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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1308771
審判番号 不服2014-19760  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-01 
確定日 2015-12-17 
事件の表示 特願2011-510270「太陽電池モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月28日国際公開、WO2010/122875〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年3月29日(優先権主張2009年4月21日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成25年5月7日付けで拒絶理由が通知され、同年6月21日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、続いて、同年12月17日付けで拒絶理由が通知され、平成26年1月22日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたが、同年7月1日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、同年10月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成26年11月28日付けで前置報告がなされ、同年12月25日付けで上申書が提出された。


第2 本願発明について
1 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年10月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「太陽電池と、
前記太陽電池の主面と樹脂接着材によって接続される配線材とを備える太陽電池モジュールであって、
前記樹脂接着材は、前記主面から前記配線材の側面に跨って形成された第1接着部分と、前記太陽電池と前記配線材との間に設けられる第2接着部分とを有することを特徴とする太陽電池モジュール。」

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2007-200970号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。)

(1)「【0001】
本発明は、光起電力モジュールに関し、特に、複数の光起電力素子を含む光起電力モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の光起電力素子が直列に接続された光起電力モジュールが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示された従来の光起電力モジュールを構成する光起電力素子は、素子表面に導電性接着剤を介して接着され、発電された電流を収集するための金属ワイヤからなるフィンガー電極と、その金属ワイヤからなるフィンガー電極で収集された電流を集合させるための箔状またはワイヤ状の金属などからなるバスバー電極とを含んでいる。また、従来の光起電力素子のバスバー電極は、フィンガー電極と電気的に接続するように、光起電力素子の発光領域以外の非発光領域の表面に接着されている。
【0004】
上記特許文献1の光起電力モジュールでは、フィンガー電極として金属ワイヤを用いているため、フィンガー電極と素子表面とを接着するための導電性接着剤がフィンガー電極とは別個に必要であるという不都合がある。
【0005】
一方、従来では、フィンガー電極およびバスバー電極を導電性ペーストにより形成した光起電力素子も提案されている。このような従来の光起電力素子から光起電力モジュールを形成する場合には、隣接する光起電力素子の導電性ペーストから形成されてなるバスバー電極上に、箔状の金属からなるタブ電極を半田付けにより接合することにより、光起電力素子が直列に接続される。このような導電性ペーストから形成されてなるフィンガー電極を用いる場合には、導電性ペーストが接着機能を有するので、金属ワイヤからなるフィンガー電極を用いる場合と異なり、フィンガー電極と素子表面とを接着するための接着剤を設ける必要がない。
【0006】
【特許文献1】特開平10-65192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した導電性ペーストによりフィンガー電極およびバスバー電極を形成するとともに、バスバー電極上に箔状の金属からなるタブ電極を形成した従来の光起電力モジュールでは、タブ電極を介してバスバー電極に過度な引張り応力が加わった場合などには、バスバー電極が光起電力素子の表面から剥離しやすいという恐れがある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つ
の目的は、タブ電極の剥離を抑制することが可能な光起電力モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による光起電力モジュールは、光電変換層を含む複数の半導体層と、光入射面側の半導体層上に形成され、発電された電流を収集するためのフィンガー電極とを含む複数の光起電力素子と、複数の光起電力素子を電気的に接続するためのタブ電極とを備えている。そして、タブ電極は、光起電力素子の発電領域に対応する領域において、フィンガー電極と電気的に接続されているとともに、絶縁性の接着材を介して光入射面上に接着されている。」

(2)「【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による光起電力モジュールの構造を示した断面図であり、図2は、図1に示した第1実施形態による光起電力モジュールを構成する光起電力素子にタブ電極が接続された状態を示した平面図である。図3?図5は、それぞれ、図2の100-100線、200-200線および300-300線に沿った断面図である。図6は、図1に示した第1実施形態による光起電力モジュールを構成する光起電力素子のフィンガー電極の形状を示した平面図であり、図7は、図1に示した第1実施形態による光起電力モジュールを構成する光起電力素子からタブ電極を取り外した状態を示した平面図である。まず、図1?図7を参照して、第1実施形態による光起電力モジュールの構造について説明する。
【0023】
第1実施形態による光起電力モジュールは、図1に示すように、複数の光起電力素子1を含むとともに、その複数の光起電力素子1がタブ電極2を介して電気的に接続された構造を有する。複数の光起電力素子1を電気的に接続するタブ電極2は、図1および図2に示すように、後述する集電極としてのフィンガー電極18(19)と電気的に接続するように、かつ、X方向(フィンガー電極18(19)の延びる方向)と直交するY方向に延びるように配置されている。このタブ電極2は、約200μm?約400μmの厚みと、約1mm?約2mmの幅とを有する銅箔からなる。また、図1に示すように、複数の光起電力素子1は、EVA(Ethylene Vinyl Acetate)からなる充填材3により覆われている。また、充填材3の上面上には、ガラスからなる表面保護材4が設けられているとともに、充填材3の下面上には、PVF(Poly Vinyl Fluoride)からなる裏面保護材5が設けられている。
【0024】
また、第1実施形態の光起電力素子1では、図3?図5に示すように、約180μm?約300μmの厚みを有するn型単結晶シリコン基板11の上面上に、約5nm?約20nmの厚みを有する実質的に真性のi型非晶質シリコン層12および約5nm?約20nmの厚みを有するp型非晶質シリコン層13が順次形成されている。なお、n型単結晶シリコン基板11は、本発明の「光電変換層」および「半導体層」の一例であり、i型非晶質シリコン層12およびp型非晶質シリコン層13は、本発明の「半導体層」の一例である。また、p型非晶質シリコン層13上には、約30nm?約150nmの厚みを有する透光性導電膜としてのITO(Indium Tin Oxide)膜14が形成されている。そして、第1実施形態では、ITO膜14のn型単結晶シリコン基板11とは反対側の表面が、表面側の光入射面1aとなる。
【0025】
また、n型単結晶シリコン基板11の下面上には、i型非晶質シリコン層15、n型非晶質シリコン層16およびITO膜17が順次形成されている。このi型非晶質シリコン層15、n型非晶質シリコン層16およびITO膜17の厚みは、それぞれ、約5nm?約20nm、約5nm?約20nmおよび約30nm?約150nmである。なお、i型非晶質シリコン層15およびn型非晶質シリコン層16は、本発明の「半導体層」の一例である。また、第1実施形態では、ITO膜17のn型単結晶シリコン基板11とは反対側の表面が、裏面側の光入射面1bとなる。
【0026】
この第1実施形態の光起電力素子1では、平面的に見て、n型単結晶シリコン基板11の上面および下面上に形成された半導体各層(12、13、15および16)の形成領域が、発電領域となる。すなわち、p型非晶質シリコン層13上に形成されたITO膜14の表面により構成される光入射面1aと、n型非晶質シリコン層16上に形成されたITO膜17の表面により構成される光入射面1bとは、光起電力素子1の発電領域に対応する領域に配置されている。
【0027】
また、図4および図5に示すように、表面側の光入射面1a(ITO膜14のn型単結晶シリコン基板11とは反対側の表面)上の所定領域には、約10μm?約50μmの厚みを有するとともに、銀(Ag)の微粉末が練り込まれたエポキシ樹脂などからなる導電性ペーストによって形成された導電性材料からなるフィンガー電極18が形成されている。このフィンガー電極18は、発電された電流を収集する機能を有する。また、図6に示すように、フィンガー電極18は、X方向に延びるように、かつ、X方向と直交するY方向(タブ電極2の延びる方向)に互いに約2mmの間隔を隔てて複数形成されている。また、各々のフィンガー電極18は、約100μmのY方向の幅を有する。
【0028】
なお、図4および図5に示すように、裏面側の光入射面1b(ITO膜17のn型単結晶シリコン基板11とは反対側の表面)上の所定領域にも、表面側のフィンガー電極18と同様の形状を有するとともに、表面側のフィンガー電極18とたとえば同様の材料からなるフィンガー電極19が複数形成されている。また、第1実施形態の光起電力素子1の集電極は、上記したフィンガー電極18および19のみによって構成されている。すなわち、第1実施形態の光起電力素子1には、フィンガー電極18および19で収集された電流を集合させるためのバスバー電極が設けられていない。
【0029】
ここで、第1実施形態による光起電力モジュールでは、図3および図5に示すように、タブ電極2は、光起電力素子1の表面側の発電領域に対応する領域において、アクリル系の熱硬化型樹脂からなる絶縁性の接着層6を介して、光入射面1aに直接接着されている。そして、第1実施形態では、図7に示すように、光入射面1aとタブ電極2とを接着する絶縁性の接着層6は、光起電力素子1の発電領域に対応する領域で、かつ、フィンガー電極18が形成されていない領域に設けられている。具体的には、第1実施形態では、絶縁性の接着層6は、タブ電極2が配置される領域で、かつ、Y方向に隣接するフィンガー電極18間に位置する領域の各々に設けられている。
【0030】
また、第1実施形態では、図5および図7に示すように、タブ電極2が配置される領域において、複数のフィンガー電極18の各々の上面上に、Sn-Ag-Cuからなる半田層7が設けられている。この半田層7によって、タブ電極2とフィンガー電極18とが電気的に接続されている。
【0031】
なお、図3?図5に示すように、光起電力素子1の裏面側におけるタブ電極2の接続方法は、上記した光起電力素子1の表面側におけるタブ電極2の接続方法と同様である。すなわち、タブ電極2は、光起電力素子1の裏面側の発電領域に対応する領域において、絶縁性の接着層6を介して、光入射面1bに直接接着されている。また、タブ電極2は、半田層7を介して、フィンガー電極19と電気的に接続されている。
【0032】
第1実施形態では、上記のように、光起電力素子1の表面側の発電領域に対応する領域において、タブ電極2を、絶縁性の接着層6を介して光入射面1aに直接接着することによって、光入射面1aとタブ電極2との間の接着強度を、絶縁性の接着層6を用いずに光入射面1a上に導電性ペーストから形成されてなるバスバー電極を介してタブ電極2を接合する従来の場合における光入射面1aとタブ電極2との間の接着強度よりも大きくすることができるので、タブ電極2が光入射面1aから剥離するのを抑制することができる。この結果、導電性ペーストから形成されてなるフィンガー電極(集電極)18を含む場合にも、タブ電極2の剥離を抑制することができる。
【0033】
また、第1実施形態では、上記のように、タブ電極2をバスバー電極を介さずに光入射面1aに接着することによって、バスバー電極を省略することができるので、電極構造を簡略化することができる。
【0034】
また、第1実施形態では、上記のように、光起電力素子1の表面側の発電領域に対応す
る領域において、タブ電極2を、絶縁性の接着層6を介して光入射面1aに接着することによって、タブ電極2を導電性の接着層を介して光入射面1aに接着する場合と異なり、接着層6を介してタブ電極2へ暗電流が流れるのを抑制することができる。これにより、光起電力モジュールの特性の低下を抑制することができる。
【0035】
また、第1実施形態では、上記のように、絶縁性の接着層6を、タブ電極2が配置される領域で、かつ、フィンガー電極18が形成されていない領域に設けることによって、タブ電極2とフィンガー電極18との電気的な接続を妨げることなく、タブ電極2が配置される領域において、光入射面1aとタブ電極2とを絶縁性の接着層6を介して接着することができる。この場合、絶縁性の接着層6を、タブ電極2が配置される領域で、かつ、Y方向に隣接するフィンガー電極18間に位置する領域の各々に設けることによって、タブ電極2が配置される領域において、光入射面1aとタブ電極2との接着領域を増加させることができる。
【0036】
また、第1実施形態では、上記のように、半田層7を介して、タブ電極2とフィンガー電極18とを電気的に接続することによって、容易に、半田層7により、タブ電極2とフィンガー電極18とを電気的に接続することができる。
【0037】
また、第1実施形態では、上記のように、光起電力素子1の裏面側におけるタブ電極2の接続を、光起電力素子1の表面側におけるタブ電極2の接続と同様に行うことによって、光起電力素子1の裏面側においても、タブ電極2の剥離を抑制することができる。
【0038】
次に、図1?図7を参照して、第1実施形態による光起電力モジュールの製造プロセスについて説明する。
【0039】
まず、図3?図5に示すように、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、約180μm?約300μmの厚みを有するn型単結晶シリコン基板11上に、約5nm?約20nmの厚みを有するi型非晶質シリコン層12および約5nm?約20nmの厚みを有するp型非晶質シリコン層13を順次形成する。この後、プラズマCVD法を用いて、n型単結晶シリコン基板11の下面上に、約5nm?約20nmの厚みを有するi型非晶質シリコン層15および約5nm?約20nmの厚みを有するn型非晶質シリコン層16を順次形成する。次に、スパッタリング法を用いて、p型非晶質シリコン層13上に、約30nm?約150nmの厚みを有するITO膜14を形成した後、n型非晶質シリコン層16の下面上にも、約30nm?約150nmの厚みを有するITO膜17を形成する。
【0040】
次に、図4および図5に示すように、スクリーン印刷法を用いて、ITO膜14上の所定領域に、Agの微粉末が練り込まれたエポキシ樹脂などからなる導電性ペーストを塗布する。この後、導電性ペーストを硬化させることによって、ITO膜14上の所定領域に、約10μm?約50μmの厚みを有する導電性材料からなる表面側のフィンガー電極18を形成する。この際、図6に示すように、表面側のフィンガー電極18を、X方向に延びるように、かつ、X方向と直交するY方向に互いに約2mmの間隔を隔てて複数形成する。この後、上記した表面側のフィンガー電極18の形成プロセスと同様の形成プロセスを用いて、ITO膜17の下面上の所定領域にも、表面側のフィンガー電極18と同様の形状を有する裏面側のフィンガー電極19を複数形成する。これにより、第1実施形態による光起電力モジュールを構成する光起電力素子1が形成される。
【0041】
次に、図7に示すように、スクリーン印刷法を用いて、表面側のタブ電極2が配置される領域で、かつ、ITO膜14上のY方向に隣接するフィンガー電極18間に位置する領域の各々に、アクリル系の熱硬化型樹脂からなる、後に接着層6となる絶縁性の樹脂ペーストからなる接着剤を塗布する。また、スクリーン印刷法を用いて、表面側のタブ電極2が配置される領域において、複数のフィンガー電極18の各々の上面上に、Sn-Ag-Cuからなるとともに、後に半田層7となる半田ペーストを塗布する。
【0042】
この後、上記した樹脂ペーストおよび半田ペーストが塗布された領域に、約200μm?約400μmの厚みと、約1mm?約2mmの幅とを有する銅箔からなるタブ電極2を押付ける。この状態で、熱風加熱法を用いて、約150℃?約200℃の温度条件下で、約10分?約60分の熱処理を行うことによって、樹脂ペーストを硬化させる。これにより、樹脂ペーストが接着層6となるとともに、その接着層6を介して、ITO膜14の表面(光入射面1a)とタブ電極2とが接着される。この後、熱風加熱法を用いて、約230℃?約260℃の温度条件下で熱処理を行うことによって、半田ペーストを硬化させる。これにより、半田ペーストが半田層7となるとともに、その半田層7を介して、タブ電極2とフィンガー電極18とが電気的に接続される。このようにして、図2に示すように、光起電力素子1の表面側に、タブ電極2を接続する。
【0043】
なお、光起電力素子1の裏面側においても、上記した表面側のタブ電極2の接続プロセスと同様の接続プロセスを用いて、タブ電極2を接続する。すなわち、タブ電極2を、絶縁性の接着層6を介して、光入射面1bに接着するとともに、半田層7を介して、フィンガー電極19と電気的に接続する。
【0044】
最後に、図1に示すように、ガラスからなる表面保護材4の上に、後に充填材3となるEVAシート、タブ電極2により接続した複数の光起電力素子1、後に充填材3となるEVAシート、および、PVFからなる裏面保護材5を順次積層する。この後、加熱しながら真空ラミネート処理を行うことによって、第1実施形態による光起電力モジュールが形成される。」

(3)「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】



上記記載事項(3)の【図3】から、「接着層6」は「光入射面1a」と「タブ電極2」の間に配置されている構成が読み取れる。

すると、上記引用文献の記載事項から、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「複数の光起電力素子1を含むとともに、その複数の光起電力素子1がタブ電極2を介して電気的に接続された構造を有する光起電力モジュールであって、
タブ電極2は、光起電力素子1の表面側の発電領域に対応する領域において、光起電力素子1の光入射面1aとタブ電極2の間に配置された、アクリル系の熱硬化型樹脂からなる絶縁性の接着層6を介して、光入射面1aに直接接着されている、光起電力モジュール。」

2 対比
(1)本願発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「光起電力素子1」、「タブ電極2」、「アクリル系の熱硬化型樹脂」、「光入射面1a」及び「光起電力モジュール」が、それぞれ、本願発明の「太陽電池」、「配線剤」、「樹脂接着材」、「主面」及び「太陽電池モジュール」に相当する。

イ 引用発明の「複数の光起電力素子1を含むとともに、その複数の光起電力素子1がタブ電極2を介して電気的に接続された構造を有する光起電力モジュール」は、本願発明の「太陽電池と、」「配線材とを備える太陽電池モジュール」に相当する。

ウ 引用発明の「光起電力素子1の光入射面1aとタブ電極2の間に配置された、アクリル系の熱硬化型樹脂からなる絶縁性の接着層6」は、本願発明の「前記樹脂接着材」の「前記太陽電池と前記配線材との間に設けられる第2の接着部分」に相当するから、引用発明の「タブ電極2は、光起電力素子1の表面側の発電領域に対応する領域において、光起電力素子1の光入射面1aとタブ電極2の間に配置された、アクリル系の熱硬化型樹脂からなる絶縁性の接着層6を介して、光入射面1aに直接接着されている」ことは、本願発明の「前記太陽電池の主面と樹脂接着材によって接続される配線材とを備え」、「前記樹脂接着材は、」「前記太陽電池と前記配線材との間に設けられる第2接着部分とを有すること」に相当する。

(2)一致点
してみると、両者は、
「太陽電池と、
前記太陽電池の主面と樹脂接着材によって接続される配線材とを備える太陽電池モジュールであって、
前記樹脂接着材は、前記太陽電池と前記配線材との間に設けられる第2接着部分を有する太陽電池モジュール。」
で一致し、次の点で相違する。

(3)相違点
樹脂接着材が、本願発明では、「前記主面から前記配線材の側面に跨って形成された第1接着部分」を有するのに対して、引用発明では、「光入射面1a」と「タブ電極2」の側面との間には設けられていない点。

3 判断
(1)上記相違点について
一般に、接着箇所の剥離を防止することは周知の課題であって、該課題の解決手段として、接着面積を増やすことは、普通に知られていることである。
そして、引用文献においても、上記「2」「記載事項(2)」の段落【0032】に記載されるように、「タブ電極2」の剥離を抑制することが示されている。
また、特開2008-53681号公報には、「温度変化が生じた場合に、接続タブと太陽電池素子との熱膨張係数の差異に起因して生じる応力」(段落【0021】)を緩和するために、従来、「接続タブ」と「バスバー電極」の間のみに接着材を配置していた構成(段落【0007】?【0008】、図20、21等参照)に加えて、「接続タブ」の側面にも接着材を設けること(段落【0015】?【0017】、図5?13等参照)が開示されており、他にも、特開2000-261012号公報には、「外部電極7」の剥離を防止することを目的として(段落【0003】等参照)、「外部電極7」の側面の「フィレット部9」の接着面積を大きくすること(段落【0018】、図5、6等参照)が開示されているように、太陽電池のタブ電極の接着においても、接着箇所の応力を緩和して、剥離を防止するために、タブ電極の側面にも接着材を配置して接着強度を上げることは、当業者には周知の技術事項である。
してみると、引用発明において、「接着層6」に加わる応力を緩和して、「タブ電極2」の剥離を防止するために、「タブ電極2」の側面にも接着材を配置して、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得ることである。

(2)効果について
本願発明が奏し得る効果は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

(3)結論
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第3 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-15 
結審通知日 2015-10-20 
審決日 2015-11-02 
出願番号 特願2011-510270(P2011-510270)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬川 勝久  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 土屋 知久
伊藤 昌哉
発明の名称 太陽電池モジュール  
代理人 前田 浩夫  
代理人 鎌田 健司  
代理人 藤井 兼太郎  

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