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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1308760
審判番号 不服2014-8747  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-12 
確定日 2015-12-17 
事件の表示 特願2010-46995号「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成23年9月15日出願公開、特開2011-177447号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成22年3月3日の出願であって、平成25年12月4日付けで拒絶の理由が通知され、平成26年1月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものの、平成26年2月18日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年2月20日)、これに対して、同年5月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出された。
そして、当審において、平成27年4月27日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月25日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年6月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
始動入賞口への遊技球の入賞を契機として大当たり抽選を実行し、その抽選結果に基づくコマンドを送信するメイン制御部と、当該メイン制御部から送信されたコマンドに基づいて演出を制御するサブ制御部とを具備するパチンコ遊技機であって、
前記メイン制御部は、
前記大当たり抽選に当選した場合に、大入賞口を開放してから閉塞するラウンドを繰り返す大入賞口開閉手段と、
前記大入賞口開閉手段によって前記大入賞口が閉塞されたことを通知するクローズコマンドを送信する送信手段とを備え、
前記サブ制御部は、
前記クローズコマンドを受信する受信手段と、
複数のラウンドにわたって前記クローズコマンドが受信されてからの所定期間中に大当り終了後の遊技状態を示唆する一連の情報を順次表示する演出を選択し、選択した演出を行う演出実行手段と、
前記演出実行手段により前記演出が行われる前記複数のラウンドを抽選により設定するラウンド設定手段とを備える、パチンコ遊技機。」

第3 刊行物1に記載された事項

当審において通知した拒絶の理由に引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である、特開2000-354662号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

(a)
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえばパチンコ遊技機やコイン遊技機、スロットマシンなどで代表される遊技機に関し、詳しくは、複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を有し、該複数種類の識別情報の表示結果が予め定められた特定の表示態様になった場合に、遊技者に有利な特定遊技状態に制御可能となる遊技機に関する。

【0007】本発明は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、特別遊技状態となるか否かを示す結果が導出される過程を遊技者が存分に楽しむことができる遊技機を提供することである。」

(b)
「【0027】第1実施の形態
図1は、本発明に係る遊技機の一例のパチンコ遊技機1およびこれに対応して設置されたカードユニット50の正面図である。

【0033】可変表示装置8は、複数種類の特別図柄を可変表示可能なCRT表示機で構成されている。可変表示装置8の中央の画像表示領域9では始動入賞が発生したことを条件として複数種類の特別図柄が上から下に向かってスクロール表示される。その後、所定時間が経過して可変表示が終了した結果、大当り図柄のゾロ目が予め複数種類定められた当りラインのうちのいずれかに揃って停止表示されれば大当りとなる。大当りとなれば、可変入賞球装置19の開閉板20が傾動して大入賞口が開口する。これにより、打玉を大入賞口に入賞させることが可能な遊技者にとって有利な第1の状態に制御され、遊技状態が遊技者にとって有利な特定遊技状態(大当り状態)となる。

【0035】可変入賞球装置19の第1の状態は、大入賞口に進入した打玉の数が所定個数(たとえば9個)に達した場合、または所定期間(たとえば30秒間)経過した場合のうちのいずれか早い方の条件が成立した場合に一旦終了して開閉板20が閉成する。これにより、可変入賞球装置19は打玉を入賞させることが不可能な遊技者にとって不利な第2の状態に制御される。そして、可変入賞球装置19が第1の状態となっている期間中に進入した打玉が特定入賞領域に特定入賞し、Vカウントスイッチ22により検出されたことを条件として、再度、可変入賞球装置19を第1の状態にする繰返し継続制御が実行される。この繰返し継続制御の実行上限回数はたとえば16回と定められている。繰返し継続制御において、可変入賞球装置19が第1の状態にされている状態がラウンドと呼ばれる。繰返し継続制御の実行上限回数が16回の場合には、第1ラウンドから第16ラウンドまでの16ラウンド分、可変入賞球装置19が第1の状態にされ得る。」

(c)
「【0050】図4は、遊技制御基板31における回路構成の一例を示すブロック図である。図4には、制御基板として、遊技制御基板(主基板ともいう)31、賞球基板37、ランプ制御基板35、音声制御基板70、発射制御基板91および表示制御基板80が示されている。

【0053】遊技制御基板31には、遊技制御プログラムに従ってパチンコ遊技機1を制御する基本回路(遊技制御用マイクロコンピュータ)53と、スイッチ回路58と、ソレノイド回路59と、ランプ・LED回路60と、情報出力回路64と、初期リセット回路65と、アドレスデコード回路67とが設けられている。

【0058】ソレノイド回路59は、始動用電動役物15の可動片を動作させるソレノイド16および可変入賞球装置19の開閉板20を開閉するソレノイド21を基本回路53からの指令に従って駆動する回路である。」

(d)
「【0073】また、表示制御基板80側において表示制御コマンドが入力される入力バッファ回路105は、遊技制御基板31から表示制御基板80へ向かう方向にのみ信号の伝送を許容するが表示制御基板80側から遊技制御基板31側へ向かう信号の伝送を行なわない不可逆性入力手段である。入力バッファ回路105を構成する入力バッファ105aとして、たとえば、汎用のCMOS-ICである74HC244が2チップ用いられる。この入力バッファ105aのイネーブル端子には常にローレベル(GNDレベル)が与えれている。このような構成によれば、表示制御基板80から遊技制御基板31に信号が与えられる可能性を確実になくすことができる。従って、表示制御基板80側から遊技制御基板31側に信号が伝わる余地はなく、表示制御コマンドの伝送経路に不正改造が加えられても、不正改造によって出力される信号が遊技制御基板31側に伝わることはない。このため、遊技制御基板31と表示制御基板80との間の信号の一方向通信が担保され、表示制御コマンドの伝送経路を介して遊技制御基板31に不正な信号(データ)を入力させて不正な制御動作を行なわせる不正行為を確実に防ぐことができる。また、不可逆性入力手段は、バッファIC回路で構成されているために、比較的容易に遊技制御手段への不正情報の入力を阻止できる。なお、不可逆性入力手段として、個別のトランジスタ等の他の回路素子を設けてもよい。
【0074】また、遊技制御基板31側において表示制御コマンドが出力される出力バッファ回路63も同様に、遊技制御基板31から表示制御基板80へ向かう方向にのみ信号の伝送を許容するが表示制御基板80側から遊技制御基板31側へ向かう信号の伝送を行なわない不可逆性を有する出力インタフェースである。従って、表示制御基板80側から遊技制御基板31側に信号が伝わる余地はなく、表示制御コマンドの伝送経路に不正改造が加えられても、不正改造によって出力される信号が遊技制御基板31側に伝わることはない。」

(e)
「【0095】図8は、基本回路53により実行される遊技制御メイン処理および割り込み処理を示すフローチャートである。図8においては、(a)に遊技制御メイン処理が示され、(b)に割り込み処理が示されている。

【0099】割り込み処理においては、まず、ランプ制御基板35および音声制御基板70に音声発生やLED点灯制御用の所定のコマンドを送信するための処理が行なわれるとともに、情報出力回路64を介してホール管理用コンピュータに大当り情報、始動情報、確率変動情報などのデータを送信するためのデータ出力処理が行なわれる(S4)。次に、パチンコ遊技機1の内部に備えられている自己診断機能によって種々の異常診断をし、その結果に応じて必要ならば警報を発生させるためのエラー処理が行なわれる(S5)。次に、遊技制御に用いられる各種の判定用乱数を示す各ランダムカウンタを更新する判定用乱数更新処理が行なわれる(S6)。
【0100】次に、特別図柄プロセス処理が行なわれる(S7)。特別図柄プロセス処理では、複数種類の処理のうちの1つが特別図柄プロセスフラグの値に従って選択されて実行される。そして、特別図柄プロセスフラグの値は、遊技状態に応じて各処理中において更新される。次に、普通図柄プロセス処理が行なわれる(S8)。普通図柄プロセス処理では、7セグメントLEDによる普通図柄用可変表示器10を所定の順序で制御するための普通図柄プロセスフラグに従って該当する処理が選び出されて実行される。そして、普通図柄プロセスフラグの値は、遊技状態に応じて各処理中に更新される。
【0101】次に、ゲートスイッチ12、始動口スイッチ17、Vカウントスイッチ22、カウントスイッチ23等の状態を入力し、各入賞口や可変入賞球装置に対する入賞があったか否か等を判定するスイッチ処理が行なわれる(S9)。始動口スイッチ17により始動入賞が検出された場合には、このスイッチ処理において、始動記憶処理が実行される。具体的には、始動口スイッチ17により始動入賞が検出されると、そのタイミングで大当り判定用のランダムカウンタのカウンタ値が抽出され、始動記憶用の特別図柄判定用バンクにその抽出値が記憶される。これにより始動記憶がなされる。前述したように始動記憶用の特別図柄判定用バンクは、バンク0?バンク3の4つ構成されており、この4つのバンクによって最大4つの始動記憶を可能にしている。よって、始動入賞が検出された際にすべてのバンクに記憶がある場合には、その始動入賞が無効とされる。

【0104】図9は特別図柄プロセス処理を説明するためのフローチャートである。特別図柄プロセス処理は、図8(b)のS7で実行される処理である。この特別図柄プロセス処理においては、特別図柄プロセスフラグの値に応じてS300?S308のうちのいずれかの処理が実行された後、S309の表示制御データ処理が実行される。特別図柄プロセス処理が実行されることにより、特別図柄の変動が制御されるとともに、大当り状態における制御が行なわれる。ここで、特別図柄プロセスフラグとは、各特別図柄の可変表示を実行する際に実行するプロセスを指定するフラグをいう。

【0107】特別図柄判定処理(S301)は、始動記憶に関連するデータを抽出し、大当りとするか否かなどを事前決定する処理である。詳細については、図11を用いて後述する。

【0114】確変設定処理(S308)は、確変の抽選演出結果が確変であった場合には、その大当りに基づいた特定遊技状態の終了後に確率変動状態に制御するための処理である。詳細については、図18を用いて後述する。【0115】表示制御データ処理(S309)は、上記各種処理(S300?S308)において設定された表示制御用のコマンドデータを表示制御基板80へ出力する処理である。この表示制御データ処理(S309)については、特別図柄プロセスフラグの値如何にかかわらず、特別図柄プロセス処理が実行された際には常に実行される。表示制御データ処理の詳細については、図19を用いて後述する。」

(f)
「【0158】図22?図26は、表示制御コマンドを説明するための説明図である。表示制御コマンドは、1バイトデータからなるMODEデータと、同じく1バイトデータからなるEXTデータとの計2バイトのデータからなる。このうち、MODEデータは、表示制御データの種別を指定するデータである。一方、EXTデータはMODEデータにより示されたコマンド種別のうちの特定の表示制御内容を具体的に指定するデータである。図22には、MODEデータ「80H」によって指定される変動開始コマンドが示されている。図23には、MODEデータ「81H」によって指定される特別画面コマンドデータが示されている。図24にはMODEデータ「90H」?「92H」によって指定される確定図柄指定コマンドデータが示されている。図25にはMODEデータ「82H」によって指定される大当り画面指定用コマンドデータが示されている。図26にはMODEデータ「93H」によって指定される確変判定図柄コマンドデータが示されている。」

(g)
「【0291】第3実施の形態
次に、図62?図64を用いて第3実施の形態を説明する。第3実施の形態が第1実施の形態と異なる点は、確変の抽選演出が大当りの各ラウンドのインターバル時間を利用して行なわれ、各ラウンドの進行とともに抽選演出が進行して最終ラウンドが終了する際に抽選演出の結果が導出表示される点である。
【0292】図62は、第3実施の形態において用いられる大当り画面指定用コマンドデータを示す図である。この第3実施の形態において用いられる大当り画面指定用コマンドデータの種類や数は、図25に示した大当り画面指定用コマンドデータと何ら異なる点はない。注目すべき点は、大当り画面指定用コマンドに従って表示制御基板80側の制御用CPU101で決定される表示内容に選択性がある点である。
【0293】具体的には、1ラウンド目と2ラウンド目のインターバル指定コマンド「82H 21H」を除く各ラウンドのインターバルを指定するインターバル指定コマンドと、大当り終了を指定するコマンド「82H 30H」とに従って表示制御基板80側で決定される表示内容に選択性がある。【0294】たとえば、2ラウンド目と3ラウンド目のインターバル指定コマンド「82H22H」の場合には、それに対応した表示内容が2Rインターバル画面1と2Rインターバル画面2とのうちから選択される。その後、3ラウンド目?15ラウンド目までのインターバルの表示内容についての図示を省略しているが、たとえば、15ラウンド目までは、ラウンドが進むにつれて選択性が増すように構成されている。15ラウンド目と16ラウンド目のインターバル指定コマンド「82H 2FH」の場合には、それに対応した表示内容が15Rインターバル画面1?15Rインターバル画面3のうちから選択される。大当り終了を指定するコマンド「82H 30H」の場合には、それに対応した表示内容が、大当り終了画面(確変時)と大当り終了画面(非確変時)とのうちから選択される。
【0295】これらの選択性により、1ラウンド目と2ラウンド目のインターバル指定コマンド「82H 21H」に対応して1種類に定められた特定の抽選演出用の画面が表示された後、各ラウンドが進行する毎に抽選演出の表示が枝分かれして多種多様の表示がなされ、やがて、15ラウンド目と16ラウンド目のインターバル時間となれば、それに対応する表示が3種類のうちのいずれかとされた後、大当り終了画面によって、確変または非確変時の結果が表示される。
【0296】図63は、第3実施の形態として画像表示領域9に表示される確変の抽選演出の表示画面を示す図である。第3実施形態においては、以下のように植物の生長に関するストーリ性のある画面によって確変の抽選演出がなされる。
【0297】まず、大当りの1ラウンド目が終了した場合に、1ラウンド目と2ラウンド目のインターバルにおいて、図63(a)に示すように、種子から花の苗が発芽する画像が表示される。この画像によって、確変の抽選演出が開始される。
【0298】その後、のラウンドのインターバルにおいて、図示を省略するが、発芽した苗が雨風、風雪にさらされたり、干ばつにみまわれたりするなどしながら生育する画像が選択的に表示される。そして、大当り終了画面において、たとえば、図63(b)に示すように、生長した植物が「確変」という文字が付された花を咲かせる画像が表示され、または、図63(c)に示すように、「残念」という文字とともに萎れてしまう画像が表示されて、確変か非確変かの表示結果が導出表示される。
【0299】このように、確変の抽選演出を特定遊技状態中に行なうことによって特定遊技状態中の可変表示装置8の表示内容を遊技者にとって興味深く、面白みのあるものにすることができる。特に、確変の抽選演出を複数種類のストーリ展開を伴って行なうことにより、抽選演出の面白みをより一層、増すことができる。
【0300】図64は、特定遊技状態における表示制御コマンドの出力タイミングを説明するためのタイミングチャートである。遊技制御基板31から表示制御基板80へは、以下のタイミングで各種表示制御コマンドが出力される。
【0301】まず、特定遊技状態となる前には、図柄確定コマンド「A0H 00H」が出力され、特別図柄の変動が終了して可変表示装置8に大当りの表示結果が停止表示される。
【0302】次に、確変判定図柄コマンド「93H ××H」が出力されると、複数種類の表示パターンの中から使用する表示パターンが表示制御基板80側で選択されて、その選択された表示パターンが一時的に記憶領域に退避される。これにより、たとえば、図63に示した表示パターンが選択される。
【0303】次に、大当り表示画面用のコマンド「82H 00H」が出力され、可変表示装置8に大当り開始画面が表示される。
【0304】次に、大当り1ラウンド目の開始を示すコマンド「82H 01H」が出力され、可変表示装置8に1ラウンド目が開始されることを示す画面が表示される。また、その表示と同期して、可変入賞球装置19の開閉板20を開閉するソレノイド21が励磁されて大入賞口が開口し、可変入賞球装置19が開放状態となる。
【0305】次に、1ラウンド目にV入賞が発生して大当りの継続条件が成立した状態で1ラウンド目の終了条件が成立すると、1ラウンド目と2ラウンド目のインターバルを示すコマンド「82H 21H」が出力され、このコマンドが表示制御基板80で受信されたタイミングで、確変の抽選演出が開始され、たとえば、図63(a)に示した画像が表示される。また、その表示の開始と同期してソレノイド21が非励磁状態となり、大入賞口が閉塞される。
【0306】その後、順次、各ラウンドが更新され、各ラウンドが開始されることを示すコマンドとインターバルを示すコマンドとが交互に出力される。可変表示装置8には、インターバルを示すコマンドが表示制御基板80側で受信される毎に、植物の生育状態を表わした画像が表示されて、除々に植物が生長する過程が表示される。
【0307】次に、16ラウンド目の終了条件が成立すると、大当り終了を示すコマンド「82H 30H」が出力される。そして、そのコマンドが表示制御基板80側で受信されたタイミングで、可変表示装置8には抽選演出の表示結果が導出表示されて図63(b)または図63(c)のうちのいずれか一方の画像が表示される。この表示結果が確変である場合には、その演出表示期間の経過後に図示のように大当り確率が向上される。その後、新たな変動開始コマンド「80H ××H」が出力されて特別図柄の変動が開始される。」

(h)
「【0308】次に、図65を参照して、抽選演出に関する変形例を説明する。まず、図65(a)?図65(d)には、抽選演出に関する変形例として、特定遊技状態中の最大ラウンド数が抽選演出によって決定される例が時系列で示されている。すなわち、特別図柄の可変表示が開始された後(図65(a))、大当りの表示結果が導出表示されると(図65(b))、最大ラウンド数を抽選する演出用の画面に切り替わって、ラウンド数を示す複数種類の図柄がスクロールし始める。その後、スクロールが停止してラウンド数の抽選結果が表示され(図65(c))、そのラウンド数に従って1ラウンド目が開始され、その1ラウンド目の開始を示す画面が表示される(図65(d))。」

(i)
上記(g)の段落【0291】には、「第3実施の形態が第1実施の形態と異なる点は、確変の抽選演出が大当りの各ラウンドのインターバル時間を利用して行なわれ、各ラウンドの進行とともに抽選演出が進行して最終ラウンドが終了する際に抽選演出の結果が導出表示される点である。」と記載されている。
そして、上記(b)ないし(f)は、第1実施の形態に関する記載であり、上記(g)は、第3実施の形態に関する記載であるところ、第1実施の形態と第3実施の形態とは、確変の抽選演出に関する構成が異なるのであって、その余の構成は共通しているといえる。

(j)
上記(b)の段落【0027】には、「本発明に係る遊技機の一例のパチンコ遊技機1」と記載されており、上記(c)の段落【0050】には、「図4には、制御基板として、遊技制御基板」「31」「および表示制御基板80が示されている。」と記載されている。
したがって、刊行物1には、パチンコ遊技機1が、遊技制御基板31および表示制御基板80を具備することが示されている。

(k)
上記(c)の段落【0053】には、「遊技制御基板31には、遊技制御プログラムに従ってパチンコ遊技機1を制御する基本回路(遊技制御用マイクロコンピュータ)53」「が設けられている。」と記載されており、上記(e)の段落【0095】には、「基本回路53により実行される」「割り込み処理」と記載されているから、遊技制御基板31が割り込み処理を実行するといえる。
また、上記(e)の段落【0099】?【0101】には、「割り込み処理においては、」遊技制御基板31により、「特別図柄プロセス処理が行なわれる」ことと、「スイッチ処理が行なわれる」ことが記載されている。
さらに、上記(e)の段落【0104】に、「特別図柄プロセス処理においては、特別図柄プロセスフラグの値に応じてS300?S308のうちのいずれかの処理が実行された後、S309の表示制御データ処理が実行される。」と記載されていることと、段落【0107】に、「特別図柄判定処理(S301)」と記載されていることから、特別図柄プロセス処理においては、特別図柄判定処理と表示制御データ処理が実行されるといえる。
したがって、遊技制御基板31は、スイッチ処理と、特別図柄判定処理と、表示制御データ処理を実行するといえる。
そして、上記(e)の段落【0101】に、「スイッチ処理において」、「始動入賞が検出されると、そのタイミングで」、「始動記憶がなされ」ると記載され、段落【0107】に、「特別図柄判定処理(S301)は、始動記憶に関連するデータを抽出し、大当りとするか否かなどを事前決定する処理である。」と記載されており、段落【0115】に、「表示制御データ処理(S309)は、上記各種処理(S300?S308)において設定された表示制御用のコマンドデータを表示制御基板80へ出力する処理である。」と記載されている。
よって、刊行物1には、「表示制御用のコマンドデータ」を「表示制御コマンド」と置き換えられることは明らかであるから、遊技制御基板31は、スイッチ処理において、始動入賞を検出すると、そのタイミングで、始動記憶し、特別図柄判定処理において、始動記憶に関連するデータを抽出し、大当りとするか否かを決定し、表示制御データ処理において、特別図柄判定処理において設定された表示制御コマンドを表示制御基板80へ出力することが示されている。

(l)
上記(c)の段落【0053】には、「遊技制御基板31には、」「ソレノイド回路59」「が設けられている。」と記載されており、上記(d)の段落【0074】には、「遊技制御基板31側において表示制御コマンドが出力される出力バッファ回路63」と記載されている。
よって、刊行物1には、遊技制御基板31は、ソレノイド回路59と、出力バッファ回路63とを備えることが示されている。

(m)
上記(c)の段落【0058】には、ソレノイド回路59は、開閉板20を開閉するソレノイド21を駆動する回路であることが記載されている。

(n)
上記(b)の段落【0033】?【0035】には、「大当りとなれば、」「開閉板20が傾動して大入賞口が開口する。これにより、」「第1の状態に制御され、」「第1の状態は、」「一旦終了して開閉板20が閉成する。」「再度、」「第1の状態にする繰返し継続制御が実行される。」と記載されているところ、「第1の状態にされている状態がラウンドと呼ばれる。」とも記載されている。
よって、「第1の状態」を「ラウンド」と置き換えられることから、刊行物1には、大当りとなれば、開閉板20が傾動して大入賞口が開口し、ラウンドに制御され、ラウンドは、一旦終了して開閉板20が閉成し、再度、ラウンドにする繰返し継続制御が実行されることが示されている。

(o)
上記(d)の段落【0074】には、「遊技制御基板31側において表示制御コマンドが出力される出力バッファ回路63」と記載されているから、「出力バッファ回路63」は、「表示制御コマンド」を出力するものである。
次に、上記(f)には、「図22?図26は、表示制御コマンドを説明するための説明図である。」、「図25にはMODEデータ「82H」によって指定される大当り画面指定用コマンドデータが示されている。」と記載されている。
したがって、表示制御コマンドには、MODEデータ「82H」によって指定される大当り画面指定用コマンドが含まれている。
次に、上記(g)の段落【0305】、【0306】には、「1ラウンド目と2ラウンド目のインターバルを示すコマンド「82H 21H」が出力され、このコマンドが表示制御基板80で受信され」「インターバルを示すコマンド」「が」「出力される。」「インターバルを示すコマンドが表示制御基板80側で受信される」と記載されている。
したがって、「1ラウンド目と2ラウンド目のインターバルを示すコマンド「82H 21H」を含む「インターバルを示すコマンド」は、MODEデータ「82H」によって指定されているから、大当り画面指定用コマンドの一部であって、表示制御コマンドに含まれるものである。
よって、刊行物1には、出力バッファ回路63が、インターバルを示すコマンドを出力することが示されている。

(p)
上記(d)の段落【0073】には、「表示制御基板80側において表示制御コマンドが入力される入力バッファ回路105」と記載されているから、表示制御基板80は、入力バッファ回路105を備えており、入力バッファ回路105は、表示制御コマンドが入力されるものである。
そして、上記(o)から、インターバルを示すコマンドは、表示制御コマンドに含まれるものである。
したがって、刊行物1には、入力バッファ回路105に、インターバルを示すコマンドが入力されることが示されている。

(q)
上記(k)から、遊技制御基板31が特別図柄プロセス処理を実行するといえる。
また、上記(e)の段落【0104】に、「特別図柄プロセス処理においては、特別図柄プロセスフラグの値に応じてS300?S308のうちのいずれかの処理が実行され」と記載されており、段落【0114】には、「確変設定処理(S308)は、確変の抽選演出結果が確変であった場合には、その大当りに基づいた特定遊技状態の終了後に確率変動状態に制御するための処理である。」と記載されているから、特別図柄プロセス処理においては、確変設定処理が実行される。
したがって、刊行物1には、遊技制御基板31は、確変の抽選演出結果が確変であった場合に、その大当りに基づいた特定遊技状態の終了後に確率変動状態に制御することが示されている。

(r)
上記(g)の段落【0296】には、「図63は、」「確変の抽選演出の表示画面を示す図である。」と記載されており、段落【0302】には、「図63に示した表示パターンが選択される。」と記載されていることから、【図63】に示される「表示パターン」は、「確変の抽選演出の表示画面」と置き換えることができる。
上記(g)の段落【0302】には、「複数種類の表示パターンの中から使用する表示パターンが表示制御基板80側で選択され」と記載されているから、刊行物1には、表示制御基板80が、複数種類の確変の抽選演出の表示画面の中から使用する確変の抽選演出の表示画面を選択することが示されている。

(s)
上記(g)の段落【0296】には、確変の抽選演出が、植物の生長に関するストーリ性のある画面によってなされることが記載されている。

(t)
上記(g)の段落【0306】には、各ラウンドが更新され、各ラウンドが開始されることを示すコマンドとインターバルを示すコマンドとが交互に出力されると、可変表示装置8には、インターバルを示すコマンドが表示制御基板80側で受信される毎に、除々に植物が生長する過程が表示されることが記載されている。

上記(a)?(g)、(i)?(t)(特に上記(i)?(t))の記載事項及び認定事項を総合すれば、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「パチンコ遊技機1が、遊技制御基板31および表示制御基板80を具備し、
遊技制御基板31は、
スイッチ処理において、始動入賞を検出すると、そのタイミングで、始動記憶し、
特別図柄判定処理において、始動記憶に関連するデータを抽出し、大当りとするか否かを決定し、
表示制御データ処理において、特別図柄判定処理において設定された表示制御コマンドを表示制御基板80へ出力し、
ソレノイド回路59と、出力バッファ回路63とを備え、
ソレノイド回路59は、開閉板20を開閉するソレノイド21を駆動する回路であり、
大当りとなれば、開閉板20が傾動して大入賞口が開口し、ラウンドに制御され、ラウンドは、一旦終了して開閉板20が閉成し、再度、ラウンドにする繰返し継続制御が実行され、
出力バッファ回路63が、インターバルを示すコマンドを出力するものであり、
表示制御基板80は、
入力バッファ回路105を備え、
入力バッファ回路105に、インターバルを示すコマンドが入力され、
遊技制御基板31は、
確変の抽選演出結果が確変であった場合に、その大当りに基づいた特定遊技状態の終了後に確率変動状態に制御し、
表示制御基板80は、
複数種類の確変の抽選演出の表示画面の中から使用する確変の抽選演出の表示画面を選択し、
確変の抽選演出が、植物の生長に関するストーリ性のある画面によってなされ、
各ラウンドが更新され、各ラウンドが開始されることを示すコマンドとインターバルを示すコマンドとが交互に出力されると、可変表示装置8には、インターバルを示すコマンドが表示制御基板80側で受信される毎に、除々に植物が生長する過程が表示される、
パチンコ遊技機1。」

第4 対比

本願発明と、引用発明とを対比する。

(ア)
引用発明の「パチンコ遊技機1」、「遊技制御基板31」、及び「表示制御基板80」は、それぞれ、本願発明における「パチンコ遊技機」、「メイン制御部」、及び「サブ制御部」に相当する。

(イ)
引用発明は、「始動入賞を検出すると、そのタイミングで、始動記憶」することから、「大当りとするか否か」の「決定」を、「始動入賞口への遊技球の入賞を契機と」して行うものということができ、引用発明において、「始動記憶に関連するデータを抽出し、大当りとするか否かを決定」することは、本願発明における「大当たり抽選を実行」することに相当する。
したがって、引用発明において、「遊技制御基板31は、スイッチ処理において、始動入賞を検出すると、そのタイミングで、始動記憶し、特別図柄判定処理において、始動記憶に関連するデータを抽出し、大当りとするか否かを決定」することは、本願発明において、「メイン制御部」が、「始動入賞口への遊技球の入賞を契機として大当たり抽選を実行」することに相当する。
引用発明の「大当りとするか否かを決定」する「特別図柄判定処理」「において設定された表示制御コマンド」は、本願発明における「大当たり抽選」「の抽選結果に基づくコマンド」に相当する。
よって、引用発明において、「遊技制御基板31は、スイッチ処理において、始動入賞を検出すると、そのタイミングで、始動記憶し、特別図柄判定処理において、始動記憶に関連するデータを抽出し、大当りとするか否かを決定し、表示制御データ処理において、特別図柄判定処理において設定された表示制御用のコマンドデータを表示制御基板80へ出力」することは、本願発明において、「メイン制御部」が、「始動入賞口への遊技球の入賞を契機として大当たり抽選を実行し、その抽選結果に基づくコマンドを送信する」ことに相当する。

(ウ)
引用発明における「遊技制御基板31は、」「表示制御コマンドを表示制御基板80へ出力する」ものであって、引用発明における「表示制御基板80」が「遊技制御基板31」から「出力」された「表示制御コマンド」によって表示を制御することは、本願発明において、「サブ制御部」が「メイン制御部から送信されたコマンドに基づいて演出を制御する」ことに相当する。

(エ)
引用発明における「遊技制御基板31」が備える「ソレノイド回路59」は、「開閉板20を開閉するソレノイド21を駆動する回路であ」り、「大当りとなれば、開閉板20が傾動して大入賞口が開口し、ラウンドに制御され、ラウンドは、一旦終了して開閉板20が閉成し、再度、ラウンドにする繰返し継続制御が実行され」るものである。
よって、引用発明における「ソレノイド回路59」は、本願発明における「メイン制御部」に備えられた「大当たり抽選に当選した場合に、大入賞口を開放してから閉塞するラウンドを繰り返す大入賞口開閉手段」に相当する。

(オ)
引用発明では、「遊技制御基板31は、」「出力バッファ回路63」「を備え、」「出力バッファ回路63は、インターバルを示すコマンドを出力するものであ」り、引用発明における「インターバルを示すコマンド」は、ソレノイド回路59により、「開閉板20が傾動して大入賞口が開口し、ラウンドに制御され」た後、「ラウンド」が、「一旦終了して開閉板20が閉成し」たことを示すコマンドであることは明らかである。
したがって、引用発明における「インターバルを示すコマンド」は、本願発明における「大入賞口開閉手段によって」「大入賞口が閉塞されたことを通知するクローズコマンド」に相当する。
そして、引用発明における「出力バッファ回路63」は、本願発明における「メイン制御部」が「備え」る「大入賞口開閉手段によって」「大入賞口が閉塞されたことを通知するクローズコマンドを送信する送信手段」に相当する。

(カ)
引用発明では、「表示制御基板80は、入力バッファ回路105を備え、入力バッファ回路105は、インターバルを示すコマンドが入力されるものであ」るから、上記(オ)と同様に、引用発明における「入力バッファ回路105」は、本願発明における「サブ制御部」が「備え」る「クローズコマンドを受信する受信手段」に相当する。

(キ)
引用発明は、「確変の抽選演出結果が確変であった場合には、その大当りに基づいた特定遊技状態の終了後に確率変動状態に制御」するものであるから、引用発明における「特定遊技状態の終了後」の「確率変動状態」は、本願発明における「大当り終了後の遊技状態」に含まれるものである。
そして、引用発明における「確変の抽選演出」は、本願発明における「大当り終了後の遊技状態を示唆する」「演出」に含まれ、引用発明における「植物の生長に関するストーリ性のある画面」と「除々に植物が生長する過程」は、本願発明における「一連の情報を順次表示する演出」に相当する。
また、引用発明において、「インターバルを示すコマンドが表示制御基板80側で受信される毎に、除々に植物が生長する過程が表示される」ことは、本願発明における「複数のラウンドにわたって」「クローズコマンドが受信されてからの所定期間中に」「演出を行う」ことに相当する。
さらに、引用発明において、「表示制御基板80が、複数種類の確変の抽選演出の表示画面の中から使用する確変の抽選演出の表示画面を選択」することは、本願発明において、「サブ制御部」が、「大当り終了後の遊技状態を示唆する一連の情報を順次表示する演出を選択し、選択した演出を行う演出実行手段」「を備える」ことに相当する。

そうすると、両者は次の点で一致する。
「始動入賞口への遊技球の入賞を契機として大当たり抽選を実行し、その抽選結果に基づくコマンドを送信するメイン制御部と、当該メイン制御部から送信されたコマンドに基づいて演出を制御するサブ制御部とを具備するパチンコ遊技機であって、
前記メイン制御部は、
前記大当たり抽選に当選した場合に、大入賞口を開放してから閉塞するラウンドを繰り返す大入賞口開閉手段と、
前記大入賞口開閉手段によって前記大入賞口が閉塞されたことを通知するクローズコマンドを送信する送信手段とを備え、
前記サブ制御部は、
前記クローズコマンドを受信する受信手段と、
複数のラウンドにわたって前記クローズコマンドが受信されてからの所定期間中に大当り終了後の遊技状態を示唆する一連の情報を順次表示する演出を選択し、選択した演出を行う演出実行手段を備える、パチンコ遊技機。」

そして、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。

[相違点]
演出実行手段により行われる、複数のラウンドにわたって前記クローズコマンドが受信されてからの所定期間中に大当り終了後の遊技状態を示唆する一連の情報を順次表示する演出に関して、本願発明は、「サブ制御部は、」「演出が行われる前記複数のラウンドを抽選により設定するラウンド設定手段」「を備える」のに対して、引用発明は、そのようなラウンド設定手段を備えていない点。

第5 当審の判断
(1)上記相違点について

上記相違点について検討する。
パチンコ遊技機の技術分野において、サブ制御部において、大当り遊技状態中の興趣を向上させるために、大当り終了後の遊技状態を示唆する演出に関して、演出をラウンド中に行い、そのラウンドを、抽選により複数のラウンドに設定することは、周知技術(特開2001-120761号公報(段落【0009】、【0041】、【0046】)、特開2010-29293号公報(段落【0097】、【0100】、【0104】、【0105】、【0132】、【0135】、【0164】、【0165】)、特開2007-68704号公報(段落【0010】、【0250】、【0255】、【0304】)、特開2007-236691号公報(段落【0009】、【0284】、【0285】、【0288】)を参照。)である。

一方、刊行物1の上記第3(h)の段落【0308】には、「変形例として、特定遊技状態中の最大ラウンド数が抽選演出によって決定される」ことが記載されている。したがって、結果的にインターバル演出のラウンド数が抽選されることになる。
さらに、上記第3(g)の段落【0298】には、大当り終了後の遊技状態を示唆する一連の情報を順次表示する演出の内容(発芽した苗が雨風、風雪にさらされたり、干ばつにみまわれたりするなどしながら生育する画像)をラウンド毎に選択することが記載されている。
このように、刊行物1には、大当り遊技状態中において、大当り遊技状態のインターバル演出が行われるラウンド数を抽選により決定すること、すなわちインターバル演出に変化を与えることと、示唆する演出内容をラウンド毎に選択すること、すなわちインターバル演出の内容に変化を与えることが記載されている。そして、このような演出は、上記第3(a)の段落【0007】の「特別遊技状態となるか否かを示す結果が導出される過程を遊技者が存分に楽しむことができる遊技機を提供する」という課題に対応した演出である。
先の周知技術は、大当り遊技状態中のラウンド中に行う演出に関するものであるが、引用発明も先の周知技術で例示したものも、大当り遊技状態中の、ラウンドに係る演出である点で共通すると共に、演出に変化を与える点で共通すると共に、さらに、遊技の興趣を向上させるという共通の課題を解決したものである。もっとも、ラウンド中とラウンド後(インターバル)は連続したものであり、遊技者から見て、その演出内容による識別は困難である。
そして、刊行物1には、ラウンド終了後のインターバル演出に関し、演出に変化を与える各種要素(ラウンド数、演出の内容)を選択する各種実施例が記載されており、このような刊行物1に記載された演出に関し各種の例が示されている事情をふまえると、引用発明の演出に変化を与える「複数のラウンドにわたって前記クローズコマンドが受信されてからの所定期間中に大当り終了後の遊技状態を示唆する一連の情報を順次表示する演出を選択し、選択した演出を行う」構成に、サブ制御部により演出が行われる複数のラウンドを抽選により設定する周知技術を適用すること、すなわち前記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)審判請求人の主張について

審判請求人は、平成27年6月25日付け意見書において、「本発明によれば、大当りした際に演出がどのラウンドのクローズコマンドを受信してからの所定期間中に行われるか(つまり、どのインターバル期間中に行われるか)が抽選によって設定されることにより、演出がどのインターバル期間から行われるか及び演出が何回のインターバル期間にわたって行われるかを遊技者は予期することができません。このため、演出の意外性を高めることができると共に、大当り遊技に飽きを覚えさせることなく遊技者の関心を効果的にひきつけることができるという顕著な効果を奏します(以下、本発明の効果という)。」と主張しているので、これについて、以下検討する(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
本願の発明の詳細な説明では、段落【0283】において、「また、本実施形態においては、全ての(ここでは、14個の)インターバル期間中に第1演出画像を表示する場合について説明するが、少なくとも1つのインターバル期間中に第1演出画像を表示する形態であればよい。また、14個のインターバル期間のうち、予め設定された2個以上のインターバル期間中に、互いに関連する一連の第1演出画像を表示する形態でもよい。また、最終ラウンドのクローズコマンドの受信に応じても第1演出画像が表示されてもよい。第1演出画像を表示するインターバル期間が多い程、第1演出画像によって遊技者に付与する情報量が増大するため、大当たり中に実行される演出の演出効果をさらに向上することができる。一方、第1演出画像を表示するインターバル期間が少ない程、演出の意外性を高めることができる。例えば、第1演出画像を表示するインターバル期間を、乱数等を発生させて、発生された乱数値に基づいて設定する場合には、演出の意外性をさらに高めることができる。」と記載されている。
これに対して、上記第5(1)において、周知技術を示すために引用した特開2001-120761号公報の段落【0009】には、「…また、前記特殊遊技用識別情報の変動表示の前記特別遊技状態に関連する仕様には、請求項2記載のように前記特殊遊技用識別情報の変動表示の開始時期、前記特殊遊技用識別情報の変動表示の終了時期(例えば、前記特別遊技状態のどのラウンドで終了するか)、或いは前記特殊遊技用識別情報の変動表示の開始から終了までの期間の長さ(例えば、前記特別遊技状態のラウンド数で何ラウンド分の期間か)などの仕様があり得る。」と記載されており、段落【0046】、【0047】には、「…遊技者は、大当たり状態中において、この確変用変動表示の内容(この場合、どのラウンドで確変用変動表示が開始されるか、さらには、最終的にどの図柄で確変用変動表示が終了するか)を、大当たり状態の進行状況と照らし合わせつつ、期待と不安を抱きながら注視することになる。これにより、確変用変動表示を行う確変判定図柄表示器21が小型で簡素なものであっても、大当たり状態中の遊技の興趣を格段に向上できる。…本形態例のような構成であれば、遊技者は、大当たり状態のラウンドが順次進んで行く中でどのラウンドで確変判定図柄の変動表示が開始されるかについて胸をドキドキさせながら、画像表示装置4の表示画面4a(具体的には、ラウンド表示など)と確変判定図柄表示器21の両者を注視することになり、さらにこの確変用変動表示が開始された後も、報知された信頼度に基づいて最終的に確変判定図柄がどうなるか(即ち、確変が実行されるか否か)について胸をドキドキさせながら、確変判定図柄表示器21における確変用変動表示の終了を見守ることになって、大当たり状態のほぼ全般にわたって高い遊技の興趣が持続的に確保される。」と記載されている。
また、同じく、該周知技術を示すために引用した特開2010-29293号公報の段落【0164】、【0165】には、「…何れのパターンでも複数のラウンドに亘って継続してストーリーが展開していき、そのストーリー展開の最後で確率変動状態に制御されるか否かが報知されるものとなっている。このため、確率変動状態に制御されるか否かを報知するまでにストーリーを展開させることで遊技者を楽しませることができ、遊技の興趣を向上させることができる。また、ストーリー2昇格無し、ストーリー2昇格及びストーリー2昇格(復活)と、ストーリー3とは、ストーリー展開は全く同じであるが、その展開が開始されるラウンドが異なっている。ここで、ストーリー3のパターンは、確変昇格大当たりの場合にしか選択され得ず、ストーリーの展開自体は同じで合ってもストーリー展開が開始されたラウンドの違いで確率変動状態に制御されることが遊技者に分かるものとなる。これにより、同じストーリー展開でもどのラウンドから開始されるかということにも遊技者に興味を持たせることができ、さらに遊技の興趣を向上させることができる。」と記載されている。」
上記第5(1)において示したように、該周知技術は、大当り遊技状態中において、大当り終了後の遊技状態を示唆する演出が行われる所定期間を、抽選により設定するものであるところ、該周知技術においては、演出が行われる所定期間の抽選結果によって、演出が開始されるラウンド期間や、演出が継続されるラウンド期間数が変化するように構成されている。
したがって、該周知技術では、演出がラウンド期間毎に毎回行われるのではないことから、演出が開始されるラウンド期間がどのラウンド期間になるか、演出が継続されるラウンド期間数がどのような長さのラウンド期間数になるか、遊技者によっては、演出が実行される前には不明であり、例えば特開2001-120761号公報に記載されるように、「期待と不安を抱きながら」、また「胸をドキドキさせながら」、大当り遊技状態中の演出に着目するようになり、もって、遊技の興趣を高めることができるのである。このような周知技術は、先に例示した文献に限らず、遊技機において興趣を高める演出として広く知られている。
ゆえに、審判請求人が主張する「演出がどのインターバル期間から行われるか及び演出が何回のインターバル期間にわたって行われるかを遊技者は予期することができ」ず、「演出の意外性を高めることができると共に、大当り遊技に飽きを覚えさせることなく遊技者の関心を効果的にひきつけることができる」という本願発明の効果は、該周知技術の持つ効果と同様のものであって、該周知技術から予想し得る程度のものであり、格別のものであるとはいえない。
よって、請求人の主張を採用することはできない。

第6 むすび

上記のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-16 
結審通知日 2015-10-20 
審決日 2015-11-04 
出願番号 特願2010-46995(P2010-46995)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 斉昭  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 本郷 徹
遠藤 孝徳
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所  

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