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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L |
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管理番号 | 1308780 |
審判番号 | 不服2015-3041 |
総通号数 | 194 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-02-17 |
確定日 | 2015-12-17 |
事件の表示 | 特願2013-95971号「未発酵の発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料及び発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料の香味向上方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月17日出願公開、特開2014-212781号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成25年4月30日の出願であって、平成26年11月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年2月17日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 その後、当審において、平成27年6月5日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成27年8月10日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、平成27年8月10日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「植物原料液及びホップを使用して製造される未発酵の発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料であって、 難消化性デキストリンの含有量が1.50w/v%以上2.00w/v%以下であり、 pHが3.5以上5.0以下であり、 ガス圧が0.147MPa以上0.294MPa以下である ことを特徴とする未発酵の発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料。」 3.引用例 これに対して、当審で通知した拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である 国際公開第2011/145670号 (以下「引用例1」という。) 特開2009-286697号公報 (以下「引用例2」という。) 「ジャパンフードサイエンス」2月号、Vol.46,No.2,2007,p36-41)(以下「引用例3」という。) 特開2007-6872号公報 (以下「引用例4」という。) 特開2006-6342号公報 (以下「引用例5」という。) 特開2009-142233号公報 (以下「引用例6」という。) 特開平8-9953号公報(以下「引用例7」という。) 特開2013-21944号公報 (以下「引用例8」という。) 特開2011-72228号公報 (以下「引用例9」という。) 「ビール醸造技術」、食品産業新聞社、1999年12月28日発行、p351(以下「引用例10」という。) には、それぞれ以下の各事項が記載されている。 [引用例1について] (1a)「背景技術 [0002] 消費者の健康志向が高まる中、ビール、発泡酒、ビールテイスト飲料などの嗜好性飲料においても低カロリーや低糖質といった商品の需要が高まっている。・・・」 (1b)「[0027] (その他の原料) 本発明では、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、その他の原料を用いてもよい。例えば、甘味料、酸味料、香料、酵母エキス、カラメル色素などの着色料、大豆サポニンやキラヤサポニン等の植物抽出サポニン系物質、コーンや大豆などの植物タンパク質およびペプチド含有物、ウシ血清アルブミン等のタンパク質系物質、食物繊維やアミノ酸などの調味料、アスコルビン酸等の酸化防止剤、各種酸味料を、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて用いることができる。」 (1c)「[00046] 実施例1 <本発明の非発酵のノンアルコールビールテイスト飲料の製造> 麦由来のエキス分の総量が所望の範囲内にある、本発明の非発酵のノンアルコールビールテイスト飲料(飲料1?7)、及び麦由来のエキス分の総量が所望の範囲外である非発酵のノンアルコールビールテイスト飲料(比較例1?3)を、以下の方法により製造した。・・・ ・・・ [0048] 得られた濾液の一部をとり、温水を加え、その際、濾液と温水の混合割合は、煮沸完了時のエキス分の量が目標とする値になるよう調整した。製造スケールを100Lとし、ホップを約100g添加し、100℃で80分間煮沸をした。煮沸後の液からオリを分離し、約2℃に冷却後、酸化防止剤、香料、酸味料(pHが4未満となる量を添加)、甘味料、必要によりカラメル色素を各々適量加えて約24時間貯蔵した。その間、炭酸ガスを適量添加した。その後、濾過・瓶詰め・殺菌(65℃以上で10分間加熱)の工程を経て、本発明の非発酵のノンアルコールビールテイスト飲料1?7を得た。このうち、飲料3及び4、あるいは、飲料5及び6は、同じ方法により得られた異なるバッチである。また、比較例1?3の三つの飲料は、同じ方法により得られた異なるバッチである。 」 (1d)「請求の範囲 [請求項1] 麦由来のエキス分の総量が0.1?2重量%であり、アルコールを含まない、非発酵のビールテイスト飲料。 ・・・ [請求項10] 原料の一部にホップを用いて得られる、請求項1?9のいずれか1項に記載の非発酵のビールテイスト飲料。」 以上の記載によると、引用例1には、 「麦由来のエキス分及びホップを用いて製造される非発酵のノンアルコールビールテイスト飲料。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用例2について] (2a)「【技術分野】 【0001】 この発明は、日常生活に用いる機能性飲料水に関するものであり、具体的には難消化性デキストリンを配合し、主に血糖値の安定化を目指した飲料水である。」 (2b)「【0005】 デキストリンの一種である難消化性デキストリンは、デンプンを加熱・酵素処理して調製される低粘性の水溶性食物繊維であり、食事とともに摂取した際、食物に含まれる二糖類以上の炭水化物の吸収を遅延させ、食後の血糖値の上昇を穏やかにする結果、インスリンの急激な分泌を抑制する耐糖能改善効果が確認されており、この効果を利用して「血糖値が気になりはじめた方の食生活の改善に役立つ」旨の表示を許可された特定保健用食品が数多く上市されている。」 [引用例3について] 「難消化性デキストリンの特性と用途」に関して、 (3a)「4 食品への利用 4-1 生理機能を利用した食品開発 4-1-1 特定保健用食品 難消化性デキストリンを関与成分とし,整腸作用を表示した特定保健用食品は,1997年に初めて畜肉製品で許可を取得した後,年々増えつづけ,現在では77品目となっている(平成18年12月15日現在).このような実績をもとに,規格基準型特定保健用食品に利用可能な関与成分として規格が設定されており,既に4品目の食品が許可を取得している.添加量の目安は1日当たり3?8gであり,容易に添加が可能である。 難消化性デキストリンの食後血糖値上昇抑制作用を利用し,「血糖値が気になる方に適した特定保健用食品」として許可を取得している特定保健用食品も多く,72品目の食品が許可を取得している(平成18年12月15日現在).難消化性デキストリンは食後に上昇する血糖値を抑制するため,食事と共に摂取可能な食品にする必要があり,茶飲料,米飯,みそ汁など食品形態で実績がある.添加量の目安は5?10gである.」 (3b)「4-2 基本物性を利用した食品開発 4-2-1 食物繊維強化食品 難消化性デキストリンは水溶性食物繊維の一種であり,85?95%の食物繊維を含有することから,食物繊維としての利用が可能である.厚生労働省が定める栄養表示基準制度において,食物繊維入りと表示するためには,食品100g当たり3g(飲料の場合は100mL当たり1.5g),食物繊維高含有と表示するためには,食品100g当たり6g(飲料の場合は100mL当たり3g)の食物繊維の含有が必要である.」 [引用例4について] (4a)「【技術分野】 【0001】 本発明は、発酵飲料の製造方法に関し、詳しくは難消化性デキストリン等の食物繊維を含有する発酵飲料の製造方法に関する。」 (4b)「【背景技術】 【0002】 近年、消費者のニーズの多様化に伴い、酒類においても、健康機能を持たせた製品が検討されている。発酵飲料、なかでも、ビール、発泡酒などビールテイストにおいても、各種機能を持たせた製品が望まれている。 一方、食物繊維は摂取量の不足が問題とされる成分の一つである。食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に大別される。このうち、水溶性食物繊維としては、食後の血糖値上昇を抑制する成分として、難消化性デキストリンが知られている。」 [引用例5について] (5a)「【請求項1】 大麦、小麦及び麦芽を使用することなく、少なくとも炭素源を含有するシロップ、窒素源及び水を原料として発酵前液を製造し、該発酵前液を酵母の使用によって発酵させることによる大麦、小麦及び麦芽を使用しない発泡アルコール飲料の製造方法において、食物繊維を原材料の一部として使用することを特徴とする発泡アルコール飲料の製造方法。 ・・・ 【請求項3】 前記食物繊維は、難消化性食物繊維であることを特徴とする請求項1及び2に記載の発泡アルコール飲料の製造方法。 【請求項4】 前記難消化性食物繊維は、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グア豆繊維、ペクチン、グルコマンナン叉はアルギン酸のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の発泡アルコール飲料の製造方法。」 (5b)「【発明の効果】 【0022】 本発明によると、難消化性食物繊維を原材料の一部として、大麦、小麦及び麦芽を使用しない発泡アルコール飲料の製造工程の発酵工程前に添加することによって、低糖質化を達成すると共にすっきり感を備えつつも、芳醇さ、濃厚さを有する大麦、小麦及び麦芽を使用しない発泡アルコール飲料を提供できる。」 (5c)「【0038】 実施例1乃至3は何れも異なった使用量の上記3種類の難消化性食物繊維を添加する以外の工程条件は同じとした。なお、低糖質を達成するには、アルコール濃度を変更して調製することも考えられるが、ここでは、試験製品の最終アルコール濃度をすべてアルコール4.0容量%に調整した。 (実施例1) 実施例1は、麦芽、大麦を使用することなく、炭素源を含有するシロップ、ホップ、色素、香味・発酵性を改善する原材料及び水を原料として発酵前液を製造し、該発酵前液を酵母を使用して発酵させることによりビール様発泡アルコール飲料を製造する方法に糖質を低減する原材料として難消化性デキストリンのパインファイバーC(松谷化学製:パインファイバーC、以下同じ)を使用することにより本発明を適用した例で、以下の手順で実施した。」 (5d)「【0062】 したがって、表1、2及び3に示したデータから、発泡アルコール飲料100ml中0.1gより高く3.0g以下の難消化性デキストリン、ポリデキストロース、又はグア豆繊維の難消化性食物繊維を使用した#1-3乃至7、#1-11乃至14、#1-18乃至21は、他の使用量の試験と比較してビールや発泡酒などの麦芽アルコール飲料で好まれる、優れた香味や後味の切れを維持することが確認された。さらにまた、この範囲で上記難消化性食物繊維を使用したビール様発泡アルコール飲料の試験結果は、ビールや発泡酒などの麦芽アルコール特有の優れた泡持性をも保持することが確認された。 【0063】 以上説明したように、上記の結果から、本発明の発泡アルコール飲料の製造方法において、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、又はグア豆繊維に代表される難消化性食物繊維は、糖質を低減する一方で、香味を維持するための原材料として使用できる。よって、本発明によると、低糖質化を図ることが出来ると共に大麦、小麦及び麦芽などの麦類を一切使用しない発砲アルコール飲料の特徴であるスッキリ感を備えつつも、芳醇さ、濃厚さを有したビール様発泡アルコール飲料を提供することが可能となる。」 [引用例6について] (6a)「【請求項1】 ビール風味アルコール飲料の製造に際して、水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を含有する副原料を添加することを特徴とする香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法。 【請求項2】 水溶性食物繊維が、難消化性デキストリン及び/又はポリデキストロースであることを特徴とする請求項1記載の香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法。」 (6b)「【発明の効果】 【0015】 本発明のビール風味アルコール飲料の製造方法により、低カロリー、低糖質でありながら、風味やキレ(味質)等の香味を有し、しかもボディ感があり、これらの香味とボディ感のバランスが格別に優れた低カロリービール風味アルコール飲料を製造することができる。本発明は、該香味バランスに優れた、健康と嗜好性が両立する低カロリービール風味アルコール飲料を提供する。」 (6c)「【0075】 更に、得られた発泡酒の官能評価を、実施例2と同様の方法により実施した。その結果、糖アルコールと難消化性デキストリンを同時に添加することによる味質の改善が認識され、難消化性デキストリンの投入量が0.5?1.5%の範囲において風味および総合評価が顕著に高まり、実施例2の結果とも併せて、食物繊維と糖アルコールによる相乗効果が認められた(表12)。一方で、難消化性デキストリン濃度2.0%以上のものは、風味やキレを打ち消してしまうため、低い評価となった。」 [引用例7について] (7a)「【請求項1】 焙焼デキストリンを原料にして製造された難消化性成分を含む糖類を副原料として醸造された低カロリービール。」 (7b)「【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者は上記目的を達成するために種々検討した結果、ビールの製造に際し、副原料の澱粉質原料として難消化性成分を含有した糖類を利用することにより、低カロリーでかつ香味的にも優れたビールを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、焙焼デキストリンを原料にして製造された難消化性成分を含む糖類を副原料として醸造された低カロリービールを提供するものである。本発明はまた、麦汁中に、焙焼デキストリンを原料にして製造された難消化性成分を含む糖類を副原料として添加し、醸造することを特徴とする低カロリービールの製造方法を提供するものである。」 (7c)「【0009】この副原料を用いて製造されたビールは、添加した糖類のうち、低分子の糖は酵母により発酵するが難消化性成分は発酵されずにそのまま残っている。この影響で通常のビールに比べてアルコール度は低めながら、低カロリーであってもこくのある香味を保持していると考えられる。さらに副次的な効果ではあるが、難消化性成分が残存していることにより、食物繊維が本来有している効果つまり、コレステロールの低下、インシュリン分泌の抑制、排便促進、有害物の抑制等の種々の生理作用も当然有しており、その面からも有用性が高いビールである。」 (7d)「【0012】 【発明の効果】本発明のビールは、従来の低カロリービールにくらべ、ボディ感がある上に、すっきりで爽快な調和のとれた口当たりと、後に残らない良好な苦みを有しており、さらにはきめ細かく長く消えない良い泡が形成される。これは、通常カロリービールと全く遜色のないばかりかそれ以上の性状のものである。」 [引用例8について] (8a)「【請求項1】 大豆食物繊維を含む、未発酵のビールテイスト飲料。 ・・・ 【請求項6】 pHが3以上4.5以下である請求項1から5のいずれかのビールテイスト飲料。」 (8b)「【0014】 [pH] 本発明のビールテイスト飲料は、pHが3以上4.5以下であることが好ましく、3.5以上4以下であることが更に好ましい。pHを上記の範囲内のものに調整することにより、ビールテイスト飲料の香味が良好なものとなる。」 (8c)「【0019】 <実施例1> 大豆食物繊維である「ソヤファイブ-S-LA200」を水に溶解し、0.20w/v%の水溶液を調製した。次いで、得られた大豆食物繊維の水溶液175mLと、炭酸水175mLを350mL缶に充填し、大豆食物繊維が0.10w/v%、ガス容量2.3の炭酸飲料を得た。」 注;ガス容量2.3≒0.165MPa(20℃) [引用例9について] (9a)「【請求項1】 麦汁と、pH調整剤と、核酸系調味成分とを含んでなる、pHが4.0未満である未発酵のビール風味麦芽飲料であって、核酸系調味成分によってpH調整剤の酸味が低減・緩和された、ビール風味麦芽飲料。」 (9b)「【背景技術】 【0002】 近年の健康志向の高まりの中でアルコール摂取量を自己管理する消費者が増加している。また、飲酒運転に対する罰則の強化など道路交通法の改正により、自動車等の運転に従事する者のアルコール摂取に対する関心が高まっている。このような中で低アルコールあるいは無アルコールのビール風味麦芽飲料への需要が一段と高まっている。」 (9c)「【0005】 一方で、単に酵母による発酵を排除し、麦芽により生成された麦汁を最終製品とした場合、飲料の扱いとなるため、食品衛生法に基づき(厚生省告示第213号)、pH4.0未満の麦汁は、65℃×10分またはこれと同等以上の殺菌が必要となり、pH4.0?4.6であれば85℃×30分またはこれと同等以上の殺菌が必要となるが、特に殺菌設備の制約上あるいは殺菌にかかるエネルギーコストなどの観点から、製品pH4.0未満の設計を選択した場合、強烈な酸味が問題となる。」 (9d)「【0051】 実施例1:完全無アルコールのビール風味飲料の製造およびその評価 (1)麦汁の調製 仕込槽に麦芽粉砕物200kgと温水700Lを加えて混合し、50?76℃で糖化を行った。糖化工程終了後、これを麦汁濾過槽において濾過して、その濾液として透明な麦汁を得た。 【0052】 得られた麦汁を煮沸釜に移し、これに液糖を主体とする副原料80kg(固形分換算)を加え、更にホップを1kg加えて、100℃で煮沸した。煮沸した麦汁をワールプール槽に入れて、乳酸をpH3.8になるように添加した。次いで、沈殿により生じたタンパク質などの粕を除去した。この際、煮沸後の麦汁に温水を加え、糖度を7%に調整した。得られた麦汁(1,800L)をプレートクーラーで4℃まで冷却し、脱気水を加えて珪藻土濾過機により濾過して後述の官能評価試験と成分分析に供する麦汁(糖度4%、pH3.8、BU14.3)を得た。・・・」 [引用例10について] (10a)「11.1 ビールの組成」と題し、表中に以下が記載されている。 「試料 1 2 黒ビール スタウト ・・・ 二酸化炭素ガス圧力kg/cm^(2).20℃ 1.9 2.0 2.2 2.2」 4.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、 引用発明の「麦由来のエキス分」及び「非発酵」は、それぞれ本願発明の「植物原料液」及び「未発酵」に相当し、 また、引用発明の「ノンアルコールビールテイスト飲料」は、発泡性であることは明らかなことより、本願発明の「発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料」に相当する。 よって、両者は、 「植物原料液及びホップを使用して製造される未発酵の発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料。」 である点で一致し、以下の各点で相違する。 相違点1;本願発明では、難消化性デキストリンの含有量が1.50w/v%以上2.00w/v%以下であるのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。 相違点2;本願発明では、pHが3.5以上5.0以下であるのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。 相違点3;本願発明では、ガス圧が0.147MPa以上0.294MPa以下であるのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。 5.判断 上記各相違点について検討すると、 ・相違点1について 引用例2(記載事項(2b)参照)、引用例3(記載事項(3a)参照)及び引用例4(記載事項(4b)参照)に記載されているように、各種飲料において血糖値低下作用等の機能性を付加するために「難消化性デキストリン」を含有させることは周知の技術である。 また、ノンアルコールビールテイスト飲料は、主としてアルコール摂取量を自己管理する健康志向の消費者を対象とする製品であるところ(記載事項(9b)参照)、そうしたノンアルコールビールテイスト飲料に、さらに健康に資する機能性を付加することは、当業者が容易に想到し得る事項である。 よって、引用発明の「未発酵のノンアルコールビールテイスト飲料」において、血糖値低下作用等の機能性を付加するために「難消化性デキストリン」を含有させることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、上記「難消化性デキストリン」の含有量が「1.50w/v%以上2.00w/v%以下」である点は、本願明細書を参酌してもその上限値及び下限値には格別な臨界的意義は認められず、また、引用例3(記載事項(3b)参照)には、食物繊維入りと表示するためには飲料の場合は100mL当たり1.5g含有が必要であることが記載され、さらに、平成21年8月27日付け食安発0827第2号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知(「特定保健用食品(規格基準型)制度の創設に伴う規格基準の設定等について」の一部改正について)により、「糖の吸収を穏やかにする」用途の場合は、難消化性デキストリンの1日1回食事とともに摂取する目安量が4g?6gとされることが周知され、ここでノンアルコールビールテイスト飲料は、通常350ml缶により販売されることから、上記摂取する目安量としての上限値「6g」は、100mL当たり約1.7g、すなわち約1.7w/v%となり上記数値範囲内となることからみて、上記「難消化性デキストリン」の含有量を上記数値範囲内とすることは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、引用発明の「未発酵のノンアルコールビールテイスト飲料」において、上記周知の技術を適用し、相違点1の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たことである。 なお、請求人は審判請求書(「3-4-4.効果について」)及び平成27年8月10日付け意見書(第4頁14?17行)において、「難消化性デキストリン」によるオフフレーバー(紙臭さ)の効果を主張するが、紙臭さがどのようにビール様の香味につながるかは本願明細書の記載を参酌しても必ずしも明確ではなく、また、結果としてビールテイスト飲料の香味が改善されることは発酵工程を経るものではあるが引用例5?7(記載事項(5d)、(6c)及び(7c)参照。記載事項(7c)には「難消化性成分は発酵されずにそのまま残っている。」との記載もある。)に記載されていることからみて、本願発明が奏する効果についても当業者が予測しうる程度のことである。 ・相違点2及び3について 「pHが3.5以上5.0以下」及び「ガス圧が0.147MPa以上0.294MPa以下(1.50?3.00kg/cm^(2))」の各数値範囲は、一般的なビール又はビールテイスト飲料が有している「pH」及び「ガス圧」を含むことは周知の事項である(「pH」については記載事項(8a)及び(9a)参照、「ガス圧」については記載事項(8c)及び(10a)参照)。 そして、「未発酵のノンアルコールビールテイスト飲料」は、ビールに似せた香味を備えることが必要なことから、先ずは一般的なビール又はビールテイスト飲料が有している「pH」及び「ガス圧」を採用することはごく自然なことであり、それらがビール様の香味に適しているとの結果は、単に効果を確認したものに過ぎない。 したがって、引用発明の「未発酵のノンアルコールビールテイスト飲料」において、上記周知の事項を考慮すれば、「pH」及び「ガス圧」を相違点2及び3で特定されている数値範囲内とすることは、当業者が容易なし得たことである。 よって、本願発明は、引用発明、周知の技術及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-10-19 |
結審通知日 | 2015-10-20 |
審決日 | 2015-11-02 |
出願番号 | 特願2013-95971(P2013-95971) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A23L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福澤 洋光 |
特許庁審判長 |
紀本 孝 |
特許庁審判官 |
鳥居 稔 山崎 勝司 |
発明の名称 | 未発酵の発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料及び発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料の香味向上方法 |
復代理人 | 多田 悦夫 |
代理人 | 磯野 道造 |