の出口20と壁面開口18の間の直接の経路22をブロック(遮断)するように構成されていることが分かる。 ス 上記(1)カの段落【0024】ないし【0026】及び図面の記載から、引用文献に記載された排気マフラーにおいて、断熱壁24は、音の出口20と壁面開口18の間の直接の経路(破線)に対して斜め方向に向かって設けられていることが分かる。 セ 上記(1)カの「ラビリンス21は、少なくとも一つの断熱壁24を有している。」(特に段落【0026】)という記載及び図面から、引用文献に記載された排気マフラーにおいて、ラビリンス21は、一つの又は複数の断熱壁24を有するもの、換言すれば少なくとも一つの断熱壁24を有するものが想定されているといえる。 ソ 上記(1)オの「この断熱壁は、前記壁面開口とともに、前記音の出口を完全に覆い隠し、少なくとも一つのエッジ上で、前記音の出口に面している断熱壁の第一のサイドと、前記壁面開口に面している断熱壁の第二のサイドの間の、空中音の伝播を可能にする。」(段落【0012】)及びカの「この断熱壁は、第三のスペース17の中に配置され、且つ、壁面開口18に加えて音の出口20をも完全に覆うように、その寸法が設定されている。」(段落【0026】)という記載及び図面から、断熱壁24は、壁面開口18と音の出口20を完全に覆うように設けられることが分かる。これらの記載を上記セとあわせてみると、壁面開口18を完全に覆う断熱壁24-1と、音の出口20を完全に覆う断熱壁24-2との2枚(以上)を設けることが想定されるといえる。 タ 上記(1)カの「この発明によれば、ラビリンス21が、第三のスペース17の中に設けられる。このラビリンス21は、空中音の伝播のための、音の出口20と壁面開口18の間の直接の経路22をブロックするように構成される。」(段落【0024】)、「断熱壁24は、好ましくは、第三のスペース17の中に配置され、それによって、隔壁16に対して平行に、且つ、境界壁19に対して平行に伸びるように構成される。」(段落【0030】)、「・・・そのほかの特徴は、壁面開口18が、音の出口20に関して、中心軸を外して配置されていることである。換言すれば、壁面開口18と音の出口20は、互いの位置が揃わないように、且つ、位置的な重なり合いがほとんどあるいは全くないように、配置される。」(段落【0031】)等の記載及び図1から、引用文献に記載された排気マフラーにおいて、断熱壁24は、アンチサウンド発生器13と、配管部分11とを結ぶ直接の経路22に対して斜め方向に設けられ、該直接の経路と平行な方向からみて反対側への見通しがきかないように配されていることが分かる。 チ 上記(1)オの「前記ラビリンスは、適切なやり方で断熱性を備えるように適切にデザインされている、またそれと同時に、音響学的には透明で、壁面開口から音の出口までの経路上で音の吸収が実質的に無いようにデザインされている。従って、前記アンチサウンド発生器の音響パワーのほぼ全てが、排気を介して伝播される音を抑えるために、即ち、消音のために、使用可能である。」(段落【0011】)という記載から、引用文献に記載された排気マフラーにおいて、ラビリンス21は、壁面開口から音の出口までの経路上で音の吸収が実質的に無いように設けられていることが分かる。 ツ 上記(1)オ、カ及び図面から、引用文献に記載された排気マフラーにおいて、隔壁16とハウジング2の一部(図1における隔壁16よりも下側の部分)から、アンチサウンド発生器13の筐体が構成されていることが分かる。 (3)引用発明 以上の(1)及び(2)並びに図1の記載を総合すると、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「内燃機関用の排気マフラーであって、 排気ガスを通す少なくとも1本の配管系統8からなる少なくとも1つの排気ガス系統3と、 隔壁16及びハウジング2の一部と該隔壁16及びハウジング2の一部内に配される少なくとも1つのラウドスピーカーとからなる少なくとも1つのアンチサウンド発生器13と、 前記隔壁16及びハウジング2の一部を前記配管系統8に流体的に接続するラビリンス21と、 前記ラビリンス21の内部に設けられる少なくとも一つの断熱壁24と を備え、 前記少なくとも一つの断熱壁24のそれぞれは、前記ラビリンス21の直接の経路(破線)に対して斜め方向に向かって、前記ラビリンス21から内側へ突出しており、 前記少なくとも一つの断熱壁24は前記ラビリンス21内において、空気伝播音を透過する一方で、前記ラビリンス21の直接の経路に垂直な断面を、前記ラビリンス21の直接の経路(破線)と平行な方向から見て反対側への見通しがきかないように配されている 排気マフラー。」 第4 対比 本願発明と、引用発明とを対比する。 引用発明における「排気マフラー」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本願発明における「排気系」に相当し、以下同様に、「配管系統8」は「排気パイプ」に、「排気ガス系統3」は「排気路」に、「隔壁16及びハウジング2の一部」は「消音器筐体(6)」に、「ラウドスピーカー」は「電気音響変換器」に、「アンチサウンド発生器13」は「アクティブ型消音器(5)」に、「少なくとも一つの断熱壁24」は「複数の障壁片(17)」に、「直接の経路に垂直な断面」は「横断面(13)」に、それそれ、相当する。 また、引用発明における「ラビリンス21」は、隔壁16及びハウジング2の一部と配管系統8とを流体的に接続するものであるから、「接続部」という限りにおいて、本願発明における「(少なくとも1本の)接続パイプ(8)」に相当する。 また、引用発明における「直接の経路(破線で表される)」は、アンチサウンド発生器13(の中心)と、配管部分11(の中心)とを結ぶ経路であるから、本願発明における「縦方向中心軸(15)」に相当し、以下同様に、「直接の経路に垂直な断面」は「横断面(13)」に、「直接の経路(破線で表される)と平行な方向」は、「観察方向(18)」に相当する。 そして、引用発明における「少なくとも一つの断熱壁24それぞれは、ラビリンス21の直接の経路(破線)に対して斜め方向に向かって、ラビリンス21から内側へ突出しており」は、「複数の障壁片それぞれは、接続部の縦方向中心軸に対して斜め方向に向かって、接続部から内側へ突出しており」という限りにおいて、本願発明における「複数の障壁片(17)それぞれは、接続パイプ(8)の縦方向中心軸(15)に対して斜め方向に向かって、接続パイプ(8)の管壁から内側へ突出しており」に相当し、 引用発明における「少なくとも一つの断熱壁24はラビリンス21内において、空気伝播音を透過する一方で、前記ラビリンス21の直接の経路に垂直な断面を、前記ラビリンス21の直接の経路(破線)と平行な方向から見て反対側への見通しがきかないように配されている」は、「複数の障壁片は接続部内において、空気伝播音を透過する一方で、前記接続部の横断面を、前記接続部の観察方向から見て反対側への見通しがきかないように配されている」という限りにおいて、本願発明における「複数の障壁片(17)は接続パイプ(8)内において、空気伝播音を透過する一方で、前記接続パイプ(8)の横断面(13)を、前記接続パイプ(8)の縦方向中心軸(15)と平行な観察方向(18)から見て反対側への見通しがきかないように配されている」に相当する。 したがって、本願発明と、引用発明とは、 「内燃機関用の排気系であって、 排気ガスを通す少なくとも1本の排気パイプからなる少なくとも1つの排気路と、 消音器筐体と該消音器筐体内に配される少なくとも1つの電気音響変換器とからなる少なくとも1つのアクティブ型消音器と、 前記消音器筐体を前記排気パイプに流体的に接続する接続部と、 前記接続部の内部に設けられる障壁片と を備え、 前記複数の障壁片それぞれは、前記接続部の縦方向中心軸に対して斜め方向に向かって、前記接続部から内側へ突出しており、 前記複数の障壁片は前記接続部内において、空気伝播音を透過する一方で、前記接続部の横断面を、前記接続部の観察方向から見て反対側への見通しがきかないように配されている、 排気系。」 という点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 「消音器筐体を前記排気パイプに流体的に接続する接続部と、前記接続部の内部に設けられる障壁片とを備え、前記複数の障壁片それぞれは、前記接続部の縦方向中心軸に対して斜め方向に向かって、前記接続部から内側へ突出しており、前記複数の障壁片は前記接続部内において、空気伝播音を透過する一方で、前記接続部の横断面を、前記接続部の観察方向から見て反対側への見通しがきかないように配されている」に関して、 本願発明においては、「消音器筐体を排気パイプに流体的に接続する少なくとも1本の接続パイプと、前記接続パイプの内部に設けられる複数の障壁片とを備え、前記複数の障壁片それぞれは、前記接続パイプの縦方向中心軸に対して斜め方向に向かって、前記接続パイプの管壁から内側へ突出しており、前記複数の障壁片は前記接続パイプ内において、空気伝播音を透過する一方で、前記接続パイプの横断面を、前記接続パイプの縦方向中心軸と平行な観察方向から見て反対側への見通しがきかないように配されている」のに対し、 引用発明においては、「隔壁16及びハウジング2の一部を配管系統8に流体的に接続するラビリンス21と、前記ラビリンス21の内部に設けられる少なくとも一つの断熱壁24とを備え、前記少なくとも一つの断熱壁24それぞれは、前記ラビリンス21の直接の経路(破線)に対して斜め方向に向かって、前記ラビリンス21から内側へ突出しており、前記少なくとも一つの断熱壁24は前記ラビリンス21内において、空気伝播音を透過する一方で、前記ラビリンス21の直接の経路に垂直な断面を、前記ラビリンス21の直接の経路(破線)と平行な方向から見て反対側への見通しがきかないように配されている」が、本願発明のようには特定されていない点(以下、「相違点」という。)。 第5 判断 上記相違点について判断する。 引用発明においては、第3(2)ソのように、「断熱壁24は複数設けること」(以下、「引用発明の技術思想1」という。)も想定されており、第3(2)タのように、「断熱壁24は、アンチサウンド発生器13と、配管部分11とを結ぶ直接の経路に対して斜め方向に設けられ、該直接の経路と平行な方向からみて反対側への見通しがきかないように配されている」(以下、「引用発明の技術思想2」という。)ものである。 ところで、アクティブ型消音器を備える排気系において、アクティブ型消音器と排気パイプの接続を、管状の接続パイプにより行うことは、周知技術(以下、「周知技術1」という。例えば、平成25年12月9日付け拒絶理由通知書において引用された特開平8-95575号公報[例えば、請求項2、段落【0011】、【0018】ないし【0020】、【0024】及び図1の記載を参照。]及び実願平5-5911号(実開平6-63811号)のCD-ROM[例えば、段落【0008】、【0009】及び【0017】ないし【0024】並びに図1及び2等の記載を参照。)であり、引用発明においても、ラビリンス21を管状のものとする格別の阻害要因はない。 したがって、引用発明において、周知技術1を適用することにより、ラビリンス21を、アンチサウンド発生器13と配管部分11とを結ぶ直接の経路を中心とする管状として、その際に、引用発明の技術思想1である「断熱壁24を複数設けること」及び引用発明の技術思想2である「断熱壁24は、アンチサウンド発生器13と、配管部分11とを結ぶ直接の経路に対して斜め方向に設け、該直接の経路と平行な方向からみて反対側への見通しがきかないように配されていること」を適用することにより、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到できたことである。 また、アクティブ型消音器と組み合わせるラビリンス構造として、複数の障壁片が反対側への見通しがきかないように配される構造は周知技術(以下、「周知技術2」という。例えば、平成25年12月9日付け拒絶理由通知書において引用された特開平5-39711号公報[例えば段落【0014】ないし【0015】及び図3の記載を参照。]及び特開平11-352972号公報[例えば第3欄第20ないし26行及び図4の記載を参照。]等を参照。)であり、一般的なラビリンス構造として、複数の障壁片が反対側への見通しがきかないように斜めに配される構造も周知技術(以下、「周知技術3」という。例えば、特開2004-239483号公報[例えば、段落【0025】及び【0026】並びに図8の記載を参照。]、特開2005-228649号公報[例えば、図1及び2を参照。])であって、「複数の障壁片それぞれは、接続パイプの縦方向中心軸に対して斜め方向に向かって、ラビリンスの構造を、接続パイプの管壁から内側へ突出している構造とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項であるともいえる。 そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術1ないし3並びに引用発明の技術思想1及び2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1ないし3並びに引用発明の技術思想1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第6 むすび 上記第5のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1ないし3並びに引用発明の技術思想1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-07-15 |
結審通知日 | 2015-07-21 |
審決日 | 2015-08-03 |
出願番号 | 特願2012-280164(P2012-280164) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 今関 雅子 |
特許庁審判長 |
伊藤 元人 |
特許庁審判官 |
金澤 俊郎 松下 聡 |
発明の名称 | 排気系 |
代理人 | 特許業務法人 佐野特許事務所 |